(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082753
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】波長変換膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240613BHJP
C08K 5/45 20060101ALI20240613BHJP
C08K 7/16 20060101ALI20240613BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240613BHJP
C07D 333/78 20060101ALI20240613BHJP
C07D 409/04 20060101ALI20240613BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/45
C08K7/16
C08K3/22
C07D333/78
C07D409/04
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196833
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多喜 正泰
(72)【発明者】
【氏名】山口 茂弘
(72)【発明者】
【氏名】湯川 昇志郎
(72)【発明者】
【氏名】神山 利彦
【テーマコード(参考)】
2H148
4C063
4J002
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA05
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC94
4C063DD08
4C063EE10
4J002AA001
4J002AB021
4J002BB031
4J002BB061
4J002BB121
4J002BB171
4J002BC031
4J002BC032
4J002BC072
4J002BD032
4J002BE061
4J002BF031
4J002BG011
4J002BG061
4J002BG062
4J002CC182
4J002CF001
4J002CG002
4J002CL001
4J002CM041
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE127
4J002DE137
4J002DJ017
4J002EV306
4J002FA082
4J002FA087
4J002FB072
4J002FB077
4J002FB092
4J002FB097
4J002FB232
4J002FB237
4J002FD202
4J002FD206
4J002FD207
4J002GP00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】波長変換効率および耐久性に優れる波長変換膜を与える波長変換膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記式(1)で表される蛍光体と、(B)バインダーとを含有する波長変換膜形成用組成物。
(式中、Ar
1およびAr
2は、置換/非置換の芳香環または置換/非置換の複素芳香環であり、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、R
3およびR
4は、互いに結合して隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される蛍光体と、(B)バインダーとを含有する波長変換膜形成用組成物。
【化1】
(式中、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環または置換基を有していてもよい複素芳香環であり、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、
R
3およびR
4は、互いに結合して隣接する窒素原子とともに環を形成してもよく、R
3およびR
4のいずれか一方または両方は、Ar
2と結合して隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。)
【請求項2】
上記Ar1およびAr2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環である請求項1記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項3】
上記R1~R4が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基である請求項1記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項4】
上記R
1およびR
2が、それぞれ独立して、非置換アリール基または下記式(2)で表される基である請求項3記載の波長変換膜形成用組成物。
【化2】
(式中、Ar
3は、置換基を有していてもよい芳香環または置換基を有していてもよい複素芳香環であり、
R
5は、水素原子、ハロゲン原子または有機基である。)
【請求項5】
さらに、(C)光散乱粒子を含有する請求項1記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項6】
上記(C)光散乱粒子が、酸化チタン粒子である請求項5記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項7】
上記(B)バインダーが、樹脂を含む請求項1記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項8】
上記(B)バインダーが、重合性モノマーおよび光重合開始剤を含む請求項1記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項9】
上記(B)バインダーが、アルカリ可溶性樹脂、重合性モノマーおよび光重合開始剤を含む請求項1記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項10】
上記(A)蛍光体の含有量が、固形分中0.1質量%以上である請求項1記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項11】
上記(C)光散乱粒子の含有量が、固形分中1質量%以上である請求項5記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項12】
上記組成物から形成される膜のヘイズ値が18%以上である請求項1~11のいずれか1項記載の波長変換膜形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロLEDディスプレイは、高コントラスト、高輝度が可能であるうえ、大画面化や透明ディスプレイなど応用の幅も広いことから、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイに次ぐ次世代ディスプレイとして期待されている。
マイクロLEDディスプレイでは、通常、各画素に微小LEDチップが配置される。
このLEDチップの配置の方式として三色のLEDを実装するRGB-LED方式があるが、この方式においては、LEDの発光制御の複雑さ、赤色LEDの性能の低さが課題とされており、この課題を解決できる波長変換方式が注目されている。
波長変換方式では、青色LEDチップのみを使用し、波長変換材料によって赤色、緑色の光を取り出すもので、青色LEDチップのみを用いて三原色を作ることができるという利点がある。
【0003】
波長変換材料として、従来、有機物の発光材料を用いる技術が提案され、例えば、ピリジン-フタルイミド縮合体を用いたもの(特許文献1等)、クマリン誘導体を用いたもの(特許文献2等)、ペリレン誘導体を用いたもの(特許文献3等)、ローダミン誘導体を用いたもの(特許文献4)、ピロメテン誘導体を用いたもの(特許文献5,6等)が開示されている。
【0004】
これらの波長変換材料には、一般的に良好な波長変換効率、色純度および耐光性等の特性が求められる。
この点、例えば、特許文献7には、特定のメタアクリル系重合体からなるバインダー樹脂、特定の蛍光色素および光重合可能なアクリル酸エステルを含む組成物が、高性能で耐光性のよい赤色変換材料となることが開示されている。
また、有機発光材料の劣化を防ぎ、耐久性を向上させるため、光安定化剤を添加する技術も開示されている(特許文献8等)。
さらに、波長変換材料に微粒子を添加することで、色変換層内での光の散乱により光路長が増大して青色光吸収率が向上するとともに、界面で反射された光が再度散乱されることで発光効率が向上することが知られている(特許文献9,10等)。
【0005】
しかし、近年のディスプレイ技術の発展に伴い、波長変換膜形成用組成物には、ディスプレイの性能向上の観点から、波長変換材料の波長変換効率や耐久性のさらなる改良が求められている。
【0006】
また、特許文献11には、細胞内脂肪滴の染色用の蛍光色素であるが、特定の構造を有する縮環チオフェン化合物が開示されている。当該縮環チオフェン化合物は、耐光性に優れ、可視光領域に吸収極大波長および蛍光極大波長を有することから、波長変換材料への利用が期待されるが、変換効率においてさらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-348568号公報
【特許文献2】特開2007-273440号公報
【特許文献3】特開2002-317175号公報
【特許文献4】特開2001-164245号公報
【特許文献5】特開2011-241160号公報
【特許文献6】特開2014-136771号公報
【特許文献7】特開2006-89724号公報
【特許文献8】特開2011-149028号公報
【特許文献9】国際公開第2020/189678号
【特許文献10】国際公開第2019/181698号
【特許文献11】特開2018-145422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、波長変換効率および耐久性に優れる波長変換膜を与える波長変換膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、蛍光体とバインダーとを含有する波長変換膜形成用組成物において、上記蛍光体として特定の縮環チオフェン化合物を含有することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の波長変換膜形成用組成物を提供する。
1. (A)下記式(1)で表される蛍光体と、(B)バインダーとを含有する波長変換膜形成用組成物。
【化1】
(式中、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環または置換基を有していてもよい複素芳香環であり、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、
R
3およびR
4は、互いに結合して隣接する窒素原子とともに環を形成してもよく、R
3およびR
4のいずれか一方または両方は、Ar
2と結合して隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。)
2. 上記Ar
1およびAr
2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環である1の波長変換膜形成用組成物。
3. 上記R
1~R
4が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基である1または2の波長変換膜形成用組成物。
4. 上記R
1およびR
2が、それぞれ独立して、非置換アリール基または下記式(2)で表される基である3の波長変換膜形成用組成物。
【化2】
(式中、Ar
3は、置換基を有していてもよい芳香環または置換基を有していてもよい複素芳香環であり、
R
5は、水素原子、ハロゲン原子または有機基である。)
5. さらに、(C)光散乱粒子を含有する1~4のいずれかの波長変換膜形成用組成物。
6. 上記(C)光散乱粒子が、酸化チタン粒子である5の波長変換膜形成用組成物。
7. 上記(B)バインダーが、樹脂を含む1~6のいずれかの波長変換膜形成用組成物。
8. 上記(B)バインダーが、重合性モノマーおよび光重合開始剤を含む1~6のいずれかの波長変換膜形成用組成物。
9. 上記(B)バインダーが、アルカリ可溶性樹脂、重合性モノマーおよび光重合開始剤を含む1~6のいずれかの波長変換膜形成用組成物。
10. 上記(A)蛍光体の含有量が、固形分中0.1質量%以上である1~9のいずれかの波長変換膜形成用組成物。
11. 上記(C)光散乱粒子の含有量が、固形分中1質量%以上である5~10のいずれかの波長変換膜形成用組成物。
12. 上記組成物から形成される膜のヘイズ値が18%以上である1~11のいずれかの波長変換膜形成用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、波長変換効率および耐久性に優れる波長変換膜を与える波長変換膜形成用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の波長変換膜形成用組成物は、(A)下記式(1)で表される蛍光体と(B)バインダーとを含有することを特徴とする。なお、以下の説明において、固形分とは、波長変換膜形成用組成物を構成する溶媒以外の成分を意味する。
【0013】
【0014】
式中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環または置換基を有していてもよい複素芳香環であり、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基であり、R3およびR4は、互いに結合して隣接する窒素原子とともに環を形成してもよく、R3およびR4のいずれか一方または両方は、Ar2と結合して隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。
【0015】
Ar1およびAr2で表される芳香環としては、単環芳香族炭化水素環としてベンゼン環が挙げられ、多環芳香族炭化水素環としてナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、トリフェニレン環等が挙げられる。
【0016】
Ar1およびAr2で表される芳香環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述のハロゲン原子、後述のアルキル基、後述のシクロアルキル基、後述のハロゲン化アルキル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0017】
Ar1およびAr2で表される複素芳香環としては、単環複素芳香環として、ピロール環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環等が挙げられ、多環複素芳香環としてインドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環等が挙げられる。
【0018】
Ar1およびAr2で表される複素芳香環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述のハロゲン原子、後述のアルキル基、後述のシクロアルキル基、後述のハロゲン化アルキル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0019】
なかでも、Ar1およびAr2としては、吸収極大波長および蛍光極大波長をより大きくし、耐光性をより向上させる観点から、置換もしくは非置換芳香環が好ましく、置換若しくは非置換単環芳香族炭化水素環がより好ましい。
【0020】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0021】
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0022】
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記ハロゲン原子、後述のシクロアルキル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0023】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基が挙げられ、炭素数4~8のシクロアルキル基が好ましい。
【0024】
上記シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記ハロゲン原子、上記アルキル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0025】
ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0026】
アリール基としては、単環アリール基、縮環アリール基および多環アリール基のいずれでもよく、その具体例としては、単環アリール基としてフェニル基が挙げられ、縮環アリール基としてナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基等が挙げられ、多環アリール基としてビフェニル基、ターフェニル基等の炭素数6~18のアリール基が挙げられ、炭素数6~14のアリール基が好ましい。
【0027】
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基、上記ハロゲン原子、上記アルキル基、上記アリール基、後述のアルコキシ基、後述のポリエチレングリコール基またはその誘導体基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0028】
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~10のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましい。そのようなアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基およびn-プロポキシ基等が好ましい。
【0029】
ポリエチレングリコール基の誘導体基としては、例えば、(-O(C2H4O)mR6)が挙げられる。R6は、水素原子またはアルキル基である。上記アルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。上記炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、メチル基が好ましい。mは、1~100の整数であり、1~50が好ましく、1~10がより好ましい。
【0030】
ヘテロアリール基としては、単環ヘテロアリール基および縮環ヘテロアリール基のいずれでもよく、単環ヘテロアリール基として、ピロリル基、チエニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジル基等が挙げられ、縮環ヘテロアリール基としてインドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基等が挙げられる。
【0031】
上記ヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基、上記ハロゲン原子、上記アルキル基、上記アリール基、上記アルコキシ基、上記ポリエチレングリコール基またはその誘導体基、上記ヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0032】
R1~R4としては、吸収極大波長および蛍光極大波長をより大きくし、耐光性をより向上させる観点から、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アリール基が好ましく、置換もしくは非置換アリール基がより好ましい。
【0033】
なかでも、R1およびR2としては、非置換アリール基または下記式(2)で表される基がより一層好ましい。
【0034】
【0035】
式中、Ar3は、置換基を有していてもよい芳香環または置換基を有していてもよい複素芳香環であり、R5は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子または有機基である。
【0036】
Ar3で表される芳香環としては、単環芳香族炭化水素環としてベンゼン環が挙げられ、多環芳香族炭化水素環としてナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピレン環、トリフェニレン環等が挙げられる。
【0037】
Ar3で表される芳香環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、Ar1およびAr2の説明において例示した、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0038】
Ar3で表される複素芳香環としては、単環複素芳香環として、ピロール環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環等が挙げられ、多環複素芳香環としてインドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環等が挙げられる。
【0039】
Ar3で表される複素芳香環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、Ar1およびAr2の説明において例示した、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0040】
なかでも、Ar3としては、吸収極大波長および蛍光極大波長をより大きくし、耐光性をより向上させる観点から、置換または非置換芳香環が好ましく、置換または非置換単環芳香族炭化水素環がより好ましい。
【0041】
R5で表される有機基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ポリエチレングリコール基またはその誘導体基(-O(C2H4O)mR6)等が挙げられる。
【0042】
R5で表されるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0043】
R5で表されるハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が挙げられる。
【0044】
R5で表されるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1~10のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましい。そのようなアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基およびn-プロポキシ基等が好ましい。
【0045】
R5で表されるポリエチレングリコール基の誘導体基(-O(C2H4O)mR6)において、R6は、水素原子またはアルキル基である。上記アルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。上記炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、メチル基が好ましい。mは、1~100の整数であり、1~50が好ましく、1~10がより好ましい。ポリエチレングリコール基の誘導体基の具体例としては、-O(C2H4O)mCH3が挙げられる。
【0046】
以上の条件を満たすR5で表される有機基としては、以下の式で表される基が挙げられる。
【0047】
【0048】
また、R3およびR4としては、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換ヘテロアリール基が好ましく、置換または非置換アリール基がより好ましく、非置換アリール基がより一層好ましい。
【0049】
上記R3およびR4は、互いに結合して隣接する窒素原子とともに環を形成してもよい。R3およびR4が、互いに結合して隣接する窒素原子とともに形成される環としては、例えば、以下のような基が挙げられる。
【0050】
【0051】
また、上記R3およびR4は、R3およびR4のいずれか一方または両方が、Ar2と結合して隣接する窒素原子とともに環を形成していてもよい。R3およびR4のいずれか一方または両方が、Ar2と結合して隣接する窒素原子とともに形成される環としては、例えば、以下のような基が挙げられる。
【0052】
【0053】
なお、上記式(1)で表される化合物において、-NR3R4で表される基のAr2に対する結合位置は、特に制限されない。例えば、Ar2がベンゼン環である場合には、下記式(1a)で表される化合物が形成されやすい。
【0054】
【化8】
(式中、Ar
1およびR
1~R
4は、上記と同じである。)
【0055】
また、下記式(1b)および(1c)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化9】
(式中、Ar
1、R
1およびR
2は、上記と同じである。)
【0057】
さらに、下記式(1d)~(1i)で表される化合物がより好ましい。
【0058】
【化10】
(式中、R
1およびR
2は、上記と同じである。)
【0059】
【化11】
(式中、R
1およびR
2は、上記と同じである。)
【0060】
上記式(1)表される化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記式(1-1)~(1-12)で表される化合物を挙げることができる。
【0061】
【0062】
【0063】
上記式(1)で表される化合物は、耐光性に優れるだけでなく、変換効率に優れ、蛍光体としてディスプレイ用途の波長変換材料に好適である。
【0064】
上記式(1)で表される化合物の合成方法は、特に制限されない。例えば、下記スキーム1にしたがって合成することができる。
【0065】
【0066】
式中、Ar1、Ar2、R1、R2、R3およびR4は、上記と同じである。X2は、ハロゲン原子を示す。
【0067】
また、R1およびR2が、上記式(2)で表される基である場合は、下記スキーム2にしたがって合成することもできる。
【0068】
【0069】
式中、Ar1、Ar2、Ar3、R1、R2、R3、R4、R5、X2は、上記と同じである。R7は、水素原子または有機基を示す。X3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を示す。
【0070】
なお、上記の式[a]で表される化合物は、既報(国際公開第2014/075382号)にしたがって合成することができる。
【0071】
スキーム1および2において、X2およびX3で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が好ましく、塩素原子、臭素原子等がより好ましく、臭素原子がさらに好ましい。
【0072】
スキーム2において、R7で表される有機基としては、アルキル基、または-(C2H4O)mR6等が挙げられる。式中、R6およびmは、上記と同じである。
【0073】
以下、上記スキーム1および2の各工程について詳細に説明する。
【0074】
[1]化合物[a]から化合物[b]または化合物[d]を合成する工程
当該工程は、化合物[a]と有機リチウム化合物とを反応させて得られた反応物に、式[f]または[g]で表される化合物を反応させることにより、化合物[b]または[d]を合成する工程である。
【0075】
【化16】
(式中、R
1、R
2、Ar
3およびX
3は、上記と同じである。)
【0076】
有機リチウム化合物としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;シクロヘキシルリチウム等のシクロアルキルリチウム;フェニルリチウム等のアリールリチウム等が挙げられる。これらのうち、本工程では、収率の観点から、アルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムがより好ましい。なお、上記の有機リチウム化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
有機リチウム化合物の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、化合物[a]1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。
【0078】
化合物[f]または[g]の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、化合物[a]1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。
【0079】
反応は、通常反応溶媒の存在下で行うことができる。使用できる反応溶媒としては、特に制限はなく、公知の反応溶媒を適宜選択して使用することができる。反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、特に制限はなく、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、また、反応時間は特に制限されず、反応が十分に進行する時間とすることができる。反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理をすることもできる。また、精製処理を施さずに次の工程を行うこともできる。
【0080】
[2]化合物[b]から化合物[c]を合成する工程、化合物[d]から化合物[e]を合成する工程
当該工程は、化合物[b]または化合物[d]と、ルイス酸またはブレンステッド酸を反応させることにより、化合物[c]または化合物(3A)[e]を合成する工程である。
【0081】
ルイス酸としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化スズ、フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)等が挙げられ、これらの錯体も使用することができる。これらのルイス酸は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
ルイス酸の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、化合物[b]または化合物[d]1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。
【0083】
ブレンステッド酸としては、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、リン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらのブレンステッド酸は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
ブレンステッド酸の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、化合物[b]または化合物[d]1モルに対して、0.1モル以上が好ましく、溶媒として用いてもよい。
【0085】
反応は、通常、反応溶媒の存在下で行うことができる。使用できる反応溶媒としては、特に制限はなく、公知の反応溶媒を適宜選択して使用することができる。反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、特に制限はなく、加熱下、常温下および冷却下のいずれでも行うことができ、また、反応時間は特に制限されず、反応が十分に進行する時間とすることができる。反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理をすることもできる。また、精製処理を施さずに次の工程を行うこともできる。
【0086】
[3]化合物[c]から化合物(1)を合成する工程
当該工程は、化合物[c]と、酸化剤とを反応させることにより、化合物(1)を合成する工程である。
【0087】
酸化剤としては、過酸化水素;過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸(m-CPBA)等の過酸;メタ過ヨウ素酸ナトリウム等の過ハロゲン酸塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
酸化剤の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、通常、化合物(3)1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。
【0089】
反応は、通常、反応溶媒の存在下で行うことができる。使用できる反応溶媒としては、特に制限はなく、公知の反応溶媒を適宜選択して使用することができる。反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、特に制限はなく、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、また、反応時間は特に制限されず、反応が十分に進行する時間とすることができる。反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理を行い、本発明のチオフェンジオキシド化合物を得ることができる。
【0090】
[4]化合物[e]から化合物(1A)を合成する工程
当該工程は、化合物[e]と有機リチウム化合物との反応物にボロン酸化合物を反応させることにより、化合物[e]のハロゲン原子をボロン酸化し、さらに、得られた反応物(ボロン酸化物)を過酸化水素と反応させて化合物(1A)を合成する工程である。
【0091】
有機リチウム化合物としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;シクロヘキシルリチウム等のシクロアルキルリチウム;フェニルリチウム等のアリールリチウム等が挙げられる。これらのうち、本工程では、収率の観点から、アルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウムがより好ましい。上記有機リチウム化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
有機リチウム化合物の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、通常、化合物(3A)1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。
【0093】
ボロン酸化合物としては、例えば、下記式[h]で表されるボロン酸化合物が挙げられる。
【0094】
【化17】
(式中、R
8、R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基を示す。R
8、R
9およびR
10のうち2つが互いに連結して、隣接する-O-B-O-とともに環を形成してもよい。)
【0095】
アルキル基としては、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基のいずれも採用でき、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基(特に炭素数1~6のアルキル基)が挙げられる。
【0096】
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、後述のシクロアルキル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0097】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基が挙げられ、炭素数4~8のシクロアルキル基が好ましい。
【0098】
アリール基としては、単環アリール基、縮環アリール基および多環アリール基のいずれも採用でき、具体例としては、単環アリール基としてフェニル基が挙げられ、縮環アリール基としてナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基等が挙げられ、多環アリール基としてビフェニル基、ターフェニル基等の炭素数6~18のアリール基(特に炭素数6~14のアリール基)等が挙げられる。
【0099】
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記ハロゲン原子、上記アルキル基、上記アリール基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0100】
ヘテロアリール基としては、単環ヘテロアリール基および縮環ヘテロアリール基のいずれでもよく、単環ヘテロアリール基として、ピロリル基、チエニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジル基等が挙げられ、縮環ヘテロアリール基としてインドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基等が挙げられる。
【0101】
上記ヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記ハロゲン原子、上記アルキル基、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0102】
また、上記式[h]において、R8、R9およびR10のうち2つが結合して、隣接する-O-B-O-とともに環を形成してもよい。このようなボロン酸化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0103】
【0104】
上記ボロン酸化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
【0106】
ボロン酸化合物の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、化合物[e]1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。
【0107】
過酸化水素の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、化合物[e]1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。
【0108】
反応は、通常、反応溶媒の存在下で行うことができる。使用できる反応溶媒としては、特に制限はなく、公知の反応溶媒を適宜選択して使用することができる。反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、特に制限はなく、加熱下、常温下および冷却下のいずれでも行うことができ、また、反応時間は特に制限されず、反応が十分に進行する時間とすることができる。反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理を行い、本発明のチオフェンジオキシド化合物を得ることができる。また、必要に応じて常法にしたがって精製処理を行い、次の工程を行うこともできる。
【0109】
[5]化合物(1A)から化合物(1B)を合成する工程
当該工程では、化合物(1A)と、下記式[i]で表される化合物とを反応させ、一般式(1B)で表される化合物を得ることができる。
R11-SO2-OR7 [i]
(式中、R7は、上記と同じである。R11は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
【0110】
アルキル基としては、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基のいずれも採用でき、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基(特に炭素数1~6のアルキル基)が挙げられる。
【0111】
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、後述のシクロアルキル基、後述のアリール基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0112】
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数3~10のシクロアルキル基が挙げられ、炭素数4~8のシクロアルキル基が好ましい。
【0113】
アリール基としては、単環アリール基、縮環アリール基および多環アリール基のいずれも採用でき、例えば、単環アリール基としてフェニル基が挙げられ、縮環アリール基としてナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基等が挙げられ、多環アリール基としてビフェニル基、ターフェニル基等の炭素数6~18のアリール基(特に炭素数6~14のアリール基)が挙げられる。
【0114】
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記ハロゲン原子、上記アルキル基、上記アリール基、後述のヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合の置換基の数は、例えば、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0115】
ヘテロアリール基としては、単環ヘテロアリール基および縮環ヘテロアリール基のいずれでもよく、単環ヘテロアリール基として、ピロリル基、チエニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジル基等が挙げられ、縮環ヘテロアリール基としてインドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基等が挙げられる。
【0116】
上記ヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記ハロゲン原子、上記アルキル基、上記アリール基、上記ヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基を有する場合、その数は、1~6個が好ましく、1~3個がより好ましい。
【0117】
上記化合物[i]の使用量は、合成の容易さ、収率等の観点から、通常、化合物(1A)1モルに対して、0.1~10モルが好ましく、0.5~5モルがより好ましい。
【0118】
反応は、通常、反応溶媒の存在下で行うことができる。使用できる反応溶媒としては、特に制限はなく、公知の反応溶媒を適宜選択して使用することができる。反応雰囲気は、通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等)を採用し得る。反応温度は、特に制限はなく、加熱下、常温下および冷却下のいずれでも行うことができ、また、反応時間は特に制限されず、反応が十分に進行する時間とすることができる。反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理を行い、本発明のチオフェンジオキシド化合物を得ることができる。
【0119】
なお、上記では、本発明のチオフェンジオキシド化合物の一態様の合成方法の一例について記載したが、この製造方法に限定されることはなく、様々な合成方法で合成することができる。
【0120】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、(A)上記式(1)で表される縮環チオフェン化合物からなる蛍光体と、(B)バインダーとを含有することを特徴とするものである。なお、以下の説明において、固形分とは、波長変換膜形成用組成物を構成する溶媒以外の成分を意味する。
【0121】
上記(A)成分の蛍光体の含有量は、得られる波長変換膜の波長変換効率を考慮すると、固形分中0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がより一層好ましい。一方、(A)成分の蛍光体の含有量の上限は、特に限定されないが、蛍光体を高濃度化した際に蛍光量子収率が低下することを考慮すると、固形分中30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がより一層好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0122】
また、本発明の波長変換膜形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、蛍光体として上記式(1)で表される縮環チオフェン化合物以外のその他の蛍光体を含んでもよい。上記その他の蛍光体としては、4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン等のシアニン系色素;1-エチル-2-[4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル]-ピリジウム-パークロレート等のピリジン系色素;ローダミンB、ローダミン6G等のローダミン系色素;オキサジン系色素等の赤色変換蛍光体、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-トリフルオロメチルキノリジノ(9,9a,1-gh)クマリン、3-(2’-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン、3-(2’-ベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン等のクマリン色素;ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116等のナフタルイミド系色素等の緑色変換蛍光体が挙げられる。また、特開2018-145422号公報に記載の縮環チオフェン化合物等の赤色変換蛍光体または緑色変換蛍光体が挙げられる。
【0123】
その他の蛍光体を含む場合、その含有量は、固形分中5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、含まないこと(0質量%)がより一層好ましい。
【0124】
上記(B)バインダーとしては、波長変換膜形成用組成物においてバインダーとして使用される公知の樹脂等から選択すればよい。
【0125】
樹脂としては、波長変換膜形成用組成物のベース樹脂として利用されている樹脂から適宜選択して用いることができ、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体、メタクリル酸ベンジル-メタクリル酸共重合体等のアクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルブチラート;トリアセチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、後述のアルカリ可溶性樹脂であってもよく、アルカリ可溶性樹脂とそれ以外の樹脂の両方を含んでいてもよい。
これらの中でも、アクリル系樹脂が好ましく、メタクリル酸メチル-メタクリル酸共重合体がより好ましい。
上記各樹脂は、市販品を用いてもよく、不飽和二重結合基の反応により得られるものは重合開始剤を用いたラジカル重合等の常法に従って合成したものを用いてもよい。
【0126】
上記樹脂の平均分子量は、特に制限されるものではないが、その重量平均分子量(Mw)は、通常5,000~100,000、好ましくは10,000~50,000である。なお、本発明において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値である。
【0127】
上記(B)バインダーとしては、重合性モノマーと光重合開始剤とを配合し、製膜後に重合させるようにしてもよい。これらは、上述した樹脂と併用することもできる。
上記重合性モノマーとしては、光重合開始剤と共に用いられ、光の照射によって重合するものであれば特に限定されないが、ラジカル重合性化合物であるエチレン性不飽和モノマー、カチオン重合性化合物であるエポキシ基含有モノマー、オキセタニル基含有モノマーが好ましい。本発明では、上記エチレン性不飽和モノマー、エポキシ基含有モノマー、オキセタニル基含有モノマーとしては、単官能モノマー、二官能モノマーおよび三官能以上のモノマーのいずれも用いることができる。
【0128】
[エチレン性不飽和モノマー]
エチレン性不飽和単官能モノマーとしては、例えば、下記式(M1)で表されるモノ(メタ)アクリレート、下記式(M2)で表されるモノ(メタ)アクリルアミド化合物および下記式(M3)で表されるアミド化合物が挙げられる。
【0129】
【0130】
式(M1)において、Rm1は、水素原子またはメチル基を示し、Rm2は、1価の炭化水素基(ただし、エチレン性不飽和基を含むものを除く。)を示す。上記炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。インクジェット法における吐出安定性に優れる点および外部量子効率の向上効果により優れる点から、上記Rm2の炭素数は好ましくは10以下である。上記炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。
【0131】
式(M2)において、Rm1は、上記と同じである。Rm3およびRm4は、それぞれ独立して、水素原子、1価の炭化水素基(ただし、エチレン性不飽和基を含むものを除く。)を示す。炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。また、Rm3およびRm4は、互いに結合して環を形成してもよい。インクジェット法における吐出安定性に優れる点および外部量子効率の向上効果により優れる点から、上記Rm3およびRm4の炭素数の合計は好ましくは10以下である。上記炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。
【0132】
式(M3)において、Rm5は、水素原子またはメチル基を示し、Rm6は、エチレン性不飽和基を有する1価の炭化水素基を示す。上記炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。インクジェット法における吐出安定性に優れる点および外部量子効率の向上効果により優れる点から、上記Rm6の炭素数は好ましくは10以下である。炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。
【0133】
上記式(M1)で表されるモノ(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0134】
上記式(M2)で表されるモノ(メタ)アクリルアミド化合物の具体例としては、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0135】
上記式(M3)で表されるアミド化合物の具体例としては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-アリルホルムアミド、N-アリルアセトアミド等が挙げられる。
【0136】
これら本発明では、上述した単官能モノマーの中でも、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルホルムアミド、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドが好ましく用いられる。
【0137】
エチレン性不飽和単官能モノマーとしては、インクジェット法における吐出安定性を向上させやすい点から、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは8,000mPa・s以下、より一層好ましくは5,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,000mPa・s以下の粘度を有するものが好ましい。なお、本明細書中、単官能モノマー等のエチレン性不飽和基を有するモノマーの粘度は、例えば、EMS粘度計によって測定される25℃における粘度である。ただし、複数のモノマーを混合して用いる場合には、粘度の低いモノマーと組み合わせることで粘度の高いモノマーも好適に用いることができる。また、溶剤を加えて用いる場合には粘度の高いモノマーも好適に用いることができる。
【0138】
エチレン性不飽和二官能モノマーとしては、例えば、下記式(M4)で表されるジ(メタ)アクリレートおよび下記式(M5)で表されるジ(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられる。
【0139】
【0140】
式(M4)において、複数のRm7は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、Rm8は、2価の炭化水素基(ただし、エチレン性不飽和基を含むものを除く。)を示す。上記2価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。吐出安定性に優れる観点および外部量子効率の向上効果により優れる観点から、上記2価の炭化水素基の炭素数は好ましくは10以下である。上記2価の炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。
【0141】
式(M5)において、複数のRm9は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、複数のRm10は、それぞれ独立して、水素原子、1価の炭化水素基(ただし、エチレン性不飽和基を含むものを除く。)を示す。上記1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。インクジェット法における吐出安定性に優れる点および外部量子効率の向上効果により優れる点から、上記Rm10の炭素数は好ましくは7以下である。上記1価の炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。Rm11は、2価の炭化水素基(ただし、エチレン性不飽和基を含むものを除く。)を示す。上記2価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。吐出安定性に優れる観点および外部量子効率の向上効果により優れる観点から、上記2価の炭化水素基の炭素数は好ましくは10以下である。上記2価の炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。
【0142】
上記式(M4)で表されるジ(メタ)アクリレートの具体例としては、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA 1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA 1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0143】
上記式(M5)で表されるジ(メタ)アクリルアミド化合物の具体例としては、N,N-[オキシビス(2,1-エタンジイルオキシ-3,1-プロパンジイル)]ビスアクリルアミド等が挙げられる。上記ジ(メタ)アクリルアミド化合物は、市販品を用いてもよく、その具体例としては、FOM-03008(富士フイルム和光純薬(株)製)等が挙げられる。
【0144】
本発明では、上述した二官能モノマーの中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0145】
エチレン性不飽和二官能モノマーとしては、インクジェット法における吐出安定性を向上させやすい点から、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは8,000mPa・s以下、より一層好ましくは5,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,000mPa・s以下の粘度を有するものが好ましい。上記粘度は、25℃における粘度である。ただし、複数のモノマーを混合して用いる場合には、粘度の低いモノマーと組み合わせることで粘度の高いモノマーも好適に用いることができる。また、溶剤を加えて用いる場合には粘度の高いモノマーも好適に用いることができる。
【0146】
三官能以上のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、下記式(M6)で表されるトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、下記式(M7)で表されるトリ(メタ)アクリルアミド化合物、およびテトラ(メタ)アクリルアミド化合物が挙げられる。
【0147】
【0148】
式(M6)において、複数のRm12は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、Rm13は、3価の炭化水素基(ただし、エチレン性不飽和基を含むものを除く。)を示す。上記3価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。吐出安定性に優れる観点および外部量子効率の向上効果により優れる観点から、炭化水素基の炭素数は好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。上記3価の炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。
【0149】
式(M7)において、複数のRm14は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、複数のRm15は、それぞれ独立して、水素原子、1価の炭化水素基(ただし、エチレン性不飽和基を含むものを除く。)を示す。上記1価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。インクジェット法における吐出安定性に優れる点および外部量子効率の向上効果により優れる点から、上記Rm15の炭素数は好ましくは7以下である。上記1価の炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。複数のRm16は、それぞれ独立して、2価の炭化水素基(ただし、エチレン性不飽和基を含むものを除く。)を示す。上記2価の炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。吐出安定性に優れる観点および外部量子効率の向上効果により優れる観点から、上記2価の炭化水素基の炭素数は好ましくは10以下である。上記2価の炭化水素基は、置換されていてもよく、例えば、エーテル結合を有していてよい。
【0150】
上記式(M6)で表されるトリ(メタ)アクリレートの具体例としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0151】
上記テトラ(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0152】
上記ペンタ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0153】
上記式(M7)で表されるトリ(メタ)アクリルアミド化合物の具体例としては、N,N-ビス(2-アクリルアミドエチル)アクリルアミド等が挙げられる。上記トリ(メタ)アクリルアミド化合物は、市販品を用いてもよく、その具体例としては、FOM-03007(富士フイルム和光純薬(株)製)等が挙げられる。
【0154】
上記テトラ(メタ)アクリルアミド化合物の具体例としては、N-[トリス(3-アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド、N,N-1,2-エタンジイルビス{N-[2-(アクリロイルアミノ)エチル]アクリルアミド}等が挙げられる。上記テトラ(メタ)アクリルアミド化合物は、市販品を用いてもよく、その具体例としては、FOM-03006、FOM-03009(富士フイルム和光純薬(株)製)等が挙げられる。
【0155】
本発明では、上述した三官能以上のモノマーの中でも、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましく用いられる。
【0156】
エチレン性不飽和三官能モノマーとしては、インクジェット法における吐出安定性を向上させやすい点から、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは8,000mPa・s以下、より一層好ましくは5,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,000mPa・s以下の粘度を有するものが好ましい。上記粘度は、25℃における粘度である。ただし、複数のモノマーを混合して用いる場合には、粘度の低いモノマーと組み合わせることで粘度の高いモノマーも好適に用いることができる。また、溶剤を加えて用いる場合には粘度の高いモノマーも好適に用いることができる。
【0157】
[エポキシ基含有モノマー]
エポキシ基含有モノマーは、エポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されないが、後述のアルカリ可溶性樹脂を除くものとする。また、本発明では、エポキシ基およびオキセタニル基の両者を含む化合物は、エポキシ基含有モノマーに該当するものとする。
【0158】
上記エポキシ基含有モノマーとしては、芳香族エポキシ基含有モノマー、脂環族エポキシ基含有モノマー、脂肪族エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。本発明においては、これらの中でも、上記エポキシ基含有モノマーが、脂環族エポキシ基含有モノマーおよび脂肪族エポキシ基含有モノマーの少なくとも一方を含むことが好ましく、特に、脂環族エポキシ基含有モノマーを少なくとも含むことがより好ましく、脂環族エポキシ基含有モノマーおよび脂肪族エポキシ基含有モノマーの両者を含むことが好ましい。上記エポキシ基含有モノマーを用いることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れると共に、基材との密着性が良好な硬化物を得ることができる。
【0159】
上記脂環族エポキシ基含有モノマーの具体例としては、脂肪族環を含むものであればよく、少なくとも1個の脂肪族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、およびシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物等が挙げられる。本発明では、硬化の速さの点から、上記脂環族エポキシ基含有モノマーのなかでも、シクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0160】
上記脂環族エポキシ基含有モノマーとしては、2以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物を好ましく用いることができ、下記式(B1)で表される化合物が挙げられる。
【0161】
【化23】
(式中、X
b1は、単結合または連結基(1以上の原子を有する2価の基)を表す。)
【0162】
Xb1で表される連結基としては、2価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部または全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、およびこれらが複数連結した基等が挙げられる。
【0163】
上記2価の炭化水素基としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~30のアルキレン基、およびシクロアルキル環を有する炭素数1~30のアルキレン基を挙げることができる。
【0164】
上記直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~30のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~30のアルキル基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。上記シクロアルキル環を有する炭素数1~30のアルキレン基としては、シクロアルキル環を有する炭素数1~30のアルキル基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0165】
上記直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、t-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基およびイコシル基等の、炭素数1~30の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基から水素原子を1つ除いた基を挙げることができる。
上記2価の炭化水素基としての、炭素数1~30の直鎖または分岐のアルキレン基としては、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。
【0166】
上記シクロアルキル環を有するアルキル基としては、シクロアルキル基を用いることができる。上記シクロアルキル基としては、単環式炭化水素基、架橋炭化水素環基等が挙げられる。
単環式炭化水素基としては、シクロヘキシル環等の単環式炭化水素環から水素原子を1つ除いた基、単環式炭化水素環から水素原子を1つ除いた基の環中の水素原子の1つまたは2つ以上を脂肪族炭化水素基で置換した基等が挙げられる。
架橋炭化水素環基としては、ノルボルニル環等の架橋炭化水素環等のシクロアルキル環から水素原子を1つ除いた基、架橋炭化水素環から水素原子を1つ除いた基の環中の水素原子の1つまたは2つ以上を脂肪族炭化水素基で置換した基等が挙げられる。
【0167】
上記単環式炭化水素基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、テトラメチルシクロヘキシル基、ペンタメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基およびメチルシクロヘプチル基等を挙げることができ、中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が好ましい。
【0168】
上記架橋炭化水素環基の具体例としては、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[4.3.1]デシル基、ビシクロ[3.3.1]ノニル基、ボルニル基、ボルネニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチル基、トリシクロブチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0169】
Xb1で表されるシクロアルキル環を有するアルキル基としては、上記シクロアルキル基と、上記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基とを組み合わせた基であってもよい。例えば、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基中の水素原子の1つまたは2つ以上が、上記シクロアルキル基で置換された基、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基中のメチレン基の1つまたは2つ以上が、上記シクロアルキル基から水素原子を1つ除いた基で置換された基、上記シクロアルキル基の水素原子の1つまたは2つ以上が、上記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基で置換された基等が挙げられる。
具体的には、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0170】
上記炭素-炭素二重結合の一部または全部がエポキシ化されたアルケニレン基(以下、「エポキシ化アルケニレン基」と表記することもある。)におけるアルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8の直鎖状または分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。
【0171】
本発明においては、Xb1が連結基であることが好ましく、2価の炭化水素基、エステル結合、またはこれらが複数連結した基であることが好ましく、特に、2価の炭化水素基とエステル結合とが連結した基であることが好ましい。
また、本発明においては、Xb1で表される2価の炭化水素基が、炭素数1~18の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基から水素原子を1つ除いたアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基から水素原子を1つ除いたアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~5の直鎖状のアルキル基から水素原子を1つ除いたアルキレン基であることがより一層好ましく、炭素数1~3の直鎖状のアルキル基から水素原子を1つ除いたアルキレン基であることがさらに好ましい。
【0172】
本発明において、2以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物の好適な化合物としては、下記式(B1-1)~(B1-2)で表される化合物を挙げることができる。
【0173】
【0174】
上記脂環族エポキシ基含有モノマーとしては、下記式(B2)で表される化合物も好適に使用し得る。
【0175】
【化25】
(式中、Z
b1は、シクロアルキル環を有する炭素数6~30のアルキレン基を表す。)
【0176】
Zb1で表されるシクロアルキル環を有する炭素数1~30のアルキレン基としては、上記Xb1で表されるシクロアルキル環を有するアルキレン基と同様の基が挙げられる。
本発明においては、Zb1は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得る観点から、シクロアルキル環を2つ有する炭素数が13~20のアルキレン基であることが好ましく、下記式(B3)で表される基であることがより好ましい。
【0177】
【化26】
(式中、R
b2およびR
b3は、水素原子またはメチル基を表し、*は結合箇所を表す。)
【0178】
上記脂環族エポキシ基含有モノマーの具体例としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が挙げられる。本発明では、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となる観点から、これらの中でも、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレートが好ましい。
なお、脂肪族環および芳香族環の両者を含むものは、脂環族エポキシ基含有モノマーに該当するものとする。
【0179】
また、上記脂環族エポキシ基含有モノマーとして、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物等のエポキシシクロアルキル環に由来するシクロアルキル環にオキシラニル基が直接単結合で結合した構造を構成単位として有し、エポキシシクロアルキル環のエポキシ基同士が重合した構造を主鎖構造として有する化合物(以下、「脂環族エポキシ基含有モノマーA」と表記する場合がある。)も用いることができる。
【0180】
上記脂環族エポキシ基含有モノマーとしては市販品を使用することができ、具体例としては、例えば、特許第6103653号公報等に記載されるものを挙げることができる。
【0181】
上記脂環族エポキシ基含有モノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、2以上のシクロヘキセンオキシド構造を有する化合物、脂環族エポキシ基含有モノマーAを組み合わせて用いることも好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができるからである。
【0182】
上記脂環族エポキシ基含有モノマーの含有量は、製膜性および硬化性に優れた硬化物を得ることができる量であればよいが、カチオン硬化性化合物100質量部中、好ましくは0質量部以上、より好ましくは2質量部以上、より一層好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上、最も好ましくは20質量部以上である。
また、エポキシ基含有モノマーの含有量がカチオン硬化性化合物100質量部中に90質量部以下である場合、上記脂環族エポキシ基含有モノマーの含有量は、カチオン硬化性化合物100質量部中、好ましくは0~80質量部、より好ましくは10~60質量部、より一層好ましくは15~35質量部、さらに好ましくは20~25質量部である。
上記含有量を上述の範囲内とすることで、製膜性に優れた硬化物を得ることが可能となる。また、上記組成物は、硬化性が良好な硬化物を得ることができる。
【0183】
上記芳香族エポキシ基含有モノマーの具体例としては、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノールまたは、そのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、またはこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル化物やフェノールノボラック型エポキシ基含有モノマー;レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノールやベンゼンジエタノール、ベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル、安息香酸やトルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のポリグリシジルエステル、安息香酸のグリシジルエステル、スチレンオキサイドまたはジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
なかでも、フェノール類のポリグリシジルエーテル、アルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物、多価フェノール類のポリグリシジルエーテル化物、安息香酸類のポリグリシジルエステル、多塩基酸類のポリグリシジルエステルの群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、特に、アルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物であることが好ましい。所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることが可能となるからである。
【0184】
また、上記脂肪族エポキシ基含有モノマーの具体例としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル等、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等が挙げられる。
【0185】
上記脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルとしては、脂肪族ジオール化合物のジグリシジルエーテル化物が好ましく、特に下記式(B4)で表される化合物が好ましい。上記化合物を用いることで、上記組成物は、所望の波長領域の光吸収性に優れるものとなり、その硬化物は、基材との良好な密着性を有するものとなる。また、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を与える。
【0186】
【化27】
(式中、Z
b2は、炭素数1~30の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を示す。)
【0187】
Zb2で表される炭素数1~30の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基としては、上記Zb1で表される炭素数1~30の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基と同様の基が挙げられる。また、炭素数1~30のアルキレン基のメチレン基の1つまたは2つ以上は、-O-で置き換わっていてもよい。
なお、上記アルキレン基中のメチレン基は、-O-で置き換えられる場合、上記アルキレン基中で酸素原子が隣り合わない条件で-O-に置き換えられるものである。
【0188】
上記Zb2は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得る観点から、分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましい。上記構造を有することで、上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
上記Zb2は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得る観点から、炭素数2~30の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数3~28の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~26の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であることがより一層好ましい。また、Zb2が、メチレン基が-O-で置き換わっていないアルキレン基である場合、その炭素数は、4~10であることが好ましく、4~8であることが好ましい。上記Zb2が、メチレン基が-O-で置き換わっているアルキレン基である場合、Zb2は、炭素数が10~26であり、ポリアルキレングリコールから両末端の水酸基を除いた構造を有するアルキレン基であることが好ましく、炭素数が10~26であり、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールから両末端の水酸基を除いた構造を有するアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が15~24であり、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールから両末端の水酸基を除いた構造を有するアルキレン基であることがより一層好ましい。上記組成物は、所望の波長範囲に、より急峻な吸収ピークを有する硬化物を得ることができるからである。
【0189】
上記式(B4)で表される脂肪族ジオール化合物のジグリシジルエーテル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル化物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメチロールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,9-ノナンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0190】
上記脂肪族エポキシ基含有モノマーは、代表的な脂肪族エポキシ基含有モノマーとして、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル;プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル等が挙げられる。さらに、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール、また、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
なお、脂肪族エポキシ樹脂は、脂肪族環および芳香族環を含まないものとすることができる。
【0191】
上記芳香族および脂肪族エポキシ基含有モノマーとしては市販品を使用することができ、具体例としては、例えば、特許第6103653号公報等に記載されるものを挙げることができる。
【0192】
上記エポキシ基含有モノマーの含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であればよいが、例えば、カチオン硬化性化合物100質量部中、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、より一層好ましくは20質量部以上である。上記含有量を上述の範囲内とすることで、製膜性および硬化性に優れた硬化物を得ることができる。
【0193】
[オキセタニル基含有モノマー]
オキセタニル基含有モノマーとしては、オキセタニル基を有し、かつエポキシ基を含まないものとすることができる。
このようなオキセタニル基含有モノマーの具体例としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、3-エチル-3-{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}オキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4-フルオロ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4-メトキシ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-テトラブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-トリブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、3,3’-(1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス-(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0194】
本発明において、オキセタニル基含有モノマーの好適な化合物としては、下記式(B5)で表される化合物(3-エチル-3-{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}オキセタン)を挙げることができる。
【0195】
【0196】
上記オキセタニル基含有モノマーの含有量は、所望の波長領域の光吸収性に優れた硬化物を得ることができる量であればよいが、カチオン硬化性化合物100質量部中、好ましくは1~100質量部、より好ましくは25~95質量部、より一層好ましくは50~90質量部、さらに好ましくは60~80質量部である。上記含有量を上述の範囲内とすることで、製膜性および硬化性に優れた硬化物を得ることが可能となる。
【0197】
上記カチオン硬化性化合物としては、チイラン化合物、チエタン化合物等のその他の化合物も用いることができる。
このようなカチオン硬化性化合物として用いることができる、その他の化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ならびに、ビニルエーテル化合物およびエチレン性不飽和化合物等のビニル化合物等については、特許第6103653号公報等に記載の内容と同様とすることができる。
【0198】
光重合開始剤としては、ラジカル重合性化合物に対しては光ラジカル重合開始剤、カチオン重合性化合物に対しては光カチオン重合開始剤等を使用することができる。波長変換部材の一般的な製造方法への適合性を考慮すると、光ラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。一方、硬化プロセスにおける酸素阻害を受けることなく硬化膜(波長変換膜形成用組成物の硬化物)を形成できる観点では、光カチオン重合性化合物を用いることが好ましい。
【0199】
光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
【0200】
分子開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。これら以外の分子開裂型の光ラジカル重合開始剤として、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンを併用してもよい。
【0201】
水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルスルフィドが挙げられる。分子開裂型の光ラジカル重合開始剤と水素引き抜き型の光ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
【0202】
光ラジカル重合開始剤は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、IGM resin社製のOmnirad(登録商標。以下同様。) TPO-H、Omnirad TPO-L、Omnirad 819等のアシルホスフィンオキサイド化合物;Omnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG等のアルキルフェノン系化合物;Omnirad MBF、「Omnirad 754」等の分子内水素引き抜き型化合物;BASFジャパン社製のIrgacure(登録商標。以下同様。) OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04、常州強力電子新材料社製のTR-PBG-304、TR-PBG-305、(株)ADEKA製のNCI-831、NCI-930等のオキシムエステル系化合物が挙げられる。
【0203】
オキシムエステル系化合物としてはこれらの他に、例えば、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、国際公開第2012/45736号に記載の化合物、国際公開第2015/36910号に記載の化合物、特開2006-36750号公報に記載の化合物、特開2008-179611号公報に記載の化合物、国際公開第2009/131189号に記載の化合物、特表2012-526185号公報に記載の化合物、特表2012-519191号公報に記載の化合物、国際公開第2006/18973号に記載の化合物、国際公開第2008/78678号に記載の化合物、特開2011-132215号公報に記載の化合物等のオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0204】
光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤を用いる場合には、連鎖移動剤を組み合わせて用いてもよい。連鎖移動剤を用いることで、光ラジカル反応の反応率を高めることができる。
【0205】
連鎖移動剤は、高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物(例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール類、2-メルカプトベンズチアゾール類、2-メルカプトベンズオキサゾール類、3-メルカプトトリアゾール類、5-メルカプトテトラゾール類等)を好ましく用いることができ、多官能チオール化合物が特に好ましい。多官能チオールとしては、チオール(SH)基を2個以上有する化合物であればよい。多官能チオール化合物の例としては、エチレングリコールビスチオプロピオネート(EGTP)、ブタンジオールビスチオプロピオネート(BDTP)、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(TMTP)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、カレンズ(登録商標、以下同様)MT BD1、カレンズMT PE1、カレンズMT NR1(以上、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0206】
光カチオン重合開始剤としては、オニウム塩化合物、メタロセン錯体化合物、鉄アレーン錯体化合物、ジスルホン系化合物、スルホン酸誘導体化合物、トリアジン系化合物、アセトフェノン誘導体化合物、ジアゾメタン系化合物等が挙げられる。
【0207】
オニウム塩化合物としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等が挙げられる。その具体例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート等のポリアリールスルホニウム塩;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、P-ノニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のポリアリールヨードニウム塩等が挙げられる。
【0208】
本発明における好ましいスルホニウム塩の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0209】
【0210】
メタロセン錯体化合物としては、(η5またはη6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0211】
鉄アレーン錯体化合物としては、ビス(η5-シクロペンタジエニル)(η6-イソプロピルベンゼン)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0212】
ジスルホン系化合物としては、ジフェニルジスルホン等の芳香族ジスルホン化合物;N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロ-n-ブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)-2-アルキル-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)-3-アルキル-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)-4-アルキル-1,8-ナフタルイミド等のスルホンイミド化合物およびその誘導体等が挙げられる。これらの中でも、スルホンイミド化合物およびその誘導体が好ましく、N-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミドおよびその誘導体がより好ましい。
【0213】
スルホン酸誘導体化合物としては、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(4-メチルフェニルスルホニル)メタン、ビス(2-ナフチルスルホニル)メタン、2,2-ビス(フェニルスルホニル)プロパン、2,2-ビス(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン、2,2-ビス(2-ナフチルスルホニル)プロパン、2-メチル-2-(p-トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2-シクロヘキシルカルボニル)-2-(p-トルエンスルホニル)プロパン、2,4-ジメチル-2-(p-トルエンスルホニル)ペンタン-3-オン等が挙げられる。
【0214】
トリアジン系化合物としては、1-メトキシ-4-(3,5-ジ(トリクロロメチル)トリアジニル)ベンゼン、1,2-メチレンジオキシ-4-(3,5-ジ(トリクロロメチル)トリアジニル)ベンゼン、1-メトキシ-4-(3,5-ジ(トリクロロメチル)トリアジニル)ナフタレン等のハロアルキルトリアジニルアレーン;1-メトキシ-4-[2-(3,5-ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼン、1,2-ジメトキシ-4-[2-(3,5-ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼン、1-メトキシ-2-[2-(3,5-ジトリクロロメチルトリアジニル)エテニル]ベンゼン等のハロアルキルトリアジニルアルケニルアレーン等が挙げられる。
【0215】
アセトフェノン誘導体化合物としては、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0216】
ジアゾメタン系化合物としては、ビス(シクロヘキシルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(t-ブチルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルフォニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0217】
光カチオン重合開始剤は、市販品として入手することもできる。そのような市販品としては、サンアプロ(株)製のCPI-100P、CPI-310FG、IGM resin社製のOmnicat(登録商標。以下同様。) 270、BASFジャパン社製のIrgacure 290等のスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤;ADEKA社製のアデカアークルズSP-606等の芳香族スルホニウム塩系光カチオン重合開始剤;IGM resin社製のOmnicat 250等のヨードニウム塩系光カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0218】
上記光重合開始剤の含有量は、組成物の硬化性の観点から、重合性モノマー100質量%に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がより一層好ましい。また、その含有量の上限は、製膜性および硬化膜の透明性、耐熱性、耐光性の観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がより一層好ましい。
【0219】
重合性モノマーと光重合開始剤とを配合する場合、さらに、アルカリ可溶性樹脂を配合してもよい。本発明の波長変換膜形成用組成物に重合性モノマーと光重合開始剤とアルカリ可溶性樹脂を配合することにより、レジスト膜形成用の組成物として使用することができるようになる。
【0220】
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリ可溶性基を有する樹脂である。アルカリ可溶性基の具体例としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、イミド基、スルホニル基、リン酸、ボロン酸基、活性メチレン基等が挙げられる。
【0221】
活性メチレン基とは、メチレン基(-CH2-)のうち、隣接位置にカルボニル基を持ち、求核試薬に対する反応性を持つものをいう。
【0222】
活性メチレン基としては下記式(b1)で表される基がより好ましい。
【0223】
【化30】
(式中、R
bは、アルキル基、アルコキシ基またはフェニル基を表し、破線は結合手を表す。)
【0224】
上記式(b1)において、Rbが表すアルキル基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基が挙げられ、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。そのようなアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基およびn-プロピル基が好ましい。
【0225】
上記式(b1)において、Rbが表すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1~20のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1~5のアルコキシ基が好ましい。そのようなアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基およびn-プロポキシ基等が好ましい。
【0226】
上記式(b1)で表される基の具体例としては、下記式(b1-1)~(b1-5)で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、構造式中、破線は結合手を表す。
【0227】
【0228】
上記アルカリ可溶性基の中でも、フェノール性ヒドロキシ基およびカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を有し、かつ、数平均分子量が2,000~50,000であるアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0229】
上記のとおり、上記アルカリ可溶性樹脂は、数平均分子量が2,000~50,000の範囲内にあるものが好適であるが、数平均分子量が50,000以下であると、現像残渣が発生しにくくなり、要求される感度が得られる。一方、数平均分子量が2,000以上であると、現像の際、露光部の膜減りが発生しにくく、十分な硬化性を得ることができる。
【0230】
上記アルカリ可溶性樹脂は、上記の構造を有していればよく、樹脂を構成する高分子の主鎖の骨格および側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0231】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、あるいはポリイミド前駆体、ポリイミド、またはポリエステル等を挙げることができる。
【0232】
また、本発明においては、複数種のモノマーを重合して得られる共重合体からなるアルカリ可溶性樹脂を用いることもできる。さらに、アルカリ可溶性樹脂は、複数種のアルカリ可溶性樹脂のブレンド物であってもよい。
【0233】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、アクリル系樹脂であるアクリル重合体を用いることができる。本発明においてアクリル重合体とは、不飽和二重結合基を持つモノマーの重合反応により不飽和二重結合基部分が反応することで得られる樹脂を指す。
アルカリ可溶性アクリル重合体としては、アルカリ可溶性を発現するモノマー、すなわち前述のアルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも1種を有するモノマーと、これらのモノマーと共重合可能なモノマーの群から選ばれる少なくとも1種のモノマーとを、必須の構成単位として形成された共重合体が挙げられる。上記アルカリ可溶性樹脂の数平均分子量は、2,000~50,000が好ましい。数平均分子量が50,000以下であると、残渣が生じにくい。
【0234】
上記の「アルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも1種を有するモノマー」には、カルボキシ基を有するモノマー、フェノール性ヒドロキシ基およびイミド基を有するモノマーが含まれる。これらのモノマーはカルボキシ基、またはフェノール性ヒドロキシ基を1個有するものに限らず、複数個有するものでもよい。
【0235】
以下、上記モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものでない。
カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ-(2-(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ-(2-(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N-(カルボキシフェニル)マレイミド、N-(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N-(カルボキシフェニル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0236】
フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、ヒドロキシスチレン、N-(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N-(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N-(ヒドロキシフェニル)マレイミド、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられる。
【0237】
イミド基を有するモノマーとしては、マレイミド等が挙げられる。
【0238】
上記アルカリ可溶性アクリル重合体の製造において、アルカリ可溶性基と不飽和二重結合基を有するモノマーとの比率は、アルカリ可溶性アクリル重合体の製造に用いる全てのモノマーのうち、好ましくは5~90モル%、より好ましくは10~60モル%、最も好ましくは10~40モル%である。アルカリ可溶性基と不飽和二重結合基を有するモノマーの比率が10モル%以上であると、十分なアルカリ可溶性が得られる。
【0239】
上記アルカリ可溶性アクリル重合体は、硬化後のパターン形状をより安定化させるという点から、さらにヒドロキシアルキル基と不飽和二重結合基とを有するモノマーを共重合させてもよい。
【0240】
ヒドロキシアルキル基と不飽和二重結合基とを有するモノマーの具体例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート、5-アクリロイルオキシ-6-ヒドロキシノルボルネン-2-カルボキシリック-6-ラクトン等が挙げられる。
【0241】
上記アルカリ可溶性アクリル重合体の製造におけるヒドロキシアルキル基と不飽和二重結合基とを有するモノマーの比率は、好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~50質量%、より一層好ましくは20~40質量%である。ヒドロキシアルキル基と不飽和二重結合基とを有するモノマーの比率が10質量%以上であると、共重合体のパターン形状の安定化効果が得られる。その比率が60質量%以下であると、アルカリ可溶性基の含有量が適正な範囲となり、十分な現像性等の特性が得られる。
【0242】
上記アルカリ可溶性アクリル重合体は、共重合体のTgを上げるという点から、さらにN置換マレイミド化合物を共重合させてもよい。
【0243】
N置換マレイミド化合物の具体例としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。透明性の観点から芳香環を有しないものが好ましく、現像性、透明性、耐熱性の点から脂環骨格を有するものがより好ましく、シクロヘキシルマレイミドがより一層好ましい。
【0244】
上記アルカリ可溶性アクリル重合体の製造におけるN-置換マレイミドの比率は、好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~50質量%、より一層好ましくは20~40質量%である。N-置換マレイミドの比率が10質量%以上であると、共重合体のTgが高くなることから最終的に得られる波長変換膜のTgも高くなり、十分な耐熱性、耐光性が得られる。その比率が60質量%以下であると、十分な透明性が得られる。
【0245】
また、本発明においては、上記アルカリ可溶性アクリル重合体は、上述のモノマー以外のモノマー(以下、その他モノマーと称す。)を構成単位として含む共重合体であってもよい。その他モノマーは、具体的には、上記カルボキシ基を有するモノマーおよびフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種と共重合可能なものであればよく、アルカリ可溶性アクリル重合体の特性を損ねない限り、特に限定されるものでない。そのようなモノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、スチレン化合物およびビニル化合物等が挙げられる。
以下、当該その他モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0246】
上記アクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-アミノエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、カプロラクトン2-(アクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0247】
上記メタクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-アミノメチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、γ-ブチロラクトンメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート等が挙げられる。
【0248】
上記アクリルアミド化合物の具体例としては、N-メチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0249】
上記ビニル化合物の具体例としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,7-オクタジエンモノエポキサイド等が挙げられる。
【0250】
上記スチレン化合物としては、ヒドロキシ基を有しないスチレンが挙げられる。その具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0251】
上記アルカリ可溶性アクリル重合体の製造において、上記その他モノマーの比率は80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以下であり、より一層好ましくは20質量%以下である。その他モノマーの比率が80質量%以下であると、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0252】
上記アルカリ可溶性アクリル重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、熱または酸の作用によりカルボン酸、および熱または酸の作用によりフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも1種を有するモノマー;ヒドロキシアルキル基を有するモノマー;所望により、N-アルコキシメチル基、N-ヒドロキシメチル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタン基、ビニル基およびブロックイソシアネート基等の架橋性基、ならびにN-アルコキシメチル基、N-ヒドロキシメチル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、ビニル基およびブロックイソシアネート基等の自己架橋性基から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマー;所望により、それ以外の共重合可能なモノマー;および所望により、重合開始剤等を共存させた溶媒中において、50~110℃の温度下で重合反応させることにより得られる。その際、用いられる溶媒は、アルカリ可溶性アクリル重合体を構成するモノマーおよびアルカリ可溶性アクリル重合体を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、以下の溶媒が挙げられる。
【0253】
上記反応に用いられる溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ブタノン、3-メチル-2-ペンタノン、2-ペンタノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル等が、塗膜性が良好で安全性が高いという観点より好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0254】
このようにして得られるアルカリ可溶性アクリル重合体は、通常、溶媒に溶解した溶液の状態である。
【0255】
また、上記のようにして得られた特定共重合体の溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物をろ取・洗浄した後、常圧または減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、特定共重合体の粉体とすることができる。このような操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製された特定共重合体の粉体が得られる。一度の操作で十分に精製できない場合は、得られた粉体を溶媒に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えばよい。
本発明においては、上記特定共重合体の粉体をそのまま用いてもよく、あるいはその粉体を適宜な溶媒、例えば、上述した重合反応に用いられる溶媒に再溶解して溶液の状態として用いてもよい。
【0256】
また、上記アルカリ可溶性樹脂としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、一部イミド化したポリアミド酸等のポリイミド前駆体、カルボン酸基含有ポリイミド等のポリイミドを用いることもでき、それらはアルカリ可溶性であれば特にその種類を限定されずに用いることができる。
【0257】
ポリイミド前駆体である上記ポリアミド酸は、一般的に(a)テトラカルボン酸二無水物と(b)ジアミン化合物とを重縮合して得ることができる。
【0258】
上記(a)テトラカルボン酸二無水物は特に限定はなく、具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物のような脂環式テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物のような脂肪族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0259】
また、上記(b)ジアミン化合物も特に限定されることはなく、具体例として、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、4,6-ジアミノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ジアミノ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3,5-ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3,5-ジカルボキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシ-5,5’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシ-5,5’-ジメトキシビフェニル、1,4-ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン;
2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、4,6-ジアミノレゾルシノール、2,5-ジアミノハイドロキノン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3,5-ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシ-5,5’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシ-5,5’-ジメトキシビフェニル、1,4-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等のフェノール性ヒドロキシ基を有するジアミン化合物;
1,3-ジアミノ-4-メルカプトベンゼン、1,3-ジアミノ-5-メルカプトベンゼン、1,4-ジアミノ-2-メルカプトベンゼン、ビス(4-アミノ-3-メルカプトフェニル)エーテル、2,2-ビス(3-アミノ-4-メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン等チオフェノール基を有するジアミン化合物、1,3-ジアミノベンゼン-4-スルホン酸、1,3-ジアミノベンゼン-5-スルホン酸、1,4-ジアミノベンゼン-2-スルホン酸、ビス(4-アミノベンゼン-3-スルホン酸)エーテル、4,4’-ジアミノビフェニル-3,3’-ジスルホン酸、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル-6,6’-ジスルホン酸等のスルホン酸基を有するジアミン化合物が挙げられる。また、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-メチレン-ビス(2,6-エチルアニリン)、4,4’-メチレン-ビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレン-ビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、o-トリジン、m-トリジン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-トルイル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン等のジアミン化合物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0260】
上記ポリアミド酸が(a)テトラカルボン酸二無水物と(b)ジアミン化合物から製造される場合、両化合物の配合比、すなわち(b)ジアミン化合物の総モル数/(a)テトラカルボン酸二無水物の総モル数は0.7~1.2であることが望ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1に近いほど生成するポリアミド酸の重合度は大きくなり分子量が増加する。
【0261】
また、ジアミン化合物を過剰に用いて重合した際、残存するポリアミド酸の末端アミノ基に対してカルボン酸無水物を反応させ末端アミノ基を保護することもできる。
このようなカルボン酸無水物の例としてはフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、無水マレイン酸、ナフタル酸無水物、水素化フタル酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸無水物等を挙げることができる。
【0262】
ポリアミド酸の製造において、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応の反応温度は、通常-20~150℃、好ましくは-5~100℃の任意の温度を選択することができる。高分子量のポリアミド酸を得るには、反応温度5~40℃、反応時間1~48時間の範囲にて適宜選択する。低分子量で保存安定性の高く部分的にイミド化されたポリアミド酸を得るには反応温度40~90℃、反応時間10時間以上から選択することがより好ましい。
また、末端アミノ基を酸無水物で保護する場合の反応温度は-20~150℃、好ましくは-5~100℃の任意の温度を選択することができる。
【0263】
ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物の反応は溶媒中で行うことができる。その際に使用できる溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン等が挙げられ。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。さらに、ポリアミド酸を溶解しない溶媒であっても、重合反応により生成したポリアミド酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
【0264】
このようにして得られたポリアミド酸を含む溶液は、ネガ型感光性樹脂組成物の調製にそのまま用いることができる。また、上記ポリアミド酸は、水、メタノール、エタノール等の貧溶媒に沈殿単離させて回収して用いることもできる。
【0265】
また、アルカリ可溶性樹脂としては、任意のポリイミドも用いることができる。本発明に用いるポリイミドとは上記ポリアミド酸などのポリイミド前駆体を化学的または熱的に50%以上イミド化させたものである。
【0266】
上記ポリイミドは、アルカリ溶解性を与えるためにカルボキシ基およびフェノール性ヒドロキシ基から選ばれる基を有することが好ましい。
ポリイミドへのカルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基の導入方法としては、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーを用いる方法、カルボキシ基またはフェノール性ヒドロキシ基を有する酸無水物でアミン末端を封止する方法、および、ポリアミド酸等のポリイミド前駆体をイミド化する際にイミド化率を99%以下にする方法等が挙げられる。
【0267】
このようなポリイミドは上述のポリアミド酸等のポリイミド前駆体を合成した後、化学イミド化もしくは熱イミド化を行うことで得ることができる。
化学イミド化の方法としては、一般的にポリイミド前駆体溶液に過剰の無水酢酸およびピリジンを添加し室温から100℃で反応させる方法が用いられる。また、熱イミド化の方法としては、一般的にポリイミド前駆体溶液を温度180~250℃で脱水しながら過熱する方法が用いられる。
【0268】
また、上記アルカリ可溶性樹脂としては、さらにフェノールノボラック樹脂を用いることができる。
【0269】
また、上記アルカリ可溶性樹脂としては、ポリエステルポリカルボン酸を用いることもできる。ポリエステルポリカルボン酸は、酸二無水物とジオールから、国際公開第2009/051186号に記載の方法により得ることができる。
酸二無水物としては、上記(a)テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
ジオールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ベンゼン-1,3-ジメタノール、ベンゼン-1,4-ジメタノール等の芳香族ジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール等が挙げられる。
【0270】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、自己架橋性基をさらに有するか、またはヒドロキシ基、カルボキシ基、アミド基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と反応する基(以下、架橋性基ともいう)をさらに有する共重合体であってもよい。
【0271】
上記自己架橋性基の具体例としては、N-アルコキシメチル基、N-ヒドロキシメチル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、ブロックイソシアネート基が挙げられる。
【0272】
上記架橋性基の具体例としては、N-アルコキシメチル基、N-ヒドロキシメチル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、ブロックイソシアネート基等が挙げられる。
【0273】
かかる自己架橋性基または架橋性基をアルカリ可溶性樹脂に含有させる場合、その含有量は、アルカリ可溶性樹脂における繰り返し単位1単位あたり、0.1~0.9個であることが好ましく、現像性と耐溶媒性の観点から、0.1~0.8個であることがより好ましい。
【0274】
上記アルカリ可溶性樹脂が、さらに上記架橋性基および自己架橋性基から選ばれる少なくとも1種を有する繰り返し単位を有する場合、例えばアルカリ可溶性アクリル重合体の場合には、ラジカル重合性を有し、さらに上記架橋性基および上記自己架橋性基から選ばれる少なくとも1種を有する不飽和化合物を共重合させればよい。
【0275】
ラジカル重合性を有し、さらにN-アルコキシメチル基を有する不飽和化合物の具体例としては、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0276】
ラジカル重合性を有し、さらにヒドロキシメチルアミド基を有するモノマーの具体例としては、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0277】
ラジカル重合性を有し、さらにアルコキシシリル基を有するモノマーの具体例としては、3-アクリロイルオキシトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0278】
ラジカル重合性を有し、さらにエポキシ基を有する不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、α-n-プロピルアクリル酸グリシジル、α-n-ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸-3,4-エポキシブチル、メタクリル酸-3,4-エポキシブチル、アクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、メタクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、α-エチルアクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸-6,7-エポキシヘプチル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロへキシルメタクリレートが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0279】
ラジカル重合性を有し、さらにオキセタニル基を有する不飽和化合物としては、オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。このようなモノマーの具体例としては、3-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-トリフロロメチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-トリフロロメチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)-2-フェニル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-2-フェニル-オキセタン、2-(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2-(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2-(メタクリロイルオキシメチル)-4-トリフロロメチルオキセタン、2-(アクリロイルオキシメチル)-4-トリフロロメチルオキセタン等が挙げられる。これらの中でも、3-(メタクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)-3-エチル-オキセタンが好ましい。
【0280】
ラジカル重合性を有し、さらにビニル基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
【0281】
ラジカル重合性を有し、さらにブロックイソシアネート基を有するモノマーの具体例としては、メタクリル酸2-(0-(1’-メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ)エチル、メタクリル酸2-(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ)エチル等が挙げられる。
【0282】
本発明のアルカリ可溶性樹脂において、ラジカル重合性を有し、上記架橋性基および上記自己架橋性基から選ばれる少なくとも1種の基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位の含有量は、アルカリ可溶性樹脂が有する全ての繰り返し単位中、好ましくは10~70質量%、より好ましくは20~60質量%である。この構成単位の含有量が10質量%以上であると、硬化膜の耐熱性や表面硬度が向上する。一方、この構成単位の含有量が70質量%以下であると、感放射線性樹脂組成物の保存安定性が向上する。
【0283】
本発明のアルカリ可溶性樹脂を前述の重合性モノマーと併用する場合、アルカリ可溶性樹脂中に重合性モノマーと反応可能な置換基を有することが好ましい。重合性モノマーと反応可能な置換基としては、エチレン性不飽和基等のラジカル重合性基;エポキシ基、オキセタニル基等のカチオン重合性基等が挙げられる。ここで、ラジカル重合性基とはラジカルの存在下で重合反応が開始され連鎖的に反応が進行する基、カチオン重合性基とはカチオンの存在下で重合反応が開始され連鎖的に反応が進行する基を示す。
【0284】
重合性モノマーと反応可能な置換基を有するアルカリ可溶性樹脂を得る方法は安定した特性の樹脂が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、重合性モノマーと反応可能な置換基を有するモノマーを共重合する方法、重合性モノマーと反応可能な置換基を持たないアルカリ可溶性樹脂を合成し、次いで熱反応により重合性モノマーと反応可能な置換基を持つ化合物を付加する方法が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂がアルカリ可溶性アクリル重合体であり、エチレン性不飽和基を組み込む場合には前者の方法を行うと重合過程で重合性モノマーと反応可能な置換基が反応しゲル化が進行するおそれがあるため、後者の方法での合成が好ましい。
【0285】
アルカリ可溶性樹脂にエチレン性不飽和基を組み込む方法として、具体的には、例えば、ラジカル重合性を有し、さらにカルボキシ基またはフェノール系水酸基を有するモノマーを用いて合成したアルカリ可溶性アクリル重合体に対し、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルなどを付加する方法が挙げられる。このとき、樹脂中のカルボキシ基またはフェノール系水酸基に対して付加するモノマーのモル比を小さくすることでカルボキシ基またはフェノール系水酸基に由来する樹脂のアルカリ可溶性を維持したまま重合性モノマーと反応可能な置換基を導入することができる。
また別の例として、例えば、ラジカル重合性を有し、さらに熱反応基を有するモノマーを共重合して得られたアルカリ可溶性アクリル重合体に対し、樹脂中の熱反応性基との熱反応が可能な重合性モノマーと反応可能な置換基を有するモノマーを付加する方法が挙げられる。具体的には、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルなどを共重合したアルカリ可溶性アクリル重合体に対し、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチルなどを付加する方法が挙げられる。
【0286】
アルカリ可溶性樹脂にカチオン重合性基を組み込む方法としては、例えば、ラジカル重合性を有し、さらに上記カチオン重合性基から選ばれる少なくとも1種を有する不飽和化合物を有する化合物を用い、ラジカル重合によりアルカリ可溶性樹脂を合成する方法等が挙げられる。
【0287】
本発明のアルカリ可溶性樹脂において、重合性モノマーと反応可能な置換基を有する繰り返し単位の割合はアルカリ可溶性樹脂が有する全ての繰り返し単位中、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~50質量%であり、さらに好ましくは10~40質量%である。この構成単位の含有量が5質量%以上であると、硬化膜の耐熱性や耐薬品性が向上する。一方、この構成単位の含有量が60質量%以下であると、感放射線性樹脂組成物のパターン形成性が向上する。
【0288】
また、本発明においては、上記アルカリ可溶性樹脂は、複数種のアルカリ可溶性樹脂の混合物であってもよい。
【0289】
上記アルカリ可溶性樹脂を使用する場合、その含有量は、製膜性の観点から、上記重合性モノマーとアルカリ可溶性樹脂との合計100質量%に対し、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより一層好ましい。また、その含有量の上限は、パターン形成性の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がより一層好ましい。
【0290】
上記(B)バインダーの含有量は、固形分中70~99.9質量%が好ましく、85~99.9質量%がより好ましく、90~99質量%がより一層好ましい。
【0291】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、さらに(C)光散乱粒子を含んでもよい。上記光散乱粒子は、波長変換膜に入ってきた光を膜中で散乱させることで、実質的に波長変換膜中での光路長が伸びて光吸収率が向上し、波長変換膜の界面で反射されて波長変換膜内に戻ってきた光を再度散乱することで、発光効率を向上させる機能を有する。
【0292】
上記光散乱粒子は、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよい。このうち、粒子の散乱性能を高める点から、屈折率が大きい無機微粒子が好ましい。
【0293】
上記光散乱粒子は、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよい。このうち、粒子の散乱性能を高める点から、屈折率が大きい無機微粒子が好ましい。
【0294】
上記有機微粒子としては、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル-スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、スチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズおよびベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒドビーズ等が挙げられる。
【0295】
上記無機微粒子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、インジウム、亜鉛、アンチモン、セリウム、ニオブ、タングステン等の中から選ばれる少なくとも1つの酸化物からなる無機酸化物粒子が挙げられる。上記無機酸化物粒子として具体的には、SiO2、ZrO2、TiO2(以下、酸化チタン粒子ということもある)、BaTiO3、In2O3、ZnO、Sb2O3、ITO、CeO2、Nb2O5およびWO3等が挙げられる。これらのうち、TiO2、BaTiO3、ZrO2、CeO2およびNb2O5が好ましく、TiO2がより好ましい。また、TiO2の中でも、アナターゼ型よりルチル型のほうが、触媒活性が低いため膜の耐久性が高くなり、さらに屈折率も高いことから好ましい。
【0296】
これらの粒子は、表面処理を施したものを用いてもよい。
表面処理を行う場合、表面処理の具体的な材料としては、酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の異種無機酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸等の有機酸等が挙げられる。これら表面処理材は、1種を単独で用いても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0297】
光散乱粒子の平均粒子径は、50nm超~200nm未満である。平均粒子径の下限は、波長変換効率の観点から、60nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましい。波長変換効率の観点に加えて、パターニング特性を考慮すると、i線(365nm)における全光線反射率が低いといった観点から、100nmを超える平均粒子径がより好ましい。平均粒子径の上限は、大きすぎると沈降しやすくなるため、組成物の保存安定性の観点から、190nm以下が好ましく、180nm以下がより好ましい。なお、光散乱粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察から求められる平均粒子径である。
【0298】
光散乱粒子は、市販品を用いてもよく、例えば、酸化チタン粒子の具体例としては、PT-401M(ルチル型、平均粒子径70nm)、PT-401L(ルチル型、平均粒子径130nm)、PT-501R(ルチル型、平均粒子径180nm)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、例示した光散乱粒子の平均粒子径は±10nmのバラツキがあり得る。
【0299】
上記(C)光散乱粒子の含有量は、波長変換効率と考慮すると、固形分中0.1~20質量%が好ましく、0.2~15質量%がより好ましく、0.3~10質量%がより一層好ましい。
【0300】
また、本発明の波長変換膜形成用組成物は、上記(A)および(B)成分の他に、必要に応じて(C)成分、光安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、高分子分散剤、難燃剤、透明化剤、紫外線吸収剤、架橋剤、充填剤等の公知の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0301】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましく、ノニオン性フッ素系界面活性剤がより好ましい。
その具体例としては、ネオス(株)製のフタージェントシリーズ、212M、215M、250、222F、FTX-218、DFX-18等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
界面活性剤を用いる場合、その配合量に特に制限はないが、波長変換膜形成用組成物の固形分中0.01~1質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0302】
高分子分散剤は、750以上の重量平均分子量を有し、かつ、光散乱粒子に対して親和性を有する官能基を有する高分子化合物である。高分子分散剤は、光散乱粒子を分散させる機能を有する。高分子分散剤は、光散乱粒子に対し親和性を有する官能基を介して光散乱粒子に吸着し、高分子分散剤同士の静電反発および/または立体反発により、光散乱粒子を組成物中に分散させる。高分子分散剤は、光散乱粒子の表面と結合して光散乱粒子に吸着していることが好ましいが、波長変換膜形成用組成物中に遊離していてもよい。
【0303】
光散乱粒子に対して親和性を有する官能基としては、酸性官能基、塩基性官能基および非イオン性官能基が挙げられる。酸性官能基は解離性のプロトンを有しており、アミン、水酸化物イオン等の塩基により中和されていてもよく、塩基性官能基は有機酸、無機酸等の酸により中和されていてもよい。
【0304】
酸性官能基としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、ホスホン酸基(-PO(OH)2)、リン酸基(-OPO(OH)2)、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)等が挙げられる。
【0305】
塩基性官能基としては、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、アンモニウム基およびイミノ基、ならびに、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾールおよびトリアゾール等の含窒素ヘテロ環基等が挙げられる。
【0306】
非イオン性官能基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、チオエーテル基、スルフィニル基(-SO-)、スルホニル基(-SO2-)、カルボニル基、ホルミル基、エステル基、炭酸エステル基、アミド基、カルバモイル基、ウレイド基、チオアミド基、チオウレイド基、スルファモイル基、シアノ基、アルケニル基、アルキニル基、ホスフィンオキサイド基、ホスフィンスルフィド基等が挙げられる。
【0307】
高分子分散剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。高分子分散剤の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリイミド等が挙げられる。
【0308】
上記高分子分散剤としては、市販品を使用することも可能であり、例えば、BYK社製のDISPERBYKシリーズおよびBYKシリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ、ルーブリゾール社製のソルスパースシリーズ、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーPBシリーズ、エボニック社製のTEGOシリーズ、ならびに楠本化成(株)製のディスパロンシリーズ等を使用することができる。
【0309】
上記市販品の具体例としては、BYK社製のDISPERBYK-130、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-166、DISPERBYK-167、DISPERBYK-168、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-174、DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、DISPERBYK-183、DISPERBYK-184、DISPERBYK-185、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2008、DISPERBYK-2009、DISPERBYK-2020、DISPERBYK-2022、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2070、DISPERBYK-2096、DISPERBYK-2150、DISPERBYK-2155、DISPERBYK-2163、DISPERBYK-2164;
BASF社製のEFKA4010、EFKA4015、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4061、EFKA4080、EFKA4300、EFKA4310、EFKA4320、EFKA4330、EFKA4340、EFKA4560、EFKA4585、EFKA5207、EFKA1501、EFKA1502、EFKA1503およびEFKA PX-4701;
ルーブリゾール社製のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース11200、ソルスパース13940、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース32600、ソルスパース33000、ソルスパース34750、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース37500、ソルスパース38500、ソルスパース39000、ソルスパース41000、ソルスパース54000、ソルスパース71000およびソルスパース76500;
味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB881、PN411およびPA111;
エボニック社製のTEGO Dispers650、TEGO Dispers660C、TEGO Dispers662C、TEGO Dispers670、TEGO Dispers685、TEGO Dispers700、TEGO Dispers710およびTEGO Dispers760W;ならびに
楠本化成(株)製のディスパロンAQ-320、ディスパロンAQ-330、ディスパロンAQ-340、ディスパロンAQ-360、ディスパロンAQ-380等が挙げられる。
【0310】
高分子分散剤を用いる場合、その配合量に特に制限はないが、光散乱粒子に対して1~100質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
【0311】
さらに、本発明の波長変換膜形成用組成物は、必要に応じて溶媒を含んでいてもよい。その具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族またはハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ノルマルヘキシル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、マロン酸ジイソプロピル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、2-ベンゾオキシエタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、3-オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等のグリコール系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0312】
また、上記式(1)で表される化合物は、溶媒和物として存在していてもよい。なお、当該溶媒和物としては、上記式(1)で表される化合物と溶媒との溶媒和物である限り特に限定されない。溶媒和物を形成する場合の溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0313】
波長変換膜形成用組成物が溶媒を含む場合、波長変換膜形成用組成物の固形分濃度は、目的とする波長変換膜の厚みや塗布方法等に応じて変動するものであるため一概には規定できないが、通常10~70質量%であり、好ましくは15~60質量%である。
【0314】
上記波長変換膜形成用組成物の25℃の粘度の上限は、10,000mPa・s以下であり、1,000mPa・s以下が好ましい。下限は、保存安定性を考慮すると、5mPa・s以上が好ましく、10mPa・s以上がより好ましい。
なお、本発明において、粘度とはEMS粘度計による測定値を意味する。
【0315】
本発明の波長変換膜形成用組成物は、上述した(A)および(B)成分、必要に応じて用いられる(C)成分、界面活性剤等のその他の添加剤、および溶媒を任意の順序で混合して調製できる。
【0316】
上述した本発明の波長変換膜形成用組成物を、例えば基材上に塗布し、必要に応じて加熱等により溶媒を蒸発させ、さらに必要に応じて活性エネルギー線(例えば紫外光)の照射を行うことで波長変換膜を得ることができる。
塗布方法としては、例えば、リバースロールコーター、ブレードコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、キスコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーター、インクジェット等による方法が挙げられる。
【0317】
加熱は、例えば、オーブンやホットプレート等の一般的な加熱装置を用いて行うことができる。
加熱条件は、膜を形成できる限り特に制限はないが、60~200℃で2分~2時間が好ましく、80~200℃で15分~1時間がより好ましい。なお、段階的に加熱硬化させてもよい。
【0318】
紫外光の照射は、膜を形成できる限り特に制限はないが、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LED等の光源を用い、また必要に応じてバンドパスフィルターを組み合わせて目的とする露光波長以外の光を除去した光を照射することができる。照射する光の波長は、200~440nmが好ましく、300~400nmの波長の光を含むことが特に好ましい。露光量は、10~4,000mJ/cm2が好ましい。
【0319】
前述の加熱工程と紫外光の露光工程は任意の順番で組み合わせて行ってもよい。例えば、加熱を行ってから紫外光の照射を行ってもよく、紫外光の照射を行ってから加熱を行ってもよく、加熱を行ってから紫外光の照射を行い、その後さらに加熱を行ってもよい。
【0320】
波長変換膜の厚さは、特に制限はないが、通常1~1,000μm、好ましくは3~500μm、より好ましくは5~100μmである。
波長変換膜のヘイズは、特に制限されるものではないが、入射光を膜内で散乱させることにより蛍光体が吸収することのできる光の量を多くする観点から、好ましくは18%以上、より好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。ヘイズ値の上限は、特に限定されないが、通常95%程度である。なお、本発明においてヘイズ値は、ASTM D1003-61に従って測定される値である。また、本発明において、上記ヘイズ値の測定条件としては、例えば、酸化チタン粒子の含有量を3質量%とした組成物から形成される膜厚10μmの膜について測定する条件が挙げられる。
【0321】
上記基材としては、この種の膜を形成するための下地基材として用いられているものから適宜選択して用いればよいが、400~800nmの可視領域の光の透過率が50%以上のガラス基板やポリマー板が好ましい。
ガラスの具体例としては、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。
ポリマーの具体例としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート,ポリエーテルサルファイド、ポリスルフォン等が挙げられる。
【0322】
本発明では、アルカリ可溶性樹脂、重合性モノマーおよび光重合開始剤を含む組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)を用いて塗膜を形成した場合、得られた塗膜上に、所定のパターンを有するマスクを装着して紫外線等の光を照射し、アルカリ現像液で現像することで未露光部が洗い出され、残存するパターン状の膜を必要に応じて80~140℃で0.5~10分間の加熱を行うことで端面のシャープなレリーフパターンが得られる。
【0323】
上記アルカリ現像液としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリン等の水酸化第四級アンモニウムの水溶液;エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液等が挙げられる。さらに、これらの現像液には、現像液用として公知の界面活性剤等を加えることもできる。
【0324】
上記の中、水酸化テトラエチルアンモニウム0.1~2.58質量%水溶液は、フォトレジストの現像液として一般に使用されており、本発明の組成物においても、このアルカリ現像液を用いて、膨潤などの問題をひき起こすことなく良好に現像することができる。
【0325】
また、現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法等のいずれの方法も用いることができる。その際の現像時間は、通常、15~180秒間である。
【0326】
現像後、感光性樹脂膜に対して流水による洗浄を行い、続いて圧縮空気もしくは圧縮窒素を用いてまたはスピニングにより風乾することにより、基板上の水分が除去され、パターン形成された膜が得られる。上記において、洗浄時間は、通常、20~120秒間程度である。
【0327】
続いて、得られたパターン形成膜に対して、熱硬化のためにポストベークを行うことにより、耐熱性、透明性、平坦化性、低吸水性、耐薬品性等に優れ、良好なレリーフパターンを有する膜が得られる。上記パターン形成膜の加熱には、ホットプレート、オーブンなどを用いることができる。
【0328】
ポストベークの方法としては、一般に、温度140~270℃の範囲の中から選択された加熱温度にて、ホットプレート上の場合には5~30分間、オーブン中の場合には30~90分間処理するという方法が挙げられる。このような条件でポストベークすることにより、良好なパターン形状を有する硬化膜を得ることができる。
【0329】
本発明の組成物により得られる波長変換膜は、波長変換効率および耐久性に優れているため、マイクロLEDディスプレイ、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等のディスプレイや照明等の波長変換膜(色変換膜)として好適に用いることができる。
【実施例0330】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0331】
[分子量測定]
本実施例において重合体の分子量の測定は、装置として日本分光(株)製GPCシステムを用い、カラムとしてShodex(登録商標)KF-804Lおよび803Lを用い、下記の条件にて実施した。
カラムオーブン:40℃
流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
【0332】
本実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
・MMA:メチルメタクリレート
・MAA:メタクリル酸
・AIBN:α、α’-アゾビスイソブチロニトリル
・CPN:シクロペンタノン
[A成分:有機蛍光体]
・A1:下記、合成例13に記載の化合物(式K15、式(1-6)に対応)
・A2:下記、合成例4に記載の化合物(式K5、式(1-3)に対応)
・A3:下記、合成例7に記載の化合物(式K8、式(1-4)に対応)
・A4:下記、合成例11に記載の化合物(式K12、式(1-5)に対応)
【化32】
・A5:3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(クマリン6、東京化成工業(株)製)
[B成分:バインダー]
・B1:下記、合成例14に記載のアクリル重合体(アルカリ可溶性樹脂)
・B2:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、日本化薬(株)製、重合性モノマー)
・B3: ビスコート♯260(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、大阪有機化学工業(株)製)
・B4:OXE-02:Irgacure OXE02(BASF社製)
[C成分:光散乱粒子]
・C1:PT-401L(酸化チタン粒子、ルチル型、平均粒子径130nm、石原産業(株)製)
・C2:PT-501R(酸化チタン粒子、ルチル型、平均粒子径180nm、石原産業(株)製)
[D成分:粒子分散剤]
・D1:AQ-320(ポリエーテルリン酸エステル、楠本化成(株)製)
[E成分:界面活性剤]
・E1:フタージェントDFX-18(ネオス(株)製)
[S成分:溶媒]
・S1:CPN(東京化成工業(株)製)
【0333】
1H-NMRスペクトルは核磁気共鳴装置AVANCE III HD(Bruker)を用いて測定した。化学シフト値はppmで表記し、溶媒には重ジメチルスルホキシド、重クロロホルム、または重メタノールを用いた。1H-NMRスペクトルにおいては、溶媒の残存プロトン由来のシグナルを用い、内部標準としてジメチルスルホキシドをδ 2.50ppm、クロロホルムをδ 7.26ppm、またはメタノールをδ 3.31ppmに設定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)はシリカゲル60F-254(Merck)を0.25mm塗布したガラスプレートを用いて行った。シリカゲルクロマトグラフィーは、充填材としてシリカゲル60N球状中性(関東化学(株))を用いて行った。
【0334】
[合成例1]:4-(3-ブロモベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-N,N-ジフェニルアニリン(化合物K2)
【化33】
【0335】
化合物K1にカップリング反応を用いて4-ジフェニルアミノフェニル基を導入し、化合物K2を収率88%で得た。具体的には、以下のとおり合成を行った。
【0336】
N2ガス雰囲気下で、2,3-ジブロモベンゾ[b]チオフェン(化合物K1;5.00g,17.1mmol)、4-(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸(5.94g,20.5mmol)、炭酸ナトリウム(5.44g、51.3mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4;988mg,0.855mmol)を、1,4-ジオキサン(100mL)と水(50mL)の混合溶媒に溶解させた。これを90℃に昇温し、18時間撹拌した。冷水を加えた後、酢酸エチルを用いて3回抽出した。合わせた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物(展開溶媒ヘキサン/酢酸エチル=10/1;Rf=0.6)をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン→ヘキサン/クロロホルム=3/1)で精製し、化合物K2を黄色固体として収率88%(6.86g,15.0mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.84(d,JHH=8.0Hz,1H),7.79(d,JHH=8.0Hz,1H),7.65-7.63(m,2H),7.47-7.44(m,1H),7.39-7.36(m,1H),7.32-7.28(m,4H),7.18-7.16(m,4H),7.13-7.07(m,4H)
【0337】
[合成例2]:(2-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)(ベンゾ[b]チオフェン-3-イル)ビス(4-メトキシフェニル)メタノール(化合物K3)
【化34】
【0338】
合成例1で得た化合物K2にn-BuLi、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンを反応させ、化合物K3を収率25%で得た。具体的には、以下のとおり合成を行った。
【0339】
N2ガス雰囲気下で、1.56mol/Lのn-BuLiヘキサン溶液(8.43mL,13.1mmol)を-78℃へ冷却し、テトラヒドロフラン(150mL)に溶解させた4-(3-ブロモベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-N,N-ジフェニルアニリン(化合物K2;5.00g,10.9mmol)を滴下して、1時間撹拌した。テトラヒドロフラン(250mL)に溶解させた4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(3.17g,13.1mmol)を滴下後、室温に昇温して20時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物(展開溶媒ヘキサン/酢酸エチル=10/1;Rf=0.2)をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/クロロホルム=5/1→ヘキサン/クロロホルム=3/1)で精製し、化合物K3を褐色固体として収率25%(1.66g,2.68mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.76(d,JHH=8.0Hz,1H),7.31(d,JHH=8.0Hz,1H),7.28-7.22(m,4H),7.18-7.16(m,4H),7.11-7.02(m,8H),6.94-6.91(m,2H),6.76-6.72(m,6H),3.77(s,6H),3.10(s,1H)
【0340】
[合成例3]:10,10-ビス(4-メトキシフェニル)-N,N-ジフェニル-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-アミン(化合物K4)
【化35】
【0341】
合成例2で得た化合物K3に酢酸を用いて反応することで、化合物K4を収率19%で得た。具体的には、以下のとおり合成を行った。
【0342】
(2-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)(ベンゾ[b]チオフェン-3-イル)ビス(4-メトキシフェニル)メタノール(化合物K3;1.40g,2.26mmol)に酢酸(100mL)を加えて100℃へ昇温し、15時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物(展開溶媒ヘキサン/酢酸エチル=5/1;Rf=0.5)をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン→ヘキサン/酢酸エチル=10/1→ヘキサン/酢酸エチル=5/1)で精製し、化合物K4を黄色油状物として収率19%(255mg,0.424mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.85-7.83(m,1H),7.47-7.44(m,1H),7.34(d,JHH=8.0Hz,1H),7.30-7.25(m,1H),7.22-7.19(m,6H),7.13-7.10(m,4H),7.07-7.04(m,4H),7.00-6.95(m,3H),6.74-6.71(m,4H),3.74(s,6H)
【0343】
[合成例4]:2-(ジフェニルアミノ)-10,10-ビス(4-メトキシフェニル)-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン 5,5-ジオキシド(化合物K5)
【化36】
【0344】
合成例3で得た化合物K4を、m-CPBAを用いて酸化し、化合物K5を収率15%で得た。具体的には、以下のとおり合成を行った。
【0345】
10,10-ビス(4-メトキシフェニル)-N,N-ジフェニル-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-アミン(化合物K4;200mg,0.332mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解させた。そこへ、メタクロロ過安息香酸(m-CPBA(30質量%含水);328mg,1.33mmol)を0℃でゆっくり加えた。室温に戻し、6時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物(展開溶媒ヘキサン/酢酸エチル=3/1;Rf=0.3)をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン→ヘキサン/クロロホルム=1/1→ヘキサン/クロロホルム=1/2→クロロホルム)で精製し、上式K5で表される化合物A2を黄色固体として収率15%(32.0mg,0.0505mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.70-7.68(m,1H),7.47(d,JHH=8.5Hz,1H),7.37-7.31(m,2H),7.23-7.17(m,5H),7.14-7.11(m,4H),7.11-7.02(m,7H),6.97(dd,JHH=8.0Hz,2.0Hz,1H),6.79-6.76(m,4H),3.77(s,6H)
【0346】
[合成例5]:ビス(4-ブロモフェニル)(2-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾ[b]チオフェン-3-イル)メタノール(化合物K6)
【化37】
【0347】
合成例1で得た化合物K2にn-BuLi、4,4’-ジブロモベンゾフェノンを反応させ、化合物K6を収率57%で得た。具体的には、以下のとおり合成を行った。
【0348】
N2ガス雰囲気下で、1.56mol/Lのn-BuLiヘキサン溶液(1.54mL,2.41mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に滴下した。この溶液を-78℃へ冷却し、テトラヒドロフラン(5mL)に溶解させた4-(3-ブロモベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-N,N-ジフェニルアニリン(化合物K2;1.00g,2.19mmol)を滴下して1時間撹拌した。テトラヒドロフラン(5mL)に溶解させた4,4’-ジブロモベンゾフェノン(819mg,2.41mmol)を滴下後、室温に昇温して20時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物(展開溶媒ヘキサン/クロロホルム=3/1;Rf=0.2)をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/クロロホルム=5/1→ヘキサン/クロロホルム=3/1)で精製し、化合物K6を褐色固体として収率57%(896mg,1.25mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.78(d,JHH=8.0Hz,1H),7.32-7.26(m,10H),7.14-7.05(m,11H),6.86(d,JHH=8.0Hz,2H),6.73(d,JHH=8.0Hz,2H),3.24(s,1H)
【0349】
[合成例6]:10,10-ビス(4-ブロモフェニル)-N,N-ジフェニル-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-アミン(化合物K7)
【化38】
【0350】
合成例5で得た化合物K6にSc(OTf)3を用いて反応することで、化合物K7を収率75%で得た。具体的には、以下のとおり合成を行った。
【0351】
ビス(4-ブロモフェニル)(2-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾ[b]チオフェン-3-イル)メタノール(化合物K6;500mg,0.700mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解させた。そこへ、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)(Sc(OTf)3;822mg,1.68mmol)を0℃でゆっくり加えた。室温に戻し、48時間撹拌した。反応液(展開溶媒ヘキサン/クロロホルム=3/1;Rf=0.4)をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン→ヘキサン/酢酸エチル=10/1)で精製し、化合物K7を黄色固体として収率75%(369mg,0.528mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.85(d,JHH=8.0Hz,1H),7.38-7.35(m,2H),7.32(d,JHH=8.0Hz,4H),7.24-7.20(m,6H),7.16(s,1H),7.07-6.99(m,11H)
【0352】
[合成例7]:10,10-ビス(4-ブロモフェニル)-2-(ジフェニルアミノ)-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン 5,5-ジオキシド(化合物K8)
【化39】
【0353】
10,10-ビス(4-メトキシフェニル)-N,N-ジフェニル-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-アミン(化合物K4)の代わりに、合成例6で得た10,10-ビス(4-ブロモフェニル)-N,N-ジフェニル-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-アミン(化合物K7)を用いる以外は、合成例4と実質的に同様の反応で、上式K8で表される化合物A3を橙色固体として収率31%(64.0mg,0.0875mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 7.71(d,JHH=7.5Hz,1H),7.49(d,JHH=7.5Hz,1H),7.40-7.26(m,6H),7.24-7.22(m,4H),7.08-7.00(m,13H)
【0354】
[合成例8]:9-(4-(3-ブロモベンゾ[b]チオフェン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(化合物K9)
【化40】
【0355】
4-(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸の代わりに、4-(9-カルバゾイル)フェニルボロン酸を用いる以外は、合成例1と実質的に同様の反応で、化合物K9を白色固体として収率54%(1.55g,3.41mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 8.16(d,JHH=8.0Hz,2H),8.03-8.01(m,2H),7.92(d,JHH=8.0Hz,1H),7.86(d,JHH=8.0Hz,1H),7.72-7.69(m,2H),7.54-7.50(m,3H),7.46-7.43(m,3H),7.33-7.30(m,2H)
【0356】
[合成例9]:2-(4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ベンゾ[b]チオフェン-3-イル)ビス(3-(トリフルオロメチル)フェニル)メタノール(化合物K10)
【化41】
【0357】
4-(3-ブロモベンゾ[b]チオフェン-2-イル)-N,N-ジフェニルアニリン(化合物K2)の代わりに合成例8で得た9-(4-(3-ブロモベンゾ[b]チオフェン-2-イル)フェニル)-9H-カルバゾール(化合物K9)、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンの代わりに、ビス(3-(トリフルオロメチル)フェニル)メタノンを用いる以外は、合成例2と実質的に同様の反応で、化合物K10を黄色固体として収率50%(381mg,0.550mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 8.13(d,JHH=8.0Hz,2H),7.87(d,JHH=8.0Hz,1H),7.79(s,2H),7.47-7.34(m,11H),7.32-7.27(m,5H),7.24-7.19(m,3H),3.43(s,1H)
【0358】
[合成例10]:9-(10,10-ビス(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-イル)-9H-カルバゾール(化合物K11)
【化42】
【0359】
ビス(4-ブロモフェニル)(2-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)ベンゾ[b]チオフェン-3-イル)メタノール(化合物K6)の代わりに、合成例9で得た2-(4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ベンゾ[b]チオフェン-3-イル)ビス(3-(トリフルオロメチル)フェニル)メタノール(化合物K10)を用いる以外は、合成例6と実質的に同様の反応で、化合物K11を黄色固体として収率58%(215mg,0.318mmol)で得た。
【0360】
1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ 8.12(d,JHH=8.0Hz,2H),7.95(d,JHH=8.0Hz,1H),7.81(d,JHH=8.0Hz,1H),7.67-7.63(m,2H),7.56-7.54(m,4H),7.50-7.27(m,13H)
【0361】
[合成例11]:2-(9H-カルバゾール-9-イル)-10,10-ビス(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン 5,5-ジオキシド(化合物K12)
【化43】
【0362】
10,10-ビス(4-メトキシフェニル)-N,N-ジフェニル-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-アミン(化合物K4)の代わりに、合成例10で得た9-(10,10-ビス(3-(トリフルオロメチル)フェニル)-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-イル)-9H-カルバゾール(化合物K11)を用いる以外は、合成例4と実質的に同様の反応で、上式K12で表される化合物A4を黄色固体として収率15%(33.8mg,0.0478mmol)で得た。
1H-NMR(500MHz,Dimethylsulfoxide-d6):δ 8.24(d,JHH=8.0Hz,2H),8.16(d,JHH=1.5Hz,1H),8.08(d,JHH=8.0Hz,1H),8.01(d,JHH=8.0Hz,1H),7.83-7.79(m,3H),7.73(d,JHH=8.0Hz,2H),7.68-7.62(m,6H),7.43(d,JHH=8.0Hz,1H),7.38-7.27(m,6H)
【0363】
[合成例12]:2-(ジフェニルアミノ)-10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン 5,5-ジオキシド(K14)
【化44】
【0364】
N2ガス雰囲気下で、合成例6で得た10,10-ビス(4-ブロモフェニル)-N,N-ジフェニル-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン-2-アミン(化合物K7,200mg,0.29mmol)の無水テトラヒドロフラン(THF;10mL)溶液に、1.6mol/Lのn-BuLiヘキサン溶液(0.38mL,0.60mmol)を-78℃で10分かけて加えた。2時間撹拌後、テトラヒドロフラン(2mL)に溶解させたホウ酸トリイソプロピル(0.2mL,0.86mmol)を、-78℃で加えた。混合物をゆっくりと室温まで温めた後、室温で12時間撹拌した。混合物に1M HCl水溶液(5mL)を加えて反応を停止した後、酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体にテトラヒドロフラン(10mL)を加えて溶解させ、過酸化水素水(1mL)を加えた後、室温で14時間撹拌した。反応溶液に水(5mL)を加え、酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(アセトン/ジクロロメタン=1/8)で精製し、化合物K14を黄色固体として収率9%(16mg,0.026mmol)で得た。
1H-NMR (500MHz,CD3OD):δ 7.74-7.71(m,1H),7.48-7.42(m,3H),7.29-7.24(m,4H),7.23-7.20(m,1H),7.09-6.97(m,12H),6.72-6.68(m,4H)
【0365】
[合成例13]:2-(ジフェニルアミノ)-10,10-ビス(4-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン 5,5-ジオキシド
【化45】
【0366】
N2ガス雰囲気下で、合成例12で得た2-(ジフェニルアミノ)-10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-10H-ベンゾ[b]インデノ[2,1-d]チオフェン 5,5-ジオキシド(化合物K14;13mg,0.021mmol)、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル4-トルエンスルホネート(17mg,0.047mmol)、炭酸カリウム(8.9mg,0.064mmol)を、アセトニトリル(4mL)に加え、10時間還流した。減圧下で溶媒を留去した後、水を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(アセトン/ジクロロメタン=2/1)で精製し、上式K15で表される化合物A1を黄色固体として収率64%(12mg,0.013mmol)で得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ 7.71-7.66(m,1H),7.48(d,J=8.2Hz,1H),7.38-7.30(m,2H),7.25-7.19(m,4H),7.16(d,J=2.0Hz,1H),7.13-7.08(m,4H),7.07-7.01(m,7H),6.97(dd,J=8.3,2.1Hz,1H),6.81-6.75(m,4H),4.13-4.05(m,4H),3.83(dd,J=5.4,4.4Hz,4H),3.75-3.70(m,4H),3.69-3.62(m,8H),3.55-3.51(m,4H),3.36(s,6H)
【0367】
[合成例14]B1シクロペンタノン溶液の合成
MMA 80.0g、MAA 20.0g、AIBN 2.5gをCPN 190.0gに溶解し、90℃にて20時間反応させることによりアクリル重合体(B1)溶液(固形分濃度35質量%)を得た。得られたアクリル重合体(B1)のMnは9,900、Mwは17,078であった。
【0368】
光散乱粒子(C1)分散液の調製
[調製例1]光散乱粒子分散液1の調製(C1のCPN分散液)
500mlスチロール瓶に、光散乱粒子C1に対し固形分比で20質量%の量の粒子分散剤D1を加え、さらにCPNを加えて固形分濃度が30質量%となるように調整し、1,000rpmで30分間ディスパー攪拌することでスラリーを得た。次に、スラリー全量をスラリータンクに移した後、アシザワファインテック社製ビーズミル装置ラボミニスターDMS65を用いて、直径0.2mmのジルコニアビーズを60体積%充填した状態で、送液速度60ml/min、ディスクの周速8m/sの条件で10パス処理を行うことで、光散乱粒子分散液1を得た。得られた分散液の粒度分布をNanotrac UPA(Microtrac社製)を用いて測定した。希釈液にはCPNを用い、希釈サンプルにレーザー光を照射した際に生じる散乱から日機装(株)製解析ソフトMicrotracDMSを用い、体積基準で分散液中粒子の50%累積径(D50)を算出したところ185nmであり、体積平均粒子径は191nmであった。
【0369】
光散乱粒子(C2)分散液の調製
[調製例2]光散乱粒子分散液2の調製(C2のB3分散液)
500mlスチロール瓶に、B3 143.3g、C2 80.0gを投入した後、ディスパー攪拌下で、B3で30質量%に希釈したD1 26.7gを投入し、1,000rpmで30分間ディスパー攪拌することでスラリーを得た。
次に、スラリー全量をスラリータンクに移した後、アシザワファインテック社製ビーズミル装置ラボミニスターDMS65を用いて、直径0.2mmのジルコニアビーズを60体積%充填した状態で、送液速度40ml/min、ディスクの周速8m/sの条件で5パス処理を行うことで、光散乱粒子分散液2を得た。得られた分散液の粒度分布をNanotrac UPA(Microtrac社製)を用いて測定した。希釈液にはB3を用い、希釈サンプルにレーザー光を照射した際に生じる散乱から日機装(株)製解析ソフトMicrotracDMSを用い、体積基準で分散液中粒子の50%累積径(D50)を算出したところ、290nmであり、体積平均粒子径は180nmであった。
【0370】
[実施例1~8、比較例1~4]波長変換膜形成用組成物の調製およびその評価
(1)波長変換膜形成用組成物の調製
表1に示す組成で各成分を混合した。実施例5~7および比較例2・3では光散乱粒子分散液1を、実施例8および比較例4では光散乱粒子分散液2を用いた。得られた混合物を孔径が5.0μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを用いて濾過することで、波長変換膜形成用組成物を調製した。なお、表1~2中の組成比は固形分での質量比を表すものとする。
【0371】
【0372】
【0373】
(2)評価1:実施例1~4、および比較例1の蛍光特性の評価
実施例1~4および比較例1の波長変換膜形成用組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、100℃で120秒間、ホットプレート上でプリベークを行い、その後、160℃で30分間のポストベークを行って膜厚1μmの塗膜試料形成基板を得た。
【0374】
その後、全ての基板について(株)島津製作所製紫外可視分光光度計UV-2600を用いて吸収ピーク波長の測定、蛍光分光器((株)日立製作所製 F-7000)を用い実施例1~3および比較例1については波長450nmの励起波長で、実施例4については400nmの励起波長で蛍光スペクトルの測定を行った。その後、同じ励起波長で浜松ホトニクス(株)製絶対量子収率測定装置C9920-02Gを用いて絶対量子収率の測定を行った。評価の結果を表3に示す。
【0375】
(3)評価2:実施例1~4、および比較例1の耐光性の評価
上記(2)で用いた基板と同じ条件で作製した塗膜試料に対し、VAC社製グローブボックス内での窒素雰囲気下で、シーシーエス(株)製青色LED露光装置を用いて450nmの波長の光を20時間照射した。光照射後の塗膜試料に対し、評価1と同様に波長450nm励起で蛍光スペクトルの測定を行った。光照射後の蛍光スペクトルのピーク強度を光照射前の蛍光スペクトルのピーク強度で割った値を「蛍光強度維持率」とした。判定基準は以下のとおりである。得られた結果を表3に示す。
〈判定基準〉
A:蛍光強度維持率が90%より大きい
B:蛍光強度維持率が90%以下
【0376】
【0377】
(4)評価3:実施例5~8、および比較例2~4のヘイズ値の評価
実施例5、6および比較例2の樹脂組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、次いで160℃で30分間のポストベークを行うことで膜厚10μmの塗膜試料を得た。
【0378】
また、実施例7および比較例3の樹脂組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度100℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行った。この塗膜にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA-600FAにより365nmにおける光強度が3mW/cm2の紫外線を500mJ/cm2の露光量で照射した。その後160℃で30分間のポストベークを行うことで膜厚10μmの塗膜試料を得た。
【0379】
また、実施例8および比較例4の各組成物をスピンコーターを用いて塗布した後、シーシーエス(株)製UV-LED露光装置(発光ピーク波長365nm)を用いて3000mJ/cm2の紫外光を照射し、次いで160℃で30分間のポストベークを行うことで膜厚10μmの塗膜試料を得た。
【0380】
得られた塗膜試料について、日本電色工業(株)製濁度計NDH5000を用いて、ASTM D 1003-61に即した測定方法でのヘイズ値を測定した。得られた結果を表4に示す。
【0381】
(5)評価4:実施例5~8、および比較例2~4の耐光性の評価
上記(4)で用いた塗膜試料と同じ条件で作製した塗膜試料に対し、VAC社製グローブボックス内での窒素雰囲気下で、シーシーエス(株)製青色LED露光装置を用いて450nmの波長の光を100時間照射した。
次に、塗膜試料をシーシーエス(株)製青色LEDライト(発光ピーク波長450nm)の上に重ね、LEDライトを点灯し、塗膜試料を介して発せられた光を、ウシオ電機(株)製分光放射照度計USR-45を用いて測定し、結果(1)とした。
同様に、塗膜試料を除きLEDライトのみから発せられた光を同様に測定し、結果(2)とした。得られた分光放射照度スペクトルから、結果(2)の480nm以下の波長の光の光子数を「励起光光子数」とした。同様に、結果(1)の480nm以下の波長の光の光子数を「透過光光子数」とした。同様に結果(1)の480nmを超える波長の光の光子数を「発光光子数」とした。
以下の式により「変換効率」を算出した。
青色光吸収率=(励起光光子数-透過光光子数)÷励起光光子数
変換効率=発光光子数÷励起光光子数
光照射後の「変換効率」を光照射前の「変換効率」で割った値を「変換効率維持率」とした。判定基準は以下のとおりである。得られた結果を表10に示す。
〈判定基準〉
A:変換効率維持率が80%より大きい
B:変換効率維持率が60%より大きく80%以下
C:変換効率維持率が60%以下
【0382】
【0383】
表3および表4に示したように、本発明の要件を満たす実施例1~8では、比較例1~4と比べていずれも評価2、評価4における耐光性が高かった。