(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082754
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】在庫適正化支援システム及び在庫適正化支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20240101AFI20240613BHJP
【FI】
G06Q10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196834
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】Lマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岸川 直子
(72)【発明者】
【氏名】細田 順子
(72)【発明者】
【氏名】末光 一成
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】小山 英晃
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L049CC52
(57)【要約】
【課題】
供給元のKPIや商習慣の情報が得られない場合であっても、荷主のKPIを改善し、かつ、供給元が受諾できる在庫適正化の案を生成する在庫適正化支援システムを提供する。
【解決手段】
所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能なメモリと、を備え、前記演算装置は、商品別の発注条件情報と、商品別の出荷実績から予測した出荷物量に対して、発注条件どおりに発注したときの商品別の在庫をシミュレーションし、在庫実績と、前記在庫シミュレーション結果から、商品別の発注条件からの乖離度を計算して出力することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の処理を実行する演算装置と、
前記演算装置がアクセス可能なメモリと、を備え、
前記演算装置は、商品別の発注条件情報と、商品別の出荷実績から予測した出荷物量に対して、発注条件どおりに発注したときの商品別の在庫をシミュレーションし、
在庫実績と、前記在庫シミュレーション結果から、商品別の発注条件からの乖離度を計算して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、商品別の発注条件の前記乖離度の値に基づき、供給元への交渉内容を、発注条件の遵守もしくは発注条件の変更のいずれかに決定して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、前記在庫実績および前記出荷実績と、前記交渉内容とから、交渉成立した場合のKPIの改善量を計算して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、前記交渉内容別のKPIの改善量に基づき、交渉内容の交渉優先順を決定して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項5】
請求項2に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、商品別の発注条件の前記乖離度の値に基づき、商品別の商習慣の影響度を計算し、
前記交渉内容別のKPIの改善量と、商品別の商習慣の前記影響度の値に基づき、供給元への交渉の優先順を決定して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、商品別の荷姿あたりの入数情報と、商品別の入荷実績と、商品別の出荷実績のうち1つ以上を用いて、商品別の発注条件情報を推定して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項7】
請求項2に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、過去の交渉内容別の交渉成立有無の情報から、交渉内容別の交渉成立確率の値を推定して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項8】
請求項7に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、前記交渉内容別のKPIの改善量と、商品別の商習慣の影響度と、前記交渉成立確率の値に基づき、供給元への交渉の優先順を決定することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項9】
請求項3に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、供給元への提示対象のKPI項目情報に基づき、前記交渉内容別のKPIの改善量のうち、前記提示対象のKPI項目を出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項10】
請求項3に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、前記発注条件の変更内容が、複数商品に適用される発注条件に関する場合は、前記発注条件の変更内容の対象商品を、前記複数商品に拡張して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項11】
請求項3に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、前記発注条件の変更内容を、交渉成立した場合の欠品量が目標サービスレベルを満たした上で、前記KPIが最良となるように決定して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項12】
請求項8に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、前記発注条件の変更内容を、交渉成立した場合の欠品量が目標サービスレベルを満たした上で、前記KPIと前記交渉成立確率を変数とする関数値が最良となるように決定して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項13】
請求項11に記載の在庫適正化支援システムであって、
前記演算装置は、在庫を保管する物流センタと、在庫を供給元から物流センタに輸送する経路のそれぞれの能力上限情報から、前記発注条件の変更内容を、交渉成立した場合の欠品量と能力使用率がそれぞれ前記目標サービスレベルと前記能力上限を満たした上で、前記KPIが最良となるように決定して出力することを特徴とする在庫適正化支援システム。
【請求項14】
以下のステップを含む在庫適正化支援方法;
(a)商品別の発注条件情報と、商品別の出荷実績から予測した出荷物量から、発注条件どおりに発注したときの商品別の在庫をシミュレーションするステップ、
(b)在庫実績と、前記在庫シミュレーション結果から、商品別の発注条件からの乖離度を計算して出力するステップ。
【請求項15】
請求項14に記載の在庫適正化支援方法であって、
前記(b)ステップの後、さらに(c)商品別の発注条件の前記乖離度の値に基づき、供給元への交渉内容を、発注条件の遵守もしくは発注条件の変更のいずれかに決定して出力するステップを有することを特徴とする在庫適正化支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫適正化支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
卸をはじめとする供給元は、一般に、小売をはじめとする荷主の物流センタにおける商品の在庫をVMI(Vender managed inventory:納入業者在庫管理方式)で管理しており、リベートなどの商習慣やロットサイズなどの発注条件を考慮して商品毎の補充量を決めている。
【0003】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、発注側から供給元が受信した納期・数量・価格に関する発注条件に基づき、供給元にとって効用の大きい発注条件の変更案を生成し、発注側と交渉するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VMIによる在庫管理では、上述したように、リベートなどの商習慣や発注条件を考慮して補充量を決定しているため、荷主の物流コストや棚卸資産などのKPI(Key performance index:主要業績評価指標)が悪化する場合がある。
【0006】
また、荷主は、供給元のKPIや商習慣の一部または全てを把握できない。そのため、荷主のKPIを改善する在庫適正化の案を供給元に提示しても、供給元のKPI悪化の恐れや商習慣の存在を理由に拒絶される問題がある。
【0007】
上記特許文献1では発注側のKPIを考慮しないため、発注条件変更により荷主のKPIが悪化し得る問題がある。また、特許文献1では供給元のKPIや商習慣を把握できることを前提としているが、荷主にとって、この前提は必ずしも成り立たない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、供給元のKPIや商習慣の情報が得られない場合であっても、荷主のKPIを改善し、かつ、供給元が受諾できる在庫適正化の案を生成する在庫適正化支援システム及び在庫適正化支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能なメモリと、を備え、前記演算装置は、商品別の発注条件情報と、商品別の出荷実績から予測した出荷物量に対して、発注条件どおりに発注したときの商品別の在庫をシミュレーションし、在庫実績と、前記在庫シミュレーション結果から、商品別の発注条件からの乖離度を計算して出力することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、(a)商品別の発注条件情報と、商品別の出荷実績から予測した出荷物量から、発注条件どおりに発注したときの商品別の在庫をシミュレーションするステップ、(b)在庫実績と、前記在庫シミュレーション結果から、商品別の発注条件からの乖離度を計算して出力するステップ、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、供給元のKPIや商習慣の情報が得られない場合であっても、荷主のKPIを改善し、かつ、供給元が受諾できる在庫適正化の案を生成する在庫適正化支援システム及び在庫適正化支援方法を実現することができる。
【0012】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る在庫適正化支援システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の対象となるサプライチェーンの一例を示す図である。
【
図4A】
図1の発注条件情報i2の一例を示す図である。
【
図4B】
図1の発注条件情報i2の一例を示す図である。
【
図5】
図1の商品別・日別の実績情報i3の一例を示す図である。
【
図6A】
図1の能力情報i4の一例を示す図である。
【
図6B】
図1の能力情報i4の一例を示す図である。
【
図7】
図1の卸への提示用KPI項目情報i5の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施例1に係る在庫適正化支援方法のフローチャートである。
【
図9】発注条件の推定結果の確認画面の表示例を示す図である。
【
図10A】シミュレーション結果情報o2の一例を示す図である。
【
図10B】シミュレーション結果情報o2の一例を示す図である。
【
図10C】実績スコア評価結果情報o3の一例を示す図である。
【
図10D】実績スコア評価結果情報o3の一例を示す図である。
【
図11】卸への交渉内容を決定する処理を示すフローチャートである。
【
図12】商品別の交渉内容の確認画面の表示例を示す図である。
【
図13】交渉優先順に基づき卸と交渉する処理を示すフローチャートである。
【
図14】交渉の進捗確認画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0015】
また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【実施例0016】
本実施例では、物流センタの荷主は小売であり、在庫をVMI管理する供給元は卸と仮定して説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、荷主はメーカなどでも良い。また、交渉相手である、在庫を発注する供給元は、在庫をVMI管理するメーカなどでも良いし、自社の在庫補充の担当部門に置き換えても良い。
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る在庫適正化支援システムの概略構成を示す図である。
【0018】
本実施例の在庫適正化支援システム1は、
図1に示すように、プロセッサ(CPU)11と、通信インターフェース(通信IF)12と、入出力インターフェース(入出力IF)13と、メモリ14とを有する計算機によって構成される。プロセッサ11、通信インターフェース12、入出力インターフェース13及びメモリ14は、バスなどの通信手段によってアクセス可能となるよう互いに接続されている。
【0019】
プロセッサ11は、メモリ14に格納されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサ11が、各種プログラムを実行することによって、在庫適正化支援システム1の各種機能が実現される。なお、プロセッサ11がプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算デバイス(例えば、ハードウェアによるFPGAやASIC)で実行しても良い。
【0020】
メモリ14は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶デバイスであるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶デバイスであり、プロセッサ11が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータ(例えば、後述する記憶装置2から読み出したデータ)を一時的に格納する。
【0021】
例えば、プロセッサ11がシミュレーションプログラムを実行することによってシミュレーション部f1が構成される。シミュレーション部f1は、商品別の発注条件情報をはじめとする各種データに基づいて、在庫シミュレーションを実行する。
【0022】
また、プロセッサ11が実績スコア評価プログラムを実行することによって実績スコア評価部f2が構成される。実績スコア評価部f2は、実績情報をはじめとする各種データに基づいて、発注条件からの乖離度や、商習慣の影響度などの実績スコア値を計算する。
【0023】
また、プロセッサ11が交渉内容生成プログラムを実行することによって交渉内容生成部f3が構成される。交渉内容生成部f3は、計算した実績スコア値などに基づいて、在庫適正化案と、供給元への交渉優先度順と、在庫適正化によるKPIの改善量を計算する。
【0024】
また、プロセッサ11が発注条件推定プログラムを実行することによって発注条件推定部f4が構成される。発注条件推定部f4は、入荷実績情報などに基づいて、卸の発注条件を推定する。
【0025】
また、プロセッサ11が交渉プログラムを実行することによって交渉部f5が構成される。交渉部f5は、決定した交渉内容とその交渉優先度に基づいて、卸との交渉を実行する。
【0026】
また、プロセッサ11が画面生成プログラムを実行することによって、画面生成部f6が構成される。画面生成部f6は、計算したシミュレーション結果と、実績スコア値と、生成した交渉内容をユーザが視認できるよう、画面に表示するためのデータを生成する。
【0027】
通信インターフェース12は、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0028】
入出力インターフェース13には、ディスプレイ装置15の他に、図示しないプリンタなどの出力装置やキーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置が接続され、プログラムの実行結果をユーザが視認可能な形式で出力し、ユーザからの入力を受けるインターフェースである。
【0029】
プロセッサ11が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介してサーバに提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性のメモリ14や補助記憶装置に格納される。このため、在庫適正化支援システム1は、ネットワークやリムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有すると良い。
【0030】
在庫適正化支援システム1は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作するものでも良い。
【0031】
在庫適正化支援システム1は、記憶装置2とネットワーク16を介して接続されている。記憶装置2は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶デバイスからなり、プロセッサ11がプログラムの実行時に使用するデータを格納する。
【0032】
例えば、記憶装置2は、在庫適正化支援システム1が演算処理に使用するデータである、商品情報i1、発注条件情報i2、商品別・日別の実績情報i3、能力情報i4、卸への提示用KPI項目情報i5を格納する。
【0033】
また、記憶装置2は、在庫適正化支援システム1が演算処理の結果として出力する、発注条件の推定結果情報o1、シミュレーション結果情報o2、実績スコア評価結果情報o3、交渉内容情報o4を格納する。これらの情報の詳細については後述する。
【0034】
また、記憶装置2は、プロセッサ11が実行するプログラムを格納しても良い。
【0035】
図1に示す構成では、在庫適正化支援システム1とは別に記憶装置2を設けたが、データを格納する不揮発性記憶デバイスである補助記憶装置を在庫適正化支援システム1内に設けても良い。
【0036】
図2は、本実施例が対象とするサプライチェーンの一例である。
【0037】
小売の物流センタでは、下流の店舗からの受注に応じて、物流センタの在庫から出荷・配送する。在庫不足により、受注量に対して出荷量が下回った分は欠品となる。物流センタの在庫は、供給元である卸などが、VMIで在庫管理する。卸の発注担当者は、上流のメーカや卸(自社の倉庫)に、在庫補充のための発注を行う。発注の際は、目標サービスレベルを満たすよう、物流センタの在庫量と、発注条件および商習慣を考慮して、発注量を決定する。上流のメーカや卸は、発注に応じて、物流センタに在庫補充の輸送を行う。以下、簡単のため、供給元は卸であるとして説明するが、本発明は供給元を卸に限定するものではない。
【0038】
【0039】
商品情報i1は、「商品名」を定義するデータ項目や、KPIや拠点能力に対する商品の単位負荷の計算に用いる、商品の単位数量あたりの容積である「単位容積」、商品の単位数量あたりの入荷から出荷までの物流業務におけるCO2排出量である「CO2排出原単位」、単位数量あたりの簿価である「単位簿価」、「ケース入数(ケースあたりのピース数)」、「目標サービスレベル」のデータ項目を有する。また、図示を省略するが、「パレット入数(パレットあたりのピース数)」、単位数量あたりの重量である「単位重量」などのデータ項目を有しても良い。以降、本実施例では、容積の単位は才としているが、リットルなど他の単位でも良い。
【0040】
【0041】
発注条件は、卸の発注担当者が上流のメーカや卸(自社の倉庫)に商品を発注する際に用いる。
図4Aは商品別の発注条件情報i2a、
図4Bは卸とメーカの組合せ別(以下、卸×メーカ別)の発注条件情報i2bである。
【0042】
商品別の発注条件情報i2aは、「商品名」のデータ項目と、商品と卸×メーカ別の発注条件情報i2bを紐づけるために用いる「卸×メーカ別コード名」や、「卸名」、「メーカ名」のデータ項目を有する。また、「発注方式」、「商品別ロットサイズ」、「発注点」など、卸が発注量の決定に用いる発注条件のデータ項目を有する。また、図示を省略するが、「基準在庫量」、「定量発注量」、「商品別最小発注量」、「購入単価」などのデータ項目を有しても良い。
【0043】
発注方式が「発注点方式」である場合は、物流センタの在庫が発注点以下となった時点で、上流に発注する。定量発注量の設定がある場合は、発注量を定量発注量に決定する。基準在庫量の設定がある場合は、基準在庫量と在庫量の差分量を、商品別最小発注量以上、かつ、商品別ロットサイズ刻みとなるよう切り上げたものを発注量とする。発注条件の値の単位は、ピース・ケース・パレットなどの他、ロットサイズを発注金額について設定する場合などは円などでも良い。
【0044】
卸×メーカ別の発注条件情報i2bは、商品と卸×メーカ別の発注条件情報i2bを紐づけるために用いるキー項目である「卸×メーカ別コード名」や「卸名」、「メーカ名」のデータ項目と、「リードタイム(LT)」、「メーカ別ロットサイズ」など、供給元が物流センタに在庫を補充する際に、補充量の決定に用いる発注条件の設定値のデータ項目を有する。また、図示を省略するが、「曜日別の発注可否」、「メーカ別最小発注量」などのデータ項目を有しても良い。リードタイムは曜日別に設定しても良い。
【0045】
メーカ別ロットサイズに基づき、卸×メーカ別コード名が同一である全商品の発注合計量が、メーカ別ロットサイズ刻みとなるように発注量を決定する。「曜日別の発注可否」が発注可能と設定された曜日に発注でき、発注不可と設定された曜日は発注できない。メーカ別最小発注量に基づき、卸×メーカ別コード名が同一である全商品の発注合計量が、メーカ別最小発注量以上となるように発注量を決定する。
【0046】
【0047】
商品と拠点と日付の組合せ毎の実績在庫量、実績出荷量、実績入荷量を設定できる。
【0048】
【0049】
図6Aは拠点別の能力情報i4a、
図6Bは経路別の能力情報i4bである。
【0050】
拠点別の能力情報i4aは、拠点名と、保管能力を定める「保管容積上限」、入荷作業能力を定める「延べ入荷商品数上限」などのデータ項目を有する。図示を省略するが、「CO2排出量上限」などのデータ項目を有しても良い。
【0051】
経路別の能力情報i4bは、出発拠点名と、到着拠点名と、「CO2排出量上限」のデータ項目を有する。図示を省略するが、「台数上限」などのデータ項目を有しても良い。
【0052】
図7は、卸への提示用KPI項目情報i5の一例である。
【0053】
本情報は、卸別に、卸が重視する可能性の高いKPI項目を設定できる。
【0054】
図8は、在庫適正化支援システム1による、在庫適正化支援処理のフローチャートである。
【0055】
先ず、在庫適正化支援システム1は、記憶装置2から入力データi1~i3を取り込む(ステップs11)。
【0056】
次に、卸の現行の発注条件の一部または全てが不明の場合は、発注条件推定部f4は、発注条件を推定する(ステップs12)。
【0057】
次に、シミュレーション部f1は、現行または推定の発注条件に基づき、発注条件どおりに発注したときの在庫シミュレーションを実行する(ステップs13)。
【0058】
次に、実績スコア評価部f2は、在庫実績と入荷実績のいずれかあるいは両方と在庫シミュレーション結果から、商品別の発注条件からの乖離度と、商品別の商習慣の影響度を計算する(ステップs14)。
【0059】
次に、交渉内容生成部f3は、発注条件からの乖離度に基づいて、卸への交渉内容を決定する(ステップs15)。
【0060】
次に、交渉内容生成部f3は、決定した交渉内容に基づき、交渉成立した場合のKPIの改善量を計算する(ステップs16)。
【0061】
次に、交渉内容生成部f3は、決定した交渉内容が交渉成立する確率を推定する(ステップs17)。
【0062】
次に、交渉内容生成部f3は、各交渉内容の交渉優先順を決定する(ステップs18)。
【0063】
次に、交渉部f5は、交渉優先順が高い交渉内容から順に、終了条件を満たすまで、卸との交渉を繰り返す(ステップs19)。
【0064】
最後に、以上のステップs11~s19で得られた結果を出力し、画面生成部f6は表示データを生成する(ステップs20)。
【0065】
ステップs12の詳細を説明する。ステップs12では、卸の現行の発注条件の一部または全てが不明の場合に、発注条件を推定する。推定方法は、予め設定した仮定値を適用する方法や、受領済の発注条件の平均値または中央値を適用する方法、商品情報i1のケース入数・パレット入数などの入数情報から推定する方法、入荷実績から推定する方法などがある。
【0066】
例えば、商品別ロットサイズは、その商品の日別の入荷実績のうち、最頻や最小の入荷量を推定値として採用しても良いし、最小の入荷量以下であるような入数を推定値として採用しても良い。また、例えば、メーカ別ロットサイズは、同じ卸×メーカ別コード名に紐づく商品合計の日別の入荷実績のうち、商品合計の入荷量の最頻値や最小値を推定値として採用しても良い。また、例えば、商品別の発注点や基準在庫は、以下の式(1),式(2)のように入出荷実績から推定しても良い。
【0067】
発注点=安全在庫+計画在庫+輸送中在庫・・・(1)
基準在庫=発注点+サイクル在庫・・・(2)
ここで、安全在庫は、例えば、過去出荷実績のばらつきσと、リードタイム日数LTと、目標サービスレベルから計算した安全係数kを用いて、以下の式(3)のような一般的な理論式に基づき推定しても良い。
【0068】
安全在庫=kσ√(LT)・・・(3)
計画在庫は、例えば、過去出荷実績から計算した需要予測量を推定値としても良い。輸送中在庫は、例えば、(LT-1)日分の需要予測量を推定値としても良い。サイクル在庫は、例えば、商品別の入荷実績から、前回入荷してから次に入荷するまでの平均日数である平均入荷サイクル日数を計算し、その平均入荷サイクル日数分の需要予測量を推定値としても良い。
【0069】
上記の関係は、式(4)~式(6)のように表すことができる。
【0070】
計画在庫=平均需要予測量・・・(4)
輸送中在庫=(LT-1)×平均需要予測量・・・(5)
サイクル在庫=平均入荷サイクル日数×平均需要予測量・・・(6)
発注条件推定部f4は、得られた発注条件の推定結果情報o1を出力する。発注条件の推定結果情報o1は、発注条件情報i2と同様のデータ構成である。画面生成部f6が発注条件の推定結果情報o1から表示データを生成し、入出力インターフェース13から出力してディスプレイ装置15などに表示しても良い。
【0071】
図9は、発注条件の推定結果情報o1の確認画面d1の表示例である。
【0072】
確認画面d1には、発注条件の推定結果情報o1を構成する、商品別の発注条件情報o1aや、卸×メーカ別の発注条件情報o1bを表示しても良い。情報o1a,o1bを、画面上でユーザが編集できるようにしても良い。「推定した発注条件を設定し、次ステップへ進む」ボタンd11を押すと、
図8のステップs13以降を開始するようにしても良い。
【0073】
図8のステップs13の詳細を説明する。ステップs13では、商品別の発注条件情報と、商品別の在庫実績および出荷実績のいずれかあるいは両方から予測した出荷物量に対して、発注条件どおりに発注したときの在庫シミュレーションを実行する。在庫実績などに基づき設定した初期在庫量を起点として、シミュレーション初日から順に、シミュレーション最終日まで、下流拠点からの受注量と、上流拠点からの輸送量および入荷量と、下流拠点への出荷量および欠品量と、上流拠点への発注量と、物流センタの在庫量などの物量の計算を繰り返すことで、日別の各物量のシミュレーション結果が得られる。上流拠点への発注量は、発注日における在庫量のシミュレーション値と、卸の発注条件に基づき、計算する。
【0074】
シミュレーション部f1は、得られたシミュレーション結果情報o2を出力する。画面生成部f6は、シミュレーション結果情報o2から表示データを生成し、表示しても良い。
【0075】
【0076】
図10Aは商品別・拠点別のシミュレーション結果情報o2aであり、商品と拠点と日付の組合せ毎の、在庫量、出荷量、入荷量などのシミュレーション結果からなる。
図10Bは経路別・日別のシミュレーション結果情報o2bであり、出発拠点と到着拠点と出発日の組合せ毎の、到着日、輸送才数、輸送重量、台数などのシミュレーション結果からなる。
図10Cは実績スコア評価結果情報o3aであり、商品別・期間別の発注条件からの乖離度の値からなる。
図10Dは実績スコア評価結果情報o3bであり、商品別の商習慣の影響度の値からなる。
【0077】
図8のステップs14の詳細を説明する。ステップs14では、在庫実績と入荷実績のいずれかあるいは両方と在庫シミュレーション結果から、商品別の発注条件からの乖離度と、商品別の商習慣の影響度を計算する。発注条件からの乖離度は、日毎・月毎など、期間別に計算する。また、在庫や入荷の実績とシミュレーション結果との違いが大きいほど、発注条件からの乖離度が大きいと推定する。次に、発注条件からの乖離度が大きく、また、乖離度が大きい期間が多いほど、商習慣の影響度が大きいと推定する。発注条件からの乖離度は、例えば、入荷(または在庫)の平均値の差の絶対値(Abs)を用いて、以下の式(7)のように商品別・期間別に求めても良い。
【0078】
発注条件からの乖離度=Abs(入荷実績量の平均-シミュレーション入荷量の平均)÷入荷実績量の平均・・・(7)
他にも、実績とシミュレーションそれぞれの日別の入荷量(または在庫量)について、分布を計算し、実績とシミュレーションの各分布の統計量に基づき、発注条件からの乖離度を計算しても良い。
【0079】
商習慣の影響度は、例えば、以下の式(8)のように乖離度の中央値(Median)から求めても良いし、乖離度の平均値など、他の統計量から求めても良い。
【0080】
商習慣の影響度=Median(期間別の発注条件からの乖離度)・・・(8)
実績スコア評価部f2は、ステップs14で得られた実績スコア評価結果情報o3を出力する。画面生成部f6は実績スコア評価結果情報o3から表示データを生成し、表示しても良い。
【0081】
実績スコア評価結果情報o3は、ステップs14で計算した、商品別・期間別の発注条件からの乖離度の値(
図10C)と、商品別の商習慣の影響度の値(
図10D)を格納する。
【0082】
【0083】
図11は、卸への交渉内容を決定する処理を示すフローチャートである。
【0084】
ステップs15では、
図11に示すフローチャートの手順で、発注条件からの乖離度に基づいて、商品別に、卸への交渉内容を決定する。
【0085】
先ず、卸への交渉内容を、発注条件の遵守と、発注条件の変更の中から決定する(ステップs15-1)。
【0086】
次に、ステップs15-1で生成した交渉内容が「発注条件の変更」である場合は、その発注条件の変更案を1つ以上生成する(ステップs15-2)。
【0087】
ステップs15-1では、ステップs14で計算した発注条件からの乖離度の値が、小さければ既に現状でも発注条件を遵守しており、大きければ現状では発注条件を遵守していないと推測できることから、以下のように交渉内容を決定する。
【0088】
・発注条件からの乖離度が閾値以上である場合:発注条件を遵守するよう交渉
・上記以外の場合:発注条件を変更するよう交渉
ステップs15-2では、交渉内容が「発注条件の変更」に決定した商品について、小売のKPI、および、卸が重視する可能性の高いKPIが改善するような発注条件の変更案を複数生成する。
【0089】
発注条件の変更案は、例えば、コストや棚卸資産やCO2排出量などの複数KPIが最良となるような発注条件のパレート最適解から決定しても良い。また、卸×メーカ別の発注条件情報の変更案を生成する際は、同じ卸×メーカ別コードに紐づく全ての商品に対し、同時に条件値を変更する案を生成する。また、パレート最適解を求める際に、制約条件として、欠品量が目標サービスレベルを満たすことや、能力情報i4で設定した、卸から物流センタへの輸送経路と物流センタのそれぞれの輸送・保管・入荷作業・出荷作業・CO2排出量などの能力上限を満たすことを考慮しても良い。
【0090】
発注条件のパレート最適解は、次の方法で得られる。
【0091】
先ず、変更対象とする1つ以上の発注条件を、変更許容範囲内でそれぞれ変動させながら、条件値の各組合せについて在庫シミュレーションを実行する。
【0092】
次に、シミュレーション結果が制約条件を満たしている場合に限り、シミュレーション結果の複数のKPIの値を計算し、保存する。
【0093】
最後に、保存した結果に基づき、KPIが最良となるときの複数の発注条件の組合せを、パレート最適解として採用する。代表的なKPI項目の値は、例えば以下の式(9)~式(14)で計算できる。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
また、予め、発注条件の値の各組合せについて、その値の組合せが、実際に卸の発注に使われたり、卸との交渉において受諾されたりしたかを学習することで、発注条件の値の組合せを入力すると、卸との交渉成立確率を出力する交渉成立確率モデルを生成しておいても良い。その際、例えば、以下の式(15)の指標値が最良となるときの発注条件の組合せも、発注条件の変更案として生成することで、交渉成立の可能性が高く、かつ、KPIを改善できるような、バランスの良い交渉内容を得ることができる。
【0101】
指標値=f1(KPI値,交渉成立確率)・・・(15)
上記のf1は、複数KPI値と交渉成立確率を変数とする関数である。f1は例えば、各変数の重み付け和などでも良い。
【0102】
以上の例で求めたパレート最適解は、発注条件の変更許容範囲内でとり得る値の全組合せを生成したり、既に保存した暫定解の一部の条件値を増減したりすることで探索できる。他にも、混合整数計画法をはじめとする数理最適化手法で求めることができるが、本発明は、以上で述べた方法に限定されるものではない。
【0103】
交渉内容生成部f3は、ステップs15で得られた交渉内容情報o4を出力する。画面生成部f6は交渉内容情報o4から表示データを生成し、表示しても良い。
【0104】
交渉内容情報o4は、ステップs15で計算した、商品別の交渉内容を「発注条件の変更」と「発注条件の遵守」のいずれとするかの情報と、交渉内容が「発注条件の変更」である商品について、商品別の発注条件変更の複数案の情報を格納する。
【0105】
図12は、商品別の交渉内容の確認画面d2の表示例である。
【0106】
確認画面d2には、シミュレーション結果情報o2の商品別のシミュレーション在庫量と、実績在庫を可視化した時系列の在庫グラフd21や、実績スコア評価結果情報o3における商品別・期間別の発注条件からの乖離度の表d22と商習慣の影響度の表d23、交渉内容情報o4のうち、卸への交渉内容が「発注条件の変更」と「発注条件の遵守」のいずれであるかの情報の表d24を表示しても良い。卸への交渉内容d24を、画面上でユーザが編集できるようにしても良い。「生成した交渉内容を設定し、次ステップへ進む」ボタンd25を押すと、ステップs16以降を開始するようにしても良い。
【0107】
図8のステップs16の詳細を説明する。ステップs16では、決定した交渉内容に基づき、交渉成立した場合のKPIの改善量を計算する。
【0108】
交渉内容生成部f3は、交渉内容情報o4に、交渉内容別のKPIの改善量の情報を紐づけて、交渉内容情報o4を更新する。KPIの改善量は、実績とシミュレーション結果に基づき、交渉内容別・KPI項目別に、以下の式(16)で計算できる。
【0109】
KPI改善量=実績のKPI-シミュレーション結果のKPI・・・(16)
図8のステップs17の詳細を説明する。ステップs17では、決定した交渉内容が交渉成立する確率を推定する。前述した交渉成立確率モデルに、交渉内容の発注条件の値の組合せを入力し、交渉内容別の交渉成立確率を計算する。
【0110】
交渉内容生成部f3は、交渉内容情報o4に、交渉内容別の交渉成立確率の情報を紐づけて、交渉内容情報o4を更新する。
【0111】
図8のステップs18の詳細を説明する。ステップs18では、各交渉内容の交渉優先順を決定する。例えば、以下の式(17)に基づき、交渉優先指標値を計算し、その交渉優先指標値が大きい順に、交渉優先順を高く設定すれば良い。
【0112】
交渉優先指標値=f2(KPI改善量,商習慣の影響度,交渉成立確率)・・・(17)
上記のf2は、交渉内容別の、複数のKPI改善量と、商習慣の影響度と、交渉成立確率を変数とする関数である。f2は例えば、各変数の重み付け和などでも良く、KPI改善量の係数は正、商習慣の影響度の係数は負、交渉成立確率の係数は正とすることで、KPI改善量が大きく、かつ、商習慣の影響度は小さく、かつ、交渉成立確率が高い交渉内容の優先順を、高く設定することができる。
【0113】
交渉内容生成部f3は、交渉内容情報o4に、交渉内容別の交渉優先順の情報を紐づけて、交渉内容情報o4を更新する。
【0114】
【0115】
図13は、交渉優先順に基づき卸と交渉する処理を示すフローチャートである。
【0116】
ステップs19では、交渉優先順が高い交渉内容から順に、終了条件を満たすまで、卸との交渉を繰り返す。
図13は、その詳細フローチャートである。
【0117】
ステップs19-1のループでは、終了条件を満たすまで、交渉優先順の高い交渉内容から順に、ステップs19-2からステップs19-5を繰り返す。
【0118】
ステップs19-2では、交渉内容と、交渉成立した場合のKPI改善量を、卸に提示し、交渉する。このとき、複数のKPIのうち、卸への提示用KPI項目情報i5に基づき、卸が重視する可能性の高いKPIに絞って改善効果を提示しても良い。
【0119】
次のステップs19-3では、交渉結果に基づき、終了条件を満たしたかどうかを判定し、満たしていなければステップs19-1のループを繰返し、満たす場合はs19-1のループを抜けて本フローチャートを終了する。終了条件としては、ループの繰返し回数上限値や、KPI改善量の下限値などを設定しても良い。
【0120】
次のステップs19-4では、交渉内容の発注条件と、交渉が成立したかどうかの情報に基づき、交渉成立確率の推定モデルを学習し更新する。推定モデルの学習と更新は、機械学習やディープラーニングなどをはじめとするAI(Artificial Inteligence:人工知能)などの方法を用いても良い。
【0121】
次のステップs19-5では、更新した交渉成立確率の推定モデルに基づき、交渉を未実施の全交渉内容について、上記の式(17)を用いて交渉優先指標値を再計算し、交渉優先指標値が大きい順に交渉優先順が高くなるよう、交渉優先順を更新する。
【0122】
交渉内容生成部f3は、交渉内容情報o4に、交渉内容別の交渉成立有無の情報を紐づけて、交渉内容情報o4を更新する。
【0123】
図8のステップs20の詳細を説明する。ステップs20では、ステップs11~ステップs19で得られた結果である発注条件の推定結果情報o1、シミュレーション結果情報o2、実績スコア評価結果情報o3、交渉内容情報o4を出力し、画面生成部f6は情報o1~o4から表示データを生成する。生成されたデータは、入出力インターフェース13から出力され、ディスプレイ装置15などに表示される。
【0124】
【0125】
確認画面d3には、交渉優先順に並べた、交渉内容と、その結果の表d31を表示しても良い。表d31には、各交渉内容の交渉相手と、対象とする商品または卸×メーカコード名と、交渉内容(「発注条件の遵守」または「発注条件の変更」)と、交渉内容が発注条件の変更である場合の条件変更案と、交渉優先指標値およびその計算に用いたKPI改善量と商習慣の影響度と交渉成立確率の値と、交渉結果を表示しても良い。
【0126】
また、表d31においては、交渉相手が同じ卸Sである、交渉優先順が第2位と第3位の交渉を同時に実行中である例を表示しているが、このように、同じ卸への交渉内容を同時に提示して交渉することで、卸が提案内容を比較検討し、卸にとって利益の大きい案を取捨選択できるようにしても良い。「交渉終了」ボタンd32を押すと、
図8のフローチャートの処理を終了する処理を開始するようにしても良い。
【0127】
以上説明したように、本実施例の在庫適正化支援システム1は、所定の処理を実行する演算装置(プロセッサ11)と、演算装置がアクセス可能なメモリ14とを備え、演算装置は、商品別の発注条件情報と、商品別の在庫・出荷実績から、発注条件を満たすように発注したときの商品別の在庫をシミュレーションし、在庫実績と入荷実績のいずれかあるいは両方と在庫シミュレーション結果から、商品別の発注条件からの乖離度を計算し、商品別の発注条件の乖離度から、商品別の商習慣の影響度を計算し、商品別の発注条件の乖離度から、商品別の在庫適正化案を複数決定し、在庫実績と在庫適正化案から、交渉成立した場合の複数KPIの改善量を計算し、商習慣の影響度とKPIの改善量とから、商品別の供給元への交渉優先順を決定して出力する。
【0128】
言い換えると、発注条件どおりに発注したときの在庫シミュレーション結果と、在庫実績との比較に基づき、商習慣の影響の大きさを推定し、商習慣の影響が小さい商品から優先して在庫適正化案の生成と交渉を行う。交渉においては、在庫適正化による効果を、供給元が重視する可能性のある複数KPIについて提示する。
【0129】
これにより、物流コストや棚卸資産など荷主のKPIの改善量が大きく、かつ、供給元が受諾する可能性が高い在庫適正化案から優先して、効率的に交渉できる。また、交渉の際に、供給元に対し、在庫適正化案を受諾した場合のKPIの改善効果を提示することで、供給元は自身のKPIにも良い影響のある適正化案を受諾することができる。以上により、荷主と供給元の双方のKPIを改善できる。
【0130】
以上、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、対象は小売の物流センタに限らず、複数の商品を扱う物流センタに広く適用可能である。また、交渉相手である供給元は卸に限らず、自社の上流の工場・倉庫や、他社のメーカや、自他社の発注担当部門などに広く適用可能である。
【0131】
また、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えても良い。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えても良い。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしても良い。
【0132】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0133】
また、各図面において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。