(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082760
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】温冷浴設備及び外気浴設備が集約して配置された間取り構造、及びそれを備えた住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
E04H1/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196851
(22)【出願日】2022-12-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和4年9月1日に(株)双葉デザインのウェブサイト「御唯瑠璃」にて公開 (2)令和4年9月1日に(株)双葉デザインのFacebookのアカウントにて公開 (3)令和4年9月1日に(株)双葉デザインのTwitterのアカウントにて公開 (4)令和4年9月1日に(株)双葉デザインのInstagramのアカウントにて公開 (5)令和4年9月1日に(株)双葉デザインのTikTokのアカウントにて公開 (6)令和4年9月22日に(株)双葉デザインの神奈川県横須賀市船越町の展示場にて公開 (7)令和4年11月20日に(株)アミューズメントプレスジャパン発行の月刊誌Amusement Japan Vol.25 No.291 12月号にて公開、及び同日に同社のウェブサイトに掲載の同月刊誌デジタルブック版にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】515356959
【氏名又は名称】株式会社双葉デザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100152250
【弁理士】
【氏名又は名称】峰松 勝也
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋也
(72)【発明者】
【氏名】矢部 直人
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA01
2E025AA03
2E025AA22
2E025AA23
2E025AA25
(57)【要約】
【課題】建築費や維持費を抑えながら複数の温冷浴設備と外気浴設備とを備え、本格的なサウナや温冷浴を楽しむことができ、特別なプライベート空間を創出することができる建物の間取り構造、及びそれを備えた住宅等を提供する。
【解決手段】サウナ室10、冷水浴が可能な浴室11及び外気浴場14が、外気浴室13の周囲に隣接して配置され、露天風呂12が、外気浴場14の場内に配置されている。また、サウナ室10、浴室11及び外気浴場14と外気浴室13との間に、出入口17、18、19及び20が設置されている。このようにして、複数の温冷浴設備と外気浴設備とがコンパクトな空間に集約して配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温冷浴設備と外気浴設備とを備えた建物の間取り構造において、
前記温冷浴設備が、サウナ室、冷水浴が可能な浴室及び露天風呂であり、前記外気浴設備が、外気浴室及び外気浴場であり、
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場が、前記外気浴室の周囲に隣接して配置され、前記露天風呂が、前記外気浴場の場内に配置されており、
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場と前記外気浴室との間に出入口が設置されており、
複数の前記温冷浴設備と前記外気浴設備とが集約して配置されていることを特徴とする、間取り構造。
【請求項2】
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場と前記外気浴室との間を隔てる前記出入口及び/又は区画壁の一部又は大部分が、透明に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の間取り構造。
【請求項3】
前記サウナ室及び前記浴室が、前記外気浴室を通して前記外気浴場又は前記露天風呂を見通せる位置に配置され、前記外気浴場及び前記露天風呂が、前記外気浴室を通して前記サウナ室又は前記浴室を見通せる位置に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の間取り構造。
【請求項4】
前記外気浴室の室内又は前記外気浴室に隣接して配置された洗面所に、洗面台が設置されていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の間取り構造。
【請求項5】
前記外気浴室、前記外気浴場又は前記露天風呂から見渡せる建物の外側に、庭園又は自然の景観が配置されていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の間取り構造。
【請求項6】
請求項1から3の何れかに記載の間取り構造を備え、少人数の居住に適した1階建てであることを特徴とする、住宅。
【請求項7】
前記サウナ室、前記浴室、前記外気浴室及び前記外気浴場の合計床面積A1と、前記外気浴場及び前記住宅の合計床面積A2との比(A1:A2)が、1:1.5~1:6の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の温冷浴設備と外気浴設備とが集約して配置され、本格的なサウナや温冷浴を安全に楽しむことができ、特別なプライベート空間を創出することができる間取り構造と、それを備えた住宅等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、健康増進やストレス解消等を目的としてサウナが利用されてきた。日本のサウナ愛好家人口は2020年までは2千5百万人を超え、週1回以上サウナを利用するヘビーユーザも3百万人を超えると推定されている。
【0003】
サウナ室で十分に発汗し、次いで冷水に浸かって汗を流した後、再びサウナに入る温冷交代浴(温冷浴)を繰り返すことで、血行が促進されて体内の老廃物を汗と共に排出することができる。また、自律神経のバランスが整い不安や緊張を和らげることができる。
【0004】
本格的なサウナや温冷浴を楽しむためには、熱気浴や蒸気浴が可能なサウナ室が必要であり、さらに冷水浴ができる浴室も必要であることから、一般の住宅では難しく、日本のサウナ愛好家の多くは商業的なサウナ施設を利用している。
【0005】
近年では、サウナを頻繁に利用するヘビーユーザなどがより気軽に楽しむために、サウナ室と浴室をコンパクトな空間に集約した、家庭用サウナ室や一人用サウナ室が提案されている。
【0006】
また、2020年から深刻化したコロナ禍により、2021年に日本のサウナ愛好家人口は1千万人近く減少したと推定されているが、他人との接触を避けながらサウナを楽しむことができるため、家庭用サウナ室や一人用サウナ室が改めて注目されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、浴槽2を設けた浴室1および脱衣室5に隣接してサウナ室10を設け、浴室1とサウナ室10とを区画する区画壁12を透明にしたサウナ室が開示されている。
【0008】
このサウナ室では、区画壁を透明にしたことで、家庭用のため非常に狭く密閉されている空間でも広く感じることができ、リラックスしてサウナを楽しめるとされている。
【0009】
また、特許文献2には、サウナ室51と、シャワー室53又は浴室と、休息室55と、トイレ57と、脱衣室59とが一つのフロア内に配置されている、パーソナルサウナ室41及びサウナ施設が開示されている。
【0010】
このパーソナルサウナ室では、感染症対策から見知らぬ他人と同じ空間で過ごすのを避けることができ、自宅にいるような感覚でリラックスした時間を過ごすことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9-299438号公報
【特許文献2】実用新案登録第3236972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本格的なサウナでは、サウナ室と浴室の他に外気浴スペースを設けて、熱気浴や蒸気浴と冷水浴にさらに外気浴を組み合わせて、これらの温冷浴を繰り返すことで心身共により高い効果を得ることができる。
【0013】
しかしながら、上記の家庭用又は一人用サウナでは、限られた空間の有効活用という効率面が重視されており、サウナを楽しむための最低限の設備は備えているものの、外気を積極的に取り入れる設備やスペース、冷水浴ができる浴室は備えておらず、本格的なサウナや温冷浴を楽しむためには不十分である。
【0014】
そして、日常の喧噪から離れて心身共にリラックスして寛ぐことができ、優雅な時間をゆるりと過ごすことができる特別なプライベート空間を創出するというコンセプトは存在せず、効率を重視したその設備や間取りでは、所有者や使用者の所有感や満足感を十分に満たすことは難しい。
【0015】
本発明は、以上の背景技術とその課題を鑑みてなされたものであり、建築費や維持費を抑えながら複数の温冷浴設備と外気浴設備とを備え、本格的なサウナや温冷浴を安全に楽しむことができ、特別なプライベート空間をも創出することができる間取り構造と、それを備えた住宅等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、サウナ室、冷水浴が可能な浴室及び外気浴場を外気浴室の周囲に隣接して配置し、露天風呂を外気浴場内に配置し、これらの温冷浴のための専用設備を集約することにより、建築費や維持費を抑えながら本格的なサウナや温冷浴を安全に楽しむことができ、特別なプライベート空間を創出できることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、温冷浴設備と外気浴設備とを備えた建物の間取り構造において、 前記温冷浴設備が、サウナ室、冷水浴が可能な浴室及び露天風呂であり、前記外気浴設備が、外気浴室及び外気浴場であり、前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場が、前記外気浴室の周囲に隣接して配置され、前記露天風呂が、前記外気浴場の場内に配置されており、前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場と前記外気浴室との間に出入口が設置されており、複数の前記温冷浴設備と前記外気浴設備とが集約して配置されていることを特徴とする、間取り構造である。
【0018】
本発明の間取り構造では、3つの温冷浴設備と2つの外気浴設備とが組み合わされており、他人との接触がなく感染症のおそれがないプライベート空間が形成される。各設備を集約して配置することで、構造的な一体性が高まり設備間を移動する際の動線が短くなり、裸体に近い状態で移動する際の心理的及び身体的負担を軽減できる。使用者は、気分や体調に合わせてこれらの設備を使用した温冷浴を繰り返すことにより、本格的なサウナや温冷浴を安全に楽しむことができる。
【0019】
また、屋内の空調設備で温度管理された外気浴室を中心に配置することで、サウナ室、浴室、露天風呂場及び外気浴場の間を移動する際、例えば、高温のサウナ室から低温の冷水浴する浴室や屋外の外気浴場に移動する際、温度管理された外気浴室を必ず通る間取り構造となり、移動の際の急激な温度変化を抑制して使用者のヒートショックの危険性を低減することができる。
【0020】
さらに、一般の住宅では通常は備えていない温冷浴のための専用設備を集約して配置することで、非日常的なリッチでラグジュアリーな雰囲気を醸し出すことができ、優雅な一時を過ごせる特別なプライベート空間を創出することができる。
【0021】
加えて、限られた空間を有効に活用でき、給水・給湯設備を集約して配置することで、建築費や維持費を抑えることができる。リフォームやリノベーションにより既存の住宅の間取りに組み込むこともでき、空き家問題の解決にも資することができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態は、前記サウナ室、前記浴室、前記露天風呂及び前記外気浴場と前記外気浴室との間を隔てる前記出入口及び/又は区画壁の一部又は大部分が、透明に形成されていることを特徴とする、前記間取り構造である。
【0023】
各設備の間を隔てる出入口や区画壁に透明部分を設けることにより、全体を見通せて限られた空間を広く感じることができる。また、視覚的な一体感が高まり、リッチでラグジュアリーな雰囲気も増し、特別なプライベート感をより強く印象付けることができる。
【0024】
さらに、本発明の一実施形態は、前記サウナ室及び前記浴室が、前記外気浴室を通して前記外気浴場又は前記露天風呂を見通せる位置に配置され、前記外気浴場及び前記露天風呂が、前記外気浴室を通して前記サウナ室又は前記浴室を見通せる位置に配置されていることを特徴とする、前記間取り構造である。
【0025】
外気浴室を中心に各設備を互いに見通せる位置に配置することで、視覚的な一体感が高まり、特別なプライベート感をより強く印象付けることができる。また、十分に発汗するまで高温下で平均10分程滞在するサウナ室内において、透明な出入口や隔壁を通して外側の景観等が見通せることで、サウナ室内での滞在時間をよりリラックスして過ごすことができる。
【0026】
また、本発明の一実施形態は、前記外気浴室の室内又は前記外気浴室に隣接して配置された洗面所に、洗面台が設置されていることを特徴とする、前記間取り構造である。
【0027】
高温下で十分に発汗させるサウナでは脱水症状のおそれがあり、特に高齢者においては注意が必要である。サウナ室に直結した外気浴室やそれに隣接した洗面所に給水のための洗面台を設置することで、緊急時に速やかに対処することができる。
【0028】
さらに、本発明の一実施形態は、前記外気浴室、前記外気浴場又は前記露天風呂から見渡せる建物の外側に、庭園又は自然の景観が配置されていることを特徴とする、前記間取り構造である。
【0029】
露天風呂に浸かりながら又は外気浴で一息つきながら、建物の外側にある庭園や自然の森林や海岸等の景観を眺めることでよりリラックスして寛ぐことができ、温冷浴の効果を高めることができる。
【0030】
また、本発明の一実施形態は、前記間取り構造を備え、少人数の居住に適した1階建てであることを特徴とする、住宅である。
【0031】
本発明の間取り構造は、特定のライフスタイルに特化し、必要設備をコンパクトにデザインした、特別なプライベート空間の提供をコンセプトとしており、1~3人程の少人数向けの小規模住宅に適している。
【0032】
さらに、本発明の一実施形態は、前記サウナ室、前記浴室、前記外気浴室及び前記外気浴場の合計床面積A1と、前記外気浴場及び前記住宅の合計床面積A2との比(A1:A2)が、1:1.5~1:6の範囲であることを特徴とする、前記住宅である。
【0033】
本発明の住宅では、住宅全体に対する温冷浴設備及び外気浴設備の占める比率は一般的な住宅よりも高くなるが、非日常的な空間を提供するための特別感と日常的な居住環境の利便性や快適性とのバランスから、その床面積比は上記範囲であることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、サウナ室、冷水浴ができる浴室、露天風呂、外気浴室及び外気浴場を備え、本格的なサウナや温冷浴を安全に楽しむことができる。また、一般住宅には無いこれらの専用設備を集約して配置することで、優雅な一時を過ごせる特別なプライベート空間を創出することができる。
【0035】
さらに、これらの給水・給湯設備を集約して配置することで、建築費や維持費を抑えて空間を有効活用することができる。リフォームやリノベーションにより既存の住宅に組み込むことで、空き家問題の解決にも資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1実施形態である間取り構造を備えた平屋別荘と、その敷地全体を示す平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態である間取り構造を備えた平屋別荘の、温冷浴設備及び外気浴設備が集約して配置されている区画を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態である間取り構造を備えた平屋別荘の、外気浴室に隣接して配置された浴室及びサウナ室の外観を示す写真である。
【
図4】本発明の第1実施形態である間取り構造を備えた平屋別荘の、外気浴室に隣接して配置された露天風呂及びサウナ室の外観を示す写真である。
【0037】
【
図5】本発明の第1実施形態である間取り構造を備えた平屋別荘の、外気浴室に隣接して配置された外気浴場、露天風呂及び浴室の外観を示す写真1である。
【
図6】本発明の第1実施形態である間取り構造を備えた平屋別荘の、外気浴室に隣接して配置された外気浴場、露天風呂及び浴室の外観を示す写真2である。
【
図7】(a)及び(b)はシミュレーションによる本発明の一実施形態である大小2つの間取り構造を示す平面図である。
【
図8】(a)~(d)はシミュレーションよる本発明の一実施形態である大小2つの間取り構造を取り入れた大小4つの住宅を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の間取り構造の好ましい実施形態を、図面等を参照して詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
説明が省略されている構造、設備、工法等については、建築・設計等の技術分野における当業者に知られているものと同一又は実質的に同一のものとすることができる。各図において同一符号は同一又は同等の構成要素を表しており、重複する説明を省略する。なお、図面を分かり易くするために一部の構造を省略して図示している。
【0040】
また、本明細書で「略」とは、厳密に同一である場合に限られず、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略全体とは厳密に全体の場合に限られず、作用効果の観点から全体と同一視できる形態を含むものとする。
【0041】
[第1実施形態]
本発明の好ましい第1実施形態の間取り構造1、及びこれを備えた1階建ての戸建て住宅3を、
図1~6に基づいて説明する。本発明の建物の間取り構造1は、
図1及び2に示すように、複数の温冷浴設備と外気浴設備とが集約して配置されていることが特徴である。温冷浴設備とは、サウナ室10、冷水浴が可能な浴室11及び露天風呂12である。外気浴設備とは、外気浴室13及び外気浴場14である。
【0042】
サウナ室10は、建物の屋内に配置され、区画壁や出入口により密閉された空間である。ドライサウナ(熱気浴)、スチームサウナ(蒸気浴)又はミストサウナ(温水浴)が可能な設備を備えている。広く一般的なドライサウナが最も好ましい。室内又は室外に設置された熱気、スチーム又はミスト発生装置から、熱気、スチーム又はミストがサウナ室10内に送られる。フィンランド式サウナでもよい。ドライサウナの場合、設定温度は70~100℃が例示される。これらは業務用又は家庭用の一般的な装置を用いることができる。本実施形態ではサウナ室10内の隅角部にドライサウナヒータが設置されている。
【0043】
サウナ室10内は、使用者が腰を掛けたり体を横たえたりするためにベンチが設けられるか、床面が2~3段程の階段状に形成されている。なお、サウナ室内で気分が悪くなった時のために、サウナ室10内に非常用ボタンを設置するのが好ましい。本発明は小規模住宅に好適であり1人での使用も想定されるため、従来の家庭用サウナ室のように住宅内の家族に連絡されるのではなく、住宅外の警備会社等に連絡される非常用システムが好ましい。
【0044】
浴室11は、同様に建物の屋内に配置され、区画壁や出入口により密閉された空間である。冷水浴が可能な設備を備えており、通常の温水浴が可能な設備も備えているのが好ましい。一般的な給水・給湯器を備えたユニットバスでもよいが、冷水浴の効果を高めるためにチラー(冷却水循環装置)を備えているのが好ましい。チラーを使用する場合、設定水温は15~17℃が例示される。本実施形態では屋外の外壁際にチラーが設置されている。温冷浴の効果を高めるためにジェットバス(ジャグジーバス)装置を備えてもよい。浴室内には、一般的な浴室と同様に給水・給湯栓やシャワー、洗い場が設けられている。
【0045】
露天風呂12は、浴槽及び給湯又は温泉設備からなり、建物の屋外に配置された外気浴場14内の露天風呂スペース15内に設置されている。一般的な浴室と同様に給湯設備を備えてもよく、外部の源泉から温泉を引き込んでもよい。近隣に源泉が無い場合には、人工炭酸泉生成装置を備えてもよい。露天風呂スペース15内には、一般的な浴室と同様に給水・給湯栓やシャワー、洗い場を設けてもよい。
【0046】
露天風呂スペース15は、外気浴場14の場内の外気浴室13から近くて外側の景観が見渡しやすい位置に配置されている。外気浴場14の床面積が小さい場合には、その全てを露天風呂スペース15としてもよい。また、プライバシーを考慮して露天風呂スペース15は、外側に面した箇所に仕切りや出入口を設置したり、上方に天幕や梁を架設したりして、屋外と屋内の中間の半屋外的な空間としてもよい。本実施形態では、外側に面した箇所に出入口21を設置し、上方にルーバーを架設して半屋外的な空間としている。
【0047】
外気浴室13は、建物の屋内に配置され、区画壁や出入口により区画された独立空間でも、洗面所やトイレなどの他の住宅設備と連結した空間でもよい。外気浴室13内はエアコンなどの空調設備で一定の温度や湿度に保たれていることが望ましい。室内温度は夏場26~30℃、冬場18~22℃が例示される。本発明では、高温のサウナ室から低温の冷水浴する浴室や外気浴場に移動する際、温度管理された外気浴室を必ず通る間取り構造とすることで、移動の際の急激な温度変化を抑制してヒートショックなど身体的な負担を軽減することができる。
【0048】
また、外気浴室13の建物の外側に面した壁面には出入口19及び20が設置されている。壁面や天面に窓や天窓を設けてもよい。それらを開放して外気を積極的に導入することができ、雨天や荒天でも外気浴を楽しむことができる。外気浴室の中央には、使用者が腰掛けてリラックスできるテーブルや椅子、サンラウンジャーなどを設けてもよい。外気浴室13の室内や隣接して配置された洗面所に洗面台16を設置してもよい。サウナ室に直結した外気浴室やそれに隣接した洗面所に給水のための洗面台を設置することで、サウナにより脱水症状が起きても速やかに対処することができる。
【0049】
さらに、外気浴室13の室内に洗濯機を設置してもよい。脱衣した衣類や使用済みのタオル等をそのまま洗濯して、隣接する外気浴場14で干すことで効率的な洗濯動線とすることができる。エアコンなどの空調設備で一定の温度や湿度に保つことができる外気浴室13内で室内干しをすることもできる。リッチでラグジュアリーな空間づくりのためには、生活感を想起させる洗濯機本体は直接見えないことが望ましく、壁面やラック内に収納して扉等で隠すなどの処理が好ましい。その場合、近年の洗濯機は乾燥機能を備えた機種もあるので、洗濯機隠しの壁面や扉等には十分な換気・排熱機能を設ける必要がある。洗濯機隠しの壁面にガラリを設けることで、換気・排熱機能を確保するとともに点検口を兼ねてもよい。
【0050】
外気浴場14は、建物の屋外に配置され、区画壁や天面により隔てられておらず、外部に開放された空間に設置されている。外気浴室13に隣接して配置され、スムーズに出入りできるように外気浴室13との間に大きな段差が無いフラットな床構造が好ましい。具体的には、1階建て戸建て住宅ではテラスやウッドデッキが、2階建て戸建て住宅やマンションなどの集合住宅ではバルコニーやベランダが挙げられる。本実施形態では、外気浴室13に隣接して合成樹脂製のウッドデッキ14が設置されている。外気浴場にはハンモックやサンラウンジャーなどを設けてもよい。
【0051】
上記のサウナ室10、冷水浴が可能な浴室11及び外気浴場14と、隣接する外気浴室13との間には、出入口17、18、19及び20が設置され、これらの出入口と区画壁22、23、24及び25により各設備が区分けされている。
【0052】
出入口の形態としては、片開き又は両開きの開き戸(ドア)、片開き又は両開きの引き戸(スライドドア)、折れ戸(パネルドア)等が挙げられる。水回り設備であるサウナ室10及び浴室11と、外気浴室13との間に設けられる出入口17及び18には、気密性及び耐久性が求められるため、金属製の建具が好ましく、ドアやスライドドアが好ましい。本実施形態では、出入口17及び18はアルミ製の片開きドアである。
【0053】
屋外の外気浴場14と、屋内の外気浴室13との間に設けられる出入口19及び20には、気密性、耐久性及び防犯性が求められるため、枠体が金属製の建具が好ましく、施錠可能なドアやスライドドアが好ましい。本実施形態では、出入口19及び20はアルミ製の施錠可能な両開きのスライドドアである。
【0054】
屋外又は半屋外の露天風呂場スペース15と屋外の外気浴場14との間に設けられる出入口21には、高い気密性及び防犯性は求められないため、通気性及び採光性を有する格子戸等でもよい。本実施形態では、出入口21はアルミ製で両開きの格子引き戸である。プライバシー保護のため、露天風呂スペース15内には目隠しのための簾、衝立、パーテーションなどの簡易的な仕切りを設置してもよく、外気浴場14の外側に柵等を立設してもよい。
【0055】
本発明の間取り構造1では、サウナ室10、冷水浴が可能な浴室11及び外気浴場14が外気浴室13の周囲に隣接して配置され、露天風呂12が外気浴場14の場内に配置され、外気浴室13を中心にして各設備が集約して配置されている。一般住宅には通常無いこれらの専用設備を集約して配置することにより、本格的なサウナや温冷浴を安全に楽しむことができ、優雅な一時を過ごせる特別なプライベート空間を創出することができる。
【0056】
サウナ室10、浴室11、露天風呂場12及び外気浴場14を、外気浴室13を中心にして略十字型にコンパクトに配置することで、構造的な一体性が高まり、各設備間を移動する際の動線が短くなり、使用者の心理的及び身体的負担が軽減されヒートショックの防止にも有効である。空間の有効活用と建築費等の抑制を進めることもできる。また、視覚的な一体感が高まり、特別なプライベート空間を印象付けることができる。
【0057】
サウナ室10、浴室11及び外気浴場14と、これらに隣接する外気浴室13との間を隔てる出入口及び/又は区画壁の一部又は大部分が、ガラスなどにより透明に形成されていると、外側が見通せて限られた空間をより広く感じられるため好ましい。「大部分」とは出入口及び/又は区画壁の面積の半分以上が透明に形成され、「一部」とは半分未満が透明に形成されていることを意味する。
【0058】
透明部分を形成する部材としては、ガラス板、アクリルなどの透明プラスチック板が挙げられる。ガラスが好ましく、強化ガラスや耐熱性ガラスなどの機能性ガラスが最も好ましい。プライバシーを考慮して完全な透明でなく透過率をやや下げた半透明や曇りガラスでもよく、目隠し用フィルムを部分的に貼り付けてもよい。「透明」とは各設備の内側から外気浴室を挟んで対面に位置する設備の内側や建物の外側の様子を視認できる程度の透明性を意味し、「半透明」とはおぼろげに視認できる程度の透明性を意味する。透明に形成する範囲は、広いほど視覚的効果を得られるが、建材としての強度や耐震性、建築コストなどを考慮して設定される。
【0059】
出入口及び/又は区画壁の一部又は大部分を透明に形成した場合には、サウナ室及び浴室を、外気浴室を通して外気浴場又は露天風呂を見通せる位置に配置し、外気浴場及び露天風呂を、外気浴室を通してサウナ室又は浴室を見通せる位置に配置すると、視覚的な一体感が高まり好ましい。「見通せる」とは、各設備の内側で外気浴室との間の出入口又は区画壁に近い位置から外気浴室方向を見て、対面に位置する設備の内側の少なくとも一部を視認できることを意味する。
【0060】
本実施形態では、
図3~6に示すように、出入口17、18、19及び20の建具の枠体を除く略全体に透明な強化ガラス板が嵌め込まれており、区画壁22、23及び25の支柱や桟を除く略全体に透明な強化ガラス板が嵌め込まれている。サウナ室10の出入口17及び区画壁22には耐熱強化ガラス板が用いられている。出入口や区画壁の大部分を透明にして、さらに外気浴室を中心に各設備を互いに見通せる位置に集約して配置することで、リッチでラグジュアリーな雰囲気が強調され、優雅な時間を過ごすことができる特別なプライベート空間が創出されていることが分かる。
【0061】
また、外気浴室13、外気浴場14又は露天風呂12から見渡せる建物の外側には、庭園26又は森林や海岸等の景観を配置するのが好ましい。露天風呂12に浸かりながら又は外気浴室13や外気浴場14で休息しながら、庭園26や豊かな自然の景観を眺めることにより、リラックスして寛ぐことができストレス解消の効果を高めることができる。庭園の様式は日本庭園、西洋庭園、和洋折衷の何れでも構わないが、露天風呂12及び露天風呂スペース15が日本様式の場合は日本庭園が好ましい。
【0062】
本発明の間取り構造は、特別なプライベート空間の提供をコンセプトとしており、少人数向けの小規模住宅に適している。具体的には、1~3人程の居住に適した1階建て住宅が挙げられる。本実施形態では、広大な敷地に建つ平屋の隠れ別荘3の間取りとしている。
【0063】
本発明の間取り構造及び各設備の床面積は、その機能や効果を発揮できる範囲であれば特に限定されない。本発明のコンセプトから間取り構造の床面積は、狭すぎると狭小感が強く特別感が弱くなり、広すぎると建築及び維持コストが増大する。サウナ室、冷水浴が可能な浴室、外気浴室(洗面所スペースなどを除く)及び外気浴場(露天風呂スペースを含む)の合計床面積(A1)は、好ましくは9.3m2~59.5m2、より好ましくは19.2m2~42.9m2の範囲である。
【0064】
各設備の床面積は、サウナ室は好ましくは1.0m2~5.0m2、より好ましくは2.4m2~3.7m2、冷水浴が可能な浴室は好ましくは1.9m2~4.5m2、より好ましくは2.9m2~3.7m2、外気浴室は好ましくは2.9m2~15.0m2、より好ましくは7.4m2~11.0m2、外気浴場は好ましくは3.5m2~35.0m2、より好ましくは6.5m2~24.5m2の範囲である。
【0065】
本実施形態では、間取り構造1の合計床面積(A1)は29.8m2、各設備の床面積は、サウナ室10は1.9m2、冷水浴が可能な浴室11は3.2m2、外気浴室13(洗面所スペースを除く)は5.7m2、外気浴場14(露天風呂スペース15を含む)は19.0m2である。
【0066】
本発明の間取り構造を住宅の1フロアに採用した場合に、間取り構造の床面積の設置フロアの床面積に対する比率は、本発明の機能や効果を発揮できる範囲であれば特に限定されない。本発明のコンセプトから、一般的な住宅における浴室及びテラスなどの占める比率に比べて大きくなる。非日常的な空間を提供するためのプライベート感や特別感と日常的な居住環境の利便性や快適性とのバランスから、サウナ室、冷水浴が可能な浴室、外気浴室及び外気浴場の合計床面積A1と、外気浴場及び住宅設置フロアの合計床面積A2との比(A1:A2)は、好ましくは1:1.5~1:6、より好ましくは1:2~1:4の範囲である。
【0067】
本実施形態では、間取り構造1の合計床面積A1は29.8m2、外気浴場14及び1階建て住宅3の合計床面積A2は64.4m2であり、その比(A1:A2)は1:2.2となる。
【0068】
[間取りのシミュレーション]
図7(a)は、本発明の一実施形態である間取り構造4を示す平面図であり、合計床面積A1は上記好適範囲の下限の9.3m
2である。各設備の床面積は、サウナ室は1.0m
2、冷水浴が可能な浴室(洗面台を含む)は1.9m
2、外気浴室は2.9m
2、外気浴場(露天風呂スペースを含む)は3.5m
2である。
【0069】
図7(b)は、本発明の一実施形態である間取り構造5を示す平面図であり、合計床面積A1は上記好適範囲の上限の59.5m
2である。各設備の床面積は、サウナ室は5.0m
2、冷水浴が可能な浴室(洗面台を含む)は4.5m
2、外気浴室は15.0m
2、外気浴場(露天風呂スペースを含む)は35.0m
2である。
【0070】
図8(a)~(d)は、間取り構造4及び5を、戸建て住宅の1階フロア又は集合住宅の住戸の一角に取り入れることを想定し、合計床面積A1とA2との比(A1:A2)を、1:2~1:5の範囲でシミュレーションした結果を示す平面図である。小さめの間取り構造は、マンションなどの集合住宅の住戸、旅館やホテルなどの宿泊施設の客室、サウナやフィットネスジム施設の一人用サウナ室の間取りに適している。本発明の間取り構造をこれらの一室に取り入れた場合には、合計床面積A2は所有者又は利用者が占有する空間の床面積を基準に算出する。また、大きめの間取り構造は、4~6人程の家庭向けの戸建て住宅や別荘の間取りに適している。
【0071】
本発明は建物の間取り構造である。「建物」とは、人が生活や仕事のために利用する建物を広く意味し、前記の通り人が居住する1階又は多層階の戸建て住宅やマンションなどの集合住宅、観光客が宿泊する旅館やホテルなどの宿泊施設、サウナやフィットネスジムを提供する商業施設や商業ビルなどを含むものとする。
【符号の説明】
【0072】
1…間取り構造(第1実施形態)、10…サウナ室、11…冷水浴が可能な浴室、12…露天風呂、13…外気浴室、14…外気浴場(ウッドデッキ)、15…露天風呂スペース、16…洗面台、17,18…出入口(ドア)、19,20,21…出入口(スライドドア)、22,23,24,25…区画壁、26…庭。
3…1階建て住宅(平屋別荘)、4,5…間取り構造(シミュレーション)。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温冷浴設備と外気浴設備とを備えた建物の間取り構造において、
前記温冷浴設備が、サウナ室、チラーを備え所定の水温で冷水浴が可能な浴室、及び露天風呂であり、前記外気浴設備が、空調設備により温度管理又は温湿度管理が可能な外気浴室、及び区画壁により隔てられておらず外部に開放された外気浴場であり、
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場が、前記外気浴室の周囲に隣接して配置され、前記露天風呂が、前記外気浴場の場内に配置された露天風呂スペース内に設置されており、
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場と前記外気浴室との間に出入口が設置されており、
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場と前記外気浴室との間を隔てる前記出入口及び/又は区画壁の一部又は大部分が、透明及び/又は半透明に形成されており、
前記サウナ室及び前記浴室が、前記外気浴室を通して前記外気浴場又は前記露天風呂を見通せる位置に配置され、前記外気浴場及び前記露天風呂が、前記外気浴室を通して前記サウナ室又は前記浴室を見通せる位置に配置されていることを特徴とする、間取り構造。
【請求項2】
前記サウナ室、前記浴室、前記露天風呂及び前記外気浴場が、前記外気浴室を中心にして略十字型に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の間取り構造。
【請求項3】
前記外気浴室の室内又は前記外気浴室に隣接して配置された洗面所に、洗面台が設置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の間取り構造。
【請求項4】
前記外気浴室、前記外気浴場又は前記露天風呂から見渡せる建物の外側に、庭園又は自然の景観が配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の間取り構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の間取り構造を備え、少人数の居住に適した1階建てであることを特徴とする、住宅。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の間取り構造を備え、それを取り入れた建物とその区画が、戸建て住宅の1フロア、集合住宅の住戸、宿泊施設の客室、又は商業施設のプライベートサウナ室であることを特徴とする、建物。
【請求項7】
前記サウナ室、前記浴室、前記外気浴室及び前記外気浴場の合計床面積A1と、前記外気浴場及び前記間取り構造を取り入れた区画の合計床面積A2との比(A1:A2)が、1:1.5~1:6の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の建物。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
温冷浴設備と外気浴設備とを備えた建物の間取り構造において、
前記温冷浴設備が、サウナ室、チラーを備え所定の水温で冷水浴が可能な浴室、及び露天風呂であり、前記外気浴設備が、空調設備により温度管理又は温湿度管理が可能な外気浴室、及び区画壁により隔てられておらず外部に開放された外気浴場であり、
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場が、前記外気浴室の周囲に隣接して配置され、前記露天風呂が、前記外気浴場の場内に配置された露天風呂スペース内に設置されており、
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場と前記外気浴室との間に出入口が設置されており、
前記サウナ室、前記浴室及び前記外気浴場と前記外気浴室との間を隔てる前記出入口及び/又は区画壁の一部又は大部分が、透明及び/又は半透明に形成されており、
前記サウナ室及び前記浴室が、前記外気浴室を通して前記外気浴場又は前記露天風呂を見通せる、前記外気浴室を挟んで前記外気浴場又は前記露天風呂の対面の位置に配置され、前記外気浴場及び前記露天風呂が、前記外気浴室を通して前記サウナ室又は前記浴室を見通せる、前記外気浴室を挟んで前記サウナ室又は前記浴室の対面の位置に配置されていることを特徴とする、間取り構造。