(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082767
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 7/104 20060101AFI20240613BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240613BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240613BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
F16F7/104
B60N2/90
F16F15/04 M
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196862
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】中里 宏
【テーマコード(参考)】
3B087
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3B087DE10
3J048AA01
3J048AC01
3J048AD05
3J048AD11
3J048BF02
3J048CB05
3J048DA04
3J066BB01
3J066DA07
(57)【要約】
【課題】共振を抑制する機能を確保しつつ、打音の発生を低減しつつ、弾性部材への負荷を低減するダイナミックダンパを提供する。
【解決手段】ダイナミックダンパは、重錘と、重錘を振動可能に支持する弾性部材と、を備える。弾性部材は、重錘を保持する保持部と、保持部から延出して取付部材に連結する連結部と、保持部から突出するように設けられる突部と、を有する。突部は、ダイナミックダンパに外力が入力されていない自由状態において取付部材の当接面から所定間隔で離間した位置をとり、ダイナミックダンパに外力が入力されて所定間隔よりも大きく変位すると当接面に当たって弾性変形し、突部は、連結部の延出方向と同じ方向に突出する第1突部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材に取り付けられるダイナミックダンパであって、
重錘と、
前記重錘を振動可能に支持する弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、
前記重錘を保持する保持部と、
前記保持部から延出して前記取付部材に連結する連結部と、
前記保持部から突出するように設けられる突部と、を有し、
前記突部は、前記ダイナミックダンパに外力が入力されていない自由状態において前記取付部材の当接面から所定間隔で離間した位置をとり、前記ダイナミックダンパに外力が入力されて所定間隔よりも大きく変位すると前記当接面に当たって弾性変形し、
前記突部は、前記連結部の延出方向と同じ方向に突出する第1突部を有することを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項2】
前記突部は、平らな両側面を有する板状に形成されることを特徴とする請求項1に記載のダイナミックダンパ。
【請求項3】
前記第1突部は、前記連結部を挟んで対向するように一対設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のダイナミックダンパ。
【請求項4】
前記連結部は、同軸上に一対設けられ、前記重錘を挟んで互いに逆方向に延び、
前記突部は、前記連結部の延出方向に直交する方向に突出する第2突部をさらに有し、
前記第2突部は、前記連結部の延出方向に互いに対向する一対の板状平面を有することを特徴とする請求項1または2に記載のダイナミックダンパ。
【請求項5】
前記連結部は、同軸上に一対設けられ、前記重錘を挟んで互いに逆方向に延び、
前記突部は、前記連結部の延出方向に直交する方向に突出する第2突部をさらに有し、
前記第2突部は、前記重錘を挟んで対向配置されるように、少なくとも一対設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のダイナミックダンパ。
【請求項6】
当該ダイナミックダンパは、車載部品である取付部材に取り付けられ、
前記突部は、所定の加速度以下の振動では前記当接面に当接しない高さに設定されることを特徴とする請求項1または2に記載のダイナミックダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動を抑えるダイナミックダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
乗員が着座するシート装置や乗員の頭を支持するヘッドレストが走行時やアイドリング中の振動等により共振すると乗員の乗り心地が低下するおそれがある。
【0003】
特許文献1には、シートバックの上部に設けられるヘッドレストが、ヘッドレストの骨格を成すステーと、ステーの一部を挟み込むとともに内部に空間部を形成して外周を接合された前後パネルと、ステーの一部と前後パネルとを覆うパッドと、空間部の中に配設されたダイナミックダンパとを備えることが開示されている。このダイナミックダンパは、重錘と、重錘を拘持するとともに重錘から離れる方向に延びる上柱部と下柱部を備えた弾性部材と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のダイナミックダンパにおいて、重錘が振動することによって共振を抑制する機能を発揮するため重錘の振動を確保すべきであるが、重錘が過度に揺れると弾性部材が前後パネルに当たって大きな打音が生じるおそれがあり、弾性部材の柱部への負荷が大きくなるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、共振を抑制する機能を確保しつつ、打音の発生を低減しつつ、弾性部材への負荷を低減するダイナミックダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、取付部材に取り付けられるダイナミックダンパであって、重錘と、重錘を振動可能に支持する弾性部材と、を備える。弾性部材は、重錘を保持する保持部と、保持部から延出して取付部材に連結する連結部と、保持部から突出するように設けられる突部と、を有する。突部は、ダイナミックダンパに外力が入力されていない自由状態において取付部材の当接面から所定間隔で離間した位置をとり、ダイナミックダンパに外力が入力されて所定間隔よりも大きく変位すると当接面に当たって弾性変形し、突部は、連結部の延出方向と同じ方向に突出する第1突部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、共振を抑制する機能を確保しつつ、打音の発生を低減しつつ、弾性部材への負荷を低減するダイナミックダンパを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ダイナミックダンパの取付構造の斜視図である。
【
図2】ダイナミックダンパの取付構造の分解図である。
【
図4】
図4(a)は、弾性部材の上面図であり、
図4(b)は、弾性部材の正面図であり、
図4(c)は、弾性部材の側面図である。
【
図5】ケースに取り付けた状態のダイナミックダンパの斜視図である。
【
図6】軸方向に沿ったダイナミックダンパの断面図である。
【
図7】
図5に示すダイナミックダンパの線分A-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ダイナミックダンパの取付構造1の斜視図である。また、
図2は、ダイナミックダンパ10の取付構造の分解図である。ダイナミックダンパ10は、車両のヘッドレストやシート装置などの車載部品に取り付けられる。ダイナミックダンパ10は、車載部品の共振を抑制するため、車載部品の振動を打ち消す振動を発生させる。
【0011】
ダイナミックダンパ10は、重錘24および弾性部材26を少なくとも備える。ケース20およびカバー22は、重錘24および弾性部材26を収容する収容空間を形成し、ダイナミックダンパ10を取り付ける取付部材として機能する。
【0012】
なお、実施例では、ダイナミックダンパ10が
図1のようにケース20およびカバー22によってユニット化されているが、重錘24および弾性部材26がヘッドレストやシート装置を構成する車載部品に直接取り付けられてもよい。つまり、ダイナミックダンパ10が取り付けられる取付部材は、ケース20およびカバー22だけに限られず、ヘッドレストやシート装置を構成する車載部品であってもよい。ケース20およびカバー22は、車両に設けられるため、ダイナミックダンパ10を車両に取り付ける車載部品としても機能する。
【0013】
ケース20は、複数のフック部30、一対の被連結部32および溝部34を有する。フック部30は、鉤状に形成され、ケース20の左右と上部に3つ形成され、棒状の車載部品に引っ掛けられる。なお、ケース20の車載部品への取付構造はこの態様に限られず、ネジ止めなどであってよい。ケース20の内面36およびカバー22の内面は、弾性部材26が当接可能な当接面として機能する。
【0014】
被連結部32は、当接面32aとレール部32bとを有し、弾性部材26を連結することができる。当接面32aは、ケース20の内側の端面に位置し、弾性部材26が当接可能である。当接面32aは、ケース20の内面36よりも内側に離間して位置する。レール部32bは、当接面32aを切り欠くように形成され、弾性部材26を連結する際に誘導するガイドとして機能する。
【0015】
溝部34は、ケース20の開口縁に全周に亘って形成される。溝部34は、カバー22の開口縁を差し込み可能であり、カバー22の開口縁に係合する。カバー22は、ケース20の開口を閉塞する。
【0016】
重錘24は、円柱形状の金属製である。重錘24は、円柱形状に限られず、四角柱状であってもよい。弾性部材26は、一対設けられ、重錘24の両端部を保持するとともに、ケース20に連結する。弾性部材26は、重錘24を振動可能に支持する。弾性部材26は、ゴム材料で形成され、撓み可能である。
【0017】
図3は、一対の弾性部材26の斜視図である。また、
図4(a)は、弾性部材26の上面図であり、
図4(b)は、弾性部材26の正面図であり、
図4(c)は、弾性部材26の側面図である。
【0018】
弾性部材26は、保持部40、連結部42、第1突部44、第2突部46a,46b,46cおよびスリット48を有する。保持部40は、重錘24の端部の形状に合わせた形状を有し、有底筒状に形成され、重錘24の端部を保持する。保持部40の角にはスリット48が形成される。スリット48により重錘24が保持部40によってしっかり保持される。
【0019】
連結部42は、保持部40から延出して取付部材に連結する。連結部42は、首部42aおよびフランジ部42bを有する。首部42aは、保持部40の底部中央から延出し、柱状に形成される。フランジ部42bは、首部42aの先端から径方向外向きに張り出すように形成される。フランジ部42bは、ケース20の被連結部32に差し込まれて連結され、首部42aはレール部32bの隙間から延出する。一対の連結部42は、同軸に配置され、重錘24を挟んで互いに逆方向に延びる。
【0020】
第1突部44および第2突部46a,46b,46c(これらを区別しない場合、「突部」という。)は、保持部40から突出するように設けられ、平らな両側面を有する板状に形成される。連結部42が過度に伸縮した場合に突部がケース20の当接面32a,36に当たって撓むため、連結部42の損傷を抑えるとともに、打音を抑制できる。一方、第1突部44および第2突部46a,46b,46cは、当接面32a,36から離間しており、連結部42が過度に伸縮しなければ当接面32a,36に当たらないため、共振を抑制する機能をそのまま発揮できる。仮に突部が撓みにくい剛体に近い形状、例えば半球状やリブ状である場合、突部が当接面32a,36にあたっても撓まないため、減衰性能を低下させるおそれがある。突部が板状に形成されることで、撓みやすく設定されつつも、根元部分の剛性を確保することができる。
【0021】
第1突部44は、保持部40の底面から連結部42の延出方向と同じ方向に突出する。この第1突部44により、保持部40が当接面32aに当たって発生する打音を抑制できる。また、連結部42の首部42aが縮んで連結が緩み、連結部42が被連結部32から外れる方向の動きを抑えられる。
【0022】
第1突部44は、連結部42を挟んで対向するように一対設けられる。連結部42の周りで、連結部42の過度な動きを制限できる。第1突部44は、平らな両側面44aを有し、板状に形成されている。
【0023】
第2突部46a,46b,46cは、連結部42の延出方向に直交する方向、すなわち径方向に突出する。第2突部46a,46b,46cは、周方向に離間して複数設けられる。第1突部44に加えて第2突部46a,46b,46cを設けることで、重錘24が四方のいずれかの方向に過度に揺れても打音を抑制できる。また、第2突部46a,46b,46cが周方向に離間して複数設けられることで、重錘24が前後左右に過度に揺れても打音を抑制できる。
【0024】
第2突部46a,46b,46cは、軸方向の両端が平面状に形成され、突端に向かってテーパ状に形成される。第2突部46aは、
図4(c)に示すように、周方向に隣接して一対設けられ、軸方向に同じ高さに設けられる。隣接する一対の第2突部46aの突端は、周方向に離れて形成される。第2突部46aは、スリット48と軸方向に重なる位置に配置される。
図4(c)に示すように、第2突部46aは、連結部42の延出方向に互いに対向する一対の板状平面47を有する。一対の板状平面47は、連結部42の延出方向に対して略直交する方向に延在する。これにより、第2突部46aの撓みやすさと剛性を両立することができる。なお、第2突部46b,46cも第2突部46aと同様に一対の板状平面を有する。
【0025】
第2突部46bおよび第2突部46cは、スリット48と周方向にずれた位置に形成され、互いに軸方向に離れて位置する。周方向位置において、第2突部46cは、第2突部46aおよび第2突部46bの間に設けられ、第2突部46aおよび第2突部46bよりも連結部42側に位置する。第2突部46aおよび第2突部46bが第2突部46cと軸方向にずれた位置に設けられることで、重錘24の過度な軸ぶれを抑えることができる。
【0026】
図4(a)に示すように、第2突部46a,46b,46cは、重錘24を挟んで対向配置されるように、少なくとも一対設けられる。つまり、第2突部46a,46b,46cは、軸方向に見て、重錘24の中心軸に対して点対称に配置されている。これにより、重錘24が中心軸に直交するいずれの方向に過度に揺れても、第2突部46a,46b,46cを当接面に当てることができる。なお、実施例の第2突部46a,46b,46cは、周方向に離れて8つ設けられているが、この数に限られず、重錘24を挟んで対向配置されていれば少なくてもよい。
【0027】
図5は、ケース20に取り付けた状態のダイナミックダンパ10の斜視図である。また、
図6は、軸方向に沿ったダイナミックダンパ10の断面図である。また、
図7は、
図5に示すダイナミックダンパ10の線分A-A断面図であり、
図6に示すダイナミックダンパ10の線分B-B断面図である。重錘24は、連結部42の首部42aの撓みを利用して振動し、車載部品の振動を打ち消す作用を働く。
【0028】
第1突部44および第2突部46a,46b,46cは、ダイナミックダンパ10に外力が入力されていない自由状態において取付部材の当接面32a,36から所定間隔で離間した位置をとり、ダイナミックダンパ10に外力が入力されて所定間隔よりも大きく変位すると当接面32a,36に当たって弾性変形する。第1突部44および第2突部46a,46b,46cは、ケース20の当接面32a,36から所定間隔で離間しており、連結部42が過度に伸縮しなければ当接面32a,36に当たらないため、共振を抑制する機能をそのまま発揮できる。
【0029】
所定間隔は、実験等によって定められるが、所定の加速度以下の重錘24の振動によって当接面32a,36に当接しない間隔に設定される。つまり、第1突部44および第2突部46a,46b,46cは、所定の加速度以下の振動では当接面32a,36に当接しない高さに設定される。これにより、重錘24が通常の振動をする場合には、突部が当接面32a,36に当接せずに、車載部品の振動を抑制する機能を発揮できる。
図6に示すように、第1突部44から当接面32aまでの所定間隔Lは、通常の振動では第1突部44が当接面32aに当接しないように設定されている。第1突部44の突出高さは、所定間隔Lよりも大きく、第1突部44の長さを十分に確保されている。
【0030】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0031】
10 ダイナミックダンパ、 20 ケース、 22 カバー、 24 重錘、 26 弾性部材、 30 フック部、 32 被連結部、 32a 当接面、 32b レール部、 34 溝部、 36 内面、 40 保持部、 42a 首部、 42b フランジ部、 42 連結部、 44 第1突部、 46a,46b,46c 第2突部、 48 スリット。