IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体吐出装置 図1
  • 特開-液体吐出装置 図2
  • 特開-液体吐出装置 図3
  • 特開-液体吐出装置 図4
  • 特開-液体吐出装置 図5
  • 特開-液体吐出装置 図6
  • 特開-液体吐出装置 図7
  • 特開-液体吐出装置 図8
  • 特開-液体吐出装置 図9
  • 特開-液体吐出装置 図10
  • 特開-液体吐出装置 図11
  • 特開-液体吐出装置 図12
  • 特開-液体吐出装置 図13
  • 特開-液体吐出装置 図14
  • 特開-液体吐出装置 図15
  • 特開-液体吐出装置 図16
  • 特開-液体吐出装置 図17
  • 特開-液体吐出装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082768
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240613BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/01 451
B41J2/01 125
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196863
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 誠
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EB08
2C056EB13
2C056EB20
2C056EB30
2C056EB45
2C056EC12
2C056EC29
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C056HA46
2C057AF21
2C057AF73
2C057AG29
2C057AG44
2C057AG55
2C057AG68
2C057AG75
2C057AG91
2C057AK07
2C057AL25
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】プリントヘッドの内部に設けられた温度検知部の温度検出特性のばらつきを低減できる液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】
駆動信号に基づいて媒体に液体を吐出するヘッドユニットが有するユニット温度検出回路が出力するユニット温度信号と、プリントヘッドのヘッド温度検出部が出力するプリントヘッドの温度に対応するヘッド温度情報を含むヘッド温度信号とが入力され、温度情報信号を出力する温度情報出力回路は、発熱機構が所定温度で発熱している場合に入力されるユニット温度情報とヘッド温度情報とに基づいて、温度情報信号として出力するヘッド温度情報を補正する、液体吐出装置。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号に基づいて媒体に液体を吐出するヘッドユニットと、
発熱機構と、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記駆動信号に基づいて液体を吐出するプリントヘッドと、
前記ヘッドユニットの温度をユニット温度情報として検出し、前記ユニット温度情報を含むユニット温度信号を出力するユニット温度検出回路と、
前記ユニット温度信号と、前記プリントヘッドの温度に対応するヘッド温度情報を含むヘッド温度信号とが入力され、温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を有し、
前記プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度に対応する前記ヘッド温度情報を検出し、前記ヘッド温度信号として出力するヘッド温度検出部と、
を含み、
前記温度情報出力回路は、
前記発熱機構が所定温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度情報と前記ヘッド温度情報とに基づいて、前記温度情報信号として出力する前記ヘッド温度情報を補正する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記温度情報出力回路は、
起動時であって前記発熱機構が所定温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度信号に含まれる前記ユニット温度情報を基準ユニット温度情報として保持し、
起動時であって前記発熱機構が前記所定温度で発熱している場合に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を基準ヘッド温度情報として保持し、
前記プリントヘッドが液体を吐出する液体吐出時に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を、前記基準ユニット温度情報と前記基準ヘッド温度情報とに基づいて補正し、前記温度情報信号として出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記温度情報出力回路は、
前記発熱機構が前記所定温度としての第1温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度信号に含まれる前記ユニット温度情報を第1基準ユニット温度情報として保持し、
前記発熱機構が前記第1温度で発熱している場合に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を第1基準ヘッド温度情報として保持し、
前記発熱機構が前記所定温度としての第2温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度信号に含まれる前記ユニット温度情報を第2基準ユニット温度情報として保持し、
前記発熱機構が前記第2温度で発熱している場合に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を第2基準ヘッド温度情報として保持し、
保持する前記第1基準ユニット温度情報、前記第2基準ユニット温度情報、前記第1基準ヘッド温度情報、及び前記第2基準ヘッド温度情報に基づいて補正関数を算出し、
前記補正関数を用いて、前記プリントヘッドが液体を吐出する液体吐出時に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を補正し、前記温度情報信号として出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記発熱機構はセラミックヒーターを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記発熱機構は、前記媒体を乾燥させる媒体加熱機能を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズルから液体が吐出される吐出方向において、前記発熱機構は、前記プリントヘッドの少なくとも一部と重なるように位置している、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記プリントヘッドは、前記ノズルが形成されたノズルプレートを含み、前記ノズルプレートと前記発熱機構との最短距離は1mm未満である、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記ヘッド温度検出部は、前記振動板の前記積層方向における他方側の面に設けられ、白金を含む配線を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置には、圧電素子と、圧力室と、圧力室と連通するノズルとを有するプリントヘッドを備えた構成が知られている。そして、プリントヘッドは、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで、圧力室に供給された液体をノズルから吐出する。このようなプリントヘッドを備えた液体吐出装置では、プリントヘッドに貯留されるインクの温度に基づいて圧電素子を駆動制御することで、当該インクの温度に適した吐出制御を実現する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電素子、圧力室、及びノズルを有するプリントヘッドの内部に、インクが貯留される圧力室の温度を検出する温度検知部が設けられていることで、温度検知部が検出する温度と圧力室内の温度との温度差を小さくすることができ、圧力室内に貯留されるインクの温度の検出精度を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-124599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、プリントヘッドの内部に設けられた温度検知部の温度検出特性のばらつきについて考慮されておらず、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
駆動信号に基づいて媒体に液体を吐出するヘッドユニットと、
発熱機構と、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記駆動信号に基づいて液体を吐出するプリントヘッドと、
前記ヘッドユニットの温度をユニット温度情報として検出し、前記ユニット温度情報を含むユニット温度信号を出力するユニット温度検出回路と、
前記ユニット温度信号と、前記プリントヘッドの温度に対応するヘッド温度情報を含むヘッド温度信号とが入力され、温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を有し、
前記プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度に対応する前記ヘッド温度情報を検出し、前記ヘッド温度信号として出力するヘッド温度検出部と、
を含み、
前記温度情報出力回路は、
前記発熱機構が所定温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度情報と前記ヘッド温度情報とに基づいて、前記温度情報信号として出力する前記ヘッド温度情報を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】液体吐出装置の概略構成を示す図である。
図2】発熱ユニットをZ軸に沿って見た場合の平面図である。
図3図2に示すA-a断面を示す断面図である。
図4】プリントヘッドの構造を示す分解斜視図である。
図5】プリントヘッドをZ軸に沿って見た場合の平面図である。
図6図5に示すB-b断面を示す断面図である。
図7図6の要部の詳細を示す要部詳細図である。
図8図5に示すC-c断面を示す断面図である。
図9】液体吐出装置の機能構成を示す図である。
図10】駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
図11】駆動信号選択回路の構成を示す図である。
図12】デコーダーにおけるデコード内容の一例を示す図である。
図13】選択回路の構成を示す図である。
図14】駆動信号選択回路の動作を説明するための図である。
図15】温度情報出力回路の機能構成を示す図である。
図16】温度情報出力回路の動作を説明するための図である。
図17】補正関数算出処理の一例を説明するための図である。
図18】温度情報出力処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.液体吐出装置の構造
[液体吐出装置の構造]
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す図である。本実施形態の液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを吐出するプリントヘッド22を搭載したキャリッジ21が走査軸に沿って往復動し、搬送方向に沿って搬送される媒体Pに対してインクを吐出することで、媒体Pに所望画像を形成する所謂シリアル印刷方式のインクジェットプリンターである。また、液体吐出装置1における媒体Pとしては、印刷用紙、樹脂フィルム、布帛等の任意の印刷対象を用いることができる。なお、液体吐出装置1は、シリアル印刷方式のインクジェットプリンターに限るものではなく、ライン印刷方式のインクジェットプリンターであってもよい。また、液体吐出装置1は、インクジェットプリンターに限るものではなく、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物吐出装置、立体造形装置、及び捺染装置等であってもよい。
【0010】
ここで、以下の説明では、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸を用いて説明を行う。また、以下の説明において、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれに沿った方向の向きを特定する場合、図示するX軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+X側、起点側を-X側と称し、図示するY軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+Y側、起点側を-Y側と称し、図示するZ軸に沿った方向を示す矢印の先端側を+Z側、起点側を-Z側と称する。
【0011】
図1に示すように液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット20、移動ユニット30、搬送ユニット40、発熱ユニット80、及びインク容器90を備える。
【0012】
インク容器90には、媒体Pに吐出される複数種類のインクが貯留されている。このようなインクが貯留されるインク容器90としては、インクカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及びインクの補充が可能なインクタンク等を用いることができる。
【0013】
制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、ヘッドユニット20を含む液体吐出装置1の各要素を制御する。
【0014】
ヘッドユニット20は、キャリッジ21、及び複数のプリントヘッド22を含む。キャリッジ21は、後述する移動ユニット30に含まれる無端ベルト32に固定されている。複数のプリントヘッド22は、キャリッジ21に搭載されている。また、複数のプリントヘッド22のそれぞれには、制御ユニット10が出力する制御信号Ctrl-H、及び駆動信号COMが入力される。さらに、複数のプリントヘッド22のそれぞれには、インク容器90に貯留されているインクが、不図示のチューブ等を介して供給される。プリントヘッド22は、入力される制御信号Ctrl-H及び駆動信号COMに基づいて、インク容器90から供給されるインクを吐出する。このとき、プリントヘッド22がインク吐出するZ軸に沿った方向であって、Z軸に沿って-Z側から+Z側に向かう方向を吐出方向と称する場合がある。
【0015】
移動ユニット30は、キャリッジモーター31、及び無端ベルト32を含む。キャリッジモーター31は、制御ユニット10から入力される制御信号Ctrl-Cに基づいて動作する。無端ベルト32は、X軸に沿って延在し、キャリッジモーター31の動作に従って回転する。これにより、無端ベルト32に固定されたキャリッジ21がX軸に沿って移動する。すなわち、移動ユニット30は、キャリッジ21に搭載された複数のプリントヘッド22をX軸に沿って往復動させる。ここで、以下の説明において、キャリッジ21に搭載された複数のプリントヘッド22が移動するX軸に沿った方向を走査方向と称する場合がある。
【0016】
搬送ユニット40は、搬送モーター41、及び搬送ローラー42を含む。搬送モーター41は、制御ユニット10から入力される制御信号Ctrl-Tに基づいて動作する。搬送ローラー42は、媒体Pを挟持した状態で、搬送モーター41の動作に従って回転する。これにより、搬送ローラー42に挟持された媒体PがY軸に沿って-Y側から+Y側に向かい搬送される。すなわち、搬送ユニット40は、媒体PをY軸に沿って-Y側から+Y側に向かい搬送させる。ここで、以下の説明において、媒体Pが搬送される-Y側から+Y側に向かう方向を搬送方向と称する場合がある。
【0017】
発熱ユニット80は、ヘッドユニット20の+Z側に位置し、-Z側の面において、搬送ユニット40が搬送する媒体Pを支持する。また、発熱ユニット80は、制御ユニット10から入力される制御信号Ctrl-Wに基づいて熱を発生する。発熱ユニット80は、制御信号Ctrl-Wに基づいて発する熱により、支持する媒体Pを加熱する。これにより、発熱ユニット80に支持される媒体P、及び媒体Pに着弾したインクが乾燥される。その結果、媒体Pに着弾したインクの定着性が高められる。すなわち、発熱ユニット80は、媒体Pを支持する媒体支持機能と、媒体P及び媒体Pに着弾したインクを乾燥させる媒体加熱機能と、を有する。
【0018】
以上のように構成された液体吐出装置1は、移動ユニット30が、キャリッジ21の走査方向に沿った往復動を制御するとともに、搬送ユニット40が、発熱ユニット80に支持された媒体Pの搬送方向に沿った方向に搬送を制御する。そして、キャリッジ21の走査方向に沿った往復動と媒体Pの搬送方向への搬送とに連動して、キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド22がインクを吐出する。その結果、プリントヘッド22が吐出するインクを媒体Pの任意の表面に着弾させることができ、媒体Pに所望の画像が形成される。このとき、発熱ユニット80は、媒体P及び媒体Pに着弾したインクを乾燥させる。これにより、媒体Pに着弾したインクの定着性が高まる。その結果、媒体Pに形成される画像品質が向上する。すなわち、本実施形態の液体吐出装置1は、駆動信号COMに基づいて媒体Pに液体を吐出するヘッドユニット20と、発熱ユニット80と、を備える。
【0019】
[発熱ユニット80の構造]
次に、発熱ユニット80の構造の具体例について説明する。図2は、発熱ユニット80をZ軸に沿って見た場合の平面図である。また、図2には、発熱ユニット80の-Z側に位置するヘッドユニット20を破線図示している。図2に示すように発熱ユニット80は、媒体支持部82、及び複数のヒーター84を有する。
【0020】
媒体支持部82は、X軸とY軸とからなるXY平面に沿って延在する板状部材であり、-Z側の面で搬送される媒体Pを支持する。
【0021】
複数のヒーター84は、それぞれがX軸に沿って延在する長辺と、Y軸に沿って延在する短辺とを含む略矩形状である。そして、ヒーター84は、X軸に沿った長辺が、搬送される媒体PのX軸に沿った幅以上となるように位置し、複数のヒーター84は、発熱ユニット80において、Y軸に沿って並設されている。また、複数のヒーター84は、-Z側の面において、媒体支持部82とともに搬送される媒体Pを支持する。すなわち、複数のヒーター84は、-Z側の面が媒体支持部82の-Z側の面とXY平面に沿った略同一平面を成すように位置し、媒体Pは当該同一平面に沿って搬送される。
【0022】
以上のように配置された複数のヒーター84は、複数のヒーター84の-Z側の面と、媒体支持部82の-Z側の面とで支持される媒体Pを加熱する。これにより、搬送される媒体Pへのインクの定着性を高めることができる。
【0023】
具体的には、複数のヒーター84の内のいくつかは、発熱ユニット80をZ軸に沿って見た場合にヘッドユニット20よりも-Y側に位置している。すなわち、複数のヒーター84の内のいくつかは、媒体Pが搬送される搬送方向において、ヘッドユニット20よりも上流側に位置している。このヘッドユニット20よりも上流側に位置するヒーター84は、搬送される媒体Pを余熱する。これにより、搬送される媒体Pが乾燥される。その結果、プリントヘッド22から吐出されるインクの媒体Pに対する親和性を高めることができる。
【0024】
また、複数のヒーター84の内のいくつかは、発熱ユニット80をZ軸に沿って見た場合に少なくとも一部がヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22と重なるように位置している。すなわち、プリントヘッド22が有するノズルからインクが吐出されるZ軸に沿った方向において、発熱ユニット80が有するヒーター84は、プリントヘッド22の少なくとも一部と重なるように位置している。これにより、ヘッドユニット20が有するプリントヘッド22から吐出されるインクが媒体Pに着弾した際に、着弾したインクによって滲み等が生じるおそれを低減することができる。
【0025】
さらに、複数のヒーター84の内のいくつかは、発熱ユニット80をZ軸に沿って見た場合にヘッドユニット20よりも+Y側に位置している。すなわち、複数のヒーター84の内のいくつかは、媒体Pが搬送される搬送方向において、ヘッドユニット20よりも下流側に位置している。このヘッドユニット20よりも下流側に位置するヒーター84によって、媒体Pに着弾したインクが乾燥する。これにより、媒体Pに着弾したインクが媒体Pに定着する。
【0026】
なお、発熱ユニット80における複数のヒーター84の配置は、搬送される媒体Pを加熱できればよく、図2に示す配置に限られるものではない。例えば、ヒーター84のX軸に沿った長辺が、搬送される媒体PのX軸に沿った幅よりも小さい場合に、複数のヒーター84が、X軸に沿って千鳥状に配置されていてもよい。また、複数のヒーター84の内のいくつかが、媒体Pの-Y側に位置してもよい。
【0027】
次に、ヒーター84の構造の具体例について説明する。図3は、ヒーター84の構造の一例を示す図であって、図2に示すA-a断面を示す断面図である。図3に示すように、ヒーター84は、セラミック基板840、発熱抵抗体842、及び保護部材844を含む。
【0028】
セラミック基板840は、X軸とY軸とからなるXY平面に沿って延在する板状部材であり、このセラミック基板840の-Z側の面で媒体Pが支持される。すなわち、ヒーター84は、セラミック基板840の-Z側の面が媒体支持部82の-Z側の面とXY平面に沿った略同一平面を成すように位置している。このセラミック基板840は、発熱抵抗体842が発する熱を伝導する。これにより、セラミック基板840の-Z側の面で支持される媒体Pが加熱される。このようなセラミック基板840は、例えば、酸化アルミニウム、窒化珪素、又は、窒化アルミニウム等のセラミック材料を用いることができる。酸化アルミニウム、窒化珪素、又は窒化アルミニウム等は、ガラス、例えば、石英ガラス等と比較して、熱伝導率が高い。このような熱伝導率の高い酸化アルミニウム、窒化珪素、又は、窒化アルミニウム等を含んでセラミック基板840を構成することで、石英ガラス等を用いた場合と比較して、後述する発熱抵抗体842で生じた熱を効率よく伝導することが可能となる。その結果、ヒーター84の温度の上昇スピード、及び、温度の低下スピードを速くすることができる。
【0029】
すなわち、本実施形態のヒーター84は、セラミックを介して熱を放出するセラミックヒーターであって、発熱ユニット80は、セラミックヒーターを含んで構成されている。これにより、発熱ユニット80が石英ガラス等で構成される石英ガラスヒーターを含んで構成された場合と比較して、発熱ユニット80の温度の上昇スピード、及び、温度の低下スピードを速くすることが可能となり、搬送される媒体Pの温度を精度よく制御することができる。その結果、媒体Pへのインクの定着性が向上し、媒体Pに形成される画像品質が向上する。
【0030】
ここで、一般的に、セラミックの基板を用いたセラミックヒーターでは、セラミックヒーターの面積が大きくなった場合に、セラミックヒーターの部位毎に温度にばらつきが生じる可能性がある。そのため、面積の大きな単一のセラミックヒーターを用いて媒体Pを加熱する場合、媒体Pの全体を所望の温度で正確に加熱することが困難であるとの問題があった。これに対して、本実施形態の発熱ユニット80は、複数のヒーター84を用いて、媒体Pを加熱する。すなわち、単一のセラミックヒーターを用いて媒体Pを加熱する場合と比較して、ヒーター84の個々のサイズを小さくすることができる。これにより、本実施形態の発熱ユニット80では、単一のセラミックヒーターを用いて媒体Pを加熱する場合と比較して、媒体Pの全体の温度を均一に制御することができる。
【0031】
さらに、本実施形態に係るヒーター84では、複数の発熱抵抗体842を用いて、セラミック基板840を加熱する。これにより、単一の発熱抵抗体842を用いセラミック基板840を加熱する場合と比較して、セラミック基板840の温度を均一に制御することができる。これにより、セラミック基板840の-Z側の面で搬送される媒体Pを、より精度よく加熱することができる。
【0032】
発熱抵抗体842は、通電により発熱する非金属の抵抗体であって、例えば、炭素繊維を含んで構成される所謂「カーボンワイヤー」を用いることができる。発熱抵抗体842として非金属の抵抗体を用いることで、金属製の抵抗体を用いた場合と比較して、インクによって発熱抵抗体842に腐食が生じるおそれを低減することができる。
【0033】
保護部材844は、例えば、ガラスにより形成されている。本実施形態では、保護部材844をガラスで形成するため、例えば、保護部材844が有機材料により形成される場合と比較して、インクによる保護部材844に対する腐食を抑制することが可能となる。
【0034】
以上のように本実施形態の発熱ユニット80は、セラミックヒーターであるヒーター84を含み、媒体Pを乾燥させる媒体乾燥機能を有する。そして、ヘッドユニット20が有するプリントヘッド22からインクが吐出される吐出方向であるZ軸に沿った方向において、発熱ユニット80は、プリントヘッド22の少なくとも一部と重なるように位置している。このような発熱ユニット80は、媒体Pを支持するが故に、プリントヘッド22の近傍であって、好ましくは、プリントヘッド22が有する後述するノズル321が形成されたノズルプレート320との最短距離が1mm未満となるように配置される。すなわち、ノズルプレート320と発熱ユニット80との最短距離は、1mm未満である。これにより、ノズルプレート320に形成されインクを吐出するノズル321の近傍を、発熱ユニット80に沿って搬送される媒体Pが通過することとなり、インクの媒体Pへの着弾精度を高めることができる。
【0035】
[吐出モジュールの構造]
次に、ノズル321が形成されたノズルプレート320を含むプリントヘッド22の構造の一例について説明する。図4は、プリントヘッド22の構造を示す分解斜視図であり、図5は、プリントヘッド22をZ軸に沿って見た場合の平面図であり、図6は、図5に示すB-b断面を示す断面図であり、図7は、図6の要部の詳細を示す要部詳細図であり、図8は、図5に示すC-c断面を示す断面図である。
【0036】
図4に示すように、プリントヘッド22は、圧力室基板310、連通板315、ノズルプレート320、コンプライアンス基板345、後述する振動板350、後述する圧電素子60、保護基板330、ケース部材340、及び配線基板420を有する。
【0037】
圧力室基板310は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板等からなる。図5に示すように、圧力室基板310には、複数の圧力室312がY軸に沿って並ぶ圧力室列が、X軸に沿って2列配置されている。ここで、2列の圧力室列のうち、+X側に位置する圧力室列を第1圧力室列と称し、第1圧力室列の-X側に位置する圧力室列を第2圧力室列と称する場合がある。なお、図5は、プリントヘッド22をZ軸に沿って見た場合の平面図であるが、圧力室基板310の周辺構成を図示し、保護基板330、ケース部材340等の図示を省略している。
【0038】
また、各圧力室列を構成する複数の圧力室312は、X軸に沿った位置が同じ位置となるように、Y軸に沿った直線上に配置されている。そして、Y軸に沿って互いに隣り合う圧力室312は、図8に示す隔壁311によって区画されている。もちろん、圧力室312の配置は特に限定されるものではなく、例えば、Y軸に沿って並ぶ複数の圧力室312の配置が、各圧力室312を1つ置きにX軸に沿った方向においてずれて位置する所謂千鳥配置であってもよい。
【0039】
また、本実施形態の圧力室312は、+Z側から見た平面視においてX軸に沿った方向の長さがY軸に沿った方向の長さよりも長い、所謂長方形に形成されている。もちろん、+Z側からの平面視における圧力室312の形状は、長方形に限定されず、平行四辺形状、多角形状、円形状、オーバル形状等であってもよい。ここで、オーバル形状とは、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円状とした形状をいい、角丸長方形状、楕円形状、卵形状などが含まれる。
【0040】
図4に示すように、圧力室基板310の+Z側には、連通板315と、ノズルプレート320及びコンプライアンス基板345とが積層されている。
【0041】
図4図6、及び図7に示すように、連通板315には、圧力室312とノズル321とを連通するノズル連通路316が設けられている。また、連通板315には、複数の圧力室312が連通する共通液室となるマニホールド400の一部を構成する第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318が設けられている。第1マニホールド部317は、連通板315をZ軸に沿った方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部318は、連通板315をZ軸に沿った方向に貫通することなく、+Z側の面に開口して設けられている。
【0042】
さらに、連通板315には、圧力室312のX軸に沿った方向の一方の端部に連通する供給連通路319が、圧力室312の各々に独立して設けられている。供給連通路319は、第2マニホールド部318と各圧力室312とを連通し、マニホールド400内のインクを各圧力室312に供給する。
【0043】
連通板315としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板等を用いることができる。また、金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。なお、連通板315は、熱膨張率が圧力室基板310と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、圧力室基板310及び連通板315の温度が変化した場合であっても、熱膨張率の違いに起因して圧力室基板310及び連通板315に反りが生じるおそれを低減できる。
【0044】
ノズルプレート320は、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、+Z側の面に設けられている。ノズルプレート320には、各圧力室312にノズル連通路316を介して連通するノズル321が形成されている。
【0045】
本実施形態では、プリントヘッド22は複数のノズル321を有し、複数のノズル321は、Y軸に方向に沿って並んで配置されている。具体的には、ノズルプレート320には、複数のノズル321が列設されたノズル列がX軸に沿った方向に離れて2列で設けられている。この2列のノズル列が、第1圧力室列、第2圧力室列にそれぞれ対応している。また、各列の複数のノズル321は、X軸に沿った方向の位置が同じ位置となるように配置されている。なお、ノズル321の配置は特に限定されるものではなく、例えば、Y軸に沿った方向に並んで配置されるノズル321は、1つ置きにX軸方向にずれた位置に配置されていてもよい。
【0046】
ノズルプレート320の材料としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、金属基板を用いることができる。また、金属基板としては、例えば、ステンレス基板等が挙げられる。さらに、ノズルプレート320の材料としては、ポリイミド樹脂のような有機物などであってもよい。ただし、ノズルプレート320は、連通板315の熱膨張率と略同一の材料を用いることが好ましい。これにより、ノズルプレート320及び連通板315の温度が変化した場合であっても、熱膨張率の違いに起因してノズルプレート320及び連通板315に反りが生じるおそれを低減できる。
【0047】
コンプライアンス基板345は、ノズルプレート320とともに、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、+Z側の面に設けられている。このコンプライアンス基板345は、ノズルプレート320の周囲に設けられ、連通板315に設けられた第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318の開口を封止する。コンプライアンス基板345は、可撓性を有する薄膜からなる封止膜346と、金属等の硬質の材料からなる固定基板347と、を含む。そして、固定基板347のマニホールド400に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部348となっている。このため、マニホールド400の一方面は、可撓性を有する封止膜346のみで封止されたコンプライアンス部349となっている。
【0048】
一方、圧力室基板310のノズルプレート320等とは反対側、すなわち-Z側の面には、振動板350と、この振動板350を撓み変形させて圧力室312内のインクに圧力変化を生じさせる圧電素子60とが積層されている。換言すると、振動板350は、圧電素子60に対してZ軸に沿った方向の+Z側に設けられ、圧力室基板310は振動板350に対してZ軸に沿った方向の+Z側に設けられている。なお、図6は、プリントヘッド22の全体構成を説明するための図であり、圧電素子60の構成については簡略化している。
【0049】
さらに、圧力室基板310の-Z側の面には、圧力室基板310と略同じ大きさを有する保護基板330が接着剤等によって接合されている。保護基板330は、圧電素子60を保護する空間である保持部331を有する。保持部331は、Y軸に沿った方向に並んで配置された圧電素子60の列毎に独立して設けられた空間であって、X軸に沿った方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板330には、X軸に沿った方向に並んで配置された2つの保持部331の間にZ軸に沿った方向に貫通する貫通孔332が設けられている。
【0050】
また、保護基板330上には、複数の圧力室312に連通するマニホールド400を圧力室基板310とともに画成するケース部材340が固定されている。ケース部材340は、-Z側からの平面視において上述した連通板315と略同一形状を有し、保護基板330に接合されるとともに、上述した連通板315にも接合されている。
【0051】
このようなケース部材340は、保護基板330側に、圧力室基板310及び保護基板330を収容可能な深さの空間である収容部341を有する。収容部341は、保護基板330の圧力室基板310に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容部341に圧力室基板310及び保護基板330が収容された状態で、収容部341のノズルプレート320側の開口面が連通板315によって封止されている。
【0052】
また、ケース部材340には、X軸に沿った方向における収容部341の両外側のそれぞれには、第3マニホールド部342が画成されている。そして、連通板315に設けられた第1マニホールド部317及び第2マニホールド部318と、第3マニホールド部342と、によってマニホールド400が構成されている。マニホールド400は、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられており、各圧力室312とマニホールド400とを連通する供給連通路319は、Y軸に沿った方向に並んで配置されている。
【0053】
また、ケース部材340には、マニホールド400に連通して各マニホールド400にインクを供給するための供給口344が設けられている。さらに、ケース部材340には、保護基板330の貫通孔332に連通して配線基板420が挿通される接続口343が設けられている。
【0054】
このような第1実施形態のプリントヘッド22は、インク容器90に貯留されたインクを供給口344から取り込む。そして、マニホールド400からノズル321に至るまで内部を当該インクで満たした後、集積回路421から、圧力室312に対応するそれぞれの圧電素子60に駆動信号COMに基づく信号が供給される。これにより圧電素子60とともに振動板350がたわみ変形し、各圧力室312内の圧力が高まり、各ノズル321からインクが吐出される。
【0055】
次に、上述した振動板350、圧電素子60を含む、圧力室基板310の-Z側に積層形成される構成について説明する。プリントヘッド22は、圧力室基板310の-Z側に積層される構成として、振動板350、圧電素子60に加え、個別リード電極391、共通リード電極392、測定用リード電極393、及び抵抗配線401を有する。
【0056】
図6図8に示すように、振動板350は、圧力室基板310側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜351と、弾性膜351上に設けられた酸化ジルコニウム膜からなる絶縁体膜352と、を含んで構成されている。圧力室312等の液体流路は、圧力室基板310を+Z側の面から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力室312等の液体流路の-Z側の面は、弾性膜351で構成されている。なお、振動板350の構成は特に限定されるものではなく、例えば、弾性膜351と絶縁体膜352とのいずれか一方で構成されていてもよく、さらには、弾性膜351及び絶縁体膜352以外のその他の膜が含まれていてもよい。ここで、振動板350を構成するその他の膜の材料としては、例えば、シリコン、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0057】
圧電素子60は、圧力室312内のインクに圧力変化を生じさせる圧電アクチュエーターとして機能する。この圧電素子60は、振動板350側である+Z側から-Z側に向かって順次積層された電極360と、圧電体370と、電極380とを有する。換言すると、圧電素子60は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層されるZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に設けられている。
【0058】
電極360及び電極380は、いずれも配線基板420と電気的に接続されている。そして、配線基板420に実装される集積回路421から供給される信号が電極360に供給され、配線基板420を伝搬する基準電位の信号が電極380に供給されることで、圧電体370に集積回路421から供給される信号と、基準電位の信号と、が供給される。そして、電極360と電極380との間に生じた電位差により圧電体370が変形する。この圧電体370の変形により、振動板350が変形又は振動し、振動板350の変形により圧力室312の容積が変化する。そして、圧力室312の容積変化によって生じた圧力の変化が、圧力室312に収容されているインクに付与されることで、圧力室312に収容されているインクが、ノズル連通路316を介してノズル321から吐出される。このとき、ノズル321から吐出されるインクの吐出量は、圧力室312の容積変化量となる。
【0059】
ここで、以下の説明において、圧電素子60の内、電極360と電極380との間に電圧を印加した際に、圧電体370に圧電歪みが生じる部分を活性部410と称し、圧電体370に圧電歪みが生じない部分を非活性部415と称する。すなわち、圧電素子60の内、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれた部分が活性部410に相当し、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれていない部分が非活性部415に相当する。また、圧電素子60を駆動させた際、Z軸に沿った方向に変位する部分を可撓部と称し、Z軸に沿った方向に変位しない部分を非可撓部と称する。すなわち、圧電素子60の内、圧力室312にZ軸に沿った方向で対向する部分が可撓部に相当し、圧力室312の外側部分が非可撓部に相当する。なお、活性部410は能動部、非活性部415は非能動部と称する場合がある。
【0060】
一般的には、活性部410のいずれか一方の電極を活性部410毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部410に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、集積回路421が出力する信号が供給される電極360を個別電極として構成し、配線基板420を伝搬する基準電位の信号が供給される電極380を共通電極として構成しているとして説明を行う。
【0061】
具体的には、電極360は、圧電体370に対して+Z側に設けられ、圧力室312毎に切り分けられて活性部410毎に独立する個別電極を構成する。すなわち、電極360は、複数の圧力室312に対して個別に設けられる。電極360は、Y軸に沿った方向において、圧力室312の幅よりも狭い幅で形成されている。すなわち、Y軸に沿った方向において、電極360の端部は、圧力室312に対向する領域の内側に位置している。
【0062】
また、電極360の+X側の端部360a及び-X側の端部360bは、それぞれ圧力室312の外側に配置されている。例えば、第1圧力室列では、図7に示すように、電極360の端部360aは、圧力室312の+X側の端部312aよりも+X側に配置されている。電極360の端部360bは、圧力室312の-X側の端部312bよりも-X側に配置されている。
【0063】
電極360の材料は特に限定されないが、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。第1実施形態では、電極360として白金(Pt)を用いた。
【0064】
圧電体370は、図5に示すように、X軸に沿った方向の長さを所定長さとして、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。すなわち、圧電体370は、所定の厚さで圧力室312の並設方向に沿って連続して設けられている。圧電体370の厚さは特に限定されないが、1000ナノメートルから4000ナノメートル程度の厚さで形成される。
【0065】
また、図7に示すように、圧電体370のX軸に沿った方向の長さは、圧力室312の長手方向であるX軸に沿った方向の長さよりも長い。このため、圧力室312のX軸に沿った方向の両側では、圧電体370は、圧力室312の外側まで延在している。このように、圧電体370がX軸に沿った方向において圧力室312の外側まで延在していることで、振動板350の強度が向上する。したがって、活性部410を駆動させて圧電素子60を変位させた際、振動板350や圧電素子60にクラック等が発生するおそれを低減することができる。
【0066】
また、例えば、第1圧力室列では、図7に示すように、圧電体370の+X側の端部370aは、電極360の端部360aよりも外側となる+X側に位置している。すなわち、電極360の端部360aは圧電体370によって覆われている。一方、圧電体370の-X側の端部370bは、電極360の端部360bよりも内側となる+X側に位置しており、電極360の端部360bは、圧電体370では覆われていない。
【0067】
なお、圧電体370には、図5及び図8に示すように、各隔壁311に対応して他の領域よりも厚さが薄い部分である溝部371が形成されている。本実施形態の溝部371は、圧電体370をZ軸に沿った方向に完全に除去することで形成されている。すなわち、圧電体370が他の領域よりも厚さの薄い部分を有するとは、圧電体370がZ軸に沿った方向に完全に除去されたものも含む。もちろん、溝部371の底面に圧電体370が他の部分よりも薄く形成されていてもよい。
【0068】
また、溝部371のY軸に沿った方向の長さ、つまり溝部371の幅は、隔壁311の幅と同一もしくは、それより広くなっている。本実施形態では、溝部371の幅は、隔壁311の幅よりも広くなっている。このような溝部371は、-Z側からの平面視において、矩形状となるように形成されている。もちろん、溝部371の-Z側からの平面視した形状は、矩形状に限定されず、5角形以上の多角形状であってもよく、円形状や楕円形状等であってもよい。
【0069】
圧電体370に溝部371を設けることにより、振動板350の圧力室312のY軸に沿った方向の端部に対向する部分、いわゆる振動板350の腕部の剛性が抑えられるため、圧電素子60をより良好に変位させることができる。
【0070】
圧電体370としては、電極360上に形成される電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜、所謂ペロブスカイト型結晶が挙げられる。圧電体370の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等を用いることができる。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。本実施形態では、圧電体370として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた。
【0071】
また、圧電体370の材料としては、鉛を含む鉛系の圧電材料に限定されず、鉛を含まない非鉛系の圧電材料を用いることもできる。非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス((BiFeO3)、略「BFO」)、チタン酸バリウム((BaTiO3)、略「BT」)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)(NbO3)、略「KNN」)、ニオブ酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(NbO3))、ニオブ酸タンタル酸カリウムナトリウムリチウム((K,Na,Li)(Nb,Ta)O3)、チタン酸ビスマスカリウム((Bi1/2K1/2)TiO3、略「BKT」)、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi1/2Na1/2)TiO3、略「BNT」)、マンガン酸ビスマス(BiMnO3、略「BM」)、ビスマス、カリウム、チタン及び鉄を含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物(x[(BixK1-x)TiO3]-(1-x)[BiFeO3]、略「BKT-BF」)、ビスマス、鉄、バリウム及びチタンを含みペロブスカイト構造を有する複合酸化物((1-x)[BiFeO3]-x[BaTiO3]、略「BFO-BT」)や、これにマンガン、コバルト、クロムなどの金属を添加したもの((1-x)[Bi(Fe1-yMy)O3]-x[BaTiO3](Mは、Mn、Co又はCr))等が挙げられる。
【0072】
電極380は、図5図7、及び図8に示すように、圧電体370に対して、電極360とは反対側である-Z側に設けられ、複数の活性部410に共通する共通電極を構成する。すなわち、電極380は、複数の圧力室312に対して共通に設けられている。電極380は、X軸に沿った方向の長さを所定長さとして、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。この電極380は、溝部371の内面、すなわち圧電体370の溝部371の側面上及び溝部371の底面である絶縁体膜352上にも設けられている。なお、溝部371内に関しては、電極380は、溝部371の内面の一部のみに設けられていてもよく、溝部371の内面の全面に亘って設けられていなくてもよい。
【0073】
また、例えば、第1圧力室列では、図7に示すように、電極380の+X側の端部380aが、圧電体370で覆われている電極360の端部360aよりも外側となるように+X側に配置されている。すなわち、電極380の端部380aは、圧力室312の端部312aよりも外側となる+X側で、電極360の端部360aよりも外側となる+X側に位置している。本実施形態では、電極380の端部380aは、X軸に沿った方向において、圧電体370の端部370aと実質的に一致している。このため、活性部410の+X側の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極360の端部360aによって規定されている。
【0074】
一方、電極380の-X側の端部380bは、圧力室312の-X側の端部312bよりも外側となる-X側であって、圧電体370の端部370bよりも内側となる+X側に配置されている。上述のように圧電体370の端部370bは、電極360の端部360bよりも+X側となる内側に位置している。したがって、電極380の端部380bは、電極360の端部360bよりも+X側となる圧電体370上に位置している。このため、電極380の端部380bの-X側には、圧電体370の表面が露出された部分が存在する。
【0075】
このように電極380の端部380bは、圧電体370の端部370b、及び電極360の端部360bよりも+X側に配置されている。そのため、活性部410の-X側の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極380の端部380bによって規定される。
【0076】
電極380の材料は特に限定されないが、電極360と同様に、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)といった金属、ITOと略される酸化インジウムスズといった導電性金属酸化物等の導電材料が用いられる。或いは、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、チタン(Ti)等の複数の材料が積層されて形成されてもよい。本実施形態では、電極380としてイリジウム(Ir)を用いた。
【0077】
また、電極380の端部380bの外側、すなわち電極380の端部380bのさらに-X側には、電極380と同一層となるが、電極380とは電気的に不連続となる配線部385が設けられている。また、配線部385は、電極380の端部380bと接触しないように間隔を空けた状態で、圧電体370上から圧電体370よりも-X側に延設された電極360上に亘って形成されている。この配線部385は、活性部410毎に独立して設けられている。すなわち、配線部385は、Y軸に沿った方向において所定の間隔で複数配置されている。なお、配線部385は、電極380とは別の層で形成されていてもよいが、電極380と同一層で形成することが好ましい。これにより、配線部385の製造工程を簡略化してコストの低減を図ることができる。
【0078】
また、圧電素子60を構成する電極360と電極380とには、電極360には個別リード電極391が接続され、電極380には駆動用共通電極である共通リード電極392がそれぞれ電気的に接続されている。個別リード電極391、及び共通リード電極392の圧電素子60に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有する配線基板420が電気的に接続されている。配線基板420には、制御ユニット10、温度情報出力回路26、及び不図示の複数の回路と接続するための複数の配線が形成されている。本実施形態において、配線基板420は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)により構成されている。なお、FPCに代えて、FFC(Flexible Flat Cable)など、可撓性を有する任意の基板により構成されてもよい。
【0079】
本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、この貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。また、配線基板420には、圧電素子60を駆動するための信号を出力する集積回路421が実装されている。
【0080】
個別リード電極391及び共通リード電極392は、本実施形態では、同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、個別リード電極391と共通リード電極392とをそれぞれ個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、個別リード電極391と共通リード電極392とを異なる層で形成してもよい。
【0081】
個別リード電極391及び共通リード電極392の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392として金(Au)を用いた。また、個別リード電極391及び共通リード電極392は、電極360及び電極380や振動板350との密着性を向上する密着層を有してもよい。
【0082】
個別リード電極391は、活性部410毎、すなわち、電極360毎に設けられたものである。図7に示すように、例えば、第1圧力室列では、個別リード電極391は、配線部385を介して、圧電体370の外側に設けられた電極360の端部360b付近に接続され、圧力室基板310上、実際には振動板350上まで-Xに沿った方向に引き出されている。
【0083】
一方、図5に示すように、例えば、第1圧力室列では、共通リード電極392は、Y軸に沿った方向の両端部において、圧電体370上の共通電極を構成する電極380上から振動板350上にまで-X側に引き出されている。また、共通リード電極392は、延設部392a、及び延設部392bを有する。図5図7に示すように、例えば、第1圧力室列では、延設部392aは、圧力室312の端部312aに対応する領域にY軸に沿った方向に沿って延設され、延設部392bは、圧力室312の端部312bに対応する領域にY軸に沿った方向に沿って延設される。これら延設部392a、及び延設部392bは、複数の活性部410に対してY軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。
【0084】
また、延設部392a、及び延設部392bは、X軸に沿った方向において、圧力室312の内側から圧力室312の外側まで延設されている。本実施形態では、圧電素子60の活性部410は、圧力室312のX軸に沿った方向の両端部において圧力室312の外側まで延設されており、延設部392a、及び延設部392bは、この活性部410上を圧力室312の外側まで延設されている。
【0085】
図7に示すように、振動板350の-Z側の面には、抵抗配線401が設けられる。抵抗配線401は、電気抵抗値が温度によって変化する特性を利用し、圧力室312の温度を検出する。このような抵抗配線401の材料としては、電気抵抗値が温度依存性を有する材料であって、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。このうち、白金(Pt)は、温度による抵抗値変化が大きく、また、安定性と精度が高い。さらに、白金(Pt)は、温度変化に対する抵抗値の変化の線形性も高い。係る観点から抵抗配線401の材料としては、白金(Pt)が好適に採用される。すなわち、抵抗配線401は、白金(Pt)を含んで構成されていることが好ましい。また、本実施形態では、抵抗配線401を、電極360と同層であって、電極360と電気的に不連続となるように、振動板350の-Z側の面に積層形成されている。すなわち、抵抗配線401は、振動板350のZ軸に沿った方向における-Z側の面に設けられ、白金(Pt)を含む配線を有する。
【0086】
図5に示すように、抵抗配線401の一端は測定用リード電極393aと接続され、抵抗配線401の他端は測定用リード電極393bと接続されている。また、測定用リード電極393a,393bは、配線基板420と電気的に接続されている。これにより、抵抗配線401が検出した圧力室312の温度であって、圧力室312の温度によって変化する電気抵抗値に応じた電圧値の信号が、プリントヘッド22から出力される。また、本実施形態では、抵抗配線401は、圧電体370に覆われており、Z軸に沿った方向において、振動板350と圧電体370との間に位置している。
【0087】
抵抗配線401は、X軸に沿った方向において+X側に位置する第1圧力室列側蛇行パターンと、X軸に沿った方向において-X側に位置する第2圧力室列側蛇行パターンと、を含む。第1圧力室列側蛇行パターンは、-Z側から見て、第1圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と重なるように位置し、Y軸に沿った方向に蛇行している。第2圧力室列側蛇行パターンは、-Z側から見て、第2圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と重なるように位置し、Y軸に沿った方向に蛇行している。すなわち、抵抗配線401は、複数の圧力室312が形成する第1圧力室列に対応する第1圧力室列側蛇行パターンと、複数の圧力室312が形成する第2圧力室列に対応する第2圧力室列側蛇行パターンと、を備える。
【0088】
また、図6図7に示すように、圧力室312の-Z側の端部と抵抗配線401とのZ軸に沿った方向における距離は、圧力室312のZ軸に沿った方向における寸法より短い。また、例えば、第1圧力室列では、圧力室312の+X側の端部312aと抵抗配線401とのX軸に沿った方向における最長距離は、圧力室312のX軸に沿った方向における寸法より短い。このため、抵抗配線401の電気抵抗値は、圧力室312の温度変化に対応して変化しやすい。
【0089】
測定用リード電極393a及び測定用リード電極393bを含む測定用リード電極393は、本実施形態では、個別リード電極391及び共通リード電極392と同一層からなるが、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、測定用リード電極393を、個別リード電極391及び共通リード電極392と個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、測定用リード電極393を、個別リード電極391及び共通リード電極392と異なる層で形成するようにしてもよい。
【0090】
測定用リード電極393の材料は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)等を用いることができる。本実施形態では、測定用リード電極393として金(Au)を用いた。よって、測定用リード電極393の材料は、個別リード電極391及び共通リード電極392と同じ材料である。また、測定用リード電極393は、抵抗配線401や振動板350との密着性を向上する密着層を有していてもよい。
【0091】
以上のように、本実施形態では、測定用リード電極393は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。これにより、圧力室312の温度によって変化する抵抗配線401の電気抵抗値が配線基板420を介してプリントヘッド22から出力される。
【0092】
すなわち、本実施形態のヘッドユニット20が有するプリントヘッド22は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層されるZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に位置し、駆動信号COMを受けて駆動する圧電素子60と、圧電素子60に対してZ軸に沿った方向の一方側である+Z側に位置し、圧電素子60の駆動により変形する振動板350と、振動板350に対してZ軸に沿った方向の一方側である+Z側に位置し、振動板350の変形により容積が変化する圧力室312が設けられている圧力室基板310と、圧力室312の容積の変化に応じてインクを吐出するノズル321と、振動板350に対してZ軸に沿った方向の他方側である-Z側に位置し、圧力室312の温度に応じた温度を取得する抵抗配線401と、を含む。
【0093】
2.液体吐出装置の機能構成
[液体吐出装置の機能構成]
次に、液体吐出装置1の機能構成について説明する。図9は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。図9に示すように液体吐出装置1は、制御ユニット10、ヘッドユニット20、キャリッジモーター31、搬送モーター41、ヒーター84、及びリニアエンコーダー92を備える。
【0094】
制御ユニット10は、駆動回路50、基準電圧出力回路52、及び制御回路100を有する。制御回路100は、例えば、CPUやFPGA等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含む。制御回路100には、液体吐出装置1の外部と通信可能に接続されたホストコンピューター等の外部機器から画像データ等を含む画像情報信号が入力される。制御回路100は、入力される画像情報信号に基づいて、液体吐出装置1を制御するための各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0095】
具体例には、制御回路100には、上述した画像情報信号に加えて、リニアエンコーダー92から、ヘッドユニット20に含まれる上述したキャリッジ21の走査位置に基づく検出信号が入力される。これにより、制御回路100は、キャリッジ21の走査位置であって、プリントヘッド22を含むヘッドユニット20の走査位置を把握する。そして、制御回路100は、入力される画像情報信号と、把握したヘッドユニット20の走査位置とに応じた各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0096】
詳細には、制御回路100は、ヘッドユニット20の走査位置に応じて、ヘッドユニット20の走査軸に沿った移動を制御するための制御信号Ctrl-Cを生成し、キャリッジモーター31に出力する。これにより、キャリッジモーター31が動作し、キャリッジ21に搭載されたヘッドユニット20の走査軸に沿った移動、及び走査位置が制御される。また、制御回路100は、媒体Pの搬送を制御するための制御信号Ctrl-Tを生成し、搬送モーター41に出力する。これにより、搬送モーター41が動作し、媒体Pの搬送方向に沿った移動が制御される。なお、制御信号Ctrl-Cは、不図示のドライバー回路を介して信号変換された後、キャリッジモーター31に入力されてもよく、制御信号Ctrl-Tは、不図示のドライバー回路を介して信号変換された後、搬送モーター41に入力されてもよい。
【0097】
また、制御回路100は、吐出するインクの種類、インクが着弾する媒体Pの種類、及び液体吐出装置1の動作状態等に応じて、ヒーター84の温度を制御するための制御信号Ctrl-Wを生成し、ヒーター84に出力する。これにより、ヒーター84が所望の温度に制御される。このとき、制御回路100は、ヒーター84の温度に対応してあらかじめ規定された電流値、電圧値、又は電流値の信号を制御信号Ctrl-Wとして出力してもよく、また、ヒーター84の温度を制御する不図示のヒーター制御回路に対して、ヒーター84の温度を指示する制御信号Ctrl-Wを出力してもよい。
【0098】
また、制御回路100は、外部機器から入力される画像情報信号と、ヘッドユニット20の走査位置と、に基づいて、ヘッドユニット20を制御するための制御信号Ctrl-Hとして、印刷データ信号SI1~SIn、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKを生成し、ヘッドユニット20に出力する。また、制御回路100は、所定のタイミングでヘッドユニット20の温度を取得するための温度取得要求信号TDを生成し、ヘッドユニット20に出力する。このとき、制御回路100には、温度取得要求信号TDに応じたヘッドユニット20の温度を含む温度情報信号TIが入力される。制御回路100は、入力される温度情報信号TIに基づいて、ヘッドユニット20の状態を把握するとともに、制御信号Ctrl-H,Ctrl-C,Ctrl-Tを補正し、対応する構成に出力する。
【0099】
さらに、制御回路100は、駆動回路50にデジタル信号である基駆動信号dA1を出力する。駆動回路50は、駆動信号COMとして、基駆動信号dA1によって規定される信号波形の駆動信号COMを生成し、ヘッドユニット20に出力する。
【0100】
具体的には、制御回路100が出力する基駆動信号dA1は、駆動回路50に入力される。駆動回路50は、入力される基駆動信号dA1をデジタル/アナログ信号変換した後、変換されたアナログ信号をD級増幅することで駆動信号COMを生成し、ヘッドユニット20に出力する。ここで、制御回路100が出力する基駆動信号dA1は、駆動信号COMの信号波形を規定するデジタル信号であるとして説明を行うが、基駆動信号dA1は、駆動信号COMの信号波形を規定することができればよく、アナログ信号であってもよい。また、駆動回路50は、基駆動信号dA1によって規定される信号波形をA級増幅、B級増幅、AB級増幅することで、駆動信号COMを生成してもよい。
【0101】
基準電圧出力回路52は、基準電圧信号VBSを生成し、ヘッドユニット20に出力する。この基準電圧信号VBSは、圧電素子60の駆動の基準となる一定電位の信号であって、共通電極である電極380に供給される。このような基準電圧信号VBSは、例えば、グラウンド電位で一定の信号であってもよく、5.5Vや6V等の電位で一定の直流電圧信号であってもよい。
【0102】
ヘッドユニット20は、複数のプリントヘッド22としてのプリントヘッド22-1~22-nと、温度情報出力回路26と、温度検出回路28と、を有する。また、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれは、駆動信号選択回路200、温度検出回路24、及び複数の圧電素子60を含む。
【0103】
プリントヘッド22-1には、制御回路100が出力する印刷データ信号SI1、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、クロック信号SCK、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力される。プリントヘッド22-1に入力されたクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SI1、及び駆動信号COMは、駆動信号選択回路200に入力される。駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SI1に基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の圧電素子60のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成する。そして、駆動信号選択回路200は、生成した駆動信号VOUTを、対応する圧電素子60のそれぞれの一端であって、個別電極である電極360のそれぞれに出力する。また、複数の圧電素子60の他端であって、共通電極である電極380には、基準電圧信号VBSが共通に入力されている。そして、複数の圧電素子60のそれぞれは、電極360に入力される駆動信号VOUTと、電極380に入力される基準電圧信号VBSとの電位差により変位する。これにより、圧電素子60の変位に応じた量のインクが、プリントヘッド22-1が有する対応するノズル321から吐出される。ここで、プリントヘッド22-1が有する駆動信号選択回路200の少なくとも一部が、上述した集積回路421としてプリントヘッド22-1の配線基板420に実装されている。
【0104】
また、プリントヘッド22-1が有する温度検出回路24は、プリントヘッド22-1の温度を検出する。そして、温度検出回路24は、検出したプリントヘッド22-1の温度をヘッド温度情報tc1として取得し、取得したヘッド温度情報tc1を含むヘッド温度信号TC1を温度情報出力回路26に出力する。ここで、プリントヘッド22-1が有する温度検出回路24の少なくとも一部が、上述した抵抗配線401としてプリントヘッド22-1に設けられている。すなわち、温度検出回路24が出力するプリントヘッド22-1の温度を示すヘッド温度情報tc1とは、抵抗配線401の抵抗値に応じて生じる電圧値の情報が含まれる。
【0105】
また、プリントヘッド22-2~22-nは、入力される信号、及び出力する信号が異なるのみでプリントヘッド22-1と同様の動作を行う。具体的には、プリントヘッド22-i(iは2~nのいずれか)には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SIi、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力される。そして、プリントヘッド22-iが有する駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIiに基づいて、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の圧電素子60のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60の電極360に出力する。また、プリントヘッド22-iが有する複数の圧電素子60の電極380には、基準電圧信号VBSが共通に入力されている。これにより、プリントヘッド22-iが有する複数の圧電素子60が駆動し、圧電素子60の駆動に応じた量のインクが、プリントヘッド22-iが有するノズル321から吐出される。また、プリントヘッド22-iが有する温度検出回路24は、プリントヘッド22-iの温度をヘッド温度情報tciとして取得し、取得したヘッド温度情報tciを含むヘッド温度信号TCiを温度情報出力回路26に出力する。ここで、プリントヘッド22-iが有する駆動信号選択回路200の少なくとも一部が、上述した集積回路421として、プリントヘッド22-iの配線基板420に実装され、プリントヘッド22-iが有する温度検出回路24の少なくとも一部が、上述した抵抗配線401として、プリントヘッド22-iに設けられている。
【0106】
ここで、以下の説明において、プリントヘッド22-1~22-nを区別する必要がない場合のプリントヘッド22には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHと、印刷データ信号SI1~SInとしての印刷データ信号SIと、駆動信号COMと、基準電圧信号VBSと、が入力されるとして説明を行う。そして、プリントヘッド22の温度検出回路24は、プリントヘッド22の温度を示すヘッド温度情報tc1~tcnとしてのヘッド温度情報tcを取得し、プリントヘッド22は、取得したヘッド温度情報tcを含むヘッド温度信号TC1~TCnとしてのヘッド温度信号TCを出力するとして説明を行う。
【0107】
温度検出回路28は、プリントヘッド22-1~22-nを含むヘッドユニット20の温度を検出する。そして、温度検出回路28は、検出した温度を示すユニット温度情報thを含むユニット温度信号THを生成する。そして、温度検出回路28は、生成したユニット温度信号THを温度情報出力回路26、及び制御回路100に出力する。このような温度検出回路28は、ヘッドユニット20の温度変化に応じて抵抗値が変化するサーミスター素子等を含んで構成される。
【0108】
温度情報出力回路26には、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれが出力するヘッド温度信号TC1~TCnと、温度検出回路28が出力するユニット温度信号THと、制御回路100が出力する温度取得要求信号TDと、が入力される。温度情報出力回路26は、入力されるヘッド温度信号TC1~TCnを増幅し保持するととともに、ユニット温度信号THを増幅し保持する。そして、温度情報出力回路26は、保持するヘッド温度信号TC1~TCnと、ユニット温度信号THと、に基づいて補正関数を算出する。
【0109】
その後、温度情報出力回路26は、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに応じて、入力されるヘッド温度信号TC1~TCnに含まれるヘッド温度情報tc1~tcnを取得し、取得したヘッド温度情報tc1~tcnにより規定される温度を、算出した補正関数によって補正する。そして、温度情報出力回路26は、補正した信号を含む温度情報信号TIを制御回路100に出力する。なお、温度情報出力回路26の構成、及び動作の具体例については後述する。
【0110】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1は、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIを含む制御信号Ctrl-Hを出力する制御回路100と、駆動信号COMを出力する駆動回路50と、制御信号Ctrl-Hと駆動信号COMとを受けてインクを吐出するヘッドユニット20と、を備え、駆動信号COMに応じた駆動信号VOUTに基づいて液体を吐出するプリントヘッド22と、ヘッドユニット20の温度をユニット温度情報thとして検出し、ユニット温度情報thを含むユニット温度信号THを出力する温度検出回路28と、ユニット温度信号THと、プリントヘッド22の温度に対応するヘッド温度情報tcを含むヘッド温度信号TCと、が入力され、温度情報信号TIを出力する温度情報出力回路26と、を有する。
【0111】
[駆動信号COMの信号波形と駆動信号選択回路の機能構成]
次に、プリントヘッド22が有する駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。前述の通り、プリントヘッド22が有する駆動信号選択回路200は、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60に出力する。そこで、駆動信号選択回路200の構成、及び動作を説明するにあたり、まず、駆動信号選択回路200に入力される駆動信号COMの波形の一例について説明する。
【0112】
図10は、駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。図10に示すように、駆動信号COMは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間t1に配置された台形波形Adpと、チェンジ信号CHが立ち上がってから次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間t2に配置された台形波形Bdpと、チェンジ信号CHが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間t3に配置された台形波形Cdpと、を含む。台形波形Adpは、所定量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形であり、台形波形Bdpは、所定量よりも少量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形であり、台形波形Cdpは、インクが吐出されない程度に圧電素子60を駆動する信号波形である。ここで、台形波形Cdpが圧電素子60に供給された場合、当該圧電素子60は、対応するノズル開孔部付近のインクを振動させることで、ノズル開孔部付近のインク粘度が増大するおそれを低減するための信号波形である。
【0113】
また、台形波形Adp,Bdp,Cdpは、それぞれの開始タイミング及び終了タイミングでの電圧値がいずれも電圧Vcで共通の信号波形である。すなわち、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する。
【0114】
以下の説明において、圧電素子60に台形波形Adpが供給された場合に、吐出される所定量のインクの量を中程度の量と称し、圧電素子60に台形波形Bdpが供給された場合に、吐出される所定量のよりも少ないインクの量を小程度の量と称する場合がある。また、圧電素子60に台形波形Cdpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応するノズル開孔部付近のインクを振動させてインク粘度の増大を防止するための動作を微振動と称する場合がある。なお、図10に示す駆動信号COMの信号波形は一例であってこれに限られるものではない。駆動信号COMの信号波形は、吐出されるインクの性質やインクが着弾する媒体Pの材質等に応じて、様々な波形の組み合わせが用いられてもよい。
【0115】
そして、駆動信号選択回路200は、期間t1,t2,t3を含む周期tpにおいて、駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpを選択、又は非選択とする。これにより、駆動信号選択回路200は、周期tpにおいて複数のノズル321のそれぞれから吐出されるインクの吐出量を制御する。すなわち、駆動信号選択回路200は、周期tpにおいて媒体Pに形成されるドットサイズを制御する。この期間t1,t2,t3を含む周期tpにおいて、媒体Pに所定のサイズのドットが形成される。この所定のサイズのドットが形成される周期tpがドット形成周期に相当する。
【0116】
次に、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成する駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。図11は、駆動信号選択回路200の構成を示す図である。図11に示すように、駆動信号選択回路200は、選択制御回路210と、複数の圧電素子60と同数の複数の選択回路230を有する。なお、以下の説明では、プリントヘッド22は、p個の圧電素子60を有するとして説明を行う。すなわち、駆動信号選択回路200は、p個の選択回路230を有する。
【0117】
選択制御回路210には、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHが入力される。また、選択制御回路210には、シフトレジスター(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、p個の圧電素子60の各々に対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200は、p個のシフトレジスター212と、p個のラッチ回路214と、p個のデコーダー216とを含む。
【0118】
印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して選択制御回路210に入力される。また、印刷データ信号SIは、「大ドットLD」、「中ドットMD」、「小ドットSD」及び「非記録ND」のいずれかを選択するための2ビットの印刷データ[SIH,SIL]をp個の圧電素子60の各々に対応してシリアルに含む。印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]は、p個の圧電素子60に対応するp個のシフトレジスター212に保持される。具体的には、圧電素子60に対応したp個のシフトレジスター212が互いに縦続接続しているとともに、シリアルで入力された印刷データ信号SIが、クロック信号SCKに従って順次後段のシフトレジスター212に転送される。そして、印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持されることで、クロック信号SCKが停止する。これにより、印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持される。なお、図11には、p個のシフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが入力される上流側から順番に1段、2段、…、p段と表記している。
【0119】
p個のラッチ回路214の各々は、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応するシフトレジスター212に保持された印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。そして、ラッチ回路214がラッチした印刷データ[SIH,SIL]は、対応するデコーダー216に入力される。図12は、デコーダー216におけるデコード内容の一例を示す図である。デコーダー216は、期間t1,t2,t3のそれぞれにおいて、入力される印刷データ[SIH,SIL]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力する。例えば、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを、期間t1,t2,t3においてH,L,Lレベルとして出力する。
【0120】
デコーダー216が出力する選択信号Sは、選択回路230に入力される。選択回路230は、p個の圧電素子60のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200は、p個の圧電素子60と同数のp個の選択回路230を有する。図13は、選択回路230の構成を示す図である。図13に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232とトランスファーゲート234とを含む。
【0121】
選択信号Sは、トランスファーゲート234において丸印が付されていない正制御端に入力されるとともに、インバーター232によって論理レベルが反転された後、トランスファーゲート234において丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234の入力端には、駆動信号COMが供給されている。そして、トランスファーゲート234は、ハイレベルの選択信号Sが入力された場合に入力端と出力端との間を導通とし、ローレベルの選択信号Sが入力された場合に入力端と出力端との間を非導通とする。すなわち、トランスファーゲート234は、選択信号Sの論理レベルがハイレベルの場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力し、選択信号Sの論理レベルがローレベルの場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力しない。そして、駆動信号選択回路200は、選択回路230が有するトランスファーゲート234の出力端に出力された信号を、駆動信号VOUTとして出力する。
【0122】
ここで、図14を用いて駆動信号選択回路200の動作について説明する。図14は、駆動信号選択回路200の動作を説明するための図である。印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期したシリアル信号として選択制御回路210に入力される。そして、印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して、p個の圧電素子60に対応するp個のシフトレジスター212において順次転送される。その後、クロック信号SCKの入力が停止すると、シフトレジスター212には、p個の圧電素子60の各々に対応した印刷データ[SIH,SIL]が保持される。なお、印刷データ信号SIは、シフトレジスター212のp段、…、2段、1段の圧電素子60に対応した順に入力される。
【0123】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスター212に保持されている印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。なお、図14に示すLT1、LT2、…、LTpは、1段、2段、…、p段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた印刷データ[SIH,SIL]を示す。
【0124】
デコーダー216は、ラッチされた印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間t1,t2,t3のそれぞれにおいて、選択信号Sの論理レベルを図12に示す内容で出力する。そして、選択回路230が、デコーダー216が出力する選択信号Sの論理レベルに応じて駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成する。
【0125】
具体的には、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間t1,t2,t3においてH,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpを選択し、期間t2において台形波形Bdpを選択し、期間t3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0126】
「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間t1において中程度の量のインクが吐出され、期間t2において小程度の量のインクが吐出され、期間t3においてインクが吐出されない。そして、吐出された中程度の量のインクと小程度の量のインクとが、媒体Pに着弾し結合することで、媒体Pに「大ドットLD」が形成される。
【0127】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間t1,t2,t3においてH,L,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpを選択し、期間t2において台形波形Bdpを選択せず、期間t3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0128】
「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間t1において中程度の量のインクが吐出され、期間t2においてインクが吐出されず、期間t3においてインクが吐出されない。そして、吐出された中程度の量のインクが媒体Pに着弾することで、媒体Pに「中ドットMD」が形成される。
【0129】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間t1,t2,t3においてL,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpを選択せず、期間t2において台形波形Bdpを選択し、期間t3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0130】
「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間t1においてインクが吐出されず、期間t2において小程度の量のインクが吐出され、期間t3においてインクが吐出されない。そして、吐出された小程度の量のインクが媒体Pに着弾することで、媒体Pに「小ドットSD」が形成される。
【0131】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間t1,t2,t3においてL,L,Hレベルとする。これにより、選択回路230は、期間t1において台形波形Adpを選択せず、期間t2において台形波形Bdpを選択せず、期間t3において台形波形Cdpを選択する。その結果、駆動信号選択回路200は、「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0132】
「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間t1においてインクが吐出されず、期間t2においてインクが吐出されず、期間t3においてインクが吐出されない。したがって、媒体Pにドットが形成されない「非記録ND」となる。このとき、対応する圧電素子60には、台形波形Cdpを含む駆動信号VOUTが入力される。したがって、微振動が実行される。その結果、対応するノズル321の開孔部付近のインク粘度が増大するおそれが低減する。
【0133】
以上のように、駆動信号選択回路200は、駆動回路50が出力する駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60に出力する。そのため、駆動信号VOUTは、駆動回路50が出力する駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpのいずれかを含む。そうすると、駆動信号VOUTに基づいてインクを吐出するプリントヘッド22は、駆動信号COMに基づいてインクを吐出すると見做すこともできる。
【0134】
[温度情報出力回路の機能構成と動作]
次に、ヘッドユニット20が有する温度情報出力回路26の機能構成について説明する。図15は、温度情報出力回路26の機能構成を示す図である。温度情報出力回路26は、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに基づいて、プリントヘッド22-1~22-nから入力されるヘッド温度情報tc1~tcnのそれぞれを含むヘッド温度信号TC1~TCnと、温度検出回路28から入力されるユニット温度情報thを含むユニット温度信号THと、に応じた温度情報信号TIを生成し、制御回路100に出力する。
【0135】
図15に示すように、温度情報出力回路26は、制御回路500、増幅回路510-1~510-n,520、マルチプレクサー530、AD変換回路540,550、及び記憶回路560を含む。
【0136】
増幅回路510-1~510-nのそれぞれには、対応するヘッド温度信号TC1~TCnのそれぞれが入力される。そして、増幅回路510-1~510-nのそれぞれは、入力されるヘッド温度信号TC1~TCnを増幅することでヘッド増幅温度信号ATC1~ATCnを生成し、出力する。
【0137】
具体的には、増幅回路510-1には、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TC1が入力される。増幅回路510-1は、入力されるヘッド温度信号TC1を増幅し、ヘッド増幅温度信号ATC1として出力する。また、増幅回路510-i(iは1~nのいずれか)には、プリントヘッド22-iが出力するヘッド温度信号TCiが入力される。そして、増幅回路510-iは、入力されるヘッド温度信号TCiを増幅し、ヘッド増幅温度信号ATCiとして出力する。
【0138】
増幅回路510-1~510-nのそれぞれが出力するヘッド増幅温度信号ATC1~ATCnは、マルチプレクサー530に入力される。また、マルチプレクサー530には、制御回路500が出力するセレクト信号Selが入力される。マルチプレクサー530は、入力されるセレクト信号Selに従って、増幅回路510-1~510-nのそれぞれから入力されるヘッド増幅温度信号ATC1~ATCnのいずれかを選択し、選択温度信号STCとして出力する。
【0139】
AD変換回路540には、マルチプレクサー530が出力する選択温度信号STCと、制御回路500が出力するイネーブル信号ENと、が入力される。AD変換回路540は、制御回路500から入力されるイネーブル信号ENが有効である期間に入力される選択温度信号STCをデジタル信号に変換し制御回路500に出力する。すなわち、AD変換回路540は、温度情報出力回路26に入力されるヘッド温度信号TC1~TCnの内、イネーブル信号ENが有効である期間にマルチプレクサー530によって選択されたヘッド温度信号TCに含まれるヘッド温度情報tcに応じたデジタル信号であって、イネーブル信号ENが有効である期間にマルチプレクサー530によって選択されたヘッド温度信号TCに対応するプリントヘッド22の温度に応じた情報を含むデジタル信号を生成し、制御回路500に出力する。以下の説明では、AD変換回路540が出力するデジタル信号をデジタル温度情報dtcと称する。
【0140】
増幅回路520には、ユニット温度信号THが入力される。そして、増幅回路520は、入力されるユニット温度信号THを増幅し、ユニット増幅温度信号ATHとして出力する。
【0141】
AD変換回路550には、増幅回路520が出力するユニット増幅温度信号ATHと、制御回路500が出力するイネーブル信号ENと、が入力される。AD変換回路550は、制御回路500から入力されるイネーブル信号ENが有効である期間に入力されるユニット増幅温度信号ATHをデジタル信号に変換し制御回路500に出力する。すなわち、AD変換回路540は、イネーブル信号ENが有効である期間に入力されるユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thに応じたデジタル信号であって、イネーブル信号ENが有効である期間のヘッドユニット20の温度に応じた情報を含むデジタル信号を生成し、制御回路500に出力する。以下の説明では、AD変換回路550が出力するデジタル信号をデジタル温度情報dthと称する場合がある。
【0142】
制御回路500は、要求解析部502、補正関数演算部504、補正出力部506、及びメモリー制御部508を含む。そして、制御回路500は、入力される温度取得要求信号TDに応じたセレクト信号Sel、及びイネーブル信号ENを出力するとともに、セレクト信号Sel、及びイネーブル信号ENの出力に応じて入力されるデジタル温度情報dtc,dthに基づいて温度情報信号TIを生成し、出力する。
【0143】
具体的には、要求解析部502は、制御回路500に入力される温度取得要求信号TDを解析する。そして、要求解析部502は、解析結果に応じたセレクト信号Sel、及びイネーブル信号ENを出力させる。
【0144】
補正関数演算部504は、入力されるデジタル温度情報dtc,dthに基づいて、温度情報信号TIとして出力するプリントヘッド22-1~22-nの温度に応じた信号を補正するための補正関数を算出する。
【0145】
補正出力部506は、補正関数演算部504が算出した補正関数を用いて、プリントヘッド22-1~22-nの温度に応じた信号を補正し、温度情報信号TIとして出力する。
【0146】
メモリー制御部508は、記憶回路560にアクセスするためのメモリー制御信号MAを生成し、記憶回路560に出力するとともに、メモリー制御信号MAに応じたメモリー読出信号MRを取得する。メモリー制御部508は、例えば、入力されるデジタル温度情報dtc,dthや、算出した補正関数を記憶回路560に記憶させるメモリー制御信号MAを生成し、記憶回路560に出力する。これにより、デジタル温度情報dtc,dthや補正関数が、記憶回路560の所定の記憶領域に記憶される。また、メモリー制御部508は、記憶回路560に記憶される情報を読み出すためのメモリー制御信号MAを生成し、記憶回路560に出力する。これにより、記憶回路560から読み出された情報を含むメモリー読出信号MRが入力される。
【0147】
以上のように構成された温度情報出力回路26における補正関数の生成方法、及び補正関数を用いた補正の具体例について説明する。
【0148】
図16は、温度情報出力回路26の動作を説明するための図である。図16に示すように、液体吐出装置1が起動すると、制御回路100は起動処理を実行する(ステップS10)。ここで、液体吐出装置1の起動処理とは、例えば、電源電圧が液体吐出装置1に供給されることにより、若しくは、使用者が液体吐出装置1のスイッチ等を押下することで実行される処理であって、不図示の記憶回路に保持されている情報の読み出し等が含まれる。
【0149】
そして、液体吐出装置1のヘッドユニット20が有する温度情報出力回路26は、液体吐出装置1の起動処理が開始した後、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対応する補正関数を算出する補正関数算出処理を実行する(ステップS20)。
【0150】
具体的には、補正関数算出処理として、制御回路100は、ヒーター84を含む発熱ユニット80の温度を第1温度に制御するための制御信号Ctrl-Wを出力し、温度情報出力回路26は、ヘッド温度信号TC1~TCnのそれぞれに含まれるヘッド温度情報tc1~tcnと、ユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thと、を取得し、保持する。その後、制御回路100は、ヒーター84を含む発熱ユニット80の温度を第1温度と異なる第2温度に制御するための制御信号Ctrl-Wを出力し、温度情報出力回路26は、ヘッド温度信号TC1~TCnのそれぞれに含まれるヘッド温度情報tc1~tcnと、ユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thと、を取得し、保持する。
【0151】
すなわち、温度情報出力回路26は、発熱ユニット80が有するヒーター84の温度が第1温度の場合と、発熱ユニット80が有するヒーター84の温度が第2温度の場合と、の少なくとも2つの温度において、ヘッド温度信号TC1~TCnのそれぞれに含まれるヘッド温度情報tc1~tcnと、ユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thと、を取得し、保持する。そして、温度情報出力回路26は、保持する第1温度の場合のヘッド温度情報tc1~tcnとユニット温度情報thと、第2温度の場合のヘッド温度情報tc1~tcnとユニット温度情報thと、を用いて補正関数を算出する。
【0152】
このような補正関数算出処理は、温度情報出力回路26に制御回路100が出力する温度取得要求信号TDが入力されることで実行されてもよく、また、制御回路100が起動処理を開始した後、所定の時間経過した場合に実行されてもよい。また、第1温度、又は第2温度は、発熱ユニット80のヒーター84がOFFの状態の温度であって、液体吐出装置1が設置される周囲の環境温度であってもよい。なお、ステップS20に示す補正関数算出処理の詳細については後述する。
【0153】
補正関数算出処理が完了した後、制御回路100は、液体吐出装置1に画像情報信号が入力されたか否かを判定する(ステップS30)。制御回路100が、液体吐出装置1に画像情報信号は入力されていないと判定した場合(ステップS30のN)、制御回路100は、液体吐出装置1の動作を停止させるための停止要求が生じたか否かを判定する(ステップS70)。ここで、液体吐出装置1の動作の停止には、液体吐出装置1への電源電圧の供給が停止している状態に加えて、消費電力を低減した状態で待機する所謂スリープ状態等が含まれ、液体吐出装置1の動作を停止させるための停止要求としては、例えば、使用者が液体吐出装置1の動作を停止させるために対応するスイッチを押下することで生じる要求や、液体吐出装置1への電源電圧の供給が停止したことにより生じる要求等が含まれる。
【0154】
そして、制御回路100が、液体吐出装置1に停止要求は生じていないと判定した場合(ステップS70のN)、制御回路100は、液体吐出装置1に画像情報信号が入力されたか否かの判定を再度行う(ステップS30)。すなわち、液体吐出装置1は、画像情報信号が入力されるまで、又は停止要求が生じるまでの期間、待機する。
【0155】
一方で、制御回路100が、液体吐出装置1に画像情報信号が入力されていると判定した場合(ステップS30のY)、制御回路100は、入力される画像情報信号に基づく画像を媒体Pに形成する印刷処理を実行する(ステップS40)。印刷処理とは、制御回路100が出力する基駆動信号dA1に基づいて、駆動回路50が駆動信号COMをヘッドユニット20に出力するとともに、制御回路100が印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CHをヘッドユニット20に出力することで、ヘッドユニット20が有するプリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに含まれる駆動信号選択回路200が駆動信号VOUTを生成し、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれから所定のタイミングで所定量のインクを吐出させる処理である。
【0156】
そして、制御回路100が印刷処理を実行している期間において、温度情報出力回路26は、温度取得要求信号TDに応じてプリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度を示す温度情報信号TIを出力する温度情報出力処理を実行する(ステップS50)。具体的には、温度情報出力回路26は、入力される温度取得要求信号TDによって指定されるプリントヘッド22のヘッド温度情報tcを取得する。そして、取得したヘッド温度情報tcを補正関数算出処理において算出た補正関数を用いて補正し、補正後の信号を温度情報信号TIとして出力する。なお、温度情報取得処理の詳細については後述する。
【0157】
その後、制御回路100は、温度情報出力回路26から入力される温度情報信号TIに基づいて、液体吐出装置1の補正処理を実行する(ステップS60)。ここで、液体吐出装置1の補正処理としては、例えば、制御回路100が出力する制御信号Ctrl-H,Ctrl-C,Ctrl-Tの補正等が含まれる。これにより、液体吐出装置1の各構成は、プリントヘッド22-1~22-nの温度であって、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに貯留されるインクの温度に応じて動作することができる。その結果、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれからのインクの吐出精度、及び吐出されたインクの媒体Pへの着弾精度が向上し、媒体Pに形成される画像品質が向上する。
【0158】
液体吐出装置1の補正処理が完了した後、制御回路100は、液体吐出装置1の動作を停止させるための停止要求が生じたか否かを判定し(ステップS70)、液体吐出装置1に停止要求が生じていない場合(ステップS70のN)、制御回路100は、液体吐出装置1に画像情報信号が入力されたか否かを判定する(ステップS30)。一方で、液体吐出装置1に停止要求が生じた場合(ステップS70のY)、制御回路100は、液体吐出装置1の停止処理を実行し(ステップS80)、その後、液体吐出装置1は動作を停止する。
【0159】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1において温度情報出力回路26は、補正関数算出処理において、発熱ユニット80が所定温度で発熱している場合に入力されるユニット温度情報thと、ヘッド温度情報tcと、に基づいて補正関数を算出する。そして、温度情報出力回路26は、算出した補正関数を用いて補正した温度情報信号TIを出力する。換言すれば、温度情報出力回路26は、発熱ユニット80が第1温度及び第2温度の少なくとも一方で発熱している場合に入力されるユニット温度情報thとヘッド温度情報tcとに基づいて、温度情報信号TIとして出力するヘッド温度情報tcを補正する。
【0160】
次に、上述した補正関数算出処理の具体例について説明する。図17は、補正関数算出処理の一例を説明するための図である。
【0161】
図17に示すように、制御回路100から温度情報出力回路26に、補正関数算出処理の実行を指示する温度取得要求信号TDが入力されることで(ステップS210)、液体吐出装置1は、補正関数算出処理を実行する。補正関数算出処理として、まず、発熱ユニット80の温度が第1温度の場合にプリントヘッド22-1~22-nのそれぞれが出力するヘッド温度信号TC1~TCnに含まれるヘッド温度情報tc1~tcnのそれぞれに対応付けて、温度検出回路28が出力するユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thを取得する第1温度情報取得処理が実行される(ステップS220)。
【0162】
具体的には、第1温度情報取得処理において、制御回路100は、発熱ユニット80の温度を第1温度に制御するための制御信号Ctrl-Wを出力する。これにより、発熱ユニット80の温度が第1温度に制御される(ステップS221)。また、温度情報出力回路26は、変数jをj=1に初期化する(ステップS222)。すなわち、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1に対応する第1温度情報取得処理を実行する。
【0163】
その後、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、変数jが“1”であるが故に、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TC1を増幅回路510-1で増幅したヘッド増幅温度信号ATC1を選択するセレクト信号Selをマルチプレクサー530に出力する。これにより、マルチプレクサー530は、ヘッド増幅温度信号ATCjとしてヘッド増幅温度信号ATC1を選択し(ステップS223)、選択温度信号STCとして出力する。
【0164】
その後、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、AD変換回路540,550におけるアナログ/デジタル変換を有効にするためのイネーブル信号ENを出力する。これにより、AD変換回路540は、ヘッド増幅温度信号ATC1である選択温度信号STCをデジタル信号に変換したデジタル温度情報dtcを出力し、AD変換回路550は、温度検出回路28が出力するユニット温度信号THを増幅回路520で増幅したユニット増幅温度信号ATHをデジタル信号に変換したデジタル温度情報dthを出力する。そして、制御回路500は、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcと、AD変換回路550が出力するデジタル温度情報dthと、を取得する(ステップS224)。
【0165】
その後、制御回路500が有するメモリー制御部508は、取得したデジタル温度情報dtcを、プリントヘッド22-jであって、プリントヘッド22-1に対応する温度を示す第1ヘッド温度情報tgc1-1として記憶回路560に記憶する(ステップS225)ためのメモリー制御信号MAを出力する。また、制御回路500が有するメモリー制御部508は、取得したデジタル温度情報dthを、第1ヘッド温度情報tgc1-1が取得された際のヘッドユニット20の温度を示す第1ユニット温度情報tgh1-1として記憶回路560に記憶する(ステップS226)ためのメモリー制御信号MAを出力する。すなわち、記憶回路560には、発熱ユニット80が第1温度で発熱している期間におけるプリントヘッド22-1の温度と、プリントヘッド22-1の温度が取得された際のヘッドユニット20の温度と、が対応して記憶される。
【0166】
その後、温度情報出力回路26は、変数jに“1”を加算する(ステップS227)とともに、加算後の変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”以下であるか否かの判定を行う(ステップS228)。そして、変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”以下の場合(ステップS228のY)、温度情報出力回路26は、ステップS223~S228までの処理を繰り返し実行する。これにより、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対して、上述した第1温度情報取得処理を実行する。その後、変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”を超えることで(ステップS228のN)、温度情報出力回路26は、第1温度情報取得処理を終了する。
【0167】
すなわち、第1温度情報取得処理では、発熱ユニット80が第1温度で発熱している期間におけるプリントヘッド22-1~22-nの温度と、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度が取得された際のヘッドユニット20の温度と、が対応した状態で、記憶回路560に記憶される。
【0168】
そして、第1温度情報取得処理が完了した後、発熱ユニット80の温度が第2温度の場合にプリントヘッド22-1~22-nのそれぞれが出力するヘッド温度信号TC1~TCnに含まれるヘッド温度情報tc1~tcnのそれぞれに対応付けて、温度検出回路28が出力するユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thを取得する第2温度情報取得処理が実行される(ステップS230)。
【0169】
具体的には、第2温度情報取得処理において、制御回路100は、発熱ユニット80の温度を第1温度と異なる第2温度に制御するための制御信号Ctrl-Wを出力する。これにより、発熱ユニット80の温度が第2温度に制御される(ステップS231)。また、温度情報出力回路26は、変数jをj=1に初期化する(ステップS232)。すなわち、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1に対応する第2温度情報取得処理を実行する。
【0170】
その後、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、変数jが“1”であるが故に、プリントヘッド22-1が出力するヘッド温度信号TC1を増幅回路510-1で増幅したヘッド増幅温度信号ATC1を選択するセレクト信号Selをマルチプレクサー530に出力する。これにより、マルチプレクサー530は、ヘッド増幅温度信号ATCjとしてヘッド増幅温度信号ATC1を選択し(ステップS233)、選択温度信号STCとして出力する。
【0171】
その後、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、AD変換回路540,550におけるアナログ/デジタル変換を有効にするためのイネーブル信号ENを出力する。これにより、AD変換回路540は、ヘッド増幅温度信号ATC1である選択温度信号STCをデジタル信号に変換したデジタル温度情報dtcを出力し、AD変換回路550は、温度検出回路28が出力するユニット温度信号THを増幅回路520で増幅したユニット増幅温度信号ATHをデジタル信号に変換したデジタル温度情報dthを出力する。そして、制御回路500は、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcと、AD変換回路550が出力するデジタル温度情報dthと、を取得する(ステップS234)。
【0172】
その後、制御回路500が有するメモリー制御部508は、取得したデジタル温度情報dtcを、プリントヘッド22-jであって、プリントヘッド22-1に対応する温度を示す第2ヘッド温度情報tgc2-1として記憶回路560に記憶する(ステップS235)ためのメモリー制御信号MAを出力する。また、制御回路500が有するメモリー制御部508は、取得したデジタル温度情報dthを、第2ヘッド温度情報tgc2-1が取得された際のヘッドユニット20の温度を示す第2ユニット温度情報tgh2-1として記憶回路560に記憶する(ステップS236)ためのメモリー制御信号MAを出力する。すなわち、記憶回路560には、発熱ユニット80が第2温度で発熱している期間におけるプリントヘッド22-1の温度と、プリントヘッド22-1の温度が取得された際のヘッドユニット20の温度と、が対応して記憶される。
【0173】
その後、温度情報出力回路26は、変数jに“1”を加算する(ステップS237)とともに、加算後の変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”以下であるか否かの判定を行う(ステップS238)。そして、変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”以下の場合(ステップS238のY)、温度情報出力回路26は、ステップS233~S238までの処理を繰り返し実行する。これにより、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対して、上述した第2温度情報取得処理を実行する。その後、変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”を超えることで(ステップS238のN)、温度情報出力回路26は、第2温度情報取得処理を終了する。
【0174】
すなわち、第2温度情報取得処理では、発熱ユニット80が第2温度で発熱している期間におけるプリントヘッド22-1~22-nの温度と、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれの温度が取得された際のヘッドユニット20の温度と、が対応した状態で、記憶回路560に記憶される。
【0175】
そして、第1温度情報取得処理、及び第2温度情報取得処理が完了した後、温度情報出力回路26は、記憶回路に記憶されている第1ヘッド温度情報tgc1-1~tgc1-n、第2ヘッド温度情報tgc2-1~tgc2-n、第1ユニット温度情報tgh1-1~tgh1-n、及び第2ユニット温度情報tgh2-1~tgh2-nを順次読み出し、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対応する補正関数Cf1~Cfnを算出するとともに、記憶回路560に記憶する補正関数取得処理を実行する(ステップS240)。
【0176】
具体的には、補正関数取得処理は、第1温度情報取得処理、及び第2温度情報取得処理が可能したのち、実行される。補正関数取得処理が開始されると、温度情報出力回路26は、変数jをj=1に初期化する(ステップS241)。すなわち、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1に対応する補正関数Cf1の算出を実行する。
【0177】
まず、温度情報出力回路26に含まれるメモリー制御部508は、記憶回路560から、プリントヘッド22-jであってプリントヘッド22-1に対応する第1ヘッド温度情報tgc1-jとしての第1ヘッド温度情報tgc1-1、第2ヘッド温度情報tgc2-jとしての第2ヘッド温度情報tgc2-1、第1ユニット温度情報tgh1-jとしての第1ユニット温度情報tgh1-1、及び第2ユニット温度情報tgh2-jとしての第2ユニット温度情報tgh2-1を読み出すためのメモリー制御信号MAを出力する。これにより、記憶回路560から第1ヘッド温度情報tgc1-1、第2ヘッド温度情報tgc2-1、第1ユニット温度情報tgh1-1、及び第2ユニット温度情報tgh2-1が読み出され、メモリー読出信号MRとしてメモリー制御部508に入力される。すなわち、制御回路500は、記憶回路560から第1ヘッド温度情報tgc1-1、第2ヘッド温度情報tgc2-1、第1ユニット温度情報tgh1-1、及び第2ユニット温度情報tgh2-1を読み出す(ステップS242)。
【0178】
メモリー制御部508に入力された第1ヘッド温度情報tgc1-1、第2ヘッド温度情報tgc2-1、第1ユニット温度情報tgh1-1、及び第2ユニット温度情報tgh2-1は、補正関数演算部504に入力される。補正関数演算部504は、入力される第1ヘッド温度情報tgc1-1、第2ヘッド温度情報tgc2-1、第1ユニット温度情報tgh1-1、及び第2ユニット温度情報tgh2-1から補正関数Cfjとしての補正関数Cf1を算出する(ステップS243)。
【0179】
具体的には、補正関数演算部504は、プリントヘッド22-1の温度が第1ヘッド温度情報tgc1-1である場合のヘッドユニット20の温度が第1ユニット温度情報tgh1-1であり、且つ、プリントヘッド22-1の温度が第2ヘッド温度情報tgc2-1である場合のヘッドユニット20の温度が第2ユニット温度情報tgh2-1となる一次関数を補正関数Cf1として算出する。すなわち、本実施形態の補正関数Cf1は、ヘッド温度情報tc1に基づくデジタル温度情報dtcを変数とする関数である。
【0180】
なお、補正関数演算部504が算出する補正関数Cf1は、上述した一次関数に限るものではなく、プリントヘッド22-1の温度が第1ヘッド温度情報tgc1-1である場合のヘッドユニット20の温度が第1ユニット温度情報tgh1-1であり、プリントヘッド22-1の温度が第2ヘッド温度情報tgc2-1である場合のヘッドユニット20の温度が第2ユニット温度情報tgh2-1となる近似式を補正関数Cf1として算出してもよい。ここで、上述した近似式としては、抵抗配線401の温度特性に応じて、指数近似の近似式、累乗近似の近似式、多項式近似の近似式等であってもよい。
【0181】
補正関数演算部504における補正関数Cf1の算出が完了した後、メモリー制御部508は、算出した補正関数Cf1を記憶回路560に記憶するためのメモリー制御信号MAを生成し、記憶回路560に出力する。これにより、補正関数Cf1が記憶回路560に記憶される。すなわち、メモリー制御部508は、補正関数Cf1を記憶回路560に記憶する(ステップS244)。
【0182】
その後、温度情報出力回路26は、変数jに“1”を加算する(ステップS245)とともに、加算後の変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”以下であるか否かの判定を行う(ステップS246)。そして、変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”以下の場合(ステップS246のY)、温度情報出力回路26は、ステップS242~S246までの処理を繰り返し実行する。これにより、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1~22-nのそれぞれに対応する補正関数Cf1~Cfnを算出し、記憶回路560に記憶する。その後、変数jが、ヘッドユニット20に含まれるプリントヘッド22の総数である“n”を超えることで(ステップS246のN)、温度情報出力回路26は、補正関数取得処理を終了するとともに、補正関数算出処理を終了する。
【0183】
以上のように、温度情報出力回路26は、液体吐出装置1の起動時であって、発熱ユニット80が第1温度で発熱している場合に入力されるユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thを第1ユニット温度情報tgh1-1として保持し、発熱ユニット80が第1温度で発熱している場合に入力されるヘッド温度信号TC1に含まれるヘッド温度情報tc1を第1ヘッド温度情報tgc1-1として保持し、発熱ユニット80が第2温度で発熱している場合に入力されるユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thを第2ユニット温度情報tgh2-1として保持し、発熱ユニット80が第2温度で発熱している場合に入力されるヘッド温度信号TC1に含まれるヘッド温度情報tc1を第2ヘッド温度情報tgc2-1として保持する。
【0184】
そして、温度情報出力回路26は、保持する第1ユニット温度情報tgh1-1、第2ユニット温度情報tgh2-1、第1ヘッド温度情報tgc1-1、及び第2ヘッド温度情報tgc2-1に基づいて補正関数Cf1を算出する。
【0185】
次に、上述した温度情報出力処理の具体例について説明する。図18は、温度情報出力処理の一例を説明するための図である。
【0186】
図18に示すように、印刷処理が実行されている期間において、制御回路100から温度情報出力回路26に、複数のプリントヘッド22の内のいずれかの温度の取得を要求する温度取得要求信号TDが入力される(ステップS510)ことで、温度情報出力回路26は、温度情報出力処理を開始する。
【0187】
温度情報出力回路26に複数のプリントヘッド22の内のいずれかの温度の取得を要求する温度取得要求信号TDが入力されると、温度情報出力回路26の制御回路500に含まれる要求解析部502は、温度取得要求信号TDを解析し、複数のプリントヘッド22の内、温度を取得するプリントヘッド22-k(kは1~nのいずれか)を特定する(ステップS520)。その後、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-kに対応するヘッド温度信号TCkを増幅回路510-kで増幅したヘッド増幅温度信号ATCkを選択するセレクト信号Selをマルチプレクサー530に出力する。これにより、マルチプレクサー530は、ヘッド増幅温度信号ATCkとしてヘッド増幅温度信号ATCkを選択し(ステップS530)、選択温度信号STCとして出力する。
【0188】
その後、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、AD変換回路540におけるアナログ/デジタル変換を有効にするためのイネーブル信号ENを出力する。これにより、AD変換回路540は、ヘッド増幅温度信号ATCkである選択温度信号STCをデジタル信号に変換したデジタル温度情報dtcを出力する。そして、制御回路500は、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcを取得する(ステップS540)。すなわち、制御回路500は、プリントヘッド22-kの温度を示すヘッド温度情報tckに応じたデジタル温度情報dtcを取得する。
【0189】
また、制御回路500に含まれるメモリー制御部508は、記憶回路560に記憶されている補正関数Cf1~Cfnの内の補正関数Cfkを読み出すためのメモリー制御信号MAを出力する。これにより、記憶回路560から補正関数Cfkが読み出され、メモリー読出信号MRとしてメモリー制御部508に入力される。すなわち、制御回路500は、補正関数Cfkを記憶回路560から読み出す(ステップS550)。
【0190】
そして、制御回路500に含まれる補正出力部506は、補正関数Cfkにプリントヘッド22-kの温度を示すヘッド温度情報tckに応じたデジタル温度情報dtcを代入することで補正する。すなわち、補正出力部506は、プリントヘッド22-kの温度を示すヘッド温度情報tckに応じたデジタル温度情報dtcを補正関数Cfkで補正する(ステップS560)。そして、制御回路500に含まれる補正出力部506は、補正したデジタル温度情報dtcをプリントヘッド22-kの温度を示す譲歩として含む温度情報信号TIを生成し、出力する。すなわち、補正出力部506は、補正した信号を温度情報信号TIとして出力する(ステップS570)。これにより、温度情報出力回路26は、温度情報出力処理を終了する。
【0191】
すなわち、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22-1がインクを吐出する印刷処理実行時であって液体吐出時に入力されるヘッド温度信号TC1に含まれるヘッド温度情報tc1を、第1ユニット温度情報tgh1-1、第2ユニット温度情報tgh2-1、第1ヘッド温度情報tgc1-1、及び第2ヘッド温度情報tgc2-1に基づいて補正し、温度情報信号TIとして出力する。具体的には、温度情報出力回路26は、第1ユニット温度情報tgh1-1、第2ユニット温度情報tgh2-1、第1ヘッド温度情報tgc1-1、及び第2ヘッド温度情報tgc2-1に基づいて算出された補正関数Cf1を用いて、プリントヘッド22-1がインクを吐出する印刷処理実行時であって液体吐出時に入力されるヘッド温度信号TC1に含まれるヘッド温度情報tc1を補正し、温度情報信号TIとして出力する。
【0192】
ここで、駆動信号COMが駆動信号の一例であり、駆動信号VOUTが駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択すること個で生成される点に鑑みると、駆動信号VOUTもまた駆動信号の一例であり、発熱ユニット80が発熱機構の一例であり、温度検出回路28がユニット温度検出回路の一例であり、ヘッド温度情報tc1~tcnのいずれかであって、ヘッド温度情報tcがヘッド温度情報の一例であり、ヘッド温度信号TC1~TCnのいずれかであって、ヘッド温度信号TCがヘッド温度信号の一例であり、電極360が第1電極の一例であり、電極380が第2電極の一例であり、Z軸に沿った方向が積層方向の一例であり、Z軸に沿った方向の内の+Z側が積層方向の一方側の一例であり、Z軸に沿った方向の内の-Z側が積層方向の他方側の一例であり、温度検出回路24がヘッド温度検知部の一例であり、第1温度、及び第2温度の一方が所定温度の一例であり、第1ユニット温度情報tgh1-1~tgh1-n、及び第2ユニット温度情報tgh2-1~tgh2-nのいずれかが基準ユニット温度情報の一例であり、第1ユニット温度情報tgh1-1~tgh1-nのいずれかが第1基準ユニット温度情報の一例であり、第2ユニット温度情報tgh2-1~tgh2-nのいずれかが第2基準ユニット温度情報の一例であり、第1ヘッド温度情報tgc1-1~tgc1-n、及び第2ヘッド温度情報tgc2-1~tgc2-nのいずれかが基準ヘッド温度情報の一例であり、第1ヘッド温度情報tgc1-1~tgc1-nのいずれかが第1基準ヘッド温度情報の一例であり、第2ヘッド温度情報tgc2-1~tgc2-nのいずれかが第2基準ヘッド温度情報の一例であり、補正関数Cf1~Cfnのいずれかが補正関数の一例である。
【0193】
3.作用効果
以上のように構成された液体吐出装置1では、ヘッドユニット20がプリントヘッド22を有し、プリントヘッド22が、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層されるZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に位置し、駆動信号COMを受けて駆動する圧電素子60と、圧電素子60に対してZ軸に沿った方向の+Z側に位置し、圧電素子60の駆動により変形する振動板350と、振動板350に対してZ軸に沿った方向の+Z側に位置し、振動板350の変形により容積が変化する圧力室312が設けられている圧力室基板310と、圧力室312の容積の変化に応じて液体を吐出するノズル321と、振動板350に対してZ軸に沿った方向の-Z側に位置し、複数のヘッド温度情報tcの内、対応する圧力室312の温度に応じたヘッド温度情報tcを取得する抵抗配線401を含む温度検出回路24と、を含む。すなわち、プリントヘッド22の温度を検出する温度検出回路24の少なくとも一部構成する抵抗配線401は、プリントヘッド22においてノズル321から吐出されるインクが貯留される圧力室312の近傍に配置される。これにより、温度検出回路24における圧力室312の温度の取得精度であって、圧力室312に貯留されるインクの温度の取得精度が向上する。
【0194】
一方で、このような温度検出回路24は、圧力室312に貯留されるインクの温度として、振動板350に形成された抵抗配線401の温度による電気抵抗値の変化を取得するが故に、温度による電気抵抗値の変化を顕著に取得するとの観点において、抵抗配線401の配線長は長いことが好ましく、抵抗配線401は、プリントヘッド22の内部に形成されるが故に、プリントヘッド22の小型化の観点において、抵抗配線401の配線パターンの配線幅は小さいことが好ましい。そのため、抵抗配線401は、細く長い配線パターンとして構成される。そのため、抵抗値に大きなばらつきが生じるおそれがある。
【0195】
これに対して、本実施形態の液体吐出装置1では、ヘッドユニット20がヘッドユニット20の温度をユニット温度情報thとして検出し、検出したユニット温度情報thを含むユニット温度信号THを出力する温度検出回路28を有するとともに、温度情報出力回路26は、発熱ユニット80が第1温度、及び第2温度の少なくとも一方で発熱している場合に入力されるユニット温度信号THに含まれるユニット温度情報thと温度検出回路24が取得したヘッド温度情報tcとに基づいて、温度情報信号TIとして出力するヘッド温度情報tcを補正する。すなわち、本実施形態のヘッドユニット20は、プリントヘッド22の内部に設けられた温度検出回路24とは別に設けられ、ヘッドユニット20全体の温度を検出する温度検出回路28を有し、温度情報出力回路26は、発熱ユニット80が既知の温度であって、第1温度又は第2温度で発熱している期間に、温度検出回路28が出力するヘッドユニット20の温度を示すユニット温度情報thと、プリントヘッド22の内部に設けられた温度検出回路24が出力するプリントヘッド22の温度を示すヘッド温度情報tcに基づいて、温度情報信号TIとして出力するヘッド温度情報tcを補正する。これにより、温度情報出力回路26は、発熱ユニット80の発熱によって生じた温度変化を、温度検出回路28と、温度検出回路24とで取得し、温度情報出力回路26は、温度検出回路28が取得したユニット温度情報thを基準として、温度検出回路24が取得したヘッド温度情報tcを補正する。これにより、プリントヘッド22の内部に設けられた温度検出回路24の温度の検出特性にばらつきが生じた場合であっても、温度情報出力回路26は、適切に補正し、プリントヘッド22の温度に応じた温度情報信号TIを出力することができる。すなわち、温度情報出力回路26は、温度検出回路24の温度検出特性のばらつきの影響が低減された温度情報信号TIであって、プリントヘッド22の温度を精度よく反映した温度情報信号TIを出力することができる。
【0196】
さらに、本実施形態の液体吐出装置1では、上述のとおり、プリントヘッド22の外部に設けられた温度情報出力回路26が、プリントヘッド22の外部に設けられた温度検出回路28の温度の検出結果に基づいて、プリントヘッド22の内部に設けられた温度検出回路24の特性のばらつきを補正する。それ故に、温度情報出力回路26は、温度検出回路24が出力するヘッド温度信号TCが伝搬する経路、及び当該経路に設けられた回路素子のばらつきにより起因したヘッド温度信号TCのばらつきを含めて補正することができる。これにより、温度情報出力回路26におけるヘッド温度情報tcの補正精度がさらに向上し、その結果、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22の温度をより精度よく反映した温度情報信号TIを出力することができる。
【0197】
また、本実施形態の液体吐出装置1では、温度情報出力回路26は、液体吐出装置1の起動時であって、インクが吐出されていない期間に発熱ユニット80が第1温度、及び第2温度の少なくとも一方で発熱している場合に入力されるユニット温度情報thとヘッド温度情報tcとを保持し、液体吐出装置1が印刷処理を実行する期間であって、液体吐出時に入力されるヘッド温度情報tcを、保持するユニット温度情報th、及びヘッド温度情報tcに基づいて補正する。これにより、補正の基準となるユニット温度情報th、及びヘッド温度情報tcを取得する際に、プリントヘッド22の自己発熱の影響が低減される。その結果、補正の基準として取得するユニット温度情報thで規定される温度と、補正の基準として取得するヘッド温度情報tcで規定される温度と、の間に生じる温度差を小さくすることができる。したがって、温度情報出力回路26がヘッド温度情報tcを補正する際の補正精度がさらに向上し、温度情報出力回路26は、温度検出回路24の温度検出特性のばらつきの影響がさらに低減された温度情報信号TIであって、プリントヘッド22の温度をさらに精度よく反映した温度情報信号TIを出力することができる。
【0198】
また、本実施形態の液体吐出装置1では、温度情報出力回路26は、発熱ユニット80が第1温度で発熱している場合に入力されるユニット温度情報th及びヘッド温度情報tcと、発熱ユニット80が第1温度と異なる第2温度で発熱している場合に入力されるユニット温度情報th及びヘッド温度情報tcと、に基づいて、温度情報信号TIとして出力するヘッド温度情報tcを補正する補正関数を算出し、算出した補正関数に基づいて、補正されたヘッド温度情報tcを出力する。すなわち、温度情報出力回路26は、温度検出回路28が検出した複数の温度を基準として、プリントヘッド22の内部に設けられた温度検出回路24の検出温度を補正する。これにより、温度情報出力回路26は、プリントヘッド22の内部に設けられた温度検出回路24の検出精度のばらつきがさらに低減された温度情報信号TIを出力することができ、温度検出回路24の温度検出特性のばらつきの影響がさらに低減された温度情報信号TIであって、プリントヘッド22の温度をさらに精度よく反映した温度情報信号TIを出力することができる。
【0199】
この際、温度情報出力回路26は、温度検出回路28が検出した複数の温度に基づいて算出された補正関数を用いて、温度情報信号TIとして出力するヘッド温度情報tcを補正する。これにより、温度情報出力回路26は、取得したヘッド温度情報tcに基づくプリントヘッド22の温度に応じた最適な補正値を用いて温度情報信号TIとして出力するヘッド温度情報tcを補正することができる。その結果、温度検出回路24の温度検出特性のばらつきの影響がさらに低減された温度情報信号TIであって、プリントヘッド22の温度をさらに精度よく反映した温度情報信号TIを出力することができる。
【0200】
また、本実施形態の液体吐出装置1では、発熱ユニット80がセラミックヒーターを含んで構成されている。これにより、ヒーター84の温度の上昇スピード、及び、温度の低下スピードを速くすることができ、温度情報信号TIの補正値の算出に要する時間を短縮することができる。
【0201】
さらに、本実施形態の液体吐出装置1において、発熱ユニット80は、媒体Pを乾燥させるための所謂プラテンヒーターを兼ねる。これにより、新たな構成を付加する必要がなく、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIを補正することができる。
【0202】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0203】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0204】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0205】
液体吐出装置の一態様は、
駆動信号に基づいて媒体に液体を吐出するヘッドユニットと、
発熱機構と、
を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記駆動信号に基づいて液体を吐出するプリントヘッドと、
前記ヘッドユニットの温度をユニット温度情報として検出し、前記ユニット温度情報を含むユニット温度信号を出力するユニット温度検出回路と、
前記ユニット温度信号と、前記プリントヘッドの温度に対応するヘッド温度情報を含むヘッド温度信号とが入力され、温度情報信号を出力する温度情報出力回路と、
を有し、
前記プリントヘッドは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度に対応する前記ヘッド温度情報を検出し、前記ヘッド温度信号として出力するヘッド温度検出部と、
を含み、
前記温度情報出力回路は、
前記発熱機構が所定温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度情報と前記ヘッド温度情報とに基づいて、前記温度情報信号として出力する前記ヘッド温度情報を補正する。
【0206】
この液体吐出装置によれば、圧力室の温度に対応するヘッド温度情報を検出するヘッド温度検出部が圧力室の近傍に位置することで、温度検出部は、圧力室の温度であって、圧力室に貯留されている液体の温度を精度よく検出することができる。
【0207】
さらに、この液体吐出装置によれば、圧力室の温度を検出するヘッド温度検知部とは別に、ヘッドユニットの温度を検出するユニット温度検出回路を有し、温度情報出力回路は、発熱機構が所定の温度で発熱する期間に、ユニット温度検出回路が出力するユニット温度情報と、ヘッド温度検知部が出力するヘッド温度情報と、に基づいて、プリントヘッドの温度を示す温度情報信号を補正する。すなわち、発熱機構の発熱によって生じた温度変化を、プリントヘッドの外部に設けられたユニット温度検出回路と、プリントヘッドの内部に設けられたヘッド温度検知部とで取得し、温度情報出力回路は、プリントヘッドの外部に設けられたユニット温度検出回路が検出したユニット温度情報を基準として、プリントヘッドの内部に設けられたヘッド温度検知部が検出したヘッド温度情報を補正する。これにより、プリントヘッドの内部に設けられたヘッド温度検知部の温度検出特性のばらつきが生じた場合であっても、温度情報出力回路は、当該ばらつきを補正し、プリントヘッドの温度に応じた温度情報信号を出力することができる。
【0208】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記温度情報出力回路は、
起動時であって前記発熱機構が所定温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度信号に含まれる前記ユニット温度情報を基準ユニット温度情報として保持し、
起動時であって前記発熱機構が前記所定温度で発熱している場合に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を基準ヘッド温度情報として保持し、
前記プリントヘッドが液体を吐出する液体吐出時に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を、前記基準ユニット温度情報と前記基準ヘッド温度情報とに基づいて補正し、前記温度情報信号として出力してもよい。
【0209】
この液体吐出装置によれば、プリントヘッドの外部に設けられたユニット温度検出回路と、プリントヘッドの内部に設けられたヘッド温度検知部とが、発熱機構の発熱によって生じた温度変化を、起動時に取得することで、プリントヘッドの自己発熱の影響が低減される。これにより、温度情報出力回路が、プリントヘッドの外部に設けられたユニット温度検出回路が検出したユニット温度情報を基準として、プリントヘッドの内部に設けられたヘッド温度検知部が検出したヘッド温度情報を補正する際の補正精度が向上する。よって、温度情報出力化路によるヘッド温度検知部の温度検出特性のばらつきの補正精度が向上し、プリントヘッドの温度に応じた温度情報信号の精度がさらに向上する。
【0210】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記温度情報出力回路は、
前記発熱機構が前記所定温度としての第1温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度信号に含まれる前記ユニット温度情報を第1基準ユニット温度情報として保持し、
前記発熱機構が前記第1温度で発熱している場合に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を第1基準ヘッド温度情報として保持し、
前記発熱機構が前記所定温度としての第2温度で発熱している場合に入力される前記ユニット温度信号に含まれる前記ユニット温度情報を第2基準ユニット温度情報として保持し、
前記発熱機構が前記第2温度で発熱している場合に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を第2基準ヘッド温度情報として保持し、
保持する前記第1基準ユニット温度情報、前記第2基準ユニット温度情報、前記第1基準ヘッド温度情報、及び前記第2基準ヘッド温度情報に基づいて補正関数を算出し、
前記補正関数を用いて、前記プリントヘッドが液体を吐出する液体吐出時に入力される前記ヘッド温度信号に含まれる前記ヘッド温度情報を補正し、前記温度情報信号として出力してもよい。
【0211】
この液体吐出装置によれば、温度情報出力回路が、発熱機構が第1温度の場合に取得した第1基準ユニット温度情報、及び第1基準ヘッド温度情報と、発熱機構が第2温度の場合に取得した第2基準ユニット温度情報、及び第2基準ヘッド温度情報に基づいて、プリントヘッドの外部に設けられたユニット温度検出回路が検出したユニット温度情報を基準として、プリントヘッドの内部に設けられたヘッド温度検知部が検出したヘッド温度情報を補正することで、温度情報出力回路によるヘッド温度検知部の温度検出特性のばらつきの補正精度がさらに向上し、プリントヘッドの温度に応じた温度情報信号の精度がさらに向上する。
【0212】
また、この液体吐出装置によれば、補正関数を用いてプリントヘッドの外部に設けられたユニット温度検出回路が検出したユニット温度情報を基準として、プリントヘッドの内部に設けられたヘッド温度検知部が検出したヘッド温度情報を補正する。これにより、温度情報出力回路は、取得したヘッド温度情報に基づいてプリントヘッドの温度に応じた最適な補正値で補正することができる。その結果、温度情報出力回路によるヘッド温度検知部の温度検出特性のばらつきの補正精度がさらに向上し、プリントヘッドの温度に応じた温度情報信号の精度がさらに向上する。
【0213】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記発熱機構はセラミックヒーターを含んでもよい。
【0214】
この液体吐出装置によれば、発熱機構としてセラミックヒーターを用いることで、発熱機構の温度制御の速度を高めることができ、その結果、温度情報出力回路によるプリントヘッドの温度に応じた温度情報信号の補正を短時間で実行することができる。
【0215】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記発熱機構は、前記媒体を乾燥させる媒体加熱機能を有してもよい。
【0216】
この液体吐出装置によれば、発熱機構としての新たな構成を設ける必要がなく、液体吐出装置の小型化が可能となる。
【0217】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記ノズルから液体が吐出される吐出方向において、前記発熱機構は、前記プリントヘッドの少なくとも一部と重なるように位置していてもよい。
【0218】
この液体吐出装置によれば、プリントヘッドに設けられたヘッド温度検知部、及びプリントヘッドを含むヘッドユニットに設けられたユニット温度検出回路が、発熱機構の近傍に位置することで、発熱機構の温度変換を精度よく検出することができる。その結果、温度情報出力回路によるプリントヘッドの温度に応じた温度情報信号の補正精度がさらに向上する。
【0219】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記プリントヘッドは、前記ノズルが形成されたノズルプレートを含み、前記ノズルプレートと前記発熱機構との最短距離は1mm未満であってもよい。
【0220】
この液体吐出装置によれば、プリントヘッドに設けられたヘッド温度検知部、及びプリントヘッドを含むヘッドユニットに設けられたユニット温度検出回路が、発熱機構の近傍に位置することで、発熱機構の温度変換を精度よく検出することができる。その結果、温度情報出力回路によるプリントヘッドの温度に応じた温度情報信号の補正精度がさらに向上する。
【0221】
上記液体吐出装置の一態様において、
前記ヘッド温度検出部は、前記振動板の前記積層方向における他方側の面に設けられ、白金を含む配線を有してもよい。
【0222】
白金は、温度による抵抗値変化が大きく、また、安定性と精度が高い。さらに、白金は、温度変化に対する抵抗値の変化の線形性も高い。この液体吐出装置によれば、ヘッド温度検知部として、白金の配線を含むことで、ヘッド温度検知部における温度の検出精度がさらに向上する。
【符号の説明】
【0223】
1…液体吐出装置、10…制御ユニット、20…ヘッドユニット、21…キャリッジ、22…プリントヘッド、24…温度検出回路、26…温度情報出力回路、28…温度検出回路、30…移動ユニット、31…キャリッジモーター、32…無端ベルト、40…搬送ユニット、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、50…駆動回路、52…基準電圧出力回路、60…圧電素子、80…発熱ユニット、82…媒体支持部、84…ヒーター、90…インク容器、92…リニアエンコーダー、100…制御回路、200…駆動信号選択回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、310…圧力室基板、311…隔壁、312…圧力室、312a,312b…端部、315…連通板、316…ノズル連通路、317…第1マニホールド部、318…第2マニホールド部、319…供給連通路、320…ノズルプレート、321…ノズル、330…保護基板、331…保持部、332…貫通孔、340…ケース部材、341…収容部、342…第3マニホールド部、343…接続口、344…供給口、345…コンプライアンス基板、346…封止膜、347…固定基板、348…開口部、349…コンプライアンス部、350…振動板、351…弾性膜、352…絶縁体膜、360…電極、360a,360b…端部、370…圧電体、370a,370b…端部、371…溝部、380…電極、380a,380b…端部、385…配線部、391…個別リード電極、392…共通リード電極、392a,392b…延設部、393,393a,393b…測定用リード電極、400…マニホールド、401…抵抗配線、410…活性部、415…非活性部、420…配線基板、421…集積回路、500…制御回路、502…要求解析部、504…補正関数演算部、506…補正出力部、508…メモリー制御部、510-1~510-n,520…増幅回路、530…マルチプレクサー、540,550…AD変換回路、560…記憶回路、840…セラミック基板、842…発熱抵抗体、844…保護部材、P…媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18