(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008277
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】配線回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G11B 5/60 20060101AFI20240112BHJP
G11B 5/48 20060101ALI20240112BHJP
G11B 21/21 20060101ALI20240112BHJP
H05K 3/44 20060101ALI20240112BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G11B5/60 P
G11B5/48 D
G11B21/21 D
G11B21/21 C
H05K3/44 Z
H05K1/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110013
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大薮 恭也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 りな
【テーマコード(参考)】
5E315
5E338
【Fターム(参考)】
5E315AA03
5E315BB01
5E315BB02
5E315BB03
5E315BB04
5E315BB05
5E315BB14
5E315BB16
5E315CC01
5E315DD15
5E315DD29
5E315GG07
5E315GG22
5E338AA01
5E338AA16
5E338AA18
5E338BB80
5E338EE11
5E338EE21
(57)【要約】
【課題】高いフレキシブル性を有しかつインピーダンスの不連続性が低減された配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁層30は、第1および第2の主面S1,S2を有する。導体層40は、第1の主面S1上に設けられる。金属薄膜20は、第2の主面S2上に設けられ、絶縁層30と反対の方向を向く第3の主面S3を有する。金属支持体10は、金属薄膜20とは異なる金属材料からなる。第1の主面S1には、第1および第2の領域A1,A2が定められ、導体層40は、第1の主面S1のうち第1および第2の領域A1,A2を通るように延びる配線を構成する。第3の主面S3において、平面視で第1の主面S1の第1および第2の領域A1,A2に重なる第3および第4の領域A3,A4を定義した場合に、金属支持体10は、第3の領域A3を覆わないようにかつ第4の領域A4を覆うように、第3の主面S3上に設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対の方向を向く第1の主面および第2の主面を有する絶縁層と、
前記絶縁層の前記第1の主面上に設けられる導体層と、
前記絶縁層の前記第2の主面上に設けられ、前記絶縁層と反対の方向を向く第3の主面を有する金属薄膜と、
前記金属薄膜の少なくとも一部の金属材料とは異なる金属材料からなる金属支持体とを備え、
前記絶縁層の前記第1の主面には、互いに異なる第1の領域および第2の領域が定められ、
前記導体層の少なくとも一部は、前記第1の主面のうち前記第1の領域および前記第2の領域を通るように延びる配線を構成し、
前記金属薄膜の前記第3の主面において、前記第1の主面に直交する交差方向に見て前記第1の主面の前記第1の領域および前記第2の領域にそれぞれ重なる第3の領域および第4の領域を定義した場合に、前記金属支持体は、前記第3の主面のうち前記第3の領域を覆わないようにかつ前記第4の領域を覆うように、前記第3の主面上に設けられる、配線回路基板。
【請求項2】
前記第1の主面において、前記第1の領域と前記第2の領域とは互いに隣り合う、請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記金属薄膜は、前記交差方向に積層された第1の金属膜および第2の金属膜を含み、
前記第1の金属膜および前記第2の金属膜のうち少なくとも一方の金属材料は、前記金属支持体の金属材料とは異なる、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記金属薄膜は、めっき層を含む、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記金属薄膜の厚みは、前記金属支持体の厚みよりも小さい、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記金属薄膜の厚みは、20nm以上5μm以下である、請求項1または2記載の配線回路基板。
【請求項7】
金属支持体を用意するステップと、
前記金属支持体上に前記金属支持体とは異なる金属材料からなる金属薄膜を形成するステップと、
互いに反対の方向を向く第1の主面および第2の主面を有する絶縁層を、前記第2の主面が前記金属薄膜に接するように前記金属薄膜上に形成するステップと、
前記絶縁層の前記第1の主面上に導体層を形成するステップと、
前記金属薄膜を形成するステップの後、前記金属支持体の一部を除去するステップとを含み、
前記絶縁層の前記第1の主面には、互いに異なる第1の領域および第2の領域が定められ、
前記導体層を形成するステップは、当該導体層の少なくとも一部により、前記第1の主面のうち前記第1の領域および前記第2の領域を通るように延びる配線を形成することを含み、
前記金属薄膜は、前記絶縁層と反対の方向を向くとともに前記金属支持体に接する第3の主面を有し、
前記金属薄膜の前記第3の主面において、前記第1の主面に直交する交差方向に見て前記第1の主面の前記第1の領域および前記第2の領域にそれぞれ重なる第3の領域および第4の領域を定義した場合に、前記金属支持体の一部を除去するステップは、当該金属支持体が前記第3の主面のうち前記第3の領域を覆わないようにかつ前記第4の領域を覆うように、前記第3の主面の前記第3の領域に位置する前記金属支持体の部分を除去することを含む、配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記金属薄膜を形成するステップは、
前記金属薄膜の少なくとも一部をスパッタリングにより形成することを含む、請求項7記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記金属薄膜を形成するステップは、
前記金属薄膜の少なくとも一部をめっきにより形成することを含む、請求項7または8記載の配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線回路基板の一例として、例えば金属支持基板上に絶縁層が形成されるとともに、その絶縁層上に配線としての導体層が形成された回路付きサスペンション基板がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、配線回路基板の用途の拡大が進んでいる。配線回路基板の用途によっては、配線回路基板に対してより高いフレキシブル性が求められる場合がある。上記の回路付きサスペンション基板においては、金属支持基板が絶縁層および導体層に比べて比較的高い剛性を有する。そこで、回路付きサスペンション基板の上記の基本構成から、金属支持基板の一部を除去することにより、高いフレキシブル性を有する配線回路基板が実現されると考えられる。
【0005】
上記の回路付きサスペンション基板のうち絶縁層を挟んで導体層と金属支持基板とが対向する部分においては、金属支持基板は、導体層(配線)のインピーダンスを低減させる。そのため、金属支持基板の一部が除去されると、導体層のインピーダンスを低減することができない。この場合、導体層(配線)のインピーダンスが所望の値からずれることにより、導体層とその導体層に接続される電子部品との間でインピーダンス不整合が生じる可能性がある。
【0006】
特許文献1には、開口領域を有するステンレス製の金属支持基板上に絶縁層および配線がこの順で積層されたサスペンション用フレキシャー基板(配線回路基板)の一例が記載されている。以下の説明では、特許文献1のサスペンション用フレキシャー基板について、金属支持基板、絶縁層および配線が積層される方向を、基板積層方向と呼ぶ。
【0007】
そのサスペンション用フレキシャー基板においては、金属支持基板の開口領域が、基板積層方向で配線の一部分に重なる。また、そのサスペンション用フレキシャー基板においては、配線のインピーダンスを低減させるために、金属支持基板の開口領域に、金属支持基板よりも導電率の高い導体膜が形成されている。その導体膜は、基板積層方向で配線の一部分に重なる。
【0008】
この構成によれば、基板積層方向において、配線の複数の部分が金属支持基板または導体膜に重なる。それにより、配線のインピーダンスが低減される。しかしながら、特許文献1のサスペンション用フレキシャー基板においては、金属支持基板と導体膜とは、少なくとも導電性(導電率)が互いに異なる材料で構成される。
【0009】
上記の配線の複数の部分についてインピーダンスを低減可能な度合いは、基板積層方向において配線の複数の部分の各々に絶縁層を挟んで対向する部材(上記の例では、導体膜および金属支持基板)の導電率に応じて異なる。そのため、基板積層方向において導体膜に重なる配線の一部分と、基板積層方向において金属支持基板に重なる配線の他の部分との間では、低減可能なインピーダンスの程度に差が生じる。配線におけるインピーダンスの不連続性は、当該配線の電気的特性を低下させる。
【0010】
本発明の目的は、高いフレキシブル性を有しかつインピーダンスの不連続性が低減された配線回路基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一局面に従う配線回路基板は、互いに反対の方向を向く第1の主面および第2の主面を有する絶縁層と、絶縁層の第1の主面上に設けられる導体層と、絶縁層の第2の主面上に設けられ、絶縁層と反対の方向を向く第3の主面を有する金属薄膜と、金属薄膜の少なくとも一部の金属材料とは異なる金属材料からなる金属支持体とを備え、絶縁層の第1の主面には、互いに異なる第1の領域および第2の領域が定められ、導体層の少なくとも一部は、第1の主面のうち第1の領域および第2の領域を通るように延びる配線を構成し、金属薄膜の第3の主面において、第1の主面に直交する交差方向に見て第1の主面の第1の領域および第2の領域にそれぞれ重なる第3の領域および第4の領域を定義した場合に、金属支持体は、第3の主面のうち第3の領域を覆わないようにかつ第4の領域を覆うように、第3の主面上に設けられる。
【0012】
その配線回路基板において、交差方向に見て第1の主面の第1の領域および第3の主面の第3の領域に重なる配線回路基板の一部分を第1の基板部と呼ぶ。また、交差方向に見て第1の主面の第2の領域および第3の主面の第4の領域に重なる配線回路基板の他の部分を第2の基板部と呼ぶ。
【0013】
この場合、第1の基板部は、導体層の一部分、絶縁層の一部分、および金属薄膜の一部分を含み、金属支持体を含まない。一方、第2の基板部は、導体層の他の部分、絶縁層の他の部分、金属薄膜の他の部分および金属支持体を含む。
【0014】
上記のように、第1の基板部は金属支持体を含まない。それにより、第1の基板部においては、第2の基板部に比べて高いフレキシブル性が確保される。一方、第2の基板部は、金属支持体を含む。それにより、第2の基板部においては、第1の基板部を他の部材に支持するため、あるいは他の部材を搭載するために必要な一定の機械的強度が確保される。
【0015】
また、上記の配線回路基板においては、第1の主面の第1の領域に形成される配線の一部分および第1の主面の第2の領域に形成される配線の他の部分の各々に、絶縁層を挟んで金属薄膜が対向する。それにより、導体層の一部分のインピーダンスと導体層の他の部分のインピーダンスとが、共通の金属薄膜により調整される。したがって、導体層の複数の部分でインピーダンスが不均一に調整されることが低減される。
【0016】
これらの結果、高いフレキシブル性を有しかつインピーダンスの不連続性が低減された配線回路基板が実現される。
【0017】
(2)第1の主面において、第1の領域と第2の領域とは互いに隣り合ってもよい。この場合、第1の基板部と第2の基板部とが連続して並ぶので、第1の基板部が第2の基板部により適切に支持される。
【0018】
(3)金属薄膜は、交差方向に積層された第1の金属膜および第2の金属膜を含み、第1の金属膜および第2の金属膜のうち少なくとも一方の金属材料は、金属支持体の金属材料とは異なってもよい。
【0019】
この場合、金属薄膜として、第1の金属膜および第2の金属膜が用いられる。したがって、第1の金属膜および第2の金属膜に用いる金属材料等を適宜決定することにより、導体層のインピーダンスを低減するためにより適切な金属薄膜を形成することができる。あるいは、絶縁層に対する金属薄膜および金属支持体の密着性を向上させるためにより適切な金属薄膜を形成することができる。
【0020】
(4)金属薄膜は、めっき層を含んでもよい。導体層のインピーダンスの低減の程度は、金属薄膜の厚みによって異なる。上記の構成によれば、金属薄膜の少なくとも一部がめっき層を含む。めっき層を形成する場合には、処理時間等のめっきの処理条件を適宜調整することにより、形成されるめっき層の厚みを比較的容易に調整することができる。したがって、導体層のインピーダンスを低減するためにより適切な厚みを有する金属薄膜の形成が可能になる。
【0021】
(5)金属薄膜の厚みは、金属支持体の厚みよりも小さくてもよい。この場合、第1の基板部において、より高いフレキシブル性が確保される。
【0022】
(6)金属薄膜の厚みは、20nm以上5μm以下であってもよい。この場合、第1の基板部および第2の基板部に形成された導体層のインピーダンスがより適切に調整される。
【0023】
(7)本発明の他の局面に従う配線回路基板の製造方法は、金属支持体を用意するステップと、金属支持体上に金属支持体とは異なる金属材料からなる金属薄膜を形成するステップと、互いに反対の方向を向く第1の主面および第2の主面を有する絶縁層を、第2の主面が金属薄膜に接するように金属薄膜上に形成するステップと、絶縁層の第1の主面上に導体層を形成するステップと、金属薄膜を形成するステップの後、金属支持体の一部を除去するステップとを含み、絶縁層の第1の主面には、互いに異なる第1の領域および第2の領域が定められ、導体層を形成するステップは、当該導体層の少なくとも一部により、第1の主面のうち第1の領域および第2の領域を通るように延びる配線を形成することを含み、金属薄膜は、絶縁層と反対の方向を向くとともに金属支持体に接する第3の主面を有し、金属薄膜の第3の主面において、第1の主面に直交する交差方向に見て第1の主面の第1の領域および第2の領域にそれぞれ重なる第3の領域および第4の領域を定義した場合に、金属支持体の一部を除去するステップは、当該金属支持体が第3の主面のうち第3の領域を覆わないようにかつ第4の領域を覆うように、第3の主面の第3の領域に位置する金属支持体の部分を除去することを含む。
【0024】
上記の製造方法により作製される配線回路基板において、交差方向に見て第1の主面の第1の領域および第3の主面の第3の領域に重なる配線回路基板の一部分を第1の基板部と呼ぶ。また、交差方向に見て第1の主面の第2の領域および第3の主面の第4の領域に重なる配線回路基板の他の部分を第2の基板部と呼ぶ。
【0025】
この場合、第1の基板部は、導体層の一部分、絶縁層の一部分、および金属薄膜の一部分を含み、金属支持体を含まない。一方、第2の基板部は、導体層の他の部分、絶縁層の他の部分、金属薄膜の他の部分および金属支持体を含む。
【0026】
上記のように、第1の基板部は金属支持体を含まない。それにより、第1の基板部においては、第2の基板部に比べて高いフレキシブル性が確保される。一方、第2の基板部は、金属支持体を含む。それにより、第2の基板部においては、第1の基板部を他の部材に支持するため、あるいは他の部材を搭載するために必要な一定の機械的強度が確保される。
【0027】
また、上記の配線回路基板においては、第1の主面の第1の領域に形成される配線の一部分および第1の主面の第2の領域に形成される配線の他の部分の各々に、絶縁層を挟んで金属薄膜が対向する。それにより、導体層の一部分のインピーダンスと導体層の他の部分のインピーダンスとが、共通の金属薄膜により調整される。したがって、導体層の複数の部分でインピーダンスが不均一に調整されることが低減される。
【0028】
これらの結果、高いフレキシブル性を有しかつインピーダンスの不連続性が低減された配線回路基板が実現される。
【0029】
(8)金属薄膜を形成するステップは、金属薄膜の少なくとも一部をスパッタリングにより形成することを含んでもよい。
【0030】
この場合、金属薄膜を容易に形成することができる。また、スパッタリングにより形成されるスパッタ膜の厚みは、配線回路基板のフレキシブル性が損なわれない程度に十分に小さくすることができる。したがって、第1の基板部においてより高いフレキシブル性を得ることができる。
【0031】
(9)金属薄膜を形成するステップは、金属薄膜の少なくとも一部をめっきにより形成することを含んでもよい。
【0032】
この場合、めっきにより形成されるめっき層の厚みは、比較的容易に調整することができる。したがって、導体層のインピーダンスを低減するためにより適切な厚みを有する金属薄膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、高いフレキシブル性を有しかつインピーダンスの不連続性が低減された配線回路基板が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る配線回路基板の上面図である。
【
図3】
図1の配線回路基板の複数の部分を切断した模式的断面図である。
【
図4】
図1の配線回路基板の製造方法の一例を説明するための模式的断面図である。
【
図5】
図1の配線回路基板の製造方法の一例を説明するための模式的断面図である。
【
図6】
図1の配線回路基板の製造方法の一例を説明するための模式的断面図である。
【
図7】第1の変形例に係る金属薄膜を備える配線回路基板の複数の部分を切断した模式的断面図である。
【
図8】第2の変形例に係る金属薄膜を備える配線回路基板の複数の部分を切断した模式的断面図である。
【
図9】他の実施の形態に係る配線回路基板の上面図である。
【
図10】
図9の配線回路基板の複数の部分を切断した模式的断面図である。
【
図11】さらに他の実施の形態に係る配線回路基板の上面図である。
【
図12】
図11の配線回路基板の複数の部分を切断した模式的断面図である。
【
図13】さらに他の実施の形態に係る配線回路基板の複数の部分を切断した模式的断面図である。
【
図14】比較例1,2および実施例1~3の配線回路基板の導体層のインピーダンスの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその製造方法について図面を参照しつつ説明する。
【0036】
1.配線回路基板の基本構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板の上面図である。
図2は、
図1の配線回路基板1の下面図である。
図3は、
図1の配線回路基板1の複数の部分を切断した模式的断面図である。
図3では、
図1のA-A線断面図、B-B線断面図およびC-C線断面図がこの順で、上部、中央部および下部に並ぶように示される。ここで、配線回路基板1の構成が理解しやすいように、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を定義する。
図1以降の各図では、X方向、Y方向およびZ方向が適宜矢印で示される。本実施の形態では、X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は鉛直方向に相当するものとする。
【0037】
本実施の形態に係る配線回路基板1は、
図1および
図2に示すように、平面視で一方向(X方向)に延びる矩形状を有する。また、その配線回路基板1は、
図3に示すように、主として金属支持体10、金属薄膜20、絶縁層30および導体層40がこの順でZ方向に積層された構成を有する。
【0038】
絶縁層30は、例えば、感光性ポリイミドにより形成される。絶縁層30の厚み(Z方向の長さ)は、例えば1μm以上30μm以下である。なお、絶縁層30は、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂等の他の合成樹脂により形成されてもよい。
【0039】
また、絶縁層30は、互いに反対の方向を向く2つの主面(上面および下面)を有する。以下の説明では、絶縁層30の一方の主面(上面)を第1の主面S1と呼び、絶縁層30の他方の主面(下面)を第2の主面S2と呼ぶ。
【0040】
図1に二点鎖線で示すように、本例の絶縁層30においては、第1の主面S1に、矩形状を有する第1の領域A1および矩形状を有する2つの第2の領域A2が設定されている。第1の領域A1は配線回路基板1の長手方向(X方向)における配線回路基板1の中央部に位置する。2つの第2の領域A2は、配線回路基板1の長手方向(X方向)における配線回路基板1の両端部およびその近傍部分に位置する。それにより、X方向において一方の第2の領域A2と第1の領域A1とが互いに隣り合い、他方の第2の領域A2と第1の領域A1とが互いに隣り合う。
【0041】
絶縁層30の第1の主面S1上には、2つの導体層40が設けられている。各導体層40は、主として銅からなり、絶縁層30の第1の主面S1上で、電解めっきにより形成されている。また、各導体層40は、配線部41および2つの端子部42を有する。2つの端子部42は、配線回路基板1の両端部近傍の位置で2つの第2の領域A2内にそれぞれ配置されている。各端子部42は、配線回路基板1の導体層40に他の電子部品等を接続するために用いられる。配線部41は、一方の第2の領域A2、第1の領域A1および他方の第2の領域A2を通って2つの端子部42をつなぐように連続して延びている。導体層40の厚み(Z方向の長さ)は、例えば0.25μm以上50μm以下である。導体層40の配線部41の幅(Y方向の長さ)は、例えば0.25μm以上300μm以下である。
【0042】
絶縁層30の第2の主面S2上に、第2の主面S2の全体に渡って金属薄膜20が設けられている。金属薄膜20は、例えば銅、クロム、ニッケル、チタン、鉄、モリブデンおよびタングステンのうち1種または複数種の元素を含む金属または合金により形成される。本例の金属薄膜20は、銅またはクロムからなる単一の層で構成される。金属薄膜20の厚み(Z方向の長さ)は、後述する金属支持体10の厚み(Z方向の長さ)よりも小さく、例えば20nm以上5μm以下であり、20nm以上3μm以下であることが好ましい。
【0043】
金属薄膜20は、絶縁層30と同様に、互いに反対の方向を向く2つの主面(上面および下面)を有する。以下の説明では、金属薄膜20のうち絶縁層30と反対の方向を向く主面(下面)を第3の主面S3と呼ぶ。
【0044】
金属薄膜20の第3の主面S3には、絶縁層30の第1の主面S1の第1の領域A1および第2の領域A2にそれぞれ対応する第3の領域A3および第4の領域A4がそれぞれ設定されている。具体的には、第3の主面S3の第3の領域A3は、Z方向に見る平面視で、第1の主面S1の第1の領域A1に重なる領域である。また、第3の主面S3の第4の領域A4は、Z方向に見る平面視で、第1の主面S1の第2の領域A2に重なる領域である。
【0045】
金属薄膜20の第3の主面S3上で、第3の領域A3を覆わないようにかつ第4の領域A4を覆うように金属支持体10が設けられている。金属支持体10は、金属薄膜20とは異なる金属材料からなり、例えば銅、クロム、ニッケル、チタン、鉄、モリブデンおよびアルミニウムからなる群より選択された1種もしくは複数種の元素を含む金属または合金により形成される。ここで、金属支持体10の金属材料と金属薄膜20の金属材料とが異なるとは、それらの2つの金属材料の間で、導電率および比透磁率のうち少なくとも一方が、実質同一とみなすことができない程度に異なることを意味する。本実施の形態では、金属支持体10は、ステンレス鋼により形成される。金属支持体10の厚み(Z方向の長さ)は、例えば10μm以上250μm以下である。
【0046】
2.配線回路基板1の製造方法
図4~
図6は、
図1の配線回路基板1の製造方法の一例を説明するための模式的断面図である。
図4~
図6の各々では、
図3の例と同様に、
図1のA-A線、B-B線およびC-C線にそれぞれ対応する3つの断面図(対応断面図)が、この順で、上部、中央部および下部に並ぶように示される。
【0047】
まず、
図4に示すように、金属支持体10の上面上に、金属薄膜20が形成される。金属薄膜20の形成には、スパッタリング、電解めっき、無電解めっき、化学気相成長法または物理気相成長法等の成膜技術が用いられる。上記のように、本例の金属薄膜20は、銅またはクロムからなる。金属薄膜20のうち金属支持体10に接する下面が上記の第3の主面S3である。
【0048】
次に、
図5に示すように、金属薄膜20の上面上に、感光性ポリイミドからなる絶縁層30が形成される。絶縁層30は、金属薄膜20の上面全体に感光性ポリイミドの前駆体を塗布し、その前駆体が露光および現像されることにより形成される。また、形成された絶縁層30には、加熱による硬化処理が施される。絶縁層30のうち上方に露出する上面が上記の第1の主面S1であり、絶縁層30のうち金属薄膜20に接する下面が、上記の第2の主面S2である。上記のように、第1の主面S1には第1の領域A1および第2の領域A2が設定され、第3の主面S3には第3の領域A3および第4の領域A4が設定される。
【0049】
次に、
図6に示すように、絶縁層30の第1の主面S1上に1または複数(本例では2つ)の導体層40が形成される。導体層40の形成は、具体的には、次のように行われる。
【0050】
まず、絶縁層30の第1の主面S1上に、スパッタリングまたは無電解めっきにより、例えばクロム薄膜および銅薄膜からなるシード層が形成される。次に、シード層上に所定パターン(
図1の2つの導体層40と逆のパターン)のめっきレジストが形成される。次に、めっきレジストの開口部を通して露出するシード層上に、電解めっきにより銅からなるめっき層が形成される。
【0051】
その後、めっきレジストが剥離され、露出するシード層の部分(めっき層が形成されていない部分)がエッチングにより除去される。これにより、シード層およびめっき層からなる導体層40が形成される。
図1、
図6および後述する
図8、
図10、
図12および
図13では、導体層40を構成するシード層およびめっき層の各々の図示は省略されている。
【0052】
なお、露出する導体層40の外表面には、銅の拡散を抑制するためのバリア層が形成されてもよい。バリア層として、例えばニッケル薄膜を用いることができる。ニッケル薄膜は、例えばスパッタリングまたは無電解めっきにより形成することができる。また、絶縁層30の第1の主面S1上には、複数の配線部41を覆いかつ複数の端子部42を覆わないように、複数の配線部41を保護するための保護膜が形成されてもよい。保護膜の材料として、例えば感光性ポリイミドを用いることができる。感光性ポリイミドからなる保護膜は、絶縁層30と同様の方法で形成することができる。
【0053】
最後に、金属支持体10のうち第3の主面S3の第3の領域A3上に位置する部分が、例えばウェットエッチングにより除去される。このとき、使用されるエッチング液は、金属薄膜20に比べて高いエッチングレートで金属支持体10を溶解可能なエッチング液である。これにより、金属薄膜20の第3の領域A3が下方に露出し、
図1~
図3の配線回路基板1が完成する。
【0054】
上記の一連の処理は、ロール・ツー・ロール方式により行われてもよい。この場合、例えば、ステンレス鋼からなる長尺状の金属板が巻回されたロール(以下、繰り出しロールと呼ぶ。)が用意される。用意された繰り出しロールから金属板が繰り出される。繰り出しロールから繰り出された金属板は、他のロールに巻き取られる。繰り出しロールから他のロールに移動する金属板の各部について、上記の一連の処理を行うことにより、多数の配線回路基板1を効率よく製造することが可能になる。
【0055】
3.効果
(1)上記の配線回路基板1において、Z方向に見る平面視で、第1の主面S1の第1の領域A1および第3の主面S3の第3の領域A3に重なる配線回路基板1の一部分を第1の基板部と呼ぶ。また、上記の配線回路基板1において、Z方向に見る平面視で、第1の主面S1の第2の領域A2および第3の主面S3の第4の領域A4に重なる配線回路基板1の他の部分を第2の基板部と呼ぶ。
【0056】
この場合、第1の基板部は、導体層40の一部分、絶縁層30の一部分、および金属薄膜20の一部分を含み、金属支持体10を含まない。一方、第2の基板部は、導体層40の他の部分、絶縁層30の他の部分、金属薄膜20の他の部分および金属支持体10を含む。
【0057】
このように、第1の基板部は金属支持体10を含まない。それにより、第1の基板部においては、第2の基板部に比べて高いフレキシブル性が確保される。一方、第2の基板部は、金属支持体10を含む。それにより、第2の基板部においては、第1の基板部を他の部材に支持するため、あるいは他の部材を搭載するために必要な一定の機械的強度が確保される。
【0058】
また、上記の配線回路基板1においては、第1の主面S1の第1の領域A1に形成される配線部41の一部および第1の主面S1の第2の領域A2に形成される配線部41の他の部分の各々に、絶縁層30を挟んで金属薄膜20が対向する。それにより、配線部41の一部分のインピーダンスと配線部41の他の部分のインピーダンスとが、共通の金属薄膜20により調整される。したがって、配線部41の複数の部分でインピーダンスが不均一に調整されることが低減される。
【0059】
これらの結果、高いフレキシブル性を有しかつインピーダンスの不連続性が低減された配線回路基板1が実現される。
【0060】
(2)絶縁層30の第1の主面S1においては、第1の領域A1が2つの第2の領域A2の各々に隣り合う。これにより、第1の基板部と第2の基板部とが配線回路基板1の長手方向(X方向)に連続して並ぶので、第1の基板部が第2の基板部により適切に支持される。
【0061】
(3)金属薄膜20の厚みは、金属支持体10の厚みよりも小さく、20nm以上5μm以下である。この場合、第1の基板部において、より高いフレキシブル性が確保される。また、第1の基板部および第2の基板部に形成された導体層40の配線部41のインピーダンスがより適切に調整される。
【0062】
4.金属薄膜20の変形例
(1)第1の変形例
配線回路基板1に設けられる金属薄膜20は、複数の層で構成されてもよい。
図7は、第1の変形例に係る金属薄膜20を備える配線回路基板1の複数の部分を切断した模式的断面図である。
図7では、
図3の例と同様に、
図1のA-A線、B-B線およびC-C線にそれぞれ対応する3つの断面図が、この順で、上部、中央部および下部に並ぶように示される。
【0063】
図7に示すように、第1の変形例に係る金属薄膜20は、第1の薄膜層20aおよび第2の薄膜層20bから構成される。第1の薄膜層20aおよび第2の薄膜層20bの各々の形成には、スパッタリング、電解めっき、無電解めっき、化学気相成長法または物理気相成長法等の成膜技術が用いられる。
【0064】
第1の薄膜層20aおよび第2の薄膜層20bは、金属支持体10の上面上で、スパッタリングによりそれぞれ形成されたクロム薄膜および銅薄膜であってもよい。または、第1の薄膜層20aおよび第2の薄膜層20bは、金属支持体10の上面上で、スパッタリングによりそれぞれ形成された銅薄膜およびクロム薄膜であってもよい。
【0065】
あるいは、第1の薄膜層20aおよび第2の薄膜層20bのうち一方は、電解めっきにより形成されてもよい。例えば、配線回路基板1の作製時には、上記の
図4に示される工程において、金属支持体10の上面上で、電解めっきにより銅からなる第1の薄膜層20aが形成されてもよい。さらに、第1の薄膜層20aを覆うように、第1の薄膜層20a上にクロム薄膜からなる第2の薄膜層20bが形成されてもよい。
【0066】
後述するように、配線部41のインピーダンスの低減の程度は、金属薄膜20の厚みによって異なる。電解めっきは、処理時間等の処理条件を適宜調整することにより、形成されるめっき層の厚みを比較的容易に調整することができる。したがって、上記のように、第1の薄膜層20aおよび第2の薄膜層20bのうち一方を電解めっきにより形成する場合、配線部41のインピーダンスを低減するためにより適切な厚みを有する金属薄膜20の形成が可能になる。
【0067】
また、上記のように、金属薄膜20の上面がクロム薄膜からなる第2の薄膜層20bで構成される場合には、当該第2の薄膜層20b上にさらに絶縁層30が形成されることにより、第1の薄膜層20aと絶縁層30との間の密着性が向上する。なお、第1の薄膜層20aが銅薄膜で構成される場合、第2の薄膜層20bは、クロム薄膜に代えて、スパッタリングにより形成されるニッケル薄膜、チタン薄膜、モリブデン薄膜またはタングステン薄膜のいずれかであってもよい。この場合においても、第1の薄膜層20aと絶縁層30との間の密着性が向上する。
【0068】
(2)第2の変形例
図8は、第2の変形例に係る金属薄膜20を備える配線回路基板1の複数の部分を切断した模式的断面図である。
図8では、
図3の例と同様に、
図1のA-A線、B-B線およびC-C線にそれぞれ対応する3つの断面図が、この順で、上部、中央部および下部に並ぶように示される。
【0069】
図8に示すように、第2の変形例に係る金属薄膜20は、第1の薄膜層20a、第2の薄膜層20bおよび第3の薄膜層20cから構成される。第1の薄膜層20a、第2の薄膜層20bおよび第3の薄膜層20cの各々の形成には、スパッタリング、電解めっき、無電解めっき、化学気相成長法または物理気相成長法等の成膜技術が用いられる。第1の薄膜層20a、第2の薄膜層20bおよび第3の薄膜層20cの各々は、銅薄膜、クロム薄膜、ニッケル薄膜、チタン薄膜、モリブデン薄膜またはタングステン薄膜等の金属薄膜で構成される。
【0070】
第1の薄膜層20aおよび第2の薄膜層20bは、金属支持体10の上面上で、スパッタリングによりそれぞれ形成されたクロム薄膜および銅薄膜であってもよい。この場合、第3の薄膜層20cは、第2の薄膜層20bの銅薄膜上で、電解めっきにより形成された銅のめっき層であってもよい。
【0071】
または、第1の薄膜層20aは、金属支持体10の上面上で、電解めっきにより形成された銅のめっき層であってもよい。この場合、第2の薄膜層20bおよび第3の薄膜層20cは、第1の薄膜層20aのめっき層上で、スパッタリングによりそれぞれ形成された銅薄膜およびクロム薄膜であってもよい。
【0072】
あるいは、第1の薄膜層20aは、金属支持体10の上面上で、スパッタリングにより形成された銅薄膜であってもよい。この場合、第2の薄膜層20bは、金属支持体10の上面上で、電解めっきにより形成された銅のめっき層であってもよい。また、第3の薄膜層20cは、第2の薄膜層20bのめっき層上で、スパッタリングにより形成されたクロム薄膜であってもよい。
【0073】
5.他の実施の形態
(1)上記実施の形態に係る絶縁層30の第1の主面S1には、2つの第2の領域A2のうち一方の第2の領域A2、第1の領域A1および2つの第2の領域A2のうち他方の第2の領域A2がこの順でX方向に並ぶように設定されている。しかしながら、本発明は上記の例に限定されない。絶縁層30の第1の主面S1には、第1の領域A1および第2の領域A2が以下のように設定されてもよい。
【0074】
図9は、他の実施の形態に係る配線回路基板1の上面図である。
図10は、
図9の配線回路基板1の複数の部分を切断した模式的断面図である。
図10では、
図9のA-A線断面図、B-B線断面図およびC-C線断面図がこの順で、上部、中央部および下部に並ぶように示される。
図9および
図10の配線回路基板1について、
図1の配線回路基板1と異なる点を説明する。
【0075】
図9の配線回路基板1においては、絶縁層30の第1の主面S1に、1つの第1の領域A1と1つの第2の領域A2とが設定されている。第1の領域A1は、配線回路基板1の長手方向(X方向)および短手方向(Y方向)における中央部で島状に設定されている。一方、第2の領域A2は、第1の領域A1を取り囲むように設定されている。
図1の配線回路基板1と同様に、2つの導体層40の配線部41の大部分は、第1の領域A1上に位置する。2つの導体層40の配線部41の残りの部分および2つの導体層40の端子部42は、第2の領域A2上に位置する。
【0076】
上記のように第1の主面S1に第1の領域A1および第2の領域A2が設定される。それにより、本例の配線回路基板1においては、金属薄膜20の第3の主面S3に、Z方向に見る平面視で、第1の主面S1の第1の領域A1に重なる第3の領域A3(図示せず)が設定される。また、Z方向に見る平面視で、第1の主面S1の第2の領域A2に重なる第4の領域A4(図示せず)が設定される。
【0077】
それにより、
図10に示すように、本例の配線回路基板1においては、X方向における全体に渡って、金属支持体10の少なくとも一部が、金属薄膜20の第3の主面S3上に位置する。具体的には、本例の配線回路基板1においては、
図10の中央部に示すように、各導体層40の配線部41の近傍の位置で、配線部41に平行に延びるようにライン状の金属支持体10が設けられている。それにより、配線部41の近傍の領域で、必要に応じた機械的強度を得ることが可能となっている。
【0078】
このように、配線回路基板1における複数の部分に適宜金属支持体10を設けることにより、配線回路基板1の複数の部分の各々に、所望のフレキシブル性を与えること、および所望の機械的強度を与えることが可能になる。
【0079】
(2)上記実施の形態に係る配線回路基板1は、平面視で一方向(X方向)に延びる矩形状を有するが、本発明はこれに限定されない。配線回路基板1は、以下の形状を有してもよい。
【0080】
図11は、さらに他の実施の形態に係る配線回路基板1の上面図である。
図12は、
図11の配線回路基板1の複数の部分を切断した模式的断面図である。
図12では、
図11のA-A線断面図、B-B線断面図およびC-C線断面図がこの順で、上部、中央部および下部に並ぶように示される。
図11および
図12の配線回路基板1について、
図1の配線回路基板1と異なる点を説明する。
【0081】
図11および
図12に示すように、本例の配線回路基板1は、2つの導体層40の配線部41が延びる方向において、絶縁層30の幅(Y方向の長さ)が段階的に変化するように形成されている。具体的には、絶縁層30は、配線回路基板1の長手方向(X方向)における両端部およびその近傍部分で大きく、それ以外の部分で小さくなるように形成されている。それにより、第1の主面S1に設定される第1の領域A1の幅(Y方向の長さ)は、第2の領域A2の幅(Y方向の長さ)よりも小さい。この構成によれば、2つの第2の領域A2の間に位置する配線回路基板1の部分で、より高いフレキシブル性を得ることが可能となっている。
【0082】
(3)上記実施の形態に係る配線回路基板1においては、金属支持体10の上面上に金属薄膜20が形成されるが、本発明はこれに限定されない。金属支持体10と金属薄膜20との間に、新たな絶縁層31が形成されてもよい。
【0083】
図13は、さらに他の実施の形態に係る配線回路基板1の複数の部分を切断した模式的断面図である。本例の配線回路基板1の上面図は、
図1の配線回路基板1の上面図と同じである。
図13では、
図3の例と同様に、
図1のA-A線、B-B線およびC-C線にそれぞれ対応する3つの断面図が、この順で、上部、中央部および下部に並ぶように示される。
【0084】
図13の配線回路基板1においては、金属支持体10の上面上に、絶縁層30とは異なる新たな絶縁層31がさらに形成されている。この場合においても、金属薄膜20が絶縁層30を挟んで導体層40の全体に対向するように形成されているので、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
(4)配線回路基板1の製造時においては、絶縁層30は、感光性のキャリアフィルムを用いて形成されてもよい。具体的には、絶縁層30は、金属薄膜20の上面上に、感光性ポリイミドからなる絶縁フィルムを貼り付けることにより形成されてもよい。
【0086】
(5)上記実施の形態に係る配線回路基板1においては、平面視で、金属薄膜20が絶縁層30の全体に重なるように形成されているが、金属薄膜20は導体層40の全体に重なっていればいい。
【0087】
例えば、上記実施の形態に係る配線回路基板1の第1の主面S1に、第1の領域A1と第2の領域A2とがX方向において他の新たな領域を挟んで互いに離間するように設定されてもよい。ここで、導体層40の配線部41が他の新たな領域上に位置する場合には、金属薄膜20は、Z方向に見る平面視で、第1の領域A1および第2の領域A2に重なりかつ他の新たな領域に重なるように形成される。一方、導体層40の配線部41が他の新たな領域上に位置しない場合には、金属薄膜20は、Z方向に見る平面視で、第1の領域A1および第2の領域A2に重なりかつ他の新たな領域に重ならないように形成されてもよい。
【0088】
5.請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0089】
上記実施の形態では、配線回路基板1が配線回路基板の例であり、第1の主面S1が第1の主面の例であり、第2の主面S2が第2の主面の例であり、絶縁層30が絶縁層の例であり、導体層40が導体層の例であり、第3の主面S3が第3の主面の例であり、金属薄膜20が金属薄膜の例である。
【0090】
また、第1の領域A1が第1の領域の例であり、第2の領域A2が第2の領域の例であり、配線部41が配線の例であり、第3の領域A3が第3の領域の例であり、第4の領域A4が第4の領域の例であり、第1の薄膜層20aが第1の金属膜の例であり、第2の薄膜層20bが第2の金属膜の例である。
【0091】
6.金属薄膜20による配線部41のインピーダンス低減効果についての試験
本発明者らは、複数種類の金属薄膜20とそれらの種類に応じた配線部41のインピーダンスの低減の程度を確認するために、比較例1,2および実施例1~3の配線回路基板を作製した。
【0092】
具体的には、本発明者らは、金属支持体10および金属薄膜20を有しない点を除いて、
図1~
図3の配線回路基板1と同じ構成を有する配線回路基板を、比較例1の配線回路基板として作製した。
【0093】
また、本発明者らは、金属薄膜20を有さず、絶縁層30の第2の主面S2の全体に接するように金属支持体10が設けられている点を除いて、
図1~
図3の配線回路基板1と同じ構成を有する配線回路基板を、比較例2の配線回路基板として作製した。比較例2の配線回路基板において、金属支持体10の厚み(Z方向の長さ)は18μmであった。
【0094】
また、本発明者らは、
図1~
図3の配線回路基板1と同じ構成を有しかつ金属薄膜20がクロムからなる単一の層で形成された配線回路基板を、実施例1の配線回路基板として作製した。クロムの金属薄膜20はスパッタリングにより形成された。実施例1の配線回路基板において、金属薄膜20の厚み(Z方向の長さ)は50nmであった。
【0095】
また、本発明者らは、
図1~
図3の配線回路基板1と同じ構成を有しかつ金属薄膜20が銅からなる単一の層で形成された配線回路基板を、実施例2の配線回路基板として作製した。銅の金属薄膜20はスパッタリングにより形成された。実施例2の配線回路基板において、金属薄膜20の厚み(Z方向の長さ)は50nmであった。
【0096】
また、本発明者らは、
図7の配線回路基板1と同じ構成を有する配線回路基板を、実施例3の配線回路基板として作製した。第1の薄膜層20aは、クロムからなり、スパッタリングにより形成された。第2の薄膜層20bは、銅からなり、スパッタリングにより形成された。実施例3の配線回路基板において、第1の薄膜層20aの厚み(Z方向の長さ)は50nmであり、第2の薄膜層20bの厚み(Z方向の長さ)は50nmであった。そのため、金属薄膜20の厚み(Z方向の長さ)は100nmであった。
【0097】
なお、比較例1,2および実施例1~3の配線回路基板の間では、2つの配線部41の長さ、幅、間隔および厚み等の各部の寸法は互いに等しい。また、比較例1,2および実施例1~3の配線回路基板の間では、絶縁層30の厚みも互いに等しい。
【0098】
上記のようにして作製された複数の配線回路基板について、TDR(Time Domain Reflectometry)法により導体層40のインピーダンスを測定した。
図14は、比較例1,2および実施例1~3の配線回路基板の導体層40のインピーダンスの測定結果を示す図である。
【0099】
図14では、インピーダンスの測定結果がグラフにより示される。そのグラフにおいては、縦軸がインピーダンスを表し、横軸が時間を表す。また、
図14のグラフにおいては、比較例1の導体層40に対応するインピーダンスの測定結果が点線で示され、比較例2の導体層40に対応するインピーダンスの測定結果が実線で示される。また、実施例1の導体層40に対応するインピーダンスの測定結果が太い実線で示され、実施例2の導体層40に対応するインピーダンスの測定結果が太い点線で示され、実施例3の導体層40に対応するインピーダンスの測定結果が太い二点鎖線で示されている。なお、
図14のグラフにおいては、横軸(時間軸)の約200ps以上約400ps以下の範囲内に示されるインピーダンスが各配線回路基板の配線部41に対応するインピーダンスを表す。
【0100】
図14のグラフによれば、比較例1の配線部41のインピーダンスは、比較例2および実施例1~3の配線部41のインピーダンスに比べて高い。これに対して、比較例2の配線部41のインピーダンスは、比較例1および実施例1~3の配線部41のインピーダンスに比べて十分に低い。
【0101】
実施例1,2の配線部41のインピーダンスはほぼ同じであり、比較例1の配線部41のインピーダンスに比べて十分に低く、比較例2および実施例3の配線部41のインピーダンスに比べてわずかに高い。実施例3の配線部41のインピーダンスは、比較例1の配線部41のインピーダンスに比べて十分に低く、比較例2の配線部41のインピーダンスと実施例1,2の配線部41のインピーダンスとの間に位置する。
【0102】
ここで、比較例2の配線回路基板においては、Z方向に見る平面視で、各配線部41に重なる金属支持体10の部分が、当該配線部41のインピーダンスを低減するインピーダンス低減層として機能する。一方、実施例1~3の各々の配線回路基板においては、平面視で各配線部41に重なる金属薄膜20の部分が、当該配線部41のインピーダンスを低減するインピーダンス低減層として機能する。
【0103】
比較例2の配線回路基板においてインピーダンス低減層として機能する金属支持体10の厚みは、実施例1~3の配線回路基板においてインピーダンス低減層として機能する金属薄膜20の厚みに比べて大きい。また、実施例3の配線回路基板においてインピーダンス低減層として機能する金属薄膜20の厚みは、実施例1,2の配線回路基板においてインピーダンス低減層として機能する金属薄膜20の厚みに比べて大きい。これらの点を考慮すると、配線部41のインピーダンスの低減の程度は、インピーダンス低減層の厚みが大きいほどより大きく、インピーダンス低減層の厚みが小さいほどより小さいことがわかった。したがって、本発明に係る配線回路基板1の作製時には、平面視で配線部41に重なる金属薄膜20の厚みを、必要なインピーダンスの低減度合いに応じて調整することが好ましい。
【符号の説明】
【0104】
1…配線回路基板,10…金属支持体,20…金属薄膜,20a…第1の薄膜層,20b…第2の薄膜層,20c…第3の薄膜層,30…絶縁層,31…絶縁層,40…導体層,41…配線部,42…端子部,A1…第1の領域,A2…第2の領域,A3…第3の領域,A4…第4の領域,S1…第1の主面,S2…第2の主面,S3…第3の主面