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特開2024-82772液体吐出装置、及び液体吐出装置の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082772
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及び液体吐出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240613BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/165 101
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196867
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】古御堂 剛
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB11
2C056EB23
2C056EB36
2C056EC22
2C056EC35
2C056FA13
2C056HA36
2C056JA04
(57)【要約】
【課題】規制部材が移動部の移動を規制している状態で、移動部を移動させると、規制部材が取り外せなくなる虞がある。
【解決手段】液体吐出装置10は、第1方向と、第1方向と逆方向の第2方向とを含む移動方向MDに移動可能な移動部MPであって、移動部MPと接触可能な接触位置に着脱可能な規制部材RMが接触位置に装着されることで、移動方向MDへの移動が規制される移動部MPと、規制部材RMが接触位置から取り外せなくなるロック状態を解除するロック解除処理を実行可能な制御部95とを備え、ロック状態は、移動部MPが第1方向へ移動することによる第1ロック状態と、移動部MPが第2方向へ移動することによる第2ロック状態とを含み、ロック解除処理において、第1ロック状態の場合、移動部MPが第2方向へ移動し、第2ロック状態の場合、移動部MPが第1方向へ移動する。
【選択図】図31
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向と、前記第1方向と逆方向である第2方向とを含む移動方向に移動可能な移動部と、
制御部と、を備え、
前記移動部と接触可能な接触位置に着脱可能な規制部材が前記接触位置に装着されることで、前記移動部は前記移動方向への移動が規制され、
前記制御部は、前記規制部材が前記接触位置から取り外せなくなる前記規制部材のロック状態において、前記ロック状態を解除するためのロック解除処理を実行可能であり、
前記ロック状態は、前記移動部が前記第1方向へ移動することによる第1ロック状態と、前記移動部が前記第2方向へ移動することによる第2ロック状態と、を含み、
前記ロック解除処理において、
前記規制部材が前記第1ロック状態の場合、前記移動部が前記第2方向へ移動し、
前記規制部材が前記第2ロック状態の場合、前記移動部が前記第1方向へ移動する、ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記移動部の位置を検知する検知部を備え、
前記ロック解除処理は、
検知された前記移動部の位置から判定される前記ロック状態に基づいて、前記制御部が前記移動部を移動させる自動ロック解除処理を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記移動部は、前記第1ロック状態の場合、前記検知部で検知される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置であって、
前記検知部は、前記移動部が基準位置に位置するか否かを検知する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記ロック解除処理は、前記ロック状態を解除させる指示に基づいて、前記制御部が前記移動部を移動させる選択ロック解除処理を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記移動方向は、水平方向に交差する方向である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の液体吐出装置であって、
ノズルから液体を吐出可能な液体吐出部を備え、
前記移動部は、前記液体吐出部である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出装置であって、
前記ノズルを覆うキャップを有するキャップ部を備え、
前記液体吐出部は、前記キャップに前記ノズルが覆われるメンテナンス位置に移動可能であり、
前記規制部材の前記接触位置は、前記メンテナンス位置に位置する前記液体吐出部の移動を規制する位置である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項7に記載の液体吐出装置であって、
前記接触位置にある前記規制部材にアクセス可能な開状態と、アクセス不可能にする閉状態と、に変位可能な開閉カバーを備え、
前記液体吐出部は、前記開閉カバーが前記開状態であって前記規制部材が前記接触位置に位置するとき、視認不可能である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
ノズルから液体を吐出可能な液体吐出部と、
前記ノズルを覆うキャップを有し、前記キャップが前記ノズルを覆うキャッピング位置と、前記キャップが前記キャッピング位置から離れた非キャッピング位置と、に移動可能なキャップ部と、
を備え、
前記移動部は、前記キャップ部である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
第1方向と、前記第1方向と逆方向である第2方向とを含む移動方向に移動可能な移動部を、備え、前記移動部と接触可能な接触位置に着脱可能な規制部材が前記接触位置に装着されることで、前記移動部の前記移動方向への移動が規制される液体吐出装置の制御方法であって、
前記規制部材が前記接触位置から取り外せなくなる前記規制部材のロック状態が、前記移動部が前記第1方向へ移動することによる第1ロック状態と、前記移動部が前記第2方向へ移動することによる第2ロック状態と、を含み、
前記ロック状態においてロック解除処理を実行することと、
前記ロック解除処理において、前記規制部材が前記第1ロック状態の場合、前記移動部を前記第2方向へ移動させることと、
前記ロック解除処理において、前記規制部材が前記第2ロック状態の場合、前記移動部を前記第1方向へ移動させることと、
を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の液体吐出装置の制御方法であって、
検知部により検知された前記移動部の位置から判定される前記ロック状態に基づいて、前記ロック解除処理を実行する、
ことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項13】
請求項11に記載の液体吐出装置の制御方法であって、
前記ロック状態を解除させる指示を受け付けることと、
前記指示に基づいて前記ロック解除処理を実行することと、
を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出装置、及び液体吐出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左右のフレーム間に取付けられたガイドレールにより案内されて移動する印字ヘッドを搭載したキャリッジを有するプリンターが開示されている。印字ヘッドは液体吐出部の一例であり、プリンターは液体吐出装置の一例である。また、プリンターの輸送時に、キャリッジおよびフレームと係合してキャリッジを固定する係止部材が設けられることが開示されている。係止部材は規制部材の一例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5-25899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のプリンターでは、キャリッジおよびフレームと係止部材を係合させた状態で、キャリッジを移動させると、係止部材がキャリッジとフレームとに挟み込まれて取り外せなくなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
液体吐出装置は、第1方向と、前記第1方向と逆方向である第2方向とを含む移動方向に移動可能な移動部と、制御部と、を備え、前記移動部と接触可能な接触位置に着脱可能な規制部材が前記接触位置に装着されることで、前記移動部は前記移動方向への移動が規制され、前記制御部は、前記規制部材が前記接触位置から取り外せなくなる前記規制部材のロック状態において、前記ロック状態を解除するためのロック解除処理を実行可能であり、前記ロック状態は、前記移動部が前記第1方向へ移動することによる第1ロック状態と、前記移動部が前記第2方向へ移動することによる第2ロック状態と、を含み、前記ロック解除処理において、前記規制部材が前記第1ロック状態の場合、前記移動部が前記第2方向へ移動し、前記規制部材が前記第2ロック状態の場合、前記移動部が前記第1方向へ移動する。
【0006】
液体吐出装置の制御方法は、第1方向と、前記第1方向と逆方向である第2方向とを含む移動方向に移動可能な移動部を、備え、前記移動部と接触可能な接触位置に着脱可能な規制部材が前記接触位置に装着されることで、前記移動部の前記移動方向への移動が規制される液体吐出装置の制御方法であって、前記規制部材が前記接触位置から取り外せなくなる前記規制部材のロック状態が、前記移動部が前記第1方向へ移動することによる第1ロック状態と、前記移動部が前記第2方向へ移動することによる第2ロック状態と、を含み、前記ロック状態においてロック解除処理を実行することと、前記ロック解除処理において、前記規制部材が前記第1ロック状態の場合、前記移動部を前記第2方向へ移動させることと、前記ロック解除処理において、前記規制部材が前記第2ロック状態の場合、前記移動部を前記第1方向へ移動させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態としての液体吐出装置の外観構成を示す斜視図。
図2】液体吐出装置の内部構成を示す模式正面図。
図3】モーションユニットを示す斜視図。
図4】液体吐出部とキャップ部とを-B方向から見たときの模式平面図。
図5】記録位置にある液体吐出部と非キャッピング位置にあるキャップ部とを示す模式正面図。
図6】待機位置にある液体吐出部と非キャッピング位置にあるキャップ部とを示す模式正面図。
図7】待機位置にある液体吐出部とキャッピング位置にあるキャップ部とを示す模式正面図。
図8】メンテナンス位置にある液体吐出部とキャッピング位置にあるキャップ部とを示す模式正面図。
図9】キャッピング状態にある液体吐出部とキャップ部とを+A方向から見たときの模式側面図。
図10】ワイパー部の構成および払拭動作を説明する模式側面図。
図11】ワイパー部の払拭動作を説明する模式側面図。
図12】第1扉が開状態にある液体吐出装置の部分斜視図。
図13】搬送路形成部材が搬送位置にある液体吐出装置の部分斜視図。
図14】第2扉が開状態にある液体吐出装置の部分正面図。
図15】キャップ部の移動を規制する規制部材を示す斜視図。
図16】キャップ部の移動を規制する規制部材を示す斜視図。
図17】キャップ部の移動を規制する規制部材を示す斜視図。
図18】収納部にあるときの規制部材を示す模式断面図。
図19】はめ込み部を示す模式側面図。
図20】はめ込み部にある規制部材を示す模式側面図。
図21】はめ込み部にあるときの規制部材を示す模式断面図。
図22】液体吐出部の移動を規制する規制部材を示す斜視図。
図23】液体吐出部の移動を規制する規制部材を示す斜視図。
図24】液体吐出部の移動を規制する規制部材を示す斜視図。
図25】液体吐出部の移動を規制する規制部材を示す斜視図。
図26】収納部にある規制部材を示す部分正面図。
図27】収納部を示す部分正面図。
図28】挿入空間にある規制部材を示す部分正面図。
図29】規制部材に規制される液体吐出部を示す部分斜視図。
図30】規制部材の有無を確認するときの処理を示すフローチャート。
図31】自動ロック解除処理を示すフローチャート。
図32】選択ロック解除処理を示すフローチャート。
図33】選択ロック解除処理を示すフローチャート。
図34】選択ロック解除処理を示すフローチャート。
図35】他の実施形態における自動ロック解除処理を示すフローチャート。
図36】他の実施形態における選択ロック解除処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施形態に基づいて説明する。液体吐出装置10は、例えば、複合機である。液体吐出装置10は、スキャン機能、コピー機能および印刷機能を含む複数の機能を有する。なお、液体吐出装置10は、ファクシミリ機能を備えてもよい。
【0009】
各図において同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、「同じ」、「同一」、「同時」とは、完全に同じであることを指すのみならず、測定誤差を考慮して同じである場合、部材の製造ばらつきを考慮して同じである場合、および、機能を損なわない範囲で同じである場合を含むものとする。よって、例えば、「両者の寸法が同じである」とは、測定誤差、部材の製造ばらつきを考慮し、両者の寸法差が、一方の寸法の±10パーセント以内、さらに好ましくは±5パーセント以内、特に好ましくは±3パーセント以内であることを指す。
【0010】
各図では、液体吐出装置10は、水平な設置面に置かれているものとする。液体吐出装置10の設置面に直交するZ軸のうち、設置面に対して液体吐出装置10側を+Z方向側、反対側を-Z方向側とし、Z軸と直交する2つの軸をそれぞれX軸、Y軸とする。また、X軸、Y軸、Z軸のそれぞれと平行な方向を、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向という。X軸方向とは、+X方向と-X方向との両方向を含む。Y軸方向とは、+Y方向と-Y方向との両方向を含む。Z軸方向とは、+Z方向と-Z方向との両方向を含む。
【0011】
X軸方向は、液体吐出装置10を正面から見たときの奥行方向である。また、X軸方向は、媒体Mの幅方向である。また、X軸は、後述する液体吐出部20の幅方向である。また、液体吐出装置10の正面とは、ユーザーが液体吐出装置10に対して指示を与えるために操作される操作部14が位置する側の面である。
【0012】
1.実施形態1
図1に示すように、液体吐出装置10は、例えば、複合機である。液体吐出装置10は、直方体状をなす装置本体11を備える。液体吐出装置10は、装置本体11により構成される印刷部12と、印刷部12の上部に配置される画像読取部13とを備える。装置本体11は、用紙等の媒体Mを搬送する搬送経路T(図2参照)を有する。
【0013】
画像読取部13は、原稿Dの画像を読み取り可能に構成される。画像読取部13は、原稿Dを読み取る読取部13Aと、読取部13Aの上側に配置される自動原稿給送部13Bとを備える。自動原稿給送部13Bは、原稿トレイ13Cに載置された原稿Dを、読取部13Aへ給送する。読取部13Aは原稿Dを読み取り、読み取り後の原稿Dを排出トレイ13Dへ排出する。また、読取部13Aは、原稿台カバーを兼ねる自動原稿給送部13Bを開けると露出する原稿台上にセットされた原稿Dを読み取るフラットベッド式の読取機能も有する。
【0014】
液体吐出装置10は、装置本体11に操作部14を有する。操作部14は、タッチパネルよりなる表示部14Aを有する。ユーザーは、表示部14Aをタッチ操作することで、液体吐出装置10に指示を与えることが可能である。なお、操作部14は、操作ボタンを有する構成でもよい。
【0015】
液体吐出装置10は、複数の媒体Mを収容可能なカセット15を備える。カセット15は、1段または複数段、例えば4段備えられる。カセット15は、装置本体11の下部にX軸方向のスライドにより着脱可能な状態で挿着されている。複数のカセット15には、例えば、サイズまたは種類の異なる媒体Mが収容される。カセット15は、ユーザーが引き出し操作する際に指を引っ掛けることが可能な把手15Aを有する。
【0016】
液体吐出装置10は、ベースフレームとして、ベースフレームの+X方向の端部に前フレーム11Aを備え、ベースフレームの-X方向の端部に後フレーム11Bを備える。前フレーム11A及び後フレーム11Bは金属材料で形成される。前フレーム11A及び後フレーム11Bに対して後述するモーションユニット30が固定されることで、液体吐出装置10の基体が構成される。液体吐出装置10の基体に対して外装部材が取り付けられることで、液体吐出装置10の筐体が形成される。
【0017】
液体吐出装置10は、装置本体11の-Y方向側の側面に、第1扉16と、複数のカバー扉17と、を備える。第1扉16、およびカバー扉17は、外装部材の一部を構成する。第1扉16、およびカバー扉17は、搬送経路T(図2参照)を露出する開状態と、搬送経路Tを覆う閉状態との間で開閉可能である。第1扉16、およびカバー扉17は、ユーザーが開閉操作するための把手16A,17Aを有する。第1扉16は、媒体Mを載置可能な給送トレイ16Tを備える。給送トレイ16Tは、第1扉16に対して開閉可能に取り付けられている。給送トレイ16Tは、ユーザーが開閉操作するための把手16Bを有する。
【0018】
図1図2に示すように、液体吐出装置10は、装置本体11に、媒体M(図2参照)に記録する液体吐出部20を有する。液体吐出部20は、例えば、カセット15から給送される媒体Mおよび給送トレイ16Tから給送される媒体Mに記録する。装置本体11内には、液体の一例であるインクを収容する液体収容部98(図2参照)が収容されている。液体吐出部20は、液体収容部98から供給されるインク等の液体を用いて媒体Mに記録する。
【0019】
液体吐出装置10は、装置本体11の+X方向側の側面に、第2扉18Dを備える。第2扉18Dは、外装部材の一部を構成する。第2扉18Dは、液体収容部98、後述する廃液貯留部99、後述する収納部600、あるいは収納部600に収納される規制部材500にアクセス可能な開状態(図14参照)と、液体収容部98、廃液貯留部99、収納部600、あるいは収納部600に収納される規制部材500を覆う閉状態(図1参照)と、を取り得る。第2扉18Dの閉状態は、液体収容部98、廃液貯留部99、収納部600、あるいは収納部600に収納される規制部材500にアクセス不可能な状態とも言える。第2扉18Dは、開閉カバーの一例である。
【0020】
液体吐出装置10は、装置本体11と画像読取部13との間に、排出部19を備える。排出部19はその底部を構成する排出トレイ19Aを備える。排出トレイ19Aは、板状に形成された部材であり、排出された媒体Mが載置される載置面19Bを有する。排出トレイ19Aは、記録後の媒体Mが排出される排出方向の下流側が上流側よりも高くなる向きに所定角度で傾斜している。また、排出トレイ19Aは、Z方向において、液体吐出部20の+Z方向となる位置に配置される。
【0021】
図2に示すように、液体吐出装置10は、液体吐出部20によって記録される媒体Mが搬送される搬送経路Tを備える。なお、図2では、液体吐出装置10の各構成部を簡略化して示している。媒体Mは、図2に破線で示す搬送経路Tを通って搬送される。Y-Z面に示すA-B座標系は、直交座標系である。A方向はX軸方向と交差する方向である。A方向は、搬送経路Tのうち液体吐出部20が有するヘッド20Hと対向する領域における媒体Mの搬送方向である。以後の説明では、A方向の上流に向かう方向を-A方向、下流に向かう方向を+A方向と称する。
【0022】
本実施形態において、A方向は、+A方向が-A方向よりも+Z方向に位置するように傾いた方向とされる。具体的には水平方向に対して50°~70°の範囲で傾斜し、より具体的には概ね60°傾斜している。このように、液体吐出部20による記録が行われる記録位置PH4では、媒体Mの搬送方向が、水平方向およびZ軸方向の両方向と交差する傾斜した方向である。
【0023】
搬送経路Tには、外部装置から延びる搬送路T1と、装置本体11に設けられた給送トレイ16Tから延びる搬送路T2とが合流している。図2図12図13に示すように、液体吐出装置10は、搬送路T1と搬送路T2とが合流する位置に、搬送路形成部材105を備える。図12図13に示すように、搬送路形成部材105は、X軸方向に延びるフレーム121の+Z方向側に配置される。フレーム121は、装置本体11に配置され、前フレーム11Aと後フレーム11Bとを繋ぐ板状の金属部材である。
【0024】
なお、フレーム121には、後述する規制部材200を収納する収納部300が配置される。このことから、第1扉16は、収納部300にアクセス可能にする開状態と、収納部300にアクセス不可能にする閉状態と、を取り得るとも言える。
【0025】
搬送路形成部材105は、X軸方向に沿う不図示の回転軸中心に回動可能に、装置本体11に配置される。搬送路形成部材105は、第1扉16が閉状態のときの搬送位置TPと、第1扉16を開状態にしたときの離隔位置SPと、に変位可能である。
【0026】
搬送位置TPは、図2に示すように、搬送路形成部材105が搬送経路Tに沿う位置にあり、媒体Mを搬送可能な位置である。搬送位置TPにある搬送路形成部材105は、収納部300、あるいは収納部300に収納される規制部材200を覆わない。
【0027】
離隔位置SPは、搬送位置TPに対して-Z方向に離れた位置である。図12に示すように、離隔位置SPにある搬送路形成部材105は、収納部300、あるいは収納部300に収納される規制部材200を覆う。よって、第1扉16を開状態にしたとき、搬送路形成部材105は離隔位置SPに位置する。このため、収納部300に収納される規制部材200は、第1扉16を開状態にしたときに視認できない。例えば、サービスマンが収納部300、あるいは収納部300に収納される規制部材200にアクセスする場合、第1扉16を開状態にし、図13に示すように、搬送路形成部材105を離隔位置SPから収納部300および規制部材200を覆わない位置、例えば搬送位置TPに変位させる。
【0028】
図2に示すように、搬送経路Tに沿う位置には、複数のカセット15に収容される媒体Mを搬送する複数のピックアップローラー21、複数の搬送ローラー対22,23,26と、搬送ユニット25、複数のフラップ27、および媒体MのX方向の幅を検出するセンサーSE4が配置される。搬送ユニット25は、媒体Mのうち液体吐出部20と対向する記録位置にある部分を支持すると共に媒体Mを搬送する。フラップ27は、媒体Mが搬送される経路を切り替える機能を有する。ピックアップローラー21は、給送モーター(不図示)により駆動される。また、搬送ローラー対22,23,26及び搬送ユニット25は、1つ又は複数の搬送モーター(不図示)により駆動される。
【0029】
搬送経路Tは、センサーSE4と対向する領域で湾曲部を形成し、この湾曲部より下流の領域ではA方向に延びている。搬送経路Tにおける搬送ユニット25よりも下流には、排出部19に向かう搬送路T3および搬送路T4と、媒体Mの表裏を反転させる反転路T5とが設けられる。排出部19には、搬送路T4に合わせて、不図示の排出トレイが設けられる。なお、反転路T5は、両面記録が行われるとき、第1面の記録を終えた媒体Mが第2面の記録が行われる前に搬入される経路である。この反転路T5で媒体Mは反転し、第1面の記録時と同様に再び搬送経路Tを通って記録位置に送られることで第2面への記録が行われる。
【0030】
搬送ユニット25は、搬送中の媒体Mを支持する。搬送ユニット25は、2つのプーリー25Aと、2つのプーリー25Aに巻き掛けられた無端状の搬送ベルト25Bと、を有する。媒体Mは、搬送ベルト25Bのベルト面に吸着されつつ、液体吐出部20と対向する位置を搬送される。搬送ベルト25Bに媒体Mを吸着させる方式としては、エアー吸引方式や静電吸着方式等を採用できる。このように、搬送ベルト25Bは、媒体Mを吸着しつつ支持している。搬送ユニット25は、液体吐出部20とB方向に対向配置される。
【0031】
液体吐出部20は、搬送ユニット25と対向する方向であるB方向に移動する。本実施形態の液体吐出部20は、水平面に対して所定角度だけ傾くB方向に往復移動する。液体吐出部20は、B方向に移動可能な移動部MPの一例である。B方向は、液体吐出部20が移動する移動方向MDの一例である。B方向は、液体吐出部20が搬送ユニット25に対し進退するときの移動方向である。B方向におけるヘッド20Hが搬送経路Tに近づく方向を+B方向、搬送経路Tから離れる方向を-B方向と称する。-B方向は、ヘッド20Hが搬送ユニット25から離れる方向に沿って斜め上に向かう方向である。移動方向MDは、-B方向と、-B方向と逆方向である+B方向とを含む。-B方向は第1方向の一例であり、+B方向は第2方向の一例である。
【0032】
B方向は、液体吐出部20を変位させる方向であり、高さ方向であるZ方向の成分を含む方向である。本実施形態において、B方向は、-B方向が+B方向よりも+Z方向に位置するように傾いた方向とされ、A方向とは直交している。また、B方向はX軸方向と交差する方向である。
【0033】
液体吐出部20は、図2に二点鎖線で示す退避位置PH1と、図2に実線で示す記録位置PH4との間で移動可能に構成される。液体吐出部20は、B方向に移動することで、少なくとも退避位置PH1と記録位置PH4を含む複数の位置に移動可能である。液体吐出部20の移動方向は、その移動によって液体吐出部20のZ軸方向の変位を伴い、上昇と下降とを伴う移動方向なので、昇降方向ともいう。なお、液体吐出部20の移動方向は、水平に対して所定の角度をなす方向に限らず、水平方向またはZ軸方向であってもよい。
【0034】
本実施形態の液体吐出部20は、-B方向に上昇し+B方向に下降する。B方向はノズル面20Nと直交する。つまり、ヘッド20HにおけるノズルN(図9参照)が開口する面であるノズル面20Nと直交する方向が、ヘッド20Hの昇降方向である。
【0035】
液体吐出部20は、記録位置PH4にある状態で、ヘッド20Hが、搬送ユニット25に支持された部分の媒体Mに対してインク等の液体を吐出する。これにより、液体吐出部20は、媒体Mに画像等の情報を記録する。液体吐出装置10は、待機位置PH2(図6参照)にある液体吐出部20を検知可能なセンサーSE1を備える。センサーSE1は、待機位置PH2にあるときの液体吐出部20を検知可能に構成される。センサーSE1は、例えば、透過型のフォトインターラプターである。センサーSE1は、赤外線LED等の発光部とフォトIC等の受光部とを有する。センサーSE1は、液体吐出部20に設けられる被検出部(不図示)が発光部と受光部との間に位置するように、液体吐出装置10に設けられる。センサーSE1は検知部DPの一例である。
【0036】
液体吐出部20は、液体の一例であるインクを吐出するヘッド20Hを有する。ヘッド20Hは、記録位置PH4において搬送ユニット25とB方向に対向配置され、ヘッド20Hからインクを吐出することで媒体Mに情報を記録する。液体吐出部20は、インクを吐出するヘッド20Hが媒体Mの幅方向であるX軸方向の全域をカバーするように構成されたラインヘッドである。
【0037】
また、液体吐出部20は、媒体Mの幅方向であるX軸方向への移動を伴わないで媒体Mの幅方向の全域に記録が可能なライン記録方式で記録する。X軸方向は、媒体Mの幅方向の一例であり、液体吐出部20の幅方向の一例である。但し、液体吐出部20は、これに限られず、キャリッジに搭載されてX軸方向に移動しながらインクを吐出するシリアル記録方式のものでもよい。すなわち、液体吐出装置10は、第1メンテナンス部60を備える構成であれば、液体吐出部20の記録方式はどちらでもよい。
【0038】
液体吐出装置10は、装置本体11に、液体吐出部20のノズル面20Nに対してメンテナンスを行う第1メンテナンス部60を備える。図5から図8に示すように、第1メンテナンス部60は、キャッピング位置PC2(図8参照)と、キャッピング位置PC2から-A方向に退避した非キャッピング位置PC1(図5参照)とに移動可能である。液体吐出部20は、記録位置PH4から-B方向に所定距離離れたメンテナンス位置PH3(図8参照)に移動可能である。第1メンテナンス部60は、メンテナンス位置PH3にあるヘッド20Hに対してメンテナンスを行う。
【0039】
第1メンテナンス部60は、A方向に移動することで、非キャッピング位置PC1と、キャッピング位置PC2と、に移動可能に構成される。本実施形態の第1メンテナンス部60は、水平面に対して所定角度だけ傾くA方向に往復移動する。第1メンテナンス部60は、A方向に移動可能な移動部MPの一例である。A方向は、第1メンテナンス部60が移動する移動方向MDの一例である。移動方向MDは、-A方向と、-A方向と逆方向である+A方向とを含む。-A方向は第1方向の一例であり、+A方向は第2方向の一例である。
【0040】
第1メンテナンス部60は、非キャッピング位置PC1から+A方向に移動してキャッピング位置PC2でヘッド20Hに対してメンテナンスを行う。液体吐出装置10が、記録動作中にあるとき、第1メンテナンス部60は、非キャッピング位置PC1で待機する。
【0041】
液体吐出装置10は、非キャッピング位置PC1にある第1メンテナンス部60を検知可能なセンサーSE2を備える。センサーSE2は、非キャッピング位置PC1にあるときの第1メンテナンス部60を検知可能に構成される。センサーSE2は、例えば、透過型のフォトインターラプターである。センサーSE2は、赤外線LED等の発光部とフォトIC等の受光部とを有する。センサーSE2は、キャップ部62に設けられる被検出部(不図示)が発光部と受光部との間に位置するように、液体吐出装置10に設けられる。センサーSE2は、検知部DPの一例である。
【0042】
第1メンテナンス部60は、キャッピング位置PC2から-A方向に退避することでセンサーSE2によって検知される。センサーSE2によって検知される非キャッピング位置PC1は、第1メンテナンス部60の移動経路上の位置を計測する際の基準位置でもある。なお、第1メンテナンス部60が行うメンテナンスの詳細については後述する。
【0043】
また、図2に示すように、液体吐出装置10は、装置本体11内に、液体吐出装置10の各部の動作を制御する制御部95と、インク等の液体を収容する液体収容部98と、インク等を廃液として貯留する廃液貯留部99とを備える。液体収容部98は、不図示のチューブを介してヘッド20Hへインクを供給する。
【0044】
次に、モーションユニット30の構成を説明する。図3に示すように、液体吐出装置10は、装置本体11内に、モーションユニット30を備える。モーションユニット30は、液体吐出部20を移動させる第1移動機構31(図5から図8参照)と、第1メンテナンス部60を移動させる第2移動機構70(図4から図8参照)と、第2メンテナンス部80を移動させる第3移動機構83(図10図11参照)とが一体に組み付けられたユニットである。
【0045】
第1移動機構31は、液体吐出部20をノズル面20N(図4参照)と交差するB方向に移動させる。ノズル面20Nは、ヘッド20Hにおける搬送経路Tと対向する面である。第2移動機構70は、第1メンテナンス部60をノズル面20Nに沿うA方向に移動させる。制御部95は、第1移動機構31及び第2移動機構70の動作を制御する。モーションユニット30は、B方向に移動可能に液体吐出部20を支持し、A方向に移動可能に第1メンテナンス部60を支持し、さらにX軸方向に移動可能に第2メンテナンス部80を支持する。
【0046】
つまり、第1メンテナンス部60は、A方向に移動可能であって、ヘッド20Hに対して第1のメンテナンスを行う。第2メンテナンス部80は、X軸方向に移動可能であって、ヘッド20Hに対して第1のメンテナンスとは異なる第2のメンテナンスを行う。なお、本実施形態の第2メンテナンス部80の移動方向は、X軸方向であるが、第1メンテナンス部60と干渉することなく第2のメンテナンスを行うことができる限りにおいて、X軸方向以外の方向であってもよい。
【0047】
モーションユニット30は、本体部分を構成する本体フレーム33を有する。本体フレーム33は、X軸方向に所定距離を離して対向する一対のサイドフレーム34と、一対のサイドフレーム34間を連結する複数の横フレーム35と、を有する。
【0048】
図3に示すように、一対のサイドフレーム34は、それぞれA-B面に沿った側板として構成される。一方のサイドフレーム34は、+X方向側に配置され、他方のサイドフレーム34は、-X方向側に配置される。例えば、他方のサイドフレーム34には、第2メンテナンス部80が移動するための貫通孔34Aが形成される。
【0049】
一対のサイドフレーム34のそれぞれが対向する2つの内面には、液体吐出部20をB方向に移動可能に案内するガイド部材36が1つずつ組み付けられている。2つのガイド部材36は、本体フレーム33におけるX方向の中央に対してほぼ対称に配置されている。
【0050】
図3図5に示すように、ガイド部材36は、B方向に延びるガイドレール37と、ガイドレール37の途中の部位から分岐してZ方向に延びるガイドレール38,39とを有する。ガイドレール37,38,39は、いずれも本体フレーム33におけるX方向の中央に向かって開口する溝型レールであり、液体吐出部20のガイドローラー29(図5から図8図19参照)が溝内に挿入される。ガイドレール37は、液体吐出部20をB方向に案内するガイド部の一例である。
【0051】
液体吐出部20は、ガイドレール37に案内されることで、記録位置PH4に対して搬送ユニット25から離れた1つ以上の位置に移動する。具体的には、液体吐出部20は、ガイドレール37に沿って移動することで、退避位置PH1、記録位置PH4、待機位置PH2、メンテナンス位置PH3等の複数の停止位置に移動可能である。
【0052】
液体吐出部20は、退避位置PH1にあるとき、交換用のガイドレール38,39へ案内されることが可能である。液体吐出装置10では、ユーザー又はサービスマン等の作業者が液体吐出部20をメンテナンスのために装置本体11から取り外したり、新しいものと交換したりすることが可能である。ユーザーが操作部14(図1参照)を操作して液体吐出装置10に対して液体吐出部20の交換を通知する操作を行うと、制御部95は、液体吐出部20を交換位置でもある退避位置PH1に移動させる。これにより、作業者は、排出トレイ19Aを取り外した際に露出する投入口を介して液体吐出部20を交換可能になる。
【0053】
第1メンテナンス部60は、第1のメンテナンスとしてヘッド20Hのクリーニングを行う。図4図8図9に示すように、本実施形態の第1メンテナンス部60は、ヘッド20Hをクリーニングするキャップ部62を含む。キャップ部62は、ヘッド20HのノズルNを覆うことが可能なキャップ64をキャップベース62Aに複数有する。キャップ部62は、図8図9に示すように、キャップ64がヘッド20Hに接触し、ノズルNを覆うキャッピング状態の下で、ノズルN内の増粘インクや気泡を含むインク等の廃液を強制的に排出する。これによって、ノズルNがキャップ部62によってクリーニングされる。このクリーニングによりノズルNの目詰まりが予防または解消される。
【0054】
第2メンテナンス部80は、ヘッド20Hをメンテナンスする。図10図11に示すように、本実施形態の第2メンテナンス部80は、第2のメンテナンスとして、ヘッド20Hのノズル面20Nを払拭するワイピングを行うワイパー部82である。ワイパー部82は、ワイパー部材81を有し、ワイパー部材81でヘッド20Hのノズル面20Nを払拭する。
【0055】
図4に示すように、ヘッド20Hは、複数の単位ヘッド20UがX軸方向に並んで構成される。キャップ部62は、複数の単位ヘッド20Uと対向する位置にX軸方向に並んで配置される複数のキャップ64と、複数のキャップ64を保持するキャップホルダー66とを備える。キャップ64は、ヘッド20Hと対向する-B方向側が開口している。
【0056】
キャップ部62は、キャップホルダー66の長手方向の両側に固定された一対のラック71がピニオン72と噛合している。換言すると、キャップ部62は、一対のラック71を備える。キャップホルダー66の長手方向の両側部には、複数ずつのガイドローラー74が取り付けられている。両側のガイドローラー74は、両側のガイドレール73と係合している。ガイドローラー74が回転してガイドレール73に案内されることで、キャップ部62は、A方向に移動可能となっている。図4に示す非キャッピング位置PC1にあるときのキャップ部62は、センサーSE2により検知される。
【0057】
キャップ部62のキャップホルダー66には、複数のキャップ64をX軸方向に挟む両側の位置に、位置決め用の一対の被係合部69が突出している。一対の被係合部69は、キャップ64の上面よりも-B方向に高い位置まで突出している。キャップ部62が図4に示す非キャッピング位置PC1から、同図に矢印で示す+A方向に向かってキャッピング位置PC2へ移動する過程で、一対の被係合部69が液体吐出部20側の一対のピン部20Gと係合する。これにより、キャップ部62がA方向においてキャッピング位置PC2(図8参照)に位置決めされる。
【0058】
次に、図5から図8を参照して、液体吐出部20及びキャップ部62についてこれらの移動経路および移動動作を説明する。なお、図5から図8では、第2メンテナンス部80を省略している。
【0059】
液体吐出部20は、B方向に移動することで、記録位置PH4(図5参照)、待機位置PH2(図6参照)、メンテナンス位置PH3(図8参照)および退避位置PH1(図2参照)に配置される。
【0060】
記録位置PH4は、媒体Mに記録を行うときの液体吐出部20の位置である。メンテナンス位置PH3は、ノズル面20Nがキャップ64で覆われる際の液体吐出部20の位置である。つまり、キャップ64によるキャッピングが行われる際の液体吐出部20の位置である。液体吐出部20は、記録を行わないときはキャップ64によってキャッピングされた状態で待機する。
【0061】
待機位置PH2はメンテナンス位置PH3よりも-B方向に位置しており、待機位置PH2はキャップ部62の移動経路から退避した位置である。待機位置PH2は、液体吐出部20の移動経路上の位置を計測する際の基準位置でもある。待機位置PH2とメンテナンス位置PH3との間隔は僅少である。このため、後述する規制部材500が第1ロック状態にあるときの液体吐出部20は、待機位置PH2にある液体吐出部20として、センサーSE1に検知される。一方、後述する規制部材500が第2ロック状態にあるときの液体吐出部20は、センサーSE1に検知されない。尚、図6図7では、説明のため、実際の待機位置PH2より-B方向側にある液体吐出部20を示している。
【0062】
退避位置PH1は、待機位置PH2よりも液体吐出部20が上昇する-B方向側に位置する。本実施形態では、退避位置PH1は、液体吐出部20を交換するときの交換位置でもある。
【0063】
図5に示すように、液体吐出装置10は、液体吐出部20をノズル面20Nと交差するB方向に移動させる第1移動機構31を備える。第1移動機構31は、例えば、ラックピニオンシステムである。この例では、第1移動機構31は、例えば、駆動歯車であるピニオン43と、液体吐出部20に配置されるラック28と、ピニオン43が取り付けられる回転軸(不図示)を回転させる駆動源である昇降駆動部41と、を含んで構成される。
【0064】
ラック28の長さは、ピニオン43の1周の長さよりも長く設定される。昇降駆動部41が駆動されることによって、液体吐出部20は、第1移動機構31を介してB方向に移動する。液体吐出部20は、B方向に延びるガイドレール37に案内されてB方向に移動する。第1移動機構31は、液体吐出部20をB方向に沿って昇降させる。
【0065】
昇降駆動部41は、例えば、ピニオン43が取り付けられる回転軸に取り付けられるウォームホイールとウォームホイールを回転させるウォームギヤとを含むウォームギヤ機構と、出力軸にウォームギヤが取り付けられる駆動モーターと、により構成される。また、駆動モーターの出力軸の-A方向側端部には、操作部41Hが設けられる。操作部41Hを回転させることで、昇降駆動部41の駆動モーターを手動で駆動することが可能となる。本実施形態の昇降駆動部41は、後フレーム11Bの-X方向側であって、後フレーム11Bの-X方向側に配置される外装部材(不図示)の+X方向側となる位置に配置される。このため、外装部材を後フレーム11Bから取り外すことで、サービスマンは、昇降駆動部41にアクセス可能となる。
【0066】
液体吐出部20の側面には、コロよりなる複数のガイドローラー29が回転可能に配置される。ガイドローラー29は、例えば金属製である。複数のガイドローラー29がガイドレール37に案内されることで、液体吐出部20はガイドレール37に沿ってB方向に移動する。ガイドローラー29は、ガイドレール37にガイドされる被ガイド部の一例である。
【0067】
キャップ部62は、キャップ部62の移動方向MDであるA方向に移動可能に設けられる。キャップ部62は、A方向に延びるガイドレール73に案内されてA方向に往復移動する。
【0068】
液体吐出装置10は、キャップ部62を、ノズル面20Nに沿うA方向に移動させる第2移動機構70を備える。第2移動機構70は、ラックピニオンシステムである。第2移動機構70は、図4から図9図19に示すように、キャップ部62が備えるラック71と、駆動歯車であるピニオン72によるラックピニオン機構70A,70B(図4図9参照)と、ピニオン72の駆動源である第1スライド駆動部75と、を含んで構成される。
【0069】
本実施形態の第1スライド駆動部75は、前フレーム11Aの+X方向側であって、前フレーム11Aの+X方向側に配置される外装部材(不図示)の-X方向側となる位置に配置される。このため、外装部材を前フレーム11Aから取り外すことで、サービスマンは、第1スライド駆動部75にアクセス可能となる。尚、図5から図8では、説明のため、第1スライド駆動部75を二点鎖線で示す。
【0070】
ラック71は金属製であってもよいし、樹脂材料で形成されてもよい。ラック71を形成する樹脂材料としては、POM(Polyoxymethylene)、PBT(Poly Butylene Terephthalate)等が採用できる。ラック71の長さは、ピニオン72の1周の長さよりも長く設定される。第2移動機構70は、ラック71が延びるA方向にキャップ部62を移動させる。
【0071】
第1スライド駆動部75は、例えば、ピニオン72が取り付けられる回転軸76(図4参照)に取り付けられるウォームホイールとウォームホイールを回転させるウォームギヤとを含むウォームギヤ機構と、出力軸にウォームギヤが取り付けられる駆動モーターと、により構成される。また、駆動モーターの出力軸の-A方向側の端部には、操作部75Hが設けられる。操作部75Hを回転させることで、第1スライド駆動部75の駆動モーターを手動で駆動することが可能となる。
【0072】
キャップ部62は、第2移動機構70によりA方向に往復移動可能である。キャップ部62は、非キャッピング位置PC1(図5図6参照)と、キャップ部62がヘッド20Hと対向するキャッピング位置PC2(図8図9参照)とに移動する。非キャッピング位置PC1は、液体吐出部20が記録中にあるときにキャップ部62が待機する位置である。キャッピング位置PC2は、ヘッド20Hのノズル面20Nに開口するノズルNを覆うキャッピングを行うときのキャップ部62の位置である。
【0073】
キャッピングが行われる際には、図7に示すように、キャップ部62が非キャッピング位置PC1からキャッピング位置PC2へ移動するときのキャップ部62の移動経路を確保するために、液体吐出部20は、記録位置PH4よりも-B方向に所定距離だけ退避した待機位置PH2に移動する。
【0074】
図6に示すように、液体吐出部20が待機位置PH2にあるとき、キャップ部62は、図5図6に示す非キャッピング位置PC1から、図7に示すキャッピング位置PC2まで+A方向に移動する。キャッピング位置PC2にあるキャップ64は、待機位置PH2にあるヘッド20Hと+B方向で対向する。液体吐出部20が、待機位置PH2から+B方向に移動することで、ヘッド20Hとキャッピング位置PC2にあるキャップ64とが所定の圧力で接触する。ヘッド20Hがキャップ64と接触した位置が、図8に示すメンテナンス位置PH3である。キャッピング位置PC2にあるキャップ64は、メンテナンス位置PH3にあるヘッド20HのノズルN(図9参照)を覆う。
【0075】
図8図9に示すように、キャップ部62がキャッピング位置PC2にあるとき、キャップ部62は、液体吐出部20によって記録される媒体Mが搬送される搬送経路Tから離れている。
【0076】
図9に示すように、キャップ部62は、ヘッド20HのノズルNをキャップ64が覆うキャッピング状態において、ヘッド20Hのメンテナンスを行う。キャップ部62は、キャップ64と配管77を通じて接続されたポンプ78の駆動源であるポンプモーター79が駆動されることで、キャッピング状態でキャップ64内を負圧にする。そして、キャップ部62は、ヘッド20HのノズルNからインク等の液体をキャップ64内に強制的に排出させる。
【0077】
キャップ部62が、ヘッド20Hから強制的に排出させた液体は、キャップ64から廃液として図2に示す廃液貯留部99に貯留される。また、待機位置PH2にあるヘッド20Hからキャッピング位置PC2にあるキャップ64に向けてメンテナンスのために空吐出されたインク等の液体も、キャップ64から廃液として廃液貯留部99に貯留される。
【0078】
次に、キャップ部62の詳細な構成を説明する。図9は、キャッピング状態にある液体吐出部20とキャップ部62とを示す。キャップ部62は、ノズル面20Nと接触することが可能なキャップ64と、キャップ64を保持するためのキャップホルダー66とを備える。また、キャップ部62は、キャップ64とキャップホルダー66との間に設けられた付勢部の一例としてのばね65を備える。ばね65は、キャップ64をノズル面20Nに向けて片寄せる。ばね65は、キャップ64を-B方向に片寄せしている。キャップ64は、ばね65によって支持される。
【0079】
本実施形態では、ヘッド20Hは、図9に示す複数の単位ヘッド20UがX軸方向に並んで構成される。キャップ部62は、複数の単位ヘッド20Uと対向する位置に媒体Mの幅方向であるX軸方向に沿って並んで配置される複数のキャップ64を備える。キャップ64は、ヘッド20Hと対向する-B方向側が開口し、開口の周囲にゴム弾性を有する材質よりなるシール部(不図示)を有する。キャップ64が、ばね65の付勢力によって単位ヘッド20Uのノズル面20Nに押し付けられるとき、シール部は少なくともその一部が弾性圧縮される。キャップ部62は、ばね65の-B方向への付勢力、および弾性圧縮されたシール部の復元力などにより、キャップ64をノズル面20Nに所定の圧力で押圧する。
【0080】
キャップ64は、単位ヘッド20Uのノズル面20Nのうち全てのノズルNを覆うことが可能な形状及び大きさとされる。また、キャップ部62がキャッピング位置PC2にあるとき、キャップ64は、各単位ヘッド20Uのノズル面20NとB方向に対向する位置に配置される。キャップ64は、ヘッド20Hのノズル面20Nに対して所定の圧力で接触することで、ノズル面20Nに開口する複数のノズルNを覆う。
【0081】
キャップ64がノズル面20Nを覆うことで、ヘッド20HのノズルN内のインク等の液体の乾燥による粘性の増加が抑制される。なお、液体吐出部20が退避位置PH1(図2参照)から下降方向であるB方向へ所定のメンテナンス位置PH3まで移動することで、ヘッド20Hとキャップ64とが所定の圧力で接触し、キャッピング状態とされる。
【0082】
キャップ64は、キャップホルダー66に対してスライド部67を介してB方向に相対移動可能な状態で取り付けられている。キャップ64の底面とキャップホルダー66の上面との間に介在するばね65の弾性力により、キャップ64がキャップホルダー66に対して上昇方向である-B方向に向かって片寄せられている。なお、ばね65は、キャップ64を-B方向に向かって片寄せできれば、引張ばねあるいはねじりコイルばね等の弾性部材であってもよい。
【0083】
第2移動機構70は、一対のラックピニオン機構70A,70Bを備える。キャップホルダー66のX軸方向の両側の側面には、ラックピニオン機構70A,70Bを構成する一対のラック71が固定されている。一対のラック71の歯部71Aと対向する+B方向側には、ラックピニオン機構70A,70Bを構成する一対の駆動歯車であるピニオン72が回転可能な状態で配置される。ラック71の歯部71Aとピニオン72の歯部72Aは噛合している。一対のピニオン72は回転軸76の中央より両端側に取り付けられている。また、キャップ部62のX軸方向の両側の側壁には、X軸方向を軸方向として回転可能な複数のコロよりなるガイドローラー74が設けられる。ガイドローラー74は、例えば金属製である。ガイドローラー74は、断面C字状のガイドレール73の延びるA方向(図8図19等参照)に沿って案内される。
【0084】
キャップ部62の駆動源である第1スライド駆動部75(図4図9図19等を参照)の動力によって回転軸76が回転すると、一対のピニオン72が回転する。第1スライド駆動部75が正転駆動されると、ピニオン72とラック71との噛合を介してキャップ部62は+A方向に移動する。一方、第1スライド駆動部75が逆転駆動されると、ピニオン72とラック71との噛合を介してキャップ部62は-A方向に移動する。
【0085】
次に、ワイパー部82の構成を説明する。図10に示すように、ワイパー部82は、B方向及びA方向と直交するX軸方向に移動可能であり、液体吐出部20のヘッド20Hのメンテナンスを行う。ワイパー部82は、ワイパー部材81と、ワイパー部材81を支持するスライダー82Aとを備える。
【0086】
液体吐出装置10は、退避位置PW1にあるワイパー部82を検知可能なセンサーSE3と、ワイパー部82をX軸方向に往復移動させる第3移動機構83と、を備える。センサーSE3は、退避位置PW1にあるときのワイパー部82を検知可能に構成される。第3移動機構83は、スライダー82Aを案内するガイドレール84と、一対のプーリー85に巻き掛けられた無端状のベルト86と、一方のプーリー85を回転させる駆動源である第2スライドモーター87と、を備える。
【0087】
ガイドレール84は、スライダー82AをX軸方向に沿って移動可能に案内する。一対のプーリー85は、X軸方向に所定の距離だけ離れた位置に配置される。ベルト86は、一対のプーリー85に巻き掛けられることで、ワイパー部材81の移動領域よりも広い範囲に亘ってノズル面20Nと平行な状態で配置される。制御部95は、第3移動機構83も制御可能である。詳しくは、制御部95は、第2スライドモーター87を正逆転駆動させることで、ワイパー部材81を退避位置PW1から払拭開始位置までの経路を往復移動させる。
【0088】
スライダー82Aは、ベルト86の一部と固定されている。図10に実線で示すワイパー部82の位置が退避位置PW1である。センサーSE3によって検知される退避位置PW1は、ワイパー部82の移動経路上の位置を計測する際の基準位置でもある。ノズル面20Nのワイピングが行われる際は、ヘッド20Hは待機位置PH2に配置される。待機位置PH2は、ワイパー部材81の移動経路から離れた位置であり、ワイパー部82とノズル面20Nとが接触不可能な位置である。ワイパー部82が退避位置PW1にある状態で第2スライドモーター87が正転駆動されると、ワイパー部82は、退避位置PW1から+X方向に移動し、図10に二点鎖線で示す払拭開始位置に到達する。
【0089】
ワイパー部82が払拭開始位置に到達した後、液体吐出部20が所定量だけ+B方向に下降することで、図11に示す払拭位置PH5に配置される。この払拭位置PH5は、記録位置PH4及びメンテナンス位置PH3よりも退避位置PH1側に位置する。
【0090】
図11において左端に位置する払拭開始位置にあるワイパー部82は、第2スライドモーター87が逆転駆動することで、-X方向に移動する。この-X方向に移動する過程でワイパー部材81がノズル面20Nを払拭する。なお、ワイパー部82はワイピング位置PW2に位置可能であり、ワイピング位置PW2でノズル面20Nを払拭する。
【0091】
ノズル面20Nに付着したインク等の液体はノズルNから吐出されるインク等の液体の飛翔方向を曲げる原因になる。また、ノズルN内にはインク等の液体のメニスカスが形成されるが、このメニスカスの形状が不安定であると、ノズルNから吐出される液滴の量のばらつきの原因になる。ワイパー部82がワイパー部材81でノズル面20Nを払拭することで、ノズル面20Nに付着した液体を除去したり、ノズルN内の液体が形成するメニスカスの形状を整えたりする。ワイパー部82がワイパー部材81でノズル面20Nの払拭動作を行うことにより、ノズルNから吐出される液滴の飛翔方向の曲がりおよび吐出量のばらつきが抑制される。
【0092】
図2に示すように、制御部95は、装置本体11に設けられる。制御部95は、CPU96(Central Processing Unit 96)と、メモリー97とを有する。CPU96は、メモリー97に記憶される各種プログラムを実行することができ、例えば、各種の判断や各種の命令等を行なうことができる。メモリー97には、例えば、媒体Mを搬送するプログラム、液体吐出部20による媒体Mへの情報の記録を行うプログラムが記憶されている。また、メモリー97には、操作部14の表示部14Aに液体吐出装置10の状態を表示するための表示方法に関するプログラム等の各種プログラムが記憶されている。また、メモリー97には、媒体Mが搬送経路Tに搬送される回数等の各種カウンター値が記憶されている。
【0093】
制御部95は、液体吐出装置10の全体を制御する。例えば、制御部95は、ヘッド20Hを制御することで、ヘッド20HのノズルNからインク等の液体を吐出する吐出制御を行う。また、例えば、制御部95は、昇降駆動部41を制御することで、第1移動機構31を介して液体吐出部20をB方向に沿って移動させる移動制御を行う。また、例えば、制御部95は、第1スライド駆動部75を制御することで、第2移動機構70を介してキャップ部62をA方向に沿って移動させる移動制御を行う。
【0094】
また、例えば、制御部95は、第2スライドモーター87を制御することで、第3移動機構83を介してワイパー部82をX軸方向に沿って移動させる移動制御を行う。また、例えば、制御部95は、ポンプ78の駆動源であるポンプモーター79を制御することで、キャッピング状態のキャップ64内を負圧にすることで行われるクリーニングを制御する。また、例えば、制御部95は、給送モーターを制御してピックアップローラー21を回転させることで、カセット15内に収容された媒体Mを1枚ずつ給送する。
【0095】
また、例えば、制御部95は、搬送モーターを制御して、搬送ローラー対22,23,26及び搬送ユニット25を駆動させることで、カセット15から給送された媒体Mを搬送経路Tに沿って搬送する搬送制御を行う。また、例えば、制御部95は、画像読取部13を制御することで、読取部13Aにより原稿Dの画像を読み取る。また、例えば、制御部95は、操作部14の表示部14Aに、液体吐出装置10の状態に関する情報を表示させる報知を行う。
【0096】
また、例えば、制御部95は、センサーSE1,SE2,SE3,SE4から出力される検知信号に基づいて、印刷部12の構成要素を制御する。制御部95は、液体吐出部20及びキャップ部62が自己位置の認識ができなくなった場合、液体吐出部20をB方向に沿って第1メンテナンス部60側から離れるように退避させ、その後にキャップ部62をA方向に沿って退避させる移動制御を行う。また、例えば、制御部95は、センサーSE1,SE2の検出結果に基づいて、液体吐出部20が待機位置PH2にあること、及びキャップ部62が非キャッピング位置PC1にあることを検知する。
【0097】
次に、規制部材200について説明する。規制部材200は、液体吐出装置10の輸送時等に、キャップ部62の移動を規制するために使用される。規制部材200は、キャップ部62のA方向への移動を規制可能である。液体吐出装置10は、規制部材200がキャップ部62の移動を規制しないときに規制部材200を収納可能な収納部300を備える。また、液体吐出装置10は、規制部材200がキャップ部62の移動を規制するときに規制部材200をはめ込むはめ込み部400を備える。規制部材200の取り扱いはサービスマンが行う。規制部材200は、規制部材RMの一例である。
【0098】
まず、はめ込み部400について説明する。図4図9図19に示すように、はめ込み部400は、前フレーム11Aと隣り合うサイドフレーム34の-X方向側に配置される。また、はめ込み部400は、キャップ部62のラック71の+B方向側に位置する。図19に示すように、はめ込み部400は、規制部材200がはめ込まれる空間HKを有する。規制部材200を空間HKにはめ込む方向をはめ込み方向としたとき、規制部材200の空間HKは、空間HKのはめ込み方向手前側となる-X方向側に向かって開口している。本実施形態では、はめ込み方向は、+X方向であり、X軸方向に沿う。
【0099】
はめ込み部400は、空間HKの輪郭を画定する内面403,404,405,406を有する。内面404,405,406はX軸に沿うように設けられる。内面403は、空間HKのはめ込み方向奥側となる+X方向側の輪郭を画定する。内面404は、B方向に沿い、空間HKの+A方向側の輪郭を画定する。内面405は、B方向に沿い、空間HKの-A方向側の輪郭を画定する。内面406は、A方向に沿い、空間HKの+B方向側の輪郭を画定する。また、内面406は、ラック71の歯部71A(図9参照)に対向する。内面406は、キャップ部62のラック71に対向する対向面の一例である。なお、空間HKの-B方向側の輪郭の位置は、キャップ部62のラック71によって規定される。
【0100】
規制部材200は、はめ込み部400にはめ込まれることで、キャッピング位置PC2にあるキャップ部62のA方向への移動を規制する。規制部材200は、キャップ部62がキャッピング位置PC2にあるときに、はめ込み部400にはめ込まれる。図15から図17図20図21に示すように、規制部材200は、箱型をしており、外面202,203,204,205,206,208を有する。
【0101】
また、規制部材200は、外面202に規制部201を有する。規制部201は、一方向に複数の突起が等間隔で並ぶ鋸歯状をしている。規制部材200は、規制部201がキャップ部62のラック71と係合することによって、キャップ部62のA方向への移動を規制する。ラック71はキャップ部62の一部の一例である。規制部201を構成する突起において、規制部材200がはめ込み部400にあるときに、ラック71と係合する位置より+X方向となる側は、+X方向に向かうほどラック71から+B方向に離れる方向に傾斜している。
【0102】
規制部材200は、規制部201が係合するラック71を形成する材料より剛性の低い材料で形成されてもよい。これによれば、例えば、規制部材200の規制部201とキャップ部62のラック71とが係合しているときに、想定以上の振動や衝撃を受けるとする。この場合、規制部201あるいは規制部材200が変形することで振動や衝撃を緩和し、ラック71あるいはキャップ部62の性能が低下することを抑制できる。なお、本実施形態の規制部材200は、PP(Polypropylene)で形成される。
【0103】
図20図21に示すように、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれたとき、外面203がはめ込み部400の内面403に接触することで、規制部材200のX軸方向の位置が規定される。また、外面204がはめ込み部400の内面404に接触することで、規制部材200の+A方向への移動が規制される。また、外面205がはめ込み部400の内面405に接触することで、規制部材200の-A方向への移動が規制される。また、外面206がはめ込み部400の内面406に接触することで、規制部材200の+B方向への移動が規制される。外面206は、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれ、空間HKにあるときに、はめ込み部400の内面406と対向する接触面の一例である。
【0104】
規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれて空間HKにあるとき、規制部201の突起がラック71の複数の歯部71Aと接触することで、キャップ部62のA方向への移動を規制する。本実施形態の規制部201を形成する突起の形状および突起どうしの間隔は、ラック71の歯部71Aを形成する歯の形状および歯どうしの間隔と同じに設定される。これにより、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれたとき、規制部201の複数の突起がキャップ部62のラック71と噛み合う。
【0105】
なお、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれて空間HKにあるとき、ヘッド20HのA方向における中央は、A方向において、規制部201のA方向における両端の間に位置する。また、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれて空間HKにあるとき、ヘッド20HのA方向における中央は、A方向において、内面406のA方向における両端の間に位置する。
【0106】
図16図17に示すように、規制部材200は、突起部212を有する。突起部212は、規制部材200の中央より外面204側に配置される。突起部212は、外面202,206に沿って延びる板状の突起である。図21に示すように、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれ、規制部201がラック71に係合しているとき、突起部212は、はめ込み部400から-X方向に突出している。これにより、例えば、サービスマンが、突起部212を摘まみ、-X方向に引っ張ることで、規制部材200をはめ込み部400から取り外すことができる。
【0107】
また、規制部材200は、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれ、空間HKにあるときに、はめ込み部400の内面406と対向する側に外面207を有する。外面207は、空間HKのはめ込み方向奥側となる+X方向に外面206から続き、+X方向に向かうほど内面406から離れる丸まった面である。外面207を設けることにより、規制部材200のはめ込み方向奥側がはめ込み部400に引っ掛かりにくくなるので、規制部材200をはめ込み部400にはめ込みやすい。外面207は非接触面の一例である。
【0108】
また、外面207を設けることにより、図21に白抜きの矢印で示すように、規制部材200の規制部201側を回転中心にして、規制部材200を回動させながらはめ込み部400から取り外すことも可能となる。なお、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれ、空間HKにあるとする。このときに、本実施形態の規制部材200の外面206がはめ込み部400の内面406と接触する範囲は、X軸方向において、規制部材200の規制部201がキャップ部62のラック71と係合する範囲に対して、-X方向側に設定される。このため、例えば、サービスマンが規制部材200の突起部212を-B方向に押す、あるいは-B方向に引っ張るとする。これにより、規制部材200が図21に白抜きの矢印で示すように回動するモーメントを発生させることができる。
【0109】
図16から図18に示すように、規制部材200は、変形部210、被係合部209,213、および摘み部211を有する。なお、説明のため、図18にも、摘み部211を二点鎖線で示す。変形部210は、規制部材200に一体的に形成される。変形部210は、規制部材200の中央より外面204側を固定端とし、外面205に向かって延びる薄板形状をしている。このため、変形部210は、弾性変形可能である。被係合部209は、規制部材200の中央より外面205側となる変形部210の先端側に設けられる。被係合部209は、外面208から突起部212の突出する側に、変形部210から突出する円筒状の突起である。変形部210が弾性変形することで、被係合部209が変位する。
【0110】
摘み部211は、変形部210の先端側に、変形部210から外面203側に向かって延びる板状の突起である。例えば、摘み部211を摘まみ、外面203側に引っ張ると、変形部210が弾性変形し、被係合部209の外面208からの突出量が少なくなる方向に被係合部209が変位する。被係合部213は、突起部212から外面204側に向かって延びる板状の突起である。被係合部213と外面208との間には、隙間が設けられる。
【0111】
次に、収納部300について説明する。図12図13図18に示すように、収納部300は、規制部材200がキャップ部62の移動を規制しないときに規制部材200を収納可能に、フレーム121に設けられる。収納部300は、フレーム121のうち、離隔位置SPにある搬送路形成部材105に覆われる位置に配置される。また、収納部300は、X軸方向において、フレーム121の中央より+X方向側となる位置に配置される。これにより、収納部300がはめ込み部400に近く、収納部300およびはめ込み部400が、第1扉16の開状態において-Y方向側からアクセス可能な位置にある。このため、収納部300およびはめ込み部400に対する規制部材200の着脱作業がしやすい。
【0112】
図18に示すように、収納部300は、係合部309,312を有する。係合部309は、規制部材200の被係合部209と係合する。係合部312は、規制部材200の被係合部213と係合する。係合部309は、フレーム121に配置される円形の貫通孔である。係合部309の直径は、規制部材200の被係合部209が挿入可能な大きさに設定される。係合部312は、フレーム121のうち、係合部309から-X方向に離れた位置に配置される貫通孔である。係合部312は、規制部材200の突起部212および被係合部213が挿入可能なX軸方向に長い長孔である。
【0113】
図18に示すように、規制部材200は、収納部300にあるときに、収納部300の係合部309,312に、被係合部209,213が係合することで、収納部300に固定される。例えば、規制部材200を収納部300に収納する場合、サービスマンは、第1扉16を開状態にし、搬送路形成部材105を離隔位置SPから搬送位置TPに変位させる。そして、サービスマンは、図18の規制部材200の位置に対して+Z方向であり、かつ+X方向側となる位置から規制部材200をフレーム121に向けて移動させる。そして、サービスマンは、係合部312に突起部212および被係合部213を挿入する。
【0114】
そして、サービスマンは、規制部材200の外面208がフレーム121に接触した状態で、規制部材200を-X方向にスライドさせる。これにより、規制部材200の被係合部209が、収納部300の係合部309に、はまり込んで係合する。また、これにより、規制部材200の被係合部213と外面208との隙間にフレーム121がはまり込み、被係合部213と係合部312とが係合する。
【0115】
また、収納部300に固定された規制部材200を、収納部300から取り外す場合、サービスマンは、第1扉16を開状態にし、搬送路形成部材105を離隔位置SPから搬送位置TPに変位させる。そして、サービスマンは、図18に示す状態から、規制部材200の摘み部211を摘まみ、+Z方向に引っ張ることで、被係合部209を+Z方向に変位させ、係合部309との係合を解除する。そして、サービスマンは、規制部材200を+X方向にスライドさせ、被係合部213と係合部312との係合を解除する。そして、規制部材200を+Z方向に移動させることにより、規制部材200は収納部300から取り外される。
【0116】
規制部材200をはめ込み部400にはめ込む場合、サービスマンは、はめ込み部400の-Y方向側に位置する搬送経路Tを構成する搬送ユニット25等を退避位置に移動させる。そして、キャップ部62がキャッピング位置PC2にあることを確認し、キャッピング位置PC2に位置しない場合はキャッピング位置PC2に移動させる。そして、サービスマンは、はめ込み部400に規制部材200をはめ込む。これにより、規制部材200の規制部201がキャップ部62のラック71と係合し、規制部材200は、キャッピング位置PC2にあるキャップ部62のA方向への移動を規制する。この場合、規制部材200がはめ込み部400にはめ込まれた位置は、規制部201がキャップ部62のラック71に接触する位置である。すなわち、規制部材200は、規制部201がキャップ部62のラック71に接触する位置に着脱可能である。規制部201がキャップ部62のラック71に接触する位置は、接触位置の一例である。
【0117】
次に、規制部材500について説明する。規制部材500は、液体吐出装置10の輸送時等に、液体吐出部20の移動を規制するために使用される。規制部材500は、液体吐出部20のB方向への移動を規制可能である。液体吐出装置10は、規制部材500が液体吐出部20の移動を規制しないときに規制部材500を収納可能な収納部600を備える。規制部材500の取り扱いはサービスマンが行う。規制部材500は、規制部材RMの一例である。
【0118】
まず、収納部600について説明する。図14図26に示すように、収納部600は、規制部材500が液体吐出部20の移動を規制しないときに規制部材500を収納可能に、収納外装18Cのうち、閉状態の第2扉18Dに覆われる位置に設けられる。図27に示すように、収納部600は、収納空間AKと、係合部609A,609Bと、挿入空間SKと、底面603と、を備える。
【0119】
収納空間AKは、規制部材500を収納する空間であり、+X方向に向かって開口している。係合部609A,609Bは、後述する規制部材500の被係合部509A,509Bと係合する。係合部609Aは、収納部600の内面のうち収納空間AKの+Z方向側の輪郭を画定する側面に開口する凹みである。係合部609Bは、収納部600の内面のうち収納空間AKの-Z方向側の輪郭を画定する側面に開口する凹みである。
【0120】
挿入空間SKは、規制部材500により液体吐出部20の移動を規制するときに、後述する規制部材500の規制部501側を挿入する空間である。挿入空間SKは、収納空間AKの-X方向側に設けられ、収納空間AK側となる+X方向に向かって開口している。底面603は、挿入空間SKの-X方向側の輪郭を画定する面であり、収納部600の最も奥に位置する面である。
【0121】
底面603には、孔601A,601Bが設けられる。図28に示すように、孔601A,601Bは、B方向に間隔を置いて配置される貫通孔である。孔601A,601Bは、挿入空間SKに規制部材500が挿入されたとき、後述する規制部材500の規制部501A,501Bが通過可能な貫通孔である。そして、図29に示すように、孔601A,601Bを通過した規制部501A,501Bは、収納部600の-X方向側となるガイドレール37側に突出する。そして、ガイドレール37側に突出する規制部501A,501Bが、メンテナンス位置PH3にある液体吐出部20のガイドローラー29に接触することで、規制部材500は、液体吐出部20のB方向への移動を規制する。
【0122】
このため、図27に示すように、孔601A,601Bは、X軸方向に沿う方向から見たときにガイドレール37と重なる位置に設けられる。また、メンテナンス位置PH3にある液体吐出部20のガイドローラー29が、B方向において、孔601Aと孔601Bとの間に位置するように、孔601Aと孔601Bとは、B方向に間隔を置いて配置される。よって、挿入空間SK、および挿入空間SKを備える収納部600は、X軸方向に沿う方向から見たときにガイドレール37と重なる位置に設けられる。
【0123】
尚、図28に示すように、挿入空間SKに挿入された規制部材500と孔601Aとの間には、規制部材500の-B方向側に隙間G1が設けられる。また、挿入空間SKに挿入された規制部材500と孔601Bとの間には、規制部材500の+B方向側に隙間G2が設けられる。このため、規制部材500が液体吐出部20のB方向の移動を規制している状態で、液体吐出部20が-B方向に移動すると、規制部材500が傾くことで、隙間G1が隙間G2より大きくなる。また、規制部材500が液体吐出部20のB方向の移動を規制している状態で、液体吐出部20が+B方向に移動すると、規制部材500が傾くことで、隙間G2が隙間G1より大きくなる。
【0124】
規制部材500は、収納部600の挿入空間SKに挿入されることで、メンテナンス位置PH3にある液体吐出部20のB方向への移動を規制する。規制部材500は、液体吐出部20がメンテナンス位置PH3にあるときに、挿入空間SKに挿入される。図22から図25に示すように、規制部材500は、規制部501、延在部502、基部503、および変形部510A,510Bを有する。
【0125】
規制部501は、一対の規制部501A,501Bを含む。規制部501A,501Bは、基部503から突出する角柱状の突起である。規制部501Aと規制部501Bとは、間隔を置いて配置され、規制部501Aと規制部501Bとの間に基部503が位置する。延在部502は、規制部501A,501Bが基部503から突出する方向の反対方向に基部503から延びる板状の突起である。規制部材500が収納部600に収納されるとき、収納部600の+X方向側から見える規制部材500の外面は、延在部502、基部503、および規制部501により形成される。
【0126】
図14図26に示すように、規制部材500が収納部600に収納されるとき、規制部材500の外面が、収納部600の収納空間AKの+X方向側の開口を覆う。また、規制部材500が収納部600に収納されるとき、規制部材500の外面は、収納外装18Cの+X方向側の外面と同面となる。これにより、ユーザーが規制部材500を収納部600から取り外しにくくなる。また、規制部材500は、規制部材500の外面が収納外装18Cの+X方向側の外面と同色となるように構成される。これにより、規制部材500が収納部600に収納されるとき、規制部材500は収納外装18Cになじみ、規制部材500は収納外装18Cと別部材であると、ユーザーに認識されにくい。
【0127】
図22から図25に示すように、被係合部509は、一対の被係合部509A,509Bを含む。被係合部509Aは、変形部510Aの先端側に配置される突起である。被係合部509Bは、変形部510Bの先端側に配置される突起である。変形部510A,510Bは、規制部材500のうち延在部502が形成する規制部材500の外面の反対面から突出する薄板状の突起である。このため、変形部510A,510Bは、弾性変形可能である。変形部510A,510Bが弾性変形することで、被係合部509A,509Bが変位する。被係合部509Aと被係合部509Bとは、規制部材500が収納部600に収納されるとき、被係合部509Aが係合部609Aと係合し、被係合部509Bが係合部609Bと係合するように、間隔を置いて配置される。
【0128】
図26に示すように、規制部材500は、収納部600の収納空間AKにあるときに、収納部600の係合部609A,609Bに、被係合部509A,509Bが係合することで、収納部600に固定される。例えば、規制部材500を収納部600に収納する場合、サービスマンは、第2扉18Dを開状態にし、収納部600の係合部609A,609Bの位置に規制部材500の被係合部509A,509Bを合わせる。そして、サービスマンは、収納部600の収納空間AKに被係合部509A,509Bを挿入する。これにより、収納部600の係合部609A,609Bに、被係合部509A,509Bが係合し、規制部材500は収納部600に固定される。
【0129】
また、収納部600に固定された規制部材500を、収納部600から取り外す場合、サービスマンは、第2扉18Dを開状態にし、規制部材500と収納部600との間の隙間に+X方向側からピンセット等を挿入する。そして、サービスマンは、規制部材500の変形部510Aを+Z方向に変形させ、変形部510Bを-Z方向に変形させる。これにより、規制部材500の被係合部509A,509Bと収納部600の係合部609A,609Bとの係合が解除される。そして、規制部材500を+X方向に移動させることにより、規制部材500が収納部600から取り外される。
【0130】
規制部材500を挿入空間SKに挿入する場合、サービスマンは、第2扉18Dを開状態にする。そして、図27に示すように、ガイドローラー29が、B方向において、孔601Aと孔601Bとの間に位置することを確認する。サービスマンは、ガイドローラー29が、孔601Aと孔601Bとの間に位置しない場合、サービスマンは、液体吐出部20をメンテナンス位置PH3に移動させる。そして、サービスマンは、孔601Aに規制部501Aが対向し、孔601Bに規制部501Bが対向する状態で、規制部材500を挿入空間SKに挿入する。そして、規制部材500の基部503が収納部600の底面603に接触する位置まで、規制部材500が収納部600に挿入されることで、規制部501A,501Bがガイドレール37側に突出する。
【0131】
これにより、メンテナンス位置PH3にある液体吐出部20のガイドローラー29に規制部501A,501Bが接触可能となる。そして、規制部材500は、液体吐出部20のB方向への移動を規制可能となる。具体的には、規制部501Aの+B方向側がガイドローラー29に接触することで、規制部材500は液体吐出部20の-B方向への移動を規制する。また、規制部501Bの-B方向側がガイドローラー29に接触することで、規制部材500は液体吐出部20の+B方向への移動を規制する。この場合、規制部材500の基部503が収納部600の底面603に接触する位置は、規制部501が液体吐出部20のガイドローラー29に接触する位置である。すなわち、規制部材500は、規制部501が液体吐出部20のガイドローラー29に接触する位置に着脱可能である。規制部501が液体吐出部20のガイドローラー29に接触する位置は接触位置の一例である。尚、第2扉18Dが開状態であって規制部材500が接触位置に位置するとき、液体吐出部20は、外部から視認不可能である。
【0132】
規制部材500は、規制部501が接触するガイドローラー29を構成する材料より剛性の低い材料で形成されてもよい。これによれば、例えば、規制部材500の規制部501と液体吐出部20のガイドローラー29とが接触しているときに、想定以上の振動や衝撃を受けるとする。この場合、規制部501あるいは規制部材500が変形することで振動や衝撃を緩和し、ガイドローラー29あるいは液体吐出部20の性能が低下することを抑制できる。なお、本実施形態の規制部材500は、PP(Polypropylene)で形成される。
【0133】
なお、図27に示すように、挿入空間SKの-B方向側の輪郭を画定する収納部600の内面には、+B方向に突出するリブ615が配置される。また、図23から図25に示すように、規制部材500の規制部501のうち規制部501Aには、規制部材500が挿入空間SKに挿入されるとき、リブ615が通過可能な溝515が、配置される。これにより、本実施形態では、孔601Aに規制部501Bが対向し、孔601Bに規制部501Aが対向する状態で、規制部材500が挿入空間SKに挿入されることが防止される。
【0134】
次に、図30に示すフローチャートを参照して、制御部95が、規制部材RMの有無の確認を行うときの処理の流れについて説明する。本実施形態において、制御部95が、規制部材RMの有無の確認を行うときの処理の流れは、液体吐出装置10の制御方法に該当する。規制部材RMの有無の確認は、液体吐出装置10の最初の起動時と、輸送モード設定された液体吐出装置10の起動時とにおいて、実行される。このとき、規制部材RMの有無の確認は、液体吐出装置10の起動時に行われる通常の液体吐出装置10の初期化動作の前に実行される。
【0135】
本実施形態において、液体吐出装置10の設置および設置後の再輸送は、サービスマンが行う。液体吐出装置10の設置後に再輸送を行う場合、サービスマンは、再輸送前に輸送モード設定を行い、規制部材RMを装着する。これにより、液体吐出装置10の再輸送後の起動時に、規制部材RMの有無の確認が実行される。
【0136】
図30のステップS101において、制御部95は、液体吐出部20は待機位置PH2にあるか否かを確認する。制御部95は、センサーSE1が液体吐出部20を検知する場合、液体吐出部20は待機位置PH2にあると判断する。制御部95は、センサーSE1が液体吐出部20を検知しない場合、液体吐出部20は待機位置PH2にないと判断する。液体吐出部20が待機位置PH2にある場合、ステップS101はYESになり、制御部95は処理をステップS102に移行する。液体吐出部20が待機位置PH2にない場合、ステップS101はNOになり、制御部95は処理をステップS106に移行する。
【0137】
ステップS106において、制御部95は、液体吐出部20の移動を規制する規制部材500の有無確認動作を行う。液体吐出部20の規制部材500の有無確認動作として、制御部95は、昇降駆動部41の駆動モーターを所定量駆動する。この場合、キャップ部62がキャッピング位置PC2にあることを考慮して、制御部95は、液体吐出部20が-B方向に移動する方向に、昇降駆動部41の駆動モーターを所定量駆動する。規制部材500が接触位置にあるときに、液体吐出部20をB方向に移動させると、液体吐出部20の移動が規制部材500に規制される。これにより、駆動モーターの駆動負荷が大きくなることを利用して、制御部95は、液体吐出部20の規制部材500の有無を確認する。
【0138】
制御部95は、昇降駆動部41の駆動モーターの駆動において、駆動電流値を計測することで駆動モーターの駆動負荷を監視する。そして、設定値以上の駆動電流値を検出した場合、制御部95は、液体吐出部20の規制部材500が接触位置に取り付けられていると判断する。設定値以上の駆動電流値が検出されず、駆動モーターが所定量駆動された場合、制御部95は、液体吐出部20の規制部材500はないと判断する。
【0139】
液体吐出部20の規制部材500の有無確認動作を行うと、制御部95は処理をステップS107に移行する。ステップS107において、制御部95は、液体吐出部20の規制部材500があるか否かを確認する。液体吐出部20の規制部材500がある場合、ステップS107はYESになり、制御部95は処理をステップS108に移行する。液体吐出部20の規制部材500がない場合、ステップS107はNOになり、制御部95は処理をステップS102に移行する。
【0140】
ステップS108において、制御部95は、報知処理を行う。報知処理において、制御部95は、操作部14の表示部14Aに、取り外されていない規制部材500の取り外しを促す旨のメッセージを表示する。報知処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0141】
ステップS102において、制御部95は、キャップ部62は非キャッピング位置PC1にあるか否かを確認する。制御部95は、センサーSE2がキャップ部62を検知する場合、キャップ部62は非キャッピング位置PC1にあると判断する。制御部95は、センサーSE2がキャップ部62を検知しない場合、キャップ部62は非キャッピング位置PC1にないと判断する。
【0142】
キャップ部62が非キャッピング位置PC1にある場合、ステップS102はYESになり、制御部95は処理をステップS103に移行する。キャップ部62が非キャッピング位置PC1にない場合、ステップS102はNOになり、制御部95は処理をステップS109に移行する。
【0143】
ステップS109において、制御部95は、キャップ部62の移動を規制する規制部材200の有無確認動作を行う。キャップ部62の規制部材200の有無確認動作として、制御部95は、キャップ部62が-A方向に移動する方向に、第1スライド駆動部75の駆動モーターを所定量駆動する。規制部材200が接触位置にあるときに、キャップ部62を-A方向に移動させると、キャップ部62の移動が規制部材200に規制される。これにより、駆動モーターの駆動負荷が大きくなることを利用して、制御部95は、キャップ部62の規制部材200の有無を確認する。
【0144】
制御部95は、第1スライド駆動部75の駆動モーターの駆動において、駆動電流値を計測することで駆動モーターの駆動負荷を監視する。そして、設定値以上の駆動電流値を検出した場合、制御部95は、キャップ部62の規制部材200が接触位置に取り付けられていると判断する。設定値以上の駆動電流値が検出されず、駆動モーターが所定量駆動された場合、制御部95は、キャップ部62の規制部材200はないと判断する。
【0145】
キャップ部62の規制部材200の有無確認動作を行うと、制御部95は処理をステップS110に移行する。ステップS110において、キャップ部62の規制部材200があるか否かを確認する。キャップ部62の規制部材200がある場合、ステップS110はYESになり、制御部95は処理をステップS112に移行する。キャップ部62の規制部材200がない場合、ステップS110はNOになり、制御部95は処理をステップS111に移行する。
【0146】
ステップS112において、制御部95は、報知処理を行う。報知処理において、制御部95は、操作部14の表示部14Aに、取り外されていない規制部材200の取り外しを促す旨のメッセージを表示する。報知処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0147】
ステップS111において、制御部95は、キャップ部62を非キャッピング位置PC1に移動させる。制御部95は、キャップ部62が-A方向に移動する方向に、第1スライド駆動部75の駆動モーターを駆動する。そして、センサーSE2がキャップ部62を検知すると、制御部95は駆動モーターの駆動を停止する。キャップ部62を非キャッピング位置PC1に移動させると、制御部95は処理をステップS103に移行する。
【0148】
ステップS103において、制御部95は、ワイパー部82を退避位置PW1に移動させる。制御部95は、センサーSE3がワイパー部82を検出しない場合、ワイパー部82が-X方向に移動する方向に、第2スライドモーター87を駆動する。そして、センサーSE3がワイパー部82を検知すると、制御部95は第2スライドモーター87の駆動を停止する。ワイパー部82を退避位置PW1に移動させると、制御部95は処理をステップS104に移行する。尚、ステップS103は、ステップS111を実行する場合、ステップS111と並行して実行してもよい。
【0149】
ステップS104において、制御部95は、液体吐出部20の移動を規制する規制部材500の有無確認動作を行う。液体吐出部20の規制部材500の有無確認動作として、制御部95は、昇降駆動部41の駆動モーターを所定量駆動する。ステップS104では、キャップ部62は非キャッピング位置PC1にあるため、制御部95は、液体吐出部20が+B方向に移動する方向に、昇降駆動部41の駆動モーターを所定量駆動する。
【0150】
液体吐出部20の規制部材500の有無確認動作を行うと、制御部95は処理をステップS105に移行する。ステップS105において、制御部95は、液体吐出部20の規制部材500があるか否かを確認する。液体吐出部20の規制部材500がある場合、ステップS105はYESになり、制御部95は処理をステップS113に移行する。液体吐出部20の規制部材500がない場合、ステップS105はNOになり、制御部95は処理を終了する。
【0151】
ステップS113において、制御部95は、報知処理を行う。報知処理において、制御部95は、操作部14の表示部14Aに、取り外されていない規制部材500の取り外しを促す旨のメッセージを表示する。報知処理を行うと、制御部95は処理を終了する。尚、本実施形態では、サービスマンによる規制部材RMの取り外しは、液体吐出装置10の電源を遮断した状態で行われる。そして、先の規制部材RMの有無の確認処理において規制部材RMが有った場合、制御部95は、液体吐出装置10の起動時に、再度、規制部材RMの有無の確認処理を行う。
【0152】
次に、図31から図34に示すフローチャートを参照して、制御部95が、ロック解除処理を行うときの処理の流れについて説明する。本実施形態において、制御部95が、ロック解除処理を行うときの処理の流れは、液体吐出装置10の制御方法に該当する。ロック解除処理は、規制部材RMが接触位置から取り外せないロック状態において実行される。
【0153】
ロック解除処理には、複数のロック解除処理が含まれる。規制部材RMが接触位置から取り外せない場合、サービスマンは、操作部14を操作することにより、複数のロック解除処理のうちのいずれかのロック解除処理を選択する。本実施形態では、ロック解除処理に、自動ロック解除処理HA、選択ロック解除処理HM1,HM2、および選択ロック解除処理CM1が含まれる。制御部95は、サービスマンにより選択されたロック解除処理を実行する。換言すると、制御部95は、サービスマンによるロック解除処理の指示に基づいて、ロック解除処理を実行する。
【0154】
まず、規制部材500が接触位置から取り外せないロック状態において、制御部95が実行する自動ロック解除処理HAについて説明する。自動ロック解除処理HAでは、センサーSE1により検知された液体吐出部20の位置から判定されるロック状態に基づいて、制御部95が液体吐出部20を+B方向および-B方向のいずれかに移動させる。サービスマンにより規制部材500の自動ロック解除処理HAが指示されると、制御部95は、図31に示す処理を実行する。
【0155】
図31のステップS201において、制御部95は、液体吐出部20は待機位置PH2にあるか否かを確認する。制御部95は、センサーSE1が液体吐出部20を検知する場合、液体吐出部20は待機位置PH2にあると判断する。制御部95は、センサーSE1が液体吐出部20を検知しない場合、液体吐出部20は待機位置PH2にないと判断する。
【0156】
液体吐出部20が待機位置PH2にある場合、ステップS201はYESになり、制御部95は、ロック状態は液体吐出部20が-B方向へ移動することによる第1ロック状態であると判断し、処理をステップS202に移行する。液体吐出部20が待機位置PH2にない場合、ステップS201はNOになり、制御部95は、ロック状態は液体吐出部20が+B方向へ移動することによる第2ロック状態であると判断し、処理をステップS203に移行する。
【0157】
ステップS202において、制御部95は、液体吐出部20が+B方向に移動する方向に、昇降駆動部41の駆動モーターを所定量駆動する。すなわち、規制部材500の自動ロック解除処理HAにおいて、規制部材500が第1ロック状態の場合、制御部95は、液体吐出部20を+B方向に移動させる。ステップS202の処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0158】
ステップS203において、制御部95は、液体吐出部20が-B方向に移動する方向に、昇降駆動部41の駆動モーターを所定量駆動する。すなわち、規制部材500の自動ロック解除処理HAにおいて、規制部材500が第2ロック状態の場合、制御部95は、液体吐出部20を-B方向に移動させる。ステップS203の処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0159】
次に、規制部材500が接触位置から取り外せないロック状態において、制御部95が実行する選択ロック解除処理HM1,HM2について説明する。選択ロック解除処理HM1は、液体吐出部20を+B方向に移動させる処理である。また、選択ロック解除処理HM2は、液体吐出部20を-B方向に移動させる処理である。
【0160】
規制部材500のロック状態を解除するために、液体吐出部20を+B方向に移動させたい場合、サービスマンは、選択ロック解除処理HM1を選択する。規制部材500のロック状態を解除するために、液体吐出部20を-B方向に移動させたい場合、サービスマンは、選択ロック解除処理HM2を選択する。選択ロック解除処理HM1,HM2は、ロック状態を解除させるためのサービスマンによる指示に基づいて、制御部95が液体吐出部20を+B方向および-B方向のいずれかに移動させる処理である。尚、自動ロック解除処理HAを実行した後、規制部材500が接触位置から取り外せない場合、サービスマンは、選択ロック解除処理HM1,HM2を選択してもよい。
【0161】
例えば、規制部材500が接触位置から取り外せない場合、サービスマンは、第2扉18Dを開状態にして、収納部600の挿入空間AKに挿入された規制部材500の様子を確認する。このとき、例えば、収納部600の挿入空間AKに挿入された規制部材500の-B方向側の隙間G1(図28参照)が規制部材500の+B方向側の隙間G2(図28参照)より大きいとする。
【0162】
この場合、サービスマンは、規制部材500のロック状態が第1ロック状態であると判断し、操作部14を操作することで、選択ロック解除処理HM1を選択する。サービスマンにより規制部材500の選択ロック解除処理HM1が指示されると、制御部95は、図32に示す処理を実行する。図32のステップS301において、制御部95は、液体吐出部20が+B方向に移動する方向に、昇降駆動部41の駆動モーターを所定量駆動する。ステップS301の処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0163】
また、例えば、収納部600の挿入空間AKに挿入された規制部材500の+B方向側の隙間G2が規制部材500の-B方向側の隙間G1より大きいとする。この場合、サービスマンは、規制部材500のロック状態が第2ロック状態であると判断し、操作部14を操作することで、選択ロック解除処理HM2を選択する。サービスマンにより規制部材500の選択ロック解除処理HM2が指示されると、制御部95は、図33に示す処理を実行する。図33のステップS401において、制御部95は、液体吐出部20が-B方向に移動する方向に、昇降駆動部41の駆動モーターを所定量駆動する。ステップS401の処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0164】
次に、規制部材200が接触位置から取り外せないロック状態において、制御部95が実行する選択ロック解除処理CM1について説明する。本実施形態では、キャップ部62は、キャッピング位置PC2より+A方向に移動しない。このため、規制部材200が接触位置から取り外せないロック状態において、制御部95が実行するロック解除処理は選択ロック解除処理CM1のみである。選択ロック解除処理CM1では、キャップ部62が-A方向へ移動することによる第1ロック状態を解除する。
【0165】
規制部材200のロック状態を解除するために、キャップ部62を移動させたい場合、サービスマンは、選択ロック解除処理CM1を選択する。選択ロック解除処理CM1は、ロック状態を解除させるためのサービスマンによる指示に基づいて、制御部95がキャップ部62を+A方向に移動させる処理である。
【0166】
例えば、サービスマンが、操作部14を操作することで、選択ロック解除処理CM1を選択するとする。サービスマンにより規制部材200の選択ロック解除処理CM1が指示されると、制御部95は、図34に示す処理を実行する。図34のステップS501において、制御部95は、キャップ部62が+A方向に移動する方向に、第1スライド駆動部75の駆動モーターを所定量駆動する。ステップS501の処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0167】
尚、ロック解除処理を実行しても、規制部材RMが取り外せない場合、サービスマンは、昇降駆動部41および第1スライド駆動部75のいずれかを手動で駆動することで、規制部材RMのロック状態を解除する。例えば、規制部材500が取り外せない場合、サービスマンは、外装部材を後フレーム11Bから取り外す。そして、サービスマンが昇降駆動部41の操作部41Hを回転させることで、昇降駆動部41の駆動モーターの駆動を手動で行う。これにより、サービスマンは、規制部材500のロック状態を解除し、規制部材500を収納部600の挿入空間AKから取り外す。
【0168】
また、例えば、規制部材200が取り外せない場合、サービスマンは、収納外装18Cを含む外装部材を前フレーム11Aから取り外す。そして、サービスマンが第1スライド駆動部75の操作部75Hを回転させることで、昇降駆動部41の駆動モーターの駆動を手動で行う。これにより、サービスマンは、規制部材200のロック状態を解除し、規制部材200を収納部300のはめ込み部400から取り外す。
【0169】
以上述べたように、実施形態1に係る液体吐出装置10、および液体吐出装置10の制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0170】
液体吐出装置10は、第1方向と、第1方向と逆方向である第2方向とを含む移動方向MDに移動可能な移動部MPと、制御部95と、を備える。移動部MPは、接触位置に着脱可能な規制部材RMが接触位置に装着されることで、移動方向MDへの移動が規制される。また、制御部95は、規制部材RMが接触位置から取り外せなくなる規制部材RMのロック状態において、ロック状態を解除するためのロック解除処理を実行可能である。ロック状態は、移動部MPが第1方向へ移動することによる第1ロック状態を含む。また、ロック状態は、移動部MPが第2方向へ移動することによる第2ロック状態を含む。そして、ロック解除処理において、規制部材RMが第1ロック状態の場合、移動部MPが第2方向へ移動する。そして、ロック解除処理において、規制部材RMが第2ロック状態の場合、移動部MPが第1方向へ移動する。これによれば、制御部95がロック解除処理を実行するので、サービスマンが移動部MPの駆動部を手動で駆動する等の手間をかけることなく、容易に規制部材RMを取り外すことができる。
【0171】
液体吐出装置10は、移動部MPの位置を検知する検知部DPを備える。そして、ロック解除処理は、検知された移動部MPの位置から判定されるロック状態に基づいて、制御部95が移動部MPを移動させる自動ロック解除処理を含む。これによれば、検知部DPが移動部MPの位置を検知することで、ロック状態に応じて適切なロック解除動作を行うことができる。
【0172】
移動部MPは、第1ロック状態の場合、検知部DPで検知される。これによれば、第1ロック状態の場合は、移動部MPが検知部DPに検知されるので、どちらのロック状態であるかを容易に検知できる。
【0173】
検知部DPは、移動部MPが基準位置に位置するか否かを検知する。これによれば、基準位置を検知する検知部とロック状態を検知する検知部を個別に設ける必要がない。
【0174】
ロック解除処理は、ロック状態を解除させる指示に基づいて、制御部95が移動部MPを移動させる選択ロック解除処理HM1,HM2を含む。これによれば、サービスマン自身で移動部MPをどちらかの方向に移動させるかを選択してロック解除処理を行うことができる。
【0175】
移動方向MDは、水平方向に交差する方向である。これによれば、斜め方向へ移動可能に構成される移動部MPでは、輸送時に振動を受けやすいので特に規制部材RMが必要になるが、制御部95がロック解除処理を行うので規制部材RMの取り外しが容易にできる。
【0176】
液体吐出装置10は、ノズルNからインクを吐出可能な液体吐出部20を備え、移動部MPは、液体吐出部20である。これによれば、制御部95がロック解除処理を実行するので、サービスマンが液体吐出部20の駆動部を手動で駆動する等の手間をかけることなく、容易に規制部材500を取り外すことができる。
【0177】
液体吐出装置10は、ノズルNを覆うキャップ64を有するキャップ部62を備える。そして、液体吐出部20は、キャップ64にノズルNが覆われるメンテナンス位置PH3に移動可能であり、規制部材500の接触位置は、メンテナンス位置PH3に位置する液体吐出部20の移動を規制する位置である。通常、液体吐出部20がメンテナンス位置PH3に位置するとき、ノズルNがキャップ64に覆われており、液体吐出部20とキャップ64は接触している。このため、例えば、液体吐出部20の位置が把握できていないまま、キャップ64のある方向に液体吐出部20を移動させるとする。そして、液体吐出部20がメンテナンス位置PH3に位置していた場合、キャップ64のある方向に液体吐出部20を移動させることでキャップ64を傷つけてしまう等の虞がある。本実施形態のロック解除処理では、液体吐出部20の位置に応じてロック解除処理を行う。これによれば、液体吐出部20がメンテナンス位置PH3に位置していない状態で、キャップ64のある方向に液体吐出部20を移動させる。よって、液体吐出部20とキャップ64が過度に接触して傷つくことを防止することできる。
【0178】
液体吐出装置10は、接触位置にある規制部材500にアクセス可能な開状態と、アクセス不可能にする閉状態と、に変位可能な第2扉18Dを備える。そして、液体吐出部20は、第2扉18Dが開状態であって規制部材500が接触位置に位置するとき、視認不可能である。これによれば、制御部95が自動ロック解除処理HAを行うので、液体吐出部20の状態が外部から視認不可能である場合に好適である。また、第2扉18Dが開状態とすることで、選択ロック解除処理HM1を行うことができる。
【0179】
液体吐出装置10は、ノズルNからインクを吐出可能な液体吐出部20を備える。また、液体吐出装置10は、ノズルNを覆うキャップ64を有するキャップ部62を備える。キャップ部62は、キャップ64がノズルNを覆うキャッピング位置PC2と、キャップ64がキャッピング位置PC2から離れた非キャッピング位置PC1と、に移動可能である。そして、移動部MPは、キャップ部62である。これによれば、制御部95がロック解除処理を実行するので、サービスマンがキャップ部62の駆動部を手動で駆動する等の手間をかけることなく、容易に規制部材200を取り外すことができる。
【0180】
液体吐出装置10は、第1方向と、第1方向と逆方向である第2方向とを含む移動方向MDに移動可能な移動部MPを備える。また、液体吐出装置10は、移動部MPの一部と接触する接触位置に着脱可能な規制部材RMを備える。規制部材RMは、接触位置において、移動部MPの移動方向MDへの移動を規制可能である。また、規制部材RMが接触位置から取り外せなくなる規制部材RMのロック状態が、移動部MPが第1方向へ移動することによる第1ロック状態を含む。また、規制部材RMのロック状態が、移動部MPが第2方向へ移動することによる第2ロック状態を含む。そして、液体吐出装置10の制御方法は、ロック状態においてロック解除処理を実行することを含む。また、液体吐出装置10の制御方法は、ロック解除処理において、規制部材RMが第1ロック状態の場合、移動部MPを第2方向へ移動させることを含む。また、液体吐出装置10の制御方法は、ロック解除処理において、規制部材RMが第2ロック状態の場合、移動部MPを第1方向へ移動させることを含む。これによれば、ロック解除処理を実行するので、サービスマンが移動部MPの駆動部を手動で駆動する等の手間をかけることなく、容易に規制部材RMを取り外すことができる。
【0181】
液体吐出装置10の制御方法は、検知部DPにより検知された移動部MPの位置から判定されるロック状態に基づいて、ロック解除処理を実行する。これによれば、検知部DPが移動部MPの位置を検知することで、ロック状態に応じて適切なロック解除動作を行うことができる。
【0182】
液体吐出装置10の制御方法は、ロック状態を解除させる指示を受け付けることと、指示に基づいてロック解除処理を実行することと、を含む。これによれば、サービスマン自身で移動部MPをどちらかの方向に移動させるかを選択してロック解除動作を行うことができる。
【0183】
本開示の上記実施形態に係る液体吐出装置10、および液体吐出装置10の制御方法は、以上述べたような構成を有することを基本とするものである。一方、本開示の上記実施形態に係る液体吐出装置10、および液体吐出装置10の制御方法は、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。また、上記実施形態および以下に説明する他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。以下、他の実施形態について説明する。
【0184】
上記実施形態において、キャップ部62は、キャッピング位置PC2より+A方向に移動可能に構成されてもよい。この場合、規制部材200が接触位置から取り外せないロック状態において、制御部95が実行するロック解除処理に、自動ロック解除処理CA、および選択ロック解除処理CM2を含んでもよい。自動ロック解除処理CAでは、センサーSE2により検知されたキャップ部62の位置から判定されるロック状態に基づいて、制御部95がキャップ部62を+A方向および-A方向のいずれかに移動させる。
【0185】
サービスマンにより規制部材200の自動ロック解除処理CAが指示されると、制御部95は、図35に示す処理を実行する。図35のステップS601において、制御部95は、キャップ部62は非キャッピング位置PC1にあるか否かを確認する。制御部95は、センサーSE2がキャップ部62を検知する場合、キャップ部62は非キャッピング位置PC1にあると判断する。制御部95は、センサーSE2がキャップ部62を検知しない場合、キャップ部62は非キャッピング位置PC1にないと判断する。
【0186】
キャップ部62が非キャッピング位置PC1にある場合、ステップS601はYESになり、制御部95は、ロック状態はキャップ部62が-A方向へ移動することによる第1ロック状態であると判断する。そして、制御部95は、処理をステップS602に移行する。キャップ部62が非キャッピング位置PC1にない場合、ステップS601はNOになり、制御部95は、ロック状態はキャップ部62が+A方向へ移動することによる第2ロック状態であると判断する。そして、制御部95は、処理をステップS603に移行する。
【0187】
ステップS602において、制御部95は、キャップ部62が+A方向に移動する方向に、第1スライド駆動部75の駆動モーターを所定量駆動する。すなわち、規制部材200の自動ロック解除処理CAにおいて、規制部材200が第1ロック状態の場合、制御部95は、キャップ部62を+A方向に移動させる。ステップS602の処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0188】
ステップS603において、制御部95は、キャップ部62が-A方向に移動する方向に、第1スライド駆動部75の駆動モーターを所定量駆動する。すなわち、規制部材200の自動ロック解除処理CAにおいて、規制部材200が第2ロック状態の場合、制御部95は、キャップ部62を-A方向に移動させる。ステップS603の処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0189】
選択ロック解除処理CM2は、キャップ部62を-A方向に移動させる処理である。規制部材200のロック状態を解除するために、キャップ部62を-A方向に移動させたい場合、サービスマンは、選択ロック解除処理CM2を選択する。選択ロック解除処理CM2は、ロック状態を解除させるためのサービスマンによる指示に基づいて、制御部95がキャップ部62を-A方向に移動させる処理である。
【0190】
例えば、サービスマンが、規制部材200のロック状態が第2ロック状態であると判断し、操作部14を操作することで、選択ロック解除処理CM2を選択するとする。サービスマンにより規制部材200の選択ロック解除処理CM2が指示されると、制御部95は、図36に示す処理を実行する。図36のステップS701において、制御部95は、キャップ部62が-A方向に移動する方向に、第1スライド駆動部75の駆動モーターを所定量駆動する。ステップS701の処理を行うと、制御部95は処理を終了する。
【0191】
上記実施形態において、収納部300は、フレーム121に配置されなくてもよい。例えば、収納部300は、第1扉16を開状態にすることでアクセス可能な位置であって、-Y方向側から見て、搬送経路Tを構成する部材に隠れる位置に配置されてもよい。また、例えば、収納部300は、第1扉16に配置されてもよい。また、例えば、収納部300は、収納部600と同じように、収納外装18Cのうち、閉状態の第2扉18Dに覆われる位置に配置されてもよい。
【0192】
上記実施形態において、制御部95は、規制部材RMの有無の確認を、液体吐出装置10が起動される度に実行してもよい。また、制御部95は、第2扉18Dが開閉される度に、規制部材RMの有無の確認を実行してもよい。
【0193】
上記実施形態における規制部材RMの有無の確認において、規制部材500の有無の確認を行うとき、昇降駆動部41の駆動モーターの駆動電流値を計測することで駆動モーターの駆動負荷を監視しなくてもよい。例えば、液体吐出装置10は、接触位置にある規制部材500を検知可能なセンサーを設ける。そして、センサーが規制部材500を検知している場合、制御部95は、液体吐出部20の規制部材500が接触位置に取り付けられていると判断してもよい。そして、センサーが規制部材500を検知していない場合、制御部95は、液体吐出部20の規制部材500が接触位置に取り付けられていないと判断してもよい。
【0194】
上記実施形態における規制部材RMの有無の確認において、規制部材200の有無の確認を行うとき、第1スライド駆動部75の駆動モーターの駆動電流値を計測することで駆動モーターの駆動負荷を監視しなくてもよい。例えば、液体吐出装置10は、接触位置にある規制部材200を検知可能なセンサーを設ける。そして、センサーが規制部材200を検知している場合、制御部95は、キャップ部62の規制部材200が接触位置に取り付けられていると判断してもよい。そして、センサーが規制部材200を検知していない場合、制御部95は、キャップ部62の規制部材200が接触位置に取り付けられていないと判断してもよい。
【0195】
上記実施形態において、液体吐出装置10は、第1ロック状態にあるときの液体吐出部20を検知可能なセンサーSE5(不図示)を備えてもよい。また、液体吐出装置10は、第2ロック状態にあるときの液体吐出部20を検知可能なセンサーSE6(不図示)を備えてもよい。この場合、制御部95は、センサーSE5、およびセンサーSE6のいずれかの検知結果に基づいて、規制部材500のロック状態を判断してもよい。
【0196】
上記実施形態において、液体吐出装置10は、第1ロック状態にあるときのキャップ部62を検知可能なセンサーSE7(不図示)を備えてもよい。また、液体吐出装置10は、第2ロック状態にあるときのキャップ部62を検知可能なセンサーSE8(不図示)を備えてもよい。この場合、制御部95は、センサーSE7、およびセンサーSE8のいずれかの検知結果に基づいて、規制部材200のロック状態を判断してもよい。
【符号の説明】
【0197】
10…液体吐出装置、11…装置本体、11A…前フレーム、11B…後フレーム、12…印刷部、13…画像読取部、13A…読取部、13B…自動原稿給送部、13C…原稿トレイ、13D…排出トレイ、14…操作部、14A…表示部、15…カセット、15A,16A,16B,17A…把手、16…第1扉、16T…給送トレイ、17…カバー扉、18C…収納外装、18D…第2扉、19…排出部、19A…排出トレイ、19B…載置面、20…液体吐出部、20G…ピン部、20H…ヘッド、20N…ノズル面、20U…単位ヘッド、21…ピックアップローラー、22,23,26…搬送ローラー対、25…搬送ユニット、25A…プーリー、25B…搬送ベルト、27…フラップ、28…ラック、29…ガイドローラー、30…モーションユニット、31…第1移動機構、33…本体フレーム、34…サイドフレーム、34A…貫通孔、35…横フレーム、36…ガイド部材、37,38,39…ガイドレール、41…昇降駆動部、43…ピニオン、60…第1メンテナンス部、62…キャップ部、62A…キャップベース、64…キャップ、66…キャップホルダー、67…スライド部、69…被係合部、70…第2移動機構、70A…ラックピニオン機構、71…ラック、71A,72A…歯部、72…ピニオン、73…ガイドレール、74…ガイドローラー、75…第1スライド駆動部、76…回転軸、77…配管、78…ポンプ、79…ポンプモーター、80…第2メンテナンス部、81…ワイパー部材、82…ワイパー部、82A…スライダー、83…第3移動機構、84…ガイドレール、85…プーリー、86…ベルト、87…第2スライドモーター、95…制御部、96…CPU、97…メモリー、98…液体収容部、99…廃液貯留部、105…搬送路形成部材、121…フレーム、200…規制部材、201…規制部、202,203,204,205,206,207,208…外面、209,213…被係合部、210…変形部、211…摘み部、212…突起部、300…収納部、309,312…係合部、400…はめ込み部、403,404,405,406…内面、500…規制部材、501,501A,501B…規制部、502…延在部、503…基部、509,509A,509B…被係合部、510A,510B…変形部、515…溝、600…収納部、601A,601B…孔、603…底面、609A,609B…係合部、615…リブ、AK…収容空間、CA…自動ロック解除処理、CM1…選択ロック解除処理、CM2…選択ロック解除処理、D…原稿、DP…検知部、G1,G2…隙間、HA…自動ロック解除処理、HK…空間、HM1,HM2…選択ロック解除処理、M…媒体、MD…移動方向、MP…移動部、PC1…非キャッピング位置、PC2…キャッピング位置、PH1…退避位置、PH2…待機位置、PH3…メンテナンス位置、PH4…記録位置、PH5…払拭位置、PW1…退避位置、PW2…ワイピング位置、RM…規制部材、S101,S102,S103,S104,S105,S106,S107,S108,S109,S110,S111,S112,S113,S201,S202,S203,S401,S501,S601,S602,S603,S701…ステップ、SE1,SE2,SE3,SE4,SE5,SE6,SE7,SE8…センサー、SK…挿入空間、SP…離隔位置、T…搬送経路、T1,T2,T3,T4…搬送路、T5…反転路、TP…搬送位置。
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