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特開2024-82779光検出素子の製造方法、及び光検出素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082779
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】光検出素子の製造方法、及び光検出素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/108 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
H01L31/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196876
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 和利
(72)【発明者】
【氏名】董 偉
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘康
【テーマコード(参考)】
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
5F149AA05
5F149AA17
5F149AB01
5F149AB02
5F149AB03
5F149BA09
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5F149CB07
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5F849CB06
5F849CB07
5F849CB14
5F849FA05
5F849GA04
5F849HA15
5F849LA01
5F849XB06
5F849XB39
(57)【要約】
【課題】所定の波長領域の光に対して高い感度を有する光検出素子を容易に製造することができる光検出素子の製造方法、及び光検出素子を提供する。
【解決手段】光検出素子1の製造方法は、支持体2上にアモルファス状の半導体層40を形成する第1工程と、半導体層40上に第1金属層3を形成する第2工程と、半導体層40が多結晶化され且つ半導体層40と第1金属層3とが入れ替わるように熱処理を実施し、それにより、支持体2上に第1金属層3を形成すると共に、第1金属層3上に多結晶状の光電変換層4を形成する第3工程と、光電変換層4上に複数の第2金属層5を形成する第4工程と、を備える。第4工程では、X方向における各第2金属層5の幅が、所定の波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、複数の第2金属層5が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にアモルファス状の半導体層を形成する第1工程と、
前記半導体層上に第1金属層を形成する第2工程と、
前記半導体層が多結晶化され且つ前記半導体層と前記第1金属層とが入れ替わるように熱処理を実施し、それにより、前記支持体上に前記第1金属層を形成すると共に、前記第1金属層上に多結晶状の光電変換層を形成する第3工程と、
前記光電変換層上に第2金属層を形成する第4工程と、を備え、
前記第4工程では、前記第2金属層の厚さ方向に垂直な第1方向における前記第2金属層の幅が、所定の波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、前記第2金属層が形成される、光検出素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料によって前記半導体層が形成される、請求項1に記載の光検出素子の製造方法。
【請求項3】
前記第4工程では、前記第1方向における前記第2金属層の前記幅が、0.9μm以上1.8μm以下の波長を有する光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、前記第2金属層が形成される、請求項1に記載の光検出素子の製造方法。
【請求項4】
前記第4工程では、前記厚さ方向及び前記第1方向の両方向に垂直な第2方向を長手方向として長尺状に延在するように、前記第2金属層が形成される、請求項1に記載の光検出素子の製造方法。
【請求項5】
前記第4工程では、前記第2金属層として、前記第1方向に並んだ複数の第2金属層が形成される、請求項4に記載の光検出素子の製造方法。
【請求項6】
前記第4工程では、前記厚さ方向及び前記第1方向の両方向に垂直な第2方向における前記第2金属層の幅が、前記第1方向における前記第2金属層の幅と等しくなるように、前記第2金属層が形成される、請求項1に記載の光検出素子の製造方法。
【請求項7】
前記第4工程では、前記第2金属層として、二次元状に並んだ複数の第2金属層が形成される、請求項6に記載の光検出素子の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程では、250℃以上500℃以下の温度で前記熱処理が実施される、請求項1に記載の光検出素子の製造方法。
【請求項9】
支持体と、
前記支持体上に形成された第1金属層と、
前記第1金属層上に形成された多結晶状の光電変換層と、
前記光電変換層上に形成された第2金属層と、を備え、
前記第2金属層の厚さ方向に垂直な第1方向における前記第2金属層の幅は、所定の波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となっている、光検出素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出素子の製造方法、及び光検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線領域の光に対して感度を有する光検出素子として、高コストな化合物半導体基板に代えてシリコン基板をベースとした光検出素子の研究が盛んである。そのような光検出素子として、特許文献1には、基板と、基板上に形成された第1金属層と、第1金属層上に形成された半導体構造体層と、半導体構造体層上に形成された第2金属層と、を備える光検出器であって、半導体構造体層が、量子サブバンド間遷移の光吸収を利用するものであり、プラズモン共鳴によって電子が励起されるように構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/183343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したような光検出素子には、半導体構造体層の微細な層構造を維持しながら高温高圧下で各種処理を実施する必要があり、製造工程が複雑になるという課題がある。
【0005】
本発明は、所定の波長領域の光に対して高い感度を有する光検出素子を容易に製造することができる光検出素子の製造方法、及び光検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光検出素子の製造方法は、[1]「支持体上にアモルファス状の半導体層を形成する第1工程と、前記半導体層上に第1金属層を形成する第2工程と、前記半導体層が多結晶化され且つ前記半導体層と前記第1金属層とが入れ替わるように熱処理を実施し、それにより、前記支持体上に前記第1金属層を形成すると共に、前記第1金属層上に多結晶状の光電変換層を形成する第3工程と、前記光電変換層上に第2金属層を形成する第4工程と、を備え、前記第4工程では、前記第2金属層の厚さ方向に垂直な第1方向における前記第2金属層の幅が、所定の波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、前記第2金属層が形成される、光検出素子の製造方法」である。
【0007】
上記[1]に記載の光検出素子の製造方法では、支持体上にアモルファス状の半導体層が形成され、半導体層上に第1金属層が形成された後に、半導体層が多結晶化され且つ半導体層と第1金属層とが入れ替わるように熱処理が実施される。これにより、第1金属層及び多結晶状の光電変換層がこの順序で支持体上に形成された構成を容易に得ることができる。その上で、少なくとも第1方向における第2金属層の幅が、所定の波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、光電変換層上に第2金属層が形成される。これにより、光検出素子では、所定の波長領域の光が入射すると、第1金属層と第2金属層との間で表面プラズモン共鳴が起こり、光アンテナ効果によって光電変換層での集光効率が高められ、その結果、所定の波長領域の光に対する感度が高められる。よって、上記[1]に記載の光検出素子の製造方法によれば、所定の波長領域の光に対して高い感度を有する光検出素子を容易に製造することができる。
【0008】
本発明の光検出素子の製造方法は、[2]「前記第1工程では、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料によって前記半導体層が形成される、上記[1]に記載の光検出素子の製造方法」であってもよい。当該[2]に記載の光検出素子の製造方法によれば、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料によって形成された多結晶状の光電変換層において、短波赤外線領域の光について光電変換効率を高めることができる。
【0009】
本発明の光検出素子の製造方法は、[3]「前記第4工程では、前記第1方向における前記第2金属層の前記幅が、0.9μm以上1.8μm以下の波長を有する光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、前記第2金属層が形成される、上記[1]又は[2]に記載の光検出素子の製造方法」であってもよい。当該[3]に記載の光検出素子の製造方法によれば、短波赤外線領域の光について光電変換層での集光効率を高めることができる。
【0010】
本発明の光検出素子の製造方法は、[4]「前記第4工程では、前記厚さ方向及び前記第1方向の両方向に垂直な第2方向を長手方向として長尺状に延在するように、前記第2金属層が形成される、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の光検出素子の製造方法」であってもよい。当該[4]に記載の光検出素子の製造方法によれば、所定の波長領域の光のうち第1方向を電場方向とする偏光を、第2方向に延在している第2金属層の全体において検出することが可能な光検出素子を得ることができる。
【0011】
本発明の光検出素子の製造方法は、[5]「前記第4工程では、前記第2金属層として、前記第1方向に並んだ複数の第2金属層が形成される、上記[4]に記載の光検出素子の製造方法」であってもよい。当該[5]に記載の光検出素子の製造方法によれば、所定の波長領域の光のうち第1方向を電場方向とする偏光を、第1方向及び第2方向の両方向に平行な広い領域において検出することが可能な光検出素子を得ることができる。
【0012】
本発明の光検出素子の製造方法は、[6]「前記第4工程では、前記厚さ方向及び前記第1方向の両方向に垂直な第2方向における前記第2金属層の幅が、前記第1方向における前記第2金属層の幅と等しくなるように、前記第2金属層が形成される、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の光検出素子の製造方法」であってもよい。当該[6]に記載の光検出素子の製造方法によれば、所定の波長領域の光のうち第1方向を電場方向とする偏光及び第2方向を電場方向とする偏光を検出することが可能な光検出素子を得ることができる。
【0013】
本発明の光検出素子の製造方法は、[7]「前記第4工程では、前記第2金属層として、二次元状に並んだ複数の第2金属層が形成される、上記[6]に記載の光検出素子の製造方法」であってもよい。当該[7]に記載の光検出素子の製造方法によれば、所定の波長領域の光のうち第1方向を電場方向とする偏光及び第2方向を電場方向とする偏光を、第1方向及び第2方向の両方向に平行な広い領域において検出することが可能な光検出素子を得ることができる。
【0014】
本発明の光検出素子の製造方法は、[8]「前記第3工程では、250℃以上500℃以下の温度で前記熱処理が実施される、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の光検出素子の製造方法」であってもよい。当該[8]に記載の光検出素子の製造方法によれば、半導体層の多結晶化、及び半導体層と第1金属層との入れ替えが好適に実現されるため、第1金属層及び多結晶状の光電変換層がこの順序で支持体上に形成された構成を確実に得ることができる。
【0015】
本発明の光検出素子は、[9]「支持体と、前記支持体上に形成された第1金属層と、前記第1金属層上に形成された多結晶状の光電変換層と、前記光電変換層上に形成された第2金属層と、を備え、前記第2金属層の厚さ方向に垂直な第1方向における前記第2金属層の幅は、所定の波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となっている、光検出素子」である。
【0016】
上記[9]に記載の光検出素子では、所定の波長領域の光が入射すると、第1金属層と第2金属層との間で表面プラズモン共鳴が起こり、光アンテナ効果によって光電変換層において集光効率が高められ、その結果、所定の波長領域の光に対する感度が高められる。よって、上記[9]に記載の光検出素子によれば、所定の波長領域の光を高い感度で検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所定の波長領域の光に対して高い感度を有する光検出素子を容易に製造することができる光検出素子の製造方法、及び光検出素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態の光検出素子の平面図である。
図2図1に示される光検出素子の断面図である。
図3図1に示される光検出素子の製造方法を示す図である。
図4】実施例の光検出素子による吸収波長領域のシミュレーション結果を示す図である。
図5】変形例の光検出素子の平面図である。
図6】変形例の光検出素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[光検出素子の構成]
【0020】
図1及び図2に示されるように、光検出素子1は、支持体2と、第1金属層3と、光電変換層4と、複数の第2金属層5と、一対の第1電極6と、第2電極7と、を備えている。光検出素子1は、短波赤外線領域の光(所定の波長領域の光)hνを検出するための素子である。以下、光hνの入射方向をZ方向といい、Z方向に垂直な一方向をX方向といい、Z方向及びX方向の両方向に垂直な方向をY方向という。
【0021】
支持体2は、Z方向を厚さ方向とする半導体基板である。より具体的には、支持体2は、シリコン基板21と、シリコン基板21上に形成されたシリコン酸化膜22と、を含んでいる。支持体2は、例えば、矩形板状に形成されている。シリコン基板21の厚さは、例えば、500μm程度である。シリコン酸化膜22の厚さは、例えば、1μm程度である。
【0022】
第1金属層3は、Z方向を厚さ方向としてシリコン酸化膜22上に形成されている。つまり、第1金属層3は、Z方向を厚さ方向として支持体2上に形成されている。第1金属層3の材料は、例えば、Au又はAlである。第1金属層3の厚さは、例えば、50~100nm程度である。
【0023】
光電変換層4は、Z方向を厚さ方向として第1金属層3(より具体的には、第1金属層3における支持体2とは反対側の表面)上に形成されている。光電変換層4は、第1金属層3における支持体2とは反対側の表面のうちY方向に平行な各辺に沿った領域には形成されていない。光電変換層4は、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料によって形成されたP型の多結晶状の層である。光電変換層4の厚さは、例えば、50nm程度である。なお、Si-Geは、SiとGeとの混合物であることを意味する。またし、Ge-Snは、GeとSnとの混合物であることを意味する。
【0024】
複数の第2金属層5は、Z方向を厚さ方向として光電変換層4(より具体的には、光電変換層4における第1金属層3とは反対側の表面)上に形成されている。X方向(第2金属層5の厚さ方向に垂直な第1方向)における各第2金属層5の幅は、短波赤外線領域の光hνの入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となっている。各第2金属層5は、Y方向(第2金属層5の厚さ方向及び第1方向の両方向に垂直な第2方向)を長手方向として長尺状に延在している。複数の第2金属層5は、互いに離間した状態で所定のピッチでX方向に並んでいる。各第2金属層5の材料は、例えば、Ti、Ti/Au、又はTi/Alである。なお、「α/β」との記載は、α層及びβ層がこの順序で光電変換層4上に形成された構成であることを意味する。X方向における各第2金属層5の幅は、例えば、300nm程度である。隣り合う第2金属層5の中心間距離(すなわち、ピッチ)は、例えば、600nm程度である。各第2金属層5の厚さは、例えば、100nm程度である。
【0025】
本実施形態では、第1金属層3がP型の光電変換層4とオーミック接合を成しており、各第2金属層5がP型の光電変換層4とショットキー接合を成している。これにより、ショットキーダイオードが構成されている。
【0026】
一対の第1電極6は、第1金属層3上に形成されている。各第1電極6は、第1金属層3における支持体2とは反対側の表面のうちY方向に平行な各辺に沿った領域において、Y方向に延在している。第2電極7は、光電変換層4上に形成されている。第2電極7は、光電変換層4における第1金属層3とは反対側の表面のうちX方向に平行な一辺に沿った領域において、複数の第2金属層5に掛け渡されされつつX方向に延在している。
【0027】
以上のように構成された光検出素子1では、短波赤外線領域の光hνが入射すると、光hνのうちX方向を電場方向とする偏光によって第1金属層3と各第2金属層5との間で表面プラズモン共鳴が起こり、光アンテナ効果によって光電変換層4での集光効率が高められる。そして、光電変換層4での集光効率が高められた状態で、X方向を電場方向とする偏光が光電変換層4において吸収され、光電変換層4において発生した電荷が電流信号として第2電極7から取り出される。このように、光検出素子1では、光アンテナ効果によって光電変換層4での集光効率が高められる結果、短波赤外線領域の光hνに対する感度が高められる。よって、光検出素子1によれば、短波赤外線領域の光hνを高い感度で検出することができる。
[光検出素子の製造方法]
【0028】
上述した光検出素子1の製造方法について説明する。まず、図3の(a)に示されるように、支持体2上にアモルファス状の半導体層40が形成される(第1工程)。第1工程では、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料によって半導体層40が形成される。一例として、アモルファス状の半導体層40は、RFスパッタリングによってシリコン酸化膜22上に成膜される。
【0029】
続いて、図3の(b)に示されるように、半導体層40上に第1金属層3が形成される(第2工程)。一例として、第1金属層3は、真空蒸着によって半導体層40上に成膜される。
【0030】
続いて、半導体層40が多結晶化され且つ半導体層40と第1金属層3とが入れ替わるように熱処理が実施され、それにより、図3の(c)に示されるように、支持体2上に第1金属層3が形成されると共に、第1金属層3上に多結晶状の光電変換層4が形成される(第3工程)。本実施形態では、第1金属層3の触媒効果によって、アモルファス状の半導体層40がP型の多結晶状の光電変換層4に変化する。第3工程では、250℃以上500℃以下の温度(より好ましくは、300℃以上400℃以下の温度)で熱処理が実施される。当該熱処理は、窒素等の不活性ガス雰囲気中において数時間~十数時間実施される。一例として、当該熱処理は、窒素雰囲気中において350℃の温度で12時間実施される。このような熱処理は、Metal-Induced-Crystallization(MIC)法と称される。なお、「半導体層40と第1金属層3とが入れ替わる」とは、第1金属層3が半導体層40に対して支持体2側に移動し、その結果、第1金属層3が光電変換層4に対して支持体2側に形成されることを意味する。
【0031】
続いて、図3の(d)に示されるように、光電変換層4上に複数の第2金属層5が形成される(第4工程)。第4工程では、X方向における各第2金属層5の幅が、短波赤外線領域の光hνの入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、複数の第2金属層5が形成される。換言すれば、第4工程では、X方向における各第2金属層5の幅が、0.9μm以上1.8μm以下の波長を有する光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、複数の第2金属層5が形成される。更に、第4工程では、各第2金属層5がY方向を長手方向として長尺状に延在し且つ複数の第2金属層5がX方向に並ぶように、複数の第2金属層5が形成される。一例として、複数の第2金属層5のパターニングは、電子ビーム露光法及びリフトオフ法によって実施される。
【0032】
続いて、一対の第1電極6が第1金属層3上に形成され、第2電極7が光電変換層4及び複数の第2金属層5上に形成される。以上により、光検出素子1が得られる。
【0033】
以上説明したように、光検出素子1の製造方法では、支持体2上にアモルファス状の半導体層40が形成され、半導体層40上に第1金属層3が形成された後に、半導体層40が多結晶化され且つ半導体層40と第1金属層3とが入れ替わるように熱処理が実施される。これにより、第1金属層3及び多結晶状の光電変換層4がこの順序で支持体2上に形成された構成を容易に得ることができる。その上で、X方向における各第2金属層5の幅が、短波赤外線領域の光hνの入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、光電変換層4上に複数の第2金属層5が形成される。これにより、光検出素子1では、短波赤外線領域の光hνが入射すると、光hνのうちX方向を電場方向とする偏光によって第1金属層3と各第2金属層5との間で表面プラズモン共鳴が起こり、光アンテナ効果によって光電変換層4での集光効率が高められ、その結果、短波赤外線領域の光hνに対する感度が高められる。よって、光検出素子1の製造方法によれば、短波赤外線領域の光hνに対して高い感度を有する光検出素子1を容易に製造することができる。
【0034】
なお、支持体2上に第1金属層3が形成されると共に、第1金属層3上にアモルファス状の半導体層40が形成された状態で、半導体層40が多結晶化されるように熱処理が実施されると、第1金属層3と半導体層40とが入れ替わってしまい、支持体2上に多結晶状の光電変換層4が形成されると共に、光電変換層4上に第1金属層3が形成されるおそれがある。つまり、上述した光検出素子1の製造方法以外の方法では、第1金属層3及び多結晶状の光電変換層4がこの順序で支持体2上に形成された構成を得ることは極めて困難である。
【0035】
光検出素子1の製造方法では、第1工程において、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料によって半導体層40が形成される。これにより、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料によって形成された多結晶状の光電変換層4において、短波赤外線領域の光hνについて光電変換効率を高めることができる。
【0036】
光検出素子1の製造方法では、第4工程において、X方向における各第2金属層5の幅が、0.9μm以上1.8μm以下の波長を有する光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、複数の第2金属層5が形成される。これにより、短波赤外線領域の光hνについて光電変換層4での集光効率を高めることができる。
【0037】
光検出素子1の製造方法では、第4工程において、各第2金属層5がY方向を長手方向として長尺状に延在するように、複数の第2金属層5が形成される。これにより、短波赤外線領域の光hνのうちX方向を電場方向とする偏光を、Y方向に延在している各第2金属層5の全体において検出することが可能な光検出素子1を得ることができる。
【0038】
光検出素子1の製造方法では、第4工程において、X方向に並ぶように複数の第2金属層5が形成される。これにより、短波赤外線領域の光hνのうちX方向を電場方向とする偏光を、X方向及びY方向の両方向に平行な広い領域において検出することが可能な光検出素子1を得ることができる。
【0039】
光検出素子1の製造方法では、第3工程において、250℃以上500℃以下の温度で熱処理が実施される。これにより、半導体層40の多結晶化、及び半導体層40と第1金属層3との入れ替えが好適に実現されるため、第1金属層3及び多結晶状の光電変換層4がこの順序で支持体2上に形成された構成を確実に得ることができる。
【0040】
図4は、実施例の光検出素子による吸収波長領域のシミュレーション結果を示す図である。光検出素子1による吸収波長領域は、主に、X方向における各第2金属層5の幅、及び光電変換層4の厚さによって決定される。そこで、X方向における各第2金属層5の幅を320nmとし、Geからなる光電変換層4の厚さを60nmとして、シミュレーションを行った。その結果、図4に示されるように、1.45~1.55μmの波長領域の光(X方向を電場方向とする偏光)について略100%の吸収率が得られた。
[変形例]
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、図5に示されるように、各第2金属層5は、Z方向から見た場合に正方形状に形成されていてもよい。図5に示される光検出素子1では、X方向における各第2金属層5の幅、及びY方向における各第2金属層5の幅のそれぞれが、短波赤外線領域の光hνの入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となっている。図5に示される光検出素子1では、複数の第2金属層5が、X方向を行方向とし且つY方向を列方向としてマトリックス状に並んでいる。図5に示される光検出素子1では、複数の配線7aが光電変換層4上に形成されており、Y方向に並んだ複数の第2金属層5に各配線7aが掛け渡されていることで、複数の第2金属層5が第2電極7と電気的に接続されている。
【0042】
図6に示されるように、各第2金属層5は、Z方向から見た場合に円形状に形成されていてもよい。図6に示される光検出素子1では、Z方向に垂直なあらゆる方向における幅が、短波赤外線領域の光hνの入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となっている。図6に示される光検出素子1では、複数の第2金属層5が、X方向を行方向とし且つY方向を列方向としてマトリックス状に並んでいる。図6に示される光検出素子1では、複数の配線7aが光電変換層4上に形成されており、Y方向に並んだ複数の第2金属層5に各配線7aが掛け渡されていることで、複数の第2金属層5が第2電極7と電気的に接続されている。
【0043】
図5及び図6のそれぞれに示される光検出素子1の製造方法では、第4工程において、Y方向における各第2金属層5の幅が、X方向における各第2金属層5の幅と等しくなるように、複数の第2金属層5が形成される。これにより、短波赤外線領域の光hνのうちX方向を電場方向とする偏光及びY方向を電場方向とする偏光を検出することが可能な光検出素子1を得ることができる。
【0044】
図5及び図6のそれぞれに示される光検出素子1の製造方法では、第4工程において、二次元状に並ぶように複数の第2金属層5が形成される。これにより、短波赤外線領域の光hνのうちX方向を電場方向とする偏光及びY方向を電場方向とする偏光を、X方向及びY方向の両方向に平行な広い領域において検出することが可能な光検出素子1を得ることができる。特に、図6に示される光検出素子1によれば、短波赤外線領域の光hνを、偏光依存性がない状態で(すなわち、Z方向に垂直なあらゆる方向を電場方向とする偏光に対して感度を有する状態で)広い領域において検出することが可能である。
【0045】
支持体2において、シリコン基板21上にシリコン酸化膜22が形成されていなくてもよい。支持体2は、半導体基板以外の基板等であってもよい。第1電極6及び第2電極7のそれぞれの個数、形状及び位置等は、上述したものに限定されない。
【0046】
光電変換層4は、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料以外の材料によって形成された多結晶状の層であってもよい。その場合、光検出素子1の製造方法では、Ge、Si、Si-Ge及びGe-Snのいずれかを含む材料以外の材料によって半導体層40が形成される。半導体層40及び光電変換層4の材料は、検出対象の光の波長領域によって決定される。つまり、光検出素子1は、短波赤外線領域以外の波長領域の光を検出するための素子であってもよい。
【0047】
光検出素子1は、短波赤外線領域以外の波長領域の光を検出するための素子である場合、X方向における各第2金属層5の幅は、当該波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となっていればよい。その場合、光検出素子1の製造方法では、X方向における各第2金属層5の幅が、当該波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、複数の第2金属層5が形成される。
【0048】
光検出素子1の製造方法では、半導体層40が多結晶化され且つ半導体層40と第1金属層3とが入れ替わるように熱処理が実施されれば、熱処理の温度は、250℃以上500℃以下の温度以外の温度であってもよい。半導体層40が多結晶化され且つ半導体層40と第1金属層3とが入れ替わるように熱処理が実施される際に、半導体層40の多結晶化、及び半導体層40と第1金属層3との入れ替えは、同時に進行してもよいし、時間的にずれて進行してもよい。
【0049】
上述した実施形態では、第1金属層3がP型の光電変換層4とオーミック接合を成し、各第2金属層5がP型の光電変換層4とショットキー接合を成すことで、ショットキーダイオードが構成されていたが、第1金属層3及び各第2金属層5がP型の光電変換層4とオーミック接合を成すことで、フォトコンダクタが構成されていてもよい。その場合、第1金属層3の材料は、例えば、Au又はAlが適しており、各第2金属層5の材料は、例えば、Au、Pt、Pt/Au、又はAlが適している。或いは、P型の光電変換層4における第1金属層3とは反対側の領域に、不純物ドーピングによってN型の領域が形成されることで、PN接合ダイオードが構成されていてもよい。その場合、第1金属層3の材料は、例えば、Au又はAlが適しており、各第2金属層5の材料は、例えば、Ti、Ti/Au、又はTi/Alが適している。
【0050】
光電変換層4は、N型の多結晶状の層であってもよい。光電変換層4がN型の層である場合、第1金属層3がN型の光電変換層4とオーミック接合を成し、各第2金属層5がN型の光電変換層4とショットキー接合を成すことで、ショットキーダイオードが構成されていてもよい。その場合、第1金属層3の材料は、例えば、Tiが適しており、各第2金属層5の材料は、例えば、Au、Pt、Pt/Au、又はAlが適している。或いは、第1金属層3及び各第2金属層5がN型の光電変換層4とオーミック接合を成すことで、フォトコンダクタが構成されていてもよい。その場合、第1金属層3の材料は、例えば、Tiが適しており、各第2金属層5の材料は、例えば、Ti、Ti/Au、又はTi/Alが適している。或いは、N型の光電変換層4における第1金属層3とは反対側の領域に、不純物ドーピングによってP型の領域が形成されることで、PN接合ダイオードが構成されていてもよい。その場合、第1金属層3の材料は、例えば、Tiが適しており、各第2金属層5の材料は、例えば、Au、Pt、Pt/Au、又はAlが適している。
【0051】
いずれの光検出素子1においても、光電変換層4上に少なくとも一つの第2金属層5が形成されていればよい。また、いずれの光検出素子1の製造方法においても、少なくとも一方向(第2金属層5の厚さ方向に垂直な第1方向)における第2金属層5の幅が、所定の波長領域の光の入射によって表面プラズモン共鳴が起こる幅となるように、少なくとも一つの第2金属層5が形成されればよい。
【符号の説明】
【0052】
1…光検出素子、2…支持体、3…第1金属層、4…光電変換層、5…第2金属層、40…半導体層。

図1
図2
図3
図4
図5
図6