(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082800
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240613BHJP
G06Q 50/22 20240101ALI20240613BHJP
【FI】
G16H50/30
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196905
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼野 淳
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA11
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】日常生活動作に関する予測値と、医療介護費とのうちの少なくとも一方の予測精度を向上させることが可能である予測装置、予測方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】予測装置は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する取得部と、ビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する予測部とを備える。人の健康に基づく値は、例えば、身体機能予後に関する値、生命予後に関する値、介護負担に関する値、緩和ケアサービスの必要性に関する値、及び、個人又は地域の医療費に関する値である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する取得部と、
前記ビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する予測部と
を備える予測装置。
【請求項2】
前記人の健康に基づく値は、身体機能予後に関する値と、生命予後に関する値と、介護負担に関する値と、緩和ケアサービスの必要性に関する値と、個人又は地域の医療費に関する値とのうちの少なくとも一つである、請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
予測装置が実行する予測方法であって、
医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得するステップと、
前記ビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測するステップと
を備える予測方法。
【請求項4】
コンピュータに、
医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する手順と、
前記ビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する手順と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測装置、予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レセプト情報及び特定健診等情報データベース(NDB: National DateBase)が、医療データベースの一つとして、厚生労働省から提供されている。「レセプト」とは、診療報酬明細書である。また、「特定健診」とは、メタボリックシンドロームに着目した健診である。また、NDBにはオープンデータが存在する。NDBオープンデータには所定の形式で匿名加工された個人情報も含まれているが、NDBオープンデータは日本の医療ビックデータとして活用されるようになった。
【0003】
諸外国における医療データベースとしては、例えば、台湾の「PHR(Personal Health Record)」及び「EMR(Electronic Medical Record)」と、フィンランドの「Finnish National Archive of Health Information (Kanta)」と、英国の「NHS(National Health Service) Digital」及び「CPRD(Clinical Practice Research Datalink)」と、米国の「CMS(Centers for Medicare & Medicaid Services) data」とがある。更に、米国では民間のデータベース(例えば、がん研究に特化された匿名化データベース)も広く利用されている。
【0004】
また、血液検査データ、心拍数、呼吸数及び身体症状等に基づいて進行がん患者の生命予後を医師等が予測する方法が、非特許文献1に開示されている。更に、対象者の身体機能予後を医師等が予測する方法が、非特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hamano J, Takeuchi A, Yamaguchi T, et al., "A combination of routine laboratory findings and vital signs can predict survival of advanced cancer patients without physician evaluation: a fractional polynomial model," Eur J Cancer. 2018 Dec;105:50-60. doi: 10.1016/j.ejca.2018.09.037.
【非特許文献2】Hiratsuka Y, Yamaguchi T, Maeda I, et al., "The Functional Palliative Prognostic Index: a scoring system for functional prognostication of patients with advanced cancer," Support Care Cancer. 2020 Dec;28(12):6067-6074. doi: 10.1007/s00520-020-05408-x.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医療ビックデータと介護ビックデータとは、いずれも膨大なデータであることから、人では一部のデータしか扱うことができない。このため、医師は、対象者の健康に基づく値(例えば、身体機能予後の確率、生命予後の確率)を、その対象者の膨大なデータのうちの一部のデータに基づいて予測している。その結果、日常生活動作に関する予測値の予測精度が高くないという問題がある。
【0007】
また、保険会社又は行政機関等の所定の担当者は、所定の対象者の健康に基づく値(例えば、介護負担に関する値、緩和ケアサービスの必要性に関する値、今後の医療費)を、その対象者の膨大なデータのうちの一部のデータに基づいて予測している。その結果、医療介護費の予測精度が高くないという問題がある。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、日常生活動作に関する予測値と、医療介護費とのうちの少なくとも一方の予測精度を向上させることが可能である予測装置、予測方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する取得部と、前記ビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する予測部とを備える予測装置である。
【0010】
本発明の一態様は、予測装置が実行する予測方法であって、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得するステップと、前記ビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測するステップとを備える予測方法である。
【0011】
本発明の一態様は、コンピュータに、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する手順と、前記ビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する手順とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、日常生活動作に関する予測値と、医療介護費とのうちの少なくとも一方の予測精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態における、予測装置の構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態における、身体機能予後の予測例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における、学習部の学習処理の例を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態における、予測部の予測処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】第3実施形態における、介護負担の予測例を示す図である。
【
図6】第5実施形態における、個人の医療費の予測例を示す図である。
【
図7】第5実施形態における、地域の医療費の予測例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
以下では、医療データベースは特定のデータベースに限定されないが、医療データベースの一例として「NDB」を用いて、各実施形態の予測装置を説明する。第1実施形態では、NDBオープンデータと、介護データベースオープンデータとのうちの少なくとも一方に基づいて、予測装置が、対象者の身体機能予後(個人(患者)の日常生活動作の変化)を予測する。NDBオープンデータと、介護データベースオープンデータとのうちの少なくとも一方は、例えば、所定の行政機関から提供される。
【0015】
身体機能予後とは、所定の期間内(例えば、今後の1年間、今後の2年間など)に、予め定められた日常生活動作を対象者が自立して行えていること、又は、行えていることの確率(予測値)である。予め定められた日常生活動作とは、例えば、入浴、更衣、トイレ、移動、排泄コントロール及び食事などである。
【0016】
図1は、第1実施形態における、予測装置1の構成例を示す図である。予測装置1は、人の健康に基づく値を予測する装置である。第1実施形態において、人の健康に基づく値とは、例えば、身体機能予後に関する値(例えば、予め定められた日常生活動作を対象者が自立して行えていることの確率)である。
【0017】
予測装置1は、処理部11と、メモリ12と、記憶装置13と、通信部14と、操作部15とを備える。処理部11は、取得部111と、学習部112と、予測部113とを備える。
【0018】
不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)を有する記憶装置13に記憶されたプログラム(コンピュータプログラム)がメモリ12に展開され、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する処理部11がプログラムを実行することにより、予測装置1の各機能部のうちの一部又は全部がソフトウェアとして実現される。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、及び、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD : Solid State Drive)等の記憶装置などの非一時的な記録媒体である。プログラムは、通信回線を経由して取得されてもよい。プログラムは、クラウド技術を用いて、複数の予測装置1によって実行されてもよい。
【0019】
予測装置1の各機能部のうちの一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integrated circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた電子回路(electronic circuit 又は circuitry)を含むハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0020】
予測装置1の起動時に、プログラムがメモリ12に記憶装置13から展開される。記憶装置13は、所定のデータ及びプログラムを記憶する。所定のデータとは、例えば、医療ビックデータ(例えば、NDBオープンデータ)と、介護ビックデータ(例えば、介護データベースオープンデータ)とのうちの少なくとも一方である。記憶装置13は、ニューラルネットワークを有する学習モデル(学習済モデル)を記憶してもよい。記憶装置13は、解析用の数式を用いて表現される所定の解析モデルを記憶してもよい。数式は、例えば、所定のデータにおける説明変数(調整変数)及び目的変数(アウトカム変数)に基づく統計処理の数式として、予め定められる。
【0021】
通信部14は、医療ビックデータ(例えば、NDBオープンデータ)と、介護ビックデータ(例えば、介護データベースオープンデータ)とのうちの少なくとも一方を、外部の記憶装置(不図示)から取得する。通信部14は、処理部11による処理結果を、外部の情報処理装置(不図示)に送信してもよい。
【0022】
操作部15は、ユーザによる操作を受け付ける。操作部15は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルである。操作部15は、受け付けた操作に応じた信号を、処理部11に出力する。取得部111は、医療ビックデータと介護ビックデータとのうちの少なくとも一方を、記憶装置13から取得する。
【0023】
学習処理を実行する段階(学習段階)において、学習部112は、機械学習の手法(例えば、深層学習、教師あり学習)を用いて、例えば、ニューラルネットワークを有する学習モデルを生成する。ここで、学習部112は、例えば誤差逆伝播法を用いて、ニューラルネットワークのパラメータを更新する。学習部112は、説明変数を入力とし目的変数を出力とする軌跡解析(trajectory analysis)モデルを生成してもよい。
【0024】
予測処理を実行する段階(推論段階)において、予測部113は、学習部112によって生成された学習モデルに説明変数(調整変数)を入力することによって、目的変数(アウトカム変数)を学習モデルから取得する。予測部113は、学習部112によって生成された軌跡解析モデルに説明変数を入力することによって、目的変数を軌跡解析モデルから取得してもよい。
【0025】
第1実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、NDBオープンデータにおける、医科診療報酬点数表項目、薬剤データ、特定健診検査項目、及び、特定健診質問票項目等に関するデータのうちの少なくとも一つである。
【0026】
第1実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、介護データベースオープンデータにおける、一次判定結果、一次判定結果(認知症加算)、二次判定結果、第1群身体機能・起居動作、第2群生活機能、第3群認知機能、第4群精神・行動障害、第5群社会生活への適応、及び、過去14日間に受けた特別な医療等に関するデータのうちの少なくとも一つでもよい。
【0027】
第1実施形態において、目的変数(アウトカム変数)は、例えば、介護データベースオープンデータにおける、第1群身体機能・起居動作、第2群生活機能、第3群認知機能、第4群精神・行動障害、及び、第5群社会生活への適応等に関するデータのうちの少なくとも一つである。
【0028】
図2は、第1実施形態における、身体機能予後の予測例を示す図である。目的変数グラフ201は、目的変数「いつまで自分で歩けるか」を表すグラフである。目的変数グラフ202「いつまで自分でトイレができるか」を表すグラフである。横軸は、時間を示す。縦軸は、確率(身体機能予後に関する予測値)を示す。
【0029】
予測部113は、学習部112によって生成された第1学習モデルに所定の説明変数群101を入力することによって、目的変数グラフ201の目的変数を学習モデルから取得する。予測部113は、学習部112によって生成された第2学習モデルに所定の説明変数群101を入力することによって、目的変数グラフ202の目的変数を学習モデルから取得してもよい。
【0030】
予測部113は、学習部112によって生成された所定の解析モデルに説明変数群を入力することによって、目的変数グラフ201又は目的変数グラフ202の目的変数を所定の解析モデルから取得してもよい。
【0031】
次に、予測装置1の動作例を説明する。
図3は、第1実施形態における、学習部112の学習処理の例を示すフローチャートである。学習処理を実行する段階において、取得部111は、医療及び介護(医療ビックデータ及び介護ビックデータ)のうちの少なくとも一方に関する学習データを、説明変数に相当する学習データとして、記憶装置13から取得する。取得部111は、人の健康に基づく値を、目的変数に相当する正解ラベルとして、記憶装置13から取得する(ステップS101)。
【0032】
学習部112は、説明変数に相当する学習データと、人の健康に基づく値(正解ラベル)とに基づいて、機械学習の手法を用いて、学習モデルのパラメータを更新する(ステップS102)。
【0033】
図4は、第1実施形態における、予測部113の予測処理の例を示すフローチャートである。予測処理を実行する段階(推論段階)において、取得部111は、医療及び介護に関するビックデータを、記憶装置13から取得する(ステップS201)。予測部113は、医療及び介護に関するビックデータに基づいて、人の日常生活動作に基づく値(例えば、身体機能予後の確率)を予測する(ステップS202)。
【0034】
以上のように、取得部111は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータ(医療ビックデータ及び介護ビックデータのうちの少なくとも一方)を取得する。予測部113は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータに基づいて、人の健康に基づく値(例えば、確率)を予測する。例えば、予測装置1は、医療ビックデータ及び介護ビックデータのうちの少なくとも一方に基づいて、人の健康に基づく値として、身体機能予後の確率を予測する。
【0035】
これによって、日常生活動作(身体機能予後)に関する予測値の予測精度を向上させることが可能である。
【0036】
血液検査データ、心拍数、呼吸数及び身体症状を取得できる患者が、一部の患者に限定されることがある。このような場合でも、医療及び介護を受けた全ての患者が登録されているデータベースから入手できるデータに基づいて予測装置1が予測を実行するので、より多くの患者に技術を活用することができる。また、予測装置1は客観的な予測結果を示すことができる。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態では、生命予後を予測する点が、第1実施形態との主な差分である。第2実施形態では、第1実施形態との差分を中心に説明する。
【0038】
第2実施形態において、人の健康に基づく値とは、例えば、生命予後に関する値である。生命予後に関する値とは、例えば、期間内(例えば、今後の1年間、今後の2年間など)に対象者が死亡する確率である。
【0039】
第2実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、NDBオープンデータにおける、医科診療報酬点数表項目、薬剤データ、特定健診検査項目、及び、特定健診質問票項目等に関するデータのうちの少なくとも一つである。
【0040】
第2実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、介護データベースオープンデータにおける、一次判定結果、一次判定結果(認知症加算)、二次判定結果、第1群身体機能・起居動作、第2群生活機能、第3群認知機能、第4群精神・行動障害、第5群社会生活への適応、及び、過去14日間に受けた特別な医療等に関するデータのうちの少なくとも一つでもよい。
【0041】
第2実施形態において、目的変数(アウトカム変数)は、例えば、介護データベースオープンデータにおける認定申請日を起算日として、NDBオープンデータにおける、医科診療報酬点数表項目のC(在宅医療、在宅療養指導管理材料加算、並びに、在宅医療(加算)の看取り加算及び死亡診断加算)に基づいて同定された死亡日等に関するデータである。
【0042】
以上のように、取得部111は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する。予測部113は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する。例えば、予測装置1は、医療ビックデータ及び介護ビックデータのうちの少なくとも一方に基づいて、人の健康に基づく値として、生命予後に関する値を予測する。
【0043】
ここで、学習部112は、対象者の生存時間(目的変数)の解析モデルを、時間依存性の共変量(説明変数)に基づいて生成してもよい。また、予測部113は、学習部112によって生成された生存時間解析モデルに説明変数を入力することによって、対象者の生存時間(目的変数)を生存時間解析モデルから取得してもよい。
【0044】
これによって、日常生活動作(生命予後)に関する予測値の予測精度を向上させることが可能である。
【0045】
(第3実施形態)
第3実施形態では、介護負担を予測する点が、第1実施形態及び第2実施形態との主な差分である。第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態との差分を中心に説明する。
【0046】
第3実施形態において、人の健康に基づく値とは、例えば、介護負担に関する値である。介護負担に関する値とは、例えば、所定の期間内(例えば、今後の1年間、今後の2年間など)に、要介護「3」相当以上の介護の必要が対象者に生じる確率である。
【0047】
第3実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、NDBオープンデータにおける、医科診療報酬点数表項目、薬剤データ、特定健診検査項目、及び、特定健診質問票項目等に関するデータのうちの少なくとも一つである。
【0048】
第3実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、介護データベースオープンデータにおける、一次判定結果、一次判定結果(認知症加算)、二次判定結果、第1群身体機能・起居動作、第2群生活機能、第3群認知機能、第4群精神・行動障害、第5群社会生活への適応、及び、過去14日間に受けた特別な医療等に関するデータのうちの少なくとも一つでもよい。
【0049】
第3実施形態において、目的変数(アウトカム変数)は、例えば、介護データベースオープンデータにおける、要介護認定等基準時間(12区分)、第1群身体機能・起居動作、第2群生活機能、第3群認知機能、第4群精神・行動障害、及び、第5群社会生活への適応等に関するデータのうちの少なくとも一つである。
【0050】
図5は、第3実施形態における、介護負担の予測例を示す図である。目的変数グラフ203は、目的変数「歩くために介助が必要な患者数」を表すグラフである。目的変数グラフ204は、目的変数「トイレのために介助が必要な患者数」を表すグラフである。横軸は、時間を示す。縦軸は、人数(介護負担に関する予測値)を示す。
【0051】
予測部113は、学習部112によって生成された学習モデルに所定の説明変数群102と説明変数群103と説明変数群104とのうちの少なくとも一つを入力することによって、目的変数グラフ203の目的変数を学習モデルから取得する。予測部113は、学習部112によって生成された学習モデルに所定の説明変数群102と説明変数群103と説明変数群104とのうちの少なくとも一つを入力することによって、目的変数グラフ204の目的変数を学習モデルから取得してもよい。
【0052】
予測部113は、学習部112によって生成された所定の解析モデルに説明変数群を入力することによって、目的変数グラフ203又は目的変数グラフ204の目的変数を、所定の解析モデルから取得してもよい。
【0053】
以上のように、取得部111は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する。予測部113は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する。例えば、予測装置1は、医療ビックデータ及び介護ビックデータのうちの少なくとも一方に基づいて、介護負担を予測する。
【0054】
これによって、日常生活動作に関する予測値と、医療介護費(介護負担)とのうちの少なくとも一方の予測精度を向上させることが可能である。
【0055】
第3実施形態において、地域の医科診療報酬点数表項目、薬剤データ、介護保険一次判定調査、及び、二次判定結果のデータを用いて、当該地域において日常生活動作の能力が低下する患者数(地域ごとの介護負担に関する値)を、予測装置1が予測してもよい。
【0056】
(第4実施形態)
第4実施形態では、緩和ケアサービスの必要性を予測する点が、第1実施形態から第3実施形態までとの主な差分である。第3実施形態では、第1実施形態から第3実施形態までとの差分を中心に説明する。
【0057】
第4実施形態において、人の健康に基づく値とは、例えば、緩和ケアサービスの必要性に関する値である。緩和ケアサービスの必要性に関する値とは、例えば、所定の期間内(例えば、今後の6か月内、今後の1年間、今後の2年間など)に、専門的緩和ケア(訪問診療、緩和ケア病棟入院、及び、緩和ケアチーム診療)が対象者に必要となる確率である。
【0058】
第4実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、NDBオープンデータにおける、医科診療報酬点数表項目、薬剤データ、特定健診検査項目、及び、特定健診質問票項目等に関するデータのうちの少なくとも一つである。
【0059】
第4実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、介護データベースオープンデータにおける、一次判定結果、一次判定結果(認知症加算)、二次判定結果、第1群身体機能・起居動作、第2群生活機能、第3群認知機能、第4群精神・行動障害、第5群社会生活への適応、及び、過去14日間に受けた特別な医療等に関するデータのうちの少なくとも一つでもよい。
【0060】
第4実施形態において、目的変数(アウトカム変数)は、例えば、NDBオープンデータにおける、医科診療報酬点数表項目のA(初・再診料、初・再診料(加算)、入院基本料、入院基本料(加算)、入院基本料等加算、入院基本料等加算(加算)、特定入院料、特定入院料(加算)、及び、短期滞在手術等基本料)、B(医学管理等、及び、医学管理等(加算))、及び、C(在宅医療、在宅療養指導管理材料加算、及び、在宅医療(加算))等に関するデータのうちの少なくとも一つである。
【0061】
以上のように、取得部111は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する。予測部113は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する。例えば、予測装置1は、医療ビックデータ及び介護ビックデータのうちの少なくとも一方に基づいて、緩和ケアサービスの必要性を予測する。
【0062】
これによって、日常生活動作(緩和ケアサービスの必要性)に関する予測値の予測精度を向上させることが可能である。
【0063】
(第5実施形態)
第5実施形態では、個人又は地域の今後の医療費を予測する点が、第1実施形態から第4実施形態までとの主な差分である。第5実施形態では、第1実施形態から第4実施形態までとの差分を中心に説明する。
【0064】
第5実施形態において、人の健康に基づく値とは、例えば、個人又は地域の今後の医療費(例えば、対象者の死亡前までの医療介護費)である。
【0065】
第5実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、NDBオープンデータにおける、医科診療報酬点数表項目、薬剤データ、特定健診検査項目、及び、特定健診質問票項目等に関するデータのうちの少なくとも一つである。
【0066】
第5実施形態において、説明変数(調整変数)は、例えば、介護データベースオープンデータにおける、一次判定結果、一次判定結果(認知症加算)、二次判定結果、第1群身体機能・起居動作、第2群生活機能、第3群認知機能、第4群精神・行動障害、第5群社会生活への適応、及び、過去14日間に受けた特別な医療等に関するデータのうちの少なくとも一つでもよい。
【0067】
第5実施形態において、目的変数(アウトカム変数)は、例えば、NDBオープンデータにおける、医科診療報酬点数表項目、及び、薬剤データのうちの少なくとも一つである。第5実施形態において、目的変数は、例えば、介護データベースオープンデータにおける、二次判定結果等に関するデータでもよい。
【0068】
図6は、第5実施形態における、個人の医療費の予測例を示す図である。目的変数グラフ205は、目的変数「毎月の医療・介護費用」を表すグラフである。予測部113は、学習部112によって生成された学習モデルに所定の説明変数群105を入力することによって、目的変数グラフ205の目的変数を、学習モデルから取得する。予測部113は、学習部112によって生成された所定の解析モデルに説明変数群105を入力することによって、目的変数グラフ205の目的変数を、所定の解析モデルから取得してもよい。
【0069】
図7は、第5実施形態における、地域の医療費の予測例を示す図である。目的変数グラフ206は、目的変数「地域の医療・介護費用」を表すグラフである。予測部113は、学習部112によって生成された学習モデルに所定の説明変数群106と説明変数群107と説明変数群108とのうちの少なくとも一つを入力することによって、目的変数グラフ205の目的変数を、学習モデルから取得する。予測部113は、学習部112によって生成された所定の解析モデルに説明変数群106と説明変数群107と説明変数群108とのうちの少なくとも一つを入力することによって、目的変数グラフ205の目的変数を、所定の解析モデルから取得してもよい。
【0070】
以上のように、取得部111は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータを取得する。予測部113は、医療及び介護のうちの少なくとも一方に関するビックデータに基づいて、人の健康に基づく値を予測する。例えば、予測装置1は、医療ビックデータ及び介護ビックデータのうちの少なくとも一方に基づいて、個人又は地域の医療介護費(今後の医療費)を予測する。予測装置1は、医療ビックデータ及び介護ビックデータのうちの少なくとも一方に基づいて、日常生活動作に関する値を予測してもよい。
【0071】
これによって、日常生活動作に関する予測値と、医療介護費(今後の医療費)とのうちの少なくとも一方の予測精度を向上させることが可能である。
【0072】
第5実施形態において、予測装置1が医療・介護費用を推定し、地域の自治体などが、当該地域の予測結果に基づいて、適切な医療・介護計画を策定してもよい。
【0073】
上記の各実施形態において、DPC(診断(Diagnosis)と治療(Procedure)との組み合わせ(Combination))データベース、予防接種データベース、及び、次世代医療基盤データベース等と、予測装置1とが連結されることで、予測装置1は、様々な健康問題の発生を予測してもよい。例えば、顧客の様々な健康問題の発生(介護・死亡リスク)を予測装置1が推定し、生命保険会社の担当者等が、予測結果に基づいて、適切な保険料を顧客ごとに設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、人の健康に基づく値(例えば、身体機能予後の確率、及び、個人又は地域の今後の医療費)を予測する装置に適用可能である。
【0075】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…予測装置、11…処理部、12…メモリ、13…記憶装置、14…通信部、15…操作部、101…説明変数群、102…説明変数群、103…説明変数群、104…説明変数群、105…説明変数群、106…説明変数群、107…説明変数群、108…説明変数群、111…取得部、112…学習部、113…予測部、201…目的変数グラフ、202…目的変数グラフ、203…目的変数グラフ、204…目的変数グラフ、205…目的変数グラフ、206…目的変数グラフ