(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082808
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】シャワーシステム、及びそれを備えた浴室システム、シャワー室システム
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20240613BHJP
A47K 4/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A47K3/28
A47K4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196916
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 遼太
(72)【発明者】
【氏名】林 信宏
(72)【発明者】
【氏名】中道 俊一
(72)【発明者】
【氏名】黒石 正宏
(72)【発明者】
【氏名】浮貝 清岳
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132FA02
2D132FA07
2D132FB01
2D132FB02
2D132FC01
2D132FC04
2D132FD01
2D132FD02
2D132FH11
2D132GA11
(57)【要約】
【課題】電波式レーダを使用して、シャワー吐水中においても使用者の動作の誤検出を抑制することができるシャワーシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、シャワーシステム(1)であって、室(2)内の側壁面(2b)又は天井壁面(2a)に固定され、下方に向けてシャワー吐水を行う固定シャワーヘッド(6a)と、室内に電波を照射し、シャワーシステムの使用者によって反射された電波を受信する電波式レーダ(14)と、この電波式レーダによって検出された信号に基づいて、室内に設定された所定の検出空間(22)内におけるシャワーシステムの使用者の動作を検出し、検出された使用者の動作に基づいて固定シャワーヘッドからの吐水を制御する制御部(16)と、を有し、電波式レーダは、固定シャワーヘッドからのシャワー吐水を浴びている使用者の動作を、シャワー吐水と識別できるように、検出空間に電波を入射させることを特徴としている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設置されるシャワーシステムであって、
上記室内の側壁面又は天井壁面に固定され、下方に向けてシャワー吐水を行う固定シャワーヘッドと、
上記室内に電波を照射し、上記シャワーシステムの使用者によって反射された電波を受信する電波式レーダと、
この電波式レーダによって検出された信号に基づいて、上記室内に設定された所定の検出空間内における上記シャワーシステムの使用者の動作を検出し、検出された使用者の動作に基づいて上記固定シャワーヘッドからの吐水を制御する制御部と、
を有し、
上記電波式レーダは、上記固定シャワーヘッドからのシャワー吐水を浴びている使用者の動作を、シャワー吐水と識別できるように、上記検出空間に電波を入射させることを特徴とするシャワーシステム。
【請求項2】
上記電波式レーダは、照射した電波を反射した対象物の速度を検出可能に構成されており、上記電波式レーダは、シャワー吐水によって反射された電波から検出される速度と、上記使用者によって反射された電波から検出される速度の差が大きくなるように、上記検出空間に電波を入射させる請求項1記載のシャワーシステム。
【請求項3】
上記電波式レーダは、上記固定シャワーヘッドから吐出されたシャワー吐水の流れる方向に対して、照射される電波の中心線が傾斜するように電波を照射する請求項1又は2に記載のシャワーシステム。
【請求項4】
上記電波式レーダは、照射される電波の中心線が、上記室の側壁面に対して傾斜するように、側壁面に取り付けられている請求項1又は2に記載のシャワーシステム。
【請求項5】
上記電波式レーダは、照射される電波の中心線が、斜め下方に向けられるように設置されている請求項1又は2に記載のシャワーシステム。
【請求項6】
側壁面、天井壁面、及び床面を備えた浴室と、
この浴室内に配置された浴槽と、
請求項1又は2に記載のシャワーシステムと、
を有することを特徴とする浴室システム。
【請求項7】
側壁面、天井壁面、及び床面を備えたシャワー室と、
請求項1又は2に記載のシャワーシステムと、
を有することを特徴とするシャワー室システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーシステムに関し、特に、室内に設置されるシャワーシステム、及びそれを備えた浴室システム、シャワー室システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平11-338614号公報(特許文献1)には、操作入力装置が記載されている。この操作入力装置は、浴室内の浴室リモコンに内蔵された撮像部により、入浴者の画像を取り込んで、入浴者の動作を認識している。そして、認識された入浴者の動作パターンが、予め登録されている動作パターンと一致した場合に、操作信号を浴室リモコンや、シャワー装置に出力し、これらを作動させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の操作入力装置では、入浴中の入浴者の画像が取得されるため、操作入力装置から画像情報が窃取された場合、入浴者のプライバシーが侵害される虞がある。このため、特許文献1記載の操作入力装置では、入浴者に潜在的な不安感を与えてしまうという問題がある。
【0005】
また、入浴者に潜在的な不安感を与えないように、入浴者の画像を取得するのではなく、電波を使用して入浴者の動作を検出することも考えられる。しかしながら、電波は、シャワー吐水にも反応してしまうため、シャワーが使用される可能性のある浴室内等での動作の検出に利用した場合、誤検知を起こす可能性が高い。
【0006】
従って、本発明は、電波式レーダを使用して、シャワー吐水中においても使用者の動作の誤検出を抑制することができるシャワーシステム、及びそれを備えた浴室システム、シャワー室システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、室内に設置されるシャワーシステムであって、室内の側壁面又は天井壁面に固定され、下方に向けてシャワー吐水を行う固定シャワーヘッドと、室内に電波を照射し、シャワーシステムの使用者によって反射された電波を受信する電波式レーダと、この電波式レーダによって検出された信号に基づいて、室内に設定された所定の検出空間内におけるシャワーシステムの使用者の動作を検出し、検出された使用者の動作に基づいて固定シャワーヘッドからの吐水を制御する制御部と、を有し、電波式レーダは、固定シャワーヘッドからのシャワー吐水を浴びている使用者の動作を、シャワー吐水と識別できるように、検出空間に電波を入射させることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、シャワー吐水を行う固定シャワーヘッドが室内の側壁面又は天井壁面に固定されている。また、電波式レーダは、室内に電波を照射し、シャワーシステムの使用者によって反射された電波を受信する。制御部は、室内に設定された所定の検出空間内におけるシャワーシステムの使用者の動作を検出し、検出された使用者の動作に基づいて固定シャワーヘッドからの吐水を制御する。
【0009】
一般に、電波式レーダから射出される電波は、室内に固定された固定シャワーヘッドから吐出されるシャワー吐水によっても反射される。このため、シャワー吐水中において、使用者の動作を電波式レーダによって検出しようとすると、シャワー吐水によって反射された電波により、誤検出が発生しやすくなる。本件発明者は、使用者の動作を検出する所定の検出空間内への電波の入射のさせ方により、シャワー吐水によって反射された電波と、使用者によって反射された電波が識別しやすくなることを見出した。上記のように構成された本発明によれば、シャワーを浴びている使用者の動作を、シャワー吐水と識別できるように検出空間に電波を入射させるので、使用者がシャワーを使用中であっても使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、電波式レーダは、照射した電波を反射した対象物の速度を検出可能に構成されており、電波式レーダは、シャワー吐水によって反射された電波から検出される速度と、使用者によって反射された電波から検出される速度の差が大きくなるように、検出空間に電波を入射させる。
【0011】
このように構成された本発明によれば、シャワー吐水から検出される速度と、使用者から検出される速度の差が大きくなるように、検出空間に電波を入射させるので、シャワー吐水によって反射された電波と使用者によって反射された電波が識別しやすくなり、使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、電波式レーダは、固定シャワーヘッドから吐出されたシャワー吐水の流れる方向に対して、照射される電波の中心線が傾斜するように電波を照射する。
【0013】
シャワー吐水の流れる方向に対して中心線が直角になるように電波を照射した場合、反射された中心線上の電波によって検出される速度はほぼゼロとなる。このため、シャワーを浴びている静止した使用者とシャワー吐水を反射波によって識別することは困難になる。上記のように構成された本発明によれば、シャワー吐水の流れる方向に対して中心線が傾斜するように電波が照射されるので、シャワー吐水が落下する速度を反射波により検出しやすくなる。この結果、静止又はゆっくりと動いている使用者とシャワー吐水を、反射波により識別しやすくなり、使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、電波式レーダは、照射される電波の中心線が、室の側壁面に対して傾斜するように、側壁面に取り付けられている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、照射される電波の中心線が側壁面に対して傾斜しているので、側壁面とほぼ平行に落下するシャワー吐水に電波の中心線が傾斜した状態で入射し、シャワー吐水が落下する速度を反射波により検出しやすくなる。この結果、静止又はゆっくりと動いている使用者とシャワー吐水を、反射波により識別しやすくなり、使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、電波式レーダは、照射される電波の中心線が、斜め下方に向けられるように設置されている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、照射される電波の中心線が斜め下方に向けられるので、使用者とシャワー吐水を反射波により容易に識別できると共に、電波式レーダから照射される電波により室内の床面全体をカバーしやすく、室内に居る使用者を、より広い範囲で検出することができる。
【0018】
また、本発明は、浴室システムであって、側壁面、天井壁面、及び床面を備えた浴室と、この浴室内に配置された浴槽と、本発明のシャワーシステムと、を有することを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、シャワー室システムであって、側壁面、天井壁面、及び床面を備えたシャワー室と、本発明のシャワーシステムと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシャワーシステム、及びそれを備えた浴室システム、シャワー室システムによれば、電波式レーダを使用して、シャワー吐水中においても使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態のシャワーシステムが備えられた浴室内を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のシャワーシステムが備えられた浴室、及び浴室に隣接する脱衣室を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態のシャワーシステムにおいて、側壁面に設けられたシャワー装置の正面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態のシャワーシステムにおいて、側壁面に設けられたターゲット指示部を拡大して示す図である。
【
図5A】本発明の第1実施形態のシャワーシステムにおいて、電波式レーダの側壁面への取付構造を示す断面図である。
【
図5B】電波式レーダの側壁面への取付構造の変形例を示す断面図である。
【
図5C】電波式レーダの側壁面への取付構造の変形例を示す断面図である。
【
図5D】電波式レーダの側壁面への取付構造の変形例を示す断面図である。
【
図5E】電波式レーダの側壁面への取付構造の変形例を示す断面図である。
【
図5F】電波式レーダの側壁面への取付構造の変形例を示す断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態のシャワーシステムにおいて、電波式レーダによって受信された電波の強度分布の一例を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態のシャワーシステムにおいて、電波式レーダによって受信された電波のドップラー速度の分布の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態のシャワーシステムにおいて、電波式レーダによって検出された点群の一例を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態のシャワーシステムにおいて、電波式レーダからの電波の照射方向、及び取得されたドップラー速度の一例を示す図である。
【
図10】比較例による電波式レーダからの電波の照射方向、及び取得されたドップラー速度の一例を示す図である。
【
図11】本発明の第1実施形態のシャワーシステムに備えられた制御部において実行される処理を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第1実施形態のシャワーシステムにおいて、浴室内に設定されている吐水空間及び検出空間、照射される電波の方向を示す側面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態によるシャワーシステム、及びそれを備えたシャワー室システムを示す斜視図である。
【
図14】本発明の第3実施形態によるシャワーシステム、及びそれを備えたシャワー室システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態によるシャワーシステム、及びそれを備えた浴室システムを説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のシャワーシステムが備えられた浴室内を示す斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態のシャワーシステムが備えられた浴室、及び浴室に隣接する脱衣室を示す平面図である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のシャワーシステム1が備えられた浴室2内には、浴槽4と、シャワー装置6と、浴室2の側壁面2bに設けられたシャワーバー8と、側壁面2bに固定された鏡10及び浴室カウンター12が設置されている。また、シャワー装置6の固定シャワーヘッド6aは、オーバーヘッドシャワーとして、浴室2の天井壁面2aに固定されている。さらに、浴室2の側壁面2bには、浴室2に電波を照射する電波式レーダ14と、電波式レーダ14によって検出された信号に基づいてシャワー装置6による吐水を制御する制御部16が設けられている。また、浴室2に隣接して隣接室である脱衣室18(
図2)が設けられ、扉18aを介して脱衣室18から浴室2に入室できるようになっている。なお 、本明細書において「固定シャワーヘッド」とは、シャワーヘッド又はシャワーヘッドを支持する配管が天井壁面や側壁面に固定されているシャワーヘッドを意味し、吐水方向が固定されているシャワーヘッドばかりでなく、吐水方向が変更可能なシャワーヘッドも含む。
【0024】
ここで、シャワー装置6の固定シャワーヘッド6a、電波式レーダ14、及び制御部16は、本実施形態のシャワーシステム1を構成する。また、シャワーシステム1、浴室2及び浴槽4は、本実施形態の浴室システムを構成する。
【0025】
浴室2は、天井壁面2a、4つの側壁面2b、2c、2d、2e、及び床面2fから構成された室である。上記のように、天井壁面2aには、オーバーヘッドシャワーとして固定シャワーヘッド6aが固定されている。また、浴室2の1つの側壁面2bには、シャワーバー8、鏡10、及び浴室カウンター12が取り付けられている。また、側壁面2bの裏側には、電波式レーダ14、及び制御部16が設けられている。さらに、側壁面2bに隣接する側壁面2cに沿って浴槽4が配置されている。側壁面2cに対向する側壁面2eには、脱衣室18に通じる扉18aが設けられている。
【0026】
浴槽4は、浴室2の側壁面2cに沿って配置され、側壁面2cに隣接している一方の側壁面2bから他方の側壁面2dまで延びており、上面視において略長方形に構成されている。
【0027】
鏡10は、側壁面2bの、シャワーバー8の側方に取り付けられており、縦長の長方形に構成されている。
浴室カウンター12は、側壁面2bの、シャワーバー8及び鏡10の下方に取り付けられた棚であり、所定の高さに水平方向に延びている。
脱衣室18は、浴室2に隣接して設けられた隣接室であり、側壁面2eに設けられた扉18aを介して、浴室2と出入りできるようになっている。
【0028】
次に、
図3及び
図4を新たに参照して、シャワー装置6を説明する。
図3は、側壁面2bに設けられたシャワー装置6の正面図である。
図4は、側壁面2bに設けられたターゲット指示部を拡大して示す図である。
シャワー装置6は、シャワー吐水、及びスパウト吐水が可能なシャワー装置であり、天井壁面2aに固定された固定シャワーヘッド6a、シャワーバー8に保持されたハンドシャワーヘッド6b、及び側壁面2bに取り付けられたスパウト6cを有する。さらに、シャワー装置6は、固定シャワーヘッド6a、ハンドシャワーヘッド6b、及びスパウト6cからの吐水、止水を切り替える電磁弁6d、吐出される湯水の温度を調整する温度調整弁6e、及び吐出される湯水の流量を調整する流量調整弁6fを備えている。
【0029】
固定シャワーヘッド6aは、浴室2の天井壁面2aに固定され、上方から入浴者に向けてシャワー吐水を行うように構成されている。また、本実施形態において、固定シャワーヘッド6aは、浴室2のコーナー付近の天井壁面2aに設けられている。即ち、固定シャワーヘッド6aは、鏡10等が設けられた側壁面2bと、浴槽4とは反対側の側壁面2eが交わるコーナーの近傍に設けられており、鏡10の前の入浴者の頭上からシャワー吐水を行うように構成されている。
【0030】
シャワーバー8は、側壁面2bに設けられており、バー部材8aと、ハンドシャワーヘッド6bを保持するヘッド保持部8bと、を有する。バー部材8aは、鉛直方向に延びるように側壁面2bに固定された棒状の部材であり、側壁面2bから所定の間隔を空けて側壁面2bと平行に延びている。ヘッド保持部8bは、バー部材8aに上下方向に摺動可能に取り付けられており、バー部材8a上の任意の高さに調整できるように構成されている。ヘッド保持部8bはハンドシャワーヘッド6bを保持可能に構成されており、ハンドシャワーヘッド6bはヘッド保持部8bから取り外して使用することができる。即ち、ハンドシャワーヘッド6bは、側壁面2bに固定されていない。なお、ハンドシャワーヘッド6bは、使用者が手で持った状態、或いは、ハンドシャワーヘッド6bをヘッド保持部8bに保持した状態で使用することができる。
【0031】
さらに、ターゲット指示部9が、側壁面2bの鏡10の側方に設けられている。
図4に示すように、ターゲット指示部9は、オーバーヘッドシャワー指示部9aと、スパウト指示部9bと、温度上昇指示部9cと、温度低下指示部9dと、流量増加指示部9e、流量低下指示部9fと、を有する。これらのターゲット指示部9は、使用者が動作によってシャワー装置6を操作しようとする際、使用者が動作を実行すべき位置を示すために設けられている。
【0032】
即ち、使用者が固定シャワーヘッド6aからのシャワー吐水を開始させる場合には、オーバーヘッドシャワー指示部9aに向けて手指を差し出す動作を行う。この動作が電波式レーダ14及び制御部16により検出され、制御部16はシャワー装置6の電磁弁6dを開弁させ、固定シャワーヘッド6aからのシャワー吐水が開始される。また、固定シャワーヘッド6aからのシャワー吐水中において、使用者が再びオーバーヘッドシャワー指示部9aに向けて手指を差し出す動作を行うと、この動作が検出され、シャワー吐水が停止される。同様に、使用者がスパウト指示部9bに向けて手指を差し出す動作を行うことにより、スパウト6cからの吐水、止水を切り替えることができる。
【0033】
さらに、使用者が、固定シャワーヘッド6a等からの吐水温度を上昇させる場合には、温度上昇指示部9cに向けて手指を差し出す動作を行うことにより、温度調整弁6eが制御部16によって制御され、固定シャワーヘッド6a等からの吐水温度が上昇する。同様に、吐水温度を低下させる場合には、温度低下指示部9dに向けて手指を差し出す動作を行うことにより、温度調整弁6eが制御され、固定シャワーヘッド6a等からの吐水温度が低下する。
【0034】
また、使用者が、固定シャワーヘッド6a等からの吐水流量を増加させる場合には、流量増加指示部9eに向けて手指を差し出す動作を行うことにより、制御部16によって流量調整弁6fが制御され、固定シャワーヘッド6a等からの吐水流量が増加する。同様に、吐水流量を低下させる場合には、流量低下指示部9fに向けて手指を差し出す動作を行うことにより、流量調整弁6fが制御され、固定シャワーヘッド6a等からの吐水流量が低下する。
【0035】
なお、本実施形態において、ターゲット指示部9は、使用者が手指を差し出す動作を行うべき位置を示す機能のみを備えており、単に、側壁面2bに付されたマークによって構成されている。これに対して変形例として、ターゲット指示部9は、単に、固定シャワーヘッド6aに関する温度や流量などの吐水状態を示す表示としての機能だけを有していてもよいし、ターゲット指示部9に実際の操作ボタンとしての機能を持たせることもできる。即ち、ターゲット指示部9は、使用者が手指を差し出す動作を行うべき位置を示す機能ばかりでなく、吐水状態を表示する表示部としての機能するように本発明を構成することもできる。また、各ターゲット指示部9が動作を行うべき位置を示す機能の他に、各機能を実行するための操作ボタンとして機能するように本発明を構成することもできる。この場合には、各ターゲット指示部9に使用者が手指を差し出すことによってシャワー装置6を操作することができると共に、故障時や停電時などに各ターゲット指示部9を押圧操作することによってもシャワー装置6を手動操作することもできる。
【0036】
一方、ハンドシャワーヘッド6bからの吐水、止水、及び吐出流量は、使用者が流量調整弁6fを手動で操作することにより、操作、調整することができる。また、使用者が温度調整弁6eを手動で操作することにより、ハンドシャワーヘッド6bから吐出される湯水の温度を調整することができる。なお、変形例として、ハンドシャワーヘッド6bを操作するためのターゲット指示部(図示せず)を浴室2の側壁面2bに設けておき、そのターゲット指示部に使用者が手指を差し出す動作により、ハンドシャワーヘッド6bが操作できるように本発明を構成することもできる。或いは、他の変形例として、ハンドシャワーヘッド6bがヘッド保持部8bによって保持されている状態では、使用者が手動で流量調整弁6f、温度調整弁6eを操作し、ハンドシャワーヘッド6bがヘッド保持部8bから外されているときは、使用者の動作により各操作ができるように本発明を構成することもできる。
【0037】
次に、
図5A乃至
図5Fを参照して、電波式レーダ14を説明する。
図5A乃至
図5Fは電波式レーダの側壁面への取付構造を示す断面図である。
電波式レーダ14は、浴室2内に電波を照射し、シャワーシステム1の使用者によって反射された電波を受信するように構成されている。具体的には、電波式レーダ14は、側壁面2bの鏡10の側方に設けられており、浴室2内に電波を放射状に照射して、反射されて戻った電波を検出するように構成されている。また、電波式レーダ14は、浴室2内に電波を所定の時間間隔で照射し、シャワーシステム1の使用者の検出を実行する。本実施形態において、電波式レーダ14は、周波数60GHz帯のミリ波を照射して、反射波を受信するように構成されている。好ましくは、24GHz帯乃至3THz帯、より好ましくは60GHz帯乃至79GHz帯の電波を照射する電波式レーダを使用する。
【0038】
電波式レーダ14は、反射されて戻った電波を受信することにより、その電波が反射された点の座標、反射された電波の強度、電波を反射した点の電波の進行方向の速度(ドップラー速度)を検出することができる。従って、電波式レーダ14による検出信号からは、電波を反射した点群の座標情報、各点からの反射波の強度の情報、各点の移動速度の情報を得ることができる。例えば、浴室2内に使用者が入室した場合には、使用者によって反射された電波が電波式レーダ14により検出され、使用者を表す点群の情報が検出される。
【0039】
また、電波式レーダ14から照射された電波は、浴室2の壁面等によっても反射されるが、各壁面は電波式レーダ14から比較的遠く、また、電波の反射率も低いため、壁面によって反射されて受信した電波の強度は比較的低くなる。さらに、電波式レーダ14から照射された電波の一部は側壁面2eを透過して、浴室2に隣接する脱衣室18にも入射する。このため、脱衣室18に人が入室した場合でも、電波式レーダ14により、これを検出することができる。従って、本実施形態においては、
図2に示すように、電波式レーダ14から照射され、反射された電波を受信することができる受信可能空間20は、浴室2内、及び脱衣室18内のほぼ全域に広がっている。
【0040】
なお、本実施形態においては、
図5Aに示すように、電波式レーダ14の検出部14a(電波を射出し、受信する部分)が側壁面2bの裏側(浴室2の外側)に取り付けられ、この検出部14aが側壁面2bの裏側に取り付けたレーダ筐体14bにより覆われている。これに対して変形例として、
図5Bに示すように、電波式レーダ14の検出部14aを側壁面2bの表側(浴室2内)に取り付け、この検出部14aを側壁面2bの表側に取り付けたレーダ筐体14bによって覆うように本発明を構成することもできる。
【0041】
さらに、
図5Cに示すように、電波式レーダ14の検出部14a全体がレーダ筐体14bによって覆われている場合には、側壁面2bの電波式レーダ14を取り付ける部分に開口を設け、この開口にレーダ筐体14bを嵌め込むことにより、電波式レーダ14を側壁面2bに設けることもできる。また、電波式レーダ14の検出部14aは、
図5Cに示すようにレーダ筐体14bの中の浴室2内側に取り付けられていても良いし、
図5Dに示すように、レーダ筐体14bの中の浴室2外側に取り付けられていても良い。
【0042】
或いは、
図5Eに示すように、電波式レーダ14の検出部14a全体を覆うレーダ筐体14bを側壁面2bの裏側に取り付け、又は、
図5Fに示すように、レーダ筐体14bを側壁面2bの表側に取り付けることもできる。なお、本明細書において、「壁面に電波式レーダを設ける」には、
図5A乃至
図5Fの全ての態様が含まれるものとする。また、浴室カウンター12やシャワー装置6の筐体(図示せず)の内部に電波式レーダ14の検出部14aを設けることもできる。
【0043】
制御部16は、電波式レーダ14によって検出された信号に基づいて、浴室2内に設定された所定の検出空間内におけるシャワーシステム1の使用者の動作を検出し、検出された使用者の動作に基づいて固定シャワーヘッド6aからの吐水を制御するように構成されている。即ち、浴室2内には、受信可能空間20の内部に所定の検出空間22(
図2)が設定されている。電波式レーダ14によって検出された信号は制御部16に送られ、制御部16は、入力された信号に基づいて、設定された検出空間22の中で、使用者により所定の動作が行われたか否かを判断する。所定の動作が行われた場合には、制御部16はシャワー装置6に制御信号を送り、固定シャワーヘッド6aからのシャワー吐水を開始させ、又は停止させる。本実施形態において、検出空間22は、平面視において側壁面2bと固定シャワーヘッド6aの間(
図2)、且つ浴室カウンター12の上方(
図12)に位置する、直方体形状の空間として設定されている。なお、具体的には、制御部16は、マイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、及びこれらを作動させるためのソフトウェア(以上、図示せず)から構成されている。
【0044】
次に、
図6乃至
図10を参照して、制御部16において実行される、使用者の動作を検出する処理を説明する。
まず、上述したように、電波式レーダ14は、浴室2内の各方向に電波を照射する。電波式レーダ14から照射される電波は、
図2に示す受信可能空間20全体をカバーするように、各方向に向けて照射される。また、後述するように、本実施形態において、電波式レーダ14の検出部14aは照射する電波の中心線が斜め下方に向けられるように配置されている。さらに、電波式レーダ14は、照射した電波の反射波を受信する。ここで、浴室2の各壁面、及び床面は、比較的、電波式レーダ14から遠く、また、電波の反射率も低いため、浴室2内に使用者が居ない場合には、電波式レーダ14によって受信される反射波の強度は低くなる。
【0045】
一方、使用者が脱衣室18や浴室2に入室すると、人体は電波を比較的強く反射するため、使用者によって反射された比較的強い反射波が電波式レーダ14によって受信される。ここで、電波式レーダ14は、各方向に照射した電波が、どれだけの距離伝播したところで反射されたかを検出することができる。これにより、電波が反射された点の座標情報が得られ、浴室2内に入室した使用者が、点群として電波式レーダ14によって検出される(
図8)。
【0046】
また、
図6は、各点から反射された電波の強度を横軸に、その強度を示す点の頻度(点の数)を縦軸として模式的に示したグラフである。上記のように、電波式レーダ14から照射され、浴室2の各壁面等によって反射された反射波は強度が低くなる。また、電波式レーダ14から照射された電波の多くは浴室2の各壁面等によって反射されるため、このような電波の頻度(点の数)は多くなる。これにより、
図6のグラフには、反射波の強度が低い領域に1つのピークができる。一方、浴室2内に入室した使用者によって反射された反射波は、比較的強度が高いため、
図6の右欄のグラフには、反射波の強度が高い領域に、使用者によって反射された反射波によるもう一つのピークができる。そして、受信した反射波のうち、所定の強度閾値以下の電波はノイズと判定され、検出データから削除される。
【0047】
ここで、受信した電波をノイズと判定する強度閾値Ithは、検出された反射波に基づいて変更することができる。本実施形態においては、CFAR(Constant False Alarm Rate)法により、強度閾値Ithが決定される。一般に、強度閾値Ithは、低く設定するほど、検出しようとする目標の検出確率は上昇するが、誤警報(検出)確率も高くなる。一方、強度閾値Ithを高く設定すると、誤警報確率を低くすることはできるが、目標の検出確率は低下してしまう。このように、目標の検出確率と誤警報確率は、強度閾値Ithの設定により変化し、トレードオフの関係になる。CFAR法は、受信された反射波の強度分布に基づいて、誤警報確率が一定となるように強度閾値Ithを設定する手法として一般に知られている。
【0048】
次に、
図7は、電波を反射した各点のドップラー速度を横軸に、その速度を示す点の頻度(点の数)を縦軸として模式的に示したグラフである。ここで、電波式レーダ14から照射され、浴室2の静止した壁面等によって反射された反射波から求められるドップラー速度はほぼゼロになる。また、電波式レーダ14から照射された電波の多くは浴室2の各壁面等によって反射されるため、このような電波の頻度(点の数)は多くなる。これにより、
図7のグラフには、ドップラー速度がゼロの近傍に1つのピークができる。一方、浴室2内に入室した使用者には動きがあるため、使用者によって反射された反射波は、ドップラー速度が負(電波式レーダ14に近づく方向)の領域から、ドップラー速度が正(電波式レーダ14から離れる方向)の領域まで分布する。そして、受信した反射波のうち、ドップラー速度の絶対値が所定の速度閾値V
th以下の電波はノイズと判定され、検出データから削除される。
【0049】
このようにして得られた各点から反射された電波の強度の情報、及び各点の速度の情報を掛け合わせることによって、脱衣室18内や浴室2内の使用者を、点群としてより正確に検出することができる。
図8は、このようにして点群として検出された使用者の一例を示している。さらに、電波を反射した点群の重心位置を計算することにより、浴室2内等における使用者の位置の情報を得ることができる。また、点群のうちの最高点の高さに基づいて、使用者の身長や、使用者の姿勢等の情報を得ることができる。
【0050】
しかしながら、浴室2内において、固定シャワーヘッド6aからシャワー吐水が行われている場合、シャワーを浴びている使用者を電波式レーダ14によって検出することが困難となる。即ち、固定シャワーヘッド6aから吐出されているシャワー吐水も電波を反射するため、電波式レーダ14には、シャワー吐水によって反射された電波も、検出対象物の点群として認識されてしまう。さらに、シャワー吐水は上方から下方に向けて落下しているため、シャワー吐水によって反射された反射波から求められるドップラー速度は、ほぼゼロにはならない。このため、ドップラー速度を使用しても、シャワー吐水と使用者を識別することが困難となる。
【0051】
そこで、本実施形態においては、固定シャワーヘッド6aから吐出されたシャワー吐水の流れる方向に対して、照射される電波の中心線が傾斜するように電波式レーダ14を配置している。
図9の左欄は、本実施形態における電波式レーダ14からの電波の照射方向を模式的に示した図であり、右欄は、この電波の照射により取得されたドップラー速度の分布の一例を示す図である。
【0052】
図9の左欄に示すように、本実施形態において、電波式レーダ14の検出部14aは、鉛直方向に向けられた側壁面2bに対し、電波の中心線Cが約60度の角度を向くように、斜め下方に向けて電波を照射する。この結果、電波式レーダ14から照射された電波は、固定シャワーヘッド6aから吐出されたシャワー吐水に対し、約60度の角度を為して入射する。これにより、照射された電波により、落下するシャワー吐水の速度成分がドップラー速度として検出される。即ち、電波式レーダ14は、照射した電波の方向の速度成分をドップラー速度として検出する。落下するシャワー吐水は斜め下方に向けた速度成分を有するため、シャワー吐水に対して一定の大きさのドップラー速度が検出される。
【0053】
図9の右欄は、シャワー吐水中に使用者が検出空間22内で動作を行った場合に検出されたドップラー速度の分布の一例を示している。まず、シャワー吐水は電波式レーダ14からの電波の照射方向に、電波式レーダ14から離れる向きに比較的大きな速度成分を有している。このため、
図9の右欄に示すように、シャワー吐水によって反射された電波は、比較的ドップラー速度が大きい正の領域に分布する。一方、使用者の動きは一般に、落下するシャワー吐水よりも速度が遅いため、使用者によって反射された電波は、比較的ドップラー速度が小さい領域に分布する。
【0054】
さらに、使用者が側壁面2bに設けられたターゲット指示部9に手指を差し出す動作は、電波式レーダ14に近づく方向の速度成分を有するので、使用者の手指から反射された反射波は、ドップラー速度が負の領域に分布する。これに対してシャワー吐水は、常に上方から下方に流れ、これに基づいて検出されたドップラー速度は常に正の領域に分布するため、使用者の動作とシャワー吐水の間の速度差が大きくなる。本実施形態においては、この性質を利用して、ドップラー速度が所定の正の値よりも大きい点群をノイズとして除去することにより、シャワー吐水中においても、効果的に使用者の動作を識別することができる。
【0055】
このように、本実施形態のシャワーシステム1において、電波式レーダ14は、固定シャワーヘッド6aからのシャワー吐水を浴びている使用者の動作を、シャワー吐水と識別できるように、検出空間22に電波を入射させる。換言すれば、電波式レーダ14は、固定シャワーヘッド6aから吐出されたシャワー吐水の流れる方向に対して、照射される電波の中心線Cが傾斜するように電波を照射している。この結果、シャワー吐水によって反射された電波から検出される速度と、使用者によって反射された電波から検出される速度の差が大きくなる。
【0056】
これに対して、比較例として、
図10の左欄では、電波式レーダ14から照射する電波の中心線Cを、固定シャワーヘッド6aから吐出されたシャワー吐水に対し直角に向けている。この場合には、
図10の右欄に示すように、シャワー吐水からの反射波に基づいて検出されるドップラー速度は比較的小さな値となる。即ち、落下するシャワー吐水は、中心線Cが向けられている水平方向の速度成分を殆ど持たないため、検出されるドップラー速度はほぼゼロとなる。このため、
図10の右欄のように、比較的動きが遅く、低いドップラー速度として検出される使用者の動作に基づくドップラー速度の分布と重なってしまい、使用者の動作とシャワー吐水を識別することが困難となる。
【0057】
次に、
図11及び
図12を参照して、本発明の第1実施形態によるシャワーシステム1の作用を説明する。
図11は、シャワーシステム1に備えられた制御部16において実行される処理を示すフローチャートである。
図12は、浴室2内に設定されている吐水空間及び検出空間と、照射される電波の方向を示す側面図である。なお、
図11に示すフローチャートによる処理は、シャワーシステム1の電源が投入されている状態では、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0058】
まず、
図11のステップS1においては、制御部16により、電波式レーダ14から各種データが取得される。即ち、受信可能空間20内に使用者が立ち入っているか否かを検査するために、制御部16は電波式レーダ14から各種データを取得する。この際、電波式レーダ14の検出部14a(
図5A)から受信可能空間20全体を走査するように電波が射出され、受信された反射波から各種データが導出される。本実施形態においては、電波が反射された点から検出部14aまでの距離、電波が反射された点の方位角、電波が反射された点の仰角、受信した電波の強度、及び電波を反射した点のドップラー速度が導出される。
【0059】
次いで、ステップS2においては、各点から反射された反射波の強度に基づいて、低強度のノイズが除去される。本実施形態においては、CFAR法を使用して、強度閾値I
thが計算され、この強度閾値I
thよりも強度が低い反射波はノイズであると判定され、そのデータが除去される(
図6の網掛け部分)。
【0060】
さらに、ステップS3においては、電波を反射した点のうち、ドップラー速度が低いものが除去される。一般に、電波を反射した各点のドップラー速度は、速度ゼロを中心に、負の値(電波式レーダ14の検出部14aに近づいている点)から正の値(検出部14aから遠ざかっている点)まで分布する。これらの点のうち、ドップラー速度が特にゼロに近い点は、静止した壁面や床面から反射されたものである可能性が高い。このため、本実施形態においては、ドップラー速度の絶対値が所定の速度閾値Vthよりも小さい点はノイズと判定され、除去される。
【0061】
次に、ステップS4においては、ステップS2における処理と、ステップS3における処理の掛け合わせにより、使用者を表すものと考えられる点群が算出される。本実施形態においては、反射波により検出された点のうち、反射波の強度が強度閾値Ith以上であり、且つ、ドップラー速度の絶対値が所定の速度閾値Vth以上である点が、使用者を表す点群として抽出される。
【0062】
さらに、ステップS5においては、ステップS4において抽出された点群の重心位置が算出される。即ち、ステップS4において抽出された各点の重心位置が計算され、使用者は、この重心位置に居るものと判断される。
【0063】
次に、ステップS6においては、計算された重心位置(使用者の位置)が、受信可能空間20内の浴室2内であるか否かが判断される。計算された重心位置が浴室2内である場合にはステップS7に進み、浴室2外である場合には、ステップS1に戻り、以上の処理が繰り返される。即ち、使用者が浴室2内に居ない場合には、当然に、使用者の動作によるシャワー装置6の制御は実行されない。
【0064】
一方、ステップS7においては、検出空間22内において、使用者が所定の動作を行ったか否かが判断される。即ち、検出空間22内で点群が検出され、その検出空間22内で検出された点群の重心が、側壁面2bに設けられたターゲット指示部9の方へ移動しているか否かが判断される。点群の重心がターゲット指示部9の方へ移動している場合には、使用者がシャワーシステム1を操作する所定の動作を行っていると判断され、ステップS8に進む。一方、検出空間22内で点群が検出されない場合、及び検出された点群の重心がターゲット指示部9の方へ向かっていない場合には、使用者は所定の動作を行っていないと判断され、フローチャートにおける処理は、ステップS1に戻る。
【0065】
ここで、
図12に示すように、電波式レーダ14の検出部14aは、側壁面2bの上部から、斜め下方に向けて検出空間22内へ電波を照射する。この電波は、固定シャワーヘッド6aの下方の吐水空間24内も通過するので、固定シャワーヘッド6aからのシャワー吐水が行われている場合には、電波式レーダ14から照射された電波は、シャワー吐水によっても反射される。
【0066】
ここで、シャワー吐水は上方から下方に落下するため、電波式レーダ14から照射された電波の進行方向の速度成分を有している。従って、シャワー吐水によって反射された反射波から検出されるドップラー速度は、比較的大きな正(電波式レーダ14から離れる方向)の値をもつ。一方、ターゲット指示部9に手指を差し出す使用者の動きは、通常、比較的遅く、照射された電波の進行方向とは反対方向になる。このため、使用者の手指によって反射された反射波から検出されるドップラー速度は比較的絶対値が小さく、負(電波式レーダ14に近づく方向)の領域に分布する。この傾向を利用して、例えば、ドップラー速度が所定の正の値よりも大きい検出値をノイズとして除去することにより、固定シャワーヘッド6aからの吐水中であっても、正確に使用者の動作を識別することが可能になる。
【0067】
さらに、ステップS8においては、検出空間22内で検出された点群の重心がターゲット指示部9のうちの、どの指示部に向かっているかが認識される。即ち、検出空間22内で検出された点群の位置に基づいて、使用者の手指がどの指示部に向けられているか識別される。
【0068】
次に、ステップS9において、制御部16は、ステップS8において識別されたターゲット指示部9に基づいてシャワー装置6に制御信号を送信し、
図11に示すフローチャートの1回の処理を終了する。例えば、使用者の手指がオーバーヘッドシャワー指示部9aに向けられていると判断された場合には、制御部16は電磁弁6dに制御信号を送り、固定シャワーヘッド6aからの吐水状態と止水状態を切り替える。即ち、固定シャワーヘッド6aから吐水されている状態において、使用者の手指がオーバーヘッドシャワー指示部9aに向けて差し出された場合には、固定シャワーヘッド6aからのシャワー吐水を停止させる。また、止水されている状態において、使用者の手指がオーバーヘッドシャワー指示部9aに向けて差し出された場合には、固定シャワーヘッド6aからのシャワー吐水を開始させる。
【0069】
さらに、制御部16は、使用者の手指がスパウト指示部9bに向けられていると判断された場合には、スパウト6cに接続されている電磁弁6dを開閉させる。また、使用者の手指が温度上昇指示部9c又は温度低下指示部9dに向けられていると判断された場合には、制御部16は温度調整弁6eに制御信号を送り、温度設定を変更する。さらに、使用者の手指が流量増加指示部9e又は流量低下指示部9fに向けられていると判断された場合には、制御部16は流量調整弁6fに制御信号を送り、流量設定を変更する。
図11に示すフローチャートの処理が繰り返し実行されることにより、使用者の動作に基づいて固定シャワーヘッド6aからの吐水が制御される。
【0070】
なお、上述した本実施形態においては、使用者がターゲット指示部9に手指を差し出す動作により、シャワー装置6が制御されていた。これに対して、変形例として、ターゲット指示部9を使用せず、手指を検出空間22内で鉛直方向又は水平方向に振る等、予め設定された任意の動作に基づいてシャワー装置6が制御されるように本発明を構成することもできる。
【0071】
本発明の第1実施形態のシャワーシステム1によれば、シャワーを浴びている使用者の動作を、シャワー吐水と識別できるように、電波式レーダ14が検出空間22に電波を入射させるので、使用者がシャワーを使用中であっても使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態のシャワーシステム1によれば、シャワー吐水から検出される速度と、使用者から検出される速度の差が大きくなるように、電波式レーダ14が検出空間22に電波を入射させるので、シャワー吐水によって反射された電波と使用者によって反射された電波が識別しやすくなり、使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【0073】
さらに、本実施形態のシャワーシステム1によれば、シャワー吐水の流れる方向に対して中心線Cが傾斜するように、電波式レーダ14により電波が照射されるので、シャワー吐水が落下する速度を反射波により検出しやすくなる。この結果、静止又はゆっくりと動いている使用者とシャワー吐水を、反射波により識別しやすくなり、使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態のシャワーシステム1によれば、照射される電波の中心線Cが側壁面2bに対して傾斜しているので、側壁面2bとほぼ平行に落下するシャワー吐水に電波の中心線Cが傾斜した状態で入射し、シャワー吐水が落下する速度を反射波により検出しやすくなる。この結果、静止又はゆっくりと動いている使用者とシャワー吐水を、反射波により識別しやすくなり、使用者の動作の誤検出を抑制することができる。
【0075】
さらに、本実施形態のシャワーシステム1によれば、照射される電波の中心線Cが斜め下方に向けられるので、使用者とシャワー吐水を反射波により容易に識別できると共に、電波式レーダ14から照射される電波により浴室2内の床面2f全体をカバーしやすく、浴室2内に居る使用者を、より広い範囲で検出することができる。
【0076】
次に、
図13を参照して、本発明の第2実施形態によるシャワーシステム、及びそれを備えたシャワー室システムを説明する。
本実施形態のシャワーシステムは、シャワー装置がシャワー室に設けられている点が上述した第1実施形態とは異なる。従って、以下では、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
図13は、本発明の第2実施形態のシャワーシステムが備えられたシャワー室内を示す斜視図である。
【0077】
図13に示すように、本実施形態のシャワーシステム100は、シャワー室102内に設けられている。室であるシャワー室102は、天井壁面102a、4つの側壁面102b、102c、102d、102e、及び床面102fを備えている。また、シャワーシステム100は、側壁面102bに設けられており、この側壁面102bに対向する側壁面102dは、ほぼ全面がシャワー室102に出入りするための扉になっている。さらに、本実施形態のシャワーシステム100は、シャワー装置6と、電波式レーダ14と、制御部16と、を有する。
【0078】
シャワー装置6は、固定シャワーヘッド6aと、ハンドシャワーヘッド6bと、電磁弁6dと、温度調整弁6eと、流量調整弁6fと、を有する。
固定シャワーヘッド6aは、オーバーヘッドシャワー用のシャワーヘッドであり、天井壁面102aに固定され、使用者の頭上からシャワー吐水を行うように構成されている。また、固定シャワーヘッド6aは、側壁面102b及び102eの近傍に、天井壁面102aに設けられている。
【0079】
ハンドシャワーヘッド6bは、側壁面102bに取り付けられたシャワーバー8のヘッド保持部8bに保持され、ヘッド保持部8bはバー部材8aに摺動可能に取り付けられている。
また、温度調整弁6e及び流量調整弁6fは側壁面102bに設けられ、電磁弁6dは側壁面102bの裏側に設けられている。
【0080】
電波式レーダ14は、シャワー設置壁面である側壁面102bの裏側に設けられている。電波式レーダ14は、側壁面102bの上部から、斜め下方に向けてシャワー室102内、及びシャワー室102に隣接する隣接室(図示せず)内に電波を照射し、シャワーシステム100の使用者によって反射された電波を受信するように構成されている。
【0081】
制御部16は、電波式レーダ14によって検出された信号に基づいて、シャワー室102内に設定された所定の検出空間内におけるシャワーシステム100の使用者の動作を検出し、検出された使用者の動作に基づいて固定シャワーヘッド6aからの吐水を制御するように構成されている。即ち、使用者が側壁面102bに設けられたターゲット指示部9に手指を差し出すことにより、固定シャワーヘッド6aからの吐止水等を制御できるように構成されている。
【0082】
図13に示すように、本実施形態において、検出空間22は、シャワー室102の側壁面102b及び102eに隣接する直方体状の空間として設定されている。電波式レーダ14から照射される電波の中心線は、斜め下方に向けて検出空間22の中を通っている。また、使用者によって反射された電波を受信可能な受信可能空間(図示せず)は、シャワー室102及びこれに隣接する隣接室(図示せず)内全体をカバーするように設定されている。
【0083】
次に、
図14を参照して、本発明の第3実施形態によるシャワーシステム、及びそれを備えたシャワー室システムを説明する。
本実施形態のシャワーシステムは、シャワー装置が所謂3in1式のバスルームに設けられている点が上述した第1実施形態とは異なる。従って、以下では、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
図14は、本発明の第3実施形態のシャワーシステムが備えられた室内を示す斜視図である。
【0084】
図14に示すように、本実施形態のシャワーシステム200は、室202内に設けられている。室202は、内部にシャワーシステム200の他、水洗大便器204、及び洗面化粧台205が配置された所謂3in1式のバスルームである。この室202の一角がガラス製又は樹脂製のパーティションにより区切られており、パーティションの内部にシャワーシステム200が設けられている。従って、本実施形態においては、室202の中に、パーティションによりシャワー室203が形成され、このシャワー室203とシャワーシステム200により、本実施形態のシャワー室システムが構成されている。
【0085】
室であるシャワー室203は、天井壁面203a、室202の一部を構成する2つの側壁面203b、203c、パーティションにより構成された2つの側壁面203d、203e、及び床面203fを備えている。また、シャワーシステム200は、側壁面203bに設けられており、この側壁面203bに対向する側壁面203dにはシャワー室203に出入りするための扉218が設けられている。さらに、本実施形態のシャワーシステム200は、シャワー装置6と、電波式レーダ14と、制御部16と、を有する。
【0086】
シャワー装置6は、固定シャワーヘッド6aと、ハンドシャワーヘッド6bと、電磁弁6dと、温度調整弁6eと、流量調整弁6fと、を有する。
固定シャワーヘッド6aは、オーバーヘッドシャワー用のシャワーヘッドであり、側壁面203bから水平方向に延びる配管の先端に固定され、使用者の頭上からシャワー吐水を行うように構成されている。従って、固定シャワーヘッド6aは、シャワー設置壁面である側壁面203bに固定されている。
【0087】
ハンドシャワーヘッド6bは、側壁面203bに取り付けられたシャワーバー8のヘッド保持部8bに保持され、ヘッド保持部8bはバー部材8aに摺動可能に取り付けられている。
また、温度調整弁6e及び流量調整弁6fは側壁面203bに設けられ、電磁弁6dは側壁面203bの裏側に設けられている。
【0088】
電波式レーダ14は、側壁面203bの裏側の上部に設けられており、シャワー室203内、及びシャワー室203に隣接する隣接室である室202内に電波を照射し、シャワーシステム200の使用者によって反射された電波を受信するように構成されている。
【0089】
制御部16は、電波式レーダ14によって検出された信号に基づいて、シャワー室203内に設定された所定の検出空間内におけるシャワーシステム200の使用者の動作を検出し、検出された使用者の動作に基づいて固定シャワーヘッド6aからの吐水を制御するように構成されている。即ち、使用者が側壁面203bに設けられたターゲット指示部9に手指を差し出すことにより、固定シャワーヘッド6aからの吐止水等を制御できるように構成されている。
【0090】
図14に示すように、本実施形態において、検出空間22は、シャワー室203の側壁面203bに隣接する直方体状の空間として設定されている。そして、電波式レーダ14から照射される電波の中心線は、斜め下方に向けて検出空間22の中を通っている。また、使用者によって反射された電波を受信可能な受信可能空間(図示せず)は、シャワー室203及び室202内全体をカバーするように設定されている。
【0091】
なお、本発明の第3実施形態によるシャワーシステム200は、水洗大便器204及び洗面化粧台205が配置された室202内の一角に構成されたシャワー室に設けられ、シャワー室システムを構成していた。これに対して、変形例として、シャワーシステムを、浴槽、水洗大便器、洗面化粧台等が配置された浴室内に設け、浴室システムを構成することもできる。
【0092】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。例えば、上述した実施形態においては、入浴中の使用者の動作を電波式レーダによって検出し、シャワー装置の制御を行っていたが、この機能に加え、浴室内の使用者に事故や体調急変が発生しているか否かを、電波式レーダによって見守るように本発明を構成することもできる。
【符号の説明】
【0093】
1 シャワーシステム
2 浴室(室)
2a 天井壁面
2b、2c、2d、2e 側壁面
2f 床面
4 浴槽
6 シャワー装置
6a 固定シャワーヘッド
6b ハンドシャワーヘッド
6c スパウト
6d 電磁弁
6e 温度調整弁
6f 流量調整弁
8 シャワーバー
8a バー部材
8b ヘッド保持部
9 ターゲット指示部
9a オーバーヘッドシャワー指示部
9b スパウト指示部
9c 温度上昇指示部
9d 温度低下指示部
9e 流量増加指示部
9f 流量低下指示部
10 鏡
12 浴室カウンター
14 電波式レーダ
14a 検出部
14b レーダ筐体
16 制御部
18 脱衣室(隣接室)
18a 扉
20 受信可能空間
22 検出空間
24 吐水空間
100 シャワーシステム
102 シャワー室
102a 天井壁面
102b、102c、102d、102e 側壁面
102f 床面
200 シャワーシステム
202 室
203 シャワー室
203a 天井壁面
203b、203c、203d、203e 側壁面
203f 床面
204 水洗大便器
205 洗面化粧台
218 扉