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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082815
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20240613BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240613BHJP
【FI】
A01D41/12 B
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196938
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】作田 建
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 長浩
【テーマコード(参考)】
2B074
5H301
【Fターム(参考)】
2B074AA05
2B074AB01
2B074AC02
2B074BA04
2B074BA16
2B074EC01
2B074ED01
2B074ED03
2B074EE01
2B074FA03
2B074FB02
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG10
(57)【要約】
【課題】検出部の日常点検において、点検の品質を向上させること。
【解決手段】作業装置と、報知装置と、複数の制御モードを有し、作業装置と報知装置との夫々に対する制御が可能な制御装置と、機体の周囲の物体を検知し、物体を検知したことを示す検知信号を制御装置へ出力する検知部2F,2B,2L,2Rと、が備えられている。複数の制御モードに、検知部2F,2B,2L,2Rが検知信号を出力したことに応じて作業装置に作動状態を変更させる通常モードと、検知部2F,2B,2L,2Rが検知信号を出力したことに応じて報知装置に報知を行わせるテストモードと、が含まれる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と、
報知装置と、
複数の制御モードを有し、前記作業装置と前記報知装置との夫々に対する制御が可能な制御装置と、
機体の周囲の物体を検知し、前記物体を検知したことを示す検知信号を前記制御装置へ出力する検知部と、が備えられ、
前記複数の制御モードに、前記検知部が前記検知信号を出力したことに応じて前記作業装置に作動状態を変更させる通常モードと、前記検知部が前記検知信号を出力したことに応じて前記報知装置に報知を行わせるテストモードと、が含まれる作業車。
【請求項2】
前記制御装置は、前記テストモードのとき、前記検知信号の態様に応じて前記報知装置に報知態様を変更させる請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記検知部は複数のセンサを有し、
前記制御装置は、前記テストモードのとき、どの前記センサが前記物体を検知したかに応じて前記報知装置に前記報知態様を変更させる請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記検知部が前記物体を検知したことを検知履歴として記憶する記憶部が備えられ、
前記検知部は複数のセンサを有し、
前記制御装置は、前記テストモードのときに全ての前記センサについて前記検知履歴が前記記憶部へ記憶されている場合に、前記通常モードへの切り替わりを許容する請求項1から3の何れか一項に記載の作業車。
【請求項5】
発光装置が備えられ、
前記検知部は複数のセンサを有し、
前記制御装置は、前記通常モードのとき、前記複数のセンサの夫々の検知状態に基づいて、前記機体の周囲において前記物体の存在する方向を算出し、かつ、前記方向に応じて前記発光装置に発光態様を変更させる請求項1から3の何れか一項に記載の作業車。
【請求項6】
前記制御装置は、前記通常モードのとき、前記複数のセンサの夫々の前記検知状態に基づいて、前記機体と前記物体との距離を算出し、かつ、前記方向と前記距離との組み合わせに応じて前記発光装置に発光態様を変更させる請求項5に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された作業車(文献では「圃場作業車」)においては、機体の周囲の物体を検知する検知部(文献では「撮影ユニット」)が備えられている。検知部からの検知信号が、制御装置(文献では「自走走行演算部」)へ送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-101943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場検査(出荷前検査、整備検査等)において作業員が作業車の検出部の周囲を歩きながら検出部を点検することが考えられるが、このような検査において作業員の負担は出来るだけ少ないことが望ましい。また、作業車の検出部は、泥が付着する等の要因によって検出精度が劣化する虞が考えられる。このため、検出部の日常点検が行われる構成が望ましい。このとき、オペレータが、日常点検を簡単に行えて、かつ、日常点検を一定レベル以上の品質で適切に行えたか否かを容易に確認できる構成であることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、オペレータ等が検出部を容易かつ品質良く点検できる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車は、作業装置と、報知装置と、複数の制御モードを有し、前記作業装置と前記報知装置との夫々に対する制御が可能な制御装置と、機体の周囲の物体を検知し、前記物体を検知したことを示す検知信号を前記制御装置へ出力する検知部と、が備えられ、前記複数の制御モードに、前記検知部が前記検知信号を出力したことに応じて前記作業装置に作動状態を変更させる通常モードと、前記検知部が前記検知信号を出力したことに応じて前記報知装置に報知を行わせるテストモードと、が含まれることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、制御装置の制御モードにテストモードが含まれ、制御装置がテストモードのときに、検知部の検知信号に応じて報知装置が報知を行う。このため、工場検査や日常点検が行われる際に、オペレータ等が、制御装置の制御モードをテストモードへ切り替えて、検出部の周囲を歩きながら検出部を点検することによって、点検を一定レベル以上の品質で適切に行えたか否かを報知装置の報知によって容易に確認できる。これにより、検出部の検査や点検に際してオペレータ等に余分な負担が掛かる虞が軽減され、オペレータ等が検出部を容易かつ品質良く点検できる作業車が実現される。
【0008】
本発明において、前記制御装置は、前記テストモードのとき、前記検知信号の態様に応じて前記報知装置に報知態様を変更させると好適である。
【0009】
本構成であれば、報知装置の報知態様と検知信号の態様とが対応する。このため、オペレータ等は、報知装置の報知態様を確認することによって、検知信号が正常であるか否かを容易に確認可能となる。
【0010】
本発明において、前記検知部は複数のセンサを有し、前記制御装置は、前記テストモードのとき、どの前記センサが前記物体を検知したかに応じて前記報知装置に前記報知態様を変更させると好適である。
【0011】
本構成であれば、報知装置の報知態様と複数のセンサの夫々の検知状況とが対応する。このため、オペレータ等は、報知装置の報知態様を確認することによって、どのセンサが正常または異常であるかを容易に確認可能となる。
【0012】
本発明において、前記検知部が前記物体を検知したことを検知履歴として記憶する記憶部が備えられ、前記検知部は複数のセンサを有し、前記制御装置は、前記テストモードのときに全ての前記センサについて前記検知履歴が前記記憶部へ記憶されている場合に、前記通常モードへの切り替わりを許容すると好適である。
【0013】
本構成であれば、検知部が物体を検知したことが検知履歴として記憶部に記憶される。このため、オペレータが複数のセンサの全てに対する点検を行ってから、制御装置の制御モードが通常モードへ切り替え可能となる。
【0014】
本発明において、発光装置が備えられ、前記検知部は複数のセンサを有し、前記制御装置は、前記通常モードのとき、前記複数のセンサの夫々の検知状態に基づいて、前記機体の周囲において前記物体の存在する方向を算出し、かつ、前記方向に応じて前記発光装置に発光態様を変更させると好適である。
【0015】
制御装置の制御モードが通常モードのとき、常に報知装置が検出部の検知状態に応じて報知を行う構成であると、オペレータ等が煩わしく感じる虞が考えられる。本構成によると、報知装置とは別の発光装置が備えられ、物体の存在する方向に応じて発光装置の発光態様が変化する。つまり、本構成であれば、オペレータ等は、必要に応じて発光装置を確認することによって、機体に対して物体の存在する方向を把握できる。
【0016】
本発明において、前記制御装置は、前記通常モードのとき、前記複数のセンサの夫々の前記検知状態に基づいて、前記機体と前記物体との距離を算出し、かつ、前記方向と前記距離との組み合わせに応じて前記発光装置に発光態様を変更させると好適である。
【0017】
本構成によると、物体の存在する方向、及び、機体と物体との距離に応じて発光装置の発光態様が変化する。つまり、本構成であれば、オペレータ等は、必要に応じて発光装置を確認することによって、機体に対する物体の方向及び距離を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】コンバインの全体平面図及び検知部の検知範囲を示す図である。
図2】制御部に関する構成を示すブロック図である。
図3】テストモードで行われる処理を示すロジックグラフ図である。
図4】テストモードで行われる処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印「F」の方向を「前」、矢印「B」の方向を「後」とする。また、図中の矢印「L」の方向を「左」、矢印「R」の方向を「右」とする。
【0020】
〔作業車の基本構成〕
本実施形態において、作業車の一例として普通型コンバインを例示する。図1に示すように、普通型のコンバイン1は、収穫部H、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール3を備えている。
【0021】
クローラ式の走行装置11(図2参照)が、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0022】
運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上方に備えられている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。なお、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0023】
穀粒排出装置18の縦搬送筒部が穀粒タンク14の後方に隣接し、穀粒排出装置18の横搬送筒部が穀粒タンク14の上方に設けられている。また、衛星測位モジュール3は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0024】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後方に設けられている。また、収穫部Hは、刈取装置15及びリール17を含む。
【0025】
刈取装置15は、圃場の作物を刈り取る。特に限定されないが、作物は、例えば小麦、大麦、稲、大豆等である。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯まわりに回転駆動しながら収穫対象の作物を掻き込む。刈取装置15により刈り取られた作物は、搬送部16へ送られる。
【0026】
この構成により、収穫部Hは、圃場の作物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈取装置15によって圃場の作物を刈り取りながら走行装置11によって走行する作業走行が可能である。
【0027】
収穫部Hにより収穫された作物は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、作物は脱穀装置13へ搬送される。
【0028】
脱穀装置13において、作物は脱穀処理される。脱穀処理により得られた収穫物(穀粒)は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された収穫物は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0029】
〔コンバインの自動走行〕
ここで、コンバイン1は、作物が植立している圃場において自動走行を行うことができる。自動走行には、作業しながらの走行と作業を伴わない走行とが含まれる。
【0030】
本実施形態では、自動走行、手動走行、及び自動操舵走行を次の通り定義する。自動走行は、車速と操舵の両方が制御装置20により自動的に制御される走行である。自動走行の間、人為操作は不要である。手動走行は、人為操作に基づいて車速と操舵の制御が行われる走行である。自動操舵走行は、人為操作に基づいて車速の制御が行われ、操舵が制御装置20により自動的に制御される走行である。
【0031】
コンバイン1は、最初に、圃場の外周領域で作物を収穫しながら周回走行を行った後、圃場の作業対象領域で作業走行を行うことにより、圃場の作物を収穫する。
【0032】
なお、外周領域とは、圃場内の外周側の領域である。また、作業対象領域とは、外周領域に囲まれた領域である。
【0033】
本実施形態においては、外周領域での周回走行は手動走行により行われる。なお、本発明はこれに限定されず、周回走行のうちの一部または全てが自動走行または自動操舵走行により行われても良い。作業対象領域での作業走行は、自動走行により行われる。即ち、コンバイン1は、自動作業走行が可能である。
【0034】
なお、本実施形態では、外周領域での周回走行の周回数は1周である。しかし、本発明はこれに限定されず、周回走行の周回数は、1周以外の数(例えば2周、または3周)であっても良い。
【0035】
コンバイン1は、検知部2を備える。検知部2は、電磁波または音波である検査波を放射して反射波を測定することにより機体の周囲の物体を検知する。本実施形態では、検知部2はレーダーであり、検査波及び反射波は電波である。検知部2は、ToF(Time of Flight)測定方式の測定装置である。検知部2がレーザースキャナ(LiDar)であってもよい。検知部2がソナーであってもよい。この場合、検査波及び反射波は音波である。
【0036】
検知部2として、機体前方の物体を検知するセンサ2Fと、機体後方の物体を検知するセンサ2Bと、機体左方の物体を検知するセンサ2Lと、機体右方の物体を検知するセンサ2Rと、が備えられている。四つのセンサ2F,2B,2L,2Rによって、コンバイン1の機体の周囲の物体が検知される。
【0037】
本実施形態のコンバイン1では、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々の検知結果に基づいて作業走行の制御が行われる。例えば、物体(たとえば作業者など)への接近をセンサ2F,2B,2L,2Rが検知したことに基づいて、減速、操舵、または停車が行われる。
【0038】
コンバイン1は、衛星測位モジュール3を備える。衛星測位モジュール3は、GNSS(グローバルナビゲーションサテライトシステム、例えばGPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)で用いられる人工衛星GSからの測位信号を受信する。そして衛星測位モジュール3は、受信した測位信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを生成する。
【0039】
〔制御に関する構成〕
図2に示すように、コンバイン1は、制御装置20を含むシステムを備えている。制御装置20、及び、制御装置20に含まれる各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0040】
制御装置20に、入力インターフェース(不図示)を介して、検知部2と、衛星測位モジュール3と、が接続されている。検知部2は、コンバイン1の機体の周囲の物体を検知すると、物体を検知したことを示す検知信号を制御装置20へ出力する。衛星測位モジュール3は、測位信号を制御装置20へ出力する。
【0041】
制御装置20は、出力インターフェース(不図示)を介して、走行装置11と、収穫部Hと、脱穀装置13と、穀粒排出装置18と、報知装置24と、発光装置25と、を制御可能に構成されている。報知装置24は、例えば、ホーンやスピーカ等の音出力装置であっても良いし、メッセージ表示等を可能なディスプレイ表示装置等であっても良い。発光装置25は、例えば積層表示灯であっても良いし、回転表示灯であっても良い。本発明の『作業装置』に収穫部H及び脱穀装置13が含まれる。
【0042】
制御装置20に記憶部23が接続されている。記憶部23は、機能部を実現するためのソフトウェアや、機能部が生成する一時データ、工場データを記憶する。特に、記憶部23は、後述する検知履歴を記憶する。記憶部23は、例えば、HDDや不揮発性RAMなどである。
【0043】
制御装置20は、衛星測位モジュール3により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。そして制御装置20は、当該位置座標に基づいて圃場マップを生成する。この圃場マップに、圃場の外形を示すマップと、作業の対象となる作業対象領域を示すマップと、が含まれる。圃場の外形を示すマップは、外周領域での周回走行の際に取得される当該位置情報に基づいて生成可能である。
【0044】
なお、当該位置座標は、コンバイン1のうち、衛星測位モジュール3の位置座標であっても良いし、センサ2Fの位置座標であっても良いし、収穫部Hの左右方向中心位置の座標であっても良い。
【0045】
本実施形態では、制御装置20は複数の制御モードを有する。複数の制御モードに、自動モードと、手動モードと、テストモードと、が含まれる。本発明の『通常モード』に、自動モードと手動モードとが含まれる。
【0046】
制御装置20は、手動モードのとき、人為操作に基づいて、コンバイン1の手動走行を制御する。
【0047】
制御装置20は、自動モードのとき、圃場マップの作業対象領域に、自動走行のための目標走行経路を生成する。そして、自動モードのときに制御装置20は、測位信号に基づく自車位置と、目標走行経路と、に基づいて、コンバイン1が目標走行経路に沿って自動走行するように走行装置11を制御する。同時に、自動モードのときに制御装置20は、圃場対象領域において作業走行を行うように収穫部H及び脱穀装置13を制御する。
【0048】
上述したように、検知部2は、コンバイン1の機体の周囲の物体を検知すると、制御装置20へ検知信号を出力する。制御装置20は、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの少なくとも一つから検知信号を入力すると、報知装置24に報知出力を行わせる。報知装置24の報知出力に、例えばホーンやスピーカ等の音出力、ディスプレイ画面におけるメッセージ表示等が含まれる。また、制御装置20は、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの少なくとも一つから検知信号を入力すると、発光装置25に発光出力を行わせる。発光装置25の発光出力に、点灯、点滅、発光色の変化、等が含まれる。
【0049】
コンバイン1が作業走行を行う際に四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの何れも検知信号を出力していなければ、報知装置24は報知を行わず、発光装置25は青色の発光出力を行う。
【0050】
例えば、コンバイン1が前進する際に、センサ2Fが機体前方の物体を検知すると、制御装置20は、走行装置11及び収穫部Hを停止させ、機体前方に物体が存在することを報知装置24に報知させ、発光装置25に赤色(ピンク色であっても良い、以下同じ)の発光出力を行わせる。
【0051】
また、コンバイン1が後進する際に、センサ2Bが機体後方の物体を検知すると、制御装置20は、走行装置11を停止させ、機体後方に物体が存在することを報知装置24に報知させ、発光装置25に赤色の発光出力を行わせる。なお、このときの『前進』と『後進』との夫々に、旋回を伴う『前進』と『後進』とが含まれる。
【0052】
つまり、コンバイン1の進行方向に物体が存在することが検知部2によって検出されると、制御装置20は、走行装置11を停止させ、機体の進行方向に物体が存在することを報知装置24に報知させ、発光装置25に赤色の発光出力を行わせる。
【0053】
センサ2Lまたはセンサ2Rが機体横外方の物体を検知すると、制御装置20は、機体横外方に物体が存在することを報知装置24に報知させ、発光装置25に緑色(黄色であっても良い、以下同じ)の発光出力を行わせる。また、コンバイン1が前進する際にセンサ2Bが機体後方の物体を検知する場合、制御装置20は、機体後方に物体が存在することを報知装置24に報知させ、発光装置25に緑色の発光出力を行わせる。更に、コンバイン1が後進する際に、センサ2Bが機体前方の物体を検知する場合にも、制御装置20は、機体前方に物体が存在することを報知装置24に報知させ、発光装置25に緑色の発光出力を行わせる。
【0054】
つまり、コンバイン1の進行方向以外の方向に物体が存在することが検知部2によって検知されると、制御装置20は、機体の周囲に物体が存在することを報知装置24に報知させ、発光装置25に緑色の発光出力を行わせる。このとき、走行装置11及び収穫部Hにおける作動または停止の状態は、そのまま継続する。このように、制御装置20は、自動モードまたは手動モードのとき、検知部2が検知信号を出力したことに応じて走行装置11と作業装置との少なくとも一方に作動状態を変更させる。
【0055】
このように、制御装置20は、手動モードまたは自動モードのとき、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々の検知状態に基づいて、機体の周囲において物体の存在する方向を算出し、かつ、方向に応じて発光装置25に発光態様を変更させる。
【0056】
四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々の検知信号の強度は、物体との距離が短いほど強くなる。このため、制御装置20は、手動モードまたは自動モードのとき、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々の検知状態に基づいて、機体と物体との距離を算出し、かつ、物体の存在する方向と距離との組み合わせに応じて発光装置25に発光態様を変更させる。例えば、コンバイン1の進行方向以外の方向に物体が存在することが検知部2によって検出されると、発光装置25が緑色に点滅し、機体と物体との距離が短くなるほど点滅間隔が短くなる。また、例えば、コンバイン1の進行方向に物体が存在することが検知部2によって検出されると、発光装置25が赤色に点滅し、機体と物体との距離が短くなるほど点滅間隔が短くなる。
【0057】
〔テストモード〕
上述したように、本実施形態のコンバイン1では、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々の検知結果に基づいて作業走行の制御が行われる。しかし、例えばセンサ2F,2B,2L,2Rに異物が付着していたり、センサ2F,2B,2L,2Rが故障していたりすると、正常な検知結果に基づく制御が行われなくなる虞が考えられる。このため、本実施形態では、制御装置20における複数の制御モードの一つとしてテストモードが備えられている。
【0058】
本実施形態においては、制御装置20は、例えば一日の使用が開始されるタイミングで、制御モードをテストモードへ切り替える。例えば、オペレータが一日の最初にコンバイン1を起動したとき、制御装置20の制御モードは、最初にテストモードに切り替わる。これにより、センサ2F,2B,2L,2Rの日常点検が可能となる。また、例えばコンバイン1の工場検査(出荷前検査、整備検査等)において、制御装置20は、例えばボタン操作等の人為的な操作によって制御モードをテストモードへ切り替え可能である。
【0059】
図3及び図4に示すように、制御装置20は、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの全ての検知信号を入力したら、手動モード及び自動モードへの切り替わりを許可する。例えば、オペレータが機体の周囲を歩きながら四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの検知を確認しても良い。また、例えばコンバイン1が格納庫から作業対象の圃場へ移動している途中において、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの全ての検知信号を入力したら、制御装置20は、自動モードへの切り替わりを許可する構成であっても良い。
【0060】
四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々が検知信号を出力する様子が、図3において時系列のグラフで示されている。図3において、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々が検知信号を出力した状態が『遠』と『近』とで示され、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々が検知信号を出力していない状態が『OFF』で示されている。また、図1において、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々の検知範囲が『遠』と『近』とで示されている。『遠』とは、センサ2F,2B,2L,2Rと物体との距離が遠く、検知強度が弱いことを意味する(これを『遠方検知』と称する)。『近』とは、センサ2F,2B,2L,2Rと物体との距離が近く、検知強度が強いことを意味する(これを、『近方検知』と称する)。
【0061】
また、図3に、手動モード及び自動モードへの切り替わりの許可を示す許可フラグが示される。許可フラグがOFFの場合、手動モード及び自動モードへの制御モードの切り替わりは許可されない。また、許可フラグがONの場合、手動モード及び自動モードへの制御モードの切り替わりが許可される。
【0062】
図3に示す例では、タイミングT11においてセンサ2Fが検知信号を出力し始めている。また、タイミングT12においてセンサ2Fが検知信号を出力し終えている。このセンサ2Fが検知信号を出力し始めてから出力し終えるまでの一連の出力の履歴が、記憶部23へ出力履歴として記憶される。記憶部23に、センサ2Fの遠方検知、近方検知、及び、非検知が記憶される。つまり、センサ2Fにおける一連の出力履歴に、センサ2Fの遠方検知、近方検知、及び、非検知が含まれる。
【0063】
図3に示す例では、タイミングT21においてセンサ2Rが検知信号を出力し始めている。また、タイミングT22においてセンサ2Rが検知信号を出力し終えている。このセンサ2Rが検知信号を出力し始めてから出力し終えるまでの一連の出力の履歴が、記憶部23へ出力履歴として記憶される。記憶部23に、センサ2Rの遠方検知、近方検知、及び、非検知が記憶される。つまり、センサ2Rにおける一連の出力履歴に、センサ2Rの遠方検知、近方検知、及び、非検知が含まれる。
【0064】
図3に示す例では、タイミングT31においてセンサ2Bが検知信号を出力し始めている。また、タイミングT32においてセンサ2Bが検知信号を出力し終えている。このセンサ2Bが検知信号を出力し始めてから出力し終えるまでの一連の出力の履歴が、記憶部23へ出力履歴として記憶される。記憶部23に、センサ2Bの遠方検知、近方検知、及び、非検知が記憶される。つまり、センサ2Bにおける一連の出力履歴に、センサ2Bの遠方検知、近方検知、及び、非検知が含まれる。
【0065】
図3に示す例では、タイミングT41においてセンサ2Lが検知信号を出力し始めている。また、タイミングT42においてセンサ2Lが検知信号を出力し終えている。このセンサ2Lが検知信号を出力し始めてから出力し終えるまでの一連の出力の履歴が、記憶部23へ出力履歴として記憶される。記憶部23に、センサ2Lの遠方検知、近方検知、及び、非検知が記憶される。つまり、センサ2Lにおける一連の出力履歴に、センサ2Lの遠方検知、近方検知、及び、非検知が含まれる。
【0066】
タイミングT42において、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの全てが検知信号を出力済みとなる。換言すると、タイミングT42において、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの全ての出力履歴が記憶部23へ記憶される。このタイミングT42において、許可フラグがOFFからONへ切り替わり、手動モード及び自動モードへの制御モードの切り替わりが可能となる。
【0067】
図4のフローチャートに基づいて説明すると、制御装置20は、制御モードをテストモードへ切り替えた後、図4に示すステップ#01~ステップ#04の判定処理を行う。ステップ#01は、センサ2Fにおける一連の出力履歴が記憶部23へ記憶されたか否かの判定である。ステップ#02は、センサ2Rにおける一連の出力履歴が記憶部23へ記憶されたか否かの判定である。ステップ#03は、センサ2Bにおける一連の出力履歴が記憶部23へ記憶されたか否かの判定である。ステップ#04は、センサ2Lにおける一連の出力履歴が記憶部23へ記憶されたか否かの判定である。即ち、ステップ#01~ステップ#04の全てがYesの判定になると、制御装置20は、図3に示す許可フラグをOFFからONへ切り替える(ステップ#05)。
【0068】
このように、制御装置20は、テストモードのときに全てのセンサ2F,2B,2L,2Rについて検知履歴が記憶部23へ記憶されている場合に、手動モード及び自動モードへの切り替わりを許容する。換言すると、制御装置20は、テストモードのときに全てのセンサ2F,2B,2L,2Rにおける遠方検知、近方検知、及び、非検知の履歴が記憶部23へ記憶されている場合に、手動モード及び自動モードへの切り替わりを許容する。
【0069】
制御装置20は、テストモードにおいて、検知部2が検知信号を出力したことに応じて報知装置24に報知を行わせる。制御装置20は、テストモードのとき、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rのうちの何れが物体を検知したかに応じて報知装置24に報知態様を変更させる。
【0070】
報知装置24がホーンやスピーカ等の音出力装置である場合、制御装置20は、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rのうちの何れが物体を検知したかに応じて報知装置24の音色や音声案内のパターンを変更させる構成であっても良い。この場合、例えばホーンの吹鳴パターンや音声案内のパターンとして、前後左右の4パターンと、遠近の2パターンと、の組合せで合計8パターンが存在する構成であっても良い。
【0071】
また、報知装置24がディスプレイ表示装置である場合、制御装置20は、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rのうちの何れが物体を検知したかをディスプレイ画面に表示させる構成であっても良い。この場合、例えばディスプレイ画面の表示パターンとして、前後左右の4パターンと、遠近の2パターンと、の組合せで合計8パターンが存在する構成であっても良い。
【0072】
上述したように、四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々の検知信号の強度は、物体との距離が短いほど強くなる。このため、報知装置24がホーンやスピーカ等の音出力装置である場合、センサ2F,2B,2L,2Rの検知信号の強度が強くなるほど、報知装置24の音量が大きくなったり、ホーンの吹鳴間隔が短くなったりする。また、報知装置24がディスプレイ表示装置である場合、センサ2F,2B,2L,2Rの検知信号の強度が強くなると、ディスプレイ画面に物体を示す絵柄等が点滅表示や強調表示される。つまり、制御装置20は、テストモードのとき、検知信号の態様に応じて報知装置24に報知態様を変更させる。
【0073】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0074】
(1)四つのセンサ2F,2B,2L,2Rの夫々は可視光線を撮像するカメラであっても良いし、赤外線を撮像するカメラであっても良い。
【0075】
(2)上述の実施形態において、検知部2に4個のセンサが備えられているが、この実施形態に限定されない。例えば、検知部2は、3個以下のセンサで構成されても良いし、5個以上のセンサで構成されても良い。つまり、検知部2が複数のセンサを有する構成であっても良い。また、検知部2が単一のセンサを有する構成であっても良い。
【0076】
(3)上述の実施形態において、作業装置は収穫部Hであるが、この実施形態に限定されない。作業装置は、例えば、コーンヘッダ、草刈装置(ブームモア、チョッパー等)、プラウ、マルチャー、ストーンピッカー、播種装置、レーキ、テッダー、牽引式の収穫選別装置、摘芯装置、中耕管理装置、等であっても良い。
【0077】
(4)上述の発光装置25は備えられない構成であっても良い。
【0078】
(5)上述の記憶部23が検知履歴を記憶しない構成であっても良い。また、上述の記憶部23が備えられない構成であっても良い。
【0079】
(6)本発明の『通常モード』は、自動モードと手動モードとの一方であっても良い。
【0080】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、作業車に適用可能である。このため、本実施形態に例示された汎用型のコンバイン1に限定されず、自脱型のコンバイン、種々の収穫機(例えばトウモロコシ収穫機、サトウキビ収穫機、ポテト収穫機、ビート収穫機、ニンジン収穫機等)、トラクタ、田植機、施肥管理機、自走式散布機、自走式草刈機等に適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
2 :検知部
2B :センサ
2F :センサ
2L :センサ
2R :センサ
20 :制御装置
23 :記憶部
24 :報知装置
25 :発光装置
H :収穫部(作業装置)
図1
図2
図3
図4