(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082819
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】培地及び培地を用いる細胞の培養方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20240613BHJP
【FI】
C12N5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196945
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪口 幸矢佳
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BB04
4B065BC01
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、細胞接着性に優れる培地を提供することにある。
【解決手段】 アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物を含有する培地であって、前記アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物の濃度が、前記培地の体積に基づいて、0.1~1000μg/mlである培地。前記アミンは、炭素数1~20のアミンであることが好ましい。また、前記炭素数2~4のアルキレンオキサイドは、プロピレンオキサイドであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物を含有する培地であって、
前記アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物の濃度が、前記培地の体積に基づいて、0.1~1000μg/mlである培地。
【請求項2】
前記アミンが、炭素数1~20のアミンである請求項1に記載の培地。
【請求項3】
前記炭素数2~4のアルキレンオキサイドがプロピレンオキサイドである請求項1又は2に記載の培地。
【請求項4】
前記アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物において、前記アミンが有する活性水素1モルに対する炭素数2~4のアルキレンオキサイドの平均付加モル数が0.1~10モルである請求項1又は2に記載の培地。
【請求項5】
血清の含有量が、培地の体積に基づいて、15体積%以下である請求項1又は2に記載の培地。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の培地を用いる細胞の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は培地及び培地を用いる細胞の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、細胞培養用の培地としてEagle’s MEM(minimum essential medium)等のアミノ酸、ビタミン、無機塩および糖類等からなる基礎培地に、動物細胞増殖因子を添加した培養培地が知られている。この場合、動物細胞増殖因子としては、血清が一般的で、高価にもかかわらず必要量は多く、5~20体積%程度添加する必要がある。
また、動物由来の因子の混入を嫌う用途では、血清以上に高価な既知の細胞成長因子やホルモン類等を含む細胞培養用の培地が注目されている(特許文献1)。しかし、上記の培地では、高価な上に培養での細胞増殖性が不十分であり、安全かつ比較的安価な細胞増殖性に繋がる細胞接着性の改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、細胞接着性に優れる培地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物を含有する培地であって、前記アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物の濃度が、前記培地の体積に基づいて、0.1~1000μg/mlである培地;前記の培地を用いる細胞の培養方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の培地は、優れた細胞接着性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の培地は、アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物を含有する。
アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0008】
前記のアミンとしては、炭素数1~20のアミン等が挙げられ、具体的には、炭素数1~20の脂肪族アミン及び炭素数6~20の芳香族アミン等が挙げられる。
炭素数1~20の脂肪族アミンとしては、モノアミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、2-アミノプロパノール、4-アミノブタノール、3-メトキシプロピルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン);
ジアミン[エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン、ジメチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロミルアミン、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、ピペラジン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホルンジアミン等];
トリアミン[ジエチレントリアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、スペルミジン等];
アミノ基を4個以上有するポリアミン(トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン等)等が挙げられる。
炭素数6~20の芳香族アミンとしては、モノアミン(アニリン、キシレンジアミン等);
ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジフェニルエーテルジアミン等)等が挙げられる。
前記のアミンは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。
前記のアミンの内、基礎培地への溶解性及び細胞接着性の観点から好ましいのは、活性水素(窒素原子に結合した水素原子)を2個以上含むアミンであり、更に好ましいのは、活性水素(窒素原子に結合した水素原子)を3個以上含むアミンであり、特に好ましいのは活性水素(窒素原子に結合した水素原子)を4個以上含むアミンである。
【0009】
前記の炭素数2~4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2-プロピレンオキサイド、1,3-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
前記の炭素数2~4のアルキレンオキサイドの内、基礎培地への溶解性及び細胞接着性の観点から好ましいのは、エチレンオキシド、プロピレンオキサイド(1,2-プロピレンオキサイド、1,3-プロピレンオキサイド)であり、更に好ましいのは、プロピレンオキサイド(1,2-プロピレンオキサイド、1,3-プロピレンオキサイド)であり、特に好ましいのは1,2-プロピレンオキサイドである。
【0010】
前記のアミンが有する活性水素(窒素原子に結合した水素原子)1モルに対する炭素数2~4のアルキレンオキサイドの平均付加モル数は、細胞毒性及び細胞接着性の観点から、0.1~10モルであることが好ましい。
前記アミンが水酸基を有する場合、炭素数2~4のアルキレンオキサイドは、窒素原子に結合した水素原子だけでなく、水酸基に付加していても良い。
アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物が有する窒素原子の重量割合は、細胞接着性及び細胞毒性の観点から、アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物の重量を基準として、1~40重量%であることが好ましく、1~20重量%であることが更に好ましく、3~10重量%であることが特に好ましい。
【0011】
前記アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物の含有量は、細胞接着性の観点から、前記の培地の体積に対して、0.1~1000μg/mlである。
また、細胞毒性及び細胞接着性の観点から、前記アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物の含有量は、前記の培地の体積に基づいて、10~1000μg/mlであることが好ましく、50~1000μg/mlであることが更に好ましい。
【0012】
前記のアミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物は、水溶性であることが好ましい。
なお、本明細書において、水溶性とは、25℃の水100gに少なくとも0.1g溶解することを意味する。
【0013】
培地中には、必要に応じて、細胞増殖因子を含有させることができる。細胞増殖因子を含有させることにより、細胞増殖性をさらに高めることができる。
細胞増殖因子としては、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、インシュリン様増殖因子、血管内皮増殖因子、神経成長因子、幹細胞因子、白血病阻害因子、骨形成因子、ヘパリン結合上皮細胞増殖因子、神経栄養因子、結合組織成長因子、アンジオポエチン、サイトカイン、インターロイキン、アドレナモジュリン及びナトリウム利尿ペプチド等の生理活性ペプチドが含まれる。これらのうち、適用できる細胞の範囲が広く、細胞増殖性が高い観点から、上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子、インシュリン様増殖因子及び骨形成因子が好ましく、さらに好ましくは上皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子及びインシュリン様増殖因子である。
細胞増殖因子を使用する場合、細胞増殖因子の含有量は細胞増殖因子の種類によって異なるが、培地の体積に基づいて、10-9~104ng/mlが好ましく、さらに好ましくは10-7~100ng/ml、特に好ましくは10-5~1ng/mlである。
【0014】
培地には、さらに抗菌剤(アンホテリシンB、ゲンタマイシン、ペニシリン及びストレプトマイシン等)を含有させることができる。抗菌剤を含有させる場合、この含有量は抗菌剤の種類によって異なるが、培地の体積に基づいて、0.01~107μg/mlが好ましく、さらに好ましくは0.1~106μg/ml、特に好ましくは1~105μg/mlである。
【0015】
本発明の培地は、血清を含有していても良いが、動物由来の因子の混入低減、細胞接着性、細胞増殖性の観点から、血清の含有量は、培地の体積(ml)に基づいて、15体積%以下であることが好ましく、更に好ましくは10体積%以下であり、特に好ましくは5体積%以下であり、最も好ましくは1体積%以下である。
【0016】
本発明の培地の製造方法としては、培地(基礎培地、血清入り培地、低血清培地、無血清培地等、栄養源としてL-グルタミン等を含有)に、アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物を投入し、混合して含有させることができ、例えば以下の方法が挙げられる。
ガラス製容器、マグネチックスターラー及び回転子を使用し、常温(25℃±10)、常圧(1atm)下で培地(基礎培地、血清入り培地、低血清培地、無血清培地等)を撹拌させながら、アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物を投入する。特に限定しないが、マグネチックスターラーの回転数は10~200rpmが好ましい。アミンへの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物を投入後、さらに1時間撹拌を続ける。次にクリーンベンチ内でディスポーザブルメンブレンフィルターユニット(商品名:DISMIC-25cs、孔径:0.45μm、アドバンテック東洋(株)製)を用いろ過滅菌する。
【0017】
本発明の培地を使用した細胞培養方法としては、例えば、組織培養用フラスコに培地を投入し、細胞液を細胞濃度が1万~100万個/mlとなるように分散させ、二酸化炭素(CO2)濃度5体積%、37℃の条件下で1時間~20日間、必要に応じて1日毎に培地交換しなら培養をおこなう。
【0018】
本発明の培地で培養できる細胞(CE)としては細胞であれば制限がないが、本発明の培地を用いると細胞増殖性が高いため、医薬品等の有用物質生産や治療等に用いられる哺乳動物由来の正常細胞、哺乳動物由来の株化細胞及び昆虫細胞が適している。
哺乳動物由来の正常細胞としては、皮膚に関与する細胞(上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞等)、血管に関与する細胞(血管内皮細胞、平滑筋細胞及び線維芽細胞等)、筋肉に関与する細胞(筋肉細胞等)、脂肪に関与する細胞(脂肪細胞等)、神経に関与する細胞(神経細胞等)、肝臓に関与する細胞(肝細胞等)、膵臓に関与する細胞(膵ラ島細胞等)、腎臓に関与する細胞(腎上皮細胞、近位尿細管上皮細胞及びメサンギウム細胞等)、肺・気管支に関与する細胞(上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び平滑筋細胞等)、目に関与する細胞(視細胞、角膜上皮細胞及び角膜内皮細胞等)、前立腺に関与する細胞(上皮細胞、間質細胞及び平滑筋細胞等)、骨に関与する細胞(骨芽細胞、骨細胞及び破骨細胞等)、軟骨に関与する細胞(軟骨芽細胞及び軟骨細胞等)、歯に関与する細胞(歯根膜細胞及び骨芽細胞等)、血液に関与する細胞(白血球及び赤血球等)、及び幹細胞{例えば、骨髄未分化間葉系幹細胞、骨格筋幹細胞、造血系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞(oval cell、small hepatocyte等)、脂肪組織幹細胞、胚性幹(ES)細胞、表皮幹細胞、腸管幹細胞、精子幹細胞、胚生殖幹(EG)細胞、膵臓幹細胞(膵管上皮幹細胞等)、白血球系幹細胞、リンパ球系幹細胞、角膜系幹細胞、前駆細胞(脂肪前駆細胞、血管内皮前駆細胞、軟骨前駆細胞、リンパ球系前駆細胞、NK前駆細胞等)等}等が挙げられる。
【0019】
哺乳動物由来の株化細胞としては、3T3細胞、A549細胞、AH130細胞、B95-8細胞、BHK細胞、BOSC23細胞、BS-C-1細胞、C3H10T1/2細胞、C-6細胞、CHO細胞、COS細胞、CV-1細胞、F9細胞、FL細胞、FL5-1細胞、FM3A細胞、G-361細胞、GP+E-86細胞、GP+envAm12細胞、H4-II-E細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、HEp-2細胞、HL-60細胞、HTC細胞、HUVEC細胞、IMR-32細胞、IMR-90細胞、K562細胞、KB細胞、L細胞、L5178Y細胞、L-929細胞、MA104細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MIA PaCa-2細胞、N18細胞、Namalwa細胞、NG108-15細胞、NRK細胞、OC10細胞、OTT6050細胞、P388細胞、PA12細胞、PA317細胞、PC-12細胞、PER.C6細胞、PG13細胞、QGH細胞、Raji細胞、RPMI-1788細胞、SGE1細胞、Sp2/O-Ag14細胞、ST2細胞、THP-1細胞、U-937細胞、V79細胞、VERO細胞、HT-1080細胞、WI-38細胞、ψ2細胞及びψCRE細胞等が挙げられる{細胞培養の技術(日本組織培養学会編集、株式会社朝倉書店発行、1999年)}。
【0020】
昆虫細胞としては、カイコ細胞(BmN細胞及びBoMo細胞等)、クワコ細胞、サクサン細胞、シンジュサン細胞、ヨトウガ細胞(Sf9細胞及びSf21細胞等)、クワゴマダラヒトリ細胞、ハマキムシ細胞、ショウジョウバエ細胞、センチニクバエ細胞、ヒトスジシマカ細胞、アゲハチョウ細胞、ワモンゴキブリ細胞及びイラクサキンウワバ細胞(Tn-5細胞、HIGH FIVE細胞及びMG1細胞等)等が挙げられる{昆虫バイオ工場(木村滋 編著、株式会社工業調査会 発行、2000年)}。
これらの細胞のうち、医薬品等の有用物質生産や治療等の観点から、哺乳動物由来の正常細胞及び哺乳動物由来の株化細胞が好ましい。そして、治療に有用な点で、さらに好ましくは平滑筋細胞、肝細胞、骨芽細胞、上皮細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞及び幹細胞が好ましく、特に好ましくは上皮細胞である。また、医薬品等の有用物質生産に有用な点で、さらに好ましくは3T3細胞、BHK細胞、CHO細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、L-929細胞、MDCK細胞、PER.C6細胞、VERO細胞、HT-1080細胞及びWI-38細胞、特に好ましくはMDCK細胞、VERO細胞及びHT-1080細胞である。
【0021】
培地に分散させる細胞の濃度(個/mL)としては特に制限はないが、培地1mL当たり、100~1億が好ましく、さらに好ましくは1000~1千万、特に好ましくは1万~100万である。
細胞の個数の計数方法は公知の方法が使用でき、例えば、クリスタルバイオレットを用いた細胞核計数法で測定することができる{細胞培養の技術(日本組織培養学会編集、株式会社朝倉書店発行、1999年)}。
【0022】
上記細胞を培養する場合の細胞培養用担体は、特に制限無く利用でき、例えば、マルチウエルプレ-ト、シャーレ、組織培養用フラスコ、ロ-ラ-ボトル、マイクロキャリア(ビーズ)、フィルム、不織布、多孔質粒子及びホロ-ファイバ-等が用いられる。これらのうち好ましくはマイクロキャリア(ビーズ)、フィルム、マルチウェルプレ-ト、シャーレ、組織培養用フラスコ及びローラーボトルであり、特に好ましくは、組織培養用フラスコ、マイクロキャリア(ビーズ)及びマルチウェルプレ-トである。
【0023】
培養条件としては、特に制限は無く、二酸化炭素(CO2)濃度1~20体積%、5~45℃で1時間~100日間、必要に応じて1~10日毎に培地交換しなら培養する条件等が適用できる。好ましい条件としては、CO2濃度3~10体積%、30~40℃、1時間~20日間、1~3日毎に培地交換しながら培養する条件である。
【実施例0024】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、以下において部は重量部を表す。
【0025】
<製造例1:アミンへのアルキレンオキサイド付加物の製造例>
[エチレンジアミンへのPO4モル付加物(X-1)の合成]
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、エチレンジアミン60部(1モル部)を投入し、窒素置換後密閉し、-0.097MPa(ゲージ圧)の減圧下、130℃に昇温し、PO232部(4モル部)を圧力が0.3MPa(ゲージ圧)を超えないように調整しながら、5時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃で1時間熟成し、エチレンジアミンへのPO4モル付加物(X-1)を得た。
【0026】
<製造例2>
[シクロヘキシルアミンへのPO2モル付加物(X-2)の合成]
製造例1において、エチレンジアミン60部(1モル部)をシクロヘキシルアミン99部(1モル部)に、PO232部(4モル部)をPO116部(2モル部)に変更した以外は製造例1と同様にして、シクロヘキシルアミンへのPO2モル付加物(X-2)を得た。
【0027】
<製造例3>
[エチレンジアミンへのEO4モル付加物(X-3)の合成]
製造例1において、PO232部(4モル部)をEO176部(4モル部)に変更した以外は製造例1と同様にして、エチレンジアミンへのEO4モル付加物(X-3)を得た。
【0028】
<製造例4>
[キシレンジアミンへのEO2モル付加物(X-4)の合成]
製造例1において、エチレンジアミン60部(1モル部)をキシレンジアミン136部(1モル部)に、PO232部(4モル部)をEO88部(2モル部)に変更した以外は製造例1と同様にして、エチレンジアミンへのEO2モル付加物(X-4)を得た。
【0029】
<製造例5>
[キシレンジアミンへのEO4モル付加物(X-5)の合成]
製造例1において、エチレンジアミン60部(1モル部)をキシレンジアミン136部(1モル部)に、PO232部(4モル部)をEO176部(4モル部)に変更した以外は製造例1と同様にして、キシレンジアミンへのEO4モル付加物(X-5)を得た。
【0030】
<製造例6>
[ドデシルアミンへのEO15モル付加物(X-6)の合成]
撹拌機、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、n-ドデシルアミン185部(1モル部)を投入し、窒素置換後密閉し、減圧下(-0.097MPa)、95℃に昇温し、EO88部(2モル部)を圧力が0.3MPaを超えないように調整しながら、90~110℃の範囲で4時間かけて滴下した。滴下終了後、95℃で30分間熟成し、室温まで冷却した。次いでテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液3.2部を空気が混入しないように投入し、95℃に昇温し同温で1時間減圧下(-0.097MPa)脱水した。温度を70℃に下げた後、EO660部(15モル部)を圧力が0.2MPaを超えないように調整しながら、70~90℃の範囲で3時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で30分間熟成させ、150~170℃に昇温後、同温で触媒の加熱分解物を3時間かけて減圧(-0.097MPa)除去し、ドデシルアミンへのEO15モル付加物(X-6)を得た。
【0031】
<水溶性試験>
製造例1~6で製造したアミンへのアルキレンオキサイド付加物(X-1)~(X-6)を0.1g測り取り、25℃の水100g入れて、溶解するか目視にて確認した。
透明の場合は水溶性、白濁や濁りを確認した場合は非水溶性とした。製造例1~6で製造したアミンへのアルキレンオキサイド付加物(X-1)~(X-6)は全て水溶性であった。
【0032】
<製造例7>
<基本培地1の調整>
E-MEM培地[商品名:E-MEM(L-グルタミン、フェノールレッド含有)、富士フイルム和光純薬(株)製]449ml、抗菌剤溶液{商品名:Gentamicin&AmphotericinB、Thermo Fisher社製、抗菌剤溶液1mlあたりgentamicin5000μg及びamphotericin B125μgを含有}1ml、血清50ml(商品名:Fetal Bovine Serum,qualified,heat inactivated,United States、Thermo Fisher社製)をクリーンベンチ内で混合し、500mlの基本培地1を得た。
【0033】
<製造例8>
<基本培地2の調整>
無血清培地[商品名:VP-SFM、インビトロジェン(株)製]1000ml、抗菌剤溶液{商品名:Gentamicin&AmphotericinB、Thermo Fisher社製、抗菌剤溶液1mlあたりgentamicin5000μg及びamphotericin B125μgを含有}2ml、200mMのL-グルタミン液(商品名:GlutaMAXTM-I、インビトロジェン(株)製)20mlをクリーンベンチ内で混合し、1022mlの基本培地2を得た。
【0034】
<実施例1~20及び比較例1~4:培地の調製>
表1に記載の種類のアミンへのアルキレンオキサイド付加物を、最終的に得られる培地の体積に対して、表1に記載の濃度となるように、表1に記載の種類の基本培地に配合し、混合することで、実施例1~20、比較例1~4の培地を作製した。
【0035】
実施例1~20、比較例1~4で製造した培地を用いて、以下の方法で細胞を培養し、細胞接着性を評価した。
実施例1~16及び比較例1~4の培地を0.1ml/穴となるように、マルチウェルプレート[商品名:組織培養用マイクロプレート(付着性細胞用)、96well、平底、IWAKI(株)製]に投入した。
次に予めプレ培養したVERO細胞(大日本住友製薬(株)製)を細胞濃度が10万個/mlになるように各々の培地に播種した。37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%のCO2インキュベーターの中で3時間培養を行った。
培養3時間目に各々の培地を吸引除去し、PBS200μl/穴を投入、吸引除去を2回実施し、基本培地(90μl/穴)及び生細胞数測定試薬Cell Count Reagent SF(ナカライテクス(株)製、10μl/穴)を投入し、37℃、二酸化炭素ガス濃度5容量%のCO2インキュベーターの中で1.5時間静置した。1.5時間後、プレートリーダー(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて、492nm(参考波長620nm)の吸光度を測定した。
アミンへのアルキレンオキサイド付加物を添加しない基本培地を用いて試験した際の吸光度の測定値(比較例3又は4)を吸光度(ブランク)とし、それぞれで測定した吸光度を吸光度(ブランク)で除し100掛けた値を表1に示した。吸光度が高いほど、細胞接着性に優れることを示す。
【0036】