(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082837
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】油性粒子分散組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240613BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240613BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240613BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20240613BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20240613BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240613BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240613BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240613BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20240613BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/86
A61Q13/00
A61Q1/14
A61Q5/02
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q17/00
A61K8/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196979
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】507281937
【氏名又は名称】株式会社コスモビューティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三金 邦洋
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC371
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD391
4C083AD392
4C083BB04
4C083BB12
4C083BB41
4C083BB48
4C083CC22
4C083CC50
4C083DD21
4C083EE01
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】新たな油性粒子分散組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】次の特徴を有する油性粒子分散組成物:(A)2種以上の固形油、(B)両親媒性物質及び(C)水を含有し、油性粒子分散組成物中、成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であり、成分(B)は、次の(B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種である、(B1)2価カルボン酸エステル、(B2)アルキレンオキシド誘導体、(B3)2価アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、(B4)HLB3.5以上の非イオン界面活性剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の特徴を有する油性粒子分散組成物:
(A)2種以上の固形油、(B)両親媒性物質及び(C)水を含有し、
油性粒子分散組成物中、成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であり、
成分(B)は、次の(B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種である、
(B1)2価カルボン酸エステル、
(B2)アルキレンオキシド誘導体、
(B3)2価アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、
(B4)HLB3.5以上の非イオン界面活性剤。
【請求項2】
前記組成物中、成分(A)の含有量が0.1~50質量%である、請求項1に記載の油性粒子分散組成物。
【請求項3】
前記組成物中、成分(A)100質量部に対して、成分(B)が0.02~90質量部である、請求項1又は2に記載の油性粒子分散組成物。
【請求項4】
前記組成物中、成分(A)と成分(B)との合計量が0.2~60質量%である、請求項1又は2に記載の油性粒子分散組成物。
【請求項5】
請求項1に記載する油性粒子分散組成物の分散媒除去物である油性粒子。
【請求項6】
請求項1に記載する油性粒子分散組成物又は請求項5に記載する油性粒子を配合した、油性粒子配合製剤。
【請求項7】
油性粒子分散組成物の製造方法であって、次の工程を含む製造方法:
工程(1)(A)2種以上の固形油と(B)両親媒性物質とを混合し、成分(A)の 融点以上の温度の混合液を得る工程、及び
工程(2)前記混合液と、成分(A)の融点以上の温度の(C)水を含有し、得られた混合液を撹拌しながら成分(A)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する工程、
ここで、該油性粒子分散組成物は、
成分(A)~(C)を含有し、
該組成物中、成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であり、
成分(B)は、次の(B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種である、
(B1)2価カルボン酸エステル、
(B2)アルキレンオキシド誘導体、
(B3)2価アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、
(B4)HLB3.5以上の非イオン界面活性剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
油性粒子分散組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性粒子を含有する組成物が知られており、このような組成物は化粧料等の製剤において利用されている。
【0003】
油性粒子を水相に分散させた組成物として、例えば、特許文献1には、油性成分が、平均粒子径100μm以上の油性カプセルとして水性溶媒中に分散しているカプセル含有組成物が報告されている。該カプセル含有組成物は、油性カプセルの皮膜が、炭素原子数が16以上の高級アルコール及びグリセリン脂肪酸エステルエイコサン二酸縮合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分からなり、該成分はベヘニルアルコールを必ず含んでカプセルの組成物の5~40質量%含有され、かつ、水性溶媒に水溶性高分子が含有されていることを必須とする。特許文献1には、該カプセル含有組成物によれば、肌に塗布しても異物感を伴わないこと、また、カプセル粒子の平均粒子径が100μmと巨大で目視可能であることから、乳化粒子が見える乳液といえる外観を有し、視覚的にも斬新で美しくすることが可能となることが報告されている。
【0004】
このように、目的に応じて調製された油性粒子が分散した組成物が従来報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
新たな油性粒子分散組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。特に、分散安定性を備えた新たな油性粒子分散組成物を簡便に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、(A)2種以上の固形油、(B)両親媒性物質及び(C)水を、成分(A)~(C)の合計量を組成物中90質量%以上となるように組み合わせて用いると共に、成分(B)として次の(B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることにより、分散安定性を備えた新たな油性粒子分散組成物を簡便に製造できることを見出した。また、これらにおいて、力を加えた際に容易に崩壊する油性粒子が分散した組成物や、力を加えても容易に崩壊せず粒感が感じられる油性粒子が分散した組成物等が簡便に得られることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねて完成されたものであり、本開示は例えば下記に代表される発明を包含する。
項1.次の特徴を有する油性粒子分散組成物:
(A)2種以上の固形油、(B)両親媒性物質及び(C)水を含有し、
油性粒子分散組成物中、成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であり、
成分(B)は、次の(B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種である、
(B1)2価カルボン酸エステル、
(B2)アルキレンオキシド誘導体、
(B3)2価アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、
(B4)HLB3.5以上の非イオン界面活性剤。
項2.前記組成物中、成分(A)の含有量が0.1~50質量%である、項1に記載の油性粒子分散組成物。
項3.前記組成物中、成分(A)100質量部に対して、成分(B)が0.02~90質量部である、項1又は2に記載の油性粒子分散組成物。
項4.前記組成物中、成分(A)と成分(B)との合計量が0.2~60質量%である、項1~3のいずれか一項に記載の油性粒子分散組成物。
項5.項1~4のいずれか一項に記載する油性粒子分散組成物の分散媒除去物である油性粒子。
項6.項1~4のいずれか一項に記載する油性粒子分散組成物又は項5に記載する油性粒子を配合した、油性粒子配合製剤。
項7.油性粒子分散組成物の製造方法であって、次の工程を含む製造方法:
工程(1)(A)2種以上の固形油と(B)両親媒性物質とを混合し、成分(A)の 融点以上の温度の混合液を得る工程、及び
工程(2)前記混合液と、成分(A)の融点以上の温度の(C)水を含有し、得られた混合液を撹拌しながら成分(A)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する工程、
ここで、該油性粒子分散組成物は、
成分(A)~(C)を含有し、
該組成物中、成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であり、
成分(B)は、次の(B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種である、
(B1)2価カルボン酸エステル、
(B2)アルキレンオキシド誘導体、
(B3)2価アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、
(B4)HLB3.5以上の非イオン界面活性剤。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、新たな油性粒子分散組成物及びその製造方法を提供することができる。本開示によれば、特に、分散安定性を備えた新たな油性粒子分散組成物を簡便に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に包含される実施形態について更に詳細に説明する。なお、本開示において「含有する」は、「実質的にからなる」、「からなる」という意味も包含する。
【0010】
本開示は、次の特徴を有する油性粒子分散組成物を包含する:
(A)2種以上の固形油、(B)両親媒性物質及び(C)水を含有し、
油性粒子分散組成物中、成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であり、
成分(B)は、次の(B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種である、
(B1)2価カルボン酸エステル、
(B2)アルキレンオキシド誘導体、
(B3)2価アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、
(B4)HLB3.5以上の非イオン界面活性剤。
【0011】
(A)2種以上の固形油
本開示の油性粒子分散組成物は、2種以上の固形油を含む。固形油は、25℃で固体である限り制限されず、このような固形油として、高級アルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、動植物ロウ類、炭化水素系ワックス等が例示される。固形油として好ましくは高級アルコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、動植物ロウ類が例示される。
【0012】
固形油の融点として好ましくは融点55℃以上が例示され、より好ましくは融点60~90℃等が例示され、更に好ましくは融点65~85℃等が例示され、更により好ましくは65~82℃等が例示される。
【0013】
高級アルコールの一例として、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール等の炭素数12~22の高級アルコール等が例示される。高級アルコールとして好ましくは、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコールが例示される。
【0014】
本開示においてポリグリセリン脂肪酸エステルは、通常、界面活性剤として使用されないポリグリセリン脂肪酸エステルであって、一例として、油性増粘剤として知られているオクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、オクタステアリン酸ポリグリセリル-6等が例示される。ポリグリセリン脂肪酸エステルとして好ましくは、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20が例示される。
【0015】
脂肪酸グリセリドの一例として、脂肪酸モノグリセリド等が例示される。脂肪酸グリセリドとして好ましくはステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、カプリル酸グリセリル、カプリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル等が例示され、より好ましくはステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルが例示される。
【0016】
動植物ロウ類の一例としては、ヒマワリ種子ロウ、カルナウバロウ、コメヌカロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ等が例示され、動植物ロウ類として好ましくは、ヒマワリ種子ロウ、カルナウバロウ、コメヌカロウ、キャンデリラロウが例示される。
【0017】
炭化水素系ワックスの一例として、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等が例示される。
【0018】
本開示を制限するものではないが、固形油として、好ましくは(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル等が例示される。
【0019】
固形油は商業的に入手可能であり、例えば(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルとして商品名ノムコートHK-G(日清オイリオグループ社製、融点65℃)、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルとして商品名ノムコートSG(日清オイリオグループ社製、融点40~65℃)、ベヘニルアルコールとして商品名ベヘニルアルコール65(高級アルコール工業社製、融点65~73℃)、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20として商品名TAISET OG-C(太陽化学社製、融点67℃)、コメヌカロウとして商品名精製ライスワックスR-100(横関油脂社製、融点73~80℃)、カルナウバロウとして商品名精製カルナウバワックス1号(セラリカNODA社製、融点80~86℃)、ヒマワリ種子ロウとして商品名精製TOWAX-6F2(東亜化成社製、融点73.5~79.5℃)、ステアリン酸グリセリルとして商品名サンソフトNo.8004-C(太陽化学社製、融点67~70℃)、ベヘン酸グリセリルとして商品名サンソフトNo.8100-C(太陽化学社製、融点75~85℃)等が販売されている。
【0020】
本開示の油性粒子分散組成物において、固形油は2種以上を組み合わせて使用される。
【0021】
油性粒子分散組成物中、2種以上の固形油の合計量は、成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であることを満たすことを限度として制限されないが、好ましくは0.1~50質量%が例示され、より好ましくは1~40質量%、更に好ましくは5~35質量%、特に好ましくは10~30質量%が例示される。
【0022】
また、本開示を制限するものではないが、力を加えた際に容易に崩壊する油性粒子が分散した組成物を簡便に得る観点からは、成分(A)として、より好ましくはステアリン酸グリセリル及びベヘン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種(以下、成分(A2)と記載する場合がある)を含むことが例示される。また、同様の観点から、より好ましくは、成分(A)として、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘニルアルコール、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、オクタデカ(ベヘン酸/ヒドロキシステアリン酸)ポリグリセリル-20、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウ、キャンデリラロウ及びミツロウからなる群より選択される少なくとも1種(以下、成分(A1)と記載する場合がある)と成分(A2)とを併用することが例示される。本開示を制限するものではないが、これらの場合、成分(A2)の含有量は、油性粒子分散組成物中、1.5質量%以上であることがより好ましく例示され、更に好ましくは2~20質量%、特に好ましくは2~15質量%が例示される。また、本開示を制限するものではないが、成分(A1)100質量部に対して、成分(A2)が好ましくは3~70質量部、4~65質量、より好ましくは5~25質量部等が例示される。
【0023】
また、本開示を制限するものではないが、力を加えても容易に崩壊し難く粒感が感じられる油性粒子が分散した組成物を得る観点からは、好ましくは前記成分(A2)を含有しないか、その含有量が油性粒子分散組成物中、1.5質量%未満であることが好ましく例示され、更に好ましくは0~1質量%、0~0.5質量%であることが例示される。また、この場合、本開示を制限するものではないが、より好ましくは、本開示の組成物は成分(A1)を含有し、成分(A1)100質量部に対して、成分(A2)が好ましくは3質量部未満、より好ましくは0~2質量部が例示される。
【0024】
(B)両親媒性物質
本開示の油性粒子分散組成物は(B)両親媒性物質を含み、両親媒性物質は、次の(B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種である。
(B1)2価カルボン酸エステル、
(B2)アルキレンオキシド誘導体、
(B3)2価アルコール及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種、
(B4)HLB3.5以上の非イオン界面活性剤。
【0025】
(B1)2価カルボン酸エステルは、特に限定されないが、成分(C1)として(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10等の2価カルボン酸とポリグリセリンとのエステル、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジエチルヘキシル等が例示される。
【0026】
これらは商業的に入手可能であり、例えば、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10として商品名Neosolue-Aqua、Neosolue-AquaS、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとして商品名Neosolue-Aqulio、コハク酸ジエトキシエチルとして商品名CRODAMOL DES、コハク酸ジエチルヘキシルとして商品名CRODAMOL OSU(いずれもクローダジャパン社製)等が例示される。
【0027】
成分(B1)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
(B2)アルキレンオキシド誘導体は、特に制限されないが、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-16グリセリルエーテル、グリセレス-26、PPG-10メチルグルコース、PPG-20メチルグルコース、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PPG-14ポリグリセリル-2エーテル、PPG-9ジグリセリル、PPG-10ブテス-9、PPG-17ブテス-17、PPG-25ソルビトール、PPG-10ソルビトール、PPG-7、PPG-34、PEG/PPG-150/35コポリマー、PEG/PPG-160/30コポリマー等が例示される。成分(B2)として、好ましくはPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-10メチルグルコース、PPG-20メチルグルコース、メチルグルセス-10、メチルグルセス-20、PPG-9ジグリセリル、グリセレス-26、PPG-14ポリグリセリル-2エーテル等が例示される。
【0029】
これらは商業的に入手可能であり、例えば、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンとして商品名ウィルブライド S-753(日油社製)、PPG-10メチルグルコースとして商品名マクビオブライド MG-10P(日油社製)、PPG-20メチルグルコースとして商品名マクビオブライド MG-20P(日油社製)、メチルグルセス-10として商品名マクビオブライド MG-10E(日油社製)、メチルグルセス-20として商品名マクビオブライド MG-20E(日油社製)、PPG-9ジグリセリルとして商品名SY-DP9(阪本薬品工業社製)、グリセレス-26として商品名ブラウノン GL-026(青木油脂工業社製)、PPG-14ポリグリセリル-2エーテルとして商品名SY-DP14(阪本薬品工業社製)等が販売されている。
【0030】
成分(B2)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
(B3)2価アルコール及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群より選択される少なくとも1種は、特に制限されないが、成分(B3)として、1,3-ブチレングリコール(BG)、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール(DPG)、PEG-6、PEG-8等が例示される。
【0032】
成分(B3)として、好ましくは1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、イソペンチルジオール、ジプロピレングリコール、PEG-6等が例示される。
【0033】
これらは商業的に入手可能であり、例えば1,3-ブチレングリコールとして商品名1,3ブチレングリコールP(KHネオケム社製)、ペンチレングリコールとして商品名PUROLAN PD-LO N(LANXESS社製)、イソペンチルジオールとして商品名イソプレングリコール(クラレ社製)、ジプロピレングリコールとして商品名ジプロピレングリコール LO+(ダウ・ケミカル社製)、PEG-6として商品名PEG-300(三洋化成社製)等が販売されている。
【0034】
成分(B3)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
(B4)HLB3.5以上の非イオン界面活性剤は、特に制限されないが、成分(B4)として、ポリオキシエチレン(POE)-アルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE-ソルビタン脂肪酸エステル、POE-グリセリン脂肪酸エステル、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、POE脂肪酸エステル、POEステロール・水素添加ステロール類、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0036】
本開示においてHLB(Hydrophile Lypophile Balance)値は、親水性と親油性のバランスを知る公知の指標であり、HLB値0~20のうち、HLB値が小さいほど親油性が強く、HLB値が大きいほど親水性が強いことを示す。本開示において、HLBは、通常、Griffin式に従う。成分(B4)は、1種以上で用いてもよく2種以上で用いてもよい。
【0037】
本開示を制限するものではないが、成分(B4)の一例として、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のPOE-アルキルエーテル;ステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;イソステアリン酸ポリエチレングリコール(PEG)-20ソルビタン、オレイン酸PEG-20ソルビタン、ステアリン酸PEG-20ソルビタン、ヤシ油脂肪酸PEG-20ソルビタン等のPOE-ソルビタン脂肪酸エステル;ステアリン酸PEG-15グリセリル、トリオレイン酸PEG-20グリセリル等のPOE-グリセリン脂肪酸エステル;PEG-60水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油等のPOE-硬化ヒマシ油;イソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油等のPOE-硬化ヒマシ油脂肪酸エステル;ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-150等のPOE脂肪酸エステル;PEG-20フィトステロール等のPOEステロール・水素添加ステロール類;パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル;ステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-4、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10等のポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0038】
成分(B4)として、より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POE脂肪酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル等が例示さる。成分(B4)として、更に好ましくは、トリステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-4、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸PEG-25、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-150が好ましく例示される。
【0039】
これらは商業的に入手可能であり、例えばトリステアリン酸ポリグリセリル-10として商品名Decaglyn 3-SV(HLB7.5)(日光ケミカルズ社製)、ステアリン酸ポリグリセリル-4として商品名Tetraglyn 1-SV(HLB6.0)(日光ケミカルズ社製)、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10として商品名Decaglyn 5-SV(HLB3.5)(日光ケミカルズ社製)、ステアリン酸ポリグリセリル-10として商品名Decaglyn 1-SV(HLB12.0)(日光ケミカルズ社製)、ミリスチン酸ポリグリセリル-10として商品名Decaglyn 1-M(HLB15)(日光ケミカルズ社製)、ステアリン酸PEG-25として商品名NIKKOL MYS-25V(HLB15)(日光ケミカルズ社製)、ステアリン酸PEG-40として商品名NIKKOL MYS-40V(HLB17.5)(日光ケミカルズ社製)、ステアリン酸PEG-150として商品名エマノーン 3199VB(HLB19.4)(花王社製)、ジステアリン酸ポリグリセリル-10として商品名Decaglyn 2-SV(HLB9.5)(日光ケミカルズ社製)等が販売されている。
【0040】
成分(B4)は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
なお、成分(B)の一部が前記固形油といえる成分に該当する可能性があるが、この場合、本開示において成分(B)は前記固形油に包含されない。このことから、成分(B)の含有量は前記固形油の含有量に包含されない。
【0042】
本開示の油性粒子分散組成物中の成分(B)の含有量(成分(B1)~成分(B4)からなる群より選択される少なくとも1種の合計量)は、前述の成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であることを満たすことを限度として制限されないが、好ましくは成分(A)(すなわち2種以上の固形油)と成分(B)との合計量が、0.2~60質量%が例示され、より好ましくは5~51質量%、更に好ましくは8~40質量%が例示される。
【0043】
また、本開示の油性粒子分散組成物中の成分(B)の含有量は、前述の成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であることを満たすことを限度として制限されないが、好ましくは0.01~30質量%が例示される。油性粒子をより効率良く製造する観点から、より好ましくは0.02~25質量%、更に好ましくは0.02~20質量%が例示される。
【0044】
また、本開示の油性粒子分散組成物中の成分(B)の含有量は、前述の成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であることを満たすことを限度として制限されないが、油性粒子分散組成物の製造時に、粒子間の接触による凝集を一層抑制しつつ良好な油性粒子をより効率良く製造する観点から、成分(A)100質量部に対して、好ましくは成分(B)が0.02~90質量部が例示され、より好ましくは成分(A)が0.1~70質量部、更に好ましくは成分(A)が0.2~65質量部が例示される。
【0045】
また、本開示を制限するものではないが、成分(B1)として、例えばシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、コハク酸ジエトキシエチル及びコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種(これを成分(B-1)とする)を用いる場合、該組成物中、成分(B1-1)の含有量は好ましくは0.05~20質量%が例示され、より好ましくは2~18質量%、更に好ましくは3~17質量%が例示される。
【0046】
また、本開示を制限するものではないが、成分(B1)として、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10等の2価カルボン酸とポリグリセリンとのエステル(これを成分(B1-2)とする)を用いる場合、該組成物中、成分(B1-2)の含有量は好ましくは0.01~2質量%が例示され、より好ましくは0.01~1質量%、更に好ましくは0.01~0.7質量%が例示される。
【0047】
本開示を制限するものではないが、成分(B)として成分(B2)を用いる場合、該組成物中、成分(B2)の含有量は好ましくは0.05~15質量%が例示され、より好ましくは0.1~13質量%、更に好ましくは0.5~12質量%が例示される。
【0048】
本開示を制限するものではないが、成分(B)として成分(B3)を用いる場合、該組成物中、成分(B3)の含有量は好ましくは0.05~15質量%が例示され、より好ましくは1~13質量%、更に好ましくは3~12質量%が例示される。
【0049】
本開示を制限するものではないが、成分(B)として成分(B4)を用いる場合、該組成物中、成分(B4)の含有量は好ましくは0.001~3質量%が例示され、より好ましくは0.005~1.5質量%が例示される。また、成分(B4)として、HLBが3.5以上10未満の非イオン界面活性剤を用いる場合は、該組成物中、HLBが3.5以上10未満の非イオン界面活性剤の含有量は好ましくは0.01~3質量%が例示され、より好ましくは0.05~2質量%、更に好ましくは0.08~1.2質量%が例示される。また、成分(B4)として、HLBが10以上20以下の非イオン界面活性剤を用いる場合は、該組成物中、HLBが10以上20以下の非イオン界面活性剤の含有量は好ましくは0.001~2質量%が例示され、より好ましくは0.005~1質量%、更に好ましくは0.01~0.8質量%が例示される。
【0050】
(C)水
(C)水は、水道水、精製水、脱イオン水等のいずれであってもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。油性粒子分散組成物中の成分(C)の含有量は、前述の成分(A)~(C)の合計量が90質量%以上であることを満たすことを限度として制限されないが、好ましくは40~99質量%が例示され、より好ましくは50~95質量%、更に好ましくは55~90%が例示される。
【0051】
また、本開示の油性粒子分散組成物中、成分(A)の固形油及び成分(B)の両親媒性物質の合計量と成分(C)の水との比(該合計量:水)として、好ましくは1:99~60:40が例示される。油性粒子をより効率良く製造する観点から、該比として、より好ましくは10:90~30:70、更に好ましくは20:80~30:70が例示される。
【0052】
本開示の油性粒子分散組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、更に必要に応じて任意の他の成分を配合してもよい。該他の成分として、防腐剤、界面活性剤(カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、HLB3.5未満の非イオン界面活性剤等)、無機塩類、液状油、増粘剤、着色剤、香料、ビタミン類、忌避剤等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合量も適宜設定すればよい。なお、前記成分(A)の固形油及び成分(B)の両親媒性物質がこれら他の成分の作用を有する場合があるともいえるが、前記固形油及び両親媒性物質は該他の成分には包含されない。
【0053】
該他の成分の一例を説明すると、着色剤の一例としては、酸化鉄、タール系色素、β-カロチン、ニンジン根エキス等の天然色素、合成色素、これらの混合色素等が例示される。本開示を制限するものではないが、簡便には、後述の油相に着色剤を配合する(例えば溶解又は分散させる)ことにより油性粒子を着色することができる。
【0054】
香料の一例としては、ラベンダー油、ローズマリー油、クラリセージ油、タイム油、ベルガモット油、ユーカリ油等のハーブ系精油、ペパーミント油、スペアミント油、ハッカ油等のミント系精油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油等の柑橘系精油などの各種精油、調合香料等が挙げられる(天然香料、合成香料、これらの混合香料等を問わない)。本開示を制限するものではないが、簡便には、後述の油相に香料を配合することで油性粒子を賦香することができる。
【0055】
ビタミン類の一例として、トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、プロピオン酸レチノール等が例示される。ビタミン類は主に油溶性であることから、本開示を制限するものではないが、簡便には、後述の油相にビタミン類を配合することが好ましく例示される。
【0056】
無機塩類の一例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の無機塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の無機塩等が例示される。アルカリ金属の無機塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物等が例示される。アルカリ土類金属の無機塩として、塩化カルシウム等の塩化物、硫酸マグネシウム等が例示される。無機塩類を含有する場合、その含有量は制限されないが、該組成物中、2質量%以下が例示され、好ましくは0.001~2質量%、0.01~1.5質量%、0.05~1質量%等が例示される。なお、本開示の油性粒子分散組成物は無機塩類を含んでいなくてもよい。
【0057】
液状油は、25℃で液状であり、液状油の一例として、エステル油、炭化水素油、植物油、動物油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコール等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
エステル油としては、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル等の直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル油;カプリン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル等の直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油;ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リシノール酸オクチルドデシル等の直鎖脂肪酸と分岐鎖を有するアルコールとのエステル油;イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル等の分岐鎖を有する脂肪酸と低級アルコールとのエステル油;エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸セテアリル、エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ヘキシルデシル等の分岐鎖を有する脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油;ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等の分岐鎖を有する脂肪酸と多価アルコールとのエステル油;ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、カプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸ジプロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン、ジイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル等の脂肪酸と多価アルコールとのエステル油;ネオペンタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソペラルゴン酸エチルヘキシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシル等の分岐鎖を有する脂肪酸と分岐鎖を有するアルコールとのエステル油;乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、クエン酸トリオクチル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリメリット酸トリメチル等の水酸基を有するエステル油;(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリル等の脂肪酸とニ塩基酸の多価アルコールとのエステル油;安息香酸アルキル(C12-15)、安息香酸アルキル(C16,17)等の安息香酸と脂肪属アルコールのエステル油;オクタカプリル酸ポリグリセリル-6等の脂肪酸とポリグリセリンのエステル油;ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)等のダイマージリノール酸エステル油等が挙げられる。
【0059】
炭化水素油として、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、ポリブデン、ポリイソブデン、水添ポリイソブテン、スクワラン(シュガ-スクワランを含む)、スクワレン、α-オレフィンオリゴマー、イソヘキサデカン、イソドデカン等の直鎖又は分岐鎖の炭化水素油等が例示される。
【0060】
植物油として、アブラナ油、アボカド油、アルモンド油、オリーブ油、ククイナッツ油、ゴマ油、コムギ胚芽油、コメ胚芽油、コメヌカ油、コメ油、サフラワー油、サンフラワー油、ダイズ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ホホバ油、グレープシード油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、メンジツ油、ヤシ油、ローズヒップ油等が例示される。
【0061】
動物油として、液状馬油、ミンク油、液状ラノリン等が例示される。シリコーン油として、シクロペンタシロキサン、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性シリコーン油等が例示される。高級脂肪酸として、オレイン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸が例示される。高級アルコールとして、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール等が例示される。
【0062】
このように本開示の油性粒子分散組成物は、液状油を含んでもよく、その含有量も制限されないが、例えば該組成物中、液状油の含有量は10質量%以下が例示され、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%、0~0.5質量%等が例示される。このように、該組成物は、液状油を含んでもよく含んでいなくてもよい。従来の油性粒子分散組成物では液状油を必須成分として使用されていることが多い。本開示によれば、このような液状油を必須成分として用いなくとも所望の油性粒子分散組成物を得ることができる。特に、本開示によれば、液状油を必須成分として用いなくとも油性粒子分散組成物の硬さ及び崩壊性、より具体的には該組成物に含まれる油性粒子の硬さ及び崩壊性を後述の実施例に示す通り調節することができる。
【0063】
増粘剤の一例として水溶性増粘剤が例示される。水溶性増粘剤は、後述する水相に室温(25℃)で粘性を付与できるものであれば限定はされない。水溶性増粘剤として、例えば、寒天、キサンタンガム、アラビアガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラギーナン、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルカリ変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース硫酸ナトリウム、セルロース末等のセルロース系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30)コポリマー)等のアクリル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系水溶性高分子等が挙げられる。また、特開2004-43785号公報に記載のミクロゲルからなる増粘剤等であってもよい。
【0064】
水相に水溶性増粘剤を配合することにより、分散媒である水相に粘性が付与され、これにより、油性粒子同士が接触しにくくなり、油性粒子の凝集や合一、振盪による破損を抑制しやすくなる。この点で、水相に水溶性増粘剤を配合することは好ましいといえる。
【0065】
但し、本開示においては水溶性増粘剤を用いない場合であっても簡便に所望の油性粒子分散組成物を製造できることから、本開示の油性粒子分散組成物として好ましくは水溶性増粘剤を含有しない。この観点から、水相中の水溶性増粘剤の含有量として、好ましくは0~1質量% 、より好ましくは0~0.5質量%、0~0.1質量%、0~0.01質量%、0~0.008質量%、0~0.005質量%等が例示される。水溶性増粘剤を配合した場合、その保水性によって油性粒子分散組成物を脱水する場合は乾燥に時間がかかったり、乾燥しても油性粒子同士の凝集によってほぐれにくいといった問題が生じやすくなる。本開示においては、水溶性増粘剤を配合しない又はその配合量を低減した場合であっても良好に油性粒子分散組成物を製造できることから、このような問題を軽減しつつ、良好な油性粒子分散組成物を簡便に製造できるという利点も適宜発揮できる。なお、本開示によれば、このように水溶性増粘剤を配合しない又はその配合量を低減して油性粒子分散組成物を製造することを包含するが、これは、該組成物を一旦製造したのちに、該組成物に対して又は分散媒除去物である油性粒子に対して水溶性増粘剤を組み合わせて用いることを妨げるものではない。
【0066】
この限りにおいて制限されないが、本開示において分散媒である水相の粘度として、好ましくは25℃で100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、更に好ましくは30mPa・s以下、特に好ましくは15mPa・s以下等が例示される。粘度の下限値は理論的に0mPa・sである。水相の粘度として好ましくは0~100mPa・s、より好ましくは0~30mPa・s等の範囲内が例示される。なお、本開示の油性粒子分散組成物は、後述の実施例から理解できる通り、成分(A)の固形油と成分(B)の両親媒性物質とを含む油相と、成分(C)の水を含む水相とを混合する工程を経て通常は製造され、水相の粘度は後述の実施例の手順に従い決定する。本開示における水相の該粘度とは、後述の実施例に示す通り、油性粒子分散組成物を濾過して得た水相(分散媒)の粘度を意味する。
【0067】
このような粘度範囲は、本開示の組成物製造時における油性成分の容器壁への付着、特に、工場内のタンクなど大容量の容器を用いた製造時に油相や油性粒子の容器壁への付着や、粒子同士の合一による分散不良等を抑制できる点から、また、球形状の粒子を一層簡便に得る観点から、好ましく例示される。
【0068】
本開示の油性粒子分散組成物では、成分(A)を含む油性粒子が、成分(C)を含む分散媒中に存在している。また、本開示の油性粒子分散組成物において、成分(B)は、油性粒子と分散媒中の両方に存在する。このように本開示の油性粒子分散組成物は、油性粒子が分散した組成物であって、該組成物全体として室温(25℃)で液状である。
【0069】
本開示において該組成物中の油性粒子の大きさは制限されないが、平均粒径(直径)として通常0.01~3mm、好ましくは0.05~3mm、より好ましくは0.1~2.5mm等が例示される。該粒径は、これらの範囲において、使用目的に応じて適宜決定すればよい。該粒径は一次粒子の粒径を意味する。粒径は、後述の実施例の手順に従い決定する。なお、測定時、必要であれば粒径に応じてレンズの倍率を適宜変更すればよい。
【0070】
本開示において該組成物中の油性粒子の形態は制限されないが、次の式に従い算出した値が0以上0.3未満の範囲内にあることが好ましく例示され、より好ましくは0以上0.1未満の範囲内にあることがより好ましく例示される。該値は後述の実施例の手順に従い、デジタルマイクロスコープを用いて観察し、測定して決定する。
扁平率F=(a-b)/a
該式中、aは油性粒子の長径(単位mm)、bは油性粒子の短径(単位mm)である。球形の場合、aとbは同値であることから、扁平率Fは0となる。
【0071】
本開示の油性粒子分散組成物は、成分(A)~(C)、更に必要に応じて前記他の成分を混合することにより製造できる。また、前記他の成分は、油相に混合してもよく、水相に混合してもよく、油相と水相との混合後に得た混合物に混合してもよく、前記他の成分の特性(溶解性等)や使用目的等に応じて適宜決定すればよい。
【0072】
この限りにおいて制限されないが、本開示の油性粒子分散組成物の好ましい製造方法として、次の手順が例示される。
【0073】
[工程(1)](A)2種以上の固形油と(B)両親媒性物質とを混合し、成分(A)の 融点以上の温度の混合液を得る工程、及び
[工程(2)]前記混合液と、成分(A)の融点以上の温度の(C)水を含有し、得られた混合液を撹拌しながら成分(A)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する工程、
を含む、油性粒子分散組成物の製造方法。
【0074】
このように成分(A)~(C)を混合することにより、また、本開示の効果を妨げない範囲で、更に必要に応じて前記他の成分を適宜混合し、撹拌しながら成分(A)の融点未満へ温度を下げることによって油性粒子が分散媒中に分散状態で形成され、油性粒子分散組成物を製造できる。
【0075】
成分(A)の融点以上の温度は、使用する成分(A)に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、好ましくは成分(A)の融点以上100未満が例示され、より好ましくは成分(A)の融点以上90℃以下が例示され、更に好ましくは成分(A)の融点以上88℃以下が例示され、特に好ましくは成分(A)の融点以上85℃以下が例示される。温度を成分(A)の融点以上とする手段は制限されず、必要に応じてウォーターバスを用いた湯煎加熱等の任意の手段を使用することにより温度を調節すればよい。なお、本開示の製造方法において成分(A)の融点以上は、使用する成分(A)の固形油のうち最も融点の高い固形油の融点以上を意味する。
【0076】
成分(A)の融点未満の温度は、使用する成分(A)に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、好ましく5℃以上成分(A)の融点未満が例示され、より好ましくは10℃以上成分(A)の融点未満、15~40℃が例示され、簡便、低コストである等の観点から、20~38℃、20~35℃など室温(25℃)付近の温度が例示される。この場合も温度を調節する手段は制限されず、必要に応じて任意の手段を使用すればよい。なお、本開示の製造方法において成分(A)の融点未満は、使用する成分(A)の固形油のうち最も融点の低い固形油の融点未満を意味する。なお、これらの温度は前記他の成分に応じて適宜変更してもよい。
【0077】
前述の通り、油相と水相との混合後、得られた混合液を撹拌しながら成分(A)の融点未満の温度にして油性粒子を造粒する。該撹拌は、液相と水相とを混合することにより得た混合液中で、生じた油性粒子が少なくとも滞留しない程度で混合液が撹拌されていればよい。また、該撹拌ではせん断処理を必要としない。このことから、本開示において撹拌は、プロペラ、パルセータ、アンカー型パドル等の撹拌装置による低速撹拌が望ましい。プロペラ撹拌の場合、製造スケールとプロペラのサイズにもよるが、回転数として好ましくは50~400rpm、より好ましくは50~250rpm程度が好ましく例示される。パルセータ等を用いた撹拌の場合も、該プロペラ撹拌に基づき同程度に撹拌されればよい。このように、混合液の液面を激しく波立たせたり、多量の気泡を巻き込むことがない程度の撹拌とすればよい。混合槽(液相と水相とを混合する容器)が深い場合や製造スケールが大きい場合などは、必要に応じて、プロペラを上下ニ箇所に設置するなど任意の複数箇所に撹拌装置を設置するなどして上下対流を促すことで撹拌効率を向上させてもよい。また、このような場合も、プロペラ1枚による高速撹拌で局所的にせん断力を生じるような強い撹拌は望ましくない。
【0078】
従来、油相と水相とを混合して混合液中で油性粒子を形成させる場合、せん断処理が必須の場合があった。せん断処理を行う場合、通常、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー等のせん断装置が必要であることから、その製造に一層の手間やコスト等を要した。本開示においては、このようなせん断処理を行うことなく、油性粒子分散組成物を容易に製造できる。また、このことから本開示の撹拌では、撹拌効率の向上のために乱流を発生させる邪魔板等も必須ではない。むしろ、粒油性子の変形を抑制し、球形の油性粒子を効率良く製造する点から、本開示においては乱流を発生させる邪魔板等の使用は好ましくない。
【0079】
また、このように本開示によれば、油相と水相との混合時に、水相の下側から油相を注入することも必須ではない。この観点からも、本開示においては、このような煩雑な手順を行うことなく、油性粒子分散組成物を容易に製造できる。
【0080】
なお、本開示の製造方法において、前記油相や水相の調製時、各相において成分が均一に混合される限り撹拌してもしなくても良いが、好ましくは撹拌により均一に混合される。また、例えば油相に水相を投入しても、水相に油相を投入してもよく、その混合順等は制限されない。
【0081】
また、本開示の油性粒子分散組成物が得られる限り、前記油相と前記水相の混合量も制限されない。油相と水相の混合量として、油相:水相(質量比)として、好ましくは1:0.8~30、より好ましくは1:0.8~15、更に好ましくは1:0.8~10、特に好ましくは1:0.8~5、特により好ましくは1:0.8~3、特に更に好ましくは1:0.8~2.5等が例示される。
【0082】
本開示の油性粒子分散組成物は、良好な液中分散安定性を有する。本開示において良好な液中分散安定性とは、室温(25℃)において油性粒子同士の凝集が抑制されていることを意味する。液中分散安定性は、後述の実施例に示す液中分散安定性(25℃)に従い評価する。
【0083】
本開示の油性粒子分散組成物は、そのまま使用してもよく、製剤原料に配合して使用してもよい。また、該油性粒子分散組成物は分散媒を除去して得た油性粒子(分散媒除去物)を、そのまま使用してもよく、又は、該油性粒子(分散媒除去物)を製剤原料に配合して使用してもよい。また、本開示の油性粒子はカプセル(カプセル被膜材等ともいう)として使用してもよい。本開示の油性粒子分散組成物は、前述の通り、油相と水相とを含有する混合液中で油性粒子が形成されることから、油性粒子を分散質、それ以外を分散媒といえる。分散媒を除去して油性粒子を得るにあたり、分散媒の除去の程度は制限されず、油性粒子分散組成物を構成する分散媒(全分散媒)のうち一部(例えば全分散媒の1/2質量%等)のみを除去してもよく、ザルのようなもので篩過することにより全分散媒を除去してもよい。このように、油性粒子が製剤原料に配合される場合、分散媒が共存している状態で配合してもよく、油性粒子分散組成物を篩過することにより分散媒を除去した油性粒子を配合してもよい。また、例えば、篩過等により実質的にすべての分散媒を除去した場合、得られた油性粒子を水洗してもよく、また、油性粒子の品質に影響を与えない程度の温度や湿度環境で乾燥処理を行ってもよい。本開示において製剤原料とは、最終的に得られる製剤の原料を意味し、製剤に含まれる油性粒子分散組成物(分散媒除去物のみを用いる場合は分散媒除去物)以外の原料(成分)を意味する。油性粒子分散組成物や分散媒除去物と組み合わせて使用できる限り、製剤原料(成分)は制限されない。本開示を制限するものではないが、例えば、前述の通り、本開示において油性粒子分散組成物の製造において水溶性増粘剤は必須ではないが、粘性を有する製剤としたい場合、製剤原料として水溶性増粘剤を用いてもよい。
【0084】
この観点から、本開示を制限するものではないが、分散媒除去物を用いる場合(特に全分散媒を除去して用いる場合)、本開示の油性粒子分散組成物としてより好ましくは、分散媒を除去して得られる油性粒子同士の凝集が抑制されている組成物が例示される。分散媒を除去して得られる油性粒子同士の凝集が抑制されているかどうかは、後述の実施例に示す、篩過により分散媒を除去して得た油性粒子の安定性(25℃)に従い評価する。
【0085】
製剤の形態は制限されず、室温で液状形態(液剤、乳剤等)、半固形又は固形形態(ゲル状、クリーム状、ペースト状、ムース状、スティック状、粒状等)のいずれであってもよく、好ましくは液状、半固形状である。このことから製剤は、例えばローション剤、リニメント剤、乳液剤等の液剤、ゲル剤、クリーム剤等のいずれの剤形であってもよい。また、製剤としては、化粧料、医薬部外品、医薬品、化成品、農薬等が好ましく例示される。このように、本開示の油性粒子配合製剤はその用途を問わない。製剤として洗顔料、化粧水、乳液、美容液、ゲル製剤、クリーム、芳香剤、虫よけ剤、殺虫剤等として使用されることが好ましく例示される。
【0086】
製剤への油性粒子分散組成物の配合量、油性粒子の配合量は、使用目的や製剤の形態等に応じて適宜決定すればよい。また、油性粒子分散組成物や油性粒子以外の製剤中の成分(製剤原料)も、前記形態、使用目的等に応じて適宜決定すればよく、このような成分として前記他の成分をはじめとする任意の成分であればよく、その配合量も適宜決定すればよい。本開示を制限するものではないが、製剤として前述の製剤が例示され、好ましくはスクラブ剤(スクラブ洗顔料等)等の外用製剤(外用組成物)、芳香剤、衣料用防虫剤等が例示される。
【0087】
このように、本開示によれば、新たな油性粒子分散組成物を簡便に製造することができる。本開示によれば、特に、前述の通り分散安定性を備えた新たな油性粒子分散組成物を簡便に提供することができる。また、本開示によれば、前述の通り、力を加えた際に容易に崩壊しやすい油性粒子が分散した組成物や、力を加えても容易に崩壊し難く粒感が感じられる油性粒子が分散した組成物等を、目的に応じて簡便に製造できる。このように、本開示によれば粒感の硬さや崩壊性を適宜変更できることから、例えば、硬く崩壊し難い油性粒子とした場合には、これをスクラブ剤、芳香剤、衣料用防虫剤等に好ましく適用することができる。
【実施例0088】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0089】
試験例
1.油性粒子分散組成物の調製
表1~3に示す成分及び含有量に従い、各組成物を調製した(実施例1~33、比較例1~8)。
【0090】
例えば表1に示す実施例1の油性粒子分散組成物の製造手順について説明すると、溶解槽に(A)2種の固形油と(B)両親媒性物質とを全量投入し、得られた混合物を、成分(A)の融点以上の温度(85℃)になるようウォーターバスを用いて湯煎加熱、撹拌混合し、混合液1(油相)を得た。別途、混合槽に(C)水とフェノキシエタノールとを全量投入し、得られた混合物を、成分(A)の融点以上の温度になるようウォーターバスを用いて湯煎加熱、撹拌混合し、混合液2(水相)を得た。次いで、得られた混合液1を、混合槽(混合液2)に全量投入し、撹拌(プロペラ撹拌200rpm)を行い、生じた油滴を撹拌分散しながら、混合槽をウォーターバスを用いて水(25℃)で冷却した。撹拌冷却の過程で、分散した油滴が50~65℃程度(混合液温度)で硬化した(油性粒子の形成)。そのまま30℃程度(混合液温度)まで撹拌冷却し、実施例1の油性粒子分散組成物を調製した。実施例1と同様にして、表1~3に示す実施例2~33の油性粒子分散組成物も調製した。
【0091】
比較例1~8は、成分(A)の固形油を1種しか用いていない、成分(A)の固形油を全く用いていない、及び/又は成分(B)を用いていない以外は実施例1と同様にして油相と水相と得て、得られた混合液を混合槽に全量投入し、前述と同様にして撹拌を行い、混合槽をウォーターバスを用いて水(25℃)で同様にして撹拌冷却してそれぞれ調製した。
【0092】
2.評価手順
調製した各組成物について、次の手順に従い、油相と水相との混合後の油性粒子形成の状態(評価1)、粒径(評価2)、粒子の形状(評価3)、硬さ及び崩壊性(評価4)、油性粒子の液中分散安定性(25℃)(評価5)を評価した。また、50℃、0℃における油性粒子の液中分散安定性も評価した(それぞれ評価6、評価7)。更に、前記各組成物を篩過により分散媒を除去して得た油性粒子の安定性(25℃、50℃)も評価した(評価8、9)。
【0093】
2-1)油性粒子形成の状態(評価1)
前述の手順に従い得た実施例1~33及び比較例1~8の各組成物の温度(混合液温度)が30℃程度になるまで冷却し、組成物中の油性粒子形成の状態を目視で確認し、3段階で評価した。具体的には、得られた組成物において、油性粒子同士が凝集することなく分散している場合を、分散性良好(○)と評価した。また、得られた組成物において、油性粒子同士の凝集が認められた場合を一部凝集(△)と評価した。また、存在する油性粒子のうち1/3以上が凝集しているか油性粒子が形成されていない場合を凝集、粒子形成不可(×)と評価した。
【0094】
○:分散性良好
△:一部凝集
×:凝集、粒子形成不可
【0095】
2-2)粒径(評価2)
デジタルマイクロスコープ VHX-5000(株式会社キーエンス製)を用い、前記各油性粒子分散組成物(実施例1~33、比較例5~8)約0.01~0.1gをスライドガラスに乗せて、倍率20~100倍で観察し、スケール測定で測定した直径を粒径とした。粒径が小さい場合(下記評価A)は、測定しやすいようサンプル量は少なめとして、油性粒子が重なりにくいように適宜水で希釈して測定した。測定した油性粒子数は、各組成物あたり30個とし、その平均値(平均粒径)を求めた。なお、観察した油性粒子は球形(球体)又は楕円形であった。楕円形の場合は粒子の長径と短径を測定し、次の式に従い計算した値を直径とした。
楕円形の暫定直径=(長径+短径)/2
【0096】
<平均粒径(mm)>
A:0.05以上0.2未満
B:0.2以上0.5未満
C:0.5以上1未満
D:1以上1.5未満
E:1.5以上2未満
【0097】
2-3)油性粒子の形状(評価3)
デジタルマイクロスコープ VHX-5000を用い、評価2と同じ手順で形状を観察した。球形の場合はその直径を測定し、球形ではない場合は楕円形であり、その程度を示す扁平率(F)を形状評価に用いた。扁平率は、測定した油性粒子の長径、短径から下記の計算式によって算出した。
扁平率F=(a-b)/a
式中、aを長径(単位mm)、bを短径(単位mm)とする。球形の場合、aとbは同値であることから、扁平率Fは0となる。
【0098】
◎:0.1未満
○:0.1以上0.3未満
×:0.3以上
測定した油性粒子数は、各組成物あたり30個とし、その平均値を求めた。扁平率Fの値が0に近いほど球形に近いことを意味する。
【0099】
2-4)硬さ及び崩壊性(評価4)
各組成物0.06gを、専門パネラー5人の手の甲に乗せ、16cm2の範囲に指の腹で円(円を10回)を描くように塗布した。該塗布時の皮膚に感じる粒子感、皮膚上での油性粒子の崩壊性について下記の基準に従い評価した。なお、パネラー間で予め照らし合わせて基準の統一化を図った。表中、パネラー5名の合計値を示した。
【0100】
4点:粒子感がなく(粒子が柔らかい)、スムーズに崩れた
3点:粒子感を感じながら徐々に崩れた
2点:粒子感を感じ、崩れにくい。
1点:粒子が硬く崩れない。
【0101】
2-5)油性粒子の分散安定性(25℃)(評価5)
各組成物45gを容器に入れ(ガラス製50mlスクリュー管)、蓋をし、室温(25℃)で静置保存した。粒子同士の凝集が見られた日数を記録し、下記の通り評価した。凝集は、保存容器を手動で振盪しても粒子同士の凝集が解砕されない状態とした。
【0102】
◎:凝集が8か月間以上認められない
○:凝集が1ヶ月以上認められない
×:凝集が1ヶ月未満で認められた
【0103】
2-6)油性粒子の分散安定性(50℃)(評価6)
50℃で静置保存した以外は前記評価5と同様にして、粒子同士の凝集が見られた日数を記録し、下記の通り評価した。凝集は、保存容器を手動で振盪しても粒子同士の凝集が解砕されない状態とした。
【0104】
◎:凝集が4か月間以上認められない
○:凝集が1ヶ月以上認められない
×:凝集が1ヶ月未満で認められた
【0105】
2-7)油性粒子の分散安定性(0℃)(評価7)
0℃で静置保存した以外は前記評価5と同様にして、粒子同士の凝集が見られた日数を記録し、下記の通り評価した。凝集は、保存容器を手動で振盪しても粒子同士の凝集が解砕されない状態とした。
【0106】
◎:凝集が4か月間以上認められない
○:凝集が1ヶ月以上認められない
×:凝集が1ヶ月未満で認められた
【0107】
2-8)篩過後の油性粒子の安定性(25℃)(評価8)
篩過(ナイロンメッシュN-No.305T、目開き48μm)により各組成物から分散媒を除去し、油性粒子に精製水をまぶすように振りかけることにより油性粒子を洗浄し、得られた油性粒子を粒子同士が接触する状態で室温(25℃)、24時間放置した。24時間後、油性粒子10gを水50gと混合し、手撹拌程度でゆっくり撹拌棒を用いて10秒間撹拌した。このようにして得た混合液において油性粒子同士の凝集の有無を観察した。この際、粒径に応じて目視又は光学顕微鏡を用いて凝集の有無を確認した。
【0108】
◎:撹拌1分以内に速やかに分散した
○:一部の油性粒子に粒子同士の凝集が認められたが、撹拌5分以内に速やかに油性粒子が一粒ずつ解砕し分散した。
△:撹拌により油性粒子が一粒ずつ解砕し分散するが、全ての油性粒子が解砕するまでに撹拌5分以上を要した(10分以内)。
×:撹拌10分を過ぎても凝集が残った。
【0109】
2-9)篩過後の油性粒子の安定性(0℃)(評価9)
0℃で静置保存した以外は前記評価8と同様にして、粒子同士の凝集が見られた日数を記録し、下記の通り評価した。
【0110】
また、各組成物の調製に使用した水相の粘度を測定した。具体的には、前述と同様にして調製した各組成物から篩過により分散媒を除去し、このように除去して得た分散媒の粘度を測定し、これを水相の粘度とした。分散媒(水相)の粘度は、分散媒温度25℃でB型粘度計(VISCOMETER TVB-10M、東機産業株式会社製、粘度範囲15~2000000mPa・s)を用いて、使用手順に従い、分散媒量200ml、ローターNo.1、回転数60rpmで回転1分間経過時の値とした(ローターNo.1、回転数60rpmでの粘度測定上限は100mPa・s)。なお、該条件で測定可能な粘度の下限値(測定限界)は15mPa・sであり、表1~3に示す通り、いずれの組成物でも分散媒の粘度は15mPa・s未満であった。また、使用した装置は15mPa・sを下回る場合にも測定粘度が表示され、15mPa・s未満の値は参考値として取り扱われる。表1~3に示す組成物の分散媒における粘度表示はいずれも3mPa・sであった。
【0111】
3.結果
結果を表1~3に示す。表1は、比較例1~8及び実施例1~5の油性粒子分散組成物の結果、表2は、実施例6~25の油性粒子分散組成物の結果、表3は、実施例26~33の油性粒子分散組成物の結果を示す。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
表1に示す通り、(A)2種以上の固形油と、成分(B)として(B1)2価カルボン酸エステルと、(C)水とを配合し、成分(A)~(C)の合計量を99.5質量%として調製した組成物(実施例1~5)はいずれも、評価1~8において良好な結果が得られた。また、成分(A)として、ステアリン酸グリセリルやベヘン酸グリセリルを配合した実施例3~5の組成物では、力を加えた際に容易に崩壊しやすい油性粒子が分散した組成物が得られた。
【0116】
これに対して、表1に示す通り、(A)2種以上の固形油と(C)水とを合計量99.5質量%で配合しているものの、(B)両親媒性成分を配合していない比較例1~4では、そもそも油性粒子自体が形成されておらず、評価1の結果が×であった。このことから、比較例1~4の組成物については評価2~9を行っていない。また、表1に示す通り、(B)両親媒性成分と(C)水とを合計量99.5質量%で配合しているものの、(A)2種以上の固形油を配合していない比較例5~7では、評価1において油性粒子の形成が認められたが(比較例5では○、比較例6及び7では△)、評価3に示す油性粒子の評価結果が×であった。また、表1に示す通り、(B)両親媒性成分と(C)水とを合計量99.5質量%で配合しているものの、(A)2種以上の固形油を配合していない比較例8では、そもそも油性粒子自体が形成されておらず、評価1の結果が×であった。
【0117】
表2には、成分(B1)に代えて、(B2)、(B3)又は(B4)を用いた結果を示す。具体的には、表2の実施例6~14には、(A)2種以上の固形油と(C)水と共に、(B2)としてアルキレンオキシド誘導体を配合し、これらの成分の合計量を99.5質量%とした油性粒子分散組成物の結果を示す。表2の実施例15~18には、(A)2種以上の固形油と(C)水と共に、(B3)として2価アルコール又はポリエチレングリコールを配合し、これらの成分の合計量を99.5質量%とした油性粒子分散組成物の結果を示す。表2の実施例実施例19~25には、(A)2種以上の固形油と(C)水と共に、(B4)としてHLB3.5以上の非イオン界面活性剤を配合し、これらの成分の合計量を99.5質量%とした油性粒子分散組成物の結果を示す。これらの組成物(実施例6~25)でも評価1~8において良好な結果が得られた。
【0118】
表3には、(A)2種以上の固形油と(C)水と共に、成分(B)として成分(B1)、(B2)、(B3)及び(B4)から選択される2種を併用した結果(実施例26~33)を示す。実施例26~33の油性粒子分散組成物でも評価1~8において良好な結果が得られた。
【0119】
このように、(A)2種以上の固形油、(B)両親媒性物質((B1)~(B4)からなる群より選択される少なくとも1種)及び(C)水を配合し、且つ、成分(A)~(C)の合計量を90質量%以上とすることにより、分散安定性(25℃)に優れた油性粒子分散組成物が得られることが分かった(評価1及び5)。また、表1~3に示すように、分散した油性粒子の形状は球形に近いことが分かった(評価3)。また、成分(A)の中でも、特にステアリン酸グリセリルやベヘン酸グリセリルは、力を加えた際に容易に崩壊しやすい油性粒子を得る上で好ましく使用できることが分かった(実施例3~5、7、21、26、27、30及び32)。また、実施例1~33から理解できる通り、力を加えた際に容易に崩壊しやすい油性粒子が分散した組成物や、力を加えても容易に崩壊し難く粒感が感じられる油性粒子が分散した組成物等を目的に応じて簡便に製造できることが分かった。このように、本開示によれば粒感の硬さや崩壊性を簡便に変更でき、例えば、硬く崩壊し難い油性粒子とした場合には、これをスクラブ剤、芳香剤、衣料用防虫剤等に好ましく適用することができる。
【0120】
また、このように本開示によればせん断処理等の煩雑な工程を要することなく、油性粒子分散組成物を簡便に得られることが分かった。また、該組成物中の油性粒子は、少なくとも0~50℃において良好な分散安定性を有することが分かった(評価6及び7)。また、分散媒を除去した場合も良好な分散性を維持できることが分かった(評価8及び9)。このことから、このようにして製造された組成物から分散媒を除去して使用してもよく、得られた油性粒子を別の液状物等と混合して使用することもできる。