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  • 特開-計量スプーン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082840
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】計量スプーン
(51)【国際特許分類】
   G01F 19/00 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
G01F19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196990
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】591139105
【氏名又は名称】山崎実業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 茂
(57)【要約】
【課題】製造コストが増大することなく、計量部の上面を摺り切る作業、及び計量部を左右又は前後に振る作業を不要にできる計量スプーンを提供する。
【解決手段】計量部2と柄部3とは、計量部2の上面2Aである、同一平面上にある開口面Kに沿う面Bに対して同じ側にある。柄部3の把持位置Iから基端部3Aへ向かう方向Jを前として、開口面Kは前下がり傾斜しており、開口面Kが前下がり傾斜する角度Cは、35°以下である。容器内の粉粒体の中に挿入した計量部2を引き上げるだけで、計量部2内の粉粒体の上面と開口面Kとを容易に略面一にすることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を計量する計量スプーンであって、
カップ状である、前記粉粒体を収容する計量部と、
前記計量部に繋がって、前記計量部から遠ざかる方向へ延びる、前記計量スプーンを操作するための柄部と、
からなり、
前記計量部と前記柄部とは、前記計量部の上面である、同一平面上にある開口面に沿う面に対して同じ側にあり、
前記柄部の把持位置から基端部へ向かう方向を前として、前記開口面は前下がり傾斜しており、
前記開口面が前下がり傾斜する角度は、35°以下である、
計量スプーン。
【請求項2】
前記柄部は、前記計量部から遠ざかる方向へ行くにしたがって、前記開口面に沿う面から漸次離反する、
請求項1に記載の計量スプーン。
【請求項3】
前記柄部は、平板状、又は真直な棒状である、
請求項1又は2に記載の計量スプーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体を計量する計量スプーンに関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体を計量する計量スプーンは、カップ状である、前記粉粒体を収容する計量部と、前記計量部に繋がって、前記計量部から遠ざかる方向へ延びる、前記計量スプーンを操作するための柄部とからなる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された発明の従来技術の計量スプーン(図4、以下において「第1の計量スプーン」という)は、計量部1に粉粒体を多めに掬い上げた後(図4(B)の上の図)、円形の縁部2を摺り切る作業を行って計量する(図4(B)の下の図)。
【0004】
それに対して特許文献1に記載された発明の計量スプーン(図1及び図2、以下において「第2の計量スプーン」という)は、縁部2を摺り切る作業を行うことができない形態であり、前記作業を行わずに計量する。
【0005】
第2の計量スプーンは、計量部1に左右一対の補助縁部7を設けており、計量部1に粉粒体を多めに掬い上げた後(図1(B)の上の図、及び図2(B)の上の図)、柄3の操作保持部4を握って左右又は前後に振る作業を行って計量する(図1(B)の下の図、及び図2(B)の下の図)。
【0006】
一方、特許文献2に記載された発明の計量スプーン(図1~3、以下において「第3の計量スプーン」という)は、分析化学における試薬などの粉体の計量に用いるものであり、前記粉体を取り出す操作をしやすくするために、計量部2の上面(開口面6)と柄部3の持ち手部5との角度を5~30度にしている(請求項1、図3)。
【0007】
第3の計量スプーンにおいて、計量部2と持ち手部5とは、計量部2の上面(開口面6)に沿う面に対して反対側にあり(図3)、柄部3の持ち手部5の計量部2へ近づく方向を前として、計量部2の上面(開口面6)は前上がり傾斜している。第3の計量スプーンにおいても、計量部2の上面(開口面6)を摺り切る作業を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5593626号公報
【特許文献2】特開2011-80779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような従来の計量スプーンにおいて、第1の計量スプーン及び第3の計量スプーンは、計量部の上面を摺り切る作業を行って計量する必要がある。それらに対して第2の計量スプーンは、計量部の上面を摺り切る作業を行わない。しかし、第2の計量スプーンは、計量部に左右一対の補助縁部を設ける必要があるので、計量スプーンの製造コストが増大するとともに、計量部に粉粒体を多めに掬い上げた後に計量部を左右又は前後に振る作業が必要になる。
【0010】
本発明は、製造コストが増大することなく、計量部の上面を摺り切る作業、及び計量部を左右又は前後に振る作業を不要にできる計量スプーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の計量スプーンは、粉粒体を計量する計量スプーンであって、カップ状である、前記粉粒体を収容する計量部と、前記計量部に繋がって、前記計量部から遠ざかる方向へ延びる、前記計量スプーンを操作するための柄部とからなる。前記計量部と前記柄部とは、前記計量部の上面である、同一平面上にある開口面に沿う面に対して同じ側にある。前記柄部の把持位置から基端部へ向かう方向を前として、前記開口面は前下がり傾斜しており、前記開口面が前下がり傾斜する角度は、35°以下である、
【0012】
ここで、前記柄部は、前記計量部から遠ざかる方向へ行くにしたがって、前記開口面に沿う面から漸次離反するのが好ましい実施態様である。
【0013】
また、前記柄部は、平板状、又は真直な棒状であるのが好ましい実施態様である。
【0014】
本発明の計量スプーンの構成によれば、計量部の開口面は同一平面上にある。したがって、第2の計量スプーンのような補助縁部を設ける必要がないので、計量スプーンの製造コストが増大しない。
【0015】
その上、柄部の把持位置から基端部へ向かう方向を前として、前記開口面は前下がり傾斜しており、前記開口面が前下がり傾斜する角度は、35°以下である。そのため、容器内の粉粒体の中に挿入した計量部を引き上げるだけで、粉粒体の流動性を利用して、計量部内の粉粒体の上面を前記開口面と略面一にすることが容易である。したがって、計量部の上面を摺り切る作業や計量部を左右又は前後に振る作業を行うことなく、計量作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の計量スプーンによれば、製造コストが増大することなく、計量部の上面を摺り切る作業、及び計量部を左右又は前後に振る作業を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る計量スプーンの斜視図である。
図2】前記計量スプーンの側面図である。
図3】前記計量スプーンによる粉粒体計量方法を説明するための縦断面図であり、容器内の粉粒体の中に前記計量スプーンの計量部の全体を挿入した状態を示している。
図4】前記縦断面図であり、前記計量部を少し引き上げた状態を示している。
図5】前記縦断面図であり、前記計量部をさらに引き上げて前記計量部の全体が容器内の粉粒体の上面から離間した状態を示している。
図6】前記計量スプーンの第1変形例を示す縦断面図である。
図7】前記計量スプーンの第2変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
本発明の実施の形態に係る計量スプーン1単体については、図2のように開口面Kを上にした状態で上下方向を定義する。粉粒体Aを収容した容器Gについては、図3~5のように水平面上に容器Gを置いた状態で上下方向を定義する。
【0020】
<計量スプーン>
図1及び図2に示す本発明の実施の形態に係る計量スプーン1は、コーヒー粉、砂糖、塩等の粉粒体を計量するためのものである。計量スプーン1は、計量部2と柄部3とからなる。計量部2は、前記粉粒体を収容して計量するためにカップ状を成す。柄部3は、計量スプーン1を操作するために計量部2に繋がる細長い形状を成す。柄部3は、計量部2の側壁5に繋がる基端部3Aから先端部3Bまで、計量部2から遠ざかる方向Fへ延びる。
【0021】
計量部2は、例えば、矩形状の底壁4、及び底壁4の辺から立起する側壁5からなる角型である。計量部2の形状は、角型に限定されるものではなく、底壁が円形状である丸型又は椀型であってもよく、半球型等であってもよい。計量部2の上面2Aは、同一平面上にある開口面Kである。
【0022】
柄部3は、例えば平板状である。柄部3の形状は、平板状に限定されるものではなく、横断面が円形又は多角形である棒状であってもよい。
【0023】
図2に示すように、計量部2と柄部3とは、開口面Kに沿う面Bに対して同じ側にある。計量スプーン1を操作するために把持する柄部3の把持位置Iから基端部3Aへ向かう方向(矢印J)を前として、開口面Kは前下がり傾斜しており、開口面Kが前下がり傾斜する角度Cは、35°以下である(0°<C≦35°)。
【0024】
柄部3は、計量部2から遠ざかる方向Fへ行くにしたがって、開口面Kに沿う面Bから漸次離反する。開口面Kに沿う面Bと柄部3とが成す角度は、開口面Kが前下がり傾斜する角度Cと等しい。
【0025】
計量スプーン1は、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン若しくはABS等の合成樹脂製、ステンレス鋼若しくは銅等の金属製、又は、チーク材若しくはサクラ材等の木製である。
【0026】
<計量スプーンによる計量方法の例>
図3図5を参照し、容器G内の粉粒体Aを計量スプーン1で計量する方法の一例について説明する。柄部3の把持部Iを持って、図3に示すように、先ず、計量スプーン1の計量部2の全体を、容器G内の粉粒体Aの中に挿入する。
【0027】
次に、開口面Kに沿う面Bと水平面とが成す角度Eを、例えば50°~60°にし、その状態を保持したまま、柄部3の把持部Iを持って、図4に示すように計量部2を少し引き上げる。
【0028】
次に、角度E(図3)を保持したまま、柄部3の把持部Iを持って計量部2を引き上げ、図5に示すように計量部2を容器G内の粉粒体Aの上面から離間させる。計量部2を引き上げる方向は、斜め上方でなくてもよく、例えば真上であってもよい。
【0029】
図3において、水平面と柄部3とが成す角度Dは、C+D=Eであるので、D=E-Cである。0°<C≦35°であるので、E=50°である場合、15°≦D<50°となる。例えばC=20°である場合は、D=30°である。同様に、E=60°である場合、角度Dは25°≦D<60°となり、例えばC=20°である場合は、D=40°である。
【0030】
図5のように容器G内の粉粒体Aの上面から計量部2の全体を離間させた状態では、計量部2内の粉粒体aの上面Hは、開口面Kと略面一になるので、計量が完了する。すなわち、計量部2の上面を摺り切る作業や計量部2を左右又は前後に振る作業を行うことなく、容器G内の粉粒体Aの中に挿入した計量部2を引き上げるだけで計量作業を完了できる。
【0031】
(角度Eが適切な範囲である場合)
図5のように計量部2の全体を容器G内の粉粒体Aの上面から離間させた状態で、角度E(図3)が、例えば50°~60°である場合は、粉粒体Aの流動性により、計量部2内の粉粒体aの上面Hは、山状になることなく、開口面Kと略面一になる。その状態で計量作業は完了している。
【0032】
(角度Eが大きい場合)
図3図5において、角度E(図3)が、50°~60°よりも大きく、例えば70°程度である場合は、粉粒体の流動性により、計量部2内に必要な量の粉粒体Aが入らないので、計量できなくなる。
【0033】
(角度Eが小さい場合)
図3図5において、角度E(図3)が、50°~60°よりも小さく、例えば30°程度である場合は、粉粒体Aには滑り出さない限界の角度である安息角があるので、計量部2内の粉粒体aの上面が山状になる。その状態では、計量作業が完了していない。
【0034】
しかし、柄部3の把持部Iを持って、角度E(図3)を少しずつ大きくするように計量部2を傾けることで、粉粒体Aの流動性により、計量部2内の粉粒体aの上面Hを、図5のように開口面Kと略面一にすることができる。その状態で計量作業は完了している。
【0035】
容器G内の粉粒体Aの中に挿入した計量部2を引き上げる計量作業を、角度E(図3)を適切な範囲(例えば50°~60°)にした状態で簡単に行うことができるのは、図2を参照して、柄部3の把持位置Iから基端部3Aへ向かう方向(矢印J)を前として、開口面Kが前下がり傾斜していること、及び開口面Kが前下がり傾斜する角度Cが大き過ぎないことによる。
【0036】
本発明の計量スプーン1において、柄部3の持ち方は、作業性を高める観点から、いわゆるペングリップ、又はそれに近い持ち方が望しい。そのような持ち方をすると、例えば右手で持った場合、右脇が締まった状態で計量スプーン1を安定して保持でき、右手の左方に計量部2が位置する。その状態では、柄部3が水平よりも左下がり傾斜しているのが自然である。
【0037】
図3のように計量部2の全体を容器G内の粉粒体Aの中に挿入した状態では、柄部3の左下がり傾斜角度が大きくなるので、角度Cが大き過ぎると、角度Eが大きくなり過ぎてしまう。そのため、図4のように計量部2を少し引き上げた状態でカップ状の計量部2から粉粒体Aが流下してしまうので、前記「角度Eが大きい場合」に相当し、計量できなくなる。
【0038】
前記「角度Eが適切な範囲である場合」における計量作業を行えるようにするためには、図2の方向Jに対して開口面Kが前下がり傾斜する角度Cを、35°以下(C≦35°)にすればよい。また、計量作業の操作性をより向上させるという観点からは、角度Cは、35°以下でなるべく大きい方が良い。したがって、例えば、15°≦C≦35°にするのが好ましい実施態様であり、20°≦C≦35°にするのが一層好ましい実施態様である。
【0039】
角度Eを適切な範囲にするための操作性を良好にするために、柄部3は、図1のような平板状であるのが好ましい実施態様である。それにより、例えば前記ペングリップで柄部3を持った際に、より安定した状態で計量部2を保持できるので、角度Eを適切な範囲にするための操作がしやすくなる。
【0040】
<変形例>
計量スプーン1の柄部3は、図2に示すように基端部3Aが側壁5の上端部に位置するものに限定されない。例えば、図6に示す計量スプーン1の柄部3のように、側壁5の上下方向の中間に基端部3Aが位置するもの等であってもよい。
【0041】
計量スプーン1の柄部3は、図1及び図2のような平板状のものや、真直な棒状のものに限定されない。例えば、図7に示すように、柄部3は、縦断面が円弧状等である面外方向へ曲がった板材であってもよく、同様の縦断面を持つ棒材であってもよい。
【0042】
図6及び図7のような変形例であっても、計量部2と柄部3とは、計量部2の上面2Aである、同一平面上にある開口面Kに沿う面Bに対して同じ側にあり、把持位置Iから基端部3Aへ向かう方向(矢印J)を前として、開口面Kは前下がり傾斜しており、開口面Kが前下がり傾斜する角度Cは、35°以下である。また、柄部3は、計量部2から遠ざかる方向Fへ行くにしたがって、開口面Kに沿う面Bから漸次離反する。
【0043】
<作用効果>
本発明の実施の形態に係る計量スプーン1の構成によれば、計量部2の開口面Kは同一平面上にある。したがって、第2の計量スプーンのような補助縁部を設ける必要がないので、計量スプーン1の製造コストが増大しない。
【0044】
その上、柄部3の把持位置Iから基端部3Aへ向かう方向Jを前として、開口面Kは前下がり傾斜しており、開口面Kが前下がり傾斜する角度Cは、35°以下である。そのため、図3のように容器G内の粉粒体Aの中に挿入した計量部2を、図4~5のように引き上げるだけで、粉粒体Aの流動性を利用して、計量部2内の粉粒体aの上面Hを開口面Kと略面一にすることが容易である。したがって、計量部2の上面2Aを摺り切る作業や計量部2を左右又は前後に振る作業を行うことなく、計量作業を容易に行うことができる。
【0045】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 計量スプーン
2 計量部
2A 計量部の上面
3 柄部
3A 基端部
3B 先端部
4 底壁
5 側壁
A 粉粒体
a 計量部内の粉粒体
B 開口面に沿う面
C 開口面が前下がり傾斜する角度(開口面に沿う面と柄部とが成す角度)
D 水平面と柄部とが成す角度
E 開口面に沿う面と水平面とが成す角度
F 柄部が計量部から遠ざかる方向
G 容器
H 計量部内の粉粒体の上面
I 把持位置
J 柄部の把持位置から基端部へ向かう方向
K 開口面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7