(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082843
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240613BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240613BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H01L29/78 652D
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196994
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 正和
(57)【要約】 (修正有)
【課題】チャネル長を均一化し、特性のばらつきを抑制することが可能な炭化珪素半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置は、半導体基板10のおもて面に設けられた複数のトレンチ部40と、半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域14と、ドリフト領域の上方に設けられ、ドリフト領域よりも高ドーピング濃度である第1導電型のソース領域12と、ドリフト領域の上方に設けられ、ベース領域よりも高ドーピング濃度である第2導電型のコンタクト領域15と、ソース領域の下方であって、ベース領域の下端よりも上方に設けられ、ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型領域と、を備える。第2導電型領域は、トレンチ部の側壁に接して設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板のおもて面に設けられた複数のトレンチ部と、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりも高ドーピング濃度である第1導電型のソース領域と、
前記ドリフト領域の上方に設けられ、前記ベース領域よりも高ドーピング濃度である第2導電型のコンタクト領域と、
前記ソース領域の下方であって、前記ベース領域の下端よりも上方に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型領域と
を備え、
前記第2導電型領域は、前記複数のトレンチ部のいずれかのトレンチ部の側壁に接して設けられる
炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2導電型領域のドーピング濃度は、前記ベース領域のドーピング濃度よりも大きく、前記コンタクト領域のドーピング濃度以下である
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電型領域のドーピング濃度は、1×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下である
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ソース領域は、前記複数のトレンチ部の配列方向において、前記複数のトレンチ部のうち隣接する一方のトレンチ部の側壁から他方のトレンチ部の側壁まで延伸して設けられる
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記複数のトレンチ部の延伸方向における前記第2導電型領域の幅Wpは、前記複数のトレンチ部の延伸方向における前記ソース領域の幅Wnよりも大きい
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ベース領域は、前記半導体基板のおもて面において、前記ソース領域と前記コンタクト領域との間に設けられ、
前記半導体基板の前記おもて面において、前記ソース領域と前記コンタクト領域とは、前記ベース領域を挟んで分離されている
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記ソース領域と前記コンタクト領域との間において、前記複数のトレンチ部の延伸方向における前記ベース領域の幅は、0.2μm以上、0.5μm以下である
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
隣接する前記複数のトレンチ部の間において、前記ベース領域の下端と接するように設けられた第2導電型のボディ領域を備える
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記ボディ領域は、第1ボディ領域と、前記第1ボディ領域の上方に設けられた第2ボディ領域とを含み、
前記第2ボディ領域の上端は、前記ベース領域の下端と接しており、
前記第1ボディ領域の上端は、前記第2ボディ領域の下端と接している
請求項8に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記第2導電型領域と前記コンタクト領域とは、前記ベース領域を挟んで分離されている
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記複数のトレンチ部の下端に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のトレンチボトム領域を備える
請求項9に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記トレンチ部の延伸方向における前記コンタクト領域と前記第2導電型領域との間の距離Dpは、前記トレンチ部の配列方向における前記第1ボディ領域と前記トレンチボトム領域との間の距離Dbよりも大きい
請求項11に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項13】
前記半導体基板の深さ方向における前記第2導電型領域の厚みは0.05μm以上、0.2μm以下である
請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項14】
前記第2導電型領域は、前記複数のトレンチ部の配列方向において、隣接する一方のトレンチ部の側壁から他方のトレンチ部の側壁まで延伸して設けられる
請求項1から13のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項15】
前記第2導電型領域は、前記複数のトレンチ部の配列方向において、隣接する一方のトレンチ部の側壁から他方のトレンチ部の側壁まで延伸せずに終端する
請求項1から13のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項16】
前記ソース領域は、前記トレンチ部を挟んで前記ソース領域と対向しており、前記コンタクト領域は、前記トレンチ部を挟んで前記コンタクト領域と対向している
請求項1から13のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項17】
前記ソース領域は、前記トレンチ部を挟んで前記コンタクト領域と対向しており、
前記コンタクト領域は、前記トレンチ部を挟んで前記ソース領域と対向している
請求項1から13のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項18】
複数のトレンチ部を備える半導体基板のおもて面面にマスクを形成する段階と、
前記マスクを用いて、前記半導体基板のおもて面からドーパントを注入し、前記複数のトレンチ部のいずれかのトレンチ部の側壁に接するように第2導電型の第2導電型領域を形成する段階と、
前記マスクを用いて、前記半導体基板のおもて面からドーパントを注入し、第1導電型のソース領域を形成する段階と
を備える
炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「p型炭化珪素層32の内部には、トレンチ7の側壁付近に、トレンチ7の側壁から離して、第3p+型領域23が選択的に設けられている」構成が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2019-50240号公報
[特許文献2] 特開2021-197384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
炭化珪素半導体装置において、チャネル長を均一化し、特性のばらつきを抑制することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体基板のおもて面に設けられた複数のトレンチ部と、前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、前記ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりも高ドーピング濃度である第1導電型のソース領域と、前記ドリフト領域の上方に設けられ、前記ベース領域よりも高ドーピング濃度である第2導電型のコンタクト領域と、前記ソース領域の下方であって、前記ベース領域の下端よりも上方に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型領域とを備え、前記第2導電型領域は、前記トレンチ部の側壁に接して設けられる炭化珪素半導体装置を提供する。
【0005】
上記炭化珪素半導体装置において、前記第2導電型領域のドーピング濃度は、前記ベース領域のドーピング濃度よりも大きく、前記コンタクト領域のドーピング濃度以下であってよい。
【0006】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記第2導電型領域のドーピング濃度は、1×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下であってよい。
【0007】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ソース領域は、前記複数のトレンチ部の配列方向において、隣接する一方のトレンチ部の側壁から他方のトレンチ部の側壁まで延伸して設けられてよい。
【0008】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記複数のトレンチ部の延伸方向における前記第2導電型領域の幅Wpは、前記複数のトレンチ部の延伸方向における前記ソース領域の幅Wnよりも大きくてよい。
【0009】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ベース領域は、前記半導体基板のおもて面において、前記ソース領域と前記コンタクト領域との間に設けられてよく、前記半導体基板の前記おもて面において、前記ソース領域と前記コンタクト領域とは、前記ベース領域を挟んで分離されてよい。
【0010】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ソース領域と前記コンタクト領域との間において、前記複数のトレンチ部の延伸方向における前記ベース領域の幅は、0.2μm以上、0.5μm以下であってよい。
【0011】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、隣接する前記複数のトレンチ部の間において、前記ベース領域の下端と接するように設けられた第2導電型のボディ領域を備えてよい。
【0012】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ボディ領域は、第1ボディ領域と、前記第1ボディ領域の上方に設けられた第2ボディ領域を含んでよく、前記第2ボディ領域の上端は、前記ベース領域の下端と接していてよく、前記第1ボディ領域の上端は、前記第2ボディ領域の下端と接していてよい。
【0013】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記第2導電型領域と前記コンタクト領域とは、前記ベース領域を挟んで分離されていてよい。
【0014】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記複数のトレンチ部の下端に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のトレンチボトム領域を備えてよい。
【0015】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記トレンチ部の延伸方向における前記コンタクト領域と前記第2導電型領域との間の距離Dpは、前記トレンチ部の配列方向における前記第1ボディ領域と前記トレンチボトム領域との間の距離Dbよりも大きくてよい。
【0016】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記半導体基板の深さ方向における前記第2導電型領域の厚みは0.05μm以上、0.2μm以下であってよい。
【0017】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記第2導電型領域は、前記複数のトレンチ部の配列方向において、隣接する一方のトレンチ部の側壁から他方のトレンチ部の側壁まで延伸して設けられてよい。
【0018】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記第2導電型領域は、前記複数のトレンチ部の配列方向において、隣接する一方のトレンチ部の側壁から他方のトレンチ部の側壁まで延伸せずに終端してよい。
【0019】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ソース領域は、前記トレンチ部を挟んで前記ソース領域と対向していてよく、前記コンタクト領域は、前記トレンチ部を挟んで前記コンタクト領域と対向していてよい。
【0020】
上記いずれかの炭化珪素半導体装置において、前記ソース領域は、前記トレンチ部を挟んで前記コンタクト領域と対向していてよく、前記コンタクト領域は、前記トレンチ部を挟んで前記ソース領域と対向していてよい。
【0021】
本発明の第2の態様においては、複数のトレンチ部を備える半導体基板のおもて面にマスクを形成する段階と、前記マスクを用いて、前記半導体基板のおもて面からドーパントを注入し、前記複数のトレンチ部のいずれかのトレンチ部の側壁に接するように第2導電型の第2導電型領域を形成する段階と、前記マスクを用いて、前記半導体基板のおもて面からドーパントを注入し、第1導電型のソース領域を形成する段階とを備える炭化珪素半導体装置の製造方法が提供される。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】炭化珪素半導体装置100の上面の一例を表す図である。
【
図2A】炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。
【
図2B】炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。
【
図2C】炭化珪素半導体装置100のXZ断面の一例を表す図である。
【
図3】炭化珪素半導体装置100の上面の変形例を表す図である。
【
図4A】炭化珪素半導体装置100のYZ断面の変形例を表す図である。
【
図4B】炭化珪素半導体装置100のYZ断面の変形例を表す図である。
【
図5】炭化珪素半導体装置100の上面の変形例を表す図である。
【
図6】炭化珪素半導体装置100の製造プロセスの一例を表すフローチャートである。
【
図7】炭化珪素半導体装置100の製造プロセスの一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
本明細書においては、半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」、「おもて」、「裏」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0026】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。
【0027】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
【0028】
本明細書では、NまたはPを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、NやPに付す+および-は、それぞれ、それが付されていない層や領域よりも高ドーピング濃度および低ドーピング濃度であることを意味する。
【0029】
図1は、炭化珪素半導体装置100の上面の一例を表す図である。炭化珪素半導体装置100は、高電圧および/または大電流を制御するパワー半導体装置であってよい。一例として、炭化珪素半導体装置100は、MOSFETである。炭化珪素半導体装置100は、半導体基板10を有し、半導体基板10において、活性部と、耐圧構造部(非図示)とを備える。本例の炭化珪素半導体装置100は、半導体基板10のおもて面21において、ソース領域12と、ベース領域14と、コンタクト領域15と、ゲートトレンチ部40とを備える。
【0030】
半導体基板10は、炭化珪素からなる。半導体基板10は、おもて面21を有する。半導体基板10は、エピタキシャル成長によって形成されてよい。一例として、半導体基板10の結晶構造は、4H-SiCである。
図1において、X軸は炭化珪素からなる半導体基板10の[11-20]方向であってよく、Y軸は半導体基板10の[1-100]方向であってよく、Z軸は半導体基板10の[000-1]方向であってよい。
【0031】
活性部は、半導体基板10に設けられる。活性部は、炭化珪素半導体装置100の動作時に、主電流が流れる領域であってよい。一例として、活性部は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)構造を有するが、これに限定されない。
【0032】
耐圧構造部は、半導体基板10において、活性部の外周に設けられる。耐圧構造部は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和してよい。一例として、耐圧構造部は、接合終端(Junction Termination Extension、JTE)構造を有する。変形例として、耐圧構造部は、ガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有してよい。
【0033】
炭化珪素半導体装置100の上面側には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、半導体基板10のおもて面21において、複数のゲートトレンチ部40が形成されている。
【0034】
ソース領域12は、半導体基板10のおもて面21に設けられた第1導電型の領域である。本例のソース領域12は、一例としてN+型である。ソース領域12は、ゲートトレンチ部40の側壁と接してよい。本例のソース領域12は、ゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられる。ソース領域12は、ゲートトレンチ部40を挟んでソース領域12と対向して設けられてもよい。即ち、ソース領域12は、上面視において、ゲートトレンチ部40の配列方向にストライプ状に設けられてよい。
【0035】
ソース領域12は、半導体基板10のおもて面21にフォトレジスト等のマスクを形成し、半導体基板10のおもて面21からイオン注入を行うことで形成されてよい。ソース領域12は、半導体基板10のエピタキシャル層に形成されてよい。一例として、ソース領域12を形成するためのドーパントは、リンまたは窒素であってよい。ソース領域12は、1段階のイオン注入で形成されてよく、2段階以上のイオン注入で形成されてよい。
【0036】
本例のソース領域12のドーピング濃度は、後述するドリフト領域18のドーピング濃度よりも高くてよい。一例において、ソース領域12のドーピング濃度は1×1018cm-3以上であってよく、1×1021cm-3以下であってよい。
【0037】
ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21において、半導体基板10の深さ方向に延伸して設けられた第2導電型の領域である。本例のベース領域14は、一例としてP型である。ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21において、ソース領域12とコンタクト領域15との間に設けられる。ベース領域14は、半導体基板10のおもて面21におけるゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられてよい。
【0038】
ベース領域14は、P型のドーパントをドーピングしながら、ドリフト領域18の上方に炭化珪素をエピタキシャル成長させることによって設けられてよい。P型のドーパントは、一例としてアルミニウム原子である。本例のベース領域14のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高くてよい。一例において、ベース領域14のドーピング濃度は2×1016cm-3以上であってよく、2×1017cm-3以下であってよい。
【0039】
一例では、ベース領域14がソース領域12とコンタクト領域15との間に設けられることにより、ソース領域12とコンタクト領域15とが分離されていてよい。半導体基板10のおもて面21におけるベース領域14のゲートトレンチ部40の延伸方向における幅W14Xは、0.2μm以上であってよく、0.5μm以下であってよい。
【0040】
コンタクト領域15は、半導体基板10のおもて面21に設けられた第2導電型の領域である。本例のコンタクト領域15は、一例としてP+型である。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられてよい。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40を挟んでコンタクト領域15と対向して設けられてもよい。即ち、コンタクト領域15は、上面視において、ゲートトレンチ部40の配列方向にストライプ状に設けられてよい。
【0041】
コンタクト領域15は、半導体基板10のおもて面21にフォトレジスト等のマスクを形成し、半導体基板10のおもて面21からイオン注入を行うことで形成されてよい。コンタクト領域15は、半導体基板10のエピタキシャル層に形成されてよい。コンタクト領域15を形成するためのドーパントは、アルミニウムまたはボロンであってよい。コンタクト領域15は、1段階のイオン注入で形成されてよく、2段階以上のイオン注入で形成されてよい。
【0042】
本例のコンタクト領域15のドーピング濃度は、後述するドリフト領域18のドーピング濃度よりも高くてよく、ベース領域14のドーピング濃度よりも高くてよい。一例において、コンタクト領域15のドーピング濃度は1×1019cm-3以上であってよく、1×1020cm-3以下であってよい。
【0043】
半導体基板10のおもて面21におけるゲートトレンチ部40の延伸方向において、コンタクト領域15の幅は、ソース領域12の幅よりも大きくてよく、同一であってよい。また、ソース領域12の幅は、ベース領域14の幅よりも大きくてよい。
【0044】
図2Aは、
図1におけるa-a'線における炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。
図2Aは、炭化珪素半導体装置100の、上面視においてソース領域12が設けられた領域のYZ断面図である。本例の炭化珪素半導体装置100は、ソース領域12と、ベース領域14と、ドリフト領域18と、第2導電型領域19と、バッファ領域24と、絶縁膜38と、ゲートトレンチ部40と、ソース電極52と、ドレイン電極54と、ボディ領域60と、トレンチボトム領域63とを備える。
【0045】
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた第1導電型の領域である。本例のドリフト領域18は、一例としてN型である。ドリフト領域18は、N型のドーパントをドーピングしながら、炭化珪素をエピタキシャル成長させることによって設けられてよい。N型のドーパントは、一例として窒素原子である。本例のドリフト領域18のドーピング濃度は、バッファ領域24のドーピング濃度よりも低くてよい。
【0046】
バッファ領域24は、半導体基板10の裏面23に設けられた第1導電型の領域である。バッファ領域24は、ドリフト領域18の下方に設けられる。本例のバッファ領域24は、一例としてN+型である。バッファ領域24は、N+型の炭化珪素からなる炭化珪素基板であってよい。
【0047】
第2導電型領域19は、ソース領域12の下方において、ベース領域14の下端よりも上方に設けられた第2導電型の領域である。本例の第2導電型領域19は、一例としてP+型である。第2導電型領域19は、ゲートトレンチ部40の側壁に接して設けられる。第2導電型領域19は、ゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられてよい。第2導電型領域19の上端は、ソース領域12の下端と接していてもよく、接していなくてもよい。
【0048】
第2導電型領域19のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも高くてよく、コンタクト領域15のドーピング濃度以下であってよい。一例において、第2導電型領域19のドーピング濃度は1×1018cm-3以上であってよく、1×1020cm-3以下であってよい。
【0049】
第2導電型領域19はベース領域14よりも十分にドーピング濃度が高いので、MOSFET動作時にチャネル形成がされない領域である。即ち、第2導電型領域19においては、MOSFETの動作時に反転領域が形成されない。ソース領域12の下方のみに第2導電型領域19を設けることで、MOSFET動作時に第2導電型領域19の直下から流入するチャネル電流が制限され、直下以外から流入する電流のみとなる。これにより、炭化珪素半導体装置100の短絡耐量を向上することができる。また、チャネル長が均一化され、炭化珪素半導体装置100の特性のばらつきが抑制される。
【0050】
第2導電型領域19は、半導体基板10のおもて面21にフォトレジスト等のマスクを形成し、半導体基板10のおもて面21からイオン注入を行うことで形成されてよい。第2導電型領域19は、半導体基板10のエピタキシャル層に形成されてよい。一例として、注入イオンはアルミニウムイオンであってよい。第2導電型領域19は、1段階のイオン注入で形成されてよく、2段階以上のイオン注入で形成されてよい。
【0051】
第2導電型領域19の半導体基板10の深さ方向における厚さは、ソース領域12の半導体基板10の深さ方向における厚さよりも薄くてよい。一例として、第2導電型領域19の厚さは0.05μm以上であってよく、0.2μm以下であってよい。
【0052】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21に設けられる。ゲートトレンチ部40は、ベース領域14を貫通してドリフト領域18に達して設けられてよい。ゲートトレンチ部40がベース領域14を貫通するとは、ベース領域14を形成してからゲートトレンチ部40を形成する順序で製造されたものに限定されない。ゲートトレンチ部40を形成した後に、ゲートトレンチ部40の側壁にベース領域14を形成したものも、ゲートトレンチ部40がベース領域14を貫通したものに含まれる。ゲートトレンチ部40の底部は、後述するトレンチボトム領域63によって覆われていてよい。
【0053】
ゲートトレンチ部40は、ゲート絶縁膜44およびゲート導電部42を有する。ゲート絶縁膜44は、ゲートトレンチ部40の内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜44は、ゲートトレンチ部40の内壁の半導体を酸化することで形成されてよい。
【0054】
ゲート導電部42は、ゲートトレンチ部40の内部において、ゲート絶縁膜44よりも内側に形成される。ゲート絶縁膜44は、ゲート導電部42と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部42は、例えば燐(P)等のn型不純物又はボロン(B)等のp型不純物を高不純物濃度で添加したポリシリコン(ドープドポリシリコン)や、チタン(Ti)又はタングステン(W)等の高融点金属等の導電材料で形成される。ゲートトレンチ部40は、半導体基板10のおもて面21において絶縁膜38によって覆われる。
【0055】
ソース電極52は、ソース電位に設定され、絶縁膜38を挟んで、半導体基板10の上方に設けられる。ソース電極52は、金属を含む材料で形成される。ソース電極52は、バリアメタルを含んでよい。ソース電極52の少なくとも一部の領域は、アルミニウム(Al)等の金属、または、アルミニウム‐シリコン合金(AlSi)、アルミニウム‐シリコン‐銅合金(AlSiCu)等の金属合金で形成されてよい。
【0056】
ドレイン電極54は、半導体基板10の裏面23に形成される。ドレイン電極54は、金属等の導電材料で形成される。ドレイン電極54は、例えば金(Au)からなる単層膜や、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、Auの順で積層された金属膜が使用可能であり、更にその最下層にモリブデン(Mo)、タングステン(W)等の金属膜を積層してもよい。また、半導体基板10の裏面23とドレイン電極54との間にニッケルシリサイド(NiSix)等からなるシリサイド層が設けられてもよい。
【0057】
トレンチボトム領域63は、ゲートトレンチ部40の底部および側面の一部を覆うように、ゲートトレンチ部40の下端に設けられた第2導電型の領域である。本例のトレンチボトム領域63は、一例としてP+型である。トレンチボトム領域63を設けることで、炭化珪素半導体装置100の耐圧を向上させることができる。
【0058】
ボディ領域60は、隣接するゲートトレンチ部40の間において、ベース領域14の下端と接するように設けられた第2導電型の領域である。本例のボディ領域60は、一例としてP+型である。本例のボディ領域60は、第1ボディ領域61および第2ボディ領域62を含む。ボディ領域は、半導体基板10のおもて面21からの2段階のイオン注入を経て形成されてよく、1段階のイオン注入を経て形成されてよい。
【0059】
第1ボディ領域61は、ベース領域14の下端よりも下方に設けられる。第1ボディ領域61は、トレンチボトム領域63を形成する際、同時に形成されてよい。半導体基板10の深さ方向において、第1ボディ領域61は、トレンチボトム領域63と同一の深さに形成されてよい。
【0060】
第2ボディ領域62は、ベース領域14および第1ボディ領域61の間に設けられる。第2ボディ領域62は、ベース領域14および第1ボディ領域61と接するように設けられる。
【0061】
炭化珪素半導体装置100においてアバランシェが発生した際、動作電流よりも大きなアバランシェ電流がゲートトレンチ部40に流れ込む場合がある。本例では、ボディ領域60を設けることで、アバランシェ電流がボディ領域60を通っておもて面21に流れることができ、アバランシェ電流がゲートトレンチ部40に流れることを抑制できる。
【0062】
図2Bは、
図1におけるb-b'線における炭化珪素半導体装置100のYZ断面の一例を表す図である。
図2Bは、炭化珪素半導体装置100の、上面視においてコンタクト領域15が設けられた領域のYZ断面図である。
図2Bを用いて、
図2Aとの相違点について説明する。
【0063】
図2Bにおいては、半導体基板10のおもて面21の全面にコンタクト領域15が形成されている。コンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられてよい。
【0064】
第2導電型領域19は、コンタクト領域15の下方には設けられなくてよい。第2導電型領域19がコンタクト領域15の下方に設けられないことにより、主電流の流れる電流経路が確保される。
【0065】
ゲートトレンチ部40の配列方向において、第1ボディ領域61とトレンチボトム領域63との間には、所定の距離Dbが設けられている。Dbは、0.2μm以上であってよく、0.6μm以下であってよい。
【0066】
図2Cは、
図1におけるc-c'線における炭化珪素半導体装置100のXZ断面の一例を表す図である。
図2Bは、炭化珪素半導体装置100の、隣接するゲートトレンチ部40の中央を通る領域のXZ断面図である。
【0067】
本例の第2導電型領域19は、ソース領域12の下方にのみ設けられている。また、ゲートトレンチ部40の延伸方向(
図2CのX軸方向)において、第2導電型領域19の幅Wpは、ソース領域12の幅Wnよりも大きくてよい。一例では、WpとWnとは同一の幅であってよい。
【0068】
ソース領域12の下方に第2導電型領域19が設けられない場合、MOSFET動作時のチャネル電流がソース領域12より下方の全方向から流入する。その場合、ソース領域12の直下から流入する電流と、直下以外から流入する電流とでは、チャネルの長さが異なり、炭化珪素半導体装置100の特性にばらつきが生じるおそれがある。
【0069】
本例では、第2導電型領域19がソース領域12の下方に設けられることで、MOSFET動作時にソース領域12の下方から流入する電流を抑制することができる。これにより、電流経路のチャネル長が統一され、炭化珪素半導体装置100の特性のばらつきが抑制される。
【0070】
ゲートトレンチ部40の延伸方向において、コンタクト領域15と第2導電型領域19との間には、所定の距離Dpが設けられている。即ち、ゲートトレンチ部40の延伸方向において、コンタクト領域15と第2導電型領域19との間にベース領域14が設けられることにより、コンタクト領域15と第2導電型領域19とが分離されている。
【0071】
ゲートトレンチ部40の延伸方向におけるコンタクト領域15と第2導電型領域19との間の距離Dpは、ゲートトレンチ部40の配列方向における第1ボディ領域61とトレンチボトム領域63との間の距離Dbよりも大きい。DpをDbよりも大きくすることにより、炭化珪素半導体装置100の表面近傍での発熱を抑制し、動作の安定性を高めることができる。
【0072】
コンタクト領域15と第2導電型領域19とが所定の距離Dpだけ離間していることにより、炭化珪素半導体装置100の表面近傍における発熱を抑制することができる。所定の距離Dpは0.2μm以上であってよく、0.45μm以下であってよい。
【0073】
以上のように、活性部は、トレンチ型MOSFET構造を有してよい。活性部の各構成要素について、その製造方法の例を述べたが、活性部の製造方法は、上記の方法に限定されない。活性部は、当業者によって用いられる通常の方法により製造されることができる。
【0074】
図3は、炭化珪素半導体装置100の上面の変形例を表す図である。
図3の実施例では、半導体基板10のおもて面21において、ゲートトレンチ部40とコンタクト領域15との間にベース領域14が設けられている点で、
図1の実施例と相違する。即ち、半導体基板10のおもて面21において、コンタクト領域15がゲートトレンチ部40と分離している。ゲートトレンチ部40とコンタクト領域15との間にベース領域14を設けることで、飽和電流が減少し、炭化珪素半導体装置100の短絡耐量を向上することができる。
【0075】
図4Aは、
図3のd-d'線における炭化珪素半導体装置100のYZ断面の変形例を表す図である。
図4Aに示した実施例においては、第2導電型領域19が、ゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸せずに終端している点で、
図2Aの実施例と相違する。
【0076】
本例では、第2導電型領域19がソース領域12の下方に設けられることで、電流経路のチャネル長が統一され、炭化珪素半導体装置100の特性のばらつきが抑制される。即ち、第2導電型領域19は、チャネルとなるゲートトレンチ部40の側壁近傍に設けられていれば、ソース領域12の下方の全面に設けられなくてもよい。
【0077】
図4Bは、
図3のe-e'線における炭化珪素半導体装置100のYZ断面の変形例を表す図である。
図4Bに示した実施例においては、コンタクト領域15とゲートトレンチ部40との間にベース領域14が設けられている点で、
図2Bの実施例と相違する。
【0078】
ゲートトレンチ部40とコンタクト領域15の間には、ベース領域14が所定の幅W14Yだけ設けられてよい。所定の幅W14Yは、ゲートトレンチ部40の延伸方向におけるコンタクト領域15とソース領域12との間の幅W14Xよりも大きくてよく、W14Xと同一であってよい。ゲートトレンチ部40の配列方向におけるベース領域14の幅W14Yは0.1μm以上であってよく、0.5μm以下であってよい。
【0079】
図5は、炭化珪素半導体装置100の上面の変形例を表す図である。
図5の実施例では、ソース領域12が、ゲートトレンチ部40を挟んでコンタクト領域15と対向しており、コンタクト領域15が、ゲートトレンチ部40を挟んでソース領域12と対向している構成となっている点で、
図1の実施例と相違する。
図5のように、コンタクト領域15とソース領域12とが千鳥構造で設けられてよい。
【0080】
図5のようにコンタクト領域15とソース領域12とが千鳥構造で設けられる場合においても、ソース領域12は、半導体基板10のおもて面21におけるゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられる。
【0081】
コンタクト領域15は、半導体基板10のおもて面21におけるゲートトレンチ部40の配列方向において、隣接する一方のゲートトレンチ部40の側壁から他方のゲートトレンチ部40の側壁まで延伸して設けられてよい。これにより、炭化珪素半導体装置100の短絡耐量を向上させることができる。
【0082】
ゲートトレンチ部40の配列方向において、コンタクト領域15とゲートトレンチ部40との間にベース領域14が設けられてもよい。これにより、炭化珪素半導体装置100の短絡耐量を向上させることができる。
【0083】
コンタクト領域15とソース領域12とが千鳥構造で設けられる場合においても、ソース領域12下方の一部または全部の領域において、第2導電型領域19が設けられる。これにより、チャネル長を均一化し、炭化珪素半導体装置100の特性のばらつきを抑制することができる。
【0084】
図6は、炭化珪素半導体装置100の製造プロセスの一例を表すフローチャートである。本例は、炭化珪素半導体装置100の製造プロセスのフローチャートの一例を示しており、これに限定されない。
図6を用いて、ソース領域12および第2導電型領域19を形成する段階について詳細に説明する。
【0085】
ステップS100では、バッファ領域24と、ドリフト領域18と、ベース領域14と、第1ボディ領域61と、第2ボディ領域62と、トレンチボトム領域63とを備える、炭化珪素からなる半導体基板10を設ける。炭化珪素からなる半導体基板10にこれらの領域を形成する段階については、当業者によって用いられる通常の方法により形成されることができるので、本明細書では詳細に説明しない。
【0086】
ステップS102において、半導体基板10のおもて面21にマスクを形成する。マスクは、フォトレジストなどの任意のマスクであってよい。
【0087】
ステップS104において、半導体基板10のおもて面21からドーパントをイオン注入する。ステップS104においてイオン注入されるドーパントは、アルミニウムであってよく、ボロンであってよい。アルミニウムをイオン注入することにより、第2導電型領域19が形成されてよい。ステップS104におけるイオン注入は、1段階で行われてよく、2段階以上の多段階で行われてよい。一例では、ステップS104におけるイオン注入の際のエネルギーは、0.5MeV以上であってよく、2.0MeV以下であってよい。
【0088】
第2電導型領域19は、半導体基板10に設けられたゲートトレンチ部40のいずれかの側壁に接するように形成されてよい。ゲートトレンチ部40の形成は、第2電導型領域19を形成した後に行われてもよく、第2電導型領域19を形成するよりも前に行われてもよい。
【0089】
ステップS106において、ステップS102で形成したマスクを取り除き、半導体基板10のおもて面21に再度マスクを形成する。S106で形成されるマスクのなお、ステップS106は省略されてもよい。ステップS106が省略された場合、後述するステップS108において形成されるソース領域12のゲートトレンチ部40の延伸方向における幅Wnと、第2導電型領域19のゲートトレンチ部40の延伸方向における幅Wpとが同一になる。
【0090】
ステップS108において、半導体基板10のおもて面21からドーパントをイオン注入する。ステップS104においてイオン注入されるドーパントは、リンであってよく、窒素原子であってよい。リンをイオン注入することにより、ソース領域12が形成されてよい。ステップS108におけるイオン注入は、1段階で行われてよく、2段階以上の多段階で行われてよい。
【0091】
ステップS108におけるイオン注入の際のエネルギーは、ステップS104におけるイオン注入の際のエネルギーよりも小さくてよい。一例では、ステップS108におけるイオン注入の際のエネルギーは、70keV以上であってよく、300keV以下であってよい。これにより、第2導電型領域19よりもおもて面21側にソース領域12を形成することができる。
【0092】
ステップS104とステップS108とは、順番を入れ替えて行なってもよい。即ち、一例として先にアルミニウムをイオン注入することで第2導電型領域19を形成した後に、リンをイオン注入することでソース領域12を形成する順番で説明したが、先にソース領域12を形成した後に、第2導電型領域19が形成されてもよい。
【0093】
図7は、炭化珪素半導体装置100の製造プロセスの一例を表す図である。
図7は、
図6の各ステップにおける、半導体基板10のXZ断面を表す図である。ステップS100を表す断面では、第1ボディ領域61および第2ボディ領域62を通る断面での断面図が表されており、トレンチボトム領域63は図示されていない。
【0094】
ステップS102において半導体基板10のおもて面21にマスクが形成された後、ステップS104においてイオン注入により第2導電型領域19が形成される。第2導電型領域19は、ベース領域14の内部であって、ベース領域14の下端よりも上方に形成される。
【0095】
ステップS106において、ステップS102で形成されたマスクが取り除かれ、新たにマスクが形成される。その後、ステップS108においてイオン注入によりソース領域12が形成される。
【0096】
ステップS106において形成されるマスクのゲートトレンチ部40の延伸方向における幅は、ステップS102において形成されるマスクのゲートトレンチ部40の延伸方向における幅よりも大きい。これにより、ソース領域12のゲートトレンチ部40の延伸方向における幅Wnを、第2導電型領域19のゲートトレンチ部40の延伸方向における幅Wpよりも小さくすることができる。
【0097】
また、ステップS106は省略することができる。ステップS106が省略された場合、ステップS104におけるイオン注入とステップS108におけるイオン注入とが同一のマスクを用いて行なわれるので、ソース領域12のゲートトレンチ部40の延伸方向における幅Wnと、第2導電型領域19のゲートトレンチ部40の延伸方向における幅Wpとが同一になる。
【0098】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0099】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0100】
10・・・半導体基板、12・・・ソース領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、18・・・ドリフト領域、19・・・第2導電型領域、21・・・おもて面、23・・・裏面、24・・・バッファ領域、38・・・絶縁膜、40・・・ゲートトレンチ部、42・・・ゲート導電部、44・・・ゲート絶縁膜、52・・・ソース電極、54・・・ドレイン電極、60・・・ボディ領域、61・・・第1ボディ領域、62・・・第2ボディ領域、63・・・トレンチボトム領域、100・・・炭化珪素半導体装置