(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082852
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ベントプラグ及びそれを備えるタイヤ加硫金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20240613BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20240613BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20240613BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20240613BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
B29C35/02
B29K21:00
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197012
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上埜 智徳
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AB03
4F202AH20
4F202AM32
4F202AR01
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU02
4F202CU07
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AM32
4F203AR01
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
(57)【要約】
【課題】 ゴム噛みを生じた場合に排気機能を維持できるベントプラグ及びそれを備えるタイヤ加硫金型を提供する。
【解決手段】 ベントプラグは、タイヤ加硫金型の成形面で開口する排気孔に装着されるベントプラグであって、排気路を内部に有する筒状のハウジングと、前記ハウジングに挿入されて前記排気路を実質的に開閉する弁体となるステムと、前記ステムをキャビティ側に向けて付勢する付勢部材と、加硫成形時における前記排気路の全閉を妨げるように前記付勢部材の付勢力を調整可能な調整部材と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ加硫金型の成形面で開口する排気孔に装着されるベントプラグであって、
排気路を内部に有する筒状のハウジングと、
前記ハウジングに挿入されて前記排気路を実質的に開閉する弁体となるステムと、
前記ステムをキャビティ側に向けて付勢する付勢部材と、
加硫成形時における前記排気路の全閉を妨げるように前記付勢部材の付勢力を調整可能な調整部材と、を備える、ベントプラグ。
【請求項2】
前記調整部材は、前記排気路に設けられると共に前記ステム又は前記ハウジングに着脱可能である、請求項1に記載のベントプラグ。
【請求項3】
前記調整部材は、前記排気路に沿って延びる通気穴を備える、請求項1に記載のベントプラグ。
【請求項4】
前記キャビティにセットされたタイヤの外表面に接する前記成形面と、
前記成形面で開口する前記排気孔に装着された請求項1~3の何れか1項に記載のベントプラグと、を備える、タイヤ加硫金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ加硫金型の成形面の排気孔に装着されるベントプラグ及びそれを備えるタイヤ加硫金型に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫金型には、タイヤの外表面を成形する成形面に多数の排気孔が設けられている。排気孔は、金型の内部と外部に通じ、加硫成形時にタイヤの外表面と成形面との間の空気を排出させ、それによりベアと呼ばれる凹み傷の発生を防止する。加硫成形時にはタイヤの外表面のゴムが排気孔に流入する。これにより、加硫済みタイヤの外表面には、スピューと呼ばれる多数のゴム突起が形成される。これに対し、排気孔にベントプラグを装着することによりスピューの形成を防ぐ手法が知られている。ベントプラグとして、例えば特許文献1に開示されているようなスプリングベントが知られている。
【0003】
図8に示すベントプラグ92は、排気路91を内部に有する筒状のハウジング93と、ハウジング93に挿入されたステム94と、ステム94を付勢するスプリング95とを備えたスプリングベントである。ベントプラグ92は、スプリング95がステム94をキャビティ側に向けて付勢することで開状態となり、そのステム94をタイヤの外表面が押し下げることで閉状態となる。したがって、タイヤに接触することで開状態から閉状態に遷移し、タイヤが離れるとスプリング95の作動によって閉状態から開状態に復帰する。
【0004】
しかしながら、ゴム噛みを生じた場合、
図9に示すようにステム94とハウジング93との間に未加硫ゴムRが固着し、ベントプラグ92の開状態への復帰が妨げられる。ゴム噛みとは、ステム94が完全に押し下げられる前に側方から流れてきた未加硫ゴムRがステム94とハウジング93との間に侵入し、スプリング95に絡み付く現象である。ゴム噛みを生じたベントプラグ92は、スプリング95の作動が未加硫ゴムによって妨げられ、閉状態から開状態に遷移しなくなる。これにより、ベントプラグ92の排気機能が失われ、加硫済みタイヤの外表面にベアを生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、ゴム噛みを生じた場合に排気機能を維持できるベントプラグ及びそれを備えるタイヤ加硫金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のベントプラグは、タイヤ加硫金型の成形面で開口する排気孔に装着されるベントプラグであって、排気路を内部に有する筒状のハウジングと、前記ハウジングに挿入されて前記排気路を実質的に開閉する弁体となるステムと、前記ステムをキャビティ側に向けて付勢する付勢部材と、加硫成形時における前記排気路の全閉を妨げるように前記付勢部材の付勢力を調整可能な調整部材と、を備える。
【0008】
本開示のタイヤ加硫金型は、前記キャビティにセットされたタイヤの外表面に接する前記成形面と、前記成形面で開口する前記排気孔に装着された前記ベントプラグと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のタイヤ加硫金型の一例を概略的に示す断面図
【
図2】第1実施形態に係るベントプラグを示す
図1の領域II拡大図
【
図3】同実施形態に係るベントプラグの実質的な閉状態を示す
図2に相当する断面図
【
図5】第2実施形態に係るベントプラグの
図2に相当する断面図
【
図7】他の実施形態に係るベントプラグの
図6に相当する断面図
【
図8】従来例における開状態のベントプラグを示す断面図
【
図9】ゴム噛みを生じた
図8のベントプラグを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[タイヤ加硫金型]
まずは、ベントプラグ2が装着されるタイヤ加硫金型10の構成の一例について、
図1を参照しながら説明する。なお、各図(
図2~
図10も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0011】
図1は、タイヤ子午線断面に沿ったタイヤ加硫金型10(以下、単に「金型10」と呼ぶ場合がある)の断面を示す。
図1に示す金型10は、型閉め状態である。タイヤTは、タイヤ軸方向を上下に向けてセットされる。
図1において、左方向はタイヤ径方向外側、右方向はタイヤ径方向内側である。
【0012】
金型10は、タイヤTがセットされるキャビティ15と、そのキャビティ15にセットされたタイヤTの外表面に接する成形面1とを備える。成形面1には、金型10の内部(即ち、キャビティ15)と外部とを連通させる排気孔16が設けられている。加硫成形時には、この排気孔16を通じてタイヤTの外表面と成形面1との間の空気が排出される。成形面1で開口する排気孔16にはベントプラグ2が装着されている。本実施形態におけるベントプラグ2は、スプリングベントである。
【0013】
成形面1の素材としては、アルミニウム材が例示される。このアルミニウム材は、純アルミ系の素材のみならずアルミニウム合金を含む概念であり、例えばAl-Cu系、Al-Mg系、Al-Mg-Si系、Al-Zn-Mg系、Al-Mn系、Al-Si系が挙げられる。ベントプラグ2を構成する後述のハウジング3及びステム4は、それぞれステンレスやS45Cに代表される鋼材からなることが好ましく、これらは同種金属でもよいが異種金属でも構わない。
【0014】
金型10は、タイヤTのトレッドを成形するトレッド型11と、タイヤTのサイドウォールを成形するサイド型12,13と、タイヤTのビード部が嵌合されるビードリング14,14と、を備える。成形面1は、トレッド型11の内面と、サイド型12,13の内面とを含んでいる。図示を省略しているが、トレッド型11の内面には、タイヤTのトレッドパターンを形成するための凹凸が設けられている。
図1では、トレッド型11の内面で開口する1本の排気孔16しか描いていないが、実際には、トレッド型11やサイド型12,13の内面で開口する多数の排気孔が設けられている。
【0015】
ベントプラグ2は、成形面1としてのトレッド型11の内面で開口する排気孔16に装着されているが、これに代えて、又は加えて、サイド型12及び/又はサイド型13の内面で開口する排気孔に装着することも可能である。また、本実施形態では、金型10がトレッド型11と一対のサイド型12,13とを備えた構造を示しているが、これに限定されず、例えばトレッド型の中央部で上下に二分割された金型構造でもよい。
【0016】
[ベントプラグ]
(第1実施形態)
次に、ベントプラグ2の第1実施形態について、
図2~
図4を参照しながら説明する。
図2は、第1実施形態に係るベントプラグ2を示す
図1の領域II拡大図であり、上方向がタイヤ径方向内側、下方向がタイヤ径方向外側である。
図3は、ベントプラグ2の実質的な閉状態を示す
図2に相当する断面図である。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ベントプラグ2は、排気路21を内部に有する筒状のハウジング3と、ハウジング3に挿入されて排気路21を実質的に開閉する弁体となるステム4と、ステム4をキャビティ側D1(
図2ではタイヤ径方向内側)に向けて付勢する付勢部材5と、を備える。実質的に開閉とは、ベントプラグ2の開状態(
図2参照)と実質的な閉状態(
図3参照)との遷移を示す。実質的な閉状態は、排気路21が全閉した状態のみならず、後述するヘッド42とテーパ面32との間に隙間G1が微小(例えば、0.01mm~0.03mm)に形成されている場合も含む。図示の都合上、ステム4、付勢部材5及び後述する調整部材6は正面視で描いている(他の図も同様)。
【0018】
ハウジング3は、締まり嵌めによって排気孔16に圧入されている。ハウジング3は、キャビティ15に面する環状の頂面31と、頂面31から反キャビティ側D2(
図2ではタイヤ径方向外側)に向けて小径となるテーパ面32と、テーパ面32から反キャビティ側D2に向けてハウジング3の軸方向ADに沿って延びる円筒面33とを有する。軸方向ADは、排気孔16やステム4の軸方向と一致している。頂面31は、成形面1と面一(即ち、同一面上)に配置されているが、これに限られない。キャビティ15から遠い方のハウジング3の端部には、貫通孔34と、内鍔状の支持部35が設けられている。
【0019】
ステム4は、柱状のボディ41と、ボディ41に一体的に連結されたヘッド42と、を備える。ボディ41は、全体として軸方向ADに延びた円柱状に形成されている。キャビティ15から遠い方のボディ41の端部には、貫通孔34よりも径の大きいストッパー43が設けられている。ステム4は、このストッパー43の作用によりハウジング3から抜け出さない。
【0020】
ボディ41は、ヘッド42の反キャビティ側D2に連結された第1ボディ41aと、その第1ボディ41aの反キャビティ側D2に連結された第2ボディ41bと、を備える。第1ボディ41aの外径は、円筒面33の内径よりも小さい。第1ボディ41aと、それを取り囲む円筒面33との間には、空気が通過しうる隙間が形成されている。第2ボディ41bの外径は、第1ボディ41aの外径よりも小さい。第2ボディ41bと、それを取り囲む円筒面33との間には、付勢部材5を配置できる隙間が形成されている。第2ボディ41bは、付勢部材5に挿入されている。
【0021】
ヘッド42は、反キャビティ側D2に向けて小径となる円錐台形状に形成されている。ヘッド42は、テーパ面32に対応したテーパ形状の側面を有している。ヘッド42とそれを取り囲むテーパ面32との間に隙間G1が形成される。加硫成形時におけるヘッド42は、頂面31及び/又は成形面1から僅かに飛び出している。
【0022】
付勢部材5は、第1ボディ41aと支持部35との間に介在し、排気路21を開放するようにステム4を付勢し(押し上げ)ている。本実施形態において、付勢部材5がコイル状のスプリングである例を示すが、これに限られない。例えば、付勢部材5は、板バネを利用した構造であってもよい。
【0023】
図2では、付勢部材5がステム4を押し上げることで排気路21が開放されており、ベントプラグ2は開状態にある。ベントプラグ2が開状態にある間は、タイヤの外表面が成形面1に接近する動作に伴って、キャビティ15内の空気が排気路21を介して金型10の外部へ排出される。排気路21は、ハウジング3とステム4との隙間によって形成されている。より具体的に、この排気路21は、テーパ面32とヘッド42との隙間G1から、円筒面33と第1ボディ41aとの隙間を経由し、円筒面33と第2ボディ41bとの隙間を通るようにして形成されている。
【0024】
図3では、タイヤの外表面Tsがステム4を押し下げることで排気路21が実質的に閉鎖されており、ベントプラグ2は実質的な閉状態にある。
【0025】
ここで、ゴム噛みを生じたときのベントプラグの状態について、
図8及び
図9を参照して説明する。未加硫ゴムRが流れる方向に関して、図面の左側が上流側となり、図面の右側が下流側となる。
図8に示すように、上流側から流れてきた未加硫ゴムRは、ステム94を下流側に押しながら排気路91に侵入する。その際、ステム94がハウジング93に対して下流側に偏心すると共に未加硫ゴムRがスプリング95に絡み付いて固着する。
図9に示すように、ステム94が押し下げられた状態でハウジング93に固着すると、排気路91が全閉された状態で維持され、ベントプラグ92の排気機能が失われる。
【0026】
これに対して本実施形態に係るベントプラグ2は、
図2及び
図3に示すように、加硫成形時における排気路21の全閉を妨げるように付勢部材5の付勢力を調整可能な調整部材6を備えている。斯かる構成によれば、調整部材6で付勢部材5の付勢力を調整することによって、加硫成形時においてステム4が未加硫ゴムに押し下げられて排気路21が全閉することを抑制できる。これにより、上記のようなゴム噛みが生じた場合でも、ハウジング3とステム4との間に隙間G1を確保することができ、ベントプラグ2の排気機能が損なわれることを抑制できる。また、調整部材6の代わりに
図10のようなハウジング83の円筒面833に排気機能を確保するための突起87を設けた場合(詳細は特願2021-174520を参照)と比較して、ステム4の交換時に付勢部材5をハウジング3から抜きやすくなる。
図10の突起87を設けると、付勢部材と突起87とが接触して接触部材が抜き難くなるためである。
【0027】
調整部材6は、全てのベントプラグ2に設けられている必要はなく、上記のようなゴム噛みが生じやすいベントプラグ2に設けられていればよい。即ち、調整部材6は、ステム4の側方から未加硫ゴムが流れてくるベントプラグ2に設けられていればよい。調整部材6は、1つのステム4に対して1つ設けられている。
【0028】
付勢部材5による付勢力の調整は、調整部材6の軸方向ADの厚みT1を変更することによって行われる。その調整は、加硫成形時における隙間G1(
図3参照)が0.01mm以上となるように行うことが好ましい。これにより、ベントプラグ2の排気機能を確保することができる。その調整は、加硫成形時における隙間G1が0.03mm以下となるように行うことが好ましい。これにより、未加硫ゴムが隙間G1から排気路21に侵入することを抑制できる。
【0029】
調整部材6は、排気路21に設けられている。調整部材6は、軸方向ADにおける付勢部材5の端部と接するように設けられている。本実施形態において、調整部材6は、付勢部材5の反キャビティ側D2の端部と接するように設けられている。調整部材6は、付勢部材5と支持部35との間に設けられている。調整部材6は、付勢部材5によって支持部35に押し当てられている。これにより、調整部材6は、ベントプラグ2の動作時において軸方向ADに移動しない。即ち、ステム4は、調整部材6に対して相対移動する。
【0030】
調整部材6は、ステム4及びハウジング3と別体であることが好ましい。調整部材6は、ステム4又はハウジング3に着脱可能であることが好ましい。これにより、調整部材6を交換することで付勢部材5の付勢力を調整することができる。その結果、調整部材6がステム4やハウジング3と一体である場合と比較して、付勢部材5の付勢力の調整が容易になる。また、調整部材6がステム4やハウジング3と一体である場合と比較して、ステム4をハウジング3から取り外した際に、ベントプラグ2に調整部材6が設けられているか否かの判別が容易になる。調整部材6は、ステム4をハウジング3に取り付ける前に、ステム4又はハウジング3に取り付けられる。
【0031】
調整部材6の外側面6aには、反キャビティ側D2に向けて小径となるテーパ面62が設けられていることが好ましい。これにより、調整部材6をハウジング3の円筒面33に挿入しやすくなる。
【0032】
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。
図4に示すように、調整部材6は、ステム4の第2ボディ41bを取り囲むように形成されている。調整部材6は、軸方向ADの周りに連続的又は断続的に延びている。
図4においては、調整部材6がC字状に形成された例を示しているが、これに限られない。例えば、調整部材6は、環状に形成されていてもよい。調整部材6は、ステム4又はハウジング3と同じ素材で形成されていてもよく、それらと異なる素材で形成されていてもよい。調整部材6がステム4又はハウジング3に着脱可能である場合、調整部材6は、弾性変形可能な素材で形成されていることが好ましい。
【0033】
調整部材6の外径は、円筒面33の内径と実質的に同じであることが好ましい。これにより、ベントプラグ2の動作時に調整部材6がハウジング3に対してガタツクことを抑制できる。
【0034】
調整部材6とステム4との隙間G2は、ステム4と支持部35との隙間G3よりも小さいことが好ましい。斯かる構成によれば、未加硫ゴムによってステム4が下流側(例えば
図4の右側)に押された際に、ステム4が調整部材6の内側面6bと接触し、ステム4の下流側への偏心量が小さくなる。これにより、未加硫ゴムが侵入した場合でも、ステム4と円筒面33との上流側部分(例えば
図4の左側)の隙間が大きく拡がらず、未加硫ゴムの過度の侵入が抑えられると共に、その隙間の下流側部分では、空気が通過しうる状態が保持されやすくなる。その結果、ゴム噛みを生じた場合でも排気機能を確保しやすくなる。
【0035】
本実施形態において、調整部材6の内側面6bの表面粗さは、調整部材6の外側面6aの表面粗さよりも小さいことが好ましく、円筒面33の表面粗さと実質的に同じであることがより好ましい。これにより、調整部材6とステム4との接触によって、ステム4の動作が悪くなることを抑制できる。調整部材6の外側面6aには、ローレット加工などが施されていてもよい。
【0036】
調整部材6は、通気穴61を備えていることが好ましい。これにより、キャビティ内の空気が通気穴61を通って排出される。その結果、調整部材6を設けることによるベントプラグ2の排気機能の悪化を抑制できる。通気穴61は、複数設けられていることが好ましい。
【0037】
通気穴61は、排気路21(軸方向AD)に沿って延びている。通気穴61は、直線状に形成されていることが好ましい。通気穴61は、調整部材6の外側面6a及び内側面6bのうち少なくとも一方に設けられている。本実施形態において、通気穴61は、調整部材6の外側面6a及び内側面6bに設けられた溝である。通気穴61は、例えば、V字状やU字状に形成されている。通気穴61は、調整部材6を軸方向ADに沿って貫通する貫通孔であってもよい。
【0038】
外側面6aに設けられた通気穴61を第1通気穴61aとし、内側面6bに設けられた通気穴61を第2通気穴61bとする。第1通気穴61a及び第2通気穴61bは、互いに異なる形状である。第1通気穴61aの個数は、第2通気穴61bの個数よりも多い。なお、第1通気穴61a及び第2通気穴61bは、上記に限られず、例えば、それぞれ同じ形状であってもよく、それぞれの個数が同じであってもよい。
【0039】
(第2実施形態)
次に、
図5及び
図6を参照して、本開示のベントプラグ2の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、以下に説明する構成の他は、第1実施形態と同様に構成できるため、共通点を省略して主に相違点について説明する。第1実施形態で既に説明した構成には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図5は、第2実施形態に係るベントプラグ2を示す
図2に相当する断面図である。
【0040】
図5に示すように、調整部材6は、付勢部材5のキャビティ側D1の端部と接するように設けられている。調整部材6は、第1ボディ41aと付勢部材5との間に設けられている。調整部材6は、付勢部材5によって第1ボディ41aに押し当てられている。これにより、調整部材6は、ベントプラグ2の動作時においてステム4と共に軸方向ADに移動する。即ち、調整部材6は、ハウジング3に対して相対移動する。
【0041】
調整部材6は、ステム4と別体であると共にステム4に着脱可能である。調整部材6は、ステム4をハウジング3に取り付ける前に、ステム4に取り付けられる。
【0042】
図6は、
図5のVI-VI線断面図である。
図6に示すように、調整部材6の内径は、第2ボディ41bの外径と実質的に同じであることが好ましい。これにより、ベントプラグ2の動作時に調整部材6がステム4に対してガタツクことを抑制できる。
【0043】
調整部材6と円筒面33との隙間G4は、ステム4と支持部35との隙間G3(
図4参照)よりも小さいことが好ましい。斯かる構成によれば、未加硫ゴムによってステム4が下流側(例えば
図6の右側)に押された際に、調整部材6の外側面6aが円筒面33と接触し、ステム4の下流側への偏心量が小さくなる。これにより、未加硫ゴムが侵入した場合でも、ステム4と円筒面33との上流側部分(例えば
図6の左側)の隙間が大きく拡がらず、未加硫ゴムの過度の侵入が抑えられると共に、その隙間の下流側部分では、空気が通過しうる状態が保持されやすくなる。その結果、ゴム噛みを生じた場合でも排気機能を確保しやすくなる。
【0044】
本実施形態において、調整部材6の外側面6aの表面粗さは、調整部材6の内側面6bの表面粗さよりも小さいことが好ましく、第1ボディ41aの表面粗さと実質的に同じであることがより好ましい。これにより、調整部材6と円筒面33との接触によって、ステム4の動作が悪くなることを抑制できる。調整部材6の内側面6bには、ローレット加工などが施されていてもよい。
【0045】
[1]
以上、本開示のベントプラグ2は、タイヤ加硫金型10の成形面1で開口する排気孔16に装着されるベントプラグ2であって、排気路21を内部に有する筒状のハウジング3と、ハウジング3に挿入されて排気路21を実質的に開閉する弁体となるステム4と、ステム4をキャビティ側D1に向けて付勢する付勢部材5と、加硫成形時における排気路21の全閉を妨げるように付勢部材5の付勢力を調整可能な調整部材6と、を備える。
【0046】
斯かる構成によれば、調整部材6で付勢部材5の付勢力を調整することによって、加硫成形時においてステム4が未加硫ゴムに押し下げられて排気路21が全閉することを抑制できる。これにより、ゴム噛みが生じた場合でも、ステム4とハウジング3との間に隙間G1を確保することができ、ベントプラグ2の排気機能が損なわれることを抑制できる。
【0047】
[2]
上記[1]のベントプラグ2において、調整部材6は、排気路21に設けられると共にステム4又はハウジング3に着脱可能である、という構成が好ましい。
【0048】
斯かる構成によれば、調整部材6を交換することで付勢部材5の付勢力を調整することができる。これにより、調整部材6がステム4やハウジング3と一体である場合と比較して、付勢部材5の付勢力の調整が容易になる。
【0049】
[3]
上記[1]又は[2]のベントプラグ2において、調整部材6は、排気路21に沿って延びる通気穴61を備える、という構成が好ましい。
【0050】
斯かる構成によれば、キャビティ15内の空気が通気穴61を通って排出される。これにより、調整部材6を設けることによるベントプラグ2の排気機能の悪化を抑制できる。
【0051】
[4]
本開示のタイヤ加硫金型10は、キャビティ15にセットされたタイヤTの外表面に接する成形面1と、成形面1で開口する排気孔16に装着された上記[1]~[3]の何れか1つのベントプラグ2と、を備える。
【0052】
斯かる構成によれば、上記[1]同様、ベントプラグ2の排気機能が損なわれることを抑制できる。
【0053】
なお、ベントプラグ2及びタイヤ加硫金型10は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものではない。また、ベントプラグ2及びタイヤ加硫金型10は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0054】
(A)上記実施形態において、調整部材6は、ステム4やハウジング3と別体であるが、これに限られない。調整部材6は、例えば、ステム4又はハウジング3と一体であってもよい。調整部材6がハウジング3と一体である場合、調整部材6は、ハウジング3の支持部35と形状(例えば内径や断面形状など)が異なる。調整部材6がステム4と一体である場合、調整部材6は、第1ボディ41aと形状(例えば内径や断面形状など)が異なる。即ち、調整部材6とステム4又はハウジング3との判別が可能となっている。
【0055】
(B)
図7に示すように、第2実施形態におけるステム4は、調整部材6を嵌め込み可能な嵌込溝44を備えていてもよい。嵌込溝44は、ステム4の第2ボディ41bの外周面に設けられている。嵌込溝44の底面の径は、調整部材6の内径と実質的に同じであることが好ましい。調整部材6は、付勢部材5によって嵌込溝44の軸方向ADにおける端部に押し当てられる。
図7においては、嵌込溝44が断面C字状の例を示しているが、これに限られない。この例における嵌込溝44は、調整部材6が第2ボディ41b周りを回転することを抑制する回り止めとしての機能も有している。
【0056】
(C)ステム4又はハウジング3に着脱可能な調整部材6は、1つのステム4に対して複数設けられていてもよい。この場合、調整部材6は、平板状に形成されていることが好ましい。これにより、調整部材6の枚数を変更することによって付勢部材5の付勢力を調整することができる。調整部材6の1枚あたりの厚みは、調整部材6の素材や厚みT1の調整幅などによって適宜設定される。
【符号の説明】
【0057】
1…成形面、2…ベントプラグ、21…排気路、3…ハウジング、31…頂面、32…テーパ面、33…円筒面、34…貫通孔、35…支持部、4…ステム、41…ボディ、41a…第1ボディ、41b…第2ボディ、42…ヘッド、43…ストッパー、44…嵌込溝、5…付勢部材、6…調整部材、6a…外側面、6b…内側面、61…通気穴、61a…第1通気穴、61b…第2通気穴、62…テーパ面、10…タイヤ加硫金型、11…トレッド型、12…サイド型、13…サイド型、14…ビードリング、15…キャビティ、16…排気孔、T…タイヤ