(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082854
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
F01N 13/00 20100101AFI20240613BHJP
【FI】
F01N13/00 B
F01N13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197014
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 琢也
(72)【発明者】
【氏名】戸市 進之介
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004AA05
3G004AA06
3G004DA23
3G004DA25
3G004EA03
(57)【要約】
【課題】排気ガスの漏れを抑制しつつ排水できる排気装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、排気ガスが流れるように構成された管体と、管体に取り付けられた筒状のボスと、ボスに挿入された開閉具と、を備える排気装置である。ボスは、内周面に設けられたネジ溝を有する。開閉具は、ネジ溝に螺合すると共に、軸回転によってボスの軸方向に移動するように構成されたネジ部と、ネジ部に連結されると共に、ボスを塞ぐように構成された蓋部と、を有する。ネジ部は、蓋部がボスから離れた状態で管体の内部と管体の外部とを連通するように構成された排水路を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流れるように構成された管体と、
前記管体に取り付けられた筒状のボスと、
前記ボスに挿入された開閉具と、
を備え、
前記ボスは、内周面に設けられたネジ溝を有し、
前記開閉具は、
前記ネジ溝に螺合すると共に、軸回転によって前記ボスの軸方向に移動するように構成されたネジ部と、
前記ネジ部に連結されると共に、前記ボスを塞ぐように構成された蓋部と、
を有し、
前記ネジ部は、前記蓋部が前記ボスから離れた状態で前記管体の内部と前記管体の外部とを連通するように構成された排水路を有する、排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気装置であって、
前記排水路は、前記ネジ部のうち径方向の一部が切り欠かれた欠肉部で構成される、排気装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気装置であって、
前記蓋部は、
前記ボスに接触するガスケットと、
前記ボスと共に前記ガスケットを挟むように構成された蓋本体と、
を有する、排気装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の排気装置であって、
前記管体の内部状態を検出するように構成された検出部と、
前記検出部が検出した前記管体の内部状態に基づいて、前記ネジ部を軸回転させるように構成された制御部と、
をさらに備える、排気装置。
【請求項5】
請求項4に記載の排気装置であって、
前記制御部は、予め定めた範囲内で前記ネジ部を軸回転させる、排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスが流れる排気管の内部には、排気ガスに含まれる水分が凝縮水として溜まる。この凝縮水を排出するために、排気ガスの温度が低い時に排水孔を開け、温度が高い時に排水孔を閉じる開閉弁を設けた構成が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の開閉弁を用いた構造では、弁体のシール性が不十分となるおそれがあり、排気ガスが排水孔から漏れる可能性がある。
【0005】
本開示の一局面は、排気ガスの漏れを抑制しつつ排水できる排気装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、排気ガスが流れるように構成された管体と、管体に取り付けられた筒状のボスと、ボスに挿入された開閉具と、を備える排気装置である。ボスは、内周面に設けられたネジ溝を有する。開閉具は、ネジ溝に螺合すると共に、軸回転によってボスの軸方向に移動するように構成されたネジ部と、ネジ部に連結されると共に、ボスを塞ぐように構成された蓋部と、を有する。ネジ部は、蓋部がボスから離れた状態で管体の内部と管体の外部とを連通するように構成された排水路を有する。
【0007】
このような構成によれば、ネジ部の回転量(つまり締め量)の調整によって、排水路が機能する状態と、蓋部によってボスが密閉される状態とを切り替えることができる。そのため、排気ガスの漏れを抑制しつつ排水できる。
【0008】
本開示の一態様では、排水路は、ネジ部のうち径方向の一部が切り欠かれた欠肉部で構成されてもよい。このような構成によれば、比較的簡潔な構成で開閉具に排水路を設けることができる。
【0009】
本開示の一態様では、蓋部は、ボスに接触するガスケットと、ボスと共にガスケットを挟むように構成された蓋本体と、を有してもよい。このような構成によれば、蓋部によるボスの密閉性を高めることができる。
【0010】
本開示の一態様は、管体の内部状態を検出するように構成された検出部と、検出部が検出した管体の内部状態に基づいて、ネジ部を軸回転させるように構成された制御部と、をさらに備えてもよい。このような構成によれば、凝縮水の量、排気ガスの温度、圧力又は流速等の状態に応じて自動で排水を行うことができる。
【0011】
本開示の一態様では、制御部は、予め定めた範囲内でネジ部を軸回転させてもよい。このような構成によれば、開閉具のボスからの脱落を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、実施形態における排気装置の模式的な側面図であり、
図1Bは、
図1Aの排気装置の模式的な正面図である。
【
図2】
図2Aは、
図1Aの排気装置における開閉具が排出位置にある状態での模式的な側面図であり、
図2Bは、
図2Aの排気装置の模式的な正面図である。
【
図3】
図3Aは、
図1Aにおける管体、ボス及び開閉具の模式的な断面図であり、
図3Bは、
図2Aにおける管体、ボス及び開閉具の模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、
図3Bとは異なる実施形態における開閉具の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A及び
図1Bに示す排気装置1は、内燃機関の排気ガス流路を構成する。排気装置1は、管体2と、ボス3と、開閉具4と、検出部5と、制御部6とを備える。
【0014】
排気装置1が設けられる内燃機関は、特に限定されない。内燃機関としては、自動車、鉄道、船舶、建機等の輸送機器、発電施設などで駆動用又は発電用として用いられるものが挙げられる。
【0015】
<管体>
管体2は、軸方向に沿って排気ガスが内部を流れるように構成された筒状の部材である。管体2の下部には、排気ガスに含まれる水分が凝縮した水が溜まる。
【0016】
<ボス>
ボス3は、管体2に取り付けられた筒状の部材である。ボス3は、管体2の外周面から径方向外側に突出している。ボス3は、管体2のうち水が溜まりやすい位置(例えば鉛直方向下側の部位)に取り付けられている。
【0017】
ボス3の内部空間は、管体2に設けられた開口と連通している。つまり、ボス3の内部空間は、管体2の内部と管体2の外部とを連通している。ボス3は、内周面に設けられたネジ溝を有する。
【0018】
<開閉具>
開閉具4は、ボス3に挿入されることで、ボス3の内部空間の開閉を行う部材である。開閉具4は、
図1A及び
図1Bに示す閉塞位置と、
図2A及び
図2Bに示す排水位置との間で変位する。
【0019】
閉塞位置では、開閉具4は、ボス3の軸方向の端部に接触することで、ボス3の内部空間を密閉する。排水位置では、開閉具4は、ボス3の軸方向の端部から離れることで、ボス3の内部空間を管体2の外部と連通させる。
【0020】
図3A及び
図3Bに示すように、開閉具4は、ネジ部41と、蓋部42とを有する。ネジ部41は、ボス3のネジ溝に螺合している。ネジ部41は、軸回転によってボス3の軸方向に移動するように構成されている。
【0021】
ネジ部41は、排水路411を有する。排水路411は、管体2の内部に存在する水を管体2の外部に排出するための流路である。排水路411の上流側端部(つまり管体2の内側の端部)は、ネジ部41の先端に到達している。
【0022】
排水路411の下流側端部(つまり管体2の外側の端部)は、蓋部42よりも管体2の近くに位置する。つまり、排水路411は、ネジ部41の先端部からネジ部41の軸方向に延伸しているが、蓋部42までは到達していない。
【0023】
具体的には、排水路411は、ネジ部41のうち径方向の一部が切り欠かれた欠肉部412で構成されている。欠肉部412は、ネジ部41の中心軸Pと平行な第1切断面S1と、中心軸Pと直交する第2切断面S2とで画定されている。第1切断面S1は、ネジ部41の中心軸Pよりも径方向外側に位置する。第2切断面S2は、第1切断面S1と直交すると共に、管体2と対向している。
【0024】
また、ネジ部41のうち、欠肉部412以外の領域の外周面には、ネジ山が設けられている。したがって、ネジ部41のうち、軸方向において欠肉部412よりも蓋部42に近い領域には、ネジ山を有する螺合部413が設けられている。螺合部413は、排水路411とネジ部41の軸方向において重なっている。
【0025】
図4Aに示すように、ネジ部41は、1つの排水路411(つまり欠肉部412)を有してもよい。また、
図4Bに示すように、ネジ部41は、複数の排水路411(つまり欠肉部412)を有してもよい。
【0026】
図3Aのようにネジ部41が締められた状態(つまり、開閉具4が閉塞位置にある状態)では、螺合部413がボス3に螺合すると共に、排水路411の下流側端部はボス3の内部に位置する。そのため、排水路411は、ボス3の外部には連通しない。
【0027】
一方、
図3Bのようにネジ部41が緩められた状態(つまり、開閉具4が排水位置にある状態)では、螺合部413がボス3の外部に位置すると共に、排水路411の下流側端部がボス3の外部に露出する。そのため、排水路411がボス3の外部に連通する。
【0028】
つまり、排水路411は、蓋部42がボス3から離れた状態で管体2の内部と管体2の外部とを連通するように構成されている。管体2内の水Wは、管体2の開口21及び排水路411を介して、排気装置1の外部に排出される。
【0029】
ネジ部41のボス3の軸方向における位置によって、排水路411の露出面積は変化する。そのため、ネジ部41の回転量(つまり締め量)を調整することで、排水量を調整することができる。
【0030】
蓋部42は、ネジ部41の軸回転に伴って、ボス3の軸方向に移動する。蓋部42は、開閉具4が閉塞位置にある状態でボス3を塞ぎ、開閉具4が排水位置にある状態でボス3から離れるように構成されている。蓋部42は、蓋本体421と、ガスケット422とを有する。
【0031】
蓋本体421は、ネジ部41の先端部とは反対側の根元部に連結されている。蓋本体421の外径は、ボス3の外径よりも大きい。蓋本体421は、ボス3と共にガスケット422を挟むように構成されている。
【0032】
ガスケット422は、蓋本体421のガスケット422と対向する面に固定されている。ガスケット422は、開閉具4が閉塞位置にある状態でボス3の軸方向の端部に接触することで、ボス3と蓋本体421との間をシールする弾性体である。
【0033】
ガスケット422は、ボス3と蓋本体421とによってボス3の軸方向に圧縮される。ガスケット422は、ネジ部41の周方向全体を囲うように配置されている。ガスケット422は、例えばOリングで構成される。
【0034】
<検出部>
図1Aに示す検出部5は、管体2の内部状態を検出するように構成された公知のセンサである。
【0035】
管体2の内部状態としては、例えば、管体2の内部に溜まった水の量(つまり水位)、管体2を流れる排気ガスの温度、圧力又は流速等が挙げられる。検出部5は、検出した内部状態を制御部6に出力する。
【0036】
<制御部>
制御部6は、検出部5が検出した管体2の内部状態に基づいて、ネジ部41を軸回転させるように構成されている。
【0037】
制御部6は、アクチュエータ61と、ロッド62とを有する。アクチュエータ61は、例えば、電気、油圧、空気圧等の動力によってロッド62を軸回転させる。ロッド62は、開閉具4に連結され、アクチュエータ61の動力によってネジ部41を軸回転させる。
【0038】
制御部6は、例えば、水の量が一定値以上となった場合、又は、排気ガスの温度、圧力及び流速のいずれかが一定値未満となった場合に、ネジ部41を緩める方向(つまりボス3から抜ける方向)に軸回転させ、開閉具4を排水位置に移動させる。
【0039】
また、制御部6は、例えば、水の量が一定値未満となった場合、又は、排気ガスの温度、圧力及び流速のいずれかが一定値以上となった場合に、ネジ部41を締める方向(つまりボス3に進入する方向)に軸回転させる。
【0040】
制御部6は、ネジ部41が完全にボス3から離脱しないように、予め定めた範囲内でネジ部41を軸回転させる。つまり、制御部6によるネジ部41の緩め量には、上限が設けられている。
【0041】
さらに、制御部6は、内部状態に応じて、ネジ部41の緩め量を調整してもよい。例えば、制御部6は、水の量が大きくなるほど緩め量を大きくすることで、排水路411の露出面積を大きくする制御を行ってもよい。
【0042】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ネジ部41の回転量(つまり締め量)の調整によって、排水路411が機能する状態と、蓋部42によってボス3が密閉される状態とを切り替えることができる。そのため、排気ガスの漏れを抑制しつつ排水できる。
【0043】
(1b)排水路411がネジ部41の欠肉部412で構成されることで、比較的簡潔な構成で開閉具4に排水路411を設けることができる。
(1c)蓋部42がガスケット422を有することで、蓋部42によるボス3の密閉性を高めることができる。
【0044】
(1d)管体2の内部状態に基づいてネジ部41を軸回転させることで、凝縮水の量、排気ガスの温度、圧力又は流速等の状態に応じて自動で排水を行うことができる。
(1e)制御部6が予め定めた範囲内でネジ部41を軸回転させることで、開閉具4のボス3からの脱落を抑制できる。
【0045】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0046】
(2a)上記実施形態の排気装置において、排水路は、必ずしもネジ部の欠肉部で構成されなくてもよい。例えば、
図5に示すように、排水路411は、ネジ部41の内部に設けられた孔で構成されてもよい。
【0047】
図5の例では、排水路411は、ネジ部41の先端部に設けられた入口411Aから、ネジ部41の外周面に設けられた出口411Bまで延伸している。開閉具4が排水位置にある状態で、出口411Bはボス3の外部に位置するように構成されている。これにより、入口411Aから排水路411内に流入した水が出口411Bから排気装置の外部に排出される。
【0048】
(2b)上記実施形態の排気装置において、制御部の構成は一例である。制御部は、ロッド以外の手段によって開閉具を軸回転させてもよい。
【0049】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0050】
1…排気装置、2…管体、3…ボス、4…開閉具、5…検出部、6…制御部、
21…開口、41…ネジ部、42…蓋部、61…アクチュエータ、62…ロッド、
411…排水路、411A…入口、411B…出口、412…欠肉部、
413…螺合部、421…蓋本体、422…ガスケット。