(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082870
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両用ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/08 20140101AFI20240613BHJP
E05B 85/26 20140101ALI20240613BHJP
【FI】
E05B79/08
E05B85/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197042
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 智治
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH02
2E250JJ43
2E250LL01
2E250QQ03
2E250QQ04
2E250QQ08
(57)【要約】
【課題】ラチェットを動作させるために必要なドアハンドルの操作力の変化を抑制しつつ、ドアハンドルの位置が異なる複数種類のドアに取り付けることができる車両用ドアラッチ装置を提供する。
【解決手段】ドアラッチ装置10は、ラッチ21と、ラッチ21に係合可能なラチェット23と、ラチェット23のラッチ21との係合を解除させるレバーリンク31と、第1回動軸51を中心に回動可能であり、レバーリンク31を動作させるサブレバー32と、第2回動軸52を中心に回動可能であり、サブレバー32を動作させるハンドルレバー33と、を備える。ハンドルレバー33には、インサイドハンドル93の操作力を伝達する操作力伝達ロッド73が接続可能な操作力伝達部33cが設けられており、第1回動軸51と第2回動軸52とは、互いに平行、且つ、車両上下方向及び車両前後方向において異なる位置に配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたストライカに係合可能なラッチと、
前記ラッチに係合可能なラチェットと、
前記ラチェットの前記ラッチとの係合を解除させるレバーリンクと、を備える、車両用ドアラッチ装置であって、
前記車両用ドアラッチ装置は、
第1回動軸を中心に回動可能であり、前記レバーリンクを動作させるサブレバーと、
第2回動軸を中心に回動可能であり、前記サブレバーを動作させるハンドルレバーと、をさらに備え、
前記ハンドルレバーには、ドアハンドルの操作力を伝達する操作力伝達部材が接続可能な接続部が設けられており、
前記第1回動軸と前記第2回動軸とは、互いに平行、且つ、車両上下方向及び車両前後方向において異なる位置に配置されている、車両用ドアラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアラッチ装置であって、
前記第1回動軸と前記第2回動軸の軸方向から見て、
前記接続部は、少なくとも一部が、前記ハンドルレバーが待機ポジションにあるときに、前記サブレバーの回動領域と前記ハンドルレバーの回動領域とが重なる領域に位置するように設けられている、車両用ドアラッチ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用ドアラッチ装置であって、
前記第2回動軸は、前記第1回動軸よりも下方且つ車両前方に位置している、車両用ドアラッチ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用ドアラッチ装置であって、
前記サブレバーが待機ポジションにあるときの前記サブレバーの下端部に、錘部が設けられている、車両用ドアラッチ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ドアラッチ装置であって、
前記ラッチの動作をロックしたロック状態と、前記ラッチの動作をロックしていないアンロック状態と、に切替可能なレバーロックをさらに備え、
前記ハンドルレバーは、
前記レバーロックに当接して前記レバーロックを動作させるレバーロック動作部を有する、車両用ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを閉状態に保持可能な車両用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のドアを閉状態に保持可能な車両用ドアラッチ装置が知られている。一般に、車両のドアには、ドアハンドルと、ドアハンドルの操作力を伝達する操作力伝達部材が設けられている。また、車両用ドアラッチ装置は、一般に、車体に設けられたストライカに係合可能なラッチと、ラッチに係合可能なラチェットと、ラチェットのラッチとの係合を解除させるレバーリンクと、レバーリンクを動作させるための各種レバーと、を備える。
【0003】
車両用ドアラッチ装置においては、車両用ドアラッチ装置が取り付けられるドアによって、ドアハンドルと車両用ドアラッチ装置との位置関係が変化する。コスト削減の観点からすると、車両用ドアラッチ装置は、ドアハンドルの位置が異なる複数種類のドアに取り付けることができる汎用性の高いものであることが望ましい。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、車体に設けられたストライカを保持可能なフォークと、フォークを動作させるポールと、ドアハンドルの操作力を伝達する伝達ケーブルが連結し、ドアハンドルの操作力でポールを動作させるオープンレバーと、を備える車両用ドアラッチ装置が記載されている。特許文献1の車両用ドアラッチ装置は、オープンレバーに第1連結部及び第2連結部の2つの連結部が形成されている。そして、ドアハンドルと車両用ドアラッチ装置との位置関係に応じて、第1連結部及び第2連結部のいずれか一方に伝達ケーブルが連結される。これにより、特許文献1に記載の車両用ドアラッチ装置は、ドアハンドルの位置が異なる複数種類のドアに取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の車両用ドアラッチ装置は、第1連結部に伝達ケーブルが連結された場合と、第2連結部に伝達ケーブルが連結された場合とで、オープンレバーの回動方向と伝達ケーブルとのなす角が大きく異なることとなる。そのため、特許文献1の車両用ドアラッチ装置は、第1連結部に伝達ケーブルが連結された場合と、第2連結部に伝達ケーブルが連結された場合とで、フォーク及びポールを動作させるために必要なドアハンドルの操作力が大きく異なることとなってしまう、という課題があった。
【0007】
本発明は、ラチェットを動作させるために必要なドアハンドルの操作力の変化を抑制しつつ、ドアハンドルの位置が異なる複数種類のドアに取り付けることができる車両用ドアラッチ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車体に設けられたストライカに係合可能なラッチと、
前記ラッチに係合可能なラチェットと、
前記ラチェットの前記ラッチとの係合を解除させるレバーリンクと、を備える、車両用ドアラッチ装置であって、
前記車両用ドアラッチ装置は、
第1回動軸を中心に回動可能であり、前記レバーリンクを動作させるサブレバーと、
第2回動軸を中心に回動可能であり、前記サブレバーを動作させるハンドルレバーと、をさらに備え、
前記ハンドルレバーには、前記ドアハンドルの操作力を伝達する前記操作力伝達部材が接続可能な接続部が設けられており、
前記第1回動軸と前記第2回動軸とは、互いに平行、且つ、車両上下方向及び車両前後方向において異なる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドアラッチ装置が取り付けられるドアのドアハンドルの位置に応じて、サブレバー及びハンドルレバーを交換するのみで、ドアハンドルの操作力を効率的に伝達して、ラチェットを動作させることができる。これにより、ドアラッチ装置は、サブレバー及びハンドルレバーを交換するのみで、ラチェットを動作させるために必要なドアハンドルの操作力の変化を抑制しつつ、ドアハンドルの位置が異なる複数種類のドアに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の車両用ドアラッチ装置を備える車両の左前部分の左側面図である。
【
図2】
図1の車両用ドアラッチ装置を右後方から見た要部斜視図である。
【
図3】カバープレートを省略して
図2の車両用ドアラッチ装置を右後方から見た要部斜視図である。
【
図4】
図3の車両用ドアラッチ装置を右前方から見た要部斜視図である。
【
図5】レバーロックがアンロック状態、サブレバー及びハンドルレバーが待機ポジションにあるときの
図1の車両用ドアラッチ装置を右側から見た要部側面図である。
【
図6】レバーロックがロック状態、サブレバー及びハンドルレバーが待機ポジションにあるときの
図1の車両用ドアラッチ装置を右側から見た要部側面図である。
【
図7】レバーロックがロック状態、サブレバー及びハンドルレバーが待機ポジションにある状態から、サブレバー及びハンドルレバーが動作したときの
図1の車両用ドアラッチ装置を右側から見た要部側面図である。
【
図8】サブレバー及びハンドルレバーに代えて取替レバーが取り付けられ、レバーロックがアンロック状態、取替レバーが待機ポジションにあるときの
図1の車両用ドアラッチ装置を右側から見た要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車両用ドアラッチ装置の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両用ドアラッチ装置が搭載される車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
図1に示すように、ドアラッチ装置10は、車両Vの左フロントドア80に搭載されている。左フロントドア80は、アウタパネル81と不図示のインナパネルとを備える。アウタパネル81の後上部の外側面には、ドアラッチ装置10を車外から開操作するアウトサイドハンドル91と、ドアラッチ装置10を車外からアンロック操作及びロック操作するキーシリンダ92と、が設けられている。インナパネルの前部側の内側面には、ドアラッチ装置10を車内から開操作するインサイドハンドル93と、さらに、左フロントドア80には、アウトサイドハンドル91の操作力をドアラッチ装置10に伝達する操作力伝達ロッド71と、キーシリンダ92の操作力をドアラッチ装置10に伝達する操作力伝達部材72と、インサイドハンドル93の操作力をドアラッチ装置10に伝達するもう1つの操作力伝達部材である操作力伝達ロッド73と、が設けられている。
【0013】
以下、左側を車幅方向外側、右側を車幅方向内側ということもある。
【0014】
図2及び
図3に示すように、ドアラッチ装置10は、車体に設けられたストライカに係合することによって左フロントドア80を閉状態に保持可能なラッチ機構部20と、ラッチ機構部20を操作する操作機構部30と、を備える。ドアラッチ装置10は、ラッチ機構部20と操作機構部30とが一体化した装置となっている。
【0015】
さらに、ドアラッチ装置10は、樹脂製のメインボディ41と、メインボディ41の後面の少なくとも一部を覆う金属製のカバープレート42と、プレート部材43と、を備える。メインボディ41は、左右方向及び上下方向に延在する後方プレート部411と、後方プレート部411の車幅方向内側端部から前方に延在して、前後方向及び上下方向に延在するサイドプレート部412と、を有する。したがって、メインボディ41は上下方向からみて、略L字形状となっている。
【0016】
カバープレート42は、メインボディ41の後方プレート部411と対向して、メインボディ41の後方プレート部411の後方の少なくとも一部を覆っている。
【0017】
カバープレート42には、車幅方向外側から車体に設けられたストライカが進入可能なストライカ進入溝421が形成されている。ストライカ進入溝421は、カバープレート42の上下方向の略中央部に設けられており、カバープレート42の車幅方向外側の端部から車幅方向内側に向かって凹状に抉れた形状となっている。
【0018】
プレート部材43は、メインボディ41の後方プレート部411とカバープレート42との間を左右方向及び上下方向に延在する。
【0019】
ラッチ機構部20は、車体に設けられた不図示のストライカに係合可能なラッチ21と、ラッチ21を回動自在に軸支するラッチ軸22と、ラッチ21に係合可能なラチェット23と、を備える。
【0020】
ラッチ軸22は、前後方向に延在し、前端がプレート部材43に支持固定され、後端がドアラッチ装置10のカバープレート42に支持固定されている。
【0021】
ラッチ21は、ラッチ軸22が挿通する挿通孔212が形成されたラッチボディ部211を備える。ラッチ21は、挿通孔212にラッチ軸22が挿通して、ラッチ軸22に回動自在に支持されている。したがって、ラッチ21は、前後方向に延びるラッチ軸22を回転軸として回動する。
【0022】
ラッチ21は、不図示のコイルばねによって前方から見て時計回り方向に付勢されている。
【0023】
ラッチボディ部211には、車体に設けられたストライカが挿入されるストライカ係合溝213が形成されている。ストライカ係合溝213は、前後方向から見て、ラッチボディ部211の外周縁から挿通孔212に向かって窪んだ凹形状を有する。ストライカ係合溝213は、前後方向から見て、カバープレート42に形成されたストライカ進入溝421と少なくとも一部が重なるように配置されている。
【0024】
また、ラッチボディ部211の外周縁には、ラチェット23が係合可能なラチェット係合部214が形成されている。本実施形態では、ラチェット係合部214は、後方から見て、ストライカ係合溝213の反時計回り側に形成されている。
【0025】
ラチェット23は、前後方向に延在する回転軸部231と、回転軸部231から左方向に向かって延在し、ラッチボディ部211に形成されたラチェット係合部214に当接する当接部232と、回転軸部231から右方向に延在し、後述する操作機構部30のレバーリンク31からの入力を受け付ける入力部233と、を備える。本実施形態では、入力部233は、当接部232よりも前方で回転軸部231から右方向に延在するように形成されている。
【0026】
ラチェット23は、回転軸部231がラッチ軸22の右下方になるように配置されている。
【0027】
回転軸部231は、前端部がプレート部材43に回転自在に支持されており、後端部がカバープレート42に回転自在に支持されている。
【0028】
ラチェット23は、前後方向に延在する回転軸部231の軸心を中心に、前後方向から見て、時計回り及び反時計回りに回動自在となっている。
【0029】
ラチェット23は、不図示のコイルばねによって前方から見て反時計回り方向に付勢されている。
【0030】
左フロントドア80が閉操作されて全閉位置に近づくと、車体に設けられたストライカがカバープレート42のストライカ進入溝421に進入するとともに、ラッチ21のストライカ係合溝213に進入する。左フロントドア80がさらに全閉位置に近づくと、車体に設けられたストライカがラッチ21のストライカ係合溝213の底部に近づきながらストライカ係合溝213の内壁面を車幅方向外側に向かって押圧して、コイルばね24の付勢力に抗してラッチ21を前方から見て反時計回りに回動させる。
【0031】
左フロントドア80が全閉位置になると、前方から見て反時計回り方向に付勢されているラチェット23の当接部232が、前方から見て反時計回りに回動するラッチ21のラチェット係合部214に当接する。そして、前方から見て反時計回り方向に付勢されているラチェット23が、前方から見て反時計回り方向に付勢されているラッチ21に係合する。これにより、ラッチ21の前方から見て反時計回り方向への回動が規制され、左フロントドア80が閉状態に保持される。
【0032】
図2から
図7に示すように、操作機構部30は、メインボディ41、カバープレート42、プレート部材43等に組み付けられる各種操作レバー、連係レバー及びモータ等をさらに備える。なお、
図2から
図7では、本発明に関連する部材のみを示しており、その他の部材は省略している。
【0033】
操作機構部30は、ラッチ機構部20のラチェット23を動作させて、ラチェット23のラッチ21との係合を解除させるレバーリンク31と、レバーリンク31を動作させるサブレバー32と、サブレバー32を動作させるハンドルレバー33と、ラッチ21の動作をロックしたロック状態と、ラッチ21の動作をロックしていないアンロック状態と、に切替可能なレバーロック34と、を備える。
【0034】
本実施形態では、レバーリンク31、サブレバー32、ハンドルレバー33、及び、レバーロック34は、いずれも、メインボディ41のサイドプレート部412の車幅方向内側に設けられている。
【0035】
レバーリンク31は、上下方向にスライド可能であり、ラチェット23に下方から当接可能なラチェット駆動部31aを備える。レバーリンク31は、ラチェット23の入力部233の下方に設けられている。レバーリンク31は、上方にスライドすると、ラチェット駆動部31aがラチェット23の入力部233に下方から上方に向かって当接する。また、レバーリンク31の上側領域には、車幅方向外側に向かって突出しており、レバーロック34が係合するレバーロック係合部31bが形成されている。
【0036】
サブレバー32は、レバーリンク31の下方に配置されている。レバーリンク31は、樹脂で形成されている。レバーリンク31は、第1回動軸51を中心に回動可能である。
【0037】
ハンドルレバー33は、サブレバー32の車幅方向内側に配置されている。ハンドルレバー33は、第2回動軸52を中心に回動可能である。
【0038】
第1回動軸51及び第2回動軸52は、互いに平行であり、いずれも車幅方向に延在している。また、第1回動軸51及び第2回動軸52は、車両上下方向及び車両前後方向において異なる位置に配置されている。
【0039】
第1回動軸51は、レバーリンク31の下方且つ車両後方に位置している。
【0040】
サブレバー32は、上端部が第1回動軸51に回動自在に軸支され、待機ポジションにあるときに第1回動軸51から車両前方斜め下方向に向かって延在するレバー部321と、レバー部321から車両前方斜め上方向に向かって突出する突出部322と、を備える。
【0041】
サブレバー32の突出部322の先端部には、レバーリンク31の下端部と当接可能なレバーリンク動作部32aが形成されている。サブレバー32の車両後方下側を向く面には、ハンドルレバー33の後述するサブレバー動作部33aが当接するハンドルレバー当接部32bが形成されている。
【0042】
サブレバー32は、車幅方向内側から見て、第1回動軸51を中心に待機ポジションから反時計回りに回動すると、レバーリンク動作部32aがレバーリンク31の下端部に下方から当接して、レバーリンク31を上方に押し上げる。
【0043】
レバーリンク31が上方に押し上げられると、ラチェット駆動部31aがラチェット23の入力部233に当接し、ラチェット23を、前方から見て回転軸部231を中心に時計回りに回動させる。
【0044】
ラチェット23が前方から見て回転軸部231を中心に時計回りに回動すると、ラチェット23の当接部232が、ラッチ21のラチェット係合部214から離脱する。すると、ラッチ21の前方から見て反時計回り方向への回動の規制が解除され、前方から見て反時計回り方向に付勢されているラッチ21は、前方から見て反時計回りに回動し、車体に設けられたストライカが、ラッチ21のストライカ係合溝213、及び、カバープレート42のストライカ進入溝421から離脱可能な状態となる。これにより、左フロントドア80の開操作が可能となる。
【0045】
サブレバー32が待機ポジションにあるときのサブレバー32の下端部には、錘部323が設けられている。本実施形態では、錘部323は、サブレバー32を形成する金属が折り畳まれるように屈曲することで形成されている。
【0046】
これにより、サブレバー32は、動作後に自重で待機ポジションに復帰するので、付勢部材を設けることなく、通常時にサブレバー32が待機ポジションに維持される。これにより、付勢部材が不要となり、サブレバー32は、長期にわたって安定して動作することが可能となる。
【0047】
第2回動軸52は、第1回動軸51よりも下方且つ車両前方に位置している。
【0048】
ハンドルレバー33は、下端部が第2回動軸52に回動自在に軸支され、待機ポジションにあるときに第2回動軸52から車両後方斜め上方向に向かって延在するレバー部331と、レバー部331の後端部から車幅方向外側に向かって突出する第1突出部332と、レバー部331から車両前方斜め上方向に向かって突出する第2突出部333と、を備える。
【0049】
ハンドルレバー33の第1突出部332の前方上側を向く面には、サブレバー32のハンドルレバー当接部32bに当接してサブレバー32を動作させるサブレバー動作部33aが形成されている。ハンドルレバー33の第2突出部333の前方上側を向く面には、レバーロック34の後述するハンドルレバー当接部34bに当接してレバーロック34を動作させる第1レバーロック動作部33b1が形成されている。また、ハンドルレバー33のレバー部331の上端部には、レバーロック34の後述するハンドルレバー当接部34bに当接してレバーロック34を動作させる第2レバーロック動作部33b2が形成されている。
【0050】
また、ハンドルレバー33のレバー部331の上端部には、インサイドハンドル93の操作力をドアラッチ装置10に伝達する操作力伝達ロッド73が接続する操作力伝達部33cが設けられている。
【0051】
ドアラッチ装置10がインサイドハンドル93と略水平に配置され、操作力伝達ロッド73が車両前方から略水平方向にドアラッチ装置10に接続される場合、ハンドルレバー33の操作力伝達部33cに操作力伝達ロッド73を接続する。
【0052】
ハンドルレバー33のレバー部331は、第2回動軸52から車両後方斜め上方向に向かって延在しているので、車幅方向内側から見たときに、ハンドルレバー33のレバー部331は、操作力伝達ロッド73とのなす角が直角に近い角度で操作力伝達ロッド73によって前方に牽引される。操作力伝達ロッド73によってハンドルレバー33の操作力伝達部33cが前方に牽引されると、ハンドルレバー33は、車幅方向内側から見て、第2回動軸52を中心に時計回りに回動する。
【0053】
ハンドルレバー33は、車幅方向内側から見て、第2回動軸52を中心に待機ポジションから時計回りに回動すると、サブレバー動作部33aがサブレバー32のハンドルレバー当接部32bに車両後方斜め下方から当接して、サブレバー32を反時計回りに回動させる。
【0054】
これにより、操作力伝達ロッド73を介して、インサイドハンドル93の操作力でラチェット23を動作させることができる。
【0055】
一方、
図8に示すように、ドアラッチ装置10がインサイドハンドル93よりも下方に配置され、操作力伝達ロッド73が車両前方斜め上方からドアラッチ装置10に接続される場合は、サブレバー32及びハンドルレバー33に代えて、取替レバー35を取り付ける。取替レバー35は、上端部が第1回動軸51に回動自在に軸支され、待機ポジションにあるときに第1回動軸51から車両前方斜め下方向に向かって延在するレバー部351と、レバー部351から車両前方斜め上方向に向かって突出する突出部352と、を備え、突出部352の先端部には、レバーリンク31の下端部と当接可能なレバーリンク動作部35aが形成されている。さらに、取替レバー35のレバー部351の下端部には、操作力伝達ロッド73が接続する操作力伝達部35cが設けられている。
【0056】
この場合、取替レバー35のレバー部351は、第1回動軸51から車両前方斜め下方向に向かって延在しているので、車幅方向内側から見たときに、取替レバー35は、操作力伝達ロッド73とのなす角が直角に近い角度で操作力伝達ロッド73によって前方に牽引される。操作力伝達ロッド73によって取替レバー35の操作力伝達部35cが前方に牽引されると、取替レバー35は、車幅方向内側から見て、第1回動軸51を中心に反時計回りに回動する。
【0057】
これにより、操作力伝達ロッド73を介して、インサイドハンドル93の操作力をより効率的にラチェット23を動作させることができる。
【0058】
このように、ドアラッチ装置10が取り付けられるドアのインサイドハンドル93の位置に応じて、サブレバー32及びハンドルレバー33を取替レバー35に交換するのみで、インサイドハンドル93の操作力を効率的に伝達して、ラチェット23を動作させることができる。これにより、ドアラッチ装置10は、サブレバー32及びハンドルレバー33を取替レバー35に交換するのみで、ラチェット23を動作させるために必要なインサイドハンドル93の操作力の変化を抑制しつつ、インサイドハンドル93の位置が異なる複数種類のドアに取り付けることができ、汎用性が向上する。
【0059】
図5から
図7に戻って、車幅方向、すなわち、第1回動軸51と第2回動軸52の軸方向から見て、操作力伝達部33cは、サブレバー32の回動領域SP1とハンドルレバー33の回動領域SP2とが重なる領域に設けられている。
【0060】
これにより、ハンドルレバー33を回動させるのに必要な力が大きい領域で、サブレバー32を回動させるのに必要な力が小さくなり、ハンドルレバー33を回動させるのに必要な力が小さい領域で、サブレバー32を回動させるのに必要な力が大きくなるので、インサイドハンドル93の操作中において、インサイドハンドル93の操作に必要な力が均一化し、インサイドハンドル93の操作性が向上する。
【0061】
また、前述したように、第2回動軸52は、第1回動軸51よりも下方且つ車両前方に位置しているので、ドアラッチ装置10を、大径のタイヤを装着する車両のリヤドア等、ドアの後端部が下方に向かうにしたがって鉛直方向に対してより大きな角度で前方に傾斜しているドアに対しても取り付けることができ、汎用性がより向上する。
【0062】
レバーロック34は、第3回動軸53を中心に回動する。第3回動軸53は、第1回動軸51よりも車両前方且つ上方であって、第2回動軸52の上方に位置している。レバーロック34は、第3回動軸53を中心に回動して、レバーリンク31をロックしていないアンロック状態であるアンロック位置(
図5参照)と、レバーリンク31をロックしたロック状態であるロック位置(
図6参照)と、に変位可能である。そして、レバーロック34は、第3回動軸53を中心に回動して、ロック位置とアンロック位置とに変位することで、ラッチ21の動作をロックしたロック状態と、ラッチ21の動作をロックしていないアンロック状態と、に切替可能となっている。
【0063】
レバーロック34は、アンロック位置において、第3回動軸53から上方斜め車両後方に向かって延在する上側延在部341と、第3回動軸53から上方斜め車両後方に向かって延在する上側延在部341と、第3回動軸53から下方斜め車両前方に向かって延在する下側延在部342と、を有する。
【0064】
レバーロック34の上側延在部341の上端部には、レバーリンク31のレバーロック係合部31bと係合するレバーリンク係合面34aが形成されている。レバーリンク31のレバーロック係合部31bは、レバーロック34のレバーリンク係合面34aに沿って摺動可能なようにレバーリンク係合面34aに係合されている。
【0065】
図5に示すように、レバーロック34のレバーリンク係合面34aは、レバーロック34がアンロック位置にあるときに、略鉛直方向に延在するように形成されている。したがって、レバーロック34がアンロック位置にあるとき、レバーリンク31は、レバーリンク係合面34aに沿って略鉛直方向に摺動可能となっている。そして、レバーリンク31は、鉛直上方に変位すると、ラチェット駆動部31aがラチェット23の入力部233に当接し、ラチェット23及びラッチ21を動作させる。
【0066】
図6に示すように、レバーロック34のロック位置は、車幅方向内側から見て、アンロック位置よりも時計回り側に所定角度変位した位置となっている。そのため、レバーロック34がロック位置にあるとき、レバーロック34のレバーリンク係合面34aは、上方に向かって車両前方に傾斜する。したがって、レバーロック34がロック位置にあるとき、レバーリンク31は、レバーリンク係合面34aに沿って車両前方に変位しながら上方に変位する。そして、レバーリンク31は、レバーロック34がロック位置にあるときに上方に変位すると、車両前方に変位しながら上方に変位して、ラチェット駆動部31aがラチェット23の入力部233に当接せず、ラチェット23の入力部233の車両前方を通過するようになっている。これにより、レバーロック34がロック位置にあるとき、レバーリンク31が動作しても、ラチェット23は動作しないため、ラッチ21の動作がロックされた状態となる。
【0067】
レバーロック34の下側延在部342の下端部には、アンロック位置において、下方斜め車両後方を向くハンドルレバー当接部34bが形成されている。
【0068】
図7に示すように、レバーロック34がロック位置にあるときに、操作力伝達ロッド73によってハンドルレバー33の操作力伝達部33cが前方に牽引され、ハンドルレバー33が車幅方向内側から見て第2回動軸52を中心に時計回りに回動すると、ハンドルレバー33の第1レバーロック動作部33b1がレバーロック34のハンドルレバー当接部34bに当接して、レバーロック34を車幅方向内側から見て第3回動軸53を中心に反時計回りに回動させる。
【0069】
レバーロック34が車幅方向内側から見て第3回動軸53を中心に反時計回りに回動すると、レバーロック34がロック位置からアンロック位置に向かって回動する。これにより、レバーリンク31は、レバーリンク係合面34aに沿って略鉛直上方に変位することが可能となる。
【0070】
同時に、前述したように、操作力伝達ロッド73によってハンドルレバー33の操作力伝達部33cが前方に牽引されると、ハンドルレバー33が車幅方向内側から見て第2回動軸52を中心に時計回りに回動すると、サブレバー動作部33aがサブレバー32のハンドルレバー当接部32bに車両後方斜め下方から当接して、サブレバー32を反時計回りに回動させる。そして、サブレバー32は、車幅方向内側から見て、第1回動軸51を中心に待機ポジションから反時計回りに回動すると、レバーリンク動作部32aがレバーリンク31の下端部に下方から当接して、レバーリンク31を上方に押し上げる。
【0071】
このとき、レバーロック34がロック位置からアンロック位置に向かって回動し、レバーリンク31は、レバーリンク係合面34aに沿って略鉛直上方に変位することが可能となっているので、略鉛直上方に変位して、ラチェット駆動部31aがラチェット23の入力部233に当接し、ラチェット23を、前方から見て回転軸部231を中心に時計回りに回動させる。
【0072】
このように、ハンドルレバー33は、レバーロック34に当接してレバーロック34を動作させる第1レバーロック動作部33b1を有することによって、ユーザは、インサイドハンドル93を操作することで、ドアロックの解錠(レバーロック34のロック状態からアンロック状態への回動)と、ドアの開操作とをワンモーションで行うことが可能となる。これにより、ドアラッチ装置10内部のスペースを有効に活用しつつ、ユーザの利便性が向上する。
【0073】
操作力伝達ロッド73によってさらにハンドルレバー33の操作力伝達部33cが前方に牽引され、ハンドルレバー33が車幅方向内側から見て第2回動軸52を中心に時計回りにさらに回動すると、ハンドルレバー33の第1レバーロック動作部33b1がレバーロック34のハンドルレバー当接部34bから離れ、ハンドルレバー33の第2レバーロック動作部33b2がレバーロック34のハンドルレバー当接部34bと当接する。これにより、レバーロック34は、安定的してアンロック位置に維持される。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0075】
例えば、本実施形態では、ドアラッチ装置10がインサイドハンドル93よりも下方に配置され、操作力伝達ロッド73が車両前方斜め上方からドアラッチ装置10に接続される場合は、サブレバー32及びハンドルレバー33に代えて、第1回動軸51に、別のレバーを取り付ければよいものとしたが、サブレバー32の下端部に、操作力伝達ロッド73が接続するケーブル接続部が設けられていてもよい。これにより、ドアラッチ装置10がインサイドハンドル93よりも下方に配置され、操作力伝達ロッド73が車両前方斜め上方からドアラッチ装置10に接続される場合は、ハンドルレバー33を省略するのみで、サブレバー32をそのまま利用でき、ドアラッチ装置10の汎用性がより向上する。
【0076】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0077】
(1) 車体に設けられたストライカに係合可能なラッチ(ラッチ21)と、
前記ラッチに係合可能なラチェット(ラチェット23)と、
前記ラチェットの前記ラッチとの係合を解除させるレバーリンク(レバーリンク31)と、を備える、車両用ドアラッチ装置(ドアラッチ装置10)であって、
前記車両用ドアラッチ装置は、
第1回動軸(第1回動軸51)を中心に回動可能であり、前記レバーリンクを動作させるサブレバー(サブレバー32)と、
第2回動軸(第2回動軸52)を中心に回動可能であり、前記サブレバーを動作させるハンドルレバー(ハンドルレバー33)と、をさらに備え、
前記ハンドルレバーには、ドアハンドル(インサイドハンドル93)の操作力を伝達する操作力伝達部材(操作力伝達ロッド73)が接続可能な接続部(操作力伝達部33c)が設けられており、
前記第1回動軸と前記第2回動軸とは、互いに平行、且つ、車両上下方向及び車両前後方向において異なる位置に配置されている、車両用ドアラッチ装置。
【0078】
(1)によれば、ドアラッチ装置が取り付けられるドアのドアハンドルの位置に応じて、サブレバー及びハンドルレバーを交換するのみで、ドアハンドルの操作力を効率的に伝達して、ラチェットを動作させることができる。これにより、ドアラッチ装置は、サブレバー及びハンドルレバーを交換するのみで、ラチェットを動作させるために必要なドアハンドルの操作力の変化を抑制しつつ、ドアハンドルの位置が異なる複数種類のドアに取り付けることができ、汎用性が向上する。
【0079】
(2) (1)に記載の車両用ドアラッチ装置であって、
前記第1回動軸と前記第2回動軸の軸方向から見て、
前記接続部は、少なくとも一部が、前記ハンドルレバーが待機ポジションにあるときに、前記サブレバーの回動領域(回動領域SP1)と前記ハンドルレバーの回動領域(回動領域SP2)とが重なる領域に位置するように設けられている、車両用ドアラッチ装置。
【0080】
(2)によれば、ハンドルレバーを回動させるのに必要な力が大きい領域で、サブレバーを回動させるのに必要な力が小さくなり、ハンドルレバーを回動させるのに必要な力が小さい領域で、サブレバーを回動させるのに必要な力が大きくなるので、ドアハンドルの操作中において、ドアハンドルの操作に必要な力が均一化し、ドアハンドルの操作性が向上する。
【0081】
(3) (1)又は(2)に記載の車両用ドアラッチ装置であって、
前記第2回動軸は、前記第1回動軸よりも下方且つ車両前方に位置している、車両用ドアラッチ装置。
【0082】
(3)によれば、第2回動軸は、第1回動軸よりも下方且つ車両前方に位置しているので、ドアラッチ装置を、大径のタイヤを装着する車両のリヤドア等、ドアの後端部が下方に向かうにしたがって鉛直方向に対してより大きな角度で前方に傾斜しているドアに対しても取り付けることができ、汎用性がより向上する。
【0083】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の車両用ドアラッチ装置であって、
前記サブレバーが待機ポジションにあるときの前記サブレバーの下端部に、錘部(錘部323)が設けられている、車両用ドアラッチ装置。
【0084】
(4)によれば、サブレバーは、動作後に自重で待機ポジションに復帰するので、付勢部材を設けることなく、通常時にサブレバーが待機ポジションに維持される。これにより、付勢部材が不要となり、サブレバーは、長期にわたって安定して動作することが可能となる。
【0085】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の車両用ドアラッチ装置であって、
前記ラッチの動作をロックしたロック状態と、前記ラッチの動作をロックしていないアンロック状態と、に切替可能なレバーロック(レバーロック34)をさらに備え、
前記ハンドルレバーは、
前記レバーロックに当接して前記レバーロックを動作させるレバーロック動作部(第1レバーロック動作部33b1)を有する、車両用ドアラッチ装置。
【0086】
(5)によれば、ハンドルレバーは、レバーロックに当接してレバーロックを動作させるレバーロック動作部を有することによって、ユーザは、ドアハンドルを操作することで、ドアロックの解錠とドアの開操作をワンモーションで行うことが可能となる。これにより、ドアラッチ装置内部のスペースを有効に活用しつつ、ユーザの利便性が向上する。
【符号の説明】
【0087】
10 ドアラッチ装置(車両用ドアラッチ装置)
21 ラッチ
23 ラチェット
31 レバーリンク
32 サブレバー
323 錘部
33 ハンドルレバー
33b1 第1レバーロック動作部(レバーロック動作部)
33c 操作力伝達部(接続部)
34 レバーロック
51 第1回動軸
52 第2回動軸
73 操作力伝達ロッド(操作力伝達部材)
93 インサイドハンドル(ドアハンドル)
SP1 回動領域
SP2 回動領域