(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082878
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】給水ポンプ制御装置及び給水ポンプ制御方法
(51)【国際特許分類】
F22D 5/34 20060101AFI20240613BHJP
F01D 15/08 20060101ALI20240613BHJP
F22D 5/32 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
F22D5/34 A
F01D15/08 A
F22D5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197062
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 裕久
(57)【要約】
【課題】給水先への給水流量を安定して、給水先への外乱を防止できる。
【解決手段】再循環弁を再循環弁開度指令信号Vにより開閉して再循環系統の再循環流量を制御する再循環弁開度制御部41は、給水ポンプの回転数検出信号Nに応じて設定された第1の関数に基づき吸込流量設定信号QTを出力する吸込流量設定信号生成手段27と、吸込流量設定信号と吸込流量検出信号QRとの偏差に基づき演算して第1の再循環弁開度指令信号VAを出力する第1の制御演算手段28、29と、吸込流量低警報設定信号Mに所定流量を加算した値と給水流量指令信号QCとの偏差に基づく最低再循環流量QWに応じて設定された第2の関数に基づき第2の再循環弁開度指令信号VBを出力する第2の制御演算手段45と、第1の再循環弁開度指令信号と第2の再循環弁開度指令信号とのいずれか高値信号を再循環弁開度指令信号Vとして再循環弁へ出力する高値選択手段47と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンの回転を駆動源とする給水ポンプにより給水元から給水先へ給水を行う給水系統と、前記給水ポンプからの給水を、再循環弁を介して前記給水元へ再循環させる再循環系統とが設けられ、
前記給水系統の給水流量信号が給水流量指令信号と一致するように、蒸気加減弁開度指令信号によって前記蒸気タービンに供給する蒸気流量を制御する給水流量制御部と、
前記再循環弁を再循環弁開度指令信号により開閉して前記再循環系統の再循環流量を制御する再循環弁開度制御部と、を有する給水ポンプ制御装置において、
前記再循環弁開度制御部は、前記給水ポンプの回転数検出信号に応じて予め設定された第1の関数に基づき吸込流量設定信号を出力する吸込流量設定信号生成手段と、
前記吸込流量設定信号と前記給水ポンプの吸込流量検出信号との偏差に基づき制御演算して第1の再循環弁開度指令信号を出力する第1の制御演算手段と、
吸込流量低警報設定信号に所定流量を加算した値と前記給水流量指令信号との偏差に基づき最低再循環流量を演算する演算手段と、
前記最低再循環流量に応じて予め設定された第2の関数に基づき第2の再循環弁開度指令信号を出力する第2の制御演算手段と、
前記第1の再循環弁開度指令信号と前記第2の再循環弁開度指令信号とを入力して、いずれかの高値信号を前記再循環弁開度指令信号として前記再循環弁へ出力する高値選択手段と、を有して構成されたことを特徴とする給水ポンプ制御装置。
【請求項2】
前記第1の制御演算手段と前記高値選択手段との間には、第1の再循環弁開度指令信号が再循環弁を閉弁させる際に、前記再循環弁を低速で閉弁させるよう前記第1の再循環弁開度指令信号を制限する第1の変化率制限手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の給水ポンプ制御装置。
【請求項3】
前記第2の制御演算手段と前記高値選択手段との間には、第2の再循環弁開度指令信号が再循環弁を閉弁させる際に、前記再循環弁を低速で閉弁させるよう前記第2の再循環弁開度指令信号を制限する第2の変化率制限手段が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の給水ポンプ制御装置。
【請求項4】
前記第2の制御演算手段における予め設定された第2の関数は、発電量の急変による急変が発生しない状態の穏やかに徐々に変化する給水流量指令信号を表す関数であることを特徴とする請求項1に記載の給水ポンプ制御装置。
【請求項5】
蒸気タービンの回転を駆動源とする給水ポンプにより給水元から給水先へ給水を行う給水系統と、前記給水ポンプからの給水を、再循環弁を介して前記給水元へ再循環させる再循環系統とが設けられた状態で、
前記給水系統の給水流量信号が給水流量指令信号と一致するように、蒸気加減弁開度指令信号によって前記蒸気タービンに供給する蒸気流量を制御すると共に、前記再循環弁を再循環弁開度指令信号により開閉して前記再循環系統の再循環流量を制御する給水ポンプ制御方法において、
前記給水ポンプの回転数検出信号に応じて予め設定された第1の関数に基づき吸込流量設定信号を出力し、この吸込流量設定信号と前記給水ポンプの吸込流量検出信号との偏差に基づき制御演算して第1の再循環弁開度指令信号を出力し、
吸込流量低警報設定信号に所定流量を加算した値と前記給水流量指令信号との偏差に基づき最低再循環流量を演算し、この最低再循環流量に応じて予め設定した第2の関数に基づき第2の再循環弁開度指令信号を出力し、
前記第1の再循環弁開度指令信号と前記第2の再循環弁開度指令信号とを入力して、いずれかの高値信号を前記再循環弁開度指令信号として前記再循環弁へ出力することを特徴とする給水ポンプ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントにおける給水ポンプ制御装置及び給水ポンプ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントにおける給水ポンプは、発電量の増加に伴ってボイラ(給水先)の要求する給水流量を脱気器(給水元)からボイラへ供給するために、給水ポンプの回転数を増加させる構成となっている。一方、給水ポンプは、ポンプの加熱を防止するために最小吸込流量以上の吸込流量を確保する必要がある。この最小吸込流量は、給水ポンプの回転数に応じて変化する値である。
【0003】
仮に、給水ポンプの吸込流量が最小吸込流量以下になった場合には、警報を出力したり、給水ポンプを強制停止しなければならない。そこで、ボイラへの給水流量が減少して吸込流量が減少した場合には、給水ポンプの下流側から脱気器に接続される再循環系統の再循環弁の開度を調節して、脱気器に戻す再循環流量を増加させることにより、給水ポンプの吸込流量を最小吸込流量以上に確保している。
【0004】
図3は、上述の給水ポンプ1を備えた給水系統11と再循環弁4を備えた再循環系統12とを示す系統図である。給水系統11における給水ポンプ1は、給水元である脱気器から給水先であるボイラに接続される給水配管2に配置されており、この給水配管2によりボイラへ給水を行う。また、給水配管2には、給水ポンプ1の下流側に給水流量検出器5が設けられ、給水ポンプ1の上流側に吸込流量検出器6が設けられている。
【0005】
給水配管2における給水ポンプ1の出口側からは、給水を脱気器へ再循環するための再循環配管3が分岐されている。再循環配管3には再循環弁4が配置され、これらの再循環配管3及び再循環弁4を有して再循環系統12が構成される。給水ポンプ1は、蒸気タービン7と回転軸によって連結されて蒸気タービン7により駆動される。蒸気タービン7には、蒸気加減弁9から蒸気が供給され、この蒸気タービン7に回転数検出器8が設置されている。
【0006】
給水ポンプ制御装置20は、給水配管2に設置された給水流量検出器5により得られる給水流量信号QFを入力し、図示しないボイラ制御装置から入力する給水流量指令信号QCに基づき回転数指令信号NS(
図4)を算出する。また、給水ポンプ制御装置20は、給水ポンプ1の回転数検出器8から回転数検出信号Nを入力し、回転数指令信号NSに基づき蒸気加減弁開度指令信号Zを算出して蒸気加減弁9へ出力する。
【0007】
更に、給水ポンプ制御装置20は、給水配管2に設置された吸込流量検出器6から吸込流量検出信号QRを入力し、給水ポンプ1の回転数検出器8により得られる回転数検出信号Nに基づき、第1の再循環弁開度指令信号VAを算出して再循環弁4へ出力する。このようにして、ボイラへの給水流量が減少した場合には、再循環弁4の開度を調節して脱気器に戻す再循環流量を増加することにより、給水ポンプ1の吸込流量を最小吸込流量以上に確保している。
【0008】
給水ポンプ制御装置20は、
図4に示すように、給水流量制御部21及び再循環弁開度制御部22を有して構成される。給水流量制御部21は、給水流量検出器5により得られる給水流量信号QFと給水流量指令信号QCとを偏差演算手段23に入力し、この偏差演算手段23にて得られる偏差を比例積分演算手段24に入力し、この比例積分演算手段24が回転数指令信号NSを出力する。
【0009】
また、回転数検出器8により得られる回転数検出信号Nが、回転数指令信号NSと共に偏差演算手段25に入力され、その出力が比例演算手段26に入力される。これにより、給水流量制御部21は、給水流量信号QFが給水流量指令信号QCと一致するような蒸気加減弁開度指令信号Zを蒸気加減弁9へ出力して、蒸気タービン7へ供給する蒸気流量を制御する。
【0010】
一方、給水ポンプ制御装置20の再循環弁開度制御部22は、再循環弁4を第1の再循環弁開度指令信号VAにより開閉して再循環系統12の再循環流量を制御するものであり、吸込流量設定信号生成手段27、偏差演算手段28、比例演算手段29及び第1の変化率制限手段30を有して構成される。偏差演算手段28及び比例演算手段29が第1の制御演算手段を構成する。
【0011】
吸込流量設定信号生成手段27は、回転数検出信号Nに応じて予め設定された第1の関数F(x)に基づいて吸込流量設定信号QTを出力する。この吸込流量設定信号QTと吸込流量検出信号QRは偏差演算手段28により偏差が演算され、この偏差が比例演算手段29に入力される。比例演算手段29は、偏差演算手段28から入力された偏差に基づき比例演算して、第1の再循環弁開度指令信号VAを第1の変化率制限手段30に出力する。
【0012】
第1の変化率制限手段30は、再循環弁4を閉弁方向とする第1の再循環弁開度指令信号VAを制限して再循環弁4を低速で閉弁させる一方、第1の再循環弁開度指令信号VAが開弁方向のときには、第1の再循環弁開度指令信号VAに制限をかけないで出力する。つまり、第1の変化率制限手段30は、上述の如く、再循環弁4を開弁方向とする第1の再循環弁開度指令信号VAに対しては、再循環弁4を開弁速度に制限なく開弁させて給水ポンプ1の加熱を防止する。また、第1の変化率制限手段30は、再循環弁4を閉弁方向とする第1の再循環弁開度指令信号VAに対しては、再循環弁4を低速で閉弁させてボイラの給水流量制御への外乱を小さくする。
【0013】
ここで、吸込流量設定信号生成手段27にて設定される吸込流量設定信号QTと回転数検出信号Nとの関係について、
図5を参照して説明する。まず、吸込流量設定信号QTは、回転数検出信号Nに応じて設定され、回転数検出信号NがN1~N2の範囲において回転数検出信号Nに応じて増加するようになっている。吸込流量設定信号QTは、回転数検出信号NがN2以上のときには一定値に保持され、回転数検出信号NがN1以下でも一定値に保持される。また、
図5における最小吸込流量設定信号QSは、再循環弁4を全開とする吸込流量設定値を示す。吸込流量設定信号QTは、最小吸込流量設定信号QSよりαだけ上側(流量が大)に設定されている。
【0014】
上述の
図4に示す比例演算手段29は、吸込流量検出信号QRの変化に対して、第1の再循環弁開度指令信号VAを全閉と全開との間で変化させるようにしている。即ち、吸込流量検出信号QRが最小吸込流量設定信号QSと一致するとき、比例演算手段29の出力は100%{=K×(QT-QS)}となって、第1の再循環弁開度指令信号VAを全開とする。また、吸込流量検出信号QRが吸込流量設定信号QTと一致したとき、比例演算手段29の出力は0%{=K×(QT-QT)}となって、第1の再循環弁開度指令信号VAを全閉とする。
【0015】
ここで、
図5を参照して、発電プラントの高負荷時及び低負荷時の吸込流量検出信号QR(1点鎖線)と、ボイラへの給水流量信号QF(2点鎖線)とを説明する。発電プラントが高負荷にあるとき、給水ポンプ1の回転数検出信号NはN2にある。このとき、吸込流量検出信号QRは吸込流量設定信号QTよりも大きく、第1の再循環弁開度指令信号VAは全閉となり、吸込流量検出信号QRと給水流量信号QFとが一致する。
【0016】
この状態から、発電プラントの負荷を徐々に下げると、給水流量信号QFが減少し、回転数検出信号Nも降下すると共に、吸込流量検出信号QRも減少する。発電プラントが低負荷(N=N1)にあるとき、給水流量信号QFが吸込流量設定信号QTよりも下回る。このような場合には、吸込流量検出信号QRが最小吸込流量設定信号QSよりも下回らないようにする必要がある。そこで、回転数検出信号NがN2側からN1になる前に、給水ポンプ1による給水が全て再循環弁4へ流れるようにして、吸込流量検出信号QRを最小吸込流量設定信号QS以上に確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、
図4に示す背景技術の給水ポンプ制御装置20では、次のような課題がある。まず、一例として、
図6を参照して発電プラントの低負荷時にボイラへ供給する給水量を徐々に減少させていく場合について説明する。ここで、
図6(A)は、吸込流量検出信号QRとボイラへの給水流量信号QFと吸込流量設定信号QTとの関係を示し、
図6(B)は第1の再循環弁開度指令信号VAの変化を示している。
【0019】
図6において、発電プラントの発電量が時刻t1から低下してプラントの負荷が低下すると、給水ポンプ制御装置20では、給水流量指令信号QCの減少に伴って、
図4の給水流量制御部21からの蒸気加減弁開度指令信号Zが減少する。これにより、給水ポンプ1の回転数が減少して、ボイラへの給水流量信号QFが徐々に減少する。このときには、吸込流量設定信号QTと吸込流量検出信号QRとの偏差はα以上ある。従って、給水ポンプ制御装置20は、第1の再循環弁開度指令信号VAを全閉として出力する。このため、再循環弁4に給水が流れず、吸込流量検出信号QRは給水流量信号QFと同一の値となって徐々に減少する。
【0020】
その後、時刻t2になると、発電量の急減により給水流量指令信号QCが減少して、給水流量信号QFが急減する。更に、時刻t3では吸込流量検出信号QRが吸込流量設定信号QT以下になる。この状態では、
図4に示す再循環弁開度制御部22が第1の再循環弁開度指令信号VAを全閉から急開させる。これにより、再循環弁4に流れる流量が増加して吸込流量検出信号QRが増加するが、ボイラへの給水流量信号QFは更に急減する。
【0021】
即ち、給水ポンプ制御装置20は、給水ポンプ1の加熱防止のために第1の再循環弁開度指令信号VAを高速に増加させる。しかも、給水系統11より再循環系統12の方が給水流量の吸込力が大きい。これらの結果、再循環系統12への流量が増加し、これに対応してボイラへの給水流量信号QFは、時刻t3から時刻t4に亘って必要以上に急減する。
【0022】
一方、
図4に示す給水流量制御部21では、給水ポンプ1の給水流量信号QFの急減に伴って、開度を大きくする蒸気加減弁開度指令信号Zを出力して、ボイラへ必要流量を送給するように制御する。これにより、給水流量信号QFは、時刻t4から時刻t5に亘り増加する。このとき、再循環弁4は閉弁方向に動作する。その後、吸込流量検出信号QRは、吸込流量設定信号QTよりも大きく増加した後、再循環弁4が閉弁方向にあるので降下する。そして、時刻t6において、吸込流量検出信号QRは吸込流量設定信号QTとほぼ一致し、その後に吸込流量設定信号QTよりも減少する。
【0023】
このため、時刻t7になると、第1の再循環弁開度指令信号VAが開弁方向となる。これに伴って、再び吸込流量検出信号QRが増加するが、時刻t3から時刻t4の場合と同様に、時刻t7以降で給水流量信号QFが再び急減する。これにより、前述したように給水流量制御部21によって蒸気加減弁9が開弁し、時刻t8で再び給水流量信号QFが増加して復帰する。このとき、再循環弁4は閉弁方向に動作する。このように給水流量信号QFの急減と復帰(急増)との変動が繰り返されるので、給水流量の制御が不安定となって、ボイラに外乱を与えるという課題がある。
【0024】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、給水先への給水流量を安定して制御でき、給水先に与える外乱を確実の防止できる給水ポンプ制御装置及び給水ポンプ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の実施形態における給水ポンプ制御装置は、蒸気タービンの回転を駆動源とする給水ポンプにより給水元から給水先へ給水を行う給水系統と、前記給水ポンプからの給水を、再循環弁を介して前記給水元へ再循環させる再循環系統とが設けられ、前記給水系統の給水流量信号が給水流量指令信号と一致するように、蒸気加減弁開度指令信号によって前記蒸気タービンに供給する蒸気流量を制御する給水流量制御部と、前記再循環弁を再循環弁開度指令信号により開閉して前記再循環系統の再循環流量を制御する再循環弁開度制御部と、を有する給水ポンプ制御装置において、前記再循環弁開度制御部は、前記給水ポンプの回転数検出信号に応じて予め設定された第1の関数に基づき吸込流量設定信号を出力する吸込流量設定信号生成手段と、前記吸込流量設定信号と前記給水ポンプの吸込流量検出信号との偏差に基づき制御演算して第1の再循環弁開度指令信号を出力する第1の制御演算手段と、吸込流量低警報設定信号に所定流量を加算した値と前記給水流量指令信号との偏差に基づき最低再循環流量を演算する演算手段と、前記最低再循環流量に応じて予め設定された第2の関数に基づき第2の再循環弁開度指令信号を出力する第2の制御演算手段と、前記第1の再循環弁開度指令信号と前記第2の再循環弁開度指令信号とを入力して、いずれかの高値信号を前記再循環弁開度指令信号として前記再循環弁へ出力する高値選択手段と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の実施形態における給水ポンプ制御方法は、蒸気タービンの回転を駆動源とする給水ポンプにより給水元から給水先へ給水を行う給水系統と、前記給水ポンプからの給水を、再循環弁を介して前記給水元へ再循環させる再循環系統とが設けられた状態で、前記給水系統の給水流量信号が給水流量指令信号と一致するように、蒸気加減弁開度指令信号によって前記蒸気タービンに供給する蒸気流量を制御すると共に、前記再循環弁を再循環弁開度指令信号により開閉して前記再循環系統の再循環流量を制御する給水ポンプ制御方法において、前記給水ポンプの回転数検出信号に応じて予め設定された第1の関数に基づき吸込流量設定信号を出力し、この吸込流量設定信号と前記給水ポンプの吸込流量検出信号との偏差に基づき制御演算して第1の再循環弁開度指令信号を出力し、吸込流量低警報設定信号に所定流量を加算した値と前記給水流量指令信号との偏差に基づき最低再循環流量を演算し、この最低再循環流量に応じて予め設定した第2の関数に基づき第2の再循環弁開度指令信号を出力し、前記第1の再循環弁開度指令信号と前記第2の再循環弁開度指令信号とを入力して、いずれかの高値信号を前記再循環弁開度指令信号として前記再循環弁へ出力することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施形態によれば、給水先への給水流量を安定して制御でき、給水先に与える外乱を確実の防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態に係る給水ポンプ制御装置の構成を示すブロック図。
【
図2】
図1の給水ポンプ制御装置の作用を示し、(A)が給水流量指令信号のグラフ、(B)が給水流量信号及び吸込流量検出信号等を示すグラフ、(C)が再循環弁開度指令信号を示すグラフ。
【
図3】給水ポンプを備えた給水系統と再循環弁を備えた再循環系統を示す系統図。
【
図4】従来の給水ポンプ制御装置の構成を示すブロック図。
【
図5】給水ポンプの回転数検出信号と吸込流量設定信号等との関係を示すグラフ。
【
図6】
図4の給水ポンプ制御装置の作用を示し、(A)が給水流量信号及び吸込流量検出信号等を示すグラフ、(B)が第1の再循環弁開度指令信号を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る給水ポンプ制御装置の構成を示すブロック図である。この一実施形態において背景技術(
図3~
図5)と同様な部分については、背景技術と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0030】
本実施形態の給水ポンプ制御装置40が背景技術の給水ポンプ制御装置20と異なる点は、再循環弁開度制御部41が、給水ポンプ制御装置20の再循環弁開度制御部22の構成に加え、演算手段としての加算演算手段42、定数発生手段43及び偏差演算手段44と、第2の制御演算手段としての第2の再循環弁開度指令信号生成手段45と、第2の変化率制限手段46と、高値選択手段47と、を有して構成された点である。
【0031】
加算演算手段42は、最小吸込流量設定信号QSに相当する吸込流量低警報設定信号Mに、定数発生手段43から出力される予め設定された所定流量βを加算して加算流量値を演算する。偏差演算手段44は、加算演算手段42からの加算流量値と給水流量指令信号QCとの偏差に基づき最低再循環流量QWを演算する。ここで、最低再循環流量QWは、再循環系統12に流すことが必要な最小の再循環流量である。また、所定流量βは、吸込流量設定信号QTと最小吸込流量設定信号QSとの流量差α(
図5)よりも小さな値に設定される。
【0032】
第2の再循環弁開度指令信号生成手段45は、偏差演算手段44から出力される最低再循環流量QWに応じて予め設定された第2の関数G(X)に基づき第2の再循環弁開度指令信号VBを演算する。第2の関数G(X)は、例えば、発電量の急変(例えば急減)による急変(例えば急減)が発生しない状態の穏やかに徐々に変化する給水流量指令信号QC(
図2(A)の2点鎖線を含む表示)を表す関数である。第2の再循環弁開度指令信号VBは、第1の再循環弁開度指令信号VAと共に
図2(C)に示され、プラントの低負荷時に再循環弁4の開度を穏やかに徐々に開弁させるよう設定する。
【0033】
第2の変化率制限手段46は、第2の再循環弁開度指令信号生成手段45と高値選択手段47との間に設置される。ところで、前述の第1の変化率制限手段30は、比例演算手段29と高値選択手段47との間に設置される。第2の変化率制限手段46は、第2の再循環弁開度指令信号生成手段45からの第2の再循環弁開度指令信号VBが再循環弁4を閉弁させる際には、再循環弁4を低速で閉弁させるように第2の再循環弁開度指令信号VBを制限し、また、第2の再循環弁開度指令信号VBが再循環弁4を開弁させる際には、再循環弁4を開弁速度に制限を与えずに開弁させる。
【0034】
高値選択手段47は、第1の変化率制限手段30からの第1の再循環弁開度指令信号VAと第2の変化率制限手段46からの第2の再循環弁開度指令信号VBとを入力し、これらのいずれかの高値信号を再循環弁開度指令信号Vとして再循環弁4へ出力する。後に詳説するが、
図2(C)に示すように、高値選択手段47は、時刻t1~t4及び時刻t5以降において第2の再循環弁開度指令信号VBを選択し、時刻t4~t5において第1の再循環弁開度指令信号VAを選択して、それぞれ再循環弁開度指令信号Vとする。
【0035】
次に、本実施形態の作用を、
図2を参照して説明する。この一例は、発電プラントの低負荷時(ユニット起動時)において、ボイラへ供給する給水流量を徐々に減少させていく場合の作用である。
【0036】
時刻t1において、発電プラントが低負荷に移行して給水流量が減少し始める際には、給水流量指令信号QCが減少して、給水流量信号QFが減少する。これに応じて、吸込流量検出信号QRも徐々に減少する。このとき、第2の変化率制限手段46からの第2の再循環弁開度指令信号VBは、給水流量指令信号QCの減少により全閉から開方向に徐々に増加する。この状態では、第1の変化率制限手段30からの第1の再循環弁開度指令信号VAが全閉状態にあるので、高値選択手段47は第2の再循環弁開度指令信号VBを選択して、再循環弁開度指令信号Vとする。この場合、給水流量指令信号QCの減少速度が遅く徐々に減少するので、この給水流量指令信号QCに基づく第2の再循環弁開度指令信号生成手段45による第2の再循環弁開度指令信号VBの増加速度も遅く、給水流量信号QFの外乱にならないように推移する。
【0037】
時刻t2において、給水流量指令信号QCの急減により給水流量信号QFが急減したときでも、再循環弁開度指令信号V(第2の再循環弁開度指令信号VB)により再循環弁4が開いている。従って、吸込流量検出信号QRが吸込流量設定信号QT以下になることがない。このため、高値選択手段47では、吸込流量検出信号QRの急減による第1の再循環弁開度指令信号VAの増加がなく、そのまま第2の再循環弁開度指令信号VBが選択され、再循環弁開度指令信号Vは急増することなく推移する。
【0038】
このように、給水流量指令信号QCの急減に対して再循環弁開度指令信号Vを第2の再循環弁開度指令信号VBにより定めると、給水流量信号QFの急減があっても、吸込流量検出信号QRが吸込流量設定信号QT以下となることがなく、背景技術のような再循環弁4の急閉に伴う給水流量信号QFの急増が生じることが防止される。また、吸込流量検出信号QRが吸込流量設定信号QTから大きく低下することがなく、従って、第1の再循環弁開度指令信号VAが急上昇することがないことから、再循環弁4の急開による給水流量の急減状態が生じることが防止される。
【0039】
その後、
図2のように、プラントが更に低負荷となり、時刻t3で給水流量信号QFが急減され、吸込流量検出信号QRが吸込流量設定信号QT以下となった場合について説明する。この場合、第1の変化率制限手段30からの第1の再循環弁開度指令信号VAが急開指令となり、時刻t4で第1の再循環弁開度指令信号VAが、第2の変化率制限手段46からの第2の再循環弁開度指令信号VBよりも大きくなる。すると、高値選択手段47は、第1の再循環弁開度指令信号VAを選択して、再循環弁開度指令信号Vを出力する。これによって、吸込流量検出信号QRが上昇し、やがてピークに達した後に徐々に降下する。
【0040】
吸込流量検出信号QRが吸込流量設定信号QTよりも上昇すると、吸込流量検出信号QRと吸込流量設定信号QTとの偏差が減少して、第1の変化率制限手段30からの第1の再循環弁開度指令信号VAも減少する。そして、時刻t5で第2の変化率制限手段46からの第2の再循環弁開度指令信号VBの方が高値となる。このため、高値選択手段47は、第2の再循環弁開度指令信号VBを選択し、再循環弁開度指令信号Vとして再循環弁4へ出力する。
【0041】
上述のように、プラントの更なる低負荷時に給水流量制御部21の制御により給水流量信号QFが急減され、時刻t3以降のように吸込流量検出信号QRが吸込流量設定信号QT以下に低下した場合でも、吸込流量検出信号QRの減少に対応する第1の再循環弁開度指令信号VAの急増により、高値選択手段47は、この第1の再循環弁開度指令信号VAを選択して再循環弁開度指令信号Vとする。このため、吸込流量検出信号QRが最小吸込流量設定信号QS以下となることが防止される。
【0042】
この結果、給水ポンプ1の吸込流量の急減による過熱防止を図ると共に、発電プラントの低負荷時に再循環弁4が急開、急閉することによるボイラへの給水流量の急減、急増の繰り返しが防止されて、ボイラへの給水流量を安定して制御することができ、ボイラへの外乱を確実に防止することが可能になる。
【0043】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果を奏する。
給水ポンプ制御装置40の再循環弁開度制御部41によれば、プラント低負荷時には、吸込流量設定信号QTと吸込流量検出信号QRとの偏差に基づく第1の再循環弁開度指令信号VAと、吸込流量低警報設定信号M(最小吸込流量設定信号QS)に所定流量βを加算した値と給水流量指令信号QCとの偏差から演算される最低再循環流量QWに基づく第2の再循環弁開度指令信号VBとのいずれかの高値信号が、再循環弁開度指令信号Vとして選択されて再循環弁4が開閉動作される。
【0044】
このため、プラント低負荷時に、再循環弁開度指令信号Vとして第2の再循環弁開度指令信号VBが選択されたときには、再循環系統12に最低再循環流量QWが確保されることで、また、再循環弁開度指令信号Vとして第1の再循環弁開度指令信号VAが選択されたときには、吸込流量として最小吸込流量が確保される。従って、従来のようなプラント低負荷時における再循環弁4の急開、急閉による給水流量の急減、急増の繰り返しを回避することができる。この結果、給水先であるボイラへの給水流量を安定して制御することができ、給水先(ボイラ)に与える外乱を確実に防止することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…給水ポンプ、4…再循環弁、7…蒸気タービン、11…給水系統、12…再循環系統、21…給水流量制御部、27…吸込流量設定信号生成手段、28…偏差演算手段(第1の制御演算手段)、29…比例演算手段(第1の制御演算手段)、30…第1の変化率制限手段、40…給水ポンプ制御装置、41…再循環弁開度制御部、42…加算演算手段(演算手段)、43…定数発生手段(演算手段)、44…偏差演算手段(演算手段)、45…第2の再循環弁開度指令信号生成手段(第2の制御演算手段)、46…第2の変化率制限手段、47…高値選択手段、M…吸込流量低警報設定信号、N…回転数検出信号、QC…給水流量指令信号、QF…給水流量信号、QR…吸込流量検出信号、QT…吸込流量設定信号、QS…最小吸込流量設定信号、QW…最低再循環流量、V…再循環弁開度指令信号、VA…第1の再循環弁開度指令信号、VB…第2の再循環弁開度指令信号、Z…蒸気加減弁開度指令信号