(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082889
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】光源装置及び膜厚調整機構
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240613BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197079
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藪田 泰伸
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA05
2H197GA06
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AB12
4C092AC09
(57)【要約】
【課題】プラズマの発生領域におけるプラズマ原料の膜厚を高い精度で調整可能な光源装置及び膜厚調整機構を提供すること。
【解決手段】本光源装置は、液体原料からプラズマを発生させて放射線を取り出す光源装置であって、回転体と、膜厚調整機構とを具備する。回転体は、液体原料が付着され、回転することでプラズマの発生領域に、付着された液体原料を供給する。膜厚調整機構は、回転体の液体原料が付着される付着面に対向する位置に間隔をあけて配置される膜厚調整部材と、付着面に対向する第1の方向において移動可能となるように膜厚調整部材を支持する支持機構とを有する。支持機構は、第1の方向において付着面から第1の距離離れた第1の調整基準位置から移動する膜厚調整部材を第1の調整基準位置に戻す位置保持機構と、第1の方向において移動する膜厚調整部材の姿勢を保持する姿勢保持機構とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体原料からプラズマを発生させて放射線を取り出す光源装置であって、
前記液体原料が付着され、回転することで前記プラズマの発生領域に、付着された前記液体原料を供給する回転体と、
前記回転体の前記液体原料が付着される付着面に対向する位置に間隔をあけて配置される膜厚調整部材と、前記付着面に対向する第1の方向において移動可能となるように前記膜厚調整部材を支持する支持機構とを有する膜厚調整機構と
を具備し、
前記支持機構は、前記第1の方向において前記付着面から第1の距離離れた第1の調整基準位置から移動する前記膜厚調整部材を前記第1の調整基準位置に戻す位置保持機構と、前記第1の方向において移動する前記膜厚調整部材の姿勢を保持する姿勢保持機構とを有する
光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置であって、
前記支持機構は、前記第1の方向に直交する第2の方向において移動可能となるように前記膜厚調整部材を支持し、
前記位置保持機構は、前記第2の方向において第2の調整基準位置から移動する前記膜厚調整部材を前記第2の調整基準位置に戻し、
前記姿勢保持機構は、前記第2の方向において移動する前記膜厚調整部材の姿勢を保持する
光源装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光源装置であって、
前記姿勢保持機構は、固定して配置される基体部材と、前記第1の方向に沿って延在する第1のレール機構を介して、前記基体部材に対して前記第1の方向に移動可能に接続される第1の移動部材とを含み、
前記膜厚調整部材は、前記第1の方向において前記第1の移動部材が移動した場合に前記第1の移動部材と一体的に移動するように、前記第1の移動部材に接続される
光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光源装置であって、
前記姿勢保持機構は、前記第2の方向に沿って延在する第2のレール機構を介して前記基体部材に対して前記第2の方向に移動可能に接続される第2の移動部材を含み、
前記膜厚調整部材は、前記第2の方向において前記第2の移動部材が移動した場合に前記第2の移動部材と一体的に移動するように、前記第2の移動部材に接続される
光源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光源装置であって、
前記第1のレール機構は、前記基体部材と前記第1の移動部材との間に構成され、
前記第2のレール機構は、前記第1の移動部材と前記第2の移動部材との間に構成され、
前記第2の移動部材は、前記第1の移動部材を介して前記基体部材に接続され、
前記膜厚調整機構は、前記第2の移動部材を介して前記第1の移動部材に接続される
光源装置。
【請求項6】
請求項4に記載の光源装置であって、
前記第2のレール機構は、前記基体部材と前記第2の移動部材との間に構成され、
前記第1のレール機構は、前記第2の移動部材と前記第1の移動部材との間に構成され、
前記第1の移動部材は、前記第2の移動部材を介して前記基体部材に接続され、
前記膜厚調整機構は、前記第1の移動部材を介して前記第2の移動部材に接続される
光源装置。
【請求項7】
請求項4に記載の光源装置であって、
前記位置保持機構は、前記第1の方向において固定されている第1の固定部材と、前記第1の固定部材と前記第1の移動部材との間に前記第1の方向に沿って延在するように配置される1以上の第1のばねを含む
光源装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光源装置であって、
前記第1の固定部材は、前記第1の方向に直交し前記第1の方向における第1の側に向けられる第1の固定側支持面と、前記第1の方向に直交し前記第1の方向における前記第1の側とは反対側の第2の側に向けられる第2の固定側支持面とを有し、
前記第1の移動部材は、前記第1の方向において前記第1の固定側支持面に対向する第1の移動側支持面と、前記第1の方向において前記第2の固定側支持面に対向する第2の移動側支持面とを有し、
前記第1の固定部材と前記第1の移動部材との間に配置される前記1以上の第1のばねは、前記第1の固定側支持面と前記第1の移動側支持面との間に配置されるコイルばねと、前記第2の固定側支持面と前記第2の移動側支持面との間に配置されるコイルばねとを含む
光源装置。
【請求項9】
請求項7に記載の光源装置であって、
前記位置保持機構は、前記第2の方向において固定されている第2の固定部材と、前記第2の固定部材と前記第2の移動部材との間に前記第2の方向に沿って延在するように配置される1以上の第2のばねを含む
光源装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光源装置であって、
前記第2の固定部材は、前記第2の方向に直交し前記第2の方向における第3の側に向けられる第3の固定側支持面と、前記第2の方向に直交し前記第2の方向における前記第3の側とは反対側の第4の側に向けられる第4の固定側支持面とを有し、
前記第2の移動部材は、前記第2の方向において前記第3の固定側支持面に対向する第3の移動側支持面と、前記第2の方向において前記第4の固定側支持面に対向する第4の移動側支持面とを有し、
前記第2の固定部材と前記第2の移動部材との間に配置される前記1以上の第2のばねは、前記第3の固定側支持面と前記第3の移動側支持面との間に配置されるコイルばねと、前記第4の固定側支持面と前記第4の移動側支持面との間に配置されるコイルばねとを含む
光源装置。
【請求項11】
請求項2に記載の光源装置であって、
前記姿勢保持機構は、固定して配置される基体部材と、前記第1の方向において対向するように前記第1の方向に直交して配置される一対の板ばねからなる第1の平行板ばね機構を介して、前記基体部材に対して前記第1の方向に移動可能に接続される第1の移動部材とを含み、
前記膜厚調整部材は、前記第1の方向において前記第1の移動部材が移動した場合に前記第1の移動部材と一体的に移動するように、前記第1の移動部材に接続される
光源装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光源装置であって、
前記姿勢保持機構は、固定して配置される基体部材と、前記第2の方向において対向するように前記第2の方向に直交して配置される一対の板ばねからなる第2の平行板ばね機構を介して、前記基体部材に対して前記第2の方向に移動可能に接続される第2の移動部材とを含み、
前記膜厚調整部材は、前記第2の方向において前記第2の移動部材が移動した場合に前記第2の移動部材と一体的に移動するように、前記第2の移動部材に接続される
光源装置。
【請求項13】
請求項12に記載の光源装置であって、
前記第1の平行板ばね機構及び前記第2の平行板ばね機構は、前記位置保持機構として機能する
光源装置。
【請求項14】
請求項2に記載の光源装置であって、
前記回転体は、円盤状からなり、互いに対向する第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面の間の端面とを有し、
前記端面は、前記液体原料が付着される前記付着面となり、
前記プラズマの発生領域は、前記端面に対する所定の位置に設定され、
前記端面の前記プラズマの発生領域とは異なる位置に膜厚調整の対象となる膜厚調整領域が設定され、
前記膜厚調整領域に対向する方向を前記第1の方向とし、前記第1の主面と前記第2の主面との対向方向を前記第2の方向として、前記膜厚調整機構が構成される
光源装置。
【請求項15】
請求項14に記載の光源装置であって、
前記膜厚調整部材は、前記第1の方向において前記端面に対向する位置に間隔をあけて配置される主調整面と、前記第2の方向において前記第1の主面に対向する位置に間隔をあけて配置される第1の副整面と、前記第2の方向において前記第2の主面に対向する位置に間隔をあけて配置される第2の副調整面とを含み、
前記第2の調整基準位置は、前記第1の主面と前記第1の副調整面との距離、及び前記第2の主面と前記第2の副調整面との距離が、ともに所定の第2の距離よりも小さくなる位置である
光源装置。
【請求項16】
請求項2に記載の光源装置であって、
前記回転体は、円盤状からなり、互いに対向する第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面の間の端面とを有し、
前記第1の主面は、前記液体原料が付着される前記付着面となり、
前記プラズマの発生領域は、前記第1の主面に対する所定の位置に設定され、
前記第1の面の前記プラズマの発生領域とは異なる位置に膜厚調整の対象となる膜厚調整領域が設定され、
前記膜厚調整領域に対向する方向を前記第1の方向とし、前記端面に対向する方向を前記第2の方向として、前記膜厚調整機構が構成される
光源装置。
【請求項17】
請求項2に記載の光源装置であって、
前記回転体は、容器状からなり、底面部と、前記底面部の周縁に配置される外壁部とを有し、
前記外壁部の内周面は、前記液体原料が付着される前記付着面となり、
前記プラズマの発生領域は、前記内周面に対する所定の位置に設定され、
前記内周面の前記プラズマの発生領域とは異なる位置に膜厚調整の対象となる膜厚調整領域が設定され、
前記膜厚調整領域に対向する方向を前記第1の方向とし、前記底面部に対向する方向を前記第2の方向として、前記膜厚調整機構が構成される
光源装置。
【請求項18】
請求項1に記載の光源装置であって、さらに、
エネルギービームを照射するビーム源を具備し、
前記エネルギービームの照射を利用して前記液体原料をプラズマ化して前記放射線を取り出す
光源装置。
【請求項19】
請求項18に記載の光源装置であって、
LPP(Laser Produced Plasma)方式の光源装置、又はLDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)方式の光源装置として構成される
光源装置。
【請求項20】
プラズマを発生させるための液体原料が付着され、回転することで前記プラズマの発生領域に、付着された前記液体原料を供給する回転体に用いられる膜厚調整機構であって、
前記回転体の前記液体原料が付着される付着面に対向する位置に間隔をあけて配置される膜厚調整部材と、
前記付着面に対向する第1の方向において移動可能となるように前記膜厚調整部材を支持する支持機構と
を具備し、
前記支持機構は、前記第1の方向において前記付着面から第1の距離離れた第1の調整基準位置から移動する前記膜厚調整部材を前記第1の調整基準位置に戻す位置保持機構と、前記第1の方向において移動する前記膜厚調整部材の姿勢を保持する姿勢保持機構とを有する
膜厚調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線や極端紫外光等の出射に適用可能な光源装置、及び膜厚調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められている。次世代の半導体露光用光源としては、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」ともいう)を放射する極端紫外光光源装置(以下、「EUV光源装置」ともいう)の開発が進められている。
【0003】
EUV光源装置において、EUV光(EUV放射)を発生させる方法はいくつか知られている。それらの方法のうちの一つに極端紫外光放射種(以下、EUV放射種ともいう)を加熱して励起することにより高温プラズマを発生させ、高温プラズマからEUV光を取り出す方法がある。
【0004】
このような方法を採用するEUV光源装置は、高温プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式と、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式とに分けられる。
【0005】
DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度高温プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用するものである。
【0006】
DPP方式としては、放電を発生させる電極(放電電極)表面にEUV放射種を含む液体状のプラズマ原料(例えば、Sn(スズ)やLi(リチウム)等)を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によって高温プラズマを生成する方法が提案されている。このような方式は、LDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)方式と称されることもある。
【0007】
一方、LPP方式のEUV光源装置は、レーザビーム等のエネルギービームをターゲット材料に照射し、当該ターゲット材料を励起させてプラズマを生成するものである。
【0008】
EUV光源装置は、半導体デバイス製造における半導体露光装置(リソグラフィ装置)の光源装置として使用される。あるいは、EUV光源装置は、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用される。
【0009】
例えばマスク検査装置は、EUV光源装置から放出されるEUV光を検査光として、マスクのブランクス検査またはパターン検査を行う。EUV光を用いることにより、5nm~7nmプロセスに対応することができる。その他、EUV光源装置を、EUV光を利用する他の任意の光学系装置(利用装置)の光源装置として使用することが可能である。
【0010】
特許文献1には、ガス放電プラズマを用いた短波長電磁放射生成装置について開示されている。当該短波長電磁放射生成装置では、上記したLDP方式により高温プラズマが生成され、EUV光の放射が実現されている。
【0011】
特許文献1の
図1等に示されるように、互いに反対方向に回転する2つのディスク状の電極が並ぶように配置される。2つの電極の各々は、下方側の領域が、液体状のプラズマ原料(例えば、液体状のスズ)が貯留された貯蔵部に浸されている。電極が回転すると、電極の貯蔵部に浸されていた部分にはプラズマ原料が塗布され膜が形成される。そして、電極に塗布されたプラズマ原料が、2つの電極が最も近接している位置に設定された放電領域に輸送される。
【0012】
放電領域では、輸送されたプラズマ原料が、レーザビームの照射によってエネルギーの作用を受けて気化する。そうると、2つの電極の間でトリガされた電気放電により、気化されたプラズマ原料を通じて電流が流れ始め高温プラズマが発生する。発生した高温プラズマが圧縮されると所望のEUV光が放出される。
【0013】
放電領域にて発生する放電の電流量は、電極の表面を侵食するほど非常に大きい。従ってプラズマ原料の膜を、電極を保護するコーティング膜としても作用させる。これにより、電極の摩耗を防止することが可能となり、EUV光の発生に必要な大きな放電を繰り返し行うことが可能となっている。
【0014】
また、一部が貯蔵部に浸されている電極を回転させることで、電極の表面に連続的に新たなプラズマ原料の膜を再生することが可能となり、放電領域に連続的にプラズマ原料を供給することが可能となる。さらに、電極の一部がプラズマ原料に浸されているため、電極が回転するたびに電極表面を冷却することが可能である。この結果、長期間の安定した高温プラズマの生成とEUV光の放射とを実現することが可能である。
【0015】
さらに、高温プラズマの生成とEUV光の放射の安定性を高めるためには、電極に塗布されるプラズマ原料の量、つまり電極に塗布されるプラズマ原料の膜厚を適量に、かつ一定にする必要がある。このような均一な膜厚の塗布を実現するためには、電極の回転数の制御だけでは難しい。特許文献1には、電極の回転周波数が高くなっても電極表面上のプラズマ原料の均一な膜厚を保証することが可能なストリッパについて開示されている。
【0016】
特許文献2には、放射線(X線、EUV)発生用のプラズマ原料が供給された回転体において、当該回転体におけるプラズマ原料供給領域にエネルギービーム(レーザビーム)を照射して放射線を得る方法が提案されている。
【0017】
特許文献2の
図1や
図2等に示されるように、坩堝からなる容器内に固体状のプラズマ原料が投入され、ヒータにより溶融される。溶融された液体状のプラズマ原料は容器の底部に形成された溝に溜まる。容器が回転することで、遠心力により、溝に溜まった液体状のプラズマ原料が容器の内周面に拡げられる。容器の内周面に拡げられたプラズマ原料にエネルギービームを照射することで高温プラズマが発生され、放射線が放射される。
【0018】
特許文献2に記載の方法をEUV光源装置に適用した場合、所謂LPP方式に相当するが、液体状のプラズマ原料をドロップレットとして供給する必要がない。そのため、プラズマ原料の供給が容易で、かつ確実に液体状のプラズマ原料にエネルギービームを照射することが可能となり、比較的簡易な構成の装置でEUV放射を得ることが可能となる。
【0019】
特許文献2に記載のようなLPP方式のEUV光源装置おいても、高温プラズマの生成とEUV光の放射の安定性を高めるためには、プラズマ原料の膜厚を均一にすることが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2014-82206号公報
【特許文献2】特開2021-1924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
特許文献1や特許文献2に記載のような、X線やEUV光等の放射線を放射する光源装置において、プラズマの発生領域におけるプラズマ原料の膜厚を高い精度で調整可能な技術が求められている。
【0022】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、プラズマの発生領域におけるプラズマ原料の膜厚を高い精度で調整可能な光源装置及び膜厚調整機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光源装置は、液体原料からプラズマを発生させて放射線を取り出す光源装置であって、回転体と、膜厚調整機構とを具備する。
前記回転体は、前記液体原料が付着され、回転することで前記プラズマの発生領域に、付着された前記液体原料を供給する。
前記膜厚調整機構は、前記回転体の前記液体原料が付着される付着面に対向する位置に間隔をあけて配置される膜厚調整部材と、前記付着面に対向する第1の方向において移動可能となるように前記膜厚調整部材を支持する支持機構とを有する。
前記支持機構は、前記第1の方向において前記付着面から第1の距離離れた第1の調整基準位置から移動する前記膜厚調整部材を前記第1の調整基準位置に戻す位置保持機構と、前記第1の方向において移動する前記膜厚調整部材の姿勢を保持する姿勢保持機構とを有する。
【0024】
この光源装置では、液体原料(液体状のプラズマ原料)が付着される付着面に対向する位置に間隔をあけて膜厚調整部材が配置され、支持機構により付着面に対向する第1の方向において移動可能となるように膜厚調整部材が支持される。また支持機構は、第1の方向において移動する膜厚調整部材を第1の調整基準位置に戻す位置保持機構と、第1の方向において移動する膜厚調整部材の姿勢を保持する姿勢保持機構とを有する。これにより、プラズマの発生領域における液体原料の膜厚を高い精度で調整することが可能となる。
【0025】
前記支持機構は、前記第1の方向に直交する第2の方向において移動可能となるように前記膜厚調整部材を支持してもよい。この場合、前記位置保持機構は、前記第2の方向において第2の調整基準位置から移動する前記膜厚調整部材を前記第2の調整基準位置に戻してもよい。また前記姿勢保持機構は、前記第2の方向において移動する前記膜厚調整部材の姿勢を保持してもよい。
【0026】
前記姿勢保持機構は、固定して配置される基体部材と、前記第1の方向に沿って延在する第1のレール機構を介して、前記基体部材に対して前記第1の方向に移動可能に接続される第1の移動部材とを含んでもよい。この場合、前記膜厚調整部材は、前記第1の方向において前記第1の移動部材が移動した場合に前記第1の移動部材と一体的に移動するように、前記第1の移動部材に接続されてもよい。
【0027】
前記姿勢保持機構は、前記第2の方向に沿って延在する第2のレール機構を介して前記基体部材に対して前記第2の方向に移動可能に接続される第2の移動部材を含んでもよい。この場合、前記膜厚調整部材は、前記第2の方向において前記第2の移動部材が移動した場合に前記第2の移動部材と一体的に移動するように、前記第2の移動部材に接続されてもよい。
【0028】
前記第1のレール機構は、前記基体部材と前記第1の移動部材との間に構成されてもよい。この場合、前記第2のレール機構は、前記第1の移動部材と前記第2の移動部材との間に構成されてもよい。また前記第2の移動部材は、前記第1の移動部材を介して前記基体部材に接続されてもよい。また前記膜厚調整機構は、前記第2の移動部材を介して前記第1の移動部材に接続されてもよい。
【0029】
前記第2のレール機構は、前記基体部材と前記第2の移動部材との間に構成されてもよい。この場合、前記第1のレール機構は、前記第2の移動部材と前記第1の移動部材との間に構成されてもよい。また前記第1の移動部材は、前記第2の移動部材を介して前記基体部材に接続されてもよい。また前記膜厚調整機構は、前記第1の移動部材を介して前記第2の移動部材に接続されてもよい。
【0030】
前記位置保持機構は、前記第1の方向において固定されている第1の固定部材と、前記第1の固定部材と前記第1の移動部材との間に前記第1の方向に沿って延在するように配置される1以上の第1のばねを含んでもよい。
【0031】
前記第1の固定部材は、前記第1の方向に直交し前記第1の方向における第1の側に向けられる第1の固定側支持面と、前記第1の方向に直交し前記第1の方向における前記第1の側とは反対側の第2の側に向けられる第2の固定側支持面とを有してもよい。この場合、前記第1の移動部材は、前記第1の方向において前記第1の固定側支持面に対向する第1の移動側支持面と、前記第1の方向において前記第2の固定側支持面に対向する第2の移動側支持面とを有してもよい。また前記第1の固定部材と前記第1の移動部材との間に配置される前記1以上の第1のばねは、前記第1の固定側支持面と前記第1の移動側支持面との間に配置されるコイルばねと、前記第2の固定側支持面と前記第2の移動側支持面との間に配置されるコイルばねとを含んでもよい。
【0032】
前記位置保持機構は、前記第2の方向において固定されている第2の固定部材と、前記第2の固定部材と前記第2の移動部材との間に前記第2の方向に沿って延在するように配置される1以上の第2のばねを含んでもよい。
【0033】
前記第2の固定部材は、前記第2の方向に直交し前記第2の方向における第3の側に向けられる第3の固定側支持面と、前記第2の方向に直交し前記第2の方向における前記第3の側とは反対側の第4の側に向けられる第4の固定側支持面とを有してもよい。この場合、前記第2の移動部材は、前記第2の方向において前記第3の固定側支持面に対向する第3の移動側支持面と、前記第2の方向において前記第4の固定側支持面に対向する第4の移動側支持面とを有してもよい。また前記第2の固定部材と前記第2の移動部材との間に配置される前記1以上の第2のばねは、前記第3の固定側支持面と前記第3の移動側支持面との間に配置されるコイルばねと、前記第4の固定側支持面と前記第4の移動側支持面との間に配置されるコイルばねとを含んでもよい。
【0034】
前記姿勢保持機構は、固定して配置される基体部材と、前記第1の方向において対向するように前記第1の方向に直交して配置される一対の板ばねからなる第1の平行板ばね機構を介して、前記基体部材に対して前記第1の方向に移動可能に接続される第1の移動部材とを含んでもよい。この場合、前記膜厚調整部材は、前記第1の方向において前記第1の移動部材が移動した場合に前記第1の移動部材と一体的に移動するように、前記第1の移動部材に接続されてもよい。
【0035】
前記姿勢保持機構は、固定して配置される基体部材と、前記第2の方向において対向するように前記第2の方向に直交して配置される一対の板ばねからなる第2の平行板ばね機構を介して、前記基体部材に対して前記第2の方向に移動可能に接続される第2の移動部材とを含んでもよい。この場合、前記膜厚調整部材は、前記第2の方向において前記第2の移動部材が移動した場合に前記第2の移動部材と一体的に移動するように、前記第2の移動部材に接続されてもよい。
【0036】
前記第1の平行板ばね機構及び前記第2の平行板ばね機構は、前記位置保持機構として機能してもよい。
【0037】
前記回転体は、円盤状からなり、互いに対向する第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面の間の端面とを有してもよい。この場合、前記端面は、前記液体原料が付着される前記付着面となってもよい。また前記プラズマの発生領域は、前記端面に対する所定の位置に設定されてもよい。また前記端面の前記プラズマの発生領域とは異なる位置に膜厚調整の対象となる膜厚調整領域が設定されてもよい。また前記膜厚調整領域に対向する方向を前記第1の方向とし、前記第1の主面と前記第2の主面との対向方向を前記第2の方向として、前記膜厚調整機構が構成されてもよい。
【0038】
前記膜厚調整部材は、前記第1の方向において前記端面に対向する位置に間隔をあけて配置される主調整面と、前記第2の方向において前記第1の主面に対向する位置に間隔をあけて配置される第1の副整面と、前記第2の方向において前記第2の主面に対向する位置に間隔をあけて配置される第2の副調整面とを含んでもよい。この場合、前記第2の調整基準位置は、前記第1の主面と前記第1の副調整面との距離、及び前記第2の主面と前記第2の副調整面との距離が、ともに所定の第2の距離よりも小さくなる位置であってもよい。
【0039】
前記回転体は、円盤状からなり、互いに対向する第1の主面及び第2の主面と、前記第1の主面及び前記第2の主面の間の端面とを有してもよい。この場合、前記第1の主面は、前記液体原料が付着される前記付着面となってもよい。また前記プラズマの発生領域は、前記第1の主面に対する所定の位置に設定されてもよい。また前記第1の面の前記プラズマの発生領域とは異なる位置に膜厚調整の対象となる膜厚調整領域が設定されてもよい。また前記膜厚調整領域に対向する方向を前記第1の方向とし、前記端面に対向する方向を前記第2の方向として、前記膜厚調整機構が構成されてもよい。
【0040】
前記回転体は、容器状からなり、底面部と、前記底面部の周縁に配置される外壁部とを有してもよい。この場合、前記外壁部の内周面は、前記液体原料が付着される前記付着面となってもよい。また前記プラズマの発生領域は、前記内周面に対する所定の位置に設定されてもよい。前記内周面の前記プラズマの発生領域とは異なる位置に膜厚調整の対象となる膜厚調整領域が設定されてもよい。前記膜厚調整領域に対向する方向を前記第1の方向とし、前記底面部に対向する方向を前記第2の方向として、前記膜厚調整機構が構成されてもよい。
【0041】
前記光源装置は、さらに、エネルギービームを照射するビーム源を具備してもよい。この場合、前記エネルギービームの照射を利用して前記液体原料をプラズマ化して前記放射線を取り出してもよい。
【0042】
前記光源装置は、LPP(Laser Produced Plasma)方式の光源装置、又はLDP(Laser Assisted Discharge Produced Plasma)方式の光源装置として構成されてもよい。
【0043】
本発明の一形態に係る膜厚調整機構は、プラズマを発生させるための液体原料が付着され、回転することで前記プラズマの発生領域に、付着された前記液体原料を供給する回転体に用いられる膜厚調整機構であって、前記膜厚調整部材と、前記支持機構とを具備する。
【発明の効果】
【0044】
以上のように、本発明によれば、プラズマの発生領域におけるプラズマ原料の膜厚を高い精度で調整することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】光源装置に含まれる光源ユニットを主に示す模式図である。
【
図3】光源ユニットの他の構成例を示す模式図である。
【
図4】
図3に示す右側の放電電極、コンテナ、及び膜厚調整機構を示す模式図である。
【
図5】本発明に係る膜厚調整機構の基本原理を説明するための模式図である。
【
図6】第1の実施形態に係る膜厚調整機構を正面から見た場合の図である。
【
図7】膜厚調整機構を左側から見た場合の左側面図である。
【
図8】膜厚調整機構を右側から見た場合の右側面図である。
【
図9】膜厚調整機構を上方側から見た場合の上面図である。
【
図10】膜厚調整機構を下方側から見た場合の底面図である。
【
図11】比較例として挙げる膜厚調整機構を、正面から見た場合の図である。
【
図12】比較例として挙げる膜厚調整機構を、左側から見た場合の左側面図である。
【
図13】放電電極とスキマーとの噛み込みが発生した状態を示す模式図である
【
図14】放電電極とスキマーとの噛み込みが発生した状態を示す模式図である
【
図15】放電電極とスキマーとの噛み込みが発生した状態を示す模式図である
【
図16】放電電極とスキマーとの噛み込みが発生した状態を示す模式図である
【
図17】第2の実施形態に係る膜厚調整機構の模式図である。
【
図18】第3の実施形態に係る膜厚調整機構の模式図である。
【
図19】LPP方式の光源装置に含まれる光源ユニットの一例を示す模式図である。
【
図20】LPP方式の光源装置に含まれる光源ユニットの他の例を示す模式図である。
【
図21】LPP方式の光源装置に含まれる光源ユニットの他の例を示す模式図である。
【
図22】膜厚調整機構を奥行方向の手前側から見た場合の図である。
【
図23】膜厚調整機構を左右方向の左側から見た場合の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0047】
[光源装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る光源装置の構成例を示す模式図である。
図2は、光源装置に含まれる光源ユニットを主に示す模式図である。
【0048】
図1は、光源装置1を設置面から所定の高さの位置で水平方向に沿って切断した場合の模式的な断面を、上方から見た場合の図である。
図1では、光源装置1の構成及び動作を理解しやすいように、断面の構成等を説明する必要のない部分については、断面の図示を省略している。
【0049】
光源装置1は、エネルギービームの照射を利用して液体状(液相)のプラズマ原料をプラズマ化して放射線を取り出すLDP方式の光源装置である。光源装置1は、本発明に係る、液体状のプラズマ原料からプラズマを発生させて放射線を取り出す光源装置の一実施形態となる。
【0050】
光源装置1は、例えば波長30nm以下の硬X線から軟X線(EUV光含む)までの放射線を放出することが可能である。従って光源装置1を、X線発生装置、又はEUV光源装置(EUV放射発生装置)として使用することが可能である。もちろん、他の波長帯域の放射線を出射する光源装置に、本技術を適用することも可能である。
【0051】
本実施形態では、光源装置1は、EUV光源装置として使用される。そして、光源装置1により、波長13.5nmのEUV光が放出される。
【0052】
図1に示すように、光源装置1は、光源部2と、デブリ捕捉部3とを有する。光源部2は、LDP方式に基づいてEUV光を発生させる。デブリ捕捉部3は、光源部2から放射されるEUV光とともに飛散するデブリを捕捉するデブリ低減装置である。光源部2で発生したデブリ、及びデブリ捕捉部3で捕捉されたデブリ等は、デブリ捕捉部3の下方側に配置されるデブリ収容部(図示は省略)に収容される。
【0053】
図1に示すように、光源部2は、チャンバ4と、光源ユニット5とを有する。チャンバ4は、内部で生成されるプラズマPを外部と隔離する。チャンバ4は、プラズマPを生成する光源ユニット5を収容するプラズマ生成室を形成する。
【0054】
チャンバ4は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、プラズマ原料SA,SBを加熱励起するための放電を良好に発生させ、EUV光の減衰を抑制するために、図示しない真空ポンプにより所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。
【0055】
図1及び
図2に示すように、光源ユニット5は、一対の放電電極EA,EB、一対のコンテナCA,CB、一対の膜厚調整機構SKA,SKB、及び一対のモータMA,MBを有する。
【0056】
一対の放電電極EA,EBは、各々が円盤状に構成された電極である。例えば、放電電極EAがカソードとして使用され、放電電極EBがアノードとして使用される。放電電極EA,EBは、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)又はタンタル(Ta)等の高融点金属を用いて構成される。
【0057】
図2に示すように、放電電極EA,EBは、互いに離間した位置に配置され、放電電極EA,EBの周縁部6が近接している。放電電極EA,EBの周縁部6が互いに最も接近した位置が、プラズマPが生成される放電領域Rとなる。本実施形態において放電領域Rは、本技術に係るプラズマPの発生領域の一実施形態となる。
【0058】
なお、放電電極EA,EBの周縁部6とは、円盤状の電極の周縁を形成する部分である。
図2では、各電極の周縁に設けられる帯状の端面7が周縁部6となる。
【0059】
放電電極EAは、モータMAの回転軸JAに連結され、放電電極EAの軸線周りに回転する。放電電極EBは、モータMBの回転軸JBに連結され、放電電極EBの軸線周りに回転する。
【0060】
図1に示すように、モータMA,MBは、チャンバ4の外部に配置され、各モータMA,MBの回転軸JA,JBは、チャンバ4の外部から内部に延びる。回転軸JAとチャンバ4の壁の間の隙間は、シール部材PAで封止され、回転軸JBとチャンバ4の壁の間の隙間は、シール部材PBで封止される。シール部材PA,PBは、例えば、メカニカルシールである。各シール部材PA,PBは、チャンバ4内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸JA,JBを回転自在に支持する。
【0061】
一対のコンテナCA,CBは、各々が液体状のプラズマ原料SA,SBを収容可能なコンテナ(容器)である。プラズマ原料SA,SBは、プラズマPを発生させるための液体原料であり、典型的には液体金属が用いられる。プラズマ原料SA,SBとしては、例えばスズ(Sn)やリチウム(Li)等が用いられる。もちろん他の液体金属が用いられてもよい。またコンテナCA,CBは、導電性材料を用いて構成される。従って、コンテナCAはプラズマ原料SAと通電し、コンテナCBはプラズマ原料SBと通電する。
【0062】
コンテナCAは、放電電極EAの下部が液体状のプラズマ原料SAに浸されるようにプラズマ原料SAを収容する。コンテナCBは、放電電極EBの下部が液体状のプラズマ原料SBに浸されるようにプラズマ原料SBを収容する。従って、放電電極EA,EBの下部には、液体状のプラズマ原料SA,SBが付着する。放電電極EA,EBの下部に付着した液体状のプラズマ原料SA,SBは、放電電極EA,EBの回転に伴って、プラズマPが生成される放電領域Rに輸送される。
【0063】
図2に示すように、コンテナCA,CBには、プラズマ原料供給部8が接続される。そして、プラズマ原料供給部8により、コンテナCA,CBの各々に、プラズマ原料SA,SBが供給される。
【0064】
プラズマ原料供給部8は、例えばプラズマ原料SA,SBとなる液体金属(ここではスズ)を液体の状態を維持したまま貯留するリザーバを有する。このリザーバから各コンテナCA,CBに液体の状態でプラズマ原料SA,SBが供給される。プラズマ原料供給部8は、原料供給部として機能する。
【0065】
一対の膜厚調整機構SKA,SKBは、放電電極EA,EBに付着するプラズマ原料SA,SBの厚みを所定の厚みに調整する。
【0066】
膜厚調整機構SKAは、放電電極EAに対して配置され、放電電極EAに付着したプラズマ原料SAの厚みを放電領域Rに輸送される前に調整する。膜厚調整機構SKBは、放電電極EBに対して配置され、放電電極EBに付着したプラズマ原料SBの厚みを放電領域Rに輸送される前に調整する。これにより、放電領域Rに供給されるプラズマ原料SA,SBの供給量を制御することが可能となる。
【0067】
図1に示すように、光源装置1は、さらに、制御部9と、パルス電力供給部10と、ビーム源(エネルギービーム照射装置)11と、可動ミラー12とを備える。制御部9、パルス電力供給部10、ビーム源11及び可動ミラー12は、チャンバ4の外部に設置される。
【0068】
制御部9は、光源装置1の各部の動作を制御する。例えば、制御部9は、モータMA,MBの回転駆動を制御し、放電電極EA,EBを所定の回転数で回転させる。また、制御部9は、パルス電力供給部10の動作、ビーム源11からエネルギービームとして照射されるレーザビームLBの照射タイミング等を制御する。
【0069】
パルス電力供給部10から延びる2つの給電線QA,QBは、フィードスルーFA,FBを通過して、チャンバ4の内部に配置されたコンテナCA,CBにそれぞれ接続される。フィードスルーFA,FBは、チャンバ4の壁に埋設されてチャンバ4内の減圧雰囲気を維持するシール部材である。
【0070】
コンテナCA,CBは、導電性材料から形成され、各コンテナCA,CBの内部に収容されるプラズマ原料SA,SBもスズなどの導電性材料である。そして、各コンテナCA,CBの内部に収容されているプラズマ原料SA,SBには、放電電極EA,EBの下部がそれぞれ浸されている。従って、パルス電力供給部10からパルス電力がコンテナCA,CBに供給されると、そのパルス電力は、プラズマ原料SA,SBをそれぞれ介して放電電極EA,EBに供給される。
【0071】
ビーム源11は、放電領域Rに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAにレーザビームLBを照射して、当該プラズマ原料SAを気化させる。ビーム源11は、例えば、Nd:YVO4(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate)レーザ装置である。
このとき、ビーム源11は、波長1064nmの赤外領域のレーザビームLBを発する。ただし、ビーム源11は、プラズマ原料SAの気化が可能であれば、レーザビームLB以外のエネルギービームを発する装置であってもよい。
【0072】
ビーム源11から放出されたレーザビームLBは、例えば、集光レンズ13を含む集光手段を介して可動ミラー12に導かれる。集光手段は、放電電極EAのレーザビーム照射位置におけるレーザビームLBのスポット径を調整する。集光レンズ13および可動ミラー12は、チャンバ4の外部に配置される。
【0073】
集光レンズ13で集光されたレーザビームLBは、可動ミラー12により反射され、チャンバ4の側壁4aに設けられた透明窓14を通過して、放電領域R付近の放電電極EAの周縁部6(端面7)に照射される。可動ミラー12の姿勢を調整することにより、放電電極EAにおけるレーザビームLBの照射位置が調整される。
【0074】
放電領域R付近の放電電極EAの端面7にレーザビームLBを照射するのを容易にするため、放電電極EA,EBの軸線は平行ではない。回転軸JA,JBの間隔は、モータMA,MB側が狭く、放電電極EA,EB側が広くなっている。
【0075】
これにより、放電電極EA,EBの対向面側を接近させつつ、放電電極EA,EBの対向面側とは反対側をレーザビームLBの照射経路から退避させることができ、放電領域R付近の放電電極EAの端面7にレーザビームLBを照射するのを容易にすることができる。
【0076】
放電電極EBは、放電電極EAと可動ミラー12との間に配置される。可動ミラー12で反射されたレーザビームLBは、放電電極EBの外周面付近を通過した後、放電電極EAの外周面に到達する。このとき、レーザビームLBが放電電極EBで遮光されないように、放電電極EBは、放電電極EAよりも、モータMB側の方向(
図1の左側)に退避される。
【0077】
放電領域R付近の放電電極EAの端面7に付着された液体状のプラズマ原料SAは、レーザビームLBの照射により気化され、気体状(気相)のプラズマ原料SAとして放電領域Rに供給される。
【0078】
放電領域RでプラズマPを発生させるため(気体状のプラズマ原料SAをプラズマ化するため)、パルス電力供給部10は、放電電極EA,EBにパルス電力を供給する。そして、レーザビームLBの照射により放電領域Rに気体状のプラズマ原料SAが供給されると、放電領域Rにおける放電電極EA,EB間で放電が生じる。
【0079】
放電電極EA、EB間で放電が発生すると、放電領域Rにおける気体状のプラズマ材料SAが電流により加熱励起されて、プラズマPが発生する。生成されたプラズマPから放射されるEUV光は、チャンバ4の側壁4bに設けられた貫通孔である第1窓部15を通ってデブリ捕捉部3へ入射する。
【0080】
デブリ捕捉部3は、チャンバ4の側壁4bに配置された接続チャンバ16を有する。接続チャンバ16は、剛体、例えば、金属製の真空筐体であり、その内部は、チャンバ4と同様、EUV光の減衰を抑制するために所定圧力以下の減圧雰囲気に維持される。接続チャンバ16は、チャンバ4と利用装置17(例えばリソグラフィ装置やマスク検査装置)との間に接続される。
【0081】
接続チャンバ16の内部空間は、第1窓部15を介してチャンバ4と連通する。接続チャンバ16は、第1窓部15から入射したEUV光を利用装置17へ導入する光取出し部としての第2窓部18を有する。第2窓部18は、接続チャンバ16の側壁16aに形成された所定形状の貫通孔である。放電領域RのプラズマPから放出されたEUV光は、第1窓部15及び第2窓部18を通じて利用装置17に導入される。
【0082】
なお、
図1に示すように、接続チャンバ16の内部空間には、遮熱板19が配置される。第1窓部15から入射するEUV光は、
図1の遮熱板19に設けられた開口(図示は省略)により進行方向が制限されて、第2窓部18に向かって進行する。
【0083】
放電領域Rにて発生するプラズマPからは、EUV光とともにデブリが高速で様々な方向に放散される。デブリは、プラズマ原料SA,SBであるスズ粒子及びプラズマPの発生に伴いスパッタリングされる放電電極EA、EBの材料粒子を含む。
【0084】
これらのデブリは、プラズマPの収縮および膨張過程を経て、大きな運動エネルギーを得る。すなわち、プラズマPから発生するデブリは、高速で移動するイオン、中性粒子及び電子を含む。このようなデブリが利用装置17に到達すると、利用装置17内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、性能を低下させることがある。そのため、デブリが利用装置17に侵入しないようにするため、デブリを捕捉するデブリ捕捉機構が、接続チャンバ16内に設けられる。
【0085】
図1に示す例では、デブリ捕捉機構として、複数のホイルを有し、回転することで複数のホイルをデブリと能動的に衝突させる回転式ホイルトラップ20が配置される。回転式ホイルトラップ20は、接続チャンバ16の内部にて、接続チャンバ16から利用装置17へと進行するEUV光の光路上に配置される。
【0086】
回転式ホイルトラップ20に代えて、複数のホイルの位置が固定された固定式ホイルトラップが配置されてもよい。あるいは、回転式ホイルトラップ20及び固定式ホイルトラップの双方が設けられてもよい。
【0087】
図3は、光源ユニット5の他の構成例を示す模式図である。
図3に示す光源ユニット5は、放電電極EA,EB、液体状のプラズマ原料SA,SBを収容するコンテナCA,CB、各放電電極EA,EBに付着したプラズマ原料SA,SBの厚みを調整する膜厚調整機構SKA,SKB、及び放電電極EA,EBを回転駆動するためのモータMA,MB等の要素が1つのユニット基板22上に組み込まれてユニット化されている。ユニット化された光源ユニット5は、光源装置1に取付け可能に構成される。
【0088】
チャンバ4内でプラズマPを適正に発生させるためには、放電電極EA,EB、コンテナCA,CB、膜厚調整機構SKA,SKB、モータMA,MB等の要素を所定の位置関係となるように調整して配置することが必要となる。例えば、これらの要素を一つずつ調整しながら光源装置1に取り付けてゆく作業は容易ではなく、ある程度の熟練技巧が必要となる。また、各要素を個別に取り付ける場合、作業時間が長くなる可能性がある。また他の要素を接続するためにも時間がかかる。
【0089】
図3に示すように、これら多数の要素をユニット基板22に組み込んで、ユニット化することにより、各要素を1つずつ調整するといった必要がなくなり、光源装置1のメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【0090】
ユニット基板22は、正面から見たおおよその外形が円形状となり、正面側に凹部22aが構成されている。当該凹部22a内に、一対の放電電極EA,EBと、一対のコンテナCA,CBとが支持される。
【0091】
またユニット基板22は、光源装置1のチャンバ4の側壁に設けられた取付け用の開口を外側から塞ぐ蓋として構成される。例えば、
図1に示す光源装置1を例に挙げると、チャンバ4の左側の側壁4cに、取付け用の開口が形成される。当該開口に、凹部22aがチャンバ4の内部空間に収まる向きで、ユニット基板22が取付けられる。これにより、一対の放電電極EA,EBと、一対のコンテナCA,CBとがチャンバ4内に収まるように支持される。
【0092】
ユニット基板22は、チャンバ4の側壁4cに外側から装着され、チャンバ4の側壁4cの一部として機能するとともに、チャンバ4内に放電電極EA,EBやコンテナCA,CBを配置する支持部材として機能する。
【0093】
図3に示す光源ユニット5を正面から見た場合に、凹部22aの底面22bは正面方向に対して垂直に構成される。当該底面22bに対して、放電電極EA,EBが斜めに配置される。具体的には、
図1に示す配置構成となるように、放電電極EA,EBの周縁部6の互いに接近する側が、凹部22aの底面22bから最も離れるように配置される。また、レーザビームLBが放電電極EBで遮光されないように、放電電極EBは、放電電極EAよりも、凹部22aの底面22b側に退避されて配置される。
【0094】
図4は、
図3に示す光源ユニット5の右側に配置される放電電極EA、コンテナCA、及び膜厚調整機構SKAを示す模式図である。
図4は、放電電極EAを正面から見た場合の図であり、放電電極EAを回転駆動するモータMAの回転軸JAの軸方向に沿って見た場合の図となる。
【0095】
以下、放電電極EAを正面から見た場合の左右方向をX方向とし、X軸の正側を右側、負側を左側とする。また、放電電極EAの回転軸方向をY方向とし、Y軸の正側を奥側、負側を手前側とする。また、上下方向をZ方向として、Z軸の正側を上方側、負側を下方側とする。もちろん、本技術の適用について、放電電極EA(光源ユニット5)が配置される向き等が限定される訳ではない。
【0096】
図4に示すように、放電電極EAは、手前側に向いている第1の主面24aと、奥側に向いている第2の主面24b(
図7参照)と、第1の主面24a及び第2の主面24bの間の端面7とを有する。第1の主面24a及び第2の主面24bは、回転軸方向(Y方向)に沿って互いに対向する。
【0097】
図4に示す例では、放電電極EAの端面7の左端部の位置が、レーザビームLBの照射位置25として設定される。当該レーザビームLBの照射位置25が、プラズマPの発生領域である放電領域Rとなる。
【0098】
コンテナCAは、円盤状の放電電極EAが挿入されるスリット型の容器からなる。コンテナCAは、放電電極EAの第1の主面24aと対向する第1の側壁26aと、放電電極EAの第2の主面24bと対向する第2の側壁26b(
図3参照)とを有する。またコンテナCAは、第1の側壁26a及び第2の側壁26bの間に配置され、放電電極EAの端面7と対向する端面26cを有する。
【0099】
図4に示すように、コンテナCAを正面から見た場合に、第1の側壁26aのおおよその形状はL字を左右反転させた形状となる。第1の側壁26aは、放電電極EAの下方側の部分と、右側の部分とを覆うようにして配置される。
【0100】
コンテナCAを正面から見た場合に、第2の側壁26bは、第1の側壁26aと等しい外形を有する。コンテナCAを正面から見た場合に、コンテナCAの端面26cは、放電電極EAの端面7に沿うように円形状で構成される。コンテナCAの端面26cは、放電電極EAの左端部から端面7に沿って下方側に移動した位置から、放電電極EAの右側の上方側の位置までの領域にわたって構成される。
【0101】
図3に示すように、第1の側壁26aと第2の側壁26bとの間には、スリット27が形成される。放電電極EAは、第1の側壁26aと第2の側壁26bとにより挟まれるように、スリット27に挿入される。また、放電電極EAは、第1の側壁26a、第2の側壁26b、及び端面26cに接触することなく、所定の間隔(クリアランス)をあけて配置される。
【0102】
図示は省略しているが、コンテナCAのスリット27の下方側の空間には、液体状のプラズマ原料SAが供給される。従って、スリット27に挿入された放電電極EAの下方側の部分は、液体状のプラズマ原料SAに浸漬される。これにより、放電電極EAの第1の主面24aの下方側の部分、第2の主面24bの下方側の部分、及び端面7の下方側の部分に、液体状のプラズマ原料SAが付着する。
【0103】
モータMAが駆動すると、円盤状の放電電極EAが、回転軸JAを中心に左回りに回転する。これにより、液体状のプラズマ原料SAが付着した部分が放電領域Rに移動する。この結果、プラズマ原料SAが放電領域Rに供給される。
【0104】
図4では、回転する放電電極EAに付着するプラズマ原料SAの領域が、グレーの色で模式的に図示されている。放電電極EAが回転することで、第1の主面24aの端面7に沿った外周側の領域、第2の主面24bの端面7に外周側の領域、及び端面7の全体に、プラズマ原料SAが付着する。
【0105】
プラズマ原料SAが付着する各領域において、プラズマ原料SAの付着状態が一定という訳ではない。例えば、コンテナCA内に収容されたプラズマ原料SAに浸漬されることで付着されたプラズマ原料SAは、膜厚調整機構SKAにより膜厚が調整されて、放電領域Rに輸送される。放電領域RにてプラズマPが発生すると、放電電極EAに付着しているプラズマ原料SAは消費される。
【0106】
放電電極EAが回転することで、浸漬によるプラズマ原料SAの付着、及び放電領域RにおけるプラズマPの発生(プラズマ原料SAの消費)が、連続的に繰り返される。また、膜厚調整機構SKAにより、長時間安定して、調整された膜厚で、放電領域Rにプラズマ原料を供給することが可能である。
【0107】
以下、放電電極EAのプラズマ原料SAが付着する面を、付着面28と記載する。また、第1の主面24aのプラズマ原料SAが付着する面を第1の付着面28aとし、第2の主面24bのプラズマ原料SAが付着する面を第2の付着面28b(
図7参照)とする。また、全体にプラズマ原料SAが付着する端面7については、端面側付着面28cと記載する。
【0108】
図4に示すように、コンテナCAの右端部には、左右方向(X方向)に延在する長方形状の切り欠き29が、周縁部から内部側にわたって形成される。当該切り欠き29の部分において、放電電極EAの右端部の部分が露出される。
【0109】
膜厚調整機構SKAは、コンテナCAに形成された切り欠き29の上方側の位置に設置される。そして、放電電極EAの右端部の位置にて、付着面28に付着するプラズマ原料SAの膜厚を調整する。以下、膜厚調整機構SKAについて、詳しく説明する。
【0110】
[膜厚調整機構の基本原理]
図5は、本発明に係る膜厚調整機構SKAの基本原理を説明するための模式図である。なお、膜厚調整機構SKBも、以下に説明する膜厚調整機構SKAと同じ構成を有する。
【0111】
膜厚調整機構SKAは、本実施形態に係る光源装置1のような、液体状のプラズマ原料SAからプラズマPを発生させて放射線を取り出す光源装置に適用することが可能である。また膜厚調整機構SKAは、放電電極EAのような、液体状のプラズマ原料SAが付着され、回転することでプラズマPの発生領域である放電領域Rに、付着された液体状のプラズマ原料SAを供給する回転体に用いることが可能である。なお放電電極EAは、本発明に係る回転体の一実施形態である。
【0112】
図5に示すように、膜厚調整機構SKAは、膜厚調整部材30と、支持機構31とを有する。膜厚調整部材30は、放電電極EAの液体状のプラズマ原料SAが付着される付着面28(端面側付着面28c)に対向する位置に間隔をあけて配置される。支持機構31は、端面側付着面28cに対向する対向方向において移動可能となるように膜厚調整部材30を支持する。
【0113】
本実施形態では、端面側付着面28cの右端部の位置が、膜厚調整の対象となる膜厚調整領域32として設定される。すなわち、端面側付着面28cの所定の位置に設定される放電領域Rとは異なる位置(回転の上流側)に、膜厚調整領域32が設定される。そして、膜厚調整領域32に対向する方向である左右方向(X方向)が、対向方向となる。対向方向は、膜厚調整領域32の法線方向とも一致する。
【0114】
支持機構31は、左右方向(X方向)に沿って、放電電極EAに近付く向き(左側の向き)、及び放電電極EAから遠ざかる向き(右側の向き)の、両方の向きにて膜厚調整部材30が移動可能なように、膜厚調整部材30を支持する。
【0115】
図5に示すように、支持機構31は、位置保持機構33と、姿勢保持機構34とを有する。位置保持機構33は、左右方向(X方向)において端面側付着面28cから第1の距離D1離れた状態となる第1の調整基準位置から移動する膜厚調整部材30を第1の調整基準位置に戻す。
【0116】
すなわち位置保持機構33は、膜厚調整部材30が左右方向(X方向)に沿って、第1の調整基準位置から放電電極EAに近付く向きに移動した場合、膜厚調整部材30を放電電極EAから遠ざかる向きに移動させて、第1の調整基準位置に戻す。また、位置保持機構33は、膜厚調整部材30が左右方向(X方向)に沿って、第1の調整基準位置から放電電極EAに対して遠ざかる向きに移動した場合、膜厚調整部材30を放電電極EAに近付く向きに移動させて、第1の調整基準位置に戻す。
【0117】
図5に示すように、膜厚調整部材30は、膜厚調整領域32に対向して配置される主調整面35を有する。主調整面35は、左右方向(X方向)に直交する平面形状を有する。当該主調整面35が膜厚調整領域32から第1の距離D1離れた状態となる位置が、第1の調整基準位置となる。膜厚調整部材30が第1の調整基準位置に配置されている状態を、膜厚調整部材30の調整基準状態と呼ぶことも可能である。
【0118】
第1の距離D1のサイズは、放電領域RのレーザビームLBの照射位置25にて実現させたいプラズマ原料SAの膜厚に基づいて設定される。典型的には、実現させたいプラズマ原料SAの膜厚と等しいサイズとなるように、第1の距離D1が設定される。例えば、第1の距離D1として、10μm程度の大きさが設定される。もちろんこの値に限定される訳ではない。
【0119】
図5に示すように、光源装置1の駆動時には放電電極EAが回転し、膜厚調整領域32にて膜厚調整部材30の主調整面35により、プラズマ原料SAの膜厚が第1の距離D1に調整される。
【0120】
姿勢保持機構34は、左右方向(X方向)において移動する膜厚調整部材30の姿勢を保持する。本実施形態では、姿勢保持機構34により、端面側付着面28cの膜厚調整領域32に対して、主調整面35の姿勢が保持される。すなわち、主調整面35が左右方向(X方向)に対して直交した状態で、左右方向(X方向)に沿って直線的に移動可能(直動可能)なように、膜厚調整部材30が支持される。
【0121】
[膜厚調整機構の具体的な構成例]
(第1の実施形態)
図6~
図10を参照して、膜厚調整機構SKAの具体的な構成例について説明する。
図6は、コンテナCAに設置された膜厚調整機構SKAを正面から見た場合の図である。
図7は、膜厚調整機構SKAを左側から見た場合の左側面図である。
図7では、左側から見た場合の放電電極EAの一部が、断面で図示されている。具体的には、
図4に示す付着面28(第1の付着面28a及び第2の付着面28b)の部分が図示されている。
【0122】
図8は、膜厚調整機構SKAを右側から見た場合の右側面図である。
図8では、左側から見た場合の放電電極EAの一部が図示されている。
図9は、膜厚調整機構SKAを上方側から見た場合の上面図である。
図9では、上方側から見た場合の放電電極EAの一部が、断面で図示されている。具体的には、
図5に示す対向方向(X方向)に沿って放電電極EAを切断した場合の断面の一部が図示されている。
【0123】
図10は、膜厚調整機構SKAを下方側から見た場合の底面図である。
図10では、下方側から見た場合の放電電極EAの一部が、断面で図示されている。具体的には、
図5に示す対向方向(X方向)に沿って放電電極EAを切断した場合の断面の一部が図示されている。
【0124】
図6~
図10に示すように、膜厚調整機構SKAは、基体部材37と、X方向移動部材38と、Y方向移動部材39と、スキマー支持部材40と、スキマー41とを有する。また膜厚調整機構SKAは、複数の接続板42と、複数のボルト43と、複数のナット44と、複数のコイルばね45とを有する。
【0125】
[基体部材、X方向移動部材、Y方向移動部材]
基体部材37は、放電電極EAに対して所定の位置関係となるように、放電電極EAとは別の物体に固定して配置される。本実施形態では、基体部材37は、コンテナ側部材48と、スキマー側部材49により構成される。
【0126】
図6及び
図7等に示すように、コンテナ側部材48のおおよその形状は平板形状であり、回転軸方向(Y方向)に直交する向き、すなわちXZ平面方向と平行となる向きで配置される。コンテナ側部材48を正面から見た場合のおおよその外形は矩形状となり、コンテナCAの第1の側壁26aに形成された切り欠き29の上方側の部分に接続されて固定される。
【0127】
なお本開示における部材同士の「接続」は、接続対象となる部材に対して直接的に接続する場合に限定されず、物理的な他の部材を介して接続する場合を含むものとする。例えば、部材Aと部材Bとの接続は、部材Aと部材Bとを直接的に接続する場合と、他の部材Cを介在させて、部材Cに部材A及び部材Bの各々を接続し、結果的に部材A及び部材Bが接続される形態も含まれる。例えば、部材Aを移動させた場合に、ともに移動する部材は、直接的及び間接的を問わず、部材Aに接続された部材といえる。
【0128】
図7及び
図9等に示すように、スキマー側部材49のおおよその形状は平板形状であり、上下方向(Z方向)に直交する向き、すなわちXY平面方向と平行となる向きで配置される。スキマー側部材49を上方から見た場合のおおよその外形は矩形状となり、奥側の側面が、コンテナ側部材48の表側に接続されて固定される。
【0129】
スキマー側部材49の下方側の面には、左右方向(X方向)に沿って延在するように、第1のレール溝51が形成される。第1のレール溝51は、左右方向(X方向)から見た場合の断面形状が、下辺が上辺よりもサイズが小さい台形状となるように形成される。すなわち、第1のレール溝51は、下方側の開口部分の回転軸方向(Y方向)における幅が、上方側の底面部の幅よりも小さくなるように形成される。
【0130】
図9に示すように、スキマー側部材49の手前側の側面の左右方向(X方向)における中央部分には、手前側に突出する突出部52が形成される。突出部52は、平板形状からなり、左右方向(X方向)に垂直となる向きで形成される。突出部52は、左側に向けられる左側主面52aと、右側に向けられる右側主面52bとを有する。左側主面52a及び右側主面52bの各々には、コイルばね45を支持するばね支持部53a及び53bが取付けられる。
【0131】
図6及び
図7等に示すように、X方向移動部材38のおおよその形状は平板形状であり、上下方向(Z方向)に直交する向き、すなわちXY平面方向と平行となる向きで配置される。X方向移動部材38を上方から見た場合のおおよその外形は矩形状となる。
【0132】
図9に示すように、X方向移動部材38の左右方向(X方向)における幅は、スキマー側部材49と略等しくなる。X方向移動部材38の回転軸方向(Y方向)における幅は、スキマー側部材49の奥側の面から突出部52の手前側の先端までのサイズと略等しくなる。従って、上方から見た場合に、スキマー側部材49の突出部52の左右の部分には、X方向移動部材38の上方側の面が露出している。
【0133】
X方向移動部材38の上方側の面には、左右方向(X方向)に沿って延在するように、第1のレール突起54が形成される。第1のレール突起54は、左右方向(X方向)から見た場合の断面形状が、スキマー側部材49の下方側の面に形成された第1のレール溝51と等しくなる。
【0134】
第1のレール突起54は、第1のレール溝51に摺動可能に嵌め込まれる。従って、X方向移動部材38は、第1のレール溝51及び第1のレール突起54を介して、スキマー側部材49に対して左右方向(X方向)に移動可能に接続される。X方向移動部材38は、姿勢を維持しながら左右方向(X方向)に沿って直線的に移動することが可能となる。X方向移動部材38を、第1の直動ステージと呼ぶことも可能である。
【0135】
なお回転軸方向(Y方向)に関しては、X方向移動部材38は、スキマー側部材49に対して移動することはできない。従って、スキマー側部材49は、回転軸方向(Y方向)において固定されている部材となる。
【0136】
図6に示すように、X方向移動部材38の下方側の面には、回転軸方向(Y方向)に沿って延在するように、第2のレール溝55が形成される。第2のレール溝55は、回転軸方向(Y方向)から見た場合の断面形状が、下辺が上辺よりもサイズが小さい台形状となるように形成される。すなわち、第2のレール溝55は、下方側の開口部分の回転軸方向(Y方向)における幅が、上方側の底面部の幅よりも小さくなるように形成される。
【0137】
図7等に示すように、スキマー側部材49の第1のレール溝51が形成されない領域の厚み(Z方向におけるサイズ)と、X方向移動部材38の第1のレール突起54及び第2のレール溝55が形成されない領域の厚みとは、互いに略等しい。
【0138】
図6及び
図7等に示すように、Y方向移動部材39のおおよその形状は平板形状であり、上下方向(Z方向)に直交する向き、すなわちXY平面方向と平行となる向きで配置される。Y方向移動部材39を上方から見た場合のおおよその外形は矩形状となる。
【0139】
図10に示すように、Y方向移動部材39の回転軸方向(Y方向)における幅は、X方向移動部材38と略等しくなる。Y方向移動部材39の左右方向(X方向)における幅は、X方向移動部材38と比べて、後に説明する突出部57の長さ分だけ小さくなる。従って、下方から見た場合に、Y方向移動部材39の突出部57の上下の部分には、X方向移動部材38の下方側の面が露出している。
【0140】
Y方向移動部材39の上方側の面には、回転軸方向(Y方向)に沿って延在するように、第2のレール突起56が形成される。第2のレール突起56は、回転軸方向(Y方向)から見た場合の断面形状が、X方向移動部材38の下方側の面に形成された第2のレール溝55と等しくなる。
【0141】
第2のレール突起56は、第2のレール溝55に摺動可能に嵌め込まれる。従って、Y方向移動部材39は、第2のレール溝55及び第2のレール突起56を介して、X方向移動部材38に対して回転軸方向(Y方向)に移動可能に接続される。Y方向移動部材39は、姿勢を維持しながら回転軸方向(Y方向)に沿って直線的に移動することが可能となる。Y方向移動部材39を、第2の直動ステージと呼ぶことも可能である。
【0142】
左右方向(X方向)に関しては、Y方向移動部材39は、X方向移動部材38に対して移動することはできない。例えば、X方向移動部材38が左右方向(X方向)移動した場合には、Y方向移動部材39はX方向移動部材38とともに移動する。すなわち、Y方向移動部材39は、左右方向(X方向)においてX方向移動部材38が移動した場合に、X方向移動部材38と一体的に移動するように、X方向移動部材38に接続される。
【0143】
図6及び
図7等に示すように、X方向移動部材38の第1のレール突起54及び第2のレール溝55が形成されない領域の厚み(Z方向におけるサイズ)と、Y方向移動部材39の第2のレール突起56が形成されない領域の厚みとは、互いに略等しい。
【0144】
図8及び
図10等に示すように、Y方向移動部材39の右側の面の回転軸方向(Y方向)における中央部分には、右側に突出する突出部57が形成される。突出部57は、平板形状からなり、回転軸方向(Y方向)に垂直となる向きで形成される。突出部57の左右方向(X方向)におけるサイズは、スキマー側部材49に設けられる突出部52の回転軸方向(Y方向)におけるサイズと等しい。
【0145】
突出部57は、手前側に向けられる手前側主面57aと、奥側に向けられる奥側主面57bとを有する。手前側主面57a及び奥側主面57bの各々には、コイルばね45を支持するばね支持部58a及び58bが取付けられる。
【0146】
[スキマー支持部材、スキマー]
スキマー支持部材40は、Y方向移動部材39の下方側の面に接続されて固定される。
図7及び
図10等に示すように、スキマー支持部材40は、回転軸方向(Y方向)に沿って延在する直方体形状の部材である。
【0147】
スキマー支持部材40の上方側の面が、Y方向移動部材39の下方側の面に接続されて固定される。
図10等に示すように、スキマー支持部材40は、Y方向移動部材39の下方側の面の略中央の位置から回転軸方向(Y方向)に沿って奥側に延在するように配置される。
【0148】
スキマー41は、スキマー支持部材40の奥側の側面に接続されて固定される。
図9及び
図10等に示すように、上下方向(Z方向)から見た場合に、スキマー41はスリット60を内部に含むU字形状を有する。スキマー41のスリット60に、放電電極EAが挿入される。
【0149】
スキマー41は、スリット60の内周面を構成する、主調整面35と、第1の副調整面61aと、第2の副調整面61bとを有する。主調整面35は、左右方向(X方向)において、放電電極EAの端面側付着面28cの膜厚調整領域32に対向する位置に、第1の距離D1をあけて配置される。左右方向(X方向)において、膜厚調整領域32と主調整面35との間隔が第1の距離D1となる位置が、第1の調整基準位置となる。
【0150】
このように本実施形態では、U字形状からなるスキマー41の内周側の面により、
図5に示す主調整面35が実現される。なお、スキマー41は、
図5に示す膜厚調整部材30として機能する。
【0151】
第1の副調整面61aは、回転軸方向(Y方向)において、放電電極EAの第1の主面24aの第1の付着面28aに対向する位置に、距離D2の間隔をあけて配置される。第2の副調整面61bは、回転軸方向(Y方向)において、放電電極EAの第2の主面24bの第2の付着面28bに対向する位置に、距離D3の間隔をあけて配置される。
【0152】
本実施形態に係る膜厚調整機構SKAでは、第1の副調整面61aにより、放電電極EAの第1の主面24aに付着するプラズマ原料SAの膜厚が調整される。また第2の副調整面61bにより、放電電極EAの第2の主面24aに付着するプラズマ原料SAの膜厚が調整される。
【0153】
放電電極EAが回転すると、第1の主面24a及び第2の主面24bに付着するプラズマ原料SAは、遠心力により、放電電極EAの端面7側に移動する。本実施形態では、スキマー41により、第1の主面24a及び第2の主面24bに付着するプラズマ原料SAの膜厚を調整することが可能であるので、放電電極EAの端面7側へのプラズマ原料SAの移動による端面7上での膜厚に対する影響を十分に抑えることが可能となる。
【0154】
図5を参照して説明したように、左右方向(X方向)において、第1の調整基準位置が設定される。上記したように、本実施形態では、左右方向(X方向)において、膜厚調整領域32と主調整面35との間隔が第1の距離D1となる位置が、第1の調整基準位置となる。
【0155】
本実施形態では、回転軸方向(Y方向)において、第2の調整基準位置が設定される。第2の調整基準位置は、放電電極EAの第1の付着面28aと第1の副調整面61aとの間の距離D2、及び放電電極EAの第2の付着面28bと第2の副調整面61bとの間の距離D3とが、所望のサイズとなる位置が設定される。
【0156】
例えば、第2の調整基準位置として、距離D2及び距離D3が、ともに所定の第2の距離よりも小さくなる位置が設定される。典型的には、距離D2及び距離D3が、互いに等しくなる位置(D2=D3となる位置)が、第2の調整基準位置として設定される。
【0157】
距離D2のサイズは、第1の付着面28aにおいて実現させたいプラズマ原料SAの膜厚に基づいて設定される。距離D3のサイズは、第2の付着面28bにおいて実現させたいプラズマ原料SAの膜厚に基づいて設定される。典型的には、実現させたプラズマ原料SAの膜厚となるように、距離D2及び距離D3が設定される。距離D2及び距離D3の両方、又は一方が、第1の距離D1と等しくなってもよい。
【0158】
本実施形態では、
図5に示す位置保持機構33が、左右方向(X方向)に直交する回転軸方向(Y方向)において、移動可能となるように、スキマー41を支持する。また位置保持機構33は、回転軸方向(Y方向)において、第2の調整基準位置から移動するスキマー41を、第2の調整基準位置に戻す。
【0159】
また
図5に示す姿勢保持機構34は、回転軸方向(Y方向)において移動するスキマー41の姿勢を保持する。すなわち本実施形態では、支持機構31により、左右方向(X方向)及び回転軸方向(Y方向)の2方向において、調整基準位置での位置保持機能と、スキマー41の姿勢保持機能が発揮される。
【0160】
なお、
図6~
図10では、左右方向(X方向)においてスキマー41が第1の調整基準位置にある状態、及び回転軸方向(Y方向)においてスキマー41が第2の調整基準位置にある状態が図示されている。
【0161】
[コイルばねの取付け]
本実施形態では、4個の接続板42、8個のボルト43、及び4個のナット44を用いて、4個のコイルばね45が取付けられる。
【0162】
図6等に示すように、接続板42は、平板形状からなり、互いに対向する2つの主面と、側面とを有する。
図6等に示すように、接続板42の主面を正面から見た場合の形状は、長方形状となる。
【0163】
図7及び
図8に示すように、接続板42の長辺方向のサイズは、スキマー側部材49の第1のレール溝51が形成されない領域の厚みと、X方向移動部材38の第1のレール突起54及び第2のレール溝55が形成されない領域の厚みとを足し合わせたサイズと略等しい。従って、接続板42の長辺方向のサイズは、X方向移動部材38の第1のレール突起54及び第2のレール溝55が形成されない領域の厚みと、Y方向移動部材39の第2のレール突起56が形成されない領域の厚みとを足し合わせたサイズと略等しいともいえる。
【0164】
接続板42の短辺方向のサイズは、スキマー側部材49に設けられる突出部52の回転軸方向(Y方向)におけるサイズ(Y方向移動部材39に設けられる突出部57の左右方向(X方向)にけるサイズと等しい)よりも、若干小さい。
【0165】
本実施形態では、複数のコイルばね45は、同じ種類(同じ特性)のものが用いられる。すなわち、複数のコイルばね45の各々は、同じ長さで構成されており、同じ弾性力を有する。
【0166】
図6及び
図9等に示すように、X方向移動部材38の左側の側面の手前側の部分、及び右側の側面の手前側の部分に、接続板42a及び42bがそれぞれ接続される。接続板42a及び42bは、長辺方向が上下方向(Z方向)に沿うように、ボルト43a及び43bを介してX方向移動部材38に接続される。
【0167】
接続板42a及び42bは、下端の位置が、X方向移動部材38の下方側の面と略合わされて、X方向移動部材38に接続される。従って、接続板42a及び42bの上方側の半分の部分は、X方向移動部材38の上方側の面よりも上方側に突出し、スキマー側部材49の上方側の面の位置付近まで延在する。
【0168】
図6に示すように、X方向移動部材38の左側の側面に接続された接続板42aの上方側の半分の部分は、スキマー側部材49に形成された突出部52と、左右方向(X方向)に沿って対向する。以下、接続板42aの上方側の半分の部分の、突出部52の左側主面52aと対向する面を、ばね支持面63aと記載する。
【0169】
図6に示すように、X方向移動部材38の右側の側面に接続された接続板42bの上方側の半分の部分は、スキマー側部材49に形成された突出部52と、左右方向(X方向)に沿って対向する。以下、接続板42bの上方側の半分の部分の、突出部52の右側主面52bと対向する面を、ばね支持面63bと記載する。
【0170】
図6に示すように、ばね支持面63aには、左側からボルト43cが挿入され、右側からナット44aが取付けられる。ばね支持面63bには、右側からボルト43dが挿入され、左側からナット44bが取付けられる。
【0171】
接続板42a及び42bは、X方向移動部材38が左右方向(X方向)に沿って移動した場合に、X方向移動部材38と一体的に移動する。もちろん、接続板42a及び42bに取付けられるボルトやナットもX方向移動部材38と一体的に移動する。
【0172】
なお、接続板42a及び42bの奥側の端部は、スキマー側部材49の手前側の側面よりも手前側に位置する。従って、X方向移動部材38が左右方向(X方向)に沿って移動する際に、接続板42a及び42bと、スキマー側部材49とが干渉することはない。
【0173】
図6及び
図9に示すように、スキマー側部材49の突出部52の左側主面52aと、X方向移動部材38の左側の側面に接続される接続板42aのばね支持面63aとの間には、コイルばね45aが配置される。コイルばね45aは、ナット44a及びばね支持部53aにより支持される。
【0174】
スキマー側部材49の突出部52の右側主面52bと、X方向移動部材38の左側の側面に接続される接続板42bのばね支持面63bとの間には、コイルばね45bが配置される。コイルばね45bは、ナット44b及びばね支持部53bにより支持される。
【0175】
なお部材同士を接続するための構成や、ばねを支持するための構成として、ボルト及びナットを用いた構成に限定されず、任意の構成が採用されてよい。例えば、部材に対して他の部材を固定する固定ジグや接着剤等、任意の部品が用いられてよい。
【0176】
図6に示すように、第1の調整基準位置となる場合には、突出部52の左側主面52aと接続板42aのばね支持面63aとの間の距離と、突出部52の右側主面52bと接続板42bのばね支持面63bとの間の距離とが互いに等しくなる。従って、第1の調整基準位置の状態では、コイルばね45a及び45bの長さは、互いに等しくなる。
【0177】
X方向移動部材38が左右方向(X方向)に沿って第1の調整基準位置から左側に移動した場合、左側のコイルばね45aが伸長し、右側のコイルばね45bが圧縮する。この結果、X方向移動部材38に対して、右側に向かって力が作用する。これにより、X方向移動部材38が第1の調整基準位置に戻される。
【0178】
X方向移動部材38が左右方向(X方向)に沿って第1の調整基準位置から右側に移動した場合、左側のコイルばね45aが圧縮し、右側のコイルばね45bが伸長する。この結果、X方向移動部材38に対して、左側に向かって力が作用する。これにより、X方向移動部材38が第1の調整基準位置に戻される。
【0179】
図8及び
図10等に示すように、X方向移動部材38の手前側の側面の右側の部分、及び奥側の側面の右側の部分に、接続板42c及び42dがそれぞれ接続される。接続板42c及び42dは、長辺方向が上下方向(Z方向)に沿うように、ボルト43e及び43fを介してX方向移動部材38に接続される。
【0180】
接続板42c及び42dは、上端の位置が、X方向移動部材38の上方側の面と略合わされて、X方向移動部材38に接続される。従って、接続板42c及び42dの下方側の半分の部分は、X方向移動部材38の下方側の面よりも下方側に突出し、Y方向移動部材39の下方側の面の位置付近まで延在する。
【0181】
図8に示すように、X方向移動部材38の手前側の側面に接続された接続板42cの下方側の半分の部分は、Y方向移動部材39に形成された突出部57と、回転軸方向(Y方向)に沿って対向する。以下、接続板42cの下方側の半分の部分の、突出部57の手前側主面57aと対向する面を、ばね支持面63cと記載する。
【0182】
図8に示すように、X方向移動部材38の奥側の側面に接続された接続板42dの下方側の半分の部分は、Y方向移動部材39に形成された突出部57と、回転軸方向(Y方向)に沿って対向する。以下、接続板42dの下方側の半分の部分の、突出部57の奥側主面57bと対向する面を、ばね支持面63dと記載する。
【0183】
図8に示すように、ばね支持面63cには、手前側からボルト43gが挿入され、奥側からナット44cが取付けられる。ばね支持面63dには、奥側からボルト43hが挿入され、手前側からナット44dが取付けられる。
【0184】
接続板42c及び42dは、X方向移動部材38が左右方向(X方向)に沿って移動した場合に、X方向移動部材38と一体的に移動する。もちろん、接続板42c及び42dに取付けられるボルト及びナットもX方向移動部材38と一体的に移動する。回転軸方向(Y方向)においては、X方向移動部材38は移動しないので、接続板42c及び42dは移動しない。
【0185】
なお、接続板42c及び42dの左側の端部は、Y方向移動部材39の右側の側面よりも右側に位置する。従って、Y方向移動部材39が回転軸方向(Y方向)に沿って移動する際に、接続板42c及び42dと、Y方向移動部材39とが干渉することはない。
【0186】
図8及び
図10に示すように、Y方向移動部材39の突出部57の手前側主面57aと、X方向移動部材38の手前側の側面に接続される接続板42cのばね支持面63cとの間には、コイルばね45cが配置される。コイルばね45cは、ナット44c及びばね支持部58aにより支持される。
【0187】
Y方向移動部材39の突出部57の奥側主面57bと、X方向移動部材38の奥側の側面に接続される接続板42dのばね支持面63dとの間には、コイルばね45dが配置される。コイルばね45dは、ナット44d及びばね支持部58bにより支持される。
【0188】
図8及び
図10に示すように、第2の調整基準位置となる場合には、突出部57の手前側主面57aと接続板42cのばね支持面63cとの間の距離と、突出部57の奥側主面57bと接続板42dのばね支持面63dとの間の距離とが互いに等しくなる。従って、第2の調整基準位置の状態では、コイルばね45c及び45dの長さは、互いに等しくなる。
【0189】
Y方向移動部材39が回転軸方向(Y方向)に沿って第2の調整基準位置から手前側に移動した場合、手前側のコイルばね45cが圧縮し、奥側のコイルばね45dが伸長する。この結果、Y方向移動部材39に対して、奥側に向かって力が作用する。これにより、Y方向移動部材39が第2の調整基準位置に戻される。
【0190】
Y方向移動部材39が回転軸方向(Y方向)に沿って第2の調整基準位置から奥側に移動した場合、手前側のコイルばね45cが伸長し、奥側のコイルばね45dが圧縮する。この結果、Y方向移動部材39に対して、手前側に向かって力が作用する。これにより、Y方向移動部材39が第2の調整基準位置に戻される。
【0191】
図6等に示すように、スキマー41は、スキマー支持部材40を介して、Y方向移動部材39に接続されて固定される。従って、スキマー41は、左右方向(X方向)において、X方向移動部材38と一体的に移動することが可能である。すなわち、スキマー41は、左右方向(X方向)においてX方向移動部材38が移動した場合に、X方向移動部材38と一体的に移動するように、X方向移動部材38に接続されている。
【0192】
またスキマー41は、回転軸方向(Y方向)において、Y方向移動部材39と一体的に移動することが可能である。すなわち、スキマー41は、回転軸方向(Y方向)においてY方向移動部材39が移動した場合に、Y方向移動部材39と一体的に移動するように、Y方向移動部材39に接続されている。
【0193】
上記したように、X方向移動部材38は、第1のレール溝51及び第1のレール突起54を介して、姿勢を保持したまま移動する。従って、スキマー41についても、姿勢が保持された状態で、左右方向(X方向)に沿って移動可能となる。
【0194】
また、Y方向移動部材39は、第2のレール溝55及び第2のレール突起56を介して、姿勢を保持したまま移動する。従って、スキマー41についても、姿勢が保持された状態で、回転軸方向(Y方向)に沿って移動可能となる。
【0195】
すなわち、本実施形態に係る膜厚調整機構SKAでは、スキマー41は、姿勢が保持された状態で、左右方向(X方向)及び回転軸方向(Y方向)の各々において、直線的に移動することが可能となる。
【0196】
またスキマー41は、左右方向(X方向)に沿って移動した場合に、コイルばね45a及び45bにより、第1の調整基準位置に戻される。また、スキマー41は、回転軸方向(Y方向)に沿って移動した場合に、コイルばね45c及び45dにより、第2の調整基準位置に戻される。
【0197】
スキマー41は、例えばタングステン(W)やモリブデン(Mo)等、高温のプラズマ原料SAに対して不活性な材料で構成される。スキマー41以外の部材も、スキマー41と同じ材料で構成されもよいし、他の材料が用いられてもよい。例えば、ステンレス鋼(SUS)等の材料により、基体部材37、X方向移動部材38、Y方向移動部材39、スキマー支持部材40、接続板42等が構成されてもよい。
【0198】
図6~
図10に示す膜厚調整機構SKAでは、基体部材37(コンテナ側部材48、スキマー側部材49)、X方向移動部材38、Y方向移動部材39、スキマー支持部材40、接続板42a~42d、ボルト43a~43h、ナット44a~44c、及びコイルばね45a~45dにより、
図5に示す支持機構31が実現される。スキマー41により、
図5に示す膜厚調整部材30が実現される。
【0199】
また、左右方向(X方向)は、本発明に係る第1の方向の一実施形態となる。また回転軸方向(Y方向)が、第1の方向に直交する第2の方向の一実施形態となる。
【0200】
スキマー側部材49の突出部52、X方向移動部材38に接続される接続板42a及び42b、ボルト43a~43d、ナット44a及び44b、及びコイルばね45a及び45bが、
図5に示す位置保持機構33として機能し、左右方向(X方向)において位置保持機能を発揮する。
【0201】
また、X方向移動部材38に接続される接続板42c及び42d、Y方向移動部材39の突出部57、ボルト43e~43h、ナット44c及び44d、及びコイルばね45c及び45も、
図5に示す位置保持機構33として機能し、回転軸方向(Y方向)において位置保持機能を発揮する。
【0202】
X方向移動部材38、スキマー側部材49の第1のレール溝51、及びX方向移動部材38の第1のレール突起54が、
図5に示す姿勢保持機構34として機能し、左右方向(X方向)において移動するスキマー41の姿勢を保持する姿勢保持機能を発揮する。
【0203】
また、Y方向移動部材39、X方向移動部材38の第2のレール溝55、及びY方向移動部材39の第2のレール突起56も、
図5に示す姿勢保持機構34として機能し、回転軸方向(Y方向)において移動するスキマー41の姿勢を保持する姿勢保持機能を発揮する。
【0204】
また本実施形態では、基体部材37(コンテナ側部材48、スキマー側部材49)が、本発明に係る基体部材の一実施形態となる。X方向移動部材38、接続板42a及び42b、ボルト43a~43d、及びナット44a及び44bが、基体部材に対して第1の方向に移動可能に接続される第1の移動部材の一実施形態となる。スキマー側部材49の第1のレール溝51、及びX方向移動部材38の第1のレール突起54が、第1の方向に沿って延在する第1のレール機構の一実施形態となる。
【0205】
Y方向移動部材39、接続板42c及び42d、ボルト43e~43h、及びナット44c及び44dが、基体部材に対して第2の方向に移動可能に接続される第2の移動部材の一実施形態となる。X方向移動部材38の第2のレール溝55、及びY方向移動部材39の第2のレール突起56が、第2の方向に沿って延在する第2のレール機構の一実施形態となる。
【0206】
また、本実施形態では、スキマー側部材49は、第1の方向において固定されている第1の固定部材の一実施形態となる。コイルばね45a及び45bは、第1の固定部材と第1の移動部材との間に第1の方向に沿って延在するように配置される1以上の第1のばねの一実施形態となる。
【0207】
左右方向(X方向)における左側が、第1の方向における第1の側の一実施形態となる。左右方向(X方向)における右側が、第1の方向における第1の側とは反対側の第2の側の一実施形態となる。
【0208】
スキマー側部材49の突出部52の左側主面52aが、第1の方向に直交し第1の方向における第1の側に向けられる第1の固定側支持面の一実施形態となる。突出部52の右側主面52bが、第1の方向に直交し第1の方向における第1の側とは反対側の第2の側に向けられる第2の固定側支持面の一実施形態となる。
【0209】
X方向移動部材38に接続される接続板42aのばね支持面63aが、第1の方向において第1の固定側支持面に対向する第1の移動側支持面の一実施形態となる。接続板42bのばね支持面63bが、第1の方向において第2の固定側支持面に対向する第2の移動側支持面の一実施形態となる。
【0210】
コイルばね45aは、第1の固定側支持面と第1の移動側支持面との間に配置されるコイルばねの一実施形態となる。コイルばね45bは、第2の固定側支持面と第2の移動側支持面との間に配置されるコイルばねの一実施形態となる。
【0211】
また、本実施形態では、X方向移動部材38は、第2の方向において固定されている第2の固定部材の一実施形態となる。コイルばね45c及び45dは、第2の固定部材と第2の移動部材との間に第2の方向に沿って延在するように配置される1以上の第2のばねの一実施形態となる。
【0212】
回転軸方向(Y方向)における手前側が、第2の方向における第3の側の一実施形態となる。回転軸方向(Y方向)における奥側が、第2の方向における第3の側とは反対側の第4の側の一実施形態となる。
【0213】
接続板42dのばね支持面63dが、第2の方向に直交し第2の方向における第3の側に向けられる第3の固定側支持面の一実施形態となる。接続板42cのばね支持面63cが、第2の方向に直交し第2の方向における第3の側とは反対側の第4の側に向けられる第4の固定側支持面の一実施形態となる。
【0214】
Y方向移動部材39の突出部57の奥側主面57bが、第2の方向において第3の固定側支持面に対向する第3の移動側支持面の一実施形態となる。突出部57の手前側主面57aが、第2の方向において第4の固定側支持面に対向する第4の移動側支持面の一実施形態となる。
【0215】
コイルばね45dは、第3の固定側支持面と第3の移動側支持面との間に配置されるコイルばねの一実施形態となる。コイルばね45cは、第4の固定側支持面と第4の移動側支持面との間に配置されるコイルばねの一実施形態となる。
【0216】
[比較例の膜厚調整機構]
図11及び
図12は、比較例として挙げる膜厚調整機構SKZの構成例を示す図である。
図11は、膜厚調整機構SKZを、正面から見た場合の図である。
図12は、膜厚調整機構SKZを、左側から見た場合の左側面図である。
【0217】
図11及び
図12に示すように、膜厚調整機構SKZは、基体部材65と、移動部材66と、ヒンジ67と、スキマー支持部材68と、スキマー69とを有する。
【0218】
基体部材65は、放電電極EAに対して所定の位置関係となるように、放電電極EAとは別の物体に固定して配置される。
図11及び
図12等に示すように、基体部材65は、直方体形状を有し、コンテナCAの第1の側壁26aに形成された切り欠き29の上方側の部分に接続されて固定される。
【0219】
移動部材66は、直方体形状を有し、基体部材65に対して移動可能に接続される。本実施形態では、ヒンジ67を介して、基体部材65と移動部材66とが接続される。
【0220】
図11及び
図12に示すように、ヒンジ67は、上下方向(Z方向)に延在する薄肉部材からなる。ヒンジ67の上端が、基体部材65の下方側の面の手前側の部分であって、左右方向(X方向)における中央の位置に接続される。ヒンジ67の下端は、移動部材66の上方側の面の手前側の部分であって、左右方向(X方向)における中央位置に接続される。
【0221】
スキマー支持部材68は、移動部材66の下方側の面に接続されて固定される。
図11及び
図12等に示すように、スキマー支持部材40は、直方体形状の部材である。スキマー支持部材40の上方側の面が、移動部材66の下方側の面に接続されて固定される。
【0222】
スキマー68は、スキマー支持部材40の奥側の側面に接続されて固定される。スキマー68は、
図6~
図10に示すスキマー41と略等しい構成を有し、上下方向(Z方向)から見た場合に、スリット70を内部に含むU字形状を有する。スキマー68のスリット70に、放電電極EAが挿入される。
【0223】
図11及び
図12に示すように、スキマー69は、スリット70の内周面を構成する、主調整面71と、第1の副調整面72aと、第2の副調整面72bとを有する。主調整面35は、左右方向(X方向)において、放電電極EAの端面側付着面28cに対向する位置に、第1の距離D1をあけて配置される。なお
図11では、スキマー69のスリット70内に配置される主調整面71と、端面側付着面28cが、破線で図示されている。
【0224】
第1の副調整面72aは、回転軸方向(Y方向)において、放電電極EAの第1の主面24aの第1の付着面28aに対向する位置に、距離D2の間隔をあけて配置される。第2の副調整面72bは、回転軸方向(Y方向)において、放電電極EAの第2の主面24bの第2の付着面28bに対向する位置に、距離D3の間隔をあけて配置される。
【0225】
比較例に係る膜厚調整機構SKZにおいても、主調整面71により、端面側付着面28cに付着するプラズマ原料SAの膜厚が調整される。また第1の副調整面72aにより、放電電極EAの第1の主面24aに付着するプラズマ原料SAの膜厚が調整される。また第2の副調整面72bにより、放電電極EAの第2の主面24aに付着するプラズマ原料SAの膜厚が調整される。
【0226】
[スキマーによる膜厚調整に関する考察]
放電領域Rに輸送される放電電極EAの表面上の液体状のプラズマ原料SAの膜厚が小さすぎると、レーザビームLBを照射した際に生じる気化原料の量が不足する。これにより、放電によって高温のプラズマPを生成する際に、プラズマPの強度(密度)が不十分となる。この結果、所望の強度のEUV光をプラズマPから取り出せなくなる。
【0227】
一方、プラズマ原料SAの膜厚が大きすぎると、放電電極EAの回転の際に生じる遠心力により、放電電極EAの表面上のプラズマ原料SAの一部が飛散し、デブリとなって光源装置1の内部の不所望な部位に付着するおそれが生じる。また、プラズマ原料SAの膜厚が大きすぎるとプラズマ原料SAにレーザビームLBを照射した場合、生じる気化原料(低温プラズマ)の量が過剰となる。
【0228】
そして、その後、放電によって高温のプラズマPを生成する際、プラズマPの密度が高くなりすぎ、プラズマPから放出されるEUV光の一部がこの高密度のプラズマPによって吸収されたり、プラズマPからEUV光以外の波長を有する光の放出量が多くなったりする。従って、放電領域Rに輸送される放電電極EAの表面上の液体状のプラズマ原料SAの膜厚は、所定の厚みに調整する必要がある。
【0229】
プラズマ原料SAの膜厚を調整するために、プラズマ原料SAが付着する面に対して、所定の間隔をあけてスキマーが配置される。スキマーは、放電電極EAの回転時及び静止時に両方において、実現させたいプラズマ原料SAの膜厚に応じた距離の間隔をあけて配置され支持される。
【0230】
本実施形態では、
図6~
図10に示す膜厚調整機構SKAが、放電電極EAに対してスキマー41が所定の位置関係となるように配置される。すなわち、端面側付着面28cと主調整面35との間の第1の距離D1、第1の付着面28aと第1の副調整面61aとの間の距離D2、及び第2の付着面28bと第2の副調整面61bとの間の距離D3がそれぞれ所定の値となるように、膜厚調整機構SKAが配置される。
【0231】
また、
図11及び
図12に示す膜厚調整機構SKZが、放電電極EAに対してスキマー69が所定の位置関係となるように配置される。すなわち、端面側付着面28cと主調整面71との間の第1の距離D1、第1の付着面28aと第1の副調整面72aとの間の距離D2、及び第2の付着面28bと第2の副調整面72bとの間の距離D3がそれぞれ所定の値となるように、膜厚調整機構SKZが配置される。
【0232】
スキマー41(69)の主調整面35(71)、第1の副調整面61a(72a)、及び第2の副調整面61b(72b)により、端面側付着面28c、第1の付着面28a、及び第2の付着面28bに付着するプラズマ原料SAが削られ、あるいは押しのけられて、所定の膜厚に調整される。
【0233】
ここで、円盤状の放電電極EAが若干偏心していたり、放電電極EAの重心位置が中心と同じであっても中心からの距離すなわち半径が不均一となる場合もあり得る。このような形状の放電電極EAが回転すると、動きにブレが生じる。ブレて回転する放電電極EAの全周にわたって、プラズマ原料SAの膜厚を均一にするためには、偏心している部分や半径が異なる部分に対して、スキマー41(69)が追従して動くことが望ましい。すなわち放電電極EAの回転動作のブレに追従して、スキマー41(69)が追従して動くことが望ましい。
【0234】
また、放電電極EAの回転軸方向において、微妙な歪みやサイズのバラつき等が発生する場合もあり得る。また光源装置1の駆動時に、放電領域R周辺の温度の上昇等による各部材の熱膨張や変形、プラズマ原料SAの粘性の変化等が発生する場合もあり得る。また、放電電極EAを回転させるためのベアリングの摩耗等により、放電電極EAの回転動作時にブレが発生してしまうこともあり得る。
【0235】
このような、放電電極EAの微妙な歪み、光源装置1の駆動時における放電電極EAの熱膨張や変形、回転動作時のブレ、プラズマ原料SAの粘性の変化等により、スキマー41(69)がプラズマ原料SAから意図しない過剰な応力を受けることもあり得る。特に長時間の駆動時には、このような意図しない応力の影響が大きくなると考えられる。
【0236】
図11及び
図12に示す膜厚調整機構SKZでは、くびれている部分であるヒンジ67を中心に、スキマー69が移動可能に構成されている。従って、放電電極EAの形状の変化に追従してスキマー69を移動させることが可能である。また、放電電極EAの微妙な歪みや、光源装置1の駆動時における放電電極EAの熱膨張や変形、プラズマ原料SAの粘性の変化等により発生する意図しない応力を、スキマー69が移動することで吸収することが可能である。
【0237】
しかしながら
図11に示すように、膜厚調整機構SKZでは、回転軸方向(Y方向)から見た場合に、スキマー68はヒンジ67を中心に円弧運動する。また
図12に示すように、左右方向(X方向)から見た場合も同様に、スキマー68はヒンジ67を中心に円弧運動する。すなわち、比較例に係る膜厚調整機構SKZでは、スキマー68の姿勢は保持されずに、スキマー68が傾いた状態で移動することになる。
【0238】
そうすると、例えば
図13に示すように、回転軸方向(Y方向)から見た場合に、スキマー69の右側の部分が、左側の部分よりも上方側となるように、スキマー69が傾いてしまう場合も起こり得る。この場合、スキマー69の主調整面71の上方側の端部が放電電極EAの端面側付着面28cに接触してしまい、スキマー69が放電電極EAに噛み込んでしまう可能性がある。
【0239】
また、
図14に示すように、左右方向(X方向)から見た場合に、スキマー69の手前側の部分が奥側の部分よりも下方側となるように、スキマー69が傾いてしまう場合も起こり得る。この場合、スキマー69と放電電極EAとの間で、第1の副調整面72aと第1の付着面28aとの接触や、第2の副調整面72bと第2の付着面28bとの接触が発生し、スキマー69が放電電極EAに噛み込んでしまう可能性がある。
【0240】
また
図15に示すように、上下方向(Z方向)において下方側から見た場合に、ヒンジ67の位置を中心にスキマー69が回転運動してしまい、スキマー69が放電電極EAに噛み込んでしまう可能性もある。
【0241】
図16に示すように、スキマー69が放電電極EAに噛み込んでしまった結果、スキマー69が放電電極EAの回転方向に引っ張られ、コンテナCAの切り欠き29の上端部に衝突して停止してしまうこともあり得る。この結果、放電電極EAの回転が強制的に停止してしまうことも十分に考えられる。
【0242】
放電電極EAの回転が停止されたままプラズマPの発生動作が続けられると、プラズマ原料SAが消費された状態の照射位置25にレーザビームLBが連続的に照射されることになり、放電電極EAが損傷してしまう。また放電電極EAの回転が停止することにより、液体状のプラズマ原料SAが、放電領域Rに供給されなくなってしまうので、EUV光の光量も得られなくなる。従って、光源装置1の駆動を一旦停止させなければならなくなる。
【0243】
また、
図16に示すように、ビンジ67が復元できないほど曲がってしまった場合、すなわち弾性変形領域をこえて塑性変形してしまった場合、光源装置1を再び駆動できるように復帰させるには、膜厚調整機構SKZを新しいものに交換しなければならない。
【0244】
また、
図13~
図15に例示するような、放電電極EAとスキマー69との噛み込みが発生する場合には、放電電極EAのプラズマ原料SAの付着面28と、スキマー69の各調整面との間に強い摩擦が発生する。
【0245】
噛み込みが繰り返し発生する場合等では、摩擦により、スキマー69の各調整面が摩耗し削れていくので、放電電極EAの付着面28と、スキマー69の各調整面との間隔(距離D1~D3)が広がってしまう。これにより、プラズマ原料SAの膜厚が、所望の膜厚よりも大きくなってしまう。この結果、放電電極EAが回転する際のデブリの飛散量が増えてしまい、光源装置1の内部に付着してしまう。またレーザビームLBの照射による気化されるプラズマ原料SAの量が過剰となってしまい、所望のEUV光の光量が得られなくなってしまう。従って、スキマー69の交換も必要になってしまう。
【0246】
また、放電電極EAとスキマー69との噛み込みにより、放電電極EAが摩耗して削れてしまう場合もあり得る。その場合、放電電極EAの交換が必要になってしまう。
【0247】
図6~
図10に示す本実施形態に係る膜厚調整機構SKAでは、左右方向(X方向)及び回転軸方向(Y方向)の2方向において、スキマー41の姿勢を保持したまま、スキマー41を直線的に移動させることが可能である。
【0248】
従って、放電電極EAの形状の変化に追従してスキマー41を移動させることが可能である。また、放電電極EAの微妙な歪みや、光源装置1の駆動時における放電電極EAの熱膨張や変形、プラズマ原料SAの粘性の変化等により発生する意図しない応力を、スキマー41が移動することで吸収することが可能である。
【0249】
例えば、放電電極EAの偏心等により、第1の調整基準位置に配置されたスキマー41に対して、端面側付着面28cが近づく(端面側付着面28cと主調整面35との距離が小さくなる)状況が、周期的に繰り返されるとする。
【0250】
仮に、左右方向(X方向)において、スキマー41が固定されているとすると、周期的な距離の変動に応じて、放電領域Rに供給されるプラズマ原料SAの膜厚も周期的に変化してしまう。
【0251】
本実施形態では、姿勢保持機構34により、スキマー41が、左右方向(X方向)に沿って、姿勢を保持した状態で直線的に移動可能に構成される。また、位置保持機構33により、左右方向(X方向)において第1の調整基準位置から移動するスキマー41が、第1の調整基準位置に戻される。
【0252】
これにより、周期的に発生する端面側付着面28cと主調整面35との距離の変化に追従して、スキマー41を移動させることが可能となる。また、端面側付着面28cと主調整面35との距離を、第1の距離D1でほぼ維持することが可能となる。この結果、放電領域Rに供給されるプラズマ原料SAの膜厚の変動を十分に抑制することが可能となり、膜厚の均一化を図ることが可能となる。
【0253】
回転軸方向(Y方向)においても、同様に、姿勢保持機構34により、スキマー41が、回転軸方向(Y方向)に沿って、姿勢を保持した状態で直線的に移動可能に構成される。また、位置保持機構33により、回転軸方向(Y方向)において第2の調整基準位置から移動するスキマー41が、第2の調整基準位置に戻される。
【0254】
この結果、回転軸方向(Y方向)においても、放電電極EAの形状の変化等に追従して、スキマー41を移動させることが可能となる。また、第1の付着面28aと第1の副調整面61aとの距離D2、及び第2の付着面28bと第2の副調整面61bとの距離D3を、設定されたサイズで保持することが可能となる。この結果、第1の付着面28a及び第2の付着面28bにおいても、プラズマ原料SAの膜厚の変動を抑制することが可能となり、膜厚の均一化を図ることが可能となる。
【0255】
また、左右方向(X方向)及び回転軸方向(Y方向)の2方向において、スキマー41の姿勢が保持されるので、
図13~
図15で示したような、放電電極EAとスキマー41との噛み込みを十分に抑制することが可能となる。
【0256】
従って、EUV光の放射動作中における放電電極EAの回転の強制的な停止、膜厚調整機構SKAの支持機構31の変形や破損、スキマー41の各調整面の摩耗や削れ等を、防止することが可能となる。
【0257】
これにより、放電路域Dにおける液体状のプラズマ原料SAの膜厚を高い精度で、長期間安定して調整することが可能となる。この結果、所望のEUV光の光量を得ることが可能となり、光源装置1の安定した長時間運転が実現される。
【0258】
また
図6~
図10に示す膜厚調整機構SKAでは、第1のレール機構(第1のレール溝51、第1のレール突起54)及び第2のレール機構(第2のレール溝55、第2のレール突起56)が構成されている。これにより、スキマー41が大きく移動するような場合でも、支持機構31が復元不能なほど変形してしまうことがない。また膜厚調整機構SKAでは、ヒンジ67が用いられる構成と比べて、支持機構31の剛性が高い。
【0259】
従って、仮に膜厚調整機構SKAに、想定されていないような外力が作用してしまった場合でも、支持機構31の破損や変形を抑えることが可能となる。この結果、膜厚調整機構SKAの交換が必要となるケースの発生頻度を十分に抑制することが可能となる。万が一放電電極EAとスキマー41との間で噛み込みが発生した場合でも、支持機構31の破損や変形を抑制することが可能であるので、フェイルセーフとして機能することが可能である。
【0260】
[複数のコイルバネについて]
図6~
図10に示す膜厚調整機構SKAでは、4つのコイルばね45a~45dが、位置保持機構33を構成する要素として用いられる。具体的には、左右方向(X方向)に沿って延在するように、コイルばね45a及び45bが、突出部52を間に挟み込むように配置される。また、回転軸方向(Y方向)にそって延在するように、コイルばね45c及び45dが、突出部57を間に挟み込むように配置される。このよに、2つのコイルばね45を両側に配置することで、安定した位置保持機能を発揮することが可能となる。
【0261】
また、上記した実施形態では、4つのコイルばね45a~45dとして、同じ種類のものが用いられた。これに限定されず、同一方向に沿って並ぶ2つのコイルばね45として、異なる種類のもの(例えば弾性力が異なるもの等)が用いられてもよい。例えば、左右方向(X方向)に沿って配置されるコイルばね45a及び45bとして、異なる種類のものが用いられてもよい。また、回転軸方向(Y方向)に沿って配置されるコイルばね45c及び45dとして、異なる種類のものが用いられてもよい。
【0262】
コイルばね45a~45dの各々の特性(ばね定数等)を適宜設定することで、例えば第1の調整基準位置からの左側への移動に対する復元力と、第1の調整基準位置からの右側への移動に対する復元力とを異ならせるといったことが可能となる。また第2の調整基準位置からの手前側への移動に対する復元力と、第1の調整基準位置からの奥側への移動に対する復元力とを異ならせるといったことが可能となる。
【0263】
一方で、同一方向に沿って並ぶ2つのコイルばね45として同じ種類のものを用いることで、周辺の過渡的な温度変化が起きた場合でも、位置保持機能を安定して発揮することが可能となる。これにより、環境の変化といった外乱の位置保持機能への影響を抑制することが可能となる。
【0264】
なお、
図5に示す位置保持機構33を実現するための構成が、
図6~
図10に示す4つのコイルばね45を配置する構成に限定される訳ではない。1以上の圧縮ばね、1以上の引張ばね、1以上の平行板ばね、ダンパーのような粘性を持った1以上の素子、その他の弾性体等を用いた任意の構成が採用されてよい。
【0265】
以上、本実施形態に係る光源装置1及び膜厚調整機構SKAでは、液体状のプラズマ原料SAが付着される付着面28に対向する位置に間隔をあけてスキマー41が配置され、支持機構31により付着面28に対向する左右方向(X方向)において移動可能となるようにスキマー41が支持される。また支持機構31は、左右方向(X方向)において移動するスキマー41を第1の調整基準位置に戻す位置保持機構33と、左右方向(X方向)において移動するスキマー41の姿勢を保持する姿勢保持機構34とを有する。これにより、プラズマPの発生領域である放電領域Rにおけるプラズマ原料SAの膜厚を高い精度で調整することが可能となる。
【0266】
本発明者は、放電電極EAに対する膜厚の調整動作について、600時間におよぶ観察を行った。この結果、
図6~
図10に示す新規の膜厚調整機構SKAを採用した場合、膜厚の変動の最大値が10分の1以下になっている結果を得ることができた。
【0267】
スキマーの噛み込みや、放電電極EAの回転の停止は、膜厚の変動が大きいときに発生する可能性が高い。本実施形態に係る膜厚調整機構SKAを用いることで、スキマーの噛み込みや放電電極EAの回転の停止を十分に防止することが可能となり、EUV光の安定定的な発行を長時間得られることが可能となる。
【0268】
図6~
図10に示す例では、スキマー側部材49とX方向移動部材38との間に、第1のレール機構(第1のレール溝51、第1のレール突起54)が構成される。また、X方向移動部材38とY方向移動部材39との間に、第2のレール機構(第2のレール溝55、第2のレール突起56)が構成される。
【0269】
すなわち本実施形態では、基体部材37と第1の移動部材(X方向移動部材38、接続板42a及び42b、ボルト43a~43d、及びナット44a及び44b)との間に第1のレール機構が構成されている。また、第1の移動部材と第2の移動部材(X方向移動部材38、接続板42a及び42b、ボルト43a~43d、及びナット44a及び44b)との間に第2のレール機構が構成されている。また、第2の移動部材が第1の移動部材を介して基体部材37に接続され、かつ、スキマー41が第2の移動部材を介して第1の移動部材に接続される。
【0270】
これに限定されず、基体部材37の下方側の面に回転軸方向(Y方向)に沿って延在するレール溝が形成され、当該レール溝にY方向移動部材39の第2のレール突起56が摺動可能に嵌め込まれてもよい。この場合、基体部材37の下方側の面に形成されるレール溝と、Y方向移動部材39の第2のレール突起56により、第2のレール機構が実現される。
【0271】
そして、Y方向移動部材39の下方側の面に、左右方向(X方向)に延在するレール溝が形成され、当該レール溝にX方向移動部材38の第1のレール突起54が摺動可能に接続される。この場合、Y方向移動部材39の下方側の面に形成されるレール溝と、X方向移動部材38の第1のレール突起56により、第1のレール機構が実現される。
【0272】
すなわち本実施形態のように、基体部材37、X方向移動部材38、及びY方向移動部材39の順番で、これらの部材が直接的に接続されてもよいし、基体部材37、Y方向移動部材39、及びX方向移動部材38の順番で、これらの部材が直接的に接続されてもよい。後者の場合では、基体部材37と第2の移動部材との間に第2のレール機構が構成され、かつ、第2の移動部材と第1の移動部材との間に第1のレール機構が構成される。また、第1の移動部材は第2の移動部材を介して基体部材37に接続され、スキマー41は第1の移動部材を介して第2の移動部材に接続される。いずれの構成であっても、上記した効果を発揮することが可能である。
【0273】
(第2の実施形態)
図17は、第2の実施形態に係る膜厚調整機構SKAの模式図である。
図17に示す膜厚調整機構SKAでは、Y方向移動部材39が省略されており、X方向移動部材38に、スキマー支持部材40が接続されて固定される。従って、
図17に示す例では、スキマー41は、左右方向(X方向)において移動可能となる。また、位置保持機構33及び姿勢保持機構34により、左右方向(X方向)における移動に対して、位置保持機能と姿勢保持機能が発揮される。このような構成の膜厚調整機構SKAも、本発明に係る膜厚調整機構の一実施形態に含まれる。
【0274】
(第3の実施形態)
図18は、第3の実施形態に係る膜厚調整機構SKAの模式図である。
図18に示す膜厚調整機構SKAは、基体部材37と、第1の平行板ばね機構74と、X方向移動部材38と、スキマー支持部材40と、スキマー41とを有する。
【0275】
基体部材37は、放電電極EAに対して所定の位置関係となるように、放電電極EAとは別の物体(コンテナCA)に固定して配置される。
【0276】
第1の平行板ばね機構74は、左右方向(X方向)において対向するように左右方向(X方向)に直交して配置される一対の板ばね74a及び74bからなり、基体部材37の下方側の面に接続される。
【0277】
X方向移動部材38は、第1の平行板ばね機構74の下端に接続される。従って、X方向移動部材38は、第1の平行板ばね機構74を介して、基体部材37に対して左右方向(X方向)に移動可能に接続される。
【0278】
スキマー支持部材40は、X方向移動部材38に接続されて固定される。スキマー41は、
図6~
図10に示す例と同様の構成を有し、付着面28(第1の付着面28a、第2の付着面28b、端面側付着面28c)に付着する液体状のプラズマ原料SAの膜厚を調整する。スキマー41は、左右方向(X方向)においてX方向移動部材38が移動した場合に、X方向移動部材38と一体的に移動するように、X方向移動部材38に接続される。
【0279】
図18に示すように、膜厚調整機構SKAは、第1の平行板ばね74a及び74bが、ともにYZ平面と平行となる位置が、第1の調整基準位置となるように設計されている。
【0280】
本実施形態の膜厚調整機構SKAでは、第1の平行板ばね機構74により、左右方向(X方向)において第1の調整基準位置から移動するスキマー41を第1の調整基準位置に戻すことが可能である。また第1の平行板ばね機構74により、左右方向(X方向)において移動するスキマー41の姿勢を保持することが可能である。
すなわち、本実施形態では、第1の平行板ばね機構74は、
図5に示す位置保持機構33として機能するとともに、姿勢保持機構34としても機能する。
【0281】
第1の平行板ばね機構74を採用することで、シンプルな構成で、安価に、位置保持機構33及び姿勢保持機構34を実現することが可能となる。また、板ばね74a及び74bは、塑性変形しにくく、剛性も高い。仮に、板ばね74a及び74bが塑性変形してしまったとしても、板ばねの部分のみを取り換えればよく、膜厚調整機構SKAの全体を交換する必要がない。従って、光源装置1の再び駆動できるように復帰させることに有利である。また、液体状のプラズマ原料SAが付着してしまった場合に正常に駆動するかどうかといった点においても、有利である。
【0282】
本実施形態では、X方向移動部材38が、第1の移動部材の一実施形態となる。第1の平行板ばね機構74が、第1の方向において対向するように第1の方向に直交して配置される一対の板ばねからなる第1の平行板ばね機構の一実施形態となる。
【0283】
なお、
図18に示すX方向移動部材38の下方側の面に、さらに平行板ばね機構を接続させてもよい。具体的には、回転軸方向(Y方向)において対向するように回転軸方向(Y方向)に直交して配置される一対の板ばねからなる第2の平行板ばね機構を、X方向移動部材38の下方側の面に接続する。そして、当該第2の平行板ばね機構の下端に、Y方向移動部材を接続させる。Y方向移動部材は、第2の平行板ばね機構を介して、基体部材37及びX方向移動部材38に対して、回転軸方向(Y方向)に移動可能に接続される。
【0284】
第2の平行板ばね機構により、回転軸方向(Y方向)において第2の調整基準位置から移動するスキマー41を第2の調整基準位置に戻すことが可能である。また第2の平行板ばね機構により、回転軸方向(Y方向)において移動するスキマー41の姿勢を保持することが可能である。このように、第2の平行板ばね機構をさらに設けることで、左右方向(X方向)及び回転軸方向(Y方向)の2方向における移動に対して、位置保持機能及び姿勢保持機能を発揮することが可能となる。
【0285】
第2の平行ばね機構が構成される場合、Y方向移動部材が、第2の移動部材の一実施形態となる。また第2の平行板ばね機構が、第2の方向において対向するように第2の方向に直交して配置される一対の板ばねからなる第2の平行板ばね機構の一実施形態となる。
【0286】
基体部材37、第1の平行板ばね機構74、X方向移動部材38、第2の平行板ばね機構、及びY方向移動部材の順番で、これらの部材が直接的に接続されてもよい。そして、Y方向移動部材に、スキマー支持部材40が接続されてもよい。これに限定されず、基体部材37、第2の平行板ばね機構、Y方向移動部材、第1の平行板ばね機構74、及びX方向移動部材38の順番で、これらの部材が直接的に接続されてもよい。そして、X方向移動部材38に、スキマー支持部材40が接続されてもよい。
【0287】
位置保持機構33及び姿勢保持機構34を実現するために、
図6~
図10に例示するようなレール機構と、
図18に例示するような平行板ばね機構とが併用されてもよい。例えば、左右方向(X方向)に関してはレール機構により位置保持機構33が実現され、回転軸方向(Y方向)に関しては平行板ばね機構により位置保持機構33(姿勢保持機構34)が実現されてもよい。
【0288】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0289】
上記では、LDP方式の光源装置1に、本技術に係る膜厚調整機構が適用される例を説明した。すなわち、本技術に係る光源装置として、LDP方式の光源装置1が構成される実施形態を説明した。これに限定されず、LPP方式の光源装置に、本技術に係る膜厚調整機構を適用することも可能である。すなわち、本技術に係る光源装置として、LPP方式の光源装置1を構成することも可能である。
【0290】
[LPP方式の光源装置]
LPP方式の光源装置は、液体状のプラズマ原料にエネルギービームを照射することで、プラズマ原料を励起してプラズマを発生させ、プラズマから放出される放射線を取り出して光源として用いる装置である。
【0291】
LPP方式の光源装置は、LDP方式の光源装置1と同様に、エネルギービームの照射を利用してプラズマ原料をプラズマ化して放射線を取り出す光源装置となる。従って、LPP方式の光源装置は、本発明に係る、液体状のプラズマ原料からプラズマを発生させて放射線を取り出す光源装置の一実施形態となる。
【0292】
図19は、LPP方式の光源装置に含まれる光源ユニットの一構成例を示す模式図である。光源ユニット76は、減圧雰囲気に維持されたチャンバの内部に配置され、回転体T、コンテナC、膜厚調整機構SK、及びモータ(図示は省略)を有する。
【0293】
回転体Tは、円盤状に構成され、互いに対向する第1の主面77a及び第2の主面77bと、第1の主面77a及び第2の主面77bの間の端面77cとを有する。回転体Tは、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)又はタンタル(Ta)等の高融点金属を用いて構成される。
【0294】
回転体Tは、モータの回転軸に連結され、回転体Tの軸線周りに回転する。従って、第1の主面77a及び第2の主面77bは、回転軸方向に沿って互いに対向する面となる。
【0295】
以下、回転体Tを正面から見た場合の左右方向をX方向とし、X軸の正側を左側、負側を右側とする。また、放電電極EAの回転軸方向をY方向とし、Y軸の正側を奥側、負側を手前側とする。また、上下方向をZ方向として、Z軸の正側を上方側、負側を下方側とする。
【0296】
図19に示すように、本実施形態では、回転体Tの第1の主面77aの左端部の位置がレーザビームLBの照射位置25として設定される。当該レーザビームLBの照射位置25が、プラズマPの発生領域Oとなる。
【0297】
コンテナCは、液体状のプラズマ原料Sを収容可能なコンテナ(容器)である。プラズマ原料Sとしては、例えばスズ(Sn)やリチウム(Li)等の液体金属が用いられる。
【0298】
コンテナCは、回転体Tの下部が液体状のプラズマ原料Sに浸されるようにプラズマ原料Sを収容する。従って、回転体Tの下部には、液体状のプラズマ原料Sが付着する。回転体Tの下部に付着した液体状のプラズマ原料Sは、回転体Tの回転に伴って、プラズマPの発生領域Oに輸送される。
【0299】
図19に示すように、コンテナCには、プラズマ原料供給部8が接続される。そして、プラズマ原料供給部8により、コンテナCに、プラズマ原料Sが供給される。
【0300】
膜厚調整機構SKは、回転体Tに付着するプラズマ原料Sの厚みを、プラズマPの発生領域Oに輸送される前に所定の厚みに調整する。これにより、プラズマPの発生領域Oに供給されるプラズマ原料Sの供給量を制御することが可能となる。
【0301】
図19に示すように、LPP方式の光源装置には、さらに、制御部(図示は省略)と、ビーム源11とを有する。制御部、ビーム源11は、チャンバの外部に配置される。
制御部により、モータの回転駆動や、ビーム源11によるレーザビームLBの照射駆動等が制御される。
【0302】
なお、
図1に示すLDP方式の光源装置1と同様に、チャンバ外に集光レンズや可動ミラー等が配置され、レーザビームLBのスポット径や、照射位置25等が調整可能であってもよい。
【0303】
回転体Tの下部がコンテナCに貯留されたプラズマ原料Sに浸漬した状態で、回転体Tが軸部(回転軸)を中心に回転する。これにより、プラズマ原料Sは、回転体Tの第1の主面77aとの濡れ性により、回転体Tの第1の主面77aになじみ、コンテナCの原料貯留部分から引き上げられ、輸送される。
【0304】
回転体T上のプラズマ原料Sは、回転体Tの回転とともに、膜厚調整機構SKにより膜厚が調整された後に、レーザビームLBが入射する発生領域Oに輸送される。そして、プラズマPの発生領域Oにおいて、回転体T上のプラズマ原料SにレーザビームLBが照射され、プラズマPが発生される。
【0305】
コンテナCに収容されるプラズマ原料Sを所定量以上に維持し、回転体Tを連続的に回転させることにより、常にレーザビームLBの照射位置25にプラズマ原料Sを供給することが可能となり、発生領域OにてプラズマPを発生させることが可能となる。
【0306】
図19に示すLPP方式の光源装置に用いられる光源ユニット76においても、本発明に係る膜厚調整機構SKを使用することが可能である。例えば、
図6~
図10にて例示した膜厚調整機構SKAと同様の構成を採用することも可能である。これにより、長時間安定して、調整された膜厚で、プラズマPの発生領域Oにプラズマ原料Sを供給することが可能である。
【0307】
図19に示すように、回転体Tの第1の主面77a、第2の主面77b、及び端面77cの、コンテナCに収容されるプラズマ原料Sに浸漬する部分に、プラズマ原料Sが付着する。そして、第1の主面77において、プラズマ原料Sが付着する面に、レーザビームLBが照射される。
【0308】
従って、
図19に示す例では、回転体Tの第1の主面77aの所定の位置にプラズマPの発生領域Oが設定される。そして、第1の主面77aのプラズマPの発生領域Oとは異なる位置(上流側の位置)に膜厚調整領域が設定される。本実施形態では、回転体Tの第1の主面77aの右端部の位置が、膜厚調整領域として設定される。従って、
図19に示す例では、回転軸方向(Y方向)を、本発明に係る第1の方向の一実施形態として、本技術に係る膜厚調整機構SKが構成される。
【0309】
図6~
図10に示す膜厚調整機構SKAの構成が採用される場合、回転体Tの端面77c、及び第1の主面77bに付着するプラズマ原料Sの膜厚も調整することが可能である。本構成は、左右方向(X方向)を、本発明に係る第2の方向の一実施形態とする構成に含まれる。
【0310】
図9に示すスキマー41と同様の構成が採用された場合、回転体Tの第1の主面77aのプラズマ原料Sの付着面に対向する面が主調整面となる。また、端面77cのプラズマ原料Sの付着面に対向する面、及び第2の主面77bのプラズマ原料Sの付着面に対向する面の各々が、副調整面となる。
【0311】
なお、LPP方式の光源装置が構成されるうえで、レーザビームLBの照射位置25(発生O)の位置や、膜厚調整機構SKが配置される位置は限定されず、任意に設定可能である。例えば、回転体Tの端面77cに、レーザビームLBが照射されてもよい。
【0312】
図20及び
図21は、LPP方式の光源装置に含まれる光源ユニットの他の構成例を示す模式図である。
図20及び
図21に示す光源ユニット79は、減圧雰囲気に維持されたチャンバ4の内部に配置され、回転ドラムRD、膜厚調整機構SK、及びモータMを有する。
【0313】
回転ドラムRDは、容器状(皿状)の形状を有し、底面部80と、底面部80の周縁に沿って配置された外壁部81と有する。底面部80は、平板形状からなり、水平方向と平行となるように配置される。外壁部81は、底面部80の周縁から鉛直方向に沿って上方側に延在して構成される。底面部80と、外壁部81の内周面81aとにより、液体状のプラズマ原料Sを貯留する凹状の貯留空間が構成される。回転ドラムRDは、本発明に係る回転体の一実施形態となる。
【0314】
以下、水平方向がXY平面となるように、X方向及びY方向を規定する。また、上下方向をZ方向とする。
【0315】
図21に示すように、回転ドラムRDの底面部80を上方側から見た場合、底面部80は円形状を有する。外壁部81の内周面81に設定される膜厚調整領域32の対向方向(膜厚調整領域32を通る直径方向)を左右方向(X方向)とし、X軸の正側を左側、負側を右側とする。そして、X方向に直交する方向を奥行方向(Y方向)とし、Y軸の正側を奥側、負側を手前側とする。
【0316】
なお
図20は、光源ユニット76を、奥行方向(Y方向)に沿って見た場合の模式図であり、チャンバ4及び回転ドラムRDの2つの部材のみ、膜厚調整領域32の位置でX方向に沿って切断した断面図が図示されている。
【0317】
図20に示すように、底面部80の下方側の面の中心の位置に、下方側に延在するように回転軸Jが接続され、チャンバ4の外部に配置されたモータMに接続される。
図21に示すように上方側から見た場合に、モータMが駆動することで、回転ドラムRDが左回りに回転する。
【0318】
回転軸Jを中心に回転ドラムRDが連続的に回転すると、貯留空間に供給された液体状のプラズマ原料Sは、遠心力により外壁部81の内周面81a側に移動し、内周面81aに沿って分布する。回転ドラムRDの回転速度を制御することで、内周面81aに分布する液体状のプラズマ原料Sの膜厚を、ある程度は制御することが可能である。
【0319】
なお、貯留空間に液体状のプラズマ原料Sを供給するための構成や方法は限定されない。
図21に示す例では、上方側から見た場合に、底面部80の下端部から右側に移動した位置に、原料供給領域82が設定される。そして、原料供給領域82にプラズマ原料Sが供給される。
【0320】
例えば、上方側から原料供給領域82に向かって、液体状又は固体状のプラズマ原料Sが供給されてもよい。あるいは、底面部80の原料供給領域82に供給孔が形成され、
図19に例示するようなプラズマ原料供給部8と連結されてもよい。その他、任意の構成や方法が採用されてもよい。
【0321】
なお、回転ドラムRDには、貯留空間に供給されるプラズマ原料Sを液体状態で維持するために、図示しない加熱機構が設けられる。加熱機構としては、電熱線等を利用して回転ドラムRDを直接加熱するヒータが用いられる。また、輻射等を利用して外側から回転ドラムRDを加熱するヒータ等が用いられてもよい。
【0322】
図21に示すように、本実施形態では、外壁部81の内周面81aの左端部の位置に、膜厚調整領域32が設定され、膜厚調整機構SKが配置される。膜厚調整機構SKにより、回転ドラムRDの外壁部81の内周面81aに付着するプラズマ原料Sの厚みを、プラズマPの発生領域Oに輸送される前に所定の厚みに調整することが可能となる。
【0323】
図21に示すように、本実施形態では、外壁部81の内周面81aに設定された膜厚調整領域32から、回転の下流側に進んだ位置に、レーザビームLBの照射位置25が設定される。具体的には、回転ドラムRDを上方側から見た場合に、左端部から右下に進んだ位置に、レーザビームLBの照射位置25が設定される。当該レーザビームLBの照射位置25が、プラズマPの発生領域Oとなる。
【0324】
回転ドラムRDの貯留空間に液体状のプラズマ原料Sが供給されている状態で、回転ドラムRDが回転軸Jを中心に回転する。これにより、プラズマ原料Sは、外壁部81の内周面81aに付着して、プラズマPの発生領域Oに向かって輸送される。
【0325】
外壁部81の内周面81aに付着したプラズマ原料Sは、回転ドラムRDの回転とともに、膜厚調整機構SKにより膜厚が調整された後に、レーザビームLBが入射する発生領域Oに輸送される。そして、プラズマPの発生領域Oにおいて、外壁部81の内周面81a上のプラズマ原料SにレーザビームLBが照射され、プラズマPが発生される。
【0326】
回転ドラムRDの貯留空間へのプラズマ原料Sの供給量を所定量以上に維持し、回転ドラムRDを連続的に回転させることにより、常にレーザビームLBの照射位置25にプラズマ原料Sを供給することが可能となり、発生領域OにてプラズマPを発生させることが可能となる。
【0327】
図20及び
図21に示すLPP方式の光源装置に用いられる光源ユニット79においても、本発明に係る膜厚調整機構SKを使用することが可能である。
【0328】
図22及び
図23は、光源ユニット79にて用いられる膜厚調整機構SKの構成例を示す模式図である。
図22は、膜厚調整機構SKを奥行方向(Y方向)の手前側から見た場合の図である。
図23は、膜厚調整機構SKを左右方向(X方向)の左側から見た場合の左側面図である。なお、
図20及び
図21では、膜厚調整機構SKの図示は模式的に行われており、膜厚調整機構SKの詳しい構成については
図22及び
図23を参照されたい。
【0329】
膜厚調整機構SKは、支持柱84と、支持部材85と、スキマー側部材86と、X方向移動部材87と、Z方向移動部材88と、スキマー支持部材89と、スキマー90とを有する。
【0330】
支持柱84は、回転ドラムRDの左端部の膜厚調整領域32の付近の位置に固定され、チャンバ4の底面から上方側に延在するように構成される。支持部材85は、支持柱84の上方側の端部に、右側に延在するように接続されて固定される。
【0331】
スキマー側支持部材86、X方向移動部材87、及びZ方向移動部材88は、
図6~
図10に示すスキマー側部材49、X方向移動部材38、及びY方向移動部材39と同様の構成を有し、向きを変えて配置されている。
【0332】
図6~
図10に示す構成では、スキマー側部材49、X方向移動部材38、及びY方向移動部材39の各々が、水平方向と平行となるように配置される。そして、スキマー側部材49の奥側の側面が、コンテナ側部材48の手前側に向いている面に接続されて固定される。これにより、左右方向(X方向)及び回転軸方向(Y方向)の2方向において、スキマー41の姿勢を保持したまま、スキマー41を直線的に移動させることが可能である。
【0333】
図22及び
図23に示す構成では、
図6~
図10に示すスキマー側部材49、X方向移動部材38、及びY方向移動部材39の各々が、XZ平面方向と平行となるように、すなわち奥行方向(Y方向)に対して直交するように向きを変更する。そして、スキマー側部材49の上方側の側面(
図6~
図10ではコンテナ側部材48に接続される側面)が、支持部材85の下方側の面に接続される。
【0334】
このように接続部材85に接続されたスキマー側部材49、X方向移動部材38、及びY方向移動部材39のうち、スキマー側部材49が
図22及び
図24に示すスキマー側部材86となる。またX方向移動部材38がX方向移動部材87となり、Y方向移動部材39がZ方向移動部材88となる。従って本実施形態では、左右方向(X方向)及び上下方向(Z方向)の2方向において、位置保持機能及び姿勢保持機能を発揮することが可能となる。
【0335】
スキマー保持部材89は、左右方向(X方向)に延在するように構成され、Z方向移動部材88の奥側の面に接続される。スキマー保持部材89の右端部は、回転ドラムRDのプラズマ原料Sが供給される貯留空間まで延びている。
【0336】
スキマー90は、クランク形状を有し、第1の平面部91aと、第2の平面部91bと、第3の平面部91cとを有する。すなわち、スキマー90は、一方向に延在する細長い平板形状を、長辺方向における両端部分にて、互いに反対の向きに直角に折り曲げた形状を有する。
【0337】
一方の端部の折り曲げられた部分が第1の平面部91aとなり、他方の端部の折り曲げられた部分が第3の平面部91cとなる。第1及び第3の平面部91a及び91cの間の、細長い平板形状の部分が、第2の平面部91bとなる。なお、第1~第3の平面部91a~91cの短軸方向のサイズは全て等しい。
【0338】
図22及び
図23に示すように、本実施形態では、第2の平面部91bがYZ平面と平行となるように、また第2の平面部91bの長辺方向が上下方向(Z方向)に沿うように、スキマー90が配置される。
【0339】
また、第1の平面部91aは、第2の平面部91bの上端から左側に直角に折り曲げられて構成される。第3の平面部91cは、第2の平面部91bの下端から右側に直角に折り曲げられて構成される。従って、第1及び第3の平面部91a及び91cは、水平方向に平行に配置される。
【0340】
スキマー90の第1の平面部91aの上方側の面が、スキマー支持部材89の下方側の面の右端部の位置に接続される。
【0341】
図20に示すように、本実施形態では、スキマー90の第2の平面部91bの左側の面が主調整面となり、回転ドラムRDの外壁部81の内周面81aに付着したプラズマ原料Sの膜厚を調整することが可能である。また、本実施形態では、スキマー90の第3の平面部91cの下方側の面が副調整面となり、底面部80の周縁側の領域(外壁部81の近傍の領域)に付着するプラズマ原料Sの膜厚を調整することが可能である。底面部80に付着するプラズマ原料Sの膜厚も調整することで、安定した膜厚調整が実現される。
【0342】
すなわち、
図22及び
図23に示す膜厚調整機構SKでは、左右方向(X方向)を第1の方向とし、上下方向(Z方向)(底面部80に対向する方向)を第2の方向として、膜厚調整機構SKが構成される。スキマー側部材86、X方向移動部材87、及びY方向移動部材88により、左右方向(X方向)及び上下方向(Z方向)の2方向において、スキマー90の姿勢を保持したまま、スキマー41を直線的に移動させることが可能である。
【0343】
なお、容器型の回転ドラムDRに対して、レーザビームLBの照射位置25(発生O)の位置や、膜厚調整機構SKが配置される位置は限定されず、任意に設定可能である。
【0344】
図24は、スキマー90の変形例を示す模式図である。
図24に示すスキマー90では、第2の平板部材91bの下半分の部分、及び下方側の第3の平板部91cの奥行方向(Y方向)におけるサイズが大きくなるように設計されている。
【0345】
すなわち、上方側の第1の平板部91a、及び第2の平板部材91bの上半分の部分の部分は、奥行方向(Y方向)において第1のサイズで形成される。第2の平板部材91bの下半分の部分、及び下方側の第3の平板部91cは、奥行方向(Y方向)にいて第1のサイズよりも大きい第2のサイズで形成される。
【0346】
図24に示すように、第1~第3の平板部91a~91cの奥側(回転の上流側)の端面は、奥行方向(Y方向)において同じ位置に揃えられる。従って、第2の平板部材91bの下半分の部分、及び第3の平板部91cの手前側(回転の下流側)の端面は、手前側に突出するように構成される。従って、
図24に示すように、左右方向(X方向)の右側から見た場合、スキマー90はL字を左右反転した形状となる。
【0347】
例えば、回転ドラムRDの回転数が大きくなる場合や、回転ドラムRDの貯留空間に収容されるプラズマ原料Sの量が多い場合等では、回転ドラムRDの底面部80から外壁部81の内周面81aに沿って、プラズマ原料Sが上方に移動してくる場合もあり得る。
図24に示すように、スキマー90の下方側の部分の幅を大きくすることで、底面部80から上方に移動してくるプラズマ原料Sの影響を抑制することが可能となり、プラズマPの発生領域Oにおけるプラズマ原料Sの膜厚を安定して調整することが可能となる。
【0348】
このようにLPP方式の光源装置においても、本発明に係る膜厚調整機構を適用することが可能となる。これにより、回転体T(回転ドラムRD)の微妙な歪み、光源装置の駆動時における回転体T(回転ドラムRD)の熱膨張や変形、回転動作時のブレ、プラズマ原料Sの粘性の変化等により発生する意図しない応力の影響を十分に抑制することが可能となる。また、EUV光の放射動作中における回転体T(回転ドラムRD)の回転の強制的な停止、膜厚調整機構SKの変形や破損、スキマーの各調整面の摩耗や削れ等を、防止することが可能となる。
【0349】
この結果、プラズマPの発生領域Oにおける液体状のプラズマ原料Sの膜厚を高い精度で、長期間安定して調整することが可能となる。この結果、所望のEUV光の光量を得ることが可能となり、光源装置の安定した長時間運転が実現される。その他、上記した様々な効果を発揮することが可能である。
【0350】
もちろん、LPP方式の光源装置に対して、本発明に係る膜厚調整機構を適用する際に、
図17に例示したような一方向のみに位置保持機能及び姿勢保持機能を発揮する構成や、
図18に例示したような平行板ばね機構を用いた構成が採用されてもよい。その他、任意の構成が採用されてよい。
【0351】
また、上記の実施形態では、エネルギービームの照射を利用して液体状のプラズマ原料Sをプラズマ化して放射線を取り出す光源装置を説明した。これに限定されず、例えばエネルギービームの照射を利用しない任意の装置等においても、液体状のプラズマ原料Sの膜厚調整に本発明を適用することが可能である。
【0352】
各図面を参照して説明した光源装置、光源部、光源ユニット、回転体、膜厚調整機構、位置保持機構、姿勢保持機構、スキマー、各種チャンバ等の各構成はあくまで一実施形態であり、本技術の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本技術を実施するための他の任意の構成が採用されてよい。
【0353】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現され得る概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0354】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含なまい概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0355】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0356】
D1…第1の距離
LB…レーザビーム
O…プラズマの発生領域
P…プラズマ
R…放電領域
RD…回転ドラム
S…プラズマ原料
T…回転体
1…光源装置
5、76、79…光源ユニット
7…放電電極の端面
24a…放電電極の第1の主面
24b…放電電極の第2の主面
28…付着面
30…膜厚調整部材
31…支持機構
32…膜厚調整領域
33…位置保持機構
34…姿勢保持機構
35…主調整面
37…基体部材
38…X方向移動部材
39…Y方向移動部材
40…スキマー支持部材
41…スキマー
61a…第1の副調整面
61b…第2の副調整面
77a…回転体の第1の主面
77b…回転体の第2の主面
77c…回転体の端面
81a…回転ドラムの内周面