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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008289
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】超音波撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/15 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A61B8/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110038
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】坪田 悠史
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD08
4C601DE18
4C601EE17
4C601EE21
4C601GB05
4C601GC02
4C601GC10
4C601GC22
4C601GC24
(57)【要約】
【課題】超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度を計測するためのメンテナンスコストの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を行うことを目的とする。
【解決手段】計測容器16内に計測対象Paが挿入されて収容される。計測対象Paを囲むように振動子アレイ18が配置される。振動子アレイ18を用いて超音波を送受信することで計測対象Paが撮像される。循環装置22は、超音波媒体を殺菌して計測容器16に供給する。制御装置24は、計測対象Paと超音波伝搬媒体との接触時間に関する情報に基づいて、循環装置22による超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象を収容する計測容器と、
前記計測対象を囲むように配列された複数の振動子を含む振動子アレイと、
前記振動子アレイを用いて超音波を送受信することで前記計測対象を撮像する撮像装置と、
超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加することで前記超音波伝搬媒体を殺菌して前記計測容器に供給する循環装置と、
前記計測対象と前記超音波伝搬媒体との接触時間に関する情報に基づいて、前記循環装置による前記超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御する制御装置と、
を含むことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波撮像装置において、
前記接触時間に関する情報は、前記撮像装置による撮像回数を示す情報であり、
前記制御装置は、前記撮像装置による撮像回数が閾値を超えた場合、前記循環装置によって前記超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波撮像装置において、
前記接触時間に関する情報は、前記撮像装置による撮像時間を示す情報であり、
前記制御装置は、前記撮像装置による撮像時間が閾値を超えた場合、前記循環装置によって前記超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波撮像装置において、
前記撮像装置による撮像の前後に前記超音波伝搬媒体と前記計測対象とが接触している撮像準備時間を計測する計測機能を更に含み、
前記接触時間に関する情報は、前記撮像装置による撮像時間と、前記計測機能によって計測された前記撮像準備時間との合計時間を示す情報であり、
前記制御装置は、前記合計時間が閾値を超えた場合、前記循環装置によって前記超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波撮像装置において、
前記計測機能は、前記計測容器の内部を撮像するカメラを含み、前記カメラによって撮像された画像に基づいて、前記計測対象が前記計測容器に収容されているか否かを判定する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載の超音波撮像装置において、
前記制御装置は、前記接触時間に関する情報と前記計測対象のサイズに関する情報とに基づいて、前記循環装置による前記超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波撮像装置において、
前記計測対象のサイズに関する情報は、前記計測容器に収容されている前記計測対象の高さを示す情報、及び、前記計測容器に収容されている前記計測対象の表面積を示す情報の中の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波撮像装置において、
前記制御装置は、前記撮像装置による撮像の結果から前記計測対象のサイズに関する情報を取得する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項9】
請求項1に記載の超音波撮像装置において、
前記超音波伝搬媒体に紫外線を照射する照射装置を更に含む、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項10】
請求項9に記載の超音波撮像装置において、
前記照射装置は、前記超音波伝搬媒体に殺菌成分が添加される前に前記超音波伝搬媒体に紫外線を照射する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項11】
請求項9に記載の超音波撮像装置において、
前記制御装置は、前記接触時間に関する情報と前記照射装置が前記超音波伝搬媒体に紫外線を照射する照射時間に関する情報とに基づいて、前記循環装置による前記超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項12】
請求項11に記載の超音波撮像装置において、
前記制御装置は、前記接触時間と前記照射時間に係数を乗算することで得られる時間との和が、閾値を超えた場合、前記循環装置によって前記超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項13】
請求項11に記載の超音波撮像装置において、
前記制御装置は、前記接触時間の累積値が閾値を超えた場合、前記超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を中止し、予め定められた時間にわたって前記照射装置によって前記超音波伝搬媒体に紫外線を照射する、
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波撮像装置において、計測対象が収容される容器に超音波伝搬媒体を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、超音波CT(Computed Tomography)装置においては(特許文献1参照)、計測対象を収容する計測容器内に、超音波が伝搬し易い超音波伝搬媒体(例えば水)が供給される。
【0003】
特許文献2に記載されている超音波撮像装置においては、フィルタと脱気装置とが水循環路に設置されている。
【0004】
特許文献3に記載されている超音波撮像装置においては、フィルタと脱気装置と滅菌装置とが水循環路に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/098641号公報
【特許文献2】国際公開第2021/175668号公報
【特許文献3】特開2019-162294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の患者が同じ超音波伝搬媒体に触れると、細菌やウイルスが患者間で伝搬する可能性がある。それを回避するために、一般的に、超音波伝搬媒体を殺菌することが行われる。
【0007】
例えば、塩素化合物等の殺菌成分を超音波伝搬媒体に添加することが考えられる。計測対象が超音波伝搬媒体に触れると超音波伝搬媒体中の残留塩素濃度が減少するため、その減少に応じて殺菌成分が超音波伝搬媒体に追加される。このように残留塩素濃度を制御するために、残留塩素濃度を計測する必要がある。塩素計を用いて残留塩素濃度を計測することが考えられるが、計測精度を保つために塩素計の電極を洗浄したり試薬を使用したりする必要があるため、メンテナンスコストが増大する。
【0008】
本発明の目的は、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度を計測するためのメンテナンスコストの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、計測対象を収容する計測容器と、前記計測対象を囲むように配列された複数の振動子を含む振動子アレイと、前記振動子アレイを用いて超音波を送受信することで前記計測対象を撮像する撮像装置と、超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加することで前記超音波伝搬媒体を殺菌して前記計測容器に供給する循環装置と、前記計測対象と前記超音波伝搬媒体との接触時間に関する情報に基づいて、前記循環装置による前記超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御する制御装置と、を含むことを特徴とする超音波撮像装置である。
【0010】
上記の構成によれば、計測対象と超音波伝搬媒体との接触時間に関する情報に基づいて、超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加が制御される。超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度は、計測対象と超音波伝搬媒体との接触時間に依存して変化する。したがって、接触時間に基づいて、殺菌成分の残留濃度が推定される。上記の構成では、そのような原理を利用して、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度が制御される。これにより、残留濃度を計測する計測器を別途設けずに、殺菌成分の残留濃度を制御して超音波伝搬媒体を殺菌することができる。その結果、メンテナンスコストの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を行うことができる。
【0011】
前記接触時間に関する情報は、前記撮像装置による撮像回数を示す情報であってもよい。この場合、前記制御装置は、前記撮像装置による撮像回数が閾値を超えた場合、前記循環装置によって前記超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加する。
【0012】
前記接触時間に関する情報は、前記撮像装置による撮像時間を示す情報であってもよい。この場合、前記制御装置は、前記撮像装置による撮像時間が閾値を超えた場合、前記循環装置によって前記超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加する。
【0013】
超音波撮像装置は、前記撮像装置による撮像の前後に前記超音波伝搬媒体と前記計測対象とが接触している撮像準備時間を計測する計測機能を更に含んでもよい。この場合、前記接触時間に関する情報は、前記撮像装置による撮像時間と、前記計測機能によって計測された前記撮像準備時間との合計時間を示す情報である。前記制御装置は、前記合計時間が閾値を超えた場合、前記循環装置によって前記超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加する。前記計測機能は、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアによって実現されてもよい。
【0014】
前記計測機能は、前記計測容器の内部を撮像するカメラを含み、前記カメラによって撮像された画像に基づいて、前記計測対象が前記計測容器に収容されているか否かを判定してもよい。前記計測機能は、ユーザによるGUI(Graphical User Interface)等の操作に基づいて、前記計測対象が前記計測容器に収容されているか否かを判定してもよい。
【0015】
前記制御装置は、前記接触時間に関する情報と前記計測対象のサイズに関する情報とに基づいて、前記循環装置による前記超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御してもよい。
【0016】
前記計測対象のサイズに関する情報は、前記計測容器に収容されている前記計測対象の高さを示す情報、及び、前記計測容器に収容されている前記計測対象の表面積を示す情報の中の少なくとも1つを含んでもよい。
【0017】
前記制御装置は、前記撮像装置による撮像の結果から前記計測対象のサイズに関する情報を取得してもよい。
【0018】
超音波撮像装置は、前記超音波伝搬媒体に紫外線を照射する照射装置を更に含んでもよい。
【0019】
前記照射装置は、前記超音波伝搬媒体に殺菌成分が添加される前に前記超音波伝搬媒体に紫外線を照射してもよい。
【0020】
前記制御装置は、前記接触時間に関する情報と前記照射装置が前記超音波伝搬媒体に紫外線を照射する照射時間に関する情報とに基づいて、前記循環装置による前記超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御してもよい。
【0021】
前記制御装置は、前記接触時間と前記照射時間に係数を乗算することで得られる時間との和が、閾値を超えた場合、前記循環装置によって前記超音波伝搬媒体に殺菌成分を添加してもよい。
【0022】
前記制御装置は、前記接触時間の累積値が閾値を超えた場合、前記超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を中止し、予め定められた時間にわたって前記照射装置によって前記超音波伝搬媒体に紫外線を照射してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度を計測するためのメンテナンスコストの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】超音波CT装置の構成を示す図である。
図2】撮像装置の構成を示すブロック図である。
図3】循環装置の構成を示すブロック図である。
図4】超音波CT装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図5】接触合計時間と殺菌成分の推定濃度との関係を示すグラフである。
図6】超音波CT装置の動作の流れを示すシーケンス図である。
図7】実施例1に係る動作の流れを示すフローチャートである。
図8】実施例1に係る動作の流れを示すシーケンス図である。
図9】実施例2に係る循環装置の構成を示すブロック図である。
図10】計測容器、計測対象、振動子アレイ及び超音波画像を示す図である。
図11】実施例3に係る動作の流れを示すフローチャートである。
図12】実施例3に係る動作の流れを示すシーケンス図である。
図13】実施例4に係る循環装置の構成を示すブロック図である。
図14】実施例4に係る動作の流れを示すフローチャートである。
図15】実施例4に係る動作の流れを示すシーケンス図である。
図16】検査回数に対する遊離残留塩素の推定濃度の変化を示すグラフである。
図17】検査回数に対する推定濃度誤差の変化を示すグラフである。
図18】実施例5に係る動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照して、実施形態に係る超音波撮像装置の一例である超音波CT装置について説明する。図1には、超音波CT装置10の構成が示されている。
【0026】
超音波CT装置10は、ベッド12と計測部14とを含む。撮像時には、被検体Pが、腹臥位の状態でベッド12上に乗せられる。
【0027】
計測部14は、計測容器16と振動子アレイ18とを含む。計測容器16は、例えば円筒状の容器であり、例えばポリエチレン等のように超音波を透過し易い材質によって構成される。計測容器16には計測対象Paが挿入されて収容される。ここでは一例として、計測対象Paは被検体Pの乳房であるが、計測対象Paは乳房に限定されず、その他の部位であってもよい。また、計測容器16には超音波伝搬媒体が収容される。超音波伝搬媒体は、例えば水や温水等である。超音波伝搬媒体は、後述する循環装置22によって、加熱、浄化及び脱気されてから計測容器16に供給される。
【0028】
振動子アレイ18は、計測対象Paを囲むように配列された複数の超音波振動子(例えば圧電素子)を含む。図2には、図1中のA-A断面図が示されている。複数の超音波振動子が、計測容器16の外表面に沿って円環状に配置されることで、振動子アレイ18が構成される。これにより、計測対象Paを囲むように振動子アレイ18が配置される。振動子アレイ18に含まれる各超音波振動子から計測対象Paに対して超音波が照射され、計測対象Paを透過した超音波、及び、計測対象Paで反射した超音波が、各超音波振動子によって検出される。振動子アレイ18は、計測容器16の外表面に沿って上下方向(Z方向)に移動可能である。
【0029】
また、超音波CT装置10は、撮像装置20と循環装置22と制御装置24とを含む。
【0030】
撮像装置20は、振動子アレイ18を用いて超音波を送受信することで計測対象Paを撮像する。
【0031】
循環装置22は、超音波伝搬媒体を加熱、浄化(例えばフィルタによるろ過)、殺菌(例えば殺菌液の添加)及び脱気して計測容器16に供給する。また、循環装置22は、超音波伝搬媒体を殺菌して計測容器16に供給する。
【0032】
制御装置24は、超音波CT装置10の各部の動作を制御する。例えば、制御装置24は、振動子アレイ18の移動を制御したり、撮像装置20による超音波の送受信を制御したり、循環装置22による超音波伝搬媒体の供給を制御したりする。また、制御装置24は、循環装置22による超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御する。
【0033】
制御装置24は、例えばプロセッサや電子回路等のハードウェア資源を利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また、制御装置24は、例えばコンピュータによって実現されてもよい。つまり、コンピュータが備えるCPUやメモリ等のハードウェア資源と、CPU等の動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により、制御装置24の全部又は一部が実現されてもよい。当該プログラムは、CDやDVD等の記録媒体を経由して、又は、ネットワーク等の通信経路を経由して、記憶装置に記憶される。別の例として、制御装置24は、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現されてもよい。もちろん、GPU(Graphics Processing Unit)等が用いられてもよい。制御装置24は、単一の装置によって実現されてもよいし、制御装置24が有する各機能が、1又は複数の装置によって実現されてもよい。
【0034】
図2を参照して、撮像装置20の構成について説明する。図2は、撮像装置20の構成を示すブロック図である。上述したように、図2には、振動子アレイ18が示されている。
【0035】
撮像装置20は、振動子選択器26と、送信器28と、受信器30と、送受分離器32と、信号処理部34と、を含み、超音波の送受信によって超音波画像(例えば断層画像)を生成する。
【0036】
振動子選択器26によって、超音波の送受信を行う超音波振動子が選択される。超音波の送信時において、送信器28は、超音波振動子に対して送信信号を供給する。これにより、超音波の送信ビームが形成される。超音波の受信時において、超音波振動子によって超音波が受信され、受信信号が受信器30に出力される。送受分離器32は、超音波の送信と受信とを切り替える。受信信号は受信器30を介して信号処理部34に出力される。信号処理部34によって受信信号に対して信号処理や画像処理が適用され、その結果、超音波画像が生成される。超音波画像は、超音波CT装置10に設けられているディスプレイに表示されてもよいし、超音波CT装置10に設けられているメモリに記憶されてもよいし、他の装置に送信されてもよい。
【0037】
図3を参照して、循環装置22の構成について説明する。図3は、循環装置22の構成を示すブロック図である。
【0038】
循環装置22は、貯水槽36と、ヒータ38と、ポンプ40と、フィルタ42と、脱気装置44と、ポンプ46と、フィルタ48と、殺菌液容器50と、ポンプ52と、を含む。これらは、チューブや配管等によって接続されている。これらの動作は制御装置24によって制御される。
【0039】
貯水槽36には、超音波伝搬媒体が収容される。貯水槽36内の超音波伝搬媒体は、ポンプ40の圧力によってヒータ38に送られ、ヒータ38によって、予め定められた温度に温められる。温められた超音波伝搬媒体は、フィルタ42と脱気装置44とを通って計測容器16に送られる。また、計測容器16内の超音波伝搬媒体は、ポンプ46の圧力によってフィルタ48へ送られ、フィルタ48を通って貯水槽36へ送られる。フィルタ42,48によって、ゴミ等の異物が捕捉される。フィルタ42,48として、例えば、中空糸フィルタや滅菌フィルタが用いられる。
【0040】
殺菌液容器50には、超音波伝搬媒体を殺菌するための殺菌液が収容されている。殺菌液容器50内の殺菌液は、ポンプ52の圧力によって貯水槽36へ送られる。これにより、貯水槽36に収容されている超音波伝搬媒体が、殺菌液によって殺菌される。殺菌液はとして、例えば、塩素化合物を含む液体(例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液等)が用いられる。
【0041】
制御装置24は、計測対象Paと超音波伝搬媒体との接触時間に関する情報に基づいて、循環装置22による超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御する。具体的には、制御装置24は、ポンプ52を制御することで、殺菌液容器50から貯水槽36への殺菌液の送出を制御する。これにより、超音波伝搬媒体への殺菌液(つまり殺菌成分)の添加が制御される。
【0042】
接触時間は、計測対象Paと超音波伝搬媒体とが接触した時間であり、例えば、撮像回数に相当する時間、撮像時間、又は、撮像時間と撮像準備時間との合計である。接触時間に関する情報は、撮像回数を示す情報、撮像時間を示す情報、又は、撮像時間と撮像準備時間との合計を示す情報である。
【0043】
撮像回数は、撮像装置20による撮像の回数である。例えば、1回の検査で実行される撮像が1回の撮像として定められる。具体的には、1回の検査で必要な超音波画像を取得するための撮像が、1回の撮像として定められる。この場合、撮像回数は検査回数である。別の例として、1人の被検体Pに対する撮像が1回の撮像として定められてもよい。この場合、N人(Nは1以上の整数)の被検体Pが撮像された場合、撮像回数はN回である。あるいは、計測対象Paが乳房の場合、1つの計測対象Paに対する撮像が1回の撮像として定められてもよい。N人(Nは1以上の整数)の被検体Pが左右の乳房を計測対象Paとして撮像された場合、撮像回数は2N回である。もちろん、被検体Pの姿勢を変えるなどして1つの計測対象Paに対して複数回撮像した場合は、その分、撮像回数が増える。
【0044】
撮像時間は、撮像装置20による撮像の時間である。例えば、N回の検査に対応するN回の撮像が行われた場合、N回の撮像に要した時間が、ここでの撮像時間である。
【0045】
撮像準備時間は、撮像装置20による撮像の前後に超音波伝搬媒体と計測対象Paとが接触している時間である。
【0046】
制御装置24は、計時機能を有し、撮像時間や撮像準備時間を計測する。
【0047】
以下、図4を参照して、超音波CT装置10の動作の概略について説明する。図4には、超音波CT装置10の動作の流れを示すフローチャートが示されている。以下の各実施例では、一例として、超音波伝搬媒体として水が用いられる。計測容器16内には計測対象Paが挿入されて収容されている。水が計測容器16内に供給される前に、計測対象Paが計測容器16内に収容されてもよいし、水が計測容器16内に供給された後に、計測対象Paが計測容器16内に収容されてもよいし、水が計測容器16内に供給されている最中に計測対象Paが計測容器16内に収容されてもよい。また、水が計測容器16内から回収される前に、計測対象Paが計測容器16内から引き抜かれてもよいし、水が計測容器16内から回収された後に、計測対象Paが計測容器16内から引き抜かれてもよいし、水が計測容器16内から回収されている最中に計測対象Paが計測容器16内から引き抜かれてもよい。以下に説明する各実施例でも同様である。
【0048】
まず、超音波伝搬媒体としての水が、循環装置22によって計測容器16内に供給される(S01)。具体的には、貯水槽36内の水が、ポンプ40によってヒータ38へ送られ、ヒータ38によって温められ、フィルタ42と脱気装置44とを介して計測容器16内に供給される。
【0049】
次に、撮像装置20によって計測対象Paが撮像される(S02)。これにより、計測対象Paの超音波画像が生成される。
【0050】
次に、計測容器16内の水が、循環装置22によって回収される(S03)。具体的には、計測容器16内の水は、ポンプ46によって回収され、フィルタ48を介して貯水槽36内に送られる。
【0051】
制御装置24は、接触合計時間を更新する(S04)。接触合計時間は、計測対象Paと超音波伝搬媒体としての水とが接触した時間(つまり接触時間)の合計である。制御装置24は、撮像回数、撮像時間、又は、撮像時間と撮像準備時間との合計、に基づいて、接触時間を算出する。制御装置24は、検査毎に接触時間を算出する。例えば、複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査される場合、制御装置24は、各被検体Pについて接触時間を算出し、各被検体P(つまり各検査)の接触時間の合計を接触合計時間として算出する。例えば、1人目の検査の接触時間が3分であり、2人目の検査の接触時間が4分である場合、1人目の検査が終了したときの接触合計時間は3分であり、2人目の検査が終了したときの接触合計時間は7分である。
【0052】
制御装置24は、接触合計時間が閾値を超えているか否かを判定する(S05)。閾値は予め定められた値である。ユーザによって閾値が変更されてもよい。
【0053】
接触合計時間が閾値を超えていない場合(S05,No)、処理はステップS01に戻る。接触合計時間が閾値を超えている場合(S05,Yes)、処理はステップS06に移行する。
【0054】
複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査される場合、検査毎(つまり被検体P毎)に、ステップS01~S05の処理が実行される。例えば、1人目の撮像が行われて撮像が終了すると(S02)、計測容器16内の水が回収され(S03)、接触合計時間が更新され(S04)、接触合計時間が閾値を超えているか否かが判断される(S05)。その時点で、接触合計時間が閾値を超えていない場合(S05,No)、処理はステップS01に移行し、計測容器16内に水が供給される(S01)。そして、2人目の撮像が行われて撮像が終了すると(S02)、計測容器16内の水が回収され(S03)、接触合計時間が更新され(S04)、接触合計時間が閾値を超えているか否かが判断される(S05)。それ以降の被検体Pについても同様である。
【0055】
ステップS06では、殺菌液(つまり殺菌成分)が水に添加される。具体的には、制御装置24は、ポンプ52を制御することで、殺菌液容器50から貯水槽36へ殺菌液を送る。これにより、貯水槽36に回収された水に、殺菌液が添加され、貯水槽36内の水が殺菌される。例えば、遊離残留塩素濃度が、予め定められた濃度の範囲(例えば、0.4~1.0mg/L)となるように、制御装置24は、貯水槽36へ送られる殺菌液の量を制御する。
【0056】
制御装置24は、接触合計時間をリセットする(S07)。これにより、接触合計時間は0分となる。以降、ステップS01から処理が実行される。
【0057】
図5を参照して、接触合計時間と超音波伝搬媒体中の殺菌成分の推定濃度との関係について説明する。図5には、その関係を示すグラフが示されている。横軸は、接触合計時間を示しており、縦軸は、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の推定濃度を示している。
【0058】
接触合計時間が長くなるほど、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の推定濃度は低くなる。そのため、接触合計時間が長くなるほど、殺菌成分による殺菌の効果が低くなる。そこで、接触合計時間が閾値を超えた場合に、殺菌成分(例えば殺菌液)を超音波伝搬媒体に添加することで、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の推定濃度を高くして、殺菌の効果を向上させることができる。接触合計時間が閾値を超えた場合、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の濃度が、予め定められた濃度(例えば、超音波伝搬媒体の殺菌の目的を実現するために必要な濃度)よりも低くなったと推定される。それ故、接触合計時間が閾値を超えた場合に、殺菌成分を超音波伝搬媒体に添加することで、殺菌の目的を実現することができる。
【0059】
以下、図6を参照して、超音波CT装置10の動作の概略について説明する。図6は、超音波CT装置10の動作の流れを示すシーケンス図である。
【0060】
給水指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22に送られる(S11)。循環装置22は、給水指示に従って、計測容器16内に水を供給する(S12)。予め定められた量の水が計測容器16内に供給されると、給水が完了し(S13)、給水が完了したことを示す情報が、循環装置22から制御装置24に送られる。
【0061】
給水が完了すると、撮像指示を示す情報が、制御装置24から撮像装置20に送られる(S14)。撮像装置20は、撮像指示に従って、計測対象Paを撮像する(S15)。これにより、計測対象Paを表す超音波画像が生成される。撮像が完了すると(S16)、撮像が完了したことを示す情報が、撮像装置20から制御装置24に送られる。
【0062】
撮像が完了すると、回収指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22に送られる(S17)。循環装置22は、回収指示に従って、計測容器16内の水を排水して回収する(S18)。水の回収が完了すると(S19)、水の回収が完了したことを示す情報が、循環装置22から制御装置24が送られる。
【0063】
制御装置24は、接触合計時間を更新し、接触合計時間が閾値を超えているか否かを判定する(S20)。
【0064】
接触合計時間が閾値を超えている場合、添加指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22に送られる(S21)。循環装置22は、添加指示に従って、殺菌液(つまり殺菌成分)を、回収した水に添加する(S22)。殺菌液の添加が完了すると(S23)、添加が完了したことを示す情報が、循環装置22から制御装置24に送られる。接触合計時間がリセットされる(S24)。以降、ステップS11から処理が実行される。
【0065】
接触合計時間が閾値を超えていない場合、殺菌液は水に添加されず、処理は、ステップS11に戻る。
【0066】
以上のように、接触合計時間に基づいて超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御することで、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度を計測する計測器を別途設置する必要がない。そのため、計測器のメンテナンスが不要となる。その結果、メンテナンスコストの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を実現することができる。
【0067】
以下、具体的な実施例について説明する。
【0068】
(実施例1)
図7を参照して、実施例1に係る動作について説明する。図7には、実施例1に係る動作の流れを示すフローチャートが示されている。実施例1では、撮像装置20による撮像回数が閾値を超えた場合、超音波伝搬媒体に殺菌成分(例えば殺菌液)が添加される。つまり、撮像回数に相当する時間が、上述した接触合計時間の一例に相当する。ここでは一例として、1回の検査で実行される撮像が1回の撮像として定められる。
【0069】
まず、超音波伝搬媒体としての水が、循環装置22によって計測容器16内に供給される(S31)。
【0070】
次に、撮像装置20によって計測対象Paが撮像される(S32)。これにより、計測対象Paの超音波画像が生成される。
【0071】
次に、計測容器16内の水が、循環装置22によって回収される(S33)。具体的には、計測容器16内の水は、ポンプ46によって回収され、フィルタ48を介して貯水槽36内に送られる。
【0072】
制御装置24は、撮像合計回数を更新する(S34)。例えば、1人の被検体P当たり1回の撮像が行われ、その1回の撮像が1回の検査に相当する。複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査され、制御装置24は、撮像の合計回数を計測する。例えば、N人の被検体Pが撮像された場合、撮像合計回数はN回である。
【0073】
制御装置24は、撮像合計回数が閾値を超えているか否かを判定する(S35)。閾値は予め定められた値である。ユーザによって閾値が変更されてもよい。
【0074】
撮像合計回数が閾値を超えていない場合(S35,No)、処理はステップS31に戻る。撮像合計回数が閾値を超えている場合(S35,Yes)、処理はステップS36に移行する。
【0075】
複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査される場合、検査毎(つまり被検体P毎)に、ステップS31~S35の処理が実行され、撮像合計回数が更新される(S35)。撮像合計回数が閾値を超えていない場合(S35,No)、処理はステップS31に移行し、計測容器16内に水が供給される(S31)。そして、次に検査が実行される。撮像合計回数が閾値を超えている場合(S35,Yes)、処理はステップS36に移行する。
【0076】
ステップS36では、貯水槽36内に回収された水に殺菌液(つまり殺菌成分)が添加される。例えば、遊離残留塩素濃度が、予め定められた濃度の範囲(例えば、0.4~1.0mg/L)となるように、制御装置24は、貯水槽36へ送られる殺菌液の量を制御する。
【0077】
制御装置24は、撮像合計回数をリセットする(S37)。これにより、撮像合計回数は0回となる。以降、ステップS31から処理が実行される。
【0078】
以下、図8を参照して、実施例1に係る動作について説明する。図8は、実施例1に係る動作の流れを示すシーケンス図である。
【0079】
給水指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22に送られる(S41)。循環装置22は、給水指示に従って、計測容器16内に水を供給する(S42)。予め定められた量の水が計測容器16内に供給されると、給水が完了し(S43)、給水が完了したことを示す情報が、循環装置22から制御装置24に送られる。
【0080】
給水が完了すると、撮像指示を示す情報が、制御装置24から撮像装置20に送られる(S44)。撮像装置20は、撮像指示に従って、計測対象Paを撮像する(S45)。これにより、計測対象Paを表す超音波画像が生成される。撮像が完了すると(S46)、撮像が完了したことを示す情報が、撮像装置20から制御装置24に送られる。
【0081】
撮像が完了すると、回収指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22に送られる(S47)。循環装置22は、回収指示に従って、計測容器16内の水を排水して回収する(S48)。水の回収が完了すると(S49)、水の回収が完了したことを示す情報が、循環装置22から制御装置24が送られる。
【0082】
制御装置24は、撮像合計回数を更新し、撮像合計回数が閾値を超えているか否かを判定する(S50)。
【0083】
撮像合計回数が閾値を超えている場合、添加指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22に送られる(S51)。循環装置22は、添加指示に従って、殺菌液(つまり殺菌成分)を、回収した水に添加する(S52)。殺菌液の添加が完了すると(S53)、添加が完了したことを示す情報が、循環装置22から制御装置24に送られる。撮像合計回数はリセットされる(S54)。以降、ステップS41から処理が実行される。
【0084】
撮像合計回数が閾値を超えていない場合、殺菌液は水に添加されず、処理は、ステップS51に戻る。
【0085】
以上のように、撮像合計回数に基づいて超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御することで、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度を計測する計測器を別途設置する必要がない。そのため、計測器のメンテナンスが不要となる。その結果、メンテナンスの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を実現することができる。
【0086】
上述した実施例1では、撮像合計回数に基づいて殺菌成分の添加が制御されるが、撮像合計時間に基づいて殺菌成分の添加が制御されてもよい。この場合、ステップS34では、制御装置24は、撮像合計時間を更新する。制御装置24は、1回の撮像(つまり1回の検査)に要する時間を計測する。複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査された場合、制御装置24は、複数の検査の撮像時間の合計を算出する。例えば、N回の検査に対応するN回の撮像が行われた場合、N回の撮像に要した時間が、ここでの撮像合計時間である。
【0087】
制御装置24は、撮像合計時間が閾値を超えているか否かを判定する(S35)。閾値は予め定められた値である。ユーザによって閾値が変更されてもよい。撮像時間が閾値を超えている場合(S35,No)、処理はステップS31に戻る。撮像時間が閾値を超えている場合(S35,Yes)、回収された水に殺菌成分が添加される(S36)。制御装置24は、撮像時間をリセットする(S37)。これにより、撮像時間は0分となる。
【0088】
複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査される場合、検査毎(つまり被検体P毎)に、ステップS31~S35の処理が実行され、撮像時間(つまり、各検査の撮像時間の合計)が更新される(S35)。撮像時間が閾値を超えていない場合(S35,No)、処理はステップS31に移行し、計測容器16内に水が供給される(S31)。そして、次に検査が実行される。撮像時間が閾値を超えている場合(S35,Yes)、処理はステップS36に移行する。
【0089】
このように、撮像時間に基づいて超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御することで、メンテナンスの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を実現することができる。
【0090】
(実施例2)
実施例2では、撮像時間と撮像準備時間との合計時間が閾値を超えた場合、超音波伝搬媒体に殺菌成分(例えば殺菌液)が添加される。
【0091】
撮像時間と撮像準備時間との合計時間が、計測対象Paが超音波伝搬媒体に実際に接触している時間(つまり接触時間)に相当する。ここでの撮像時間は、超音波を用いて実際の撮像が行われた時間の長さである。その撮像の前に計測対象Paが超音波伝搬媒体に接触している時間の長さと、その撮像の後に計測対象Paが超音波伝搬媒体に接触している時間の長さが、撮像準備時間である。つまり、接触時間は、超音波を用いて実際の撮像が行われた時間の長さと、超音波を用いた撮像が行われていないが計測対象Paが超音波伝搬媒体に接触している時間の長さと、の合計の時間である。接触時間が閾値を超えた場合、超音波伝搬媒体に殺菌成分が添加される。
【0092】
複数の被検体Pが検査される場合、制御装置24は、個々の検査毎に接触時間を算出し、複数の検査の接触時間の合計時間を算出する。その合計時間が、上述した接触合計時間の一例に相当する。この場合、接触時間の合計時間が閾値を超えた場合、超音波伝搬媒体に殺菌成分が添加される。
【0093】
図9には、実施例2に係る循環装置22Aの構成が示されている。循環装置22Aは、計測装置54を含む。計測装置54以外の構成は、循環装置22の構成と同じである。
【0094】
計測装置54は、計測容器16内の超音波伝搬媒体に計測対象Paが接触している時間を計測する。例えば、計測装置54は、カメラ56を含む。カメラ56は、計測容器16の内部を撮像する。計測装置54は、カメラ56によって撮像された画像に基づいて、計測対象Paが計測容器16内に収容されているか否かを判定する。計測装置54は、その判定結果に基づいて、計測対象Paが超音波伝搬媒体に実際に接触している時間である接触時間を算出する。
【0095】
例えば、カメラ56は、計測容器16の底面にて上向きの状態で設置され、計測容器16内を撮像する。計測装置54は、カメラ56による撮像によって取得された画像に基づいて、カメラ56に何も映っていない状態、水面の上に計測対象Paがある状態、又は、水面の下に計測対象Paがある状態等を判別することで、計測対象Paが超音波伝搬媒体に接触しているか否かを判定する。
【0096】
例えば、計測容器16内に水が供給され、その後、計測容器16内に計測対象Paが挿入される。計測装置54は、カメラ56による撮像によって取得された画像に基づいて、計測対象Paが水に接触しているか否かを判定し、その判定結果に基づいて、計測対象Paが水に接触している接触時間を算出する。計測装置54は、検査毎に接触時間を算出し、接触時間の合計時間を算出する。制御装置24は、その合計時間が閾値を超えた場合、殺菌成分を水に添加することを示す指示を循環装置22Aに送る。循環装置22Aは、その指示に従って、回収された水に殺菌成分を添加する。その合計時間が閾値を超えない場合、制御装置24は、その指示を循環装置22Aに送らない。その結果、回収された水に殺菌成分は添加されない。
【0097】
以上のように、撮像時間と撮像準備時間との合計時間に基づいて超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御することで、メンテナンスコストの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を実現することができる。また、実際に計測対象Paが超音波伝搬媒体に接触している時間に基づいて殺菌成分の添加が制御されるので、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度をより正確に制御することができる。
【0098】
(実施例3)
実施例3では、制御装置24は、上記の接触時間と計測対象Paのサイズとに基づいて、超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御する。実施例3では、循環装置22Aが用いられる。
【0099】
計測対象Paのサイズは、計測容器16内に収容されている計測対象Paの長さ(高さ方向(Z方向)の長さ)、又は、計測容器16内に収容されている計測対象Paの表面積である。長さと表面積の両方に基づいて、サイズが定められてもよい。
【0100】
以下、図10を参照して、計測対象Paのサイズを計測する構成について説明する。図10には、計測容器16、計測対象Pa、振動子アレイ18、及び、超音波画像58A,・・・56M,56Nが示されている。
【0101】
上述したように振動子アレイ18は高さ方向(Z方向)に沿って移動可能である。制御装置24は、振動子アレイ18を高さ方向に移動させ、高さ方向の各位置にて超音波による撮像を行う。これより、複数の超音波画像が生成される。制御装置24は、各位置での撮像によって取得された複数の超音波画像に基づいて、計測容器16内に収容されている計測対象Paの長さや、その表面積を算出する。
【0102】
図10には、その算出方法の一例が示されている。計測容器16の上部は開口されており、その上部の開口から計測容器16内に計測対象Paが挿入される。制御装置24は、振動子アレイ18をその上部から計測容器16の底面にかけて移動させ、各位置にて超音波による撮像を行う。
【0103】
超音波画像58Aは、振動子アレイ18が上部の位置Aに設置されているときに撮像された画像であり、1スライス目の画像である。超音波画像58Mは、振動子アレイ18を下方に移動させたときに撮像された画像であり、Mスライス目の画像である。超音波画像58Nは、振動子アレイ18を更に下方に移動させたときに撮像された画像であり、Nスライス目の画像である。超音波画像58A,・・・,56Mには、計測対象Paが表されているが、超音波画像58Nには、計測対象Paは表されていない。超音波画像58Mが撮像された位置Mでは計測対象Paは検出されるが、超音波画像58Nが撮像された位置Nでは計測対象Paは検出されない。つまり、1スライス目から(N-1)スライス目(例えばMスライス目)までの長さが、計測対象Paの長さに相当する。換言すると、振動子アレイ18の移動のピッチ(つまり、スライスピッチに相当する長さ)と(N-1)との積が、計測対象Paの長さに相当する。
【0104】
制御装置24は、各超音波画像に表されている計測対象Paの輪郭長の和を、計測対象Paの表面積として算出する。具体的には、制御装置24は、1スライス目から(N-1)スライス目までの各超音波画像に表されている計測対象Paの輪郭長を算出し、1スライス目から(N-1)スライス目までの各輪郭長の和を、計測対象Paの表面積として算出する。
【0105】
以下、図11を参照して、接触時間と計測対象Paのサイズとに基づく制御について説明する。図11には、その制御の流れを示すフローチャートが示されている。
【0106】
まず、循環装置22Aによって計測容器16内に水が供給される(S61)。
【0107】
次に、計測対象Paが計測容器16内に挿入される(S62)。
【0108】
計測装置54は、カメラ56による撮像によって取得された画像に基づいて、計測対象Paが超音波伝搬媒体に接触している接触時間を計測し始める(S63)。
【0109】
次に、撮像装置20によって計測対象Paが撮像される(S64)。これにより、超音波画像が生成される。
【0110】
計測対象Paの撮像が終了すると、計測対象Paが計測容器16から抜かれる(S65)。
【0111】
計測対象Paが計測容器16から抜かれると、計測装置54は、接触時間の計測を終了する(S66)。
【0112】
計測容器16内の水は、循環装置22Aによって回収される(S67)。
【0113】
制御装置24は、計測容器16内に挿入されている計測対象Paのサイズを取得する(S68)。例えば、ステップS64にて、1スライス目からNスライス目まで撮像が行われ、制御装置24は、その撮像によって取得された複数の超音波画像に基づいて、計測対象Paのサイズ(例えば、高さ方向の長さや表面積)を算出する。
【0114】
次に、制御装置24は、接触合計量を更新する(S69)。制御装置24は、接触時間と計測対象Paのサイズとに基づいて、接触量を算出する。接触時間が長いほど接触量は多くなり、計測対象Paのサイズが大きいほど接触量は多くなる。また、複数の被検体Pが検査される場合、制御装置24は、検査毎に接触量を算出する。制御装置24は、複数の検査の接触量の合計を、接触合計量として算出する。
【0115】
接触合計量が閾値を超えない場合(S70,No)、処理はステップS61に移行する。閾値は予め定められた値である。閾値は、ユーザによって変更されてもよい。
【0116】
接触合計量が閾値を超えた場合(S70,Yes)、循環装置22Aによって、回収された水に殺菌成分が添加される(S71)。制御装置24は、接触合計量をリセットする(S72)。これにより、接触合計量はゼロに設定される。以降、ステップS61から処理が実行される。
【0117】
以下、図12を参照して、実施例3に係る動作について詳しく説明する。図12は、実施例3に係る動作の流れを示すシーケンス図である。
【0118】
給水指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22Aに送られる(S81)。循環装置22Aは、給水指示に従って、計測容器16内に水を供給する(S82)。予め定められた量の水が計測容器16内に供給されると、給水が完了し(S83)、給水が完了したことを示す情報が、循環装置22Aから制御装置24に送られる。
【0119】
カメラ56による撮像によって、計測容器16内の計測対象Paが認識される(S84)。計測対象Paを計測容器16内に挿入するタイミングは、給水が完了した後のタイミングであってもよいし、給水中のタイミングであってもよいし、給水前のタイミングであってもよい。計測対象Paが認識されると、計測装置54は、接触時間の計測を始める(S85)。
【0120】
給水が完了すると、撮像指示を示す情報が、制御装置24から撮像装置20に送られる(S86)。撮像装置20は、撮像指示に従って、計測対象Paを撮像する(S87)。これにより、計測対象Paを表す超音波画像が生成される。撮像が完了すると(S88)、撮像が完了したことを示す情報が、撮像装置20から制御装置24に送られる。
【0121】
また、計測対象Paが計測容器16から取り出され、その結果、計測対象Paが認識されなくなり(S89)、計測装置54は、接触時間の計測を終了する(S90)。計測対象Paを取り出すタイミングは、排水後のタイミングであってもよいし、排水中のタイミングであってもよいし、排水前のタイミングであってもよい。
【0122】
撮像が完了すると、回収指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22Aに送られる(S91)。循環装置22Aは、回収指示に従って、計測容器16内の水を排水して回収する(S92)。また、制御装置24は、計測対象Paのサイズを取得する(S93)。
【0123】
水の回収が完了すると(S94)、水の回収が完了したことを示す情報が、循環装置22Aから制御装置24が送られる。
【0124】
制御装置24は、接触合計時間の一例である接触合計量を更新し、接触合計量が閾値を超えているか否かを判定する(S95)。
【0125】
接触合計量が閾値を超えている場合、添加指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22Aに送られる(S96)。循環装置22Aは、添加指示に従って、殺菌液(つまり殺菌成分)を、回収した水に添加する(S97)。殺菌液の添加が完了すると(S98)、添加が完了したことを示す情報が、循環装置22Aから制御装置24に送られる。接触合計量はリセットされる(S99)。以降、ステップS81から処理が実行される。
【0126】
接触合計量が閾値を超えていない場合、殺菌液は水に添加されず、処理は、ステップS81に戻る。
【0127】
以上のように、接触合計量(つまり、接触時間と計測対象Paのサイズとに基づいて算出される値)に基づいて超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を制御することで、メンテナンスコストの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を実現することができる。また、計測対象Paの実際のサイズをも考慮することで、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度をより正確に制御することができる。
【0128】
(実施例4)
実施例4では、殺菌成分が超音波伝搬媒体に添加され、更に、紫外線が超音波伝搬媒体に照射される。
【0129】
図13には、実施例4に係る循環装置22Bの構成が示されている。循環装置22Bは、紫外線照射装置60を含む。紫外線照射装置60は、例えば、流水型の紫外線殺菌灯等であり、計測容器16から回収された水に紫外線を照射することで、超音波伝搬媒体を殺菌する。流水型の紫外線殺菌灯が用いられる場合、超音波伝搬媒体である水を紫外線殺菌灯に流している間、紫外線殺菌灯を動作させることで、水中の細菌やウイルスが殺菌される。
【0130】
紫外線照射装置60は、貯水槽36よりも上流側に配置される。例えば、紫外線照射装置60は、貯水槽36とフィルタ48との間に配置される。これにより、貯水槽36内にて殺菌液が水に添加される前に、回収された水に紫外線が照射される。次亜塩素酸ナトリウム溶液等の殺菌液が水に添加された後に、紫外線が水に照射されると、紫外線の照射によって水中の残留塩素濃度が低下することがある。実施例3によれば、回収された水に紫外線が照射され、その後、殺菌液が水に添加される。これにより、紫外線によって水中の残留塩素濃度を低下させずに、紫外線と殺菌液とによって、水中の細菌やウイルスを殺菌することができる。
【0131】
また、循環経路の上流側に紫外線照射装置60を配置することで、循環経路の下流側に紫外線照射装置60を配置する場合と比べて、回収された水中の細菌やウイルスによって循環経路が汚染されることを抑制することができる。つまり、上流側に紫外線照射装置60を配置することで、水を回収した後、早い段階(つまり上流側)で水に紫外線を照射して殺菌を行うことができる。これにより、下流側に紫外線照射装置60を配置する場合と比べて、循環経路の汚染を抑制することができる。
【0132】
なお、紫外線照射装置60は、貯水槽36に設置されてもよい。この場合、貯水槽36内にて殺菌液が水に添加される前に、貯水槽36内の水に紫外線が照射される。紫外線の照射が終了した後、貯水槽36内の水に殺菌液が添加される。
【0133】
制御装置24は、上述した接触時間に関する情報と、紫外線照射装置60が水に紫外線を照射する照射時間(つまり、紫外線を照射する時間の長さ)に関する情報と、に基づいて、循環装置22Bによる水への殺菌液の添加を制御する。
【0134】
具体的には、制御装置24は、以下の式(1)に従って、接触時間と照射時間に係数αを乗算することで得られる時間との和を算出する。以下では、その和を合計時間Xと定義する。
合計時間X=接触時間+係数α×紫外線照射時間・・・(1)
【0135】
制御装置24は、その合計時間Xが閾値を超えた場合、循環装置22Bによって水に殺菌成分を添加する。
【0136】
係数αは、計測対象Paが超音波伝搬媒体に接触すること起因する殺菌成分の推定減少率と、紫外線照射による殺菌成分の推定減少率と、の比に基づいて、予め定められる。つまり、計測対象Paが超音波伝搬媒体に接触することで、超音波伝搬媒体中の殺菌成分は減少し、紫外線が照射されることで、超音波伝搬媒体中の殺菌成分は減少する。計測対象
Paの接触による減少率と紫外線照射による減少率とが予め推定され、それらの減少率の比が予め算出され、その比に基づいて、係数αが予め定められる。例えば、計測対象Paが超音波伝搬媒体に3分間接触した場合、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の推定減少率は10%であり、紫外線が超音波伝搬媒体に10分間照射された場合、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の推定減少率は10%である。これらの推定減少率の比に基づいて、係数αが定められる。
【0137】
以下、図14を参照して、実施例4に係る動作について説明する。図14には、実施例4に係る動作の流れを示すフローチャートが示されている。
【0138】
まず、循環装置22Bによって計測容器16内に水が供給される(S111)。
【0139】
次に、撮像装置20によって計測対象Paが撮像される(S112)。これにより、超音波画像が生成される。
【0140】
計測対象Paの撮像が終了すると、計測容器16内の水は、循環装置22Bによって回収される(S113)。
【0141】
制御装置24は、接触合計時間と紫外線照射合計時間とを更新する(S114)。制御装置24は、検査毎に接触時間と紫外線照射時間とを算出する。例えば、複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査される場合、制御装置24は、各被検体Pについて接触時間と紫外線照射時間とを算出し、各被検体P(つまり各検査)の接触時間の合計を接触合計時間として算出し、各被検体P(つまり各検査)の紫外線照射時間の合計を紫外線照射合計時間として算出する。
【0142】
制御装置24は、上記の式(1)に従って、合計時間Xを算出し、合計時間Xを更新する。具体的には、制御装置24は、接触合計時間と紫外線照射合計時間に係数αを乗算することで得られる時間との和を、合計時間Xとして算出し、検査が行われる度に、合計時間Xを更新する。
【0143】
合計時間Xが閾値を超えていない場合(S115,No)、処理はステップS111に戻る。合計時間Xが閾値を超えている場合(S115,Yes)、処理はステップS116に移行する。
【0144】
複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査される場合、検査毎(つまり被検体P毎)に、ステップS111~S115の処理が実行される。例えば、1人目の撮像が行われて撮像が終了すると(S112)、計測容器16内の水が回収され(S113)、合計時間Xが算出されて更新され(S114)、合計時間Xが閾値を超えているか否かが判断される(S115)。その時点で、合計時間Xが閾値を超えていない場合(S115,No)、処理はステップS111に移行し、計測容器16内に水が供給される(S111)。そして、2人目の撮像が行われて撮像が終了すると(S112)、計測容器16内の水が回収され(S113)、合計時間Xが算出されて更新され(S114)、合計時間Xが閾値を超えているか否かが判断される(S115)。それ以降の被検体Pについても同様である。
【0145】
ステップS116では、殺菌液(つまり殺菌成分)が水に添加される。
【0146】
制御装置24は、接触合計時間と紫外線照射合計時間とをリセットする(S117)。これにより、接触合計時間と紫外線照射合計時間は共に0分となる。以降、ステップS111から処理が実行される。
【0147】
以下、図15を参照して、実施例4に係る動作について詳しく説明する。図15は、実施例4に係る動作の流れを示すシーケンス図である。
【0148】
給水指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22Bに送られる(S121)。循環装置22Bは、給水指示に従って、計測容器16内に水を供給する(S122)。予め定められた量の水が計測容器16内に供給されると、給水が完了し(S123)、給水が完了したことを示す情報が、循環装置22Bから制御装置24に送られる。
【0149】
給水が完了すると、撮像指示を示す情報が、制御装置24から撮像装置20に送られる(S124)。撮像装置20は、撮像指示に従って、計測対象Paを撮像する(S125)。これにより、計測対象Paを表す超音波画像が生成される。撮像が完了すると(S126)、撮像が完了したことを示す情報が、撮像装置20から制御装置24に送られる。
【0150】
撮像が完了すると、回収指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22Bに送られる(S127)。循環装置22は、回収指示に従って、計測容器16内の水を排水して回収する(S128)。回収された水は、貯水槽36に送られる前に、紫外線照射装置60によって紫外線が照射される。
【0151】
水の回収が完了すると(S129)、水の回収が完了したことを示す情報が、循環装置22Bから制御装置24が送られる。
【0152】
制御装置24は、接触合計時間と紫外線照射合計時間とを更新し、上述した合計時間Xが閾値を超えているか否かを判定する(S130)。
【0153】
合計時間Xが閾値を超えている場合、添加指示を示す情報が、制御装置24から循環装置22Bに送られる(S131)。循環装置22は、添加指示に従って、殺菌液(つまり殺菌成分)を、回収した水に添加する(S132)。殺菌液の添加が完了すると(S133)、添加が完了したことを示す情報が、循環装置22Bから制御装置24に送られる。接触合計時間と紫外線照射合計時間とがリセットされる(S134)。以降、ステップS121から処理が実行される。
【0154】
合計時間Xが閾値を超えていない場合、殺菌液は水に添加されず、処理は、ステップS121に戻る。
【0155】
以上のように、紫外線照射装置60を用いる場合であっても、メンテナンスコストの増大を抑制しつつ、超音波伝搬媒体を殺菌して超音波による撮像を実現することができる。
【0156】
(実施例5)
実施例5では、実施例4に係る循環装置22Bが用いられる。制御装置24は、上述した接触時間の累積値が閾値を超えた場合、超音波伝搬媒体への殺菌成分の添加を中止し、予め定められた時間にわたって紫外線照射装置60によって超音波伝搬媒体に紫外線を照射する。
【0157】
ここで、図16及び図17を参照して、超音波伝搬媒体中の残留塩素の推定濃度の変化について説明する。図16には、検査回数に対する残留塩素の推定濃度の変化が示されている。図16において、横軸は検査回数を示しており、縦軸は、遊離残留塩素の推定濃度(mg/L)を示している。図17には、検査回数に対する推定濃度誤差の変化が示されている。図17において、横軸は検査回数を示しており、縦軸は推定濃度誤差(mg/L)を示している。
【0158】
例えば、1回の検査当たりの遊離残留塩素濃度の減少率を以下のように仮定する。
計測対象Paの接触による減少率:20%
(ばらつきが30%と仮定すると、減少率は14%~26%)
紫外線照射による減少率:7%
【0159】
また、殺菌液(例えば次亜塩素酸ナトリウム溶液)の追加を以下のように仮定する。
流離残留塩素濃度が0.4mg/L未満になったら、0.6mg/L相当の殺菌液を超音波伝搬媒体である水に添加する。
【0160】
図16に示すように、検査回数の増加に伴い、水中の遊離残留塩素の推定濃度は低下し、殺菌液が水に添加されると(図16中の「添加」)、推定濃度は高くなる。検査回数は接触時間の累積値に対応しているため、接触時間の累積値が長くなると、推定濃度は低下する。接触時間の累積値が閾値を超えると、殺菌液が水に添加されることで、推定濃度は高くなる。なお、紫外線照射装置60によって紫外線が水に照射される場合も、同様のことがいえる。
【0161】
図17に示すように、検査回数の増加に伴い、推定濃度誤差は大きくなる。つまり、接触時間の累積値が閾値を超えると、殺菌液が水に添加されるので、残留塩素の濃度は高くなると推定される。しかし、計測対象Paの接触による減少率に仮定したばらつきによって残留濃度の推定値にはばらつきが生じるため、検査回数の増加に伴い、ばらつきが累積し、その結果、推定濃度誤差は大きくなる(図17参照)。
【0162】
例えば、検査回数が17回になった場合(つまり17回目の検査が終了した場合)、超音波伝搬媒体である水への殺菌液の添加を中止し、紫外線照射装置60によって紫外線が水に照射される。例えば、1時間にわたって紫外線が水に照射される。これにより、例えば、水中の流離残留塩素濃度は60%減少する。
【0163】
このように、検査回数(つまり接触時間の累積値)が閾値を超えた場合に、殺菌液を水に添加することを中止し、紫外線を水に照射することで、水中の残留塩素の推定濃度誤差が小さくなる。残留塩素の推定濃度誤差が小さくなった状態で、水に殺菌液が添加される。こうすることで、検査回数が少ないときの状態と同様の状態を有する超音波伝搬媒体が得られる。
【0164】
上記の例では、接触時間の累積値が用いられるが、別の例として、実施例4に係る合計時間Xの累積値が検査回数に対応する値として算出され、合計時間Xの累積値が閾値を超えた場合、殺菌液を水に添加することを中止し、紫外線を水に照射してもよい。
【0165】
以下、図18を参照して、実施例5に係る動作について説明する。図18には、実施例5に係る動作の流れを示すフローチャートが示されている。
【0166】
まず、循環装置22Bによって計測容器16内に水が供給される(S141)。
【0167】
次に、撮像装置20によって計測対象Paが撮像される(S142)。これにより、超音波画像が生成される。
【0168】
計測対象Paの撮像が終了すると、計測容器16内の水は、循環装置22Bによって回収される(S143)。
【0169】
制御装置24は、接触合計時間と紫外線照射合計時間とを更新する(S144)。ステップS144の処理は、上述したステップS114の処理と同じである。この処理によって、合計時間Xが算出される。
【0170】
合計時間Xが閾値を超えていない場合(S145,No)、処理はステップS141に戻る。合計時間Xが閾値を超えている場合(S145,Yes)、処理はステップS146に移行する。
【0171】
複数の被検体Pが、順次、超音波CT装置10によって撮像されて検査される場合、検査毎(つまり被検体P毎)に、ステップS141~S145の処理が実行される。例えば、1人目の撮像が行われて撮像が終了すると(S142)、計測容器16内の水が回収され(S143)、合計時間Xが算出されて更新され(S144)、合計時間Xが閾値を超えているか否かが判断される(S145)。その時点で、合計時間Xが閾値を超えていない場合(S145,No)、処理はステップS141に移行し、計測容器16内に水が供給される(S141)。そして、2人目の撮像が行われて撮像が終了すると(S142)、計測容器16内の水が回収され(S143)、合計時間Xが算出されて更新され(S144)、合計時間Xが閾値を超えているか否かが判断される(S145)。それ以降の被検体Pについても同様である。
【0172】
ステップS146では、制御装置24は、合計時間Xの累積値を算出する。その累積値が検査回数に相当する。
【0173】
合計時間Xの累積値(つまり累積時間)が閾値を超えない場合(S146,No)、殺菌液が水に添加される(S147)。制御装置24は、接触合計時間と紫外線照射合計時間とをリセットする(S148)。これにより、接触合計時間と紫外線照射合計時間は共に0分となる。以降、ステップS141から処理が実行される。
【0174】
合計時間Xの累積値(つまり累積時間)が閾値を超えた場合(S146,Yes)、制御装置24は、循環装置22Bによって回収された水への殺菌液の添加を中止し、予め定められた時間にわたって、循環装置22Bによって水を循環させる(S149)。これにより、水は、循環装置22Bの循環経路を循環する。その間、制御装置24は、予め定められた時間にわたって、紫外線照射装置60に紫外線を照射させる。これにより、循環中の水に紫外線が照射され、その結果、水中の残留塩素濃度が低下する。
【0175】
予め定められた時間にわたって、循環中の水に紫外線が照射された後、制御装置24は、殺菌液の添加を循環装置22Bに指示する。循環装置22Bは、その指示に従って、殺菌液を水に添加する(S150)。これにより、水中の残留塩素濃度は高くなる。
【0176】
その後、制御装置24は、接触合計時間と紫外線照射合計時間と合計時間Xの累積時間とをリセットする(S151)。これにより、接触合計時間と紫外線照射合計時間と合計時間Xの累積時間は0分となる。以降、ステップS141から処理が実行される。
【0177】
実施例5によれば、累積時間が閾値を超えた場合に、殺菌成分を超音波伝搬媒体に添加せずに紫外線を超音波伝搬媒体に照射することで、殺菌成分の推定濃度誤差が小さくなる。その結果、超音波伝搬媒体中の殺菌成分の残留濃度をより正確に管理することができる。
【符号の説明】
【0178】
10 超音波CT装置、12 ベッド、14 計測部、16 計測容器、18 振動子アレイ、20 撮像装置、22 循環装置、24 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図15
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図18