(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082895
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両用ドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/18 20160101AFI20240613BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20240613BHJP
B60J 10/20 20160101ALI20240613BHJP
B60J 10/32 20160101ALI20240613BHJP
【FI】
B60J10/18
B60J10/86
B60J10/20
B60J10/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197086
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】青山 友典
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201AA12
3D201CA23
3D201DA06
3D201DA09
3D201DA23
3D201DA32
3D201DA34
3D201EA02H
3D201EA03A
3D201EA07A
(57)【要約】
【課題】車両用ドア1のドアサッシュ部100において錆汁の外観面への流出を防止することができる。
【解決手段】硬質部材HRと柔軟部材SRとが一体成型された車両用ドア1のウェザーストリップ部200であって、基底部BMと、リテーナ突出部140に車両上方側から密接するリップ部RP1と、サッシュリテーナ部130の車両下方側に密接するリップ部RP2と、車両下方側から車体Sと密接するリップ部RP3と、リップ部RP1と、リップ部RP2と、の間に車幅方向外側に突出して形成され、リテーナ突出部140をリップ部RP1との間に挟み込んで固定する固定部FXと、を備え、硬質部材HRは、基底部BMにおいて車幅方向内側端からリップ部RP2の車両上方側を通り、リップ部RP2の車両上方側から車両上方に向けて屈曲部BPを有し、さらに、リップ部RP1と、固定部FXの車幅方向内側を通り、リップ部RP3の車両上方端まで連続して設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と車両用ドアとの間を、車両用ドアの車幅方向内側の周囲を囲むように延在してシールするウェザーストリップ部を有する車両用ドア構造であって、
前記ウェザーストリップ部は、硬質部材と柔軟部材とが一体成型され、
前記車両用ドアに設けられた嵌合部の車幅方向両側に嵌合する基底部と、
前記篏合部に設けられた突出部に車両上方側から密接する第1のシール部と、
前記基底部の車両下方側に突出して設けられ、前記篏合部の車両上方側面に車両上方側から密接する第2のシール部と、
車両上方側に突出して形成され、前記車両用ドアが閉じられた際に前記車体に車両下方側から密接する第3のシール部と、
第1のシール部と、第2のシール部と、の間に車幅方向外側に突出して形成され、前記突出部に車両下方側から密接し、前記突出部を前記第1のシール部との間に挟み込んで固定する固定部と、
を備え、
前記硬質部材は、前記基底部において車幅方向内側端から第2のシール部の車両上方側を通り、前記第2のシール部の車両上方側から車両上方に向く屈曲部を有し、さらに、前記第1のシール部と、前記固定部の車幅方向内側を通り、第3のシール部の車両上方端まで連続して設けられていることを特徴とする車両用ドア構造。
【請求項2】
前記硬質部材は、前記第1のシール部から前記屈曲部までの間は直線状に形成され、前記屈曲部から前記基底部における車幅方向内側端までの間は直線状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用ドアが閉じられた際に外部からの雨水等の浸入を防ぐために、車両用ドアのサッシュと車両本体との間に、ウェザーストリップ等が装着されている。そして、ウェザーストリップが、サッシュと車両本体との間に密着することにより、外部からの雨水等の浸入等を防いでいる。
また、車両用ドアの上部に構成されるサッシュルーフ部においては、車両本体のルーフ部を車両上部側から伝わってくる雨水等の浸入および車両用ドア部を車両上部側から伝わってくる雨水等の浸入を防ぐ必要がある。
【0003】
一方、ウェザーストリップを車両用ドアに組付けるには、ピンをウェザーストリップに組み込み、ドア側パネルにピンを押し込むピン組付け、ドア側パネルにガイド溝部を設け、ガイド溝部の内側にウェザーストリップをスライドさせて挿入するスライド組付け、あるいはドア側パネルに嵌合部を設け、ウェザーストリップに押圧力を加えて嵌合部に嵌合させる嵌合組付け等を例示することができる。
【0004】
例えば、特許文献1の技術においては、車両上方に向かって突出したリップ部を形成し、取付基部にはソリッド材を用い、中空シール部にはスポンジ材を用い、ドアが閉じられた際に、中空シール部の内部容量を変化させることによって、中空シール部の内圧を減少させる技術が開示されている。また、ピンをウェザーストリップに組み込み、ドア側パネルにピンを押し込むことでウェザーストリップを車両用ドアに組付けている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、車両本体のルーフ部からの雨水等は、車両用ドアが閉まる際の押圧力によって、リップ部と中空シール部とを車両本体のルーフ部に密着させて浸入を防いでいるが、車両用ドア部からの雨水等は、車両用ドアが閉まる際に、中空シール部に発生する内部圧力による押圧力と、ピン組付けによる押圧力とによって、リップ部を車両用ドア部に密着させて雨水等の浸入を防いでいる。そのため、車両用ドアが閉じられた際に中空シール部の内部圧力が減少する場合、およびピンが設けられていない箇所、においては、ウェザーストリップの車両用ドア部への密着力が不足し、ウェザーストリップと車両用ドア部との間に発生する隙間から水漏れする虞があるという課題があった。
また、一般に、スライド組付けの場合には、ガイド溝部とウェザーストリップとの密着力にばらつきが発生することにより、ドア側パネルに発生する隙間から水漏れが発生する虞があった。また、嵌合組付けの場合には、嵌合組付け作業における挿入不全により水漏れが発生する虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、組付作業性を良好に保つとともに、外部からの雨水等の浸入を防止する車両用ドア構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、硬質部材と柔軟部材とが一体成型され、車体と車両用ドアとの間を、車両用ドアの車幅方向内側の周囲を囲むように延在してシールするウェザーストリップ部であって、前記車両用ドアに設けられた嵌合部の車幅方向両側に嵌合する基底部と、前記篏合部に設けられた突出部に車両上方側から密接する第1のシール部と、前記基底部の車両下方側に突出して設けられ、前記篏合部の車両下方側の底面に車両上方側から密接する第2のシール部と、車両上方側に突出して形成され、車両下方側から前記車体と密接する第3のシール部と、第1のシール部と、第2のシール部と、の間に車幅方向外側に突出して形成され、前記突出部に車両下方側から密接し、前記突出部を前記第1のシール部との間に挟み込んで固定する固定部と、を備え、前記硬質部は、前記基底部において車幅方向内側端から第2のシール部の車両上方側を通り、前記第2のシール部の車両上方側から車両上方に向けて屈曲部を有し、さらに、前記第1のシール部と、前記固定部の車幅方向内側を通り、第3のシール部の車両上方端まで連続して設けられている車両用ドア構造を提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記硬質部材は、前記第1のシール部から前記屈曲部までの間は直線状に形成され、前記屈曲部から前記基底部における車幅方向内側端までの間は直線状に形成されている車両用ドア構造を提案している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、組付作業性を良好に保つとともに、外部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアを車幅方向内側から見た概要構成図である。
【
図2】
図1に示されたA-A線を車両後方側から見た断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るウェザーストリップを、
図1に示されたA-A線をA方向から見た断面図である。
【
図4】車両用ドアが開放されている場合の
図2に示されたA-A線をA方向から見た断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る車両用ドアにおける組付け作業が行われた際のウェザーストリップの変形を
図1に示されたA-A線をA方向から見た断面図であり、(a)、(b)および(c)は組付け作業時のウェザーストリップ変形を時系列で示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1から
図5を用いて、本実施形態に係る車両用ドア1について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、車両用ドア1が装着される車両Vの前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車両Vの正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0013】
<実施形態>
図1~
図4を用いて、車両用ドア1の構成について説明する。なお、車両Vの正面視において右方側に装着される車両用ドア1を例示して説明する。
【0014】
<車両用ドア1の構成>
図1に示すように、車両用ドア1は、アウタパネル部10と、インナパネル部20と、ドアウインドウ部30と、ドアサッシュ部100と、ウェザーストリップ部200と、を含んで構成されている。
【0015】
(アウタパネル部10、インナパネル部20について)
アウタパネル部10は、車両用ドア1の外板を構成する板状の部材である。また、インナパネル部20は、車両用ドア1の内板を構成する板状の部材であり、アウタパネル部10よりも車幅方向内側に配置されている。アウタパネル部10およびインナパネル部20は、金属板等をプレスして作成されている。
アウタパネル部10とインナパネル部20とは、相互に組み合わされ、車両前後上下方向端部それぞれにおいて、溶接等により結合されている。
また、車両用ドア1において、車幅方向内側には、インナパネル部20を露出させないように内装部20aが設置されている。
【0016】
(ドアウインドウ部30について)
ドアウインドウ部30は、車両用ドア1において、昇降可能に装着された板状の強化ガラスである。ドアウインドウ部30が上昇した状態においては、後述するドアサッシュ部100を閉塞する。ドアウインドウ部30は、車両Vの側面視において、その前端縁部および後端縁部がドアサッシュ部100の傾斜に合わせて形成された略台形を成している。
【0017】
(ドアサッシュ部100について)
ドアサッシュ部100は、車両用ドア1の車両上方部にドアウインドウ部30を囲んで設けられている。ドアサッシュ部100は、アウタパネル部10およびインナパネル部20と溶接等により結合している。
ドアサッシュ部100は、アウタドアサッシュ部110と、インナドアサッシュ部120と、を含んで構成されている。アウタドアサッシュ部110およびインナドアサッシュ部120は、例えば、金属板等の長尺の板材を段階的に曲折して所定の断面形状とするロール成型等により加工された部材である。そして、ドアサッシュ部100は、アウタドアサッシュ部110とインナドアサッシュ部120とを、ヘミング加工等により固定させることによって構成されている。ドアサッシュ部100の車両上方側においては、車体Sのルーフ部と近接するサッシュルーフ部RSが形成されている。
アウタドアサッシュ部110は、ドアサッシュ部100の車幅方向外側に設けられている。ドアサッシュ部100の車両上方側におけるサッシュリテーナ部130には、車両用ドア1の形状にあわせて、車両後方側から車両前方側に向けて車両下方側に向かう傾斜が設けられている。
また、
図2に示すように、アウタドアサッシュ部110には、ドアサッシュ部100にウェザーストリップ部200を固定する嵌合部としてのサッシュリテーナ部130が形成されている。サッシュリテーナ部130は、ドアサッシュ部100の車幅方向内側において、ドアサッシュ部100の外周部を覆うように設けられている。サッシュリテーナ部130の車幅方向両側には、ウェザーストリップ部200の基底部BMを保持するための折返し部FKが設けられている。
また、サッシュリテーナ部130には、突出部としてのリテーナ突出部140が形成されている。リテーナ突出部140は、車幅方向内側に向けて突出しており、サッシュリテーナ部130の車幅方向外側部をロール成型等により折り曲げ加工することにより形成されている。
【0018】
アウタドアサッシュ部110の車幅方向外側には、ピラーガーニッシュ部110aが設けられている。ピラーガーニッシュ部110aは、ドアサッシュ部100に車幅方向外側から取り付けられる鋼板等によって形成された外装部材である。ピラーガーニッシュ部110aは、ドアサッシュ部100の意匠性を確保するとともに、ドアサッシュ部100の構成部材を車幅方向外側に露出させないように配設されている。ピラーガーニッシュ部110aは、アウタドアサッシュ部110の車幅方向外側の車両上下部にそれぞれ設けられた車両上下方向に突出したアウタ突出部110bおよび110cに嵌合して固定されている。
【0019】
インナドアサッシュ部120は、ドアサッシュ部100の車幅方向内側に設けられている。インナドアサッシュ部120は、サッシュリテーナ部130の車両下方側において、アウタドアサッシュ部110の間に挟まれてヘミング加工等により固定されている。
【0020】
(ウェザーストリップ部200について)
図1および
図3に示すように、ウェザーストリップ部200は、硬質部材HRと柔軟部材SRとが一体成型され、車体Sと車両用ドア1との間をシールしている。ウェザーストリップ部200は、インナパネル部20からドアサッシュ部100にかけて、車両用ドア1の車幅方向内側の周囲を囲むように配設されている。
【0021】
ウェザーストリップ部200は、軟質樹脂あるいはゴム材等により成型され、
図3に示すように、サッシュリテーナ部130に嵌合させて固定されている。ウェザーストリップ部200には、基底部BMと、第1のシール部としてのリップ部RP1と、第2のシール部としてのリップ部RP2と、第3のシール部としてのリップ部RP3と、リップ部RP4と、固定部FXと、空洞部CV1およびCV2と、が形成されている。
【0022】
基底部BMは、ウェザーストリップ部200の車両下方側に設けられ、サッシュリテーナ部130の車幅方向内側に設けられた折返し部FKに嵌合する。基底部BMには、車幅方向内側に向けて突出した、車幅方向内側端としての嵌合リップ部FTが形成されている。また、車幅方向外側には、後述する固定部FXが形成されている。サッシュリテーナ部130の折返し部FKに、嵌合リップ部FTと、固定部FXとが嵌まり込むことによって、ウェザーストリップ部200は、サッシュリテーナ部130に固定されている。
【0023】
リップ部RP1は、ウェザーストリップ部200の車幅方向外側に突出して形成されている。リップ部RP1は、柔軟部材SRで形成され、リテーナ突出部140の車両上方側およびアウタ突出部110bの車幅方向内側に密接してサッシュリテーナ部130に装着されている。
【0024】
リップ部RP2は、基底部BMの車両下方側面に、ウェザーストリップ部200の車両下方側に突出して形成され、サッシュリテーナ部130の車両上方側面に車両上方側から密接する。リップ部RP2は、柔軟部材SRで形成され、リテーナ突出部140の車両下方側に密接している。
【0025】
リップ部RP3は、ウェザーストリップ部200の車両上部外側に傾斜を有して突出して形成され、車両用ドアが閉じられた場合には、リップ部RP3は、車幅方向内側の面を車両下方側から密接させる。リップ部RP3は、リップ部RP4よりも車幅方向外側に形成されている。リップ部RP3には、車幅方向外側においてリップ部RP3の車両上方端部から車両下方側にかけて硬質部材HRが配設され、車幅方向内側には、柔軟部材SRが配設されている。
【0026】
リップ部RP4は、ウェザーストリップ部200の車幅方向内側において、車両上方側に突出して形成され、車両用ドアが閉じられた場合には、リップ部RP4は、車幅方向内側の面を車両下方側から密接させる。リップ部RP4の車両下方部には、空洞部CV1が形成されている。
【0027】
固定部FXは、リップ部RP1と、リップ部RP2との間に車幅方向外側に突出して形成され、リテーナ突出部140に車両下方側から密接し、リテーナ突出部140を固定部FXとリップ部RP1との間に挟み込んでリップ部RP1を固定する。固定部FXは、サッシュリテーナ部130において車幅方向外側の折返し部FKに嵌合されている。
【0028】
空洞部CV1およびCV2は、ウェザーストリップ部200の内部に形成されている。空洞部CV1は、車幅方向内側のリップ部RP4の車両下方部に形成され、空洞部CV1の周囲は、柔軟部材SRによって形成されている。
空洞部CV2は、基底部BMの車両上方側に、車両後方側からの断面視において、略矩形状に形成されている。空洞部CV2の車両下方側および車幅方向外側には、硬質部材HRが配設され、空洞部CV2の車両上方側および車幅方向内側には、柔軟部材SRが配設されている。
【0029】
ウェザーストリップ部200の部材として用いられている硬質部材HRおよび柔軟部材SRは、軟質樹脂あるいはゴム材等の弾性部材が用いられている。
硬質部材HRは、例えば、発泡処理を少なくした硬度の高い部材である。また、柔軟部材SRは、例えば、発泡処理が硬質部材HRよりも多く行われることにより、硬質部材HRよりも柔軟性を持った部材である。
硬質部材HRは、基底部BMにおいて車幅方向内側端からリップ部RP2の車両上方側を通り、リップ部RP2の車両上方側から車両上方に向く屈曲部BPを有し、さらに、リップ部RP1と、固定部FXの車幅方向内側を通り、リップ部RP3の車両上方端まで連続して設けられている。屈曲部BPは、空洞部CV2の車幅方向下部外側において、固定部FXの車幅方向内側に設けられ、車幅方向外側から車両上方側に向けて屈曲している。
また、硬質部材HRは、リップ部RP1から屈曲部BPまでの間は略直線状に形成され、屈曲部BPから基底部BMにおける嵌合リップ部FTまでの間は略直線状に形成されている。
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係る車両用ドア1においてウェザーストリップ部200の作用について
図4および
図5を用いて説明する。
【0030】
(防水について)
外部からの雨水等は、車両用ドア1が閉められた状態においては、
図4の矢印TD1に示すように、車体Sとピラーガーニッシュ部110aとの間から浸入してくる。
車体Sには、リップ部RP3が車両下方側から密接している。リップ部RP3には、硬質部材HRがリップ部RP3の車両上方端部まで配設されているため、矢印AR1に示す方向に押圧力がかかり強く密接している。そのため、車体Sとピラーガーニッシュ部110aとの間から浸入してきた雨水等は、リップ部RP3によってはじかれる。
リップ部RP3にはじかれた雨水等は、リップ部RP1の車両上方側に流れ落ちる。リップ部RP1には、空洞部CV1およびCV2hが車体Sに車幅方向外側に向かって押されることによって、矢印AR2に示す方向に押圧力が加えられている。また、リップ部RP1の車幅方向内側には、硬質部材HRが車両上下方向に配設されているため、リップ部RP1は、アウタ突出部110bおよびリテーナ突出部140に強く押圧されている。そのため、リップ部RP1の車両上方側に流れ落ちてきた雨水等は、リップ部RP1にはじかれ、リップ部RP1の車両上方側のくぼみDP1に溜まる。そして、雨水等は、車両後方側から車両前方側に向けて車両下方側に向かう傾斜によって、車両前方側に流れ落ち、車両外に排出される。
【0031】
また、車両Vの走行時の振動等により、リップ部RP1に隙間が発生しリテーナ突出部140の車両下方側に雨水等が浸入した場合には、雨水等は、リップ部RP2の車幅方向外側のくぼみDP2に流れ込む。リップ部RP2には、リップ部RP2の車両上方側に配設されている硬質部材HRによって、矢印AR3に示す方向に押圧力がかかり、リップ部RP2は、サッシュリテーナ部130の底面部に強く密接している。そのため、くぼみDP2に溜まっている雨水等は、リップ部RP2にはじかれる。リップ部RP2にはじかれた雨水等は、車両後方側から車両前方側に向けて車両下方側に向かう傾斜によって、車両前方側に流れ落ち、車両外に排出される。
【0032】
(組付け作業について)
ウェザーストリップ部200をサッシュリテーナ部130に組み付ける場合には、
図5(a)に示すように、作業者は、サッシュリテーナ部130の車幅方向内側の折返し部FKに、ウェザーストリップ部200の基底部BMの嵌合リップ部FTを矢印BR1に示す方向に挿入する。基底部BMの車幅方向内側端には、硬質部材HRが配設されているため、サッシュリテーナ部130の車幅方向内側の折返し部FKに硬質部材HRが当接するまで、ウェザーストリップ部200は、挿入される。
【0033】
次に、
図5(b)に示すように、作業者は、リップ部RP2をリテーナ突出部140に押し込み、固定部FXをリテーナ突出部140の車両上方側に載置させる。そして、作業者は、挿入治具を用いて、リップ部RP3の車両上方側から矢印JGに示す方向にウェザーストリップ部200を押し込む。挿入治具を押し当てるリップ部RP1の車幅方向内側には、硬質部材HRが配設されているため、矢印JGに示す方向からかかる押圧力は、硬質部材HRに伝達され、矢印BR2で示す方向に押圧力がかかる。このとき、使用する挿入治具を介して、押圧力は、挿入感触として作業者に伝搬される。このとき、ウェザーストリップ部200の嵌合リップ部FTの車幅方向内側には、硬質部材HRの屈曲部BPが配設されている。また、硬質部材HRは、リップ部RP1から屈曲部BPまでの間は直線状に形成され、屈曲部BPから基底部BMにおける嵌合リップ部FTまでの間は直線状に形成されている。そのため、矢印BR2で示す方向に伝達される押圧力は、屈曲部BPを介して矢印BR3で示す方向に効率よく伝達され、嵌合リップ部FTをサッシュリテーナ部130の折返し部FKに強固に嵌合させる。
嵌合リップ部FTがサッシュリテーナ部130に固定されると、硬質部材HRに伝達された押圧力は、矢印BR4に示す方向に反発力を発生させる。このとき、使用する挿入治具を介して、反発力は、挿入感触として作業者に伝搬される。
【0034】
次に、作業者は、ウェザーストリップ部200の固定部FXをリテーナ突出部140の車両下方側に入り込むように、さらに、矢印JGに示す方向にウェザーストリップ部200を押し込む。固定部FXの車幅方向内側には、硬質部材HRが配設されているため、矢印BR2に示す方向からかかる押圧力によって、固定部FXは、矢印BR5で示す方向に押し下げられる。そして、固定部FXがリテーナ突出部140を乗り越えると、リップ部RP2がサッシュリテーナ部130の車両上方面に密接するとともに、リップ部RP1がリテーナ突出部140の車両上方面に密接する。このとき、矢印JGに示す方向にかけていた押圧力が変化するとともに、矢印BR4に示す方向に発生していた反発力が変化することによって、挿入治具に伝搬される挿入感触が変化する。
【0035】
そして、挿入治具に伝搬される挿入感触が変化することによって、
図5(c)に示すように、作業者は、ウェザーストリップ部200がサッシュリテーナ部130に正しく固定されたことを認識し、挿入作業を終了させる。
【0036】
以上、本実施形態に係る車両用ドア1は、硬質部材HRと柔軟部材SRとが一体成型され、車体Sと車両用ドア1との間を、車両用ドア1の車幅方向内側の周囲を囲むように延在してシールするウェザーストリップ部200であって、車両用ドア1に設けられた嵌合部としてのサッシュリテーナ部130の車幅方向両側に嵌合する基底部BMと、サッシュリテーナ部130に設けられたリテーナ突出部140に車両上方側から密接する第1のシール部としてのリップ部RP1と、基底部BMの車両下方側に突出して設けられ、サッシュリテーナ部130の車両下方側の底面に車両上方側から密接する第2のシール部としてのリップ部RP2と、車両上方側に突出して形成され、車両下方側から車体Sと密接する第3のシール部としてのリップ部RP3と、リップ部RP1と、リップ部RP2と、の間に車幅方向外側に突出して形成され、リテーナ突出部140に車両下方側から密接し、リテーナ突出部140をリップ部RP1との間に挟み込んで固定する固定部FXと、を備え、硬質部材HRは、基底部BMにおいて車幅方向内側端からリップ部RP2の車両上方側を通り、リップ部RP2の車両上方側から車両上方に向けて屈曲部BPを有し、さらに、リップ部RP1と、固定部FXの車幅方向内側を通り、リップ部RP3の車両上方端まで連続して設けられている。
つまり、ウェザーストリップ部200には、硬質部材HRは、基底部BMの車幅方向内側端から、リップ部RP2の車両上方側に屈曲部BPを介し、リップ部RP1と、固定部FXの車幅方向内側を通り、リップ部RP3の車両上方端まで連続して設けられているため、車両用ドア1が閉じられた際に、リップ部RP3において車両下方側に向けて押圧力が発生する。そして、ウェザーストリップ部200は、リップ部RP3を車体Sに強く密接させることができる。また、ウェザーストリップ部200は、硬質部材HRを介して、押圧力がリップ部RP1およびリップ部RP2に伝達され、リップ部RP1およびリップ部RP2と、アウタドアサッシュ部110と、を強く密接させることができる。したがって、雨水等が浸入してきた場合でも、雨水等は、リップ部RP1、リップ部RP2、およびリップ部RP3にはじかれる。
一方で、ウェザーストリップ部200には、組付け作業において、作業者が挿入治具を用いて押し込むリップ部RP1の車幅方向内側に、硬質部材HRが屈曲部BPを有して配設されている。そして、作業者が挿入治具を用いて、リップ部RP1の車両上方側からウェザーストリップ部200をサッシュリテーナ部130に押し込む際に、ウェザーストリップ部200をサッシュリテーナ部130に固定する固定部FXに押圧力が効率的に伝達されることによって、作業者は、ウェザーストリップ部200をサッシュリテーナ部130に容易に嵌合させることができる。
また、硬質部材HRは、基底部BMの車幅方向内側端から、リップ部RP2の車両上方側に屈曲部BPを介し、リップ部RP1と、固定部FXの車幅方向内側に連続して設けられているため、組付け作業において、使用する挿入治具から作業者に押圧力および硬質部材HRからの反発力が伝搬される。作業者は、この押圧力および反発力が挿入治具を介して伝搬されることによって、挿入感触を得ることができる。そして、固定部FXがリテーナ突出部140に嵌合された際に、作業者が、リップ部RP1の車両上方側から挿入治具を押す押圧力が変化し、挿入治具に伝搬される挿入感触が変化する。そして、挿入治具に伝搬される挿入感触が変化することによって、作業者は、ウェザーストリップ部200がサッシュリテーナ部130に正しく固定されたことを認識することができる。
そのため、組付作業性を良好に保つとともに、外部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る車両用ドア1は、硬質部材HRは、リップ部RP1から屈曲部BPまでの間は略直線状に形成され、屈曲部BPから基底部BMにおける車幅方向内側端としての嵌合リップ部FTまでの間は略直線状に形成されている。
つまり、ウェザーストリップ部200の組付け作業において、硬質部材HRが、リップ部RP1から屈曲部BPまでの間は略直線状に形成されていることによって、リップ部RP1から伝達される作業者の押圧力は、屈曲部BPを介して嵌合リップ部FTに効率よく伝達される。また、硬質部材HRは、屈曲部BPから基底部BMにおける嵌合リップ部FTまでの間は略直線状に形成されていることによって、嵌合リップ部FTをサッシュリテーナ部130の折返し部FKに強固に嵌合させることができる。
そして、嵌合リップ部FTがサッシュリテーナ部130に固定されると、硬質部材HRには反発力が発生し、反発力は、挿入感触として作業者に伝搬される。この反発力が作業者に伝搬されることによって、作業者は、挿入感触を得ることができる。そして、挿入感触によって、作業者は、ウェザーストリップ部200がサッシュリテーナ部130に正しく固定されたことを認識することができる。
そのため、組付作業性を良好に保つとともに、外部からの雨水等の浸入を防止することができる。
【0038】
なお、本発明の実施形態として、ウェザーストリップ部200には、硬質部材HRと柔軟部材SRとが一体成型され、インナパネル部20からドアサッシュ部100にかけて、車両用ドア1の車幅方向内側の周囲を囲んで配設されているように例示したが、リップ部RP3における硬質部材HRは、ウェザーストリップ部200に配設される区間を区切り、例えば、車両上方側において車体Sのルーフ部と近接するサッシュルーフ部RSの区間のみに配設されていてもよい。
【0039】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1;車両用ドア
10;アウタパネル部
20;インナパネル部
30;ドアウインドウ部
100;ドアサッシュ部
110;アウタドアサッシュ部
120;サッシュリテーナ部
130;リテーナ突出部
140;インナドアサッシュ部
200;ウェザーストリップ部
BM;基底部
CV;空洞部
FK;折返し部
FT;嵌合リップ部
FX;固定部
HR;硬質部材
RP1;リップ部
RP2;リップ部
RP3;リップ部
RP4;リップ部
SR;軟質部材
S;車体
V;車両