(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000829
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】カバーおよびガス絶縁装置
(51)【国際特許分類】
H02B 13/045 20060101AFI20231226BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H02B13/045 Z
H01F27/02 A
H01F27/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099771
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】塩尻 健
(72)【発明者】
【氏名】中島 宗一
【テーマコード(参考)】
5E059
5G017
【Fターム(参考)】
5E059BB18
5E059CC07
5E059FF02
5G017BB16
5G017DD14
(57)【要約】
【課題】ガス絶縁装置において、容器の内部への水などの侵入を防止可能なカバーを実現する。
【解決手段】カバー(20)は、ガス絶縁装置の端部に対向する天面部(21)と、天面部の外縁に位置する側部(22)と、側部の外縁に位置し、かつ端部に取り付けられる取付部(23)とを備え、天面部から側部の少なくとも一部まで、複数のリブ(24)が形成され、取付部は、シール部材が配置される溝(23b)を、端部に接する面に有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス絶縁装置の端部を被覆するカバーであって、
前記端部に対向する天面部と、
前記天面部の外縁に位置し、かつ前記天面部に対して角度を有する側部と、
前記側部の外縁に位置し、かつ前記端部に取り付けられる取付部とを備え、
前記天面部から前記側部の少なくとも一部まで、放射状に延在する複数のリブが形成され、
前記取付部は、前記端部および前記カバーにより囲まれる空間を気密状態にするためのシール部材が配置される溝を、前記端部に接する面に有するカバー。
【請求項2】
前記カバーはアルミニウムで形成されている請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記複数のリブは、延在する方向が互いに異なる少なくとも4つの前記リブを含み、
延在する方向が互いに隣接する2つの前記リブは、互いに直交する方向に延在する請求項1に記載のカバー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のカバーを備えるガス絶縁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁計器用変圧器およびガス絶縁開閉装置の端部を被覆するカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貫通形変流器用の容器が開示されている。当該容器は、磁性材料からなる胴板を備える。胴板の一部に、軸線方向に延びる窓が形成されている。当該窓は、非磁性材料からなる着脱可能な蓋板により閉じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス絶縁装置においては、コイルなどが容器に収容されている。容器は、コイルなどを収容するための開口を有し、当該開口にはスペーサが配されている。スペーサは、容器の内部から外部へ貫通するスペーサ導体を備える。コイルに接続された導体が、スペーサ導体に接続されている。当該スペーサは、容器の内部への水分または粉塵などの侵入を防止する。
【0005】
ガス絶縁装置の製造過程においては、製造途中の状態の装置を輸送または保管する場合がある。そのような場合には、スペーサが取付けられていない状態の容器をカバーで被覆する。しかし、従来のカバーでは気密性が考慮されていなかった。このため、例えばスペーサが取り付けられていない状態のガス絶縁装置を輸送または保管する場合に、容器の内部へ水分または粉塵などが侵入してしまい、コイルの品質に悪影響を及ぼす懸念があった。
【0006】
本発明の一態様は、ガス絶縁装置において、容器の内部への水分または粉塵などの侵入を防止し、外部からの衝撃を低減することが可能なカバーを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るカバーは、ガス絶縁装置の端部を被覆するカバーであって、前記端部に対向する天面部と、前記天面部の外縁に位置し、かつ前記天面部に対して角度を有する側部と、前記側部の外縁に位置し、かつ前記端部に取り付けられる取付部とを備え、前記天面部から前記側部の少なくとも一部まで、放射状に延在する複数のリブが形成され、前記取付部は、前記端部および前記カバーにより囲まれる空間を気密状態にするためのシール部材が配置される溝を、前記端部に接する面に有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ガス絶縁装置において、容器の内部への水分または粉塵などの侵入を防止し、外部からの衝撃を防止することが可能なカバーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るガス絶縁装置の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示したガス絶縁装置の、製造途中の状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」は、特記しない限り「A以上かつB以下」を意味する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るガス絶縁装置1の一例を示す図である。
図1において、符号101は鉛直方向に平行な面における断面図であり、符号102は水平な面における断面図である。また、符号102は符号101における符号I2-I2線断面図であり、符号101は符号102におけるI1-I1線断面図である。
図1に示す例では、ガス絶縁装置1は、ガス絶縁計器用変圧器である。また、ガス絶縁装置1の別の例としては、ガス絶縁開閉装置が挙げられる。
図1に示すように、ガス絶縁装置1は、コイル11、複数の導体12、容器13およびスペーサ14を備える。
【0012】
コイル11は、一次巻線、二次巻線、および鉄心などにより構成される。ガス絶縁装置1においては、一次巻線の入力端子(不図示)に一次電圧を入力することで、一次巻線と二次巻線との巻数比に応じた二次電圧が、二次巻線の出力端子(不図示)から出力される。一次巻線と二次巻線との巻数比は、所望の一次電圧と二次電圧との比率に応じて適宜決定されればよい。
【0013】
複数の導体12は、コイル11が有する一次巻線の入力端子または二次巻線の出力端子に接続されている導体である。個々の導体12は、例えば略円柱形状を有するが、これに限られない。ガス絶縁装置1の使用者は、導体12を介して一次巻線の入力端子に一次電圧を入力し、二次巻線の出力端子から二次電圧を得る。
【0014】
容器13は、コイル11および導体12を気密状態で収容する。ガス絶縁装置1が製品として完成した状態において、容器13内には、絶縁用のガスとして、例えばSF6が充填される。ただし、容器13に充填されるガスの圧力および種類はこれに限らない。
【0015】
容器13は、端部13aを有する。端部13aには、開口が形成されている。
図1に示す例では、端部13aは、容器13の上部に位置する。ただし、端部13aの位置はこれに限らず、例えば容器13の側部に位置してもよい。
【0016】
スペーサ14は、端部13aに配される。スペーサ14は、絶縁樹脂により形成されてよい。スペーサ14が端部13aに配されることで、端部13aに開口を有する容器13を気密状態とすることができる。
【0017】
スペーサ14は、スペーサ導体14aを備える。スペーサ導体14aは、スペーサ14が端部13aに配された状態において、容器13の内部から外部へ貫通している。導体12は、容器13の内部においてスペーサ導体14aに接続される。
【0018】
図2は、
図1に示したガス絶縁装置1の、製造途中の状態の例を示す側面図である。
図2においては、視認性のため、容器13を透過して内部を描いている。
図2に示す例では、端部13aにスペーサ14が配されていない。このため、カバー20の部分にシール材がない状態では、容器13は気密状態ではない。また、コイル11に導体12が接続されていない。
【0019】
ガス絶縁装置1の製造工程においては、
図2に示したような製造途中の状態で、ガス絶縁装置1を輸送または保管する場合がある。製造途中の状態のガス絶縁装置1を輸送または保管する場合、
図2に示すように、ガス絶縁装置1は、カバー20を備えてよい。カバー20は、ガス絶縁装置1の端部13aを被覆する。カバー20は、例えば複数のボルト25により、端部13aを被覆する位置に取り付けられる。カバー20は
図1においても表れている。ただし、ガス絶縁装置1の完成品の使用時にはカバー20は取り外される。
【0020】
図3は、カバー20の上面図である。
図4は、カバー20の底面図である。
図5は、カバー20の前方側面図である。
図6は、カバー20の右方側面図である。
図7は、
図3のVII-VII線断面図である。
図7においては、断面だけでなく、断面の奥にある構造も図示している。カバー20の後方側面図は、
図5に示した前方側面図と対称であるため省略している。カバー20の左方側面図は、
図6に示した右方側面図と対称であるため省略している。
図3~
図7に示すように、カバー20は、天面部21と、側部22と、取付部23とを備える。
【0021】
天面部21は、ガス絶縁装置1の端部13aに対向する部位である。天面部21は、例えば略円形状であってよいがこれに限られない。側部22は、天面部21の外縁に位置し、かつ天面部21に対して角度を有する部位である。天面部21が略円形である場合、天面部21の外縁に位置する側部22は環状である。取付部23は、側部22の外縁に位置し、かつ端部13aに取り付けられる部位である。天面部21が略円形である場合、取付部23も環状である。
【0022】
取付部23は、ボルト25が挿入される複数の貫通孔23aを有する。視認性のため、
図3および
図4においては一部の貫通孔23aにのみ符号を付している。ガス絶縁装置1の端部13aは、カバー20が端部13aを被覆した状態における取付部23の位置に対応する位置に、ボルト25が挿入される複数の孔を有する。貫通孔23a、および当該貫通孔23aに対応する端部13aの孔の一方からボルト25を挿入し、他方から突出するボルト25にナットを締結させることで、カバー20を端部13aに取り付けることができる。
【0023】
貫通孔23aの数は
図3および
図4に示されている例に限られず、カバー20を端部13aに取り付けるために必要な数の貫通孔23aを取付部23が有していればよい。ただし、カバー20を端部13aに取り付ける方法は、ボルト25を用いるものには限られず、例えば取付部23および端部13aをクランプするクランプ機構を用いるものであってもよい。この場合には、取付部23は貫通孔23aを有する必要はない。また、この場合には、端部13aもボルト25が挿入される孔を有する必要はない。
【0024】
取付部23は、端部13aと接する面に、溝23bを有する。溝23bは、端部13aおよびカバー20により囲まれる空間を気密状態にするためのシール部材が配置される溝である。シール部材は例えばゴム製のOリングであるがこれに限られない。
【0025】
溝23bにシール部材を配置した状態で、カバー20により端部13aを被覆することにより、カバー20および容器13の内部が気密状態となる。したがって、
図2に示すように、スペーサ14が端部13aに配されていない場合であっても、水分および粉塵などが端部13aから容器13の内部に侵入することを防止できる。また、端部13aを衝撃から保護することができる。
【0026】
カバー20および容器13の内部を気密状態とする場合、カバー20および容器13の内部に不活性ガスが充填されてよい。不活性ガスの例としては窒素が挙げられる。これにより、カバー20および容器13の内部を気密状態とした時点で当該内部に存在していた大気中の酸素などがコイル11に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0027】
また、カバー20および容器13の内部に充填される不活性ガスの圧力は、1気圧よりも低くてよく、例えば0.5気圧であってよい。不活性ガスの圧力を1気圧よりも低くすることで、カバー20が大気圧により端部13aに向けて押圧される。その結果、不活性ガスの圧力が1気圧以上である場合と比較して、カバー20が端部13aに強く固定される。ただし、この場合、カバー20の強度が十分でなければ、大気圧によりカバー20が変形または破損する可能性がある。
【0028】
カバー20には、天面部21から側部22の少なくとも一部まで、放射状に延在する複数のリブ24が形成されている。視認性のため、
図3~
図7においては一部のリブ24にのみ符号を付している。リブ24がカバー20に形成されていることで、リブ24がカバー20に形成されていない場合と比較して、カバー20の強度が向上する。したがって、カバー20および容器13の内部に充填する不活性ガスの圧力を1気圧よりも低くした場合であっても、大気圧によりカバー20が変形または破損することを防止できる。
【0029】
図3などに示した例では、複数のリブ24は、カバー20が端部13aを被覆した状態において、端部13aに向かって凸である形状を有する。ただし、リブ24の形状はこれに限られず、端部13aとは逆に向かって凸な形状を有してもよい。また、
図3などに示した例では、複数のリブ24は、天面部21の中央部近傍において互いに連結している。ただし、複数のリブ24は、互いに連結していなくてもよい。
【0030】
リブ24は、延在する方向が互いに異なる少なくとも4つのリブ24を含んでいてよい。その場合、当該4つのリブ24のうち、延在する方向が互いに隣接する2つのリブ24は、互いに直交する方向に延在してよい。このような少なくとも4つのリブ24がカバー20に形成されていることで、リブ24がカバー20に形成されていない場合と比較して、カバー20の強度が十分に向上する。
【0031】
カバー20には、さらに多くのリブ24が形成されていてもよい。
図3などにおいては、カバー20には、延在する方向が等角度間隔で互いに異なる12のリブ24が形成されている。カバー20にさらに多くのリブ24が形成される場合には、それぞれのリブ24が延在する方向は、必ずしも等角度間隔でなくてもよい。ただし、容器13の内部圧力に対する応力集中が起こり難いことから、リブ24を等角度間隔とした方が好ましい。
【0032】
カバー20は、アルミニウムで形成されていてよい。具体的には、カバー20は、アルミニウム板をプレス成型することで形成されていてよい。アルミニウム板の厚さは2mm~5mmの範囲であってよく、例えば3mmとしてよい。
【0033】
このような方法でカバー20を形成することで、例えば鉄で別個に形成された天面部、側部および取付部を互いに溶接する方法でカバー20を形成する場合と比較して、カバー20を軽量化できる。このため、作業者によるカバー20の取り扱いが容易になる。したがって、カバー20を端部13aに取り付ける作業に要する時間を短縮できる。また、カバー20を端部13aに取り付ける作業の過程において、作業者がカバー20の取り扱いを誤ってガス絶縁装置1の構成要素に衝突させ、当該構成要素を損傷させる可能性が低減される。さらに、カバー20の材料コストを低減し、ガス絶縁装置1自体の製造コストも低減できる。
【0034】
上述したとおり、側部22は天面部21に対して角度を有する。具体的には、側部22は、天面部21に対して傾斜していてよい。さらに、複数のリブ24のいずれかに沿った断面において、天面部21と側部22との接続部は曲線状であってよい。
【0035】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るカバーは、ガス絶縁装置の端部を被覆するカバーであって、前記端部に対向する天面部と、前記天面部の外縁に位置し、かつ前記天面部に対して角度を有する側部と、前記側部の外縁に位置し、かつ前記端部に取り付けられる取付部とを備え、前記天面部から前記側部の少なくとも一部まで、放射状に延在する複数のリブが形成され、前記取付部は、前記端部および前記カバーにより囲まれる空間を気密状態にするためのシール部材が配置される溝を、前記端部に接する面に有する。
【0036】
上記の構成によれば、シール部材を溝に配した状態のカバーによりガス絶縁装置の端部を被覆することで、カバーの内部を気密状態とすることができる。天面部から側部の少なくとも一部まで、放射状に延在する複数のリブが形成されていることにより、例えばカバーを軽量化したとしても、外圧または内圧によるカバーの変形を防止することができる。それゆえ、気密状態を適切に維持することができる。
【0037】
本発明の態様2に係るカバーは、アルミニウムで形成されている。
【0038】
上記の構成によれば、例えばカバーを鉄で形成する場合と比較してカバーを軽量化できる。
【0039】
本発明の態様3に係るカバーにおいて、前記複数のリブは、延在する方向が互いに異なる少なくとも4つの前記リブを含み、延在する方向が互いに隣接する2つの前記リブは、互いに直交する方向に延在する。
【0040】
上記の構成によれば、カバーにリブが形成されていない場合と比較して、カバーの強度が十分に向上する。
【0041】
本発明の態様4に係るガス絶縁装置は、態様1から3のいずれかのカバーを備える。
【0042】
上記の構成によれば、ガス絶縁装置が製造途中の状態であっても、装置の内部を気密状態とすることができる。
【0043】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 ガス絶縁装置
20 カバー
21 天面部
22 側部
23 取付部
23b 溝
24 リブ