(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008290
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】情報提示装置および情報提示方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240112BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110039
(22)【出願日】2022-07-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「ビッグデータ統合利用のためのセキュアなコンテンツ共有・流通基盤の構築」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】505082350
【氏名又は名称】学校法人 明治薬科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100207778
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敦之
(72)【発明者】
【氏名】野口 保
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】患者が自覚する症状が処方された医薬品の副作用によるものであるか否かを薬剤師が適切にかつ短時間で判断することを可能とする情報提示方法等を提供する。
【解決手段】情報提示方法は、複数の医薬品の情報と、各医薬品の副作用の情報と、副作用の代表名称とを関連付けて記憶し、各代表名称に関連付けて、代表名称の表記を異ならせた類似名称を記憶し、患者が服用している医薬品の情報と、患者が自覚する症状の名称を取得し、記憶された類似名称のうちから、取得された症状の名称に一致する類似名称を特定し、記憶された代表名称のうちから、特定された類似名称に関連付けられた代表名称を特定し、特定された代表名称に関連付けられている副作用の情報を抽出し、取得された医薬品の情報のうちから、抽出された副作用の情報に関連付けられた医薬品の情報を抽出し、抽出された医薬品の情報と抽出された副作用の情報とを提示する、ことを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医薬品の情報と、各医薬品の副作用の情報と、副作用による症状の代表的な名称である代表名称とを関連付けて記憶するとともに、各代表名称に関連付けて、当該代表名称の表記を異ならせた類似名称を記憶する記憶部と、
患者が服用している医薬品の情報と、患者が自覚する症状の名称を取得する取得部と、
前記記憶された類似名称のうちから、前記取得された症状の名称に一致する類似名称を特定する特定部と、
前記記憶された代表名称のうちから、前記特定された類似名称に関連付けられた代表名称を抽出し、前記抽出された代表名称に関連付けられている副作用の情報を抽出する副作用抽出部と、
前記取得された医薬品の情報のうちから、前記抽出された副作用の情報に関連付けられた医薬品の情報を抽出する医薬品抽出部と、
前記抽出された医薬品の情報と前記抽出された副作用の情報とを提示する提示部と、
を有することを特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
前記記憶部は、各代表名称に関連付けて、当該代表名称に関連付けられた副作用に随伴する随伴症状の情報をさらに記憶し、
前記提示部は、前記特定された代表名称に関連付けられた随伴症状の情報をさらに提示する、
請求項1に記載の情報提示装置。
【請求項3】
情報提示装置によって実行される情報提示方法であって、
複数の医薬品の情報と、各医薬品の副作用の情報と、副作用による症状の代表的な名称である代表名称とを関連付けて記憶し、
各代表名称に関連付けて、当該代表名称の表記を異ならせた類似名称を記憶し、
患者が服用している医薬品の情報と、患者が自覚する症状の名称を取得し、
前記記憶された類似名称のうちから、前記取得された症状の名称に一致する類似名称を特定し、
前記記憶された代表名称のうちから、前記特定された類似名称に関連付けられた代表名称を特定し、
前記特定された代表名称に関連付けられている副作用の情報を抽出し、
前記取得された医薬品の情報のうちから、前記抽出された副作用の情報に関連付けられた医薬品の情報を抽出し、
前記抽出された医薬品の情報と前記抽出された副作用の情報とを提示する、
ことを含むことを特徴とする情報提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提示装置および情報提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤師は、医薬品が処方された患者に対して、医薬品の効能や副作用等についての服薬指導を行う。医薬品の副作用は、その添付文書に記載されているものの、患者が自覚する症状と必ずしも一致せず、患者が理解しにくい専門用語で記載されている。したがって、薬剤師が添付文書を参照したとしても、患者に生じうる症状を含めた適切な服薬指導を行うのが難しい場合がある。そこで、特許文献1には、患者に対して処方された医薬品の副作用によって患者に生じうる初期症状の情報を出力する服薬指導支援システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムは、患者に処方され、患者が今後服用する医薬品についての症状を出力するものである。
【0005】
ところで、薬剤師は、継続的に医薬品の処方を受ける患者に対する服薬指導として、以前に処方された医薬品による副作用の有無を確認し、副作用による症状がみられる患者に対して医薬品の変更等の対処を促す。しかし、上述のとおり、添付文書の副作用は患者が自覚する症状と必ずしも一致せず、専門用語で記載されているため、患者が申告する症状が副作用によるものであるか否かを判断することは容易でない。したがって、患者が申告する症状が処方された医薬品の副作用によるものであるかを薬剤師が適切に判断できるようにすることが望まれている。また、患者は時間をかけて服薬指導が行われることを望まない場合がある。したがって、薬剤師が患者に医薬品を受け渡す際の短時間の服薬指導の際に上述の判断をできるようにすることが望ましい。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、患者が自覚する症状が処方された医薬品の副作用によるものであるか否かを薬剤師が適切にかつ短時間で判断することを可能とする情報提示装置、情報提示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る情報提示装置は、複数の医薬品の情報と、各医薬品の副作用の情報と、副作用による症状の代表的な名称である代表名称とを関連付けて記憶するとともに、各代表名称に関連付けて、代表名称の表記を異ならせた類似名称を記憶する記憶部と、患者が服用している医薬品の情報と、患者が自覚する症状の名称を取得する取得部と、記憶された類似名称のうちから、取得された症状の名称に一致する類似名称を特定する特定部と、記憶された代表名称のうちから、特定された類似名称に関連付けられた代表名称を抽出し、抽出された代表名称に関連付けられている副作用の情報を抽出する副作用抽出部と、取得された医薬品の情報のうちから、抽出された副作用の情報に関連付けられた医薬品の情報を抽出する医薬品抽出部と、抽出された医薬品の情報と抽出された副作用の情報とを提示する提示部と、を有することを特徴とする。
【0008】
代表名称は、副作用を臨床的に一般性の高い症状として表現したものであり、類似名称は、代表名称に示される症状を患者の立場に立って表現したものである。したがって、類似名称は、患者が自覚する一般性の高い症状を患者の立場に立って表現したものとなり、患者が薬剤師に対して申告する症状と一致しやすい。情報提示装置は、副作用、代表名称及び類似名称を関連付けて記憶し、患者が自覚する症状の名称と一致する類似名称を特定し、特定した類似名称に関連付けられた代表名称を抽出し、代表名称に関連付けられた医薬品および副作用の名称を抽出する。このようにすることで、情報提示装置は、患者の症状の原因と推定される医薬品を適切にかつ短時間で提示することができる。
【0009】
実施形態に係る情報提示装置において、記憶部は、各代表名称に関連付けて、代表名称が示す症状に随伴する随伴症状の情報をさらに記憶し、提示部は、特定された代表名称に関連付けられた随伴症状の情報をさらに提示することが好ましい。
【0010】
実施形態に係る情報提示方法は、情報提示装置によって実行される情報提示方法であって、複数の医薬品の情報と、各医薬品の副作用の情報と、副作用による症状の代表的な名称である代表名称とを関連付けて記憶し、各代表名称に関連付けて、代表名称の表記を異ならせた類似名称を記憶し、患者が服用している医薬品の情報と、患者が自覚する症状の名称を取得し、記憶された類似名称のうちから、取得された症状の名称に一致する類似名称を特定し、記憶された代表名称のうちから、特定された類似名称に関連付けられた代表名称を特定し、特定された代表名称に関連付けられている副作用の情報を抽出し、取得された医薬品の情報のうちから、抽出された副作用の情報に関連付けられた医薬品の情報を抽出し、抽出された医薬品の情報と抽出された副作用の情報とを提示する、ことを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る情報提示装置および情報提示方法は、患者が自覚する症状が処方された医薬品の副作用によるものであるか否かを薬剤師が適切にかつ短時間で判断することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】情報提示システム1の概略構成を示す図である。
【
図3】代表名称テーブルT1のデータ構造を示す図である。
【
図4】類似名称テーブルT2のデータ構造を示す図である。
【
図5】履歴テーブルT3のデータ構造を示す図である。
【
図10】情報提示処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る情報提示システム1の概略構成を示す図である。情報提示システム1は、複数の通信端末2、情報提示装置3および通信端末2と情報提示装置3とを通信可能に接続するネットワーク4を有する。複数の通信端末2は、複数の薬局にそれぞれ設置され、薬剤師が利用するPC(Personal Computer)、タブレットまたはスマートフォン等の情報処理装置である。情報提示装置3は、サーバまたはPC等の情報処理装置である。
【0015】
薬剤師は、継続的に薬剤の処方を受ける患者に対する服薬指導の際に、副作用の症状が生じていないかを尋ねる。薬剤師は、通信端末2を操作して、患者が服用している医薬品の情報および患者が自覚する症状の名称を情報提示装置3に送信する。情報提示装置3は、患者の症状の原因と推定される医薬品の情報と、その医薬品の添付文書に記載されている、患者の症状に対応する副作用の情報を提示する。薬剤師は、提示された情報に基づいて、患者が自覚する症状が処方された医薬品の副作用によるものであるか否かを判断し、患者に回答する。このようにして、情報提示システム1は、患者が自覚する症状が処方された医薬品の副作用によるものであるか否かを薬剤師が適切にかつ短時間で判断することを可能とする。
【0016】
図2は、情報提示装置3の機能ブロック図である。情報提示装置3は、記憶部31、通信部32および処理部33を有する。
【0017】
記憶部31は、プログラムまたはデータを記憶するための構成であり、例えば、半導体メモリ装置を備える。記憶部31は、処理部による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピュータ読取り可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体からインストールされる。
【0018】
通信部32は、情報提示装置3を通信端末2と通信可能にするための構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信インタフェース回路は、移動体通信方式、有線LAN(Local Area Network)、無線LAN等の通信インタフェース回路である。通信部32は、データを通信端末2から受信して処理部33に供給するとともに、処理部33から供給されたデータを通信端末2に送信する。
【0019】
処理部33は、情報提示装置3の動作を統括的に制御するデバイスであり、一つまたは複数のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部33は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える。処理部33は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部33は、記憶されているプログラムおよび各部から供給されたデータに基づいて各部の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。
【0020】
処理部33は、機能ブロックとして、取得部331、特定部332、抽出部333、提示部334および登録部335を有する。これらの各部は、処理部33によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして情報提示装置3に実装されてもよい。なお、抽出部333は、副作用抽出部および医薬品抽出部の一例である。
【0021】
以下では、記憶部31に記憶されるデータについて説明する。
【0022】
図3は、記憶部31に記憶される代表名称テーブルT1のデータ構造を示す図である。代表名称テーブルT1は、複数の医薬品の副作用の代表名称を記憶するためのテーブルである。代表名称テーブルT1は、医薬品ID、医薬品の名称、副作用ID、副作用の名称、代表名称IDおよび代表名称を相互に関連付けて記憶する。医薬品の名称および副作用の名称は、それぞれ医薬品の情報および副作用の情報の一例である。
【0023】
医薬品IDは、複数の医薬品のそれぞれを識別する識別情報である。識別情報は、任意の文字列、数値、符号等である。医薬品の名称は、文字列として記憶される。例えば、医薬品名として、医薬品の添付文書に記載されている名称が記憶される。副作用IDは、各医薬品の副作用を識別する識別情報である。副作用の名称は、文字列として記憶される。例えば、副作用の名称として、医薬品の添付文書に副作用として記載されている文字列が記憶される。代表名称IDは、代表名称を識別する識別情報である。代表名称は、各副作用の代表的な症状の名称を示す文字列である。
【0024】
代表名称は、副作用を臨床的に一般性の高い症状として表現したもの、または副作用を身体の部位に着目して表現したものである。例えば、副作用が「紫斑」のような、臨床的に一般性を欠く症状である場合、代表名称として、「出血傾向」のような、臨床的に一般性の高い症状が記憶される。副作用が「多形紅斑」のような身体の部位に着目していない表現である場合、代表名称として、「皮疹」のような、身体の部位(この場合では、皮膚)に着目した表現が記憶されてもよい。副作用名が「肝機能障害」や「光線過敏症」のような、一般的な医学用語である場合、代表名称として、「肝障害」や「光線過敏」のように、より日常的に用いられやすい用語が記憶されてもよい。また、副作用名が一般的な医学用語である場合には、代表名称は副作用名と同一であってもよい。
【0025】
一般的に、一つの医薬品は複数の副作用を有しているため、代表名称テーブルT1において、単一の医薬品IDに複数の副作用IDが関連付けられる。他方で、代表名称テーブルT1において、単一の副作用IDには、一つの代表名称IDのみが関連付けられる。すなわち、代表名称テーブルT1において、副作用と代表名称とは、一対一に対応する。
【0026】
代表名称テーブルT1の医薬品および副作用の名称は、医薬品の添付文書の記載に基づいてあらかじめ設定される。代表名称は、医師、薬剤師等の専門家の見識に基づいてあらかじめ設定される。
【0027】
図4は、記憶部31に記憶される類似名称テーブルT2のデータ構造を示す図である。類似名称テーブルT2は、複数の代表名称の表記を異ならせた類似名称を記憶するためのテーブルである。類似名称テーブルT2は、代表名称ID、代表名称、類似名称IDおよび類似名称を関連付けて記憶する。
【0028】
代表名称IDおよび代表名称の組合せは、代表名称テーブルT1に記憶された代表名称IDおよび代表名称の組合せと同様である。類似名称IDは、複数の類似名称を識別する識別情報である。類似名称は、代表名称の表記を異ならせた文字列である。類似名称には、代表名称と同一の文字列が含まれてもよい。
【0029】
類似名称は、代表名称に示される症状を患者の立場に立って表現したものである。類似名称は、例えば、代表名称をより専門的でない語句で表現したものである。例えば、代表名称が「出血傾向」である場合、類似名称として、「出血」、「出血の増悪」または「出血事象」等が記憶される。
【0030】
類似名称テーブルT2の代表名称および類似名称は、医師、薬剤師等の専門家の見識に基づいてあらかじめ設定される。好ましくは、類似名称は、服薬指導を行う薬剤師の見識に基づいて設定される。
【0031】
図5は、記憶部31に記憶される履歴テーブルT3のデータ構造を示す図である。履歴テーブルT3は、情報提示装置3によって提示された情報の履歴を記憶するためのテーブルである。履歴テーブルT3は、履歴ID、日時、患者ID、性別、年齢、代表名称、類似名称、提示医薬品ID、提示医薬品名および評価を関連付けて記憶する。
【0032】
履歴IDは、提示された情報の履歴を識別する識別情報である。日時は、履歴に対応する情報が提示された日時である。日時は、薬剤師が症状の名称を通信端末2に入力した日時、情報提示装置3が症状の名称を通信端末2から取得した日時等でもよい。患者ID、性別および年齢は、医薬品が処方されている患者の識別情報、性別および年齢である。代表名称および類似名称は、患者が自覚する症状に対応するものとして情報提示装置3が特定した代表名称および類似名称並びにそれらの識別情報である。提示医薬品IDおよび提示医薬品名は、情報提示装置3によって患者の症状の原因として推定されて、薬剤師または患者に提示された医薬品の識別情報および名称である。評価は、提示された情報が薬剤師または患者にとってどの程度有用であったかを示す情報であり、提示された情報のパターンに応じて異なる値をとる。例えば、患者が自覚する症状の原因と推定される一つの医薬品のみが特定された場合には、その情報には高い評価が付される。症状の原因と推定される複数の医薬品が特定された場合には、その情報には中程度の評価が付される。また、症状の原因と推定される医薬品が特定されなかった場合には、その情報には低い評価が付される。
【0033】
履歴テーブルT3のデータは、情報提示装置3が医薬品および副作用の情報を提示するたびに自動的に、または薬剤師が通信端末2を操作することに応じて記憶される。
【0034】
以下では、情報提示装置3によって生成される表示データに基づいて通信端末2に表示される画面について説明する。
【0035】
図6は、通信端末2に表示される医薬品入力画面G1を示す図である。医薬品入力画面G1は、薬剤師が通信端末2を操作して、所定のアプリケーションプログラムを実行させた場合に表示される。所定のアプリケーションプログラムは、例えば、情報提示装置3によって生成された表示データに基づいて画面を表示するブラウザアプリケーションプログラムである。医薬品入力画面G1は、患者に処方されている医薬品の名称を入力するための画面である。医薬品入力画面G1は、テキストボックスG11、追加オブジェクトG12、医薬品表示領域G13および決定オブジェクトG14を含む。
【0036】
テキストボックスG11は、文字列の入力を受け付けるためのオブジェクトである。追加オブジェクトG12は、テキストボックスG11に入力された医薬品の名称を、患者に処方された医薬品の名称として医薬品表示領域G13に追加するためのオブジェクトである。医薬品表示領域G13は、テキストボックスG11に入力された医薬品の名称が一覧表示される領域である。決定オブジェクトG14は、医薬品表示領域G13に表示されている医薬品を患者が服用している医薬品として決定するためのオブジェクトである。
【0037】
医薬品入力画面G1が通信端末2に最初に表示されたとき、医薬品表示領域G13には医薬品の名称は表示されていない。薬剤師である通信端末2の利用者は、通信端末2を操作して、医薬品の名称をテキストボックスG11に入力する。そして、利用者が通信端末2を操作して追加オブジェクトG12を選択すると、テキストボックスG11に入力された医薬品の名称が医薬品表示領域G13に追加される。利用者は、患者が服用している複数の医薬品が医薬品表示領域G13に表示されるまで上述の操作を繰り返し、決定オブジェクトG14を選択する。このようにして、患者が服用している医薬品の名称が通信端末2に入力される。
【0038】
なお、テキストボックスG11に文字列が入力されたときに、入力された文字列に対応する医薬品の名称の候補が表示されてもよい。この場合、表示された候補のうちのいずれかの候補が選択されたときに、選択された候補が医薬品表示領域G13に追加されてもよい。入力された文字列に対応する医薬品の名称は、例えば、代表名称テーブルT1に記憶された医薬品名のうち、入力された文字列に部分一致または前方一致する医薬品名である。このようにすることで、医薬品の名称を入力する利用者にとっての利便性が向上する。
【0039】
図7は、通信端末2に表示される症状入力画面G2を示す図である。症状入力画面G2は、医薬品入力画面G1の決定オブジェクトG14が選択された場合に表示される。症状入力画面G2は、患者が自覚する症状を入力するための画面である。症状入力画面G2は、テキストボックスG21および決定オブジェクトG22を含む。
【0040】
テキストボックスG21は、文字列の入力を受け付けるためのオブジェクトである。決定オブジェクトG22は、テキストボックスG21に入力された文字列を患者が自覚する症状の名称として決定するためのオブジェクトである。
【0041】
図8は、通信端末2に表示される医薬品表示画面G3を示す図である。医薬品表示画面G3は、症状入力画面G2の決定オブジェクトG22が選択された場合に表示される。医薬品表示画面G3は、患者が自覚する症状の原因と推定される医薬品の情報を提示するための画面である。医薬品表示画面G3は、代表名称表示領域G31、医薬品表示領域G32、詳細表示オブジェクトG33および登録オブジェクトG34を含む。
【0042】
代表名称表示領域G31には、患者が自覚する症状に対応する代表名称が表示される。代表名称は、後述するように、情報提示装置3によって実行される情報提示処理において、入力された症状の名称に基づいて特定される。医薬品表示領域G32には、医薬品入力画面G1において入力された医薬品の名称が表示される。医薬品表示領域G32に表示される医薬品の名称は、患者の症状の原因と推定されるものであるか否かに応じて異なる表示態様で表示される。
図8に示す例では、「○○錠25mg」および「××錠5mg」の医薬品は、患者の症状の原因と推定されるものであるため、他の医薬品とは異なる背景色で表示されている。詳細表示オブジェクトG33は、医薬品表示領域G32に含まれる医薬品のそれぞれについて表示され、各医薬品の副作用の詳細を表示させるためのオブジェクトである。登録オブジェクトG34は、医薬品表示画面G3において提示された情報を履歴テーブルT3に登録するためのオブジェクトである。
【0043】
図9は、通信端末2に表示される副作用表示画面G4を示す図である。副作用表示画面G4は、医薬品表示画面G3の詳細表示オブジェクトG33が選択された場合に表示される。副作用表示画面G4は、医薬品の副作用情報を表示するための画面である。副作用表示画面G4は、医薬品表示領域G41、副作用表示領域G42および終了オブジェクトG43を含む。
【0044】
医薬品表示領域G41には、医薬品表示画面G3において、選択された詳細表示オブジェクトG33に対応していた医薬品の名称が表示される。副作用表示領域G42には、医薬品表示領域G41に表示されている医薬品の副作用の名称が表示される。副作用の名称は、代表名称テーブルT1に基づいて表示される。すなわち、副作用表示領域G42に表示される副作用の名称は、医薬品の添付文書に記載されているものである。副作用表示領域G42に表示される副作用の名称は、患者が自覚する症状に対応するものであるか否かに応じて異なる表示態様で表示される。
図9に示す例では、「紫斑」の副作用は、患者が自覚する症状に対応する副作用であるため、他の副作用よりも強調して表示されている。終了オブジェクトG43は、副作用表示画面G4の表示を終了するためのオブジェクトである。終了オブジェクトG43が選択されると、直前に表示されていた医薬品表示画面G3が再び表示される。
【0045】
なお、通信端末2に表示される画面は、上述した例に限られない。例えば、複数の画面の機能が一つの画面によって実現されてもよい。例えば、単一の画面において患者が服用している医薬品の名称と患者が自覚する症状の名称との入力が受け付けられてもよい。また、単一の画面において患者が自覚する症状の原因と推定される医薬品の名称と、各医薬品の副作用の名称とが表示されてもよい。
【0046】
以下では、情報提示装置3によって実行される処理について説明する。
【0047】
図10は、情報提示装置3によって実行される情報提示処理の流れを示すフロー図である。情報提示処理は、記憶部31に記憶されたプログラムに基づいて、処理部33が情報提示装置3の各構成と協働することにより実現される。
【0048】
最初に、取得部331は、患者が服用している医薬品の情報を取得する(ステップS101)。取得部331は、通信端末2からの要求に応じて、医薬品入力画面G1の表示データを生成する。表示データは例えばHTML(Hypertext Markup Language)データであり、通信端末2からの要求は例えばHTTP(Hypertext Transfer Protocol)リクエストである。取得部331は、通信部32を介して、生成された表示データを通信端末2に送信する。通信端末2は、送信された表示データに基づいて、医薬品入力画面G1を表示する。このとき表示される医薬品入力画面G1の医薬品表示領域G13には、医薬品の名称は表示されていない。
【0049】
医薬品入力画面G1のテキストボックスG11に医薬品の名称を示す文字列が入力され、追加オブジェクトG12が選択されると、通信端末2は、入力された文字列を含む、表示データの要求を送信する。情報提示装置3の取得部331は、通信部32を介して要求を受信し、要求に含まれる文字列を取得する。
【0050】
取得部331は、取得した文字列が代表名称テーブルT1に医薬品名として記憶されているか否かを判定する。文字列が医薬品名として記憶されている場合、取得部331は、取得した文字列が医薬品表示領域G13に追加された医薬品入力画面G1の表示データを生成する。文字列が医薬品名として記憶されていない場合、取得部331は、入力された文字列に対応する医薬品が記憶されていない旨を表示した医薬品入力画面G1の表示データを生成する。取得部331は、通信部32を介して、生成された表示データを通信端末2に送信する。通信端末2は、送信された表示データに基づいて、テキストボックスG11に入力された文字列が医薬品表示領域G13に追加された医薬品入力画面G1を表示する。患者が服用している複数の医薬品が医薬品表示領域G13に表示されるまで、上述の処理が繰り返される。
【0051】
医薬品入力画面G1の決定オブジェクトG14が選択されると、通信端末2は、症状入力画面G2の表示データの要求を送信する。情報提示装置3の取得部331は、通信部32を介して要求を受信し、直前に送信した医薬品入力画面G1の表示データにおいて医薬品表示領域G13に含まれていた医薬品の名称を、患者が服用している医薬品の名称として取得する。
【0052】
次に、取得部331は、患者が自覚する症状の名称を取得する(ステップS102)。取得部331は、症状入力画面G2の表示データを生成する。取得部331は、通信部32を介して、生成された表示データを通信端末2に送信する。通信端末2は、送信された表示データに基づいて、症状入力画面G2を表示する。症状入力画面G2のテキストボックスG21に症状の名称を示す文字列が入力され、決定オブジェクトG22が選択されると、通信端末2は、入力された文字列を含む、医薬品表示画面G3の表示データの要求を送信する。情報提示装置3の取得部331は、要求に含まれる文字列を患者が自覚する症状の名称として取得する。
【0053】
次に、特定部332は、類似名称テーブルT2に記憶された類似名称のうちから、取得された症状の名称に一致する類似名称を特定する(ステップS103)。取得された症状の名称に一致する類似名称は、例えば症状の名称に完全一致する類似名称である。取得された症状の名称に一致する類似名称は、症状の名称に部分一致または前方一致する類似名称でもよい。
【0054】
次に、抽出部333は、類似名称テーブルT2に記憶された代表名称のうちから、特定された類似名称に関連付けられた代表名称を抽出する(ステップS104)。
【0055】
次に、抽出部333は、代表名称テーブルT1に記憶された副作用の名称のうちから、抽出された代表名称に関連付けられている副作用の名称を抽出する(ステップS105)。
【0056】
次に、抽出部333は、代表名称テーブルT1に記憶された医薬品の名称のうちから、抽出された副作用の名称に関連付けられた医薬品名を抽出する(ステップS106)。代表名称テーブルT1において、複数の医薬品に同一の副作用が関連付けられる場合があるため、抽出された副作用の名称に関連付けられた医薬品の名称として、複数の医薬品の名称が抽出されてもよい。
【0057】
次に、提示部334は、抽出された医薬品の名称を提示する(ステップS107)。提示部334は、ステップS101において取得された医薬品の名称を医薬品表示領域G32に含み、かつステップS106において抽出された医薬品の名称を異なる表示態様で表示する医薬品表示画面G3の表示データを生成する。提示部334は、通信部32を介して、生成した表示データを通信端末2に送信することにより、抽出された医薬品の名称を提示する。通信端末2は、送信された表示データに基づいて、医薬品表示画面G3を表示する。
【0058】
次に、提示部334は、詳細情報の表示が要求されたか否かを判定する(ステップS108)。医薬品表示画面G3において詳細表示オブジェクトG33が選択された場合に、通信端末2は、選択された詳細表示オブジェクトG33に対応する医薬品の名称を含む、副作用表示画面G4の表示データの要求を送信する。医薬品表示画面G3において登録オブジェクトG34が選択された場合に、通信端末2は、提示された情報の登録指示を送信する。提示部334は、副作用表示画面G4の表示データの要求が送信された場合に詳細情報の表示が要求されたと判定し、登録指示が送信された場合に詳細情報の表示が要求されなかったと判定する。
【0059】
詳細情報の表示が要求された場合(ステップS108-Yes)、提示部334は、抽出された副作用の名称を提示する(ステップS109)。提示部334は、副作用表示画面G4の表示データの要求に含まれる医薬品の名称を取得する。提示部334は、代表名称テーブルT1において、取得した医薬品の名称に関連付けられているすべての副作用の名称を取得する。提示部334は、取得した副作用の名称を副作用表示領域G42に含み、かつステップS105で抽出された副作用の名称を異なる表示態様で表示する副作用表示画面G4の表示データを生成する。提示部334は、通信部32を介して、生成した表示データを通信端末2に送信することにより、副作用の名称を提示する。通信端末2は、送信された表示データに基づいて、副作用表示画面G4を表示する。副作用表示画面G4の終了オブジェクトG43が選択された場合、通信端末2は、直前に表示されていた医薬品表示画面G3の表示データの要求を送信する。提示部334は、医薬品表示画面G3の要求が送信されると、ステップS107に進み、再び医薬品表示画面G3の表示データを生成して通信端末2に送信することにより、医薬品の名称を提示する。
【0060】
詳細情報の表示が要求されず、登録指示が送信された場合(ステップS108-No)、登録部335は、提示された情報を履歴として履歴テーブルT3に登録する(ステップS110)。登録部335は、患者ID、患者の性別および年齢を入力するための患者情報入力画面の表示データを生成して、通信部32を介して通信端末2に送信する。通信端末2は、送信された表示データに基づいて、患者情報入力画面を表示して、患者ID、患者の性別および年齢の入力を受け付ける。登録部335は、通信部32を介して、患者ID、患者の性別および年齢を通信端末2から受信することにより取得する。登録部335は、取得した患者ID、患者の性別および年齢に、提示された情報およびその情報の評価を関連付けて履歴テーブルT3に登録する。提示された情報には、代表名称、類似名称、医薬品IDおよび医薬品の名称が含まれる。以上で、情報提示処理は終了する。
【0061】
以上説明したように、情報提示装置3は、記憶部31、取得部331、特定部332、抽出部333および提示部334を有する。記憶部31は、複数の医薬品の名称と、各医薬品の副作用の名称と、副作用による症状の代表的な名称である代表名称を記憶するとともに、各代表名称に関連付けて、代表名称の表記を異ならせた類似名称を記憶する。取得部331は、患者が服用している医薬品の情報と、患者が自覚する症状の名称とを取得する。特定部332は、記憶された類似名称のうちから、取得された症状の名称に一致する類似名称を特定する。抽出部333は、記憶された代表名称のうちから、特定された類似名称に関連付けられた代表名称に関連付けられている副作用情報を抽出するとともに、取得された医薬品の情報のうちから、抽出された副作用名に関連付けられた医薬品名を抽出する。提示部334は、抽出された医薬品の情報と抽出された副作用名を提示する。これにより、情報提示装置3は、患者が自覚する症状が処方された薬剤の副作用によるものであるか否かを薬剤師が短時間で判断することを可能とする。
【0062】
すなわち、代表名称は、副作用を臨床的に一般性の高い症状として表現したものであり、類似名称は、代表名称に示される症状を患者の立場に立って表現したものである。したがって、類似名称は、患者が自覚する一般性の高い症状を患者の立場に立って表現したものとなり、患者が薬剤師に対して申告する症状と一致しやすい。したがって、情報提示装置3は、患者の症状の原因と推定される医薬品を適切にかつ短時間で提示することができる。
【0063】
上述した説明では、提示部334は、抽出された代表名称に関連付けられた副作用の名称を提示するものとしたが、さらに副作用に随伴する随伴症状の名称を提示してもよい。随伴症状は、症状が発生する部位や症状の性質が異なるため副作用とは別の症状に分類されるが、副作用自体を原因として、または副作用と同一の原因により、副作用に随伴して発生することが多い症状をいう。なお、随伴症状の名称は、随伴症状の情報の一例である。
【0064】
この場合、代表名称テーブルT1は、各代表名称に関連付けて、一つまたは複数の随伴症状の名称を関連付けて記憶する。情報提示処理のステップS105において、抽出部333は、副作用の名称に加えて、抽出された代表名称に関連付けられた随伴症状の名称をさらに抽出する。ステップS109において、提示部334は、抽出された副作用の名称に関連付けて、抽出された随伴症状の名称を提示する。例えば、提示部334は、副作用表示画面G4の副作用表示領域G42において、抽出された副作用の名称を異なる表示態様で表示するとともに、抽出された副作用の名称の近傍に、抽出された随伴症状の名称を表示する表示データを生成する。
【0065】
このように、副作用に随伴する随伴症状の名称を提示することにより、情報提示装置3は、患者が医薬品に起因する症状として認識していなかったために申告しなかった随伴症状を医薬品に起因する症状として認識させることを可能とする。そして、患者にとってより適切な医薬品の処方が可能となる。
【0066】
上述した説明では、提示部334は、抽出された代表名称に関連付けられた副作用の名称を提示するものとしたが、さらに代表名称が発生する身体の部位の名称を提示してもよい。
【0067】
この場合、代表名称テーブルT1は、各代表名称に関連付けて、一つまたは複数の部位の名称を関連付けて記憶する。情報提示処理のステップS105において、抽出部333は、副作用の名称に加えて、抽出された代表名称に関連付けられた部位の名称をさらに抽出する。ステップS109において、提示部334は、抽出された副作用の名称に関連付けて、抽出された部位の名称を提示する。例えば、提示部334は、副作用表示画面G4の副作用表示領域G42において、抽出された副作用の名称を異なる表示態様で表示するとともに、抽出された副作用の名称の近傍に、抽出された部位の名称を表示する表示データを生成する。
【0068】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
3 情報提示装置
31 記憶部
331 取得部
332 特定部
333 抽出部
334 提示部