(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082904
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】気体を容器内に導入する方法、気体供給装置及び気体供給装置からの気体供給方法
(51)【国際特許分類】
B01J 4/00 20060101AFI20240613BHJP
B65D 81/26 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
B01J4/00 102
B65D81/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197105
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000100849
【氏名又は名称】株式会社アイセロ
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】武野 明義
(72)【発明者】
【氏名】宮原 伸
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】溝端 一幸
【テーマコード(参考)】
3E067
4G068
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB99
3E067BA01A
3E067BA12A
3E067BB11A
3E067BB14A
3E067BC03A
3E067BC06A
3E067CA03
3E067CA10
3E067EB17
4G068AA03
4G068AA07
4G068AB01
4G068AB02
4G068AC13
4G068AD12
4G068AD49
4G068AF01
(57)【要約】
【課題】特段の動力を使用せずに容器内に気体を導入することや、特段の動力を使用することなく、容器内に充填した気体を容器外に供給する方法や装置を提供すること。
【解決手段】下記A~Cの工程を有する、気体を容器内に導入する方法。
A.壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなる容器内に、水及び/又は有機溶媒を封入する工程
B.容器内にて該水及び/又は有機溶媒を蒸発させる工程
C.該クレーズフィルムを介して、該容器外から容器外の雰囲気の気体を該容器内に導入する工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A~Cの工程を有する、気体を容器内に導入する方法。
A.壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなる容器内に、水及び/又は有機溶媒を封入する工程
B.容器内にて該水及び/又は有機溶媒を蒸発させる工程
C.該クレーズフィルムを透過させて、容器外の雰囲気の気体を、容器外から容器内に導入する工程
【請求項2】
容器の壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなり、
容器内に予め水及び/又は有機溶媒を貯めておく構造を有し、
該容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられた気体供給装置。
【請求項3】
容器の壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなり、
該容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられた気体供給装置を用いて、
容器内にて該水及び/又は有機溶媒を蒸発させて、
該クレーズフィルムを透過させて、容器外の雰囲気の気体を、容器外から容器内に導入し、
容器内の気体を該供給口から外部に供給する方法。
【請求項4】
下記D~Fの工程を有する、気体を容器内に導入する方法。
D.壁の一部がクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aからなり、壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムbからなる容器の、該壁の一部のクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aの外面に、水及び/又は有機溶媒を接触させる工程
E.該壁の一部のクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aを介して、該水及び/又は有機溶媒を容器内に導入する工程
F.該壁の他部の該クレーズフィルムbを介して、容器外の雰囲気の気体を、容器外から容器内に導入する工程
【請求項5】
クレーズフィルムbの気体透過度に対する、クレーズフィルムa及び防水性透湿膜aの気体透過度の比が、3.0以上である請求項4に記載の気体を容器内に導入する方法。
【請求項6】
容器の壁の一部がクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cからなり、
該容器の壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムdからなり、
該容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられた気体供給装置。
【請求項7】
下記G~Jの工程を有する、気体供給装置からの気体供給方法。
容器の壁の一部がクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cからなり、
該容器の壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムdからなり、
該容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられた気体供給装置を用いて、
G.該容器の壁の一部に設けたクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cの外面に、水及び/又は有機溶媒を接触させる工程
H.該容器の壁の一部に設けたクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cを介して、該水及び/又は有機溶媒を気体供給装置内に導入する工程
I.該容器の壁の他部に設けたクレーズフィルムdを介して、気体供給装置の外の雰囲気の気体を気体供給装置内に導入する工程
J.気体供給装置内に導入された該気体を、該供給口を通じて容器外に供給する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体を容器内に導入する方法、気体供給装置及び気体供給装置から気体を供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、クレーズフィルムからなり通気性が優れた青果物包装用袋は知られている。
この特許文献1に記載の発明は、通気性に優れたクレーズフィルムにより青果物を包装しても、防曇性、通気性に優れる効果を発揮するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特段の動力を使用せずに容器内に気体を導入することや、特段の動力を使用することなく、容器内に充填した気体を容器外に供給する方法や装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の手段で解決することができることを見出し、本発明をなすに到った。
1.下記A~Cの工程を有する、気体を容器内に導入する方法。
A.壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなる容器内に、水及び/又は有機溶媒を封入する工程
B.容器内にて該水及び/又は有機溶媒を蒸発させる工程
C.該クレーズフィルムを透過させて、容器外の雰囲気の気体を、容器外から容器内に導入する工程
2.容器の壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなり、
容器内に予め水及び/又は有機溶媒を貯めておく構造を有し、
該容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられた気体供給装置。
3.容器の壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなり、
該容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられた気体供給装置を用いて、
容器内にて該水及び/又は有機溶媒を蒸発させて、
該クレーズフィルムを透過させて、容器外の雰囲気の気体を、容器外から容器内に導入し、
容器内の気体を該供給口から外部に供給する方法。
4.下記D~Fの工程を有する、気体を容器内に導入する方法。
D.壁の一部がクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aからなり、壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムbからなる容器の、該壁の一部のクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aの外面に、水及び/又は有機溶媒を接触させる工程
E.該壁の一部のクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aを介して、該水及び/又は有機溶媒を容器内に導入する工程
F.該壁の他部の該クレーズフィルムbを介して、容器外の雰囲気の気体を、容器外から容器内に導入する工程
5.クレーズフィルムbの気体透過度に対する、クレーズフィルムa及び防水性透湿膜aの気体透過度の比が、3.0以上である4に記載の気体を容器内に導入する方法。
6.容器の壁の一部がクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cからなり、
該容器の壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムdからなり、
該容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられた気体供給装置。
7.下記G~Jの工程を有する、気体供給装置からの気体供給方法。
容器の壁の一部がクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cからなり、
該容器の壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムdからなり、
該容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられた気体供給装置を用いて、
G.該容器の壁の一部に設けたクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cの外面に、水及び/又は有機溶媒を接触させる工程
H.該容器の壁の一部に設けたクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cを介して、該水及び/又は有機溶媒を気体供給装置内に導入する工程
I.該容器の壁の他部に設けたクレーズフィルムdを介して、気体供給装置の外の雰囲気の気体を気体供給装置内に導入する工程
J.気体供給装置内に導入された該気体を、該供給口を通じて容器外に供給する工程
【発明の効果】
【0006】
本願の各発明における容器は、基本的には、容器内部に水及び/又は有機溶媒を封入させるのみ、あるいは、容器外面に、水及び/又は有機溶媒を接触させるものであり、生鮮食料品や、何らかの保存の対象物を封入するものではない。
本発明のA~Cの工程を有する、気体を容器内に導入する方法によれば、容器内部に当初封入した水及び/又は有機溶媒が全て蒸発するまでの間、容器を膨らませておくことができる。そのため、各種のモニュメントや飾り等を、軽量な材料で構成でき、膨らませるために特段のエネルギーを使用する必要がない。また、硬質容器の開口部にクレーズフィルムを張力を伴って張った場合等は、容器が膨らむことはなく、容器内部の圧力が高くなる。
本発明のD~Fの工程を有する、気体を容器内に導入する方法によれば、容器の特定の箇所が水及び/又は有機溶媒に接する限り、容器を膨らんだ状態で維持できる。そのため比較的長期にわたって、モニュメントや飾り等を展示等するときに採用できる。
本発明の気体供給装置及びG~J工程を有する気体供給方法によれば、特段エネルギーを利用することなく、菌やパーティクルを含有しない清浄な気体を容器外へ継続して供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施例6~8及び比較例2~4にて使用した装置を示す図
【
図3】実施例9~12及び比較例5~10にて使用した装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の気体を容器内に導入する方法、気体供給装置及び気体供給装置から気体を供給する方法は、クレーズフィルムを介して気体を透過させて容器内に気体を集めることを基本にする。
さらに、クレーズフィルムに形成された孔は十分に小さいので、容器外にある気体が含んでいた菌や浮遊物等はクレーズの細孔を通過できない。その結果、クレーズフィルムを介して導入された気体は菌や微粒子等を含有しない。
【0009】
(本発明における気体透過度の求め方)
本発明におけるクレーズフィルム及び防水性透湿膜の気体透過度(m3/m2・sec・Pa)の求め方
フィルターホルダーであるADVANTEC社製のKS-47ステンレスラインホルダーに、金属製のメッシュ状円形板(直径47mm)を設置し、その上に直径47mmのクレーズフィルム又はメンブレンフィルターを乗せ、Oリングを介して固定した。クレーズフィルム及びメンブレンフィルターの気体透過部面積はOリングの内径41mmから求めた1320mm2であった。クレーズフィルムの気体透過度を測定するときには、200kPa(ΔP)の圧力で酸素をクレーズフィルムに対して垂直に流した。メンブレンフィルターの気体透過度を測定するときには、20kPa(ΔP)の圧力で酸素をメンブレンフィルターに対して垂直に流した。
それぞれが透過した酸素の流量(気体流量)(m3/sec)を流量計(ジーエルサイエンス株式会社製デジタルフローメーターGLF-1000)で測定して、クレーズフィルム及びメンブレンフィルターの気体透過度(R)を下式から算出した。
R=(F)/(ΔP×A)
R:気体透過度(m3/m2・sec・Pa)
F:気体流量(m3/sec)
ΔP:圧力(Pa)
A:気体透過部面積(m2)
【0010】
(クレーズフィルム)
本発明にて使用されるクレーズフィルムについて以下に示す。
クレーズとは破壊初期に見られるボイドとフィブリルで構成されたスポンジ様の構造であり、樹脂フィルムの表面あるいはその下に周期的に形成され、その表面に対して垂直方向、つまりフィルムの厚さ方向にも形成される。また、ボイド同士が連結することでフィルムの厚さ方向に連続孔が形成されフィルムに通気性が発現する。さらに、そのボイドサイズは数十nm程度と非常に小さいことから微粒子や菌類等のフィルター効果を発揮する。
【0011】
これらの熱可塑性高分子樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、環状オレフィン及びそのコポリマー、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ乳酸が例示でき、熱硬化性高分子樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル・エポキシ樹脂、ポリオール・イソシアネートウレタン系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂が例示できる。これらの樹脂を1種または2種以上を混合して使用することも可能である。
クレーズが形成された樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、特に制限がなく、結晶性あるいは非晶性の熱可塑性高分子樹脂フィルム、熱硬化性高分子樹脂フィルムが使用できる。
そして、液体又は気体としての水や有機溶媒と接触する用途に使用する場合には、これらの水や有機溶媒により溶解等の変質を起こさないことが必要である。
【0012】
前記結晶性熱可塑性高分子樹脂の場合、クレーズ形成の容易さの観点から、ガラス転移温度が-30℃以上、好ましくは-15℃以上の樹脂を使用することが望ましい。また、前記非晶性熱可塑性高分子樹脂の場合には、ガラス転移温度が作業温度以上、好ましくは100℃以上の樹脂を使用することが望ましい。組成物あるいは多層化して使用するときは、主な構成成分である熱可塑性樹脂のガラス転移温度が前記範囲内にあることが好ましい。これより低いガラス転移温度を示す樹脂の場合は、柔軟過ぎるためにクレーズの効率的な形成が難しくなるからである。
【0013】
これらの樹脂フィルムは、溶融Tダイ押出成形法、インフレーション成形法、カレンダー法、溶液流延法等によって製造され、分子配向したものが好ましい。分子配向していないものであっても良いが、配向されていると、配向方向と略平行な方向にクレーズ領域が形成しやすい。配向度は、高分子樹脂フィルムの成形時の、樹脂温度、引き取り速度、冷却速度、樹脂の分子量、特に溶融Tダイ押出成形法ではドロー比を、インフレーション成形法ではブローアップ比等を変えることにより制御することができる。分子配向したフィルムは無延伸であっても良いが、一軸延伸されたものがクレーズ領域形成のためには好ましい。例えば、ポリプロピレン、ポリエステルを延伸する場合の延伸倍率は1~3倍とすることが望ましい。延伸倍率が大きくなりすぎると配向方向に裂け易くなり、小さすぎると配向させた効果が得られにくくなるからである。また、二軸延伸であっても良いが、その場合には、一方向の配向をより大きくしたものとすることが望ましい。
【0014】
クレーズが形成された樹脂フィルムの厚さは特に制限されず、5~1000μm、好ましくは10~300μm、さらに好ましくは20~100μmである。
また形成されたクレーズは、その幅が0.02μm~30μm、好ましくは0.05~20μm、さらに好ましくは0.1~10μmである。これらの値はクレーズ形成後の樹脂フィルムに求める気体透過性や透湿性等の特性の程度によって任意に決定できる。また厚さ方向に貫通するクレーズを設けてもよい。
【0015】
気体透過度(m3/m2・sec・Pa)は、1×10―10以上が好ましく、1×10―9以上がより好ましく、1×10―8以上がさらに好ましい。また1×10―5以下が好ましく、1×10―6以下がより好ましく、1×10―7以下がさらに好ましい。
【0016】
クレーズフィルムには、本発明による効果を毀損しない範囲において、適宜充填剤等を含有させてもよい。充填剤としては、例えば、ポリメチルメタクリレート粒子やポリスチレン粒子等の高分子粒子の他、酸化チタン、炭酸カルシウムを挙げることができる。特に本発明では、ナノオーダーのフィブリルとボイドからなるクレーズを効率よく形成させるために、高分子樹脂に、これら添加剤を加えることが好ましい。添加剤は、含有する樹脂との相溶性、成形条件などによって異なるが、例えば樹脂がポリプロピレンであればポリメチルメタクリレート粒子が好ましく添加される。
【0017】
また、該充填剤の含有量としては、0.1~20wt%、好ましくは1~5wt%である。前記範囲未満であると、目的とするクレーズの形成に積極的に寄与しなくなり充填剤を使用した意味がなくなることとなり、前記範囲を超えて添加すれば、樹脂フィルムの強度が低下するおそれがあるからである。
【0018】
このような充填剤以外に添加可能な添加剤としては、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、安定剤、結晶核剤、難燃剤、可塑剤、密着防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などをそれぞれの目的に応じて添加することもできる。上記添加剤は樹脂フィルムにコーティングしても良い。
【0019】
樹脂フィルムへのクレーズの形成方法は、従来から知られている方法及び装置を採用することができる。クレーズ領域の幅、クレーズ領域の間隔等を容易に調節することができる方法および装置を採用することが好ましい。先端部が鋭角なエッジとなった支持体を有するクレージング処理部に、張力付与して緊張状態に保持された樹脂フィルムを、その分子配向方向とほぼ平行方向に該エッジに当接させ、該樹脂フィルムを局部的に折り曲げるようにして変形域を形成し、その折り曲げ変形域を、該樹脂フィルムに対して相対的に徐々に移動させることで、移動方向とほぼ直角の方向に連続的にクレーズ領域を縞状に形成することができる。
【0020】
つまり、高分子樹脂フィルムが折り曲げられることによりフィルムの折り曲げ部の背部側表面に折り曲げ方向に対して垂直な方向に引っ張る応力がかかり、それによりその表面に折り曲げ方向にほぼ平行なひび状にクレーズが形成される。
【0021】
高分子樹脂フィルムに対し折り曲げ変形域を相対的に移動させるには、(a)樹脂フィルムの変形の屈曲角度を維持しつつ支持体に対して樹脂フィルムを移動させるか、(b)樹脂フィルムの変形の屈曲角度を維持して支持体を樹脂フィルムに対して移動させることにより可能である。(a)によれば、樹脂フィルムの長さ方向にわたり必要とする任意の距離だけクレージング処理を行うことが可能であり、容易に規則的かつ連続的なクレーズ領域を形成することができる。また、規則的なクレーズ領域形成には、比較的低い張力で複数回繰り返して処理することも有効である。なお、樹脂フィルムを引き伸ばすようにしてクレーズ領域を縞状に形成するようにしても良い。
【0022】
クレーズ領域形成のための処理条件としては、用いる樹脂フィルムの材料等により異なるが、一般的には、破断応力の70~100%、好ましくは90~100%の張力をかける。張力が大きすぎると樹脂フィルムに亀裂が入り、少なすぎるとクレーズ領域が形成し難くなる。
【0023】
支持体のエッジ角度は、90度以下が好ましく、50度以下がより好ましい。また、樹脂フィルムの折り曲げ角度は、140度以下が好ましく、120度以下がより好ましい。これらの諸条件は、所望のクレーズ領域の形成、樹脂フィルム材料等により適宜決定される。
【0024】
(防水性透湿膜)
本発明にて使用される防水性透湿膜としては、無孔質でもよく、水などの液体は透過しないが、水蒸気等の気体を透過する性質を有する膜であればよく、メンブレンフィルター等を使用できる。例えば、MF-ミリポアメンブレンフィルター(メルク株式会社)、BREEZE TEX Type CS-20-5-9(オージーフィルム株式会社)、マイクロポーラスフィルム(スリーエムジャパン株式会社)、ブレスロンBRN-1860(日東電工株式会社)、ルストレFGX 2L(テックワン株式会社)、コージンTSF―EDFH(興人フィルム&ケミカルズ株式会社)等がある。これらの防水性透湿膜の製造方法や材料は限定されない。また、本発明において、菌やパーティクルを含有しない清浄な気体を収集するためには、一定のサイズ以上の粒子を通さないメンブレンフィルター等の微多孔質膜や無孔質の防水性透湿膜が好ましいが、これに限定されない。微多孔質膜の細孔径は、目的や用途によって選択することができる。
そして、液体又は気体としての水や有機溶媒と接触する用途に使用する場合には、これらの水や有機溶媒により溶解等の変質を起こさないことが必要である。
【0025】
防水性透湿膜の厚さは特に制限がなく、5~1000μm、好ましくは10~300μm、さらに好ましくは20~100μmである。
厚さは防水性透湿膜に求める気体透過性や透湿性等の特性の程度によって任意に決定できる。
防水性透湿膜の気体透過度(m3/m2・sec・Pa)は組み合わせるクレーズフィルムよりも高い方が好ましい。
【0026】
(水及び/又は有機溶媒)
本発明にて使用される水及び/又は有機溶媒は特に限定されない。
水のみを使用しても良く、1種以上の有機溶媒のみを使用しても良い。
また水及び有機溶媒を使用する場合には、それぞれの含有比率を任意に設定でき、有機溶媒としては、親水性有機溶媒や疎水性有機溶媒を含む1種以上を採用できる。
水と親水性有機溶媒を相溶させて使用でき、水と疎水性有機溶媒を相溶せずに分離層を形成した状態でも使用できる。
本発明において、容器内に封入する水及び/又は有機溶媒、容器のクレーズフィルム及び/又は防水性透湿膜の外面に接触させる水及び/又は有機溶媒は、それぞれ、蒸発や浸透・侵入させる速度を考慮して、その成分や組成を調整できる。速やかに蒸発させるときには沸点がより低いものを採用でき、高い発生圧力を得るためには蒸気圧の高いものを採用できる。
蒸気圧が異なる2種類以上の溶媒を用いる場合には、溶媒間の蒸発速度が異なることにより、容器をより速く、かつ長時間膨らませることができる。又は容器内部の圧力を速く上昇させることができ、かつその上昇した状態を長時間継続できる。
速やかに浸透・侵入させる場合には、クレーズフィルム及び/又は防水性透湿膜との関係で適切な成分を採用できる。
【0027】
使用しても良い有機溶媒は特に限定されないが、容器を使用する温度において液体であること、及び容器を構成する材料を溶解等しないことが必要である。
そのような有機溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、P-キシレン等の脂肪族炭化水素化合物や芳香族炭化水素化合物、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、i-ペンタノール、フェノール、ベンジルアルコール、m-クレゾール、グリセリン等のアルコール化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン等のエーテル化合物、アセトン等のケトン化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物、ギ酸、酢酸等のカルボン酸化合物、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、アニリン、ピリジン等のアミン化合物、さらに、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等を使用できる。
【0028】
(容器)
本発明において使用される容器の一つ目の態様は、その容器の壁の少なくとも一部を1種以上のクレーズフィルムからなることができる。この場合、容器の壁の全部をクレーズフィルムから形成でき、又は容器の壁のうち、一部の部分をクレーズフィルムから形成し、その他の部分をその他の材料から形成できる。さらに一部の部分を複数設けても良い。
その他の材料としては、容器の材料として公知のものであり、使用時に上記の溶媒により溶解等をせず、かつ、通気性や透湿性を有しない材料である。使用時において、クレーズフィルムのみを介して、容器が、外部との間で通気性や透湿性、気体の溶媒の透過性を発揮できればよい。
そのような材料としては、鉄やアルミニウム等の金属板や箔、ポリオレフィンやポリエステル等の樹脂板やフィルム、不通気性、防水性や不透湿性等の性質を有する紙等の材料が挙げられる。
本発明における容器の形状は特に限定されない。全体として柔軟な形状や剛直な形状でもよく、袋状、筒状、球状、直方体、立方体、不定形状でも良く、動植物、人間、土木建築物、車両、自然、アニメ等のキャラクター等を模した形状でも良い。
容器の大きさも特に限定されない。但し、内部に水及び/又は有機溶媒を封入できるように、開閉機構や、水及び/又は有機溶媒を収納した後に封入できる機構や性質を有することが必要である。
【0029】
本発明の方法にて使用される容器は、その容器の壁の少なくとも一部がクレーズフィルム及び/又は防水性透湿膜から形成してなり、かつ、その容器の壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムから形成してなる。このとき、それぞれ独立して、一部の部分を複数設けても良く、他部の部分を複数設けても良い。
この態様でも、使用できるその他の材料や形状は上記の容器で使用できるその他の材料の選択肢から選択できる。
この場合、実質的に容器の壁の全てを、1種以上のクレーズフィルムから形成してもよい。又は、容器の壁の一部を1種以上のクレーズフィルムから形成し、容器の壁の残りの部分の全てを1種以上の防水性透湿膜から形成できる。
さらに、容器の壁の一部を1種以上のクレーズフィルムから形成し、容器の壁の残りの部分の更に一部を1種以上の防水性透湿膜から形成でき、残りの壁を上記のその他の材料で形成してもよい。
【0030】
[下記A~Cの工程を有する、気体を容器内に導入する方法]
(壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなる容器)
A~C工程にて使用する、本発明中の壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなる容器としては、容器がクレーズフィルムのみから形成されていても良く、クレーズフィルムとクレーズを有しない樹脂や金属等のフィルムを含んで形成されていても良く、樹脂、金属、セラミック、防水性を有する紙、木材等から選ばれた1種以上の材料と、クレーズフィルムとからなる容器でも良い。そして、予め封入させる水及び/又は有機溶媒が直接的に容器外に漏出しない構造であることが必要である。
また容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口を設けたとき、容器内から容器外に向けて、クレーズフィルムを透過して容器内に導入された容器外の雰囲気の気体と、気体状の水及び/又は有機溶媒の混合物が放出される。
【0031】
(A工程)
本発明におけるA工程は、予め用意した上記の容器の開口部から水及び/又は有機溶媒を入れ、該開口部を気密になるように閉じて、任意の量の該水及び/又は有機溶媒を封入する工程である。又は、容器内に水及び/又は有機溶媒を気密に封入する段階と、容器を形成する段階を同時に行っても良い。例えば、樹脂フィルム等をヒートシールする段階で、その内部に該水及び/又は有機溶媒を封入させるようにしても良い。
【0032】
(B工程)
A工程により得た水及び/又は有機溶媒を封入した容器を、内部の水及び/又は有機溶媒が蒸発する温度等の環境下に置く。それにより該水及び/又は有機溶媒を蒸発させて、容器内部の気体の水及び/又は有機溶媒の量が増加する。
【0033】
(C工程)
上記B工程により、容器に封入された水及び/又は有機溶媒が蒸発して、容器中の空間内にこの蒸気が充満するにつれて、容器外の雰囲気と容器内の雰囲気が平衡化するように挙動する。
つまり、容器内の雰囲気中の、気体となった水及び/又は有機溶媒の分圧が高くなるので、これを低下させようとして、容器外から空気等の雰囲気の気体がクレーズフィルムを透過して容器内に導入される。その結果として、容器内の気相の体積が増加して、容器全体が膨張するように変化する。
そのため、容器内部にて水及び/又は有機溶媒が蒸発を続ける限り、つまり、容器内に液体の水及び/又は有機溶媒が存在する限り、容器外の雰囲気の気体が導入され続けることになる。
また容器の壁面に、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口を設けると、容器内から容器外に向けて、クレーズフィルムを透過して容器内に導入された容器外の雰囲気の気体と、気体状の水及び/又は有機溶媒の混合物が放出できる。供給口を設けない場合には、供給口を介して該容器の内部から外部に向けて気体は供給されない。そして、このような気体の挙動がバランスするように容器が膨張する。
また容器の構造や材料等により、容器の膨張には限度がある。
【0034】
[下記D~Fの工程を有する、気体を容器内に導入する方法]
(壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなる容器)
D~F工程にて使用する、本発明中の壁の少なくとも一部がクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aからなり、壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムbからなる容器としては、容器がクレーズフィルムa及びクレーズフィルムbのみから形成されていても良く、防水性透湿膜aとクレーズフィルムbのみから形成されていても良く、クレーズフィルムaと防水性透湿膜aとクレーズフィルムbのみから形成されていても良い。
また、これらの材料のみからではなく、容器の一部の壁を、クレーズを有しない樹脂や金属等のフィルムを含んで形成されていても良く、中でも、樹脂、金属、セラミック、防水性を有する紙、木材等から選ばれた1種以上の材料を併用しても良い。
また容器の壁面には、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口を設けると、容器内から容器外に向けて、クレーズフィルムを透過して容器内に導入された容器外の雰囲気の気体と、気体状の水及び/又は有機溶媒の混合物が放出される。供給口を設けない場合には、供給口を介して該容器の内部から外部に向けて気体は供給されない。そして、このような気体の挙動がバランスするように容器が膨張する。
また容器の構造や材料等により、容器の膨張には限度がある。
【0035】
(D工程)
壁の一部がクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aからなり、壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムbからなる容器の、該壁の一部のクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aの外面に、水及び/又は有機溶媒を接触させる。
この水及び/又は有機溶媒を接触させるときには、クレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aの外面に液体としての水及び/又は有機溶媒を直接接触させても良い(該外面の上面又は下面のいずれかに水及び/又は有機溶媒を直接接触させても良い)。又は、クレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aの外面に気体又は蒸気としての水及び/又は有機溶媒を直接接触させても良い。
例えば、上面が開放された容器内に水及び/又は有機溶媒を入れ、この水及び/又は有機溶媒の液面上にクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aを接触させる形で該容器を浮かべることによりこのD工程を行うことができる。また、容器が液面に浮かばないときには、任意の固定手段により、あたかも浮かんだように容器を設置してもよい。
このとき、容器の外面で水及び/又は有機溶媒に接する面は、クレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aから構成されていることが必要である。なお、このとき、水及び/又は有機溶媒に接していない容器の外面の少なくとも一部(大気側の面)は、クレーズフィルムbから構成されている。これらの場合には、容器内部にて発生した圧力が高くなる。大気側の面を防水性透湿膜aから構成した場合には、容器内部にて発生した圧力は高くない。そして、容器のその他の外面は、気体不透過性の樹脂フィルムや他の材料からなってもよい。容器内部にて発生した圧力とは、試験前の容器内部の圧力に対する増加分の圧力である。
なお、クレーズフィルムbの気体透過度に対する、クレーズフィルムa及び防水性透湿膜aの気体透過度の比(クレーズフィルムaと防水性透湿膜aの気体透過度/クレーズフィルムbの気体透過度)が3.0以上であることが、より速く、短時間で安定して容器を膨張又は容器内部の圧力を高くさせるために好ましい。
【0036】
(E工程)
水及び/又は有機溶媒に接触しているクレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aを介して、水及び/又は有機溶媒の気体が容器内に導入される。クレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aが水及び/又は有機溶媒に接触している限り、このような導入が進展する。
【0037】
(F工程)
上記E工程により容器内における水及び/又は有機溶媒の気体の分圧が上昇するにつれて、容器外の雰囲気と平衡化させるために、クレーズフィルムbを介して容器外の雰囲気の気体が容器内に導入される。
そして、クレーズフィルムa及び/又は防水性透湿膜aが水及び/又は有機溶媒に接触している限り、容器内に水及び/又は有機溶媒の気体が容器内に導入されることになる。その結果として、クレーズフィルムbを介して容器外の雰囲気の気体が容器内に導入され続けることになる。
【0038】
[下記G~Jの工程を有する、気体供給装置からの気体供給方法]
本発明の気体供給装置からの気体供給方法は、下記気体供給装置を使用して、上記D~F工程と同様の工程をG~I工程として採用することを基本として行うことができる。
本発明の気体供給方法は、このG~I工程に、さらにJ工程として、気体供給装置の容器内に外部の雰囲気から導入した気体を、気体供給装置の供給口又は供給口に気密に接続した管体から、外部に供給する方法である。
ここで、容器内部の気体を外部に供給するための力は、気体供給装置の容器の壁の一部に設けたクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cの外面に、水及び/又は有機溶媒を接触させる工程により生まれる。つまり、容器内に導入された水及び/又は有機溶媒の気体に対して、その気体の水及び/又は有機溶媒の分圧を低下させて、容器外部の雰囲気と平衡化させるために、容器外部の雰囲気の気体が容器内部に導入される流れに基づくものである。
容器内部の気体の水及び/又は有機溶媒の分圧が上がると、これを下げるように、容器外部の雰囲気の気体がクレーズフィルムdを介して容器内部に導入される。その結果、容器内部の気体の水及び/又は有機溶媒の分圧が下がると、クレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cを介して、水及び/又は有機溶媒が導入されて、再び容器内部の気体の水及び/又は有機溶媒の分圧が上がる。このような現象を繰り返して、容器内部の気体の水及び/又は有機溶媒の分圧が一定になるように、気体供給装置の供給口又は供給口に気密に接続した管体から、気体が外部に供給される。
上記の、この水及び/又は有機溶媒を接触させるときには、クレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cの外面に液体としての水及び/又は有機溶媒を直接接触させても良い。又は、クレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cの外面に気体又は蒸気としての水及び/又は有機溶媒を直接接触させても良い。
仮に容器内部の気圧が容器外部の気圧よりも高過ぎる場合には、クレーズフィルムdを介して容器外部の雰囲気の気体の導入と容器内部から容器外部への気体の流出は平衡状態であるものの、容器内部の気圧がそれほど高くない場合には、継続して容器外部の雰囲気の気体が導入され、気体供給装置から清浄な気体を供給できる。そして、容器内部の気圧が容器外部の気圧よりも高すぎるレベルにまで上がった場合には、それ以上に高くなることはない。
特に、本発明の方法によれば、特段の継続したエネルギーを投入しなくても、清浄な気体を供給できる効果を発揮できる。
そして、本発明の気体供給装置及び気体供給方法によれば、清浄な気体をより低いエネルギーを使用して供給できる。そのような清浄な気体を必要とする実験装置、半導体関連事業や生物関連事業等、清浄な雰囲気で運転を必要とされる事業所や実験施設にて使用され得る。
【0039】
(A~C工程にて使用する容器)
本発明における、上記A~C工程にて使用する容器について。
この気体供給装置は、装置外部の雰囲気を導入する容器を主な構成とし、容器の壁の少なくとも一部がクレーズフィルムからなり、
かつ、容器内に予め水及び/又は有機溶媒を貯めておく構造を有する容器である。
【0040】
(A~C工程にて使用する容器を応用した気体供給装置)
上記A~C工程にて使用する容器の壁面に、該容器の内部から外部に向けて気体を供給するための供給口を設けることにより、容器外部に気体を供給する気体供給装置にすることができる。
また、これらの材料のみからではなく、容器の一部の壁を、クレーズを有しない樹脂や金属等のフィルムを含んで形成されていても良く、中でも、樹脂、金属、セラミック、防水性を有する紙、木材等から選ばれた1種以上の材料を併用しても良い。
さらに気体供給装置は、容器内部に導入された気体を外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられている。ここで、外部に向けて供給される気体は、上記A~C工程と同じ工程によりクレーズフィルムを透過して容器内に導入された、容器外の雰囲気の気体と、気体状の水及び/又は有機溶媒の混合物である。
【0041】
(D~F工程にて使用する容器)
この気体供給装置は、装置外部の雰囲気を導入する容器を主な構成とする。その装置を構成する容器の壁の少なくとも一部がクレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cからなり、壁の他部の少なくとも一部がクレーズフィルムdからなる。容器がクレーズフィルムc及びクレーズフィルムdのみから形成されていても良く、防水性透湿膜cとクレーズフィルムdのみから形成されていても良い。また、クレーズフィルムcと防水性透湿膜cとクレーズフィルムdのみから形成されていても良い。クレーズフィルムc及び/又は防水性透湿膜cは、容器内に導入される水及び/又は有機溶媒の液体又は蒸気と接するものである。
また、これらの材料のみからではなく、容器の一部の壁を、クレーズを有しない樹脂や金属等のフィルムを含んで形成されていても良く、中でも、樹脂、金属、セラミック、防水性を有する紙、木材等から選ばれた1種以上の材料を併用しても良い。
【0042】
(G~J工程にて使用する気体供給装置)
上記D~F工程にて使用する容器に加えて、この気体供給装置は、容器内部に導入された気体を外部に向けて気体を供給するための供給口が設けられている。ここで、外部に向けて供給される気体は、上記D~F工程と同じ工程によりクレーズフィルムdを透過して容器内に導入された、容器外の雰囲気の気体と、気体状の水及び/又は有機溶媒の混合物である。
【0043】
上記の各気体供給装置において、供給口を設ける箇所は、上記クレーズフィルムから形成された壁、場合により上記防水性透湿膜から形成された壁、上記その他の材料から形成された壁のいずれでも良い。また供給口は1つでも良く、2つ以上でも良い。
この供給口は容器の少なくとも一部に設けられた孔であり、気体を供給する先に向けて容器に設置した管体を含んでも良い。さらに該管体に弁を設けて、適切な供給量になるように調整することができる。
本発明における各気体供給装置において、容器の外部の雰囲気から各クレーズフィルム、を介して容器内部に導入された雰囲気の気体は、結果的に各クレーズフィルムによりろ過された気体となる。そのため、清浄な気体として得ることができる。
供給口を接続させる先の装置としては、ある程度の気体を受け入れて、何らかの処理や操作を行う装置が挙げられる。特段の動力を使用せずに、本発明により供給する気体は、使用した雰囲気の気体に由来する分子と、使用した液体に由来する分子を含むが、微粒子や菌等を含有せず、上記のとおり清浄な気体である。そのため、そのような清浄の気体を使用する化学的処理や、生物学的処理、物理学的処理等を行う装置によって使用されることが好ましい。
それに加えて、本発明により供給する清浄な気体を乾燥する等を行うことによって、上記の液体に由来する分子含有量を削減した気体を供給できる。
【実施例0044】
まず、以下の実験は全て25℃で行った。
プロピレンホモポリマー(MFR14.0g/10分)100重量部にβ晶核剤として、N,N’-ジシクロヘキシルテレフタルアミドの針状結晶を0.2重量部添加し、二軸押出機を用いて混練してペレットを調整し、Tダイ成形機を用いて厚さ60μm、100μm、150μmのフィルムを作製した(以下PPフィルム)。そのPPフィルムに局所的な90°の曲げを加えながらフィルムに20MPaの荷重を加え、クレーズを発生させたものをクレーズフィルムとした。クレーズの発生は光学顕微鏡写真により確認した。また、防水性透湿膜であるメンブレンフィルターとして、メルク株式会社製MF-ミリポアメンブレンフィルター(材質:セルロースアセテートとニトロセルロースからなるセルロース混合エステル)を用いた。
フィルターホルダーであるADVANTEC社製のKS-47ステンレスラインホルダーに、金属製のメッシュ状円形板(直径47mm)を設置し、その上に直径47mmの厚みの異なるクレーズフィルム3種又はメンブレンフィルター3種を1枚ずつ乗せ、Oリングを介して固定した。クレーズフィルム及びメンブレンフィルターの気体透過部面積はOリングの内径41mmから求めた1320mm2であった。クレーズフィルムの気体透過度を測定するときには、200kPa(ΔP)の圧力で酸素をクレーズフィルムに対して垂直に流した。メンブレンフィルターの気体透過度を測定するときには、20kPa(ΔP)の圧力で酸素をメンブレンフィルターに対して垂直に流した。
それぞれが透過した酸素の流量(気体流量)を(m3/sec)流量計(ジーエルサイエンス株式会社製デジタルフローメーターGLF-1000)で測定して、クレーズフィルム及びメンブレンフィルターの気体透過度(R)を下式から算出した。この結果を表1に示す。
R=(F)/(ΔP×A)
R:気体透過度(m3/m2・sec・Pa)
F:気体流量(m3/sec)
ΔP:圧力(Pa)
A:気体透過部面積(m2)
【0045】
【0046】
厚さ60μmのPPフィルム、表1のクレーズフィルム1及びメンブレンフィルター1を用いて、面1を構成するフィルム及び面2を構成するフィルムを得た。複合フィルムは、これらのフィルムをヒートシール又は接着剤を用いてつなぎ合わせたフィルムである。この面1を構成するフィルムと面2を構成するフィルムのそれぞれの周縁をヒートシールして袋を得た。これらの袋の構成を下記表2に示す。
そして、面1、面2からなり、袋内に水を5mL封入してなる内寸180mm×180mmの袋を作製して、これを放置した。
また、面1、面2からなり、袋内には水を封入しない内寸180mm×180mmの袋を作製して、面2側を水に接するように水面上に静置した。
これらの袋の変化を計測し、その結果を
図1に示す。
【0047】
【0048】
実施例1~5及び比較例1を23℃-50%RH環境下にて静置した。袋が外部の気体を収集し、膨らむ経過について袋の高さの推移をハイトゲージ(株式会社ミツトヨ製)にて測定した結果を
図1に示す。
図1の結果によれば、クレーズフィルムの面積が大きいほど、袋内に外部の気体を収集するのが速く、短時間で袋高さが最大値に達した。実施例1に示すように、袋内の水が揮散して無くなると袋は萎んでいき、袋高さは小さくなった。実施例2~5によると、クレーズフィルムの面積が小さくなるほど、到達する袋高さが高かった。すなわち内圧が高くなったと推測される。
実施例2と実施例3に示すように、クレーズフィルム1よりも気体透過度の大きいメンブレンフィルター1を面2に用いることで、袋内に外部の気体を収集するのがより速く、短時間で袋高さが最大値に達した。
比較例1に示すように、クレーズフィルムを使用しない場合には袋は膨らまなかった。
【0049】
図2に示す装置を作製し、その容器底部に液体3mlを入れ、その液体の蒸気が存在する空間を介して、クレーズフィルムやメンブレンフィルターをOリングにより気密に固定した。クレーズフィルムやメンブレンフィルターの一方の面は上記の液体の蒸気が存在する空間に面し、他方の面は装置が置かれる雰囲気に面するようにした。この面の蒸気及び雰囲気に接する面積は1075mm
2であった。
装置全体を25℃の雰囲気下に置いた。
そして、クレーズフィルムやメンブレンフィルターを通じて装置に導入された気体の量と圧力を測定した。装置内の液体には、3種の液体(水、エタノール、ヘキサン)を使用した。結果を表3に示す。
容器に設けた供給口に流量計F(ジーエルサイエンス株式会社製デジタルフローメーターGLF-1000)及び図示はしないが圧力計(ホダカ株式会社製マイクロマノメータHT-1500NL)を設置し、これらの測定値が十分に安定した10分後の測定値を発生流量または発生圧力とした。
実施例6~8と比較例2~4において流量(発生流量)及び圧力(発生圧力)が検出され、クレーズフィルムやメンブレンフィルターを介して、装置の外部雰囲気から気体が導入されたことを確認した。各実施例の発生流量は各比較例と比べて同等以上であるが、発生圧力は実施例の方が桁違いに大きな値となった。
【0050】
【0051】
図3に断面図として示す内径37mmの円筒体の一端(下端)を、雰囲気(大気側)に向けたクレーズフィルム又はメンブレンフィルターで封止した。他端(上端)を液体と接する側としてクレーズフィルム又はメンブレンフィルターで封止した。その他端のクレーズフィルム又はメンブレンフィルターの全面(円筒体の端部の内側に設置し、該端部内面を壁面とし、該全面を底部とする凹部が形成される)を、水、エタノール、ヘキサンの液体と接触させた。円筒体の壁の1箇所に設けた開口部から流出する気体の圧力と流量を、流量計F及び図示はしないが圧力計により測定し、数値が安定した時点で測定値とした。そして気体透過度を求めた。結果を表4に示す。なお、表4中の「≦0.2」は、検出限界以下を示し、「3.0≦」は検出限界以上を示す。
【0052】
【0053】
実施例9~12と比較例5~10の結果から、外部から継続してエネルギーを与えなくても、いずれにおいても流量(発生流量)及び圧力(発生圧力)が検出され、クレーズフィルムやメンブレンフィルターを介して、雰囲気から気体が透過したことを確認した。中でも、大気側にクレーズフィルムを設けた場合にはより高い発生圧力を示した。
また、実施例9に対して、実施例10~12については、クレーズフィルムdの気体透過度に対する、防水性透湿膜cの気体透過度の比が、3.0以上であるため、発生流量及び発生圧力が短時間で安定した。
【0054】
実施例13として、
図3の装置を用いた実施例9のフィルム構成の装置を用いて、装置外から接する液体を、水、エタノール、アルカン(炭素数が5~10)とし、圧力(発生圧力)を測定した。結果を示した
図4からみて、蒸気圧が大きなものほど検出圧力が高く、かつ、これらの間には相関関係があった。