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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082913
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】船舶推進機および船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 5/15 20060101AFI20240613BHJP
   B63H 1/12 20060101ALI20240613BHJP
   B63H 21/17 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B63H5/15 Z
B63H1/12 Z
B63H21/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197116
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】神 善隆
(57)【要約】
【課題】リムを回転させるための電力消費量が増加するのを抑制するとともにモータの最大出力が低下するのを抑制しながら、かつ、比較的複雑な構造を有する侵入抑制部材を設けることなく、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への異物の侵入を抑制することが可能な船舶推進機を提供する。
【解決手段】この船舶推進機100は、R方向(ロータ54の径方向)において、ダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間に周状に設けられ、R方向におけるダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間の隙間Gへの砂利を含む異物の侵入を抑制する、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材60を備える。そして、R方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材60の厚みtは、隙間Gの最小幅W1よりも大きく、かつ、隙間Gの最大幅W2よりも小さい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータを含むダクトと、
前記ステータと対向するように前記ステータの径方向内側に配置されたロータを有するリム、および、前記リムの径方向内側に形成された羽根を含むプロペラと、
前記ロータの径方向において、前記ダクトの内周面と前記リムの外周面との間に周状に設けられ、前記径方向における前記ダクトの前記内周面と前記リムの前記外周面との間の隙間への砂利を含む異物の侵入を抑制する、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材と、を備え、
前記径方向において、伸縮可能な材料から構成された前記侵入抑制部材の厚みは、前記隙間の最小幅よりも大きく、かつ、前記隙間の最大幅よりも小さい、船舶推進機。
【請求項2】
前記径方向において、伸縮可能な材料から構成された前記侵入抑制部材の厚みと前記隙間の前記最大幅との差は、前記隙間の前記最小幅よりも小さい、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項3】
前記ロータおよび前記ステータの各々は、樹脂により覆われており、
前記侵入抑制部材は、前記径方向において、前記ロータを覆う樹脂により構成された前記リムの前記外周面と、前記ステータを覆う樹脂により構成された前記ダクトの前記内周面との間に設けられている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項4】
前記ロータの周方向において、前記ロータを覆う樹脂により構成された前記リムの前記外周面と前記ステータを覆う樹脂により構成された前記ダクトの前記内周面との間の前記径方向における幅は不均一である、請求項3に記載の船舶推進機。
【請求項5】
前記侵入抑制部材は、伸縮可能な発泡ゴムから構成されている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項6】
前記発泡ゴムから構成された前記侵入抑制部材は、前記隙間において、前記ダクトの前記内周面および前記リムの前記外周面のいずれか一方に取り付けられており、
前記隙間において、前記発泡ゴムから構成された前記侵入抑制部材と対向する前記ダクトの前記内周面および前記リムの前記外周面のいずれか他方には、前記発泡ゴムに付着した前記異物による摩耗を抑制する摩耗抑制層が形成されている、請求項5に記載の船舶推進機。
【請求項7】
前記侵入抑制部材は、前記隙間において、前記リムの前記外周面に取り付けられている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項8】
前記侵入抑制部材は、非磁性材料から構成されている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項9】
前記侵入抑制部材は、前記隙間において、前記ダクトの前記内周面および前記リムの前記外周面のいずれか一方に取り付けられている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項10】
前記侵入抑制部材の前記ロータの軸方向における長さが、前記侵入抑制部材の前記径方向における厚みよりも大きい、請求項9に記載の船舶推進機。
【請求項11】
前記隙間は、前記ロータの軸方向に延びるように形成されており、
前記侵入抑制部材は、前記軸方向に延びるように形成された前記隙間における、前記軸方向の一方端および他方端に各々別個に設けられている、請求項1に記載の船舶推進機。
【請求項12】
前記ロータの前記軸方向の一方端と前記ステータの前記軸方向の一方端とが、前記軸方向にずれて配置されており、
前記隙間において前記軸方向の一方端に設けられた前記侵入抑制部材は、前記軸方向において、前記ロータの前記軸方向の一方端に対応するとともに、前記ステータの前記軸方向の一方端に対応しない位置に設けられている、請求項11に記載の船舶推進機。
【請求項13】
船体と、
前記船体に取り付けられる船舶推進機と、を備え、
前記船舶推進機は、
ステータを含むダクトと、
前記ステータと対向するように前記ステータの径方向内側に配置されたロータを有するリム、および、前記リムの径方向内側に形成された羽根を含むプロペラと、
前記ロータの径方向において、前記ダクトの内周面と前記リムの外周面との間に周状に設けられ、前記径方向における前記ダクトの前記内周面と前記リムの前記外周面との間の隙間への砂利を含む異物の侵入を抑制する、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材と、を備え、
前記径方向において、伸縮可能な材料から構成された前記侵入抑制部材の厚みは、前記隙間の最小幅よりも大きく、かつ、前記隙間の最大幅よりも小さい、船舶。
【請求項14】
前記径方向において、伸縮可能な材料から構成された前記侵入抑制部材の厚みと前記隙間の前記最大幅との差は、前記隙間の前記最小幅よりも小さい、請求項13に記載の船舶。
【請求項15】
前記ロータおよび前記ステータの各々は、樹脂により覆われており、
前記侵入抑制部材は、前記径方向において、前記ロータを覆う樹脂により構成された前記リムの前記外周面と、前記ステータを覆う樹脂により構成された前記ダクトの前記内周面との間に設けられている、請求項13に記載の船舶。
【請求項16】
前記ロータの周方向において、前記ロータを覆う樹脂により構成された前記リムの前記外周面と前記ステータを覆う樹脂により構成された前記ダクトの前記内周面との間の前記径方向における幅は不均一である、請求項15に記載の船舶。
【請求項17】
前記侵入抑制部材は、伸縮可能な発泡ゴムから構成されている、請求項13に記載の船舶。
【請求項18】
前記発泡ゴムから構成された前記侵入抑制部材は、前記隙間において、前記ダクトの前記内周面および前記リムの前記外周面のいずれか一方に取り付けられており、
前記隙間において、前記発泡ゴムから構成された前記侵入抑制部材と対向する前記ダクトの前記内周面および前記リムの前記外周面のいずれか他方には、前記発泡ゴムに付着した前記異物による摩耗を抑制する摩耗抑制層が形成されている、請求項17に記載の船舶。
【請求項19】
前記侵入抑制部材は、前記隙間において、前記リムの前記外周面に取り付けられている、請求項13に記載の船舶。
【請求項20】
前記侵入抑制部材は、非磁性材料から構成されている、請求項13に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船舶推進機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への異物の侵入を抑制する侵入抑制部材を備える船舶推進機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ステータを含むダクトと、ステータと対向するようにステータの径方向内側に配置されたロータを有するリム、および、リムの径方向内側に形成された羽根を含むプロペラと、を備える船舶推進装置(船舶推進機)が記載されている。リムおよび羽根を含むプロペラは、ダクトに対して回転する。上記特許文献1には、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への異物の侵入を抑制するシール(侵入抑制部材)または防塵リング(侵入抑制部材)をさらに備える船舶推進装置が記載されている。
【0004】
上記特許文献1に記載のシールを備える船舶推進装置では、環状のシール、および、シールをリムおよびダクトに対して固定するための環状の固定リングが、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間の近傍に配置されている。シールおよび固定リングは、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間を密閉するように配置されている。シールは、全周に亘ってリムに接するように配置されている。
【0005】
上記特許文献1に記載の防塵リングを備える船舶推進装置では、環状の防塵リングが、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間の近傍に配置されている。防塵リングは、全周に亘ってリムと接しないように配置されている。防塵リングには、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間に、隙間よりも大きな異物が侵入しないように、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間よりも小さい幅を有するスリットが形成されている。スリットは、防塵リングの全周に亘って形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-100014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているシール(侵入抑制部材)を備える船舶推進装置(船舶推進機)では、シールが全周に亘ってリムに接しているので、リムが回転する際にシールとリムとの間で生じる摩擦力が比較的大きくなる。その場合、摩擦力が大きくなった分だけ、リムを回転させるための電力消費量が増加するとともにステータとロータとにより構成されるモータの最大出力が低下する。一方、上記特許文献1に記載されている防塵リング(侵入抑制部材)を備える船舶推進装置(船舶推進機)では、防塵リングが全周に亘ってリムと接しないように配置されているので、リムが回転する際にシールとリムとの間で摩擦力が生じない。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている防塵リングを備える船舶推進装置では、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間よりも小さい幅を有するスリットが全周に亘って形成されている防塵リングを設ける必要がある。すなわち、比較的複雑な構造を有する防塵リングを船舶推進装置に設ける必要がある。このため、リムを回転させるための電力消費量が増加するのを抑制するとともにモータの最大出力が低下するのを抑制しながら、かつ、比較的複雑な構造を有する侵入抑制部材を設けることなく、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への異物の侵入を抑制ことが可能な船舶推進機が望まれている。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、リムを回転させるための電力消費量が増加するのを抑制するとともにモータの最大出力が低下するのを抑制しながら、かつ、比較的複雑な構造を有する侵入抑制部材を設けることなく、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への異物の侵入を抑制することが可能な船舶推進機および船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による船舶推進機は、ステータを含むダクトと、ステータと対向するようにステータの径方向内側に配置されたロータを有するリム、および、リムの径方向内側に形成された羽根を含むプロペラと、ロータの径方向において、ダクトの内周面とリムの外周面との間に周状に設けられ、径方向におけるダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への砂利を含む異物の侵入を抑制する、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材と、を備え、径方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材の厚みは、隙間の最小幅よりも大きく、かつ、隙間の最大幅よりも小さい。なお、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間は、ダクトおよびリムの製造上の誤差(公差)等により、一般的に、ロータの周方向において、不均一となっている。
【0011】
この発明の第1の局面による船舶推進機では、上記のように、径方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材の厚みは、隙間の最小幅よりも大きく、かつ、隙間の最大幅よりも小さい。これにより、隙間のうちの最小幅の部分において、侵入抑制部材が隙間の最小幅と略同じ厚さまで縮んで、侵入抑制部材がダクトの内周面およびリムの外周面に接した状態になるとともに、隙間のうちの最大幅の部分の近傍において、侵入抑制部材がダクトの内周面およびリムの外周面のうちの少なくとも一方には接しない状態となる。これにより、侵入抑制部材が、周方向における一部のみでダクトおよびリムに接するので、侵入抑制部材が全周に亘ってダクトおよびリムに接する場合と比較して、リムが回転する際に侵入抑制部材とダクトおよびリムのうちの少なくとも一方との間で生じる摩擦力を小さくすることができる。また、隙間の最小幅よりも大きく、かつ、隙間の最大幅よりも小さい厚みを有するとともに、伸縮可能な材料から構成された上記第1の局面による船舶推進機における侵入抑制部材は、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間よりも小さい幅を有するスリットが全周に亘って形成されている従来の船舶推進機における侵入抑制部材と比較して、簡素な構造を有する。これらの結果、リムを回転させるための電力消費量が増加するのを抑制するとともにモータの最大出力が低下するのを抑制しながら、かつ、比較的複雑な構造を有する侵入抑制部材を設けることなく、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への異物の侵入を抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、径方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材の厚みと隙間の最大幅との差は、隙間の最小幅よりも小さい。このように構成すれば、隙間に侵入する異物の粒径の最大値が、隙間の最小幅よりも小さくなるので、隙間に侵入した異物が隙間に挟まるのを抑制することができる。これにより、隙間に侵入した異物が、ダクトの内周面およびリムの外周面を摩耗させるのを抑制することができる。
【0013】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、ロータおよびステータの各々は、樹脂により覆われており、侵入抑制部材は、径方向において、ロータを覆う樹脂により構成されたリムの外周面と、ステータを覆う樹脂により構成されたダクトの内周面との間に設けられている。このように構成すれば、侵入抑制部材により隙間への異物の侵入が抑制されることによって、金属に比べて摩耗しやすい樹脂により構成されたダクトの内周面およびリムの外周面が摩耗するのを効果的に抑制することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、ロータの周方向において、ロータを覆う樹脂により構成されたリムの外周面とステータを覆う樹脂により構成されたダクトの内周面との間の径方向における幅は不均一である。このように構成すれば、侵入抑制部材の径方向における厚みが一定であるとすると、径方向において、侵入抑制部材の厚みが、隙間の最小幅よりも大きく、かつ、隙間の最大幅よりも小さい構成を確実に実現することができる。
【0015】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、侵入抑制部材は、伸縮可能な発泡ゴムから構成されている。このように構成すれば、侵入抑制部材を、隙間の最小幅よりも小さく縮むように、容易に伸縮させることができる。
【0016】
この場合、好ましくは、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材は、隙間において、ダクトの内周面およびリムの外周面のいずれか一方に取り付けられており、隙間において、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材と対向するダクトの内周面およびリムの外周面のいずれか他方には、発泡ゴムに付着した異物による摩耗を抑制する摩耗抑制層が形成されている。このように構成すれば、侵入抑制部材を、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間に容易に設けることができる。また、侵入抑制部材を構成する発泡ゴムに異物が付着した場合に、摩耗抑制層によって、異物により発泡ゴムから構成された侵入抑制部材と対向するダクトの内周面およびリムの外周面のいずれか他方が摩耗するのを抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、侵入抑制部材は、隙間において、リムの外周面に取り付けられている。ここで、周状に設けられた侵入抑制部材をリムの外周面に対して径方向外側から取り付ける取付作業は、周状に設けられた侵入抑制部材をダクトの内周面に対して径方向内側から取り付ける取付作業よりも容易である。したがって、上記のように構成すれば、侵入抑制部材が隙間においてリムの外周面に取り付けられている場合と比較して、侵入抑制部材を、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間に容易に設けることができる。また、ダクトの内周面とリムの下部の内周面との隙間において、侵入抑制部材が、上側に配置されるので、ダクトおよびリムが水に浸かっている状態からダクトおよびリムが水に浸かっていない状態になった場合に、ダクトの内周面とリムの下部の内周面との隙間に侵入した異物が侵入抑制部材に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0018】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、侵入抑制部材は、非磁性材料から構成されている。このように構成すれば、ロータを有するリムが回転する際に、ロータが、侵入抑制部材から磁気的な影響を受けるのを抑制することができる。すなわち、ダクトに含まれるステータとリムに含まれるロータとにより構成されるモータの性能が低下するのを抑制することができる。
【0019】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、侵入抑制部材は、隙間において、ダクトの内周面およびリムの外周面のいずれか一方に取り付けられている。このように構成すれば、侵入抑制部材を、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間に容易に設けることができる。
【0020】
この場合、好ましくは、侵入抑制部材のロータの軸方向における長さが、侵入抑制部材の径方向における厚みよりも大きい。このように構成すれば、侵入抑制部材のロータの軸方向における長さが比較的大きくなるので、侵入抑制部材のダクトの内周面またはリムの外周面への取付面積が比較的大きくなる。これにより、侵入抑制部材を、ダクトの内周面またはリムの外周面へ比較的強固に取り付けることができる。
【0021】
上記第1の局面による船舶推進機において、好ましくは、隙間は、ロータの軸方向に延びるように形成されており、侵入抑制部材は、軸方向に延びるように形成された隙間における、軸方向の一方端および他方端に各々別個に設けられている。このように構成すれば、侵入抑制部材が、隙間における軸方向の一方端および他方端以外の部分に設けられている場合と比較して、隙間への異物の侵入を効果的に抑制することができる。また、侵入抑制部材が、隙間における軸方向の一方端および他方端に加えて、隙間における軸方向の一方端および他方端以外の部分にも設けられている場合と比較して、侵入抑制部材がリムに接する面積を小さくして、リムが回転する際に侵入抑制部材とリムとの間で生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0022】
この場合、好ましくは、ロータの軸方向の一方端とステータの軸方向の一方端とが、軸方向にずれて配置されており、隙間において軸方向の一方端に設けられた侵入抑制部材は、軸方向において、ロータの軸方向の一方端に対応するとともに、ステータの軸方向の一方端に対応しない位置に設けられている。このように構成すれば、ロータの軸方向の一方端とステータの軸方向の一方端とが軸方向にずれて配置されている場合でも、侵入抑制部材を、軸方向に延びるように形成された隙間における軸方向の一方端に設けることができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による船舶は、船体と、船体に取り付けられる船舶推進機と、を備え、船舶推進機は、ステータを含むダクトと、ステータと対向するようにステータの径方向内側に配置されたロータを有するリム、および、リムの径方向内側に形成された羽根を含むプロペラと、ロータの径方向において、ダクトの内周面とリムの外周面との間に周状に設けられ、径方向におけるダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への砂利を含む異物の侵入を抑制する、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材と、を備え、径方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材の厚みは、隙間の最小幅よりも大きく、かつ、隙間の最大幅よりも小さい。
【0024】
この発明の第2の局面による船舶では、上記のように、径方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材の厚みは、隙間の最小幅よりも大きく、かつ、隙間の最大幅よりも小さい。これにより、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、侵入抑制部材が、周方向における一部のみでダクトおよびリムに接するので、侵入抑制部材が全周に亘ってダクトおよびリムに接する場合と比較して、リムが回転する際に侵入抑制部材とダクトおよびリムとの間で生じる摩擦力を小さくすることができる。また、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、上記第1の局面による船舶推進機における侵入抑制部材は、従来の船舶推進機における侵入抑制部材と比較して、簡素な構造を有する。これらの結果、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、リムを回転させるための電力消費量が増加するのを抑制するとともにモータの最大出力が低下するのを抑制しながら、かつ、比較的複雑な構造を有する侵入抑制部材を設けることなく、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への異物の侵入を抑制することができる。
【0025】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、径方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材の厚みと隙間の最大幅との差は、隙間の最小幅よりも小さい。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、隙間に侵入した異物が、ダクトの内周面およびリムの外周面を摩耗させるのを抑制することができる。
【0026】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、ロータおよびステータの各々は、樹脂により覆われており、侵入抑制部材は、径方向において、ロータを覆う樹脂により構成されたリムの外周面と、ステータを覆う樹脂により構成されたダクトの内周面との間に設けられている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、侵入抑制部材により隙間への異物の侵入が抑制されることによって、金属に比べて摩耗しやすい樹脂により構成されたダクトの内周面およびリムの外周面が摩耗するのを効果的に抑制することができる。
【0027】
この場合、好ましくは、ロータの周方向において、ロータを覆う樹脂により構成されたリムの外周面とステータを覆う樹脂により構成されたダクトの内周面との間の径方向における幅は不均一である。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、侵入抑制部材の径方向における厚みが一定であるとすると、径方向において、侵入抑制部材の厚みが、隙間の最小幅よりも大きく、かつ、隙間の最大幅よりも小さい構成を確実に実現することができる。
【0028】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、侵入抑制部材は、伸縮可能な発泡ゴムから構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、侵入抑制部材を、隙間の最小幅よりも小さく縮むように、容易に伸縮させることができる。
【0029】
この場合、好ましくは、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材は、隙間において、ダクトの内周面およびリムの外周面のいずれか一方に取り付けられており、隙間において、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材と対向するダクトの内周面およびリムの外周面のいずれか他方には、発泡ゴムに付着した異物による摩耗を抑制する摩耗抑制層が形成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、侵入抑制部材を隙間においてダクトの内周面およびリムの外周面のいずれか一方に取り付けることによって、侵入抑制部材を、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間に容易に設けることができる。また、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、侵入抑制部材を構成する発泡ゴムに異物が付着した場合に、摩耗抑制層によって、異物により発泡ゴムから構成された侵入抑制部材と対向するダクトの内周面およびリムの外周面のいずれか他方が摩耗するのを抑制することができる。
【0030】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、侵入抑制部材は、隙間において、リムの外周面に取り付けられている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、侵入抑制部材が隙間においてリムの外周面に取り付けられている場合と比較して、侵入抑制部材を、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間に容易に設けることができる。また、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、ダクトおよびリムが水に浸かっている状態からダクトおよびリムが水に浸かっていない状態になった場合に、ダクトの内周面とリムの下部の内周面との隙間に侵入した異物が侵入抑制部材に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0031】
上記第2の局面による船舶において、好ましくは、侵入抑制部材は、非磁性材料から構成されている。このように構成すれば、上記第1の局面による船舶推進機と同様に、ダクトに含まれるステータとリムに含まれるロータとにより構成されるモータの性能が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、上記のように、リムを回転させるための電力消費量が増加するのを抑制するとともにモータの最大出力が低下するのを抑制しながら、かつ、比較的複雑な構造を有する侵入抑制部材を設けることなく、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間への異物の侵入を抑制することが可能な船舶推進機および船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態による船舶推進機の側面図である。
図2】本発明の一実施形態による船舶推進機のダクトおよびリムの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による船舶推進機のダクトおよびリムの構成を説明するための断面図である。
図4図3の部分Xの拡大図である。
図5】本発明の一実施形態による船舶推進機の、ロータの径方向における、侵入抑制部材の厚みと、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間の幅との関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
図1図5を参照して、本発明の一実施形態による船舶推進機100および船舶110について説明する。
【0036】
(船舶推進機および船舶の全体構成)
図1に示すように、船舶110は、船体101と、ブラケット102と、船舶推進機100と、を備える。船舶推進機100は、ブラケット102を介して、船体101の船尾101aに取り付けられている。すなわち、船舶推進機100は、船舶110を推進するための船外機である。船舶110は、たとえば、遊覧や魚釣り等に用いられる比較的小型の船舶である。
【0037】
船舶推進機100は、カウル10と、上部ケース20と、下部ケース30と、ダクト40と、プロペラ50と、を備える。カウル10と、上部ケース20と、下部ケース30と、ダクト40およびプロペラ50とは、この順に、船舶推進機100の上方から下方に向かって並ぶように配置されている。
【0038】
以下の説明では、後述するロータ54(図3参照)の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、A方向、R方向およびC方向とする。また、ロータ54の軸方向(A方向)の一方側(船体101側)および他方側(船体101側とは反対側)を、それぞれ、A1側およびA2側とする。また、ロータ54の径方向内側および径方向外側を、それぞれ、A1側およびA2側とする。なお、プロペラ50の中心軸線90(図2参照)は、A方向に沿って延びている。
【0039】
カウル10は、ブラケット102を介して、船体101の船尾101aに取り付けられている。カウル10と上部ケース20とは固定されている。また、下部ケース30とダクト40とは固定されている。下部ケース30およびダクト40は、カウル10および上部ケース20に対して、船舶推進機100の左右方向に回動可能に構成されている。カウル10および上部ケース20に対して下部ケース30およびダクト40が回動することにより、船体101に対するプロペラ50の向きが変更される。
【0040】
図2に示すように、ダクト40は、筒状のダクトリング41と、ダクトリング41のR1側に配置されA方向に沿って延びるダクトハブ42と、ダクトハブ42とダクトリング41とを接続するようにR方向に延びる複数のフィン43と、を含む。
【0041】
プロペラ50は、環状のリム51と、リム51のR1側に配置されA方向に沿って延びるプロペラハブ52と、プロペラハブ52とリム51とを接続するようにR方向に延びる複数の羽根53と、を含む。すなわち、複数の羽根53は、リム51のR1側に形成されている。
【0042】
プロペラハブ52は、ダクトハブ42に対してC方向に回転可能に、ダクトハブ42により支持されている。すなわち、ダクトハブ42を含むダクト40に対して、プロペラハブ52を含むプロペラ50がC方向に回転可能に構成されている。プロペラ50の回転は、船舶110を推進するための推力を発生させる。
【0043】
ダクトリング41のR1側の面には、環状の凹部41aが形成されている。環状の凹部41aには、プロペラ50のリム51が配置されている。
【0044】
図3に示すように、ダクトリング41(ダクト40)は、ステータ44を含む。リム51(プロペラ50)は、ロータ54を含む。ロータ54は、ステータ44と対向するようにステータ44のR1側に配置されている。ステータ44とロータ54とにより、プロペラ50を回転させるモータが構成されている。すなわち、船舶推進機100は、電動式船外機である。
【0045】
図4に示すように、R方向において、リム51の外周面51aとダクト40の内周面40aとの間には隙間Gが形成されている。隙間Gは、A方向に沿って延びるように形成されている。なお、ロータ54のA方向の一方端54a(A2側の端部)とステータ44のA方向の一方端44a(A2側の端部)とが、A方向にずれて配置されている。また、図5に示すように、隙間Gは、C方向に沿って延びるように形成されている。
【0046】
図4に示すように、ロータ54およびステータ44の各々は、樹脂により覆われている。これにより、ロータ54を覆う樹脂により構成されたリム51の外周面51aとステータ44を覆う樹脂により構成されたダクト40の内周面40aとにより隙間Gが形成されている。なお、ロータ54およびステータ44の各々は、樹脂モールディングされている。
【0047】
図5に示すように、C方向において、ロータ54を覆う樹脂により構成されたリム51の外周面51aとステータ44を覆う樹脂により構成されたダクト40の内周面40aとの間のR方向における幅W(隙間Gの幅)は、不均一である。リム51の外周面51aとダクト40の内周面40aとの間のR方向における幅Wは、たとえば、樹脂モールディングの精度、樹脂モールディングされる前のダクト40およびリム51の加工精度等により、不均一となっている。すなわち、ダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間の隙間Gは、ダクト40およびリム51の製造上の誤差(公差)等により、C方向において、不均一となっている。
【0048】
(侵入抑制部材の構成)
図4に示すように、船舶推進機100は、R方向におけるダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間の隙間Gへの砂利を含む異物の侵入を抑制する侵入抑制部材60を備える。図5に示すように、侵入抑制部材60は、R方向において、ダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間に周状に設けられている。
【0049】
図4に示すように、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材60は、隙間Gにおいて、リム51の外周面51aに取り付けられている。侵入抑制部材60は、たとえば、接着剤により、リム51の外周面51aに取り付けられている。なお、隙間Gにおいて、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材60と対向するダクト40の内周面40aには、発泡ゴムに付着した異物による摩耗を抑制する摩耗抑制層40bが形成されている。摩耗抑制層40bは、たとえば、セラミックコーティングである。
【0050】
侵入抑制部材60は、伸縮可能な発泡ゴムから構成されている。すなわち、侵入抑制部材60は、伸縮可能な材料から構成されている。また、侵入抑制部材60は、非磁性材料から構成されている。
【0051】
侵入抑制部材60は、A方向に延びるように形成された隙間Gにおける、A方向の一方端Ga(A2側の端部)および他方端Gb(A1側の端部)に各々別個に設けられている。これにより、隙間GにおいてA方向の一方端Ga(A2側の端部)に設けられた侵入抑制部材60は、A方向において、ロータ54のA方向の一方端54a(A2側の端部)に対応するとともに、ステータ44のA方向の一方端44a(A2側の端部)に対応しない位置に設けられている。なお、隙間GにおいてA方向の一方端Ga(A2側の端部)に設けられた侵入抑制部材60と、A方向の他方端Gb(A1側の端部)に設けられた侵入抑制部材60とは、全く同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0052】
図5に示すように、R方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材60の厚みtは、隙間Gの最小幅W1よりも大きく、かつ、隙間Gの最大幅W2よりも小さい。このため、隙間Gのうちの最小幅W1の部分において、侵入抑制部材60が隙間Gの最小幅W1と略同じ厚さt1まで縮んでいる。一方、隙間Gのうちの最大幅W2の部分の近傍において、侵入抑制部材60がダクト40の内周面40aには接しない状態となる。なお、侵入抑制部材60の厚みtとは、縮んでいない状態の侵入抑制部材60の厚みを意味する。
【0053】
R方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材60の厚みtと隙間Gの最大幅W2との差は、隙間Gの最小幅W1は、よりも小さい。言い換えると、R方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材60の厚みtは、隙間Gの最大幅W2と隙間Gの最小幅W1との差よりも大きい。この場合、R方向において、隙間Gに侵入する異物の粒径の最大値が、隙間Gの最小幅W1よりも小さくなるので、隙間Gに侵入した異物が隙間Gに挟まるのが抑制される。なお、図4に示すように、侵入抑制部材60のA方向における長さLは、侵入抑制部材60のR方向における厚みtよりも大きい。
【0054】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、R方向(ロータ54の径方向)において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材60の厚みtは、隙間Gの最小幅W1よりも大きく、かつ、隙間Gの最大幅W2よりも小さい。これにより、隙間Gのうちの最小幅W1の部分において、侵入抑制部材60が隙間Gの最小幅W1と略同じ厚さt1まで縮んで、侵入抑制部材60がダクト40の内周面40aに接した状態になるとともに、隙間Gのうちの最大幅W2の部分の近傍において、侵入抑制部材60がダクト40の内周面40aには接しない状態となる。これにより、侵入抑制部材60が、C方向(ロータ54の周方向)における一部のみでダクト40に接するので、侵入抑制部材60が全周に亘ってダクト40に接する場合と比較して、リム51が回転する際に侵入抑制部材60とダクト40との間で生じる摩擦力を小さくすることができる。また、隙間Gの最小幅W1よりも大きく、かつ、隙間Gの最大幅W2よりも小さい厚みtを有するとともに、伸縮可能な材料から構成された本実施形態による船舶推進機100における侵入抑制部材60は、ダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間の隙間Gよりも小さい幅を有するスリットが全周に亘って形成されている従来の船舶推進機における侵入抑制部材と比較して、簡素な構造を有する。これらの結果、リム51を回転させるための電力消費量が増加するのを抑制するとともにモータの最大出力が低下するのを抑制しながら、かつ、比較的複雑な構造を有する侵入抑制部材を設けることなく、ダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間の隙間Gへの異物の侵入を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、R方向(ロータ54の径方向)において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材60の厚みtと隙間Gの最大幅W2との差は、隙間Gの最小幅W1よりも小さい。これにより、隙間Gに侵入する異物の粒径の最大値が、C方向(ロータ54の周方向)における隙間Gの最小幅W1よりも小さくなるので、隙間Gに侵入した異物が隙間Gに挟まるのを抑制することができる。これにより、隙間Gに侵入した異物が、ダクト40の内周面40aおよびリム51の外周面51aを摩耗させるのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、ロータ54およびステータ44の各々は、樹脂により覆われている。そして、侵入抑制部材60は、R方向(ロータ54の径方向)において、ロータ54を覆う樹脂により構成されたリム51の外周面51aと、ステータ44を覆う樹脂により構成されたダクト40の内周面40aとの間に設けられている。これにより、侵入抑制部材60により隙間Gへの異物の侵入が抑制されることによって、金属に比べて摩耗しやすい樹脂により構成されたダクト40の内周面40aおよびリム51の外周面51aが摩耗するのを効果的に抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、C方向(ロータ54の周方向)において、ロータ54を覆う樹脂により構成されたリム51の外周面51aとステータ44を覆う樹脂により構成されたダクト40の内周面40aとの間のR方向(ロータ54の径方向)における幅W(隙間Gの幅)は不均一である。これにより、侵入抑制部材60のR方向における厚みtが一定であるとすると、R方向において、侵入抑制部材60の厚みtが、隙間Gの最小幅W1よりも大きく、かつ、隙間Gの最大幅W2よりも小さい構成を確実に実現することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、侵入抑制部材60は、伸縮可能な発泡ゴムから構成されている。これにより、侵入抑制部材60を、隙間Gの最小幅W1よりも小さく縮むように、容易に伸縮させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材60は、隙間Gにおいて、リム51の外周面51aに取り付けられている。これにより、侵入抑制部材60を、ダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間の隙間Gに容易に設けることができる。また、隙間Gにおいて、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材60と対向するダクト40の内周面40aには、発泡ゴムに付着した異物による摩耗を抑制する摩耗抑制層40bが形成されている。これにより、侵入抑制部材60を構成する発泡ゴムに異物が付着した場合に、摩耗抑制層40bによって、異物により発泡ゴムから構成された侵入抑制部材60と対向するダクト40の内周面40aが摩耗するのを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、侵入抑制部材60は、隙間Gにおいて、リム51の外周面51aに取り付けられている。ここで、周状に設けられた侵入抑制部材60をリム51の外周面51aに対してR2側(ロータ54の径方向外側)から取り付ける取付作業は、周状に設けられた侵入抑制部材60をダクト40の内周面40aに対してR1側(ロータ54の径方向内側)から取り付ける取付作業よりも容易である。したがって、侵入抑制部材60が隙間Gにおいてリム51の外周面51aに取り付けられている場合と比較して、侵入抑制部材60を、ダクト40の内周面40aとリム51の外周面51aとの間の隙間Gに容易に設けることができる。また、ダクト40の内周面40aとリム51の下部の内周面40aとの隙間Gにおいて、侵入抑制部材60が、上側に配置されるので、ダクト40およびリム51が水に浸かっている状態からダクト40およびリム51が水に浸かっていない状態になった場合に、ダクト40の内周面40aとリム51の下部の内周面40aとの隙間Gに侵入した異物が侵入抑制部材60に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、侵入抑制部材60は、非磁性材料から構成されている。これにより、ロータ54を有するリム51が回転する際に、ロータ54が、侵入抑制部材60から磁気的な影響を受けるのを抑制することができる。すなわち、ダクト40に含まれるステータ44とリム51に含まれるロータ54とにより構成されるモータの性能が低下するのを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、侵入抑制部材60のA方向(ロータ54の軸方向)における長さLは、侵入抑制部材60のR方向(ロータ54の径方向)における厚みtよりも大きい。これにより、侵入抑制部材60のA方向における長さLが比較的大きくなるので、侵入抑制部材60のダクト40の内周面40aまたはリム51の外周面51aへの取付面積が比較的大きくなる。これにより、侵入抑制部材60を、ダクト40の内周面40aまたはリム51の外周面51aへ比較的強固に取り付けることができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、隙間Gは、A方向(ロータ54の軸方向)に延びるように形成されている。そして、侵入抑制部材60は、A方向に延びるように形成された隙間Gにおける、A方向の一方端Gaおよび他方端Gbに各々別個に設けられている。これにより、侵入抑制部材60が、隙間GにおけるA方向の一方端Gaおよび他方端Gb以外の部分に設けられている場合と比較して、隙間Gへの異物の侵入を効果的に抑制することができる。また、侵入抑制部材60が、隙間GにおけるA方向の一方端Gaおよび他方端Gbに加えて、隙間GにおけるA方向の一方端Gaおよび他方端Gb以外の部分にも設けられている場合と比較して、侵入抑制部材60がリム51に接する面積を小さくして、リム51が回転する際に侵入抑制部材60とリム51との間で生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、ロータ54のA方向(ロータ54の軸方向)の一方端54aとステータ44のA方向の一方端44aとが、A方向にずれて配置されている。そして、隙間GにおいてA方向の一方端Gaに設けられた侵入抑制部材60は、A方向において、ロータ54のA方向の一方端54aに対応するとともに、ステータ44のA方向の一方端44aに対応しない位置に設けられている。これにより、ロータ54のA方向の一方端54aとステータ44のA方向の一方端44aとがA方向にずれて配置されている場合でも、侵入抑制部材60を、A方向に延びるように形成された隙間GにおけるA方向の一方端Gaに設けることができる。
【0066】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0067】
たとえば、上記実施形態では、ロータ54のA方向(ロータ54の軸方向)の一方端54aとステータ44のA方向の一方端44aとが、A方向にずれて配置されており、隙間GにおいてA方向の一方端Gaに設けられた侵入抑制部材60が、A方向において、ロータ54のA方向の一方端54aに対応するとともに、ステータ44のA方向の一方端44aに対応しない位置に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータの軸方向の一方端とステータの軸方向の一方端とが、軸方向の同じ位置に配置されており、隙間において軸方向の一方端に設けられた侵入抑制部材が、軸方向において、ロータの軸方向の一方端に対応するとともに、ステータの軸方向の一方端に対応する位置に設けられていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、隙間Gが、A方向(ロータ54の軸方向)に延びるように形成されており、侵入抑制部材60が、A方向に延びるように形成された隙間Gにおける、A方向の一方端Gaおよび他方端Gbに各々別個に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、侵入抑制部材が、ロータの軸方向に延びるように形成された隙間におけるロータの軸方向の一方端および他方端に各々に加えて、隙間におけるロータの軸方向の一方端および他方端以外の部分にも設けられていてもよい。また、侵入抑制部材が、ロータの軸方向に延びるように形成された隙間におけるロータの軸方向の一方端から他方端に亘って一体的に設けられていてもよい。また、侵入抑制部材が、ロータの軸方向に延びるように形成された隙間におけるロータの軸方向の一方端に設けられていなくてもよい。また、ロータの軸方向に延びるように形成された隙間におけるロータの軸方向の他方端に設けられていなくてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、侵入抑制部材60のA方向(ロータ54の軸方向)における長さLが、侵入抑制部材60のR方向(ロータ54の径方向)における厚みtよりも大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、侵入抑制部材のロータの軸方向における長さが、侵入抑制部材のロータの径方向における厚み以下であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、侵入抑制部材60が、非磁性材料から構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、侵入抑制部材が、磁性材料から構成されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、侵入抑制部材60が、隙間Gにおいて、リム51の外周面51aに取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、侵入抑制部材60が、隙間Gにおいて、ダクト40の内周面40aに取り付けられていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材60が、隙間Gにおいて、リム51の外周面51aに取り付けられており、隙間Gにおいて、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材60と対向するダクト40の内周面40aに、発泡ゴムに付着した異物による摩耗を抑制する摩耗抑制層40bが形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材が、隙間において、ダクトの内周面に取り付けられており、隙間において、発泡ゴムから構成された侵入抑制部材と対向するリムの外周面に、発泡ゴムに付着した異物による摩耗を抑制する摩耗抑制層が形成されていてもよい。この場合も、上記実施形態と同様に、侵入抑制部材を、ダクトの内周面とリムの外周面との間の隙間に容易に設けることができる。また、侵入抑制部材を構成する発泡ゴムに異物が付着した場合に、摩耗抑制層によって、異物により発泡ゴムから構成された侵入抑制部材と対向するリムの外周面が摩耗するのを抑制することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、侵入抑制部材60が、伸縮可能な発泡ゴムから構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、侵入抑制部材が、発泡ゴム以外の伸縮可能な材料(たとえば、発泡ゴム以外のゴム系の材料等)から構成されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、ロータ54およびステータ44の各々が、樹脂により覆われており、侵入抑制部材60が、R方向(ロータ54の径方向)において、ロータ54を覆う樹脂により構成されたリム51の外周面51aと、ステータ44を覆う樹脂により構成されたダクト40の内周面40aとの間に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータおよびステータが、それぞれ、樹脂および樹脂以外の部材(たとえば、金属)により覆われており、侵入抑制部材が、ロータの径方向において、ロータを覆う樹脂により構成されたリムの外周面と、ステータを覆う樹脂以外の部材により構成されたダクトの内周面との間に設けられていてもよい。また、ロータおよびステータが、それぞれ、樹脂以外の部材および樹脂により覆われており、侵入抑制部材が、ロータの径方向において、ロータを覆う樹脂以外の部材により構成されたリムの外周面と、ステータを覆う樹脂により構成されたダクトの内周面との間に設けられていてもよい。また、ロータおよびステータの各々が、樹脂以外の部材により覆われており、侵入抑制部材が、ロータの径方向において、ロータを覆う樹脂以外の部材により構成されたリムの外周面と、ステータを覆う樹脂以外の部材により構成されたダクトの内周面との間に設けられていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、R方向(ロータ54の径方向)において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材60の厚みtと隙間Gの最大幅W2との差が、隙間Gの最小幅W1よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロータの径方向において、伸縮可能な材料から構成された侵入抑制部材の厚みと隙間の最大幅との差が、隙間の最小幅以上であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
40 ダクト
40a (ダクトの)内周面
40b 摩耗抑制層
44 ステータ
44a (ステータの(ロータの)軸方向の)一方端
50 プロペラ
51 リム
51a (リムの)外周面
54 ロータ
54a (ロータの(ロータの)軸方向の)の一方端
60 侵入抑制部材
100 船舶推進機
101 船体
110 船舶
G ((ロータの)径方向におけるダクトの内周面とリムの外周面との間の)隙間
Ga (隙間における(ロータの)軸方向の)一方端
Gb (隙間における(ロータの)軸方向の)他方端
L (侵入抑制部材の(ロータの)軸方向における)長さ
W (樹脂により覆われたロータと樹脂により覆われたステータとの間の(ロータの)径方向における)幅
W1 (隙間の)最小幅
W2 (隙間の)最大幅
t (侵入抑制部材の(ロータの)径方向における)厚み
図1
図2
図3
図4
図5