(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008292
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】地盤改良体のサンプラー及びサンプリング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/08 20060101AFI20240112BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01N1/08 D
E02D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110043
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003498
【氏名又は名称】弁理士法人アイピールーム
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】中村 光男
【テーマコード(参考)】
2D043
2G052
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043BA08
2D043BB09
2G052AA19
2G052AC04
2G052AD12
2G052BA28
2G052CA02
2G052CA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】施工孔の埋め戻し工事の手順を活かし、設置及び抜き取りが容易で、かつ所望の状態の試料を採取できる地盤改良体のサンプラー及びサンプリング方法を提供すること。
【解決手段】内管1と、内管1の外径より大きい内径で、内管1と共に二重管を形成する外管2と、を備え、軸方向における内管1と外管2との空隙Vの最下部は閉鎖され、内管1は、軸方向に貫通して下側から順に第1内管11と第2内管12とを分離可能に連結してある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と、
前記内管の外径より大きい内径で、前記内管と共に二重管を形成する外管と、を備え、
軸方向における前記内管と前記外管との空隙の最下部は閉鎖され、
前記内管は、軸方向に貫通して下側から順に第1内管と第2内管とを分離可能に連結してある
ことを特徴とする地盤改良体のサンプラー。
【請求項2】
最下端に位置して前記内管及び前記外管と連結する第1ソケットと、をさらに備え、
前記第1ソケットは、
前記内管と略同径の開口を有するソケット先端部と、
前記外管と略同径となるように前記ソケット先端部から外側に設けたソケット拡開部と、を有し、
前記ソケット先端部は、前記第1内管と連結し、
前記ソケット拡開部は、前記外管と連結する
ことを特徴とする請求項1に記載のサンプラー。
【請求項3】
前記第1内管と前記第2内管との連結部分を互いに嵌め合う第2ソケットと、をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のサンプラー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のサンプラーを用いた施工穴充填用の地盤改良体のサンプリング方法であって、
施工穴への充填直後の地盤改良体に前記サンプラーを所定の深さまで挿し込み、
前記サンプラーの挿し込みにより前記内管の下側から内側に前記地盤改良体を流し込み、
内側に流し込み硬化した地盤改良体と共に前記第2内管を引き抜く
ことを特徴とする地盤改良体のサンプリング方法。
【請求項5】
前記サンプラーの挿し込みと共に前記内管と前記外管との空隙に水を注入する
ことを特徴とする請求項4に記載の地盤改良体のサンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、地盤に埋設された既存杭の引き抜き後に生じる施工孔への埋め戻し用の地盤改良体を採取するサンプラー及び上記サンプラーによる上記地盤改良体のサンプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地質調査のサンプリングは、集合住宅やビル等の建造物の設計及び施工に必要な地盤を観察したり室内で試験したりすることを目的とし、上記地盤の試料をなるべく乱れていない状態で採取するために、土質や地質の性状・硬軟・混入物等に応じて、例えば、固定ピストン式シンウォールサンプラー・ロータリー式二重管サンプラー(デニソン)・ロータリー式三重管サンプラー(トリプル)・コアパックチューブサンプラーを選択していた。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧入力を伝達する外管ロッドと回転力を伝達する内管ロッドとからなる二重管ロッドと、外管ロッドの下端に結合された状態で支持されて地盤の試料を収容する内チューブと、内チューブの外側に位置して回転自在の外チューブと、内チューブの内側を軸方向に摺動するピストンと、内管ロッドの回転を外チューブに伝達する歯車機構と、を備えたサンプリング装置が開示されており、サンプリング中に内チューブが回転せず、ピストンが地盤を押し付け続けるため、乱れの少ない試料を採取できる効果を期待できた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなロータリー式スリーブ内蔵二重管タイプのサンプラーは、オールコアボーリングによりオールコア採取する地盤改良体として比較的強度の高めな深層混合改良体向きであり、集合住宅等の建造物の建て替え時における既存杭の引き抜き後の施工孔に充填するため周辺地盤の強度と同程度であることが求められている比較的強度の低めな埋め戻し用の地盤改良土には不向きである。
【0006】
すなわち、埋め戻し用の地盤改良土は、深度方向(軸方向)で硬軟の差が著しい土砂となりやすいことから、上記サンプラーでは、上記差に応じて適切に試料をサンプリングしにくいばかりでなく、回転して削孔することで筒状の試料を抜き取る分、削孔時の振動や衝撃が上記試料に伝わりやすいため、サンプリングされた試料は、ひび割れ・亀裂・剥離・断裂等の乱れの多い状態になってしまう。
【0007】
一般的に、上記埋め戻し土は、変形係数・土層の強さ(N値)・土層の一軸圧縮強度(N/mm2)といった周辺地盤の特性に基づいて決定した配合で生成され、上記施工孔に充填されて約28日間の養生後に採取された試料で性状等を調査されるが、上記充填直後の流動性が高く上記差があまりない状態のうちにサンプラーを設置し、上記養生後に削孔等せずにサンプラーを抜き取れば、上記乱れの少ない試料を採取できることに、発明者は辿り着いた。
【0008】
そこで、本発明の目的は、施工孔の埋め戻し工事の手順を活かし、設置及び抜き取りが容易で、かつ所望の状態の試料を採取できる地盤改良体のサンプラー及びサンプリング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明における地盤改良体のサンプラーは、内管と、上記内管の外径より大きい内径で、上記内管と共に二重管を形成する外管と、を備え、軸方向における上記内管と上記外管との空隙の最下部は閉鎖され、上記内管は、軸方向に貫通して下側から順に第1内管と第2内管とを分離可能に連結してあることを特徴とする。
【0010】
また、上記サンプラーは、最下端に位置して上記内管及び上記外管と連結する第1ソケットと、をさらに備え、上記第1ソケットは、上記内管と略同径の開口を有するソケット先端部と、上記外管と略同径となるように上記ソケット先端部から外側に設けたソケット拡開部と、を有し、上記ソケット先端部は、上記第1内管と連結し、上記ソケット拡開部は、上記外管と連結することが望ましい。
【0011】
また、上記サンプラーは、上記第1内管と上記第2内管との連結部分を互いに嵌め合う第2ソケットと、をさらに備えたことが望ましい。
【0012】
また、本発明は、上記サンプラーを用いた施工穴充填用の地盤改良体のサンプリング方法であって、施工穴への充填直後の地盤改良体に上記サンプラーを所定の深さまで挿し込み、上記サンプラーの挿し込みにより上記内管の下側から内側に上記地盤改良体を流し込み、内側に流し込み硬化した地盤改良体と共に上記第2内管を引き抜くことを特徴とする。
【0013】
また、上記サンプリング方法として、上記サンプラーの挿し込みと共に上記内管と上記外管との空隙に水を注入することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明における地盤改良体のサンプラー及びサンプリング方法によれば、施工孔の埋め戻し工事の手順を活かし、設置及び抜き取りが容易で、かつ所望の状態の試料を採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態における地盤改良体のサンプラーの使用概要図である。
【
図2】上記サンプラーの(a)組立前、(b)組立後を示す組立図である。
【
図3】上記サンプラーを用いた地盤改良体のサンプリング方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図3を参照しつつ、本発明の一実施形態における地盤改良体のサンプラー及びサンプリング方法について説明する。
これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、断面図で示した部分や、所定の部位やこの部位の引き出し線をかくれ線(破線)や想像線(一点鎖線)で示した部分もある。説明において、上・下・側・垂直・鉛直・水平・外・内等の向きを示す用語は、基本的に地表を基準とし、それ以外は適宜基準を明示するものとする。
【0017】
図1に示すように、本発明における地盤改良体のサンプラーSは、撤去済みの集合住宅等の既存杭が地盤Gaから引き抜かれた後に生じる施工穴の埋め戻し用の地盤改良体(埋め戻し土)Gbをサンプリングするものである。既存杭は、例えば、圧入工法にて地盤Gaに打ち込まれた直径0.3m、長さ15mのPC杭であり、施工穴は既存杭のサイズに相当するものである。
【0018】
地盤改良体Gbは、例えば、ベントナイトとセメントミルクとを所定の比率で混ぜ合わせたセメントベントナイト改良土であり、自硬性安定液として用いられるものでもよい。地盤改良体Gbで構成される土層の一軸圧縮強度は、上述した比率や混ぜ合わせ具合に起因する発現強度のバラつき及び安全性に関する係数に鑑みて設定された土層の強さと一軸圧縮強度との関係に対し、地盤Gaの土層の強さ(目標値)を代入して算出してもよい。
【0019】
サンプラーSは、内管1と、内管1の外径より大きい内径で、内管1と共に二重管を形成する外管2と、を備え、軸方向における内管1と外管2との空隙Vの最下部は閉鎖され、内管1は、軸方向に貫通して下側から順に第1内管11と第2内管12とを分離可能に連結してある。空隙Vの最下部は、所定の板材や溶接等で閉鎖してもよい。
【0020】
この構成によれば、サンプラーSが施工穴への埋め戻し直後の地盤改良体Gbに挿し込まれると、地盤改良体Gbが内管1の下端の開口から内側に流れ込み、一方、内管1と外管2との空隙Vには流れ込まず、第1内管11から第2内管12が分離して硬化した地盤改良体Gbごと引き抜かれることで、削孔等の作業による振動や衝撃が生じないため、第2内管12内の地盤改良体Gbを試料として乱れの少ない状態で採取する効果を期待できる。試料となる地盤改良体Gbは、第2内管12における高さH分であり、深度方向に連続したサンプリングが可能となる。
【0021】
また、サンプラーSは、軸方向の最下端に位置して内管1及び外管2と連結する第1ソケット3と、をさらに備え、第1ソケット3は、内管1と略同径の開口を有するソケット先端部31と、外管2と略同径となるようにソケット先端部31から外側に設けたソケット拡開部32と、を有し、ソケット先端部31は、第1内管11と連結し、ソケット拡開部32は、外管2と連結する。
【0022】
この構成によれば、第1ソケット3を土台にして内管1と外管2とで所望の二重管構造を形成できるため、サンプラーSを容易に製作できる。すなわち、ソケット先端部31を介して第1内管11の内側に地盤改良体Gbを流し込み、ソケット拡開部32で空隙Vの最下部を閉鎖する構造を形成できるため、加工済みの内管1、外管2、及び第1ソケット3を施工現場で組み立てるだけでよく、作業効率の向上も期待できる。
【0023】
また、サンプラーSは、第1内管11と第2内管12との連結部分を互いに嵌め合う第2ソケット4と、をさらに備えている。
【0024】
この構成によれば、第1内管11と第2内管12とが単に第2ソケット4に嵌って連結していることにより、第2内管12を引き抜くだけで第1内管11と分離できるため、地盤改良体Gbをサンプリングしやすくなる効果を期待できる。
【0025】
次に、
図2を用いて、サンプラーSの詳細について説明する。
【0026】
サンプラーSの素材は、ポリ塩化ビニルであるが、所望の強度を有する限りその他の熱可塑性樹脂や金属でもよく、特に第2内管12は軽くて切断しやすいものが好ましい。内管1の口径は、外径60mm前後、内径50mm前後、外管2の口径は、外径90mm前後、内径80mm前後でもよく、内管1を外管2に挿通して二重管を形成した状態で軸方向に所定の空隙を有すればよく、限定しない。
【0027】
内管1及び外管2は、軸方向に貫通していて上下端に開口を有し、長さが同等でも相違していてもよい。第1内管11は、第2内管12より短く、長さが20cm程度でもよい。第1内管11、第2内管12、又は外管2は、単数本でも、所定寸法(1m単位等)のパーツ管を施工穴の深さに合せて複数本連結したものでもよく、溶接や接着剤で固定して連結してもよく、各々の連結部分に切られたねじ(雄ねじ・雌ねじ)で連結してもよい。
【0028】
第1ソケット3は、内管1及び外管2とのジョイント用であり、地盤改良土Gbを内管1の内側に流し込み、内管1と外管2との空隙に流し込まない構造であればよく、形状・寸法・上記ジョイント構造を限定しない。ソケット先端部31と第1内管11、ソケット拡開部32と外管2とは、溶接や接着剤で固定して連結してもよく、各々の連結部分に切られたねじ(雄ねじ・雌ねじ)で連結してもよい。
【0029】
第2ソケット4は、例えば、第1内管11及び第2内管12の外径よりわずかに大きい内径を有する筒であり、第1内管11及び第2内管12の内側と密着し、かつ抜き差し自在に篏合するものであればよく、形状・寸法を限定しない。
【0030】
サンプラーSの組立方法は、例えば、
図2(a)に示すように、まず、第1ソケット3のソケット先端部31と内管1の第1内管11とを連結し、次に、第1内管11と第2内管12とを第2ソケット4を介して連結し、その後、ソケット拡開部32と外管2とを連結すると、サンプラーとして最短のユニットになる。その後は、施工穴の深さに応じて、第2内管12及び外管2の各々のパーツ管を複数本連結すると、
図2(b)に示すサンプラーSになる。
【0031】
次に、
図3を用いて、サンプラーSを用いた地盤改良体のサンプリング方法を説明する。
【0032】
まず、
図3(a)に示すように、地盤Gaに生じた施工穴への充填直後の地盤改良体GbにサンプラーSを所定の深さまで挿し込む。次に、
図3(b)に示すように、サンプラーSの挿し込みにより第1ソケット3のソケット先端部31の開口を介して内管2の下側から内側に地盤改良体Gbを流し込む。そして、
図3(c)に示すように、内側に流し込み硬化した地盤改良体Gbと共に第2ソケット4から第2内管12を引き抜く。
【0033】
この方法によれば、充填直後の地盤改良体Gbは、流動性が高く、かつ深度方向に硬軟の差があまりなく、内管2の下側から内側に流れ込むことから、サンプラーSを地盤改良体Gbに挿し込みやすく、地盤改良体Gbを第2内管12の所望の高さまで充填させやすい。そして、第2ソケット4により第2内管12を容易に分離でき、硬化後の地盤改良体Gbを削孔等しなくてもよいため、ほとんど乱れていない状態の試料を採取しやすい効果を期待できる。すなわち、
図3(d)に示すように、試料と共に第2内管12をパーツ管単位に分割した後、切断機等で軸方向の2か所に切れ目を入れて第2内管12を剥離すれば、中身を傷付けず容易に取り出すせるため、地表からの深度毎に試料を分別できる。
【0034】
また、
図3(b)に示すように、サンプラーSの挿し込みと共に内管1と外管2との空隙Vに水Wを注入する。水Wは、地上から作業員等により量を調整しながら複数回に分けて注入されてもよい。
【0035】
この方法によれば、地盤改良体GbからサンプラーSに浮力が生じた場合、空隙Vに注入した水Wを重しにすることで、サンプラーSを挿し込みやすくする効果を期待できる。
【0036】
なお、
図3(b)に示すように、ソケット先端部31の開口の目詰まり等により地盤改良体Gbが第2内管12内に流れ込みにくくなるおそれを考慮して、サンプラーSの挿し込みと共に第2内管12内の地盤改良体Gbの上端の位置を計ってもよい。また、
図3(c)に示すように、第2内管12の引き抜き後の残置物は、追加する埋め戻し用の地盤改良体と共に埋没させても、所定の方法で取り除いてもよい。
【0037】
なお、本実施形態に示したサンプラーは、上述した内容に限定されず、同等の効果を得られる限り、あらゆる部位の位置・形状・寸法や、部位同士の関係を含む。
【符号の説明】
【0038】
1 内管、11 第1内管、12 第2内管、3 第1ソケット、31 ソケット先端部、32 ソケット拡開部、4 第2ソケット、S サンプラー、Ga 地盤、Gb 地盤改良体、V 空隙、W 水