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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082928
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240613BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240613BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20240613BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240613BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L77/00
C08K3/10
C08L1/00
C08J5/00 CEP
C08J5/00 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197151
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】中川 知之
(72)【発明者】
【氏名】坪井 一俊
(72)【発明者】
【氏名】荒川 誠一
(72)【発明者】
【氏名】隣 雅也
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA54
4F071AA78
4F071AD01
4F071AF17
4F071AF23
4F071AH03
4F071AH07
4F071AH11
4F071AH12
4F071AH18
4F071BA01
4F071BB05
4F071BC03
4F071BC12
4J002AB012
4J002AB022
4J002AB032
4J002CL011
4J002CL031
4J002DE096
4J002FA042
4J002FD012
4J002FD206
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】耐衝撃性及び曲げ強さに優れる、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、熱可塑性樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、銅(II)化合物、ニッケル(II)化合物及びコバルト(II)化合物からなる群より選択される1種以上の遷移金属化合物(C)とを含む、熱可塑性樹脂組成物であって、前記遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.10質量%以上5.0質量%以下である、熱可塑性樹脂組成物に関する。また、熱可塑性樹脂組成物は、成形体の軽量化により、資源使用量の減少に寄与する観点から、SDGs(Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標)のGoal9、13などの達成に貢献し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、銅(II)化合物、ニッケル(II)化合物及びコバルト(II)化合物からなる群より選択される1種以上の遷移金属化合物(C)とを含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
前記遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.10質量%以上5.0質量%以下である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド樹脂である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
セルロース系繊維(B)が、アセチル化セルロース系繊維である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
セルロース系繊維(B)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、2.0質量%以上25.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
遷移金属化合物(C)が、少なくとも銅(II)化合物を含む、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.20質量%以上4.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、成形体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物を、射出成形により成形して、成形体を得る工程を含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂及びセルロース系繊維を含む樹脂組成物は、軽量である利点を有する。そのため、前記樹脂組成物は、金属材料に代えて自動車部品、航空機内部品、家庭用機器、建設材料等の分野で使用されている。
【0003】
特許文献1には、熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂と、平均繊維径が10μm以下のセルロース系繊維と、ヨウ化第一銅及び臭化第一銅等の銅(I)化合物と、ハロゲン化アルカリ金属化合物と、多価アルコールとを含有する、ポリアミド樹脂組成物が開示されている。特許文献1に記載されたポリアミド樹脂組成物は、機械的特性、長期耐熱エージング性、熱エージング処理後の表面光沢性に優れるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-105507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された、銅(I)化合物を用いたポリアミド樹脂組成物は、耐衝撃性及び曲げ強さが劣っているという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、耐衝撃性及び曲げ強さが優れる、熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に関する。
[1]熱可塑性樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、銅(II)化合物、ニッケル(II)化合物及びコバルト(II)化合物からなる群より選択される1種以上の遷移金属化合物(C)とを含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
前記遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.10質量%以上5.0質量%以下である、熱可塑性樹脂組成物。
[2]熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド樹脂である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]セルロース系繊維(B)が、アセチル化セルロース系繊維である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]セルロース系繊維(B)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、2.0質量%以上25.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]遷移金属化合物(C)が、少なくとも銅(II)化合物を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.20質量%以上4.0質量%以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7][1]~[6]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む、成形体。
[8][1]~[6]のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を、射出成形により成形して、成形体を得る工程を含む、成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐衝撃性及び曲げ強さが優れる、熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[用語の定義]
「熱可塑性樹脂(A)」を、「成分(A)」ともいう。「セルロース系繊維(B)」等についても同様である。
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
[熱可塑性樹脂組成物]
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、銅(II)化合物、ニッケル(II)化合物及びコバルト(II)化合物からなる群より選択される1種以上の遷移金属化合物(C)とを含み、ここで、前記遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.10質量%以上5.0質量%以下である。
【0011】
熱可塑性樹脂組成物において、遷移金属化合物(C)は、熱可塑性樹脂(A)及び/又はセルロース系繊維(B)と、複合体を形成し得るものと考えられる。即ち、遷移金属化合物の中で、銅(II)イオン、ニッケル(II)イオン、コバルト(II)イオンは、平面四角形状錯体(dsp混成軌道)や八面体形状錯体(dsp混成軌道)を形成しやすい。そして、セルロース系繊維(B)の水酸基は、遷移金属化合物(C)の遷移金属に配位し得るものと考えられる。また、遷移金属化合物(C)は、熱可塑性樹脂(A)が有する窒素原子と複合体を形成するものと考えられる。例えば、ビウレット反応においては、銅(II)イオン、ニッケル(II)イオン及びコバルト(II)イオンは、ペプチド結合の4個の窒素原子との間で、平面四角形状錯体を安定的に形成することが知られている(例えば、臨床化学 20、91~96、1991参照)。これらにより、熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、曲げ強さ等の特性が向上したものと推測される
【0012】
〔熱可塑性樹脂(A)〕
熱可塑性樹脂(A)は、特に限定されず、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリチオエーテル系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素系樹脂、その他の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0013】
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂としては、芳香環を有さない脂肪族ポリアミド樹脂(A-1)、並びに、芳香環を含む芳香族ポリアミド樹脂(A-2)が挙げられる。脂肪族ポリアミド樹脂(A-1)としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-1-2)が挙げられる。また、芳香族ポリアミド樹脂(A-2)としては、芳香族ホモポリアミド樹脂(A-2-1)及び芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-2-2)が挙げられる。
【0014】
≪脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1-1)≫
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせ、ラクタム又はアミノカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0015】
脂肪族ジアミンの炭素原子数は、2~20であることが好ましく、4~12であることが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、6~12であることが特に好ましい。ラクタムの炭素原子数は、5~12であることが好ましい。アミノカルボン酸の炭素原子数は、5~12であることが好ましい。
【0016】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等が挙げられる。
【0017】
脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せとして、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の組合せ、及び、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸の組合せ等が挙げられる。脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せは、該組合せの等モル塩であることが好ましい。
【0018】
ラクタムとしては、γ-ブチロラクタム、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては、5-アミノペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムは、生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム又はドデカンラクタムであることが好ましい。
【0019】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1-1)の具体例としては、ポリバレロラクタム(ポリアミド5)、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンオキサミド(ポリアミド122)等が挙げられる。
【0020】
≪脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-1-2)≫
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-1-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上であり、かつ、芳香環を有さない脂肪族ポリアミド樹脂である。よって、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-1-2)としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体である脂肪族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0021】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-1-2)の具体例としては、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)、ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/カプロラクタム共重合体(ポリアミド66/6)等が挙げられる。
【0022】
≪芳香族ホモポリアミド樹脂(A-2-1)≫
芳香族ホモポリアミド樹脂(A-2-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。よって、芳香族ホモポリアミド樹脂(A-2-1)としては、脂肪族及び/又は脂環式ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せからが挙げられる。ここで、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸は、前記したものが挙げられる。
【0023】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸、ジ安息香酸、4,4’-オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、脂環式ジカルボン酸としては、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
芳香族ジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンが挙げられる。また、脂環式ジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0025】
芳香族ホモポリアミド樹脂(A-2-1)の具体例としては、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンスクシナミド(ポリアミドMXD4)、ポリメタキシリレングルタミド(ポリアミドMXD5)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリパラキシリレンスクシナミド(ポリアミドPXD4)、ポリパラキシリレングルタミド(ポリアミドPXD5)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンスベラミド(ポリアミドPXD8)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリパラキシリレンドデカミド(ポリアミドPXD12)等が挙げられる。
【0026】
≪芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-2-2)≫
芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-2-2)は、芳香族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上である、芳香族ポリアミド樹脂である。ここで、芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-2-2)としては、脂肪族及び/又は脂環式ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸との組合せ、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸との組合せから選択されるモノマーの共重合体である芳香族ポリアミド樹脂が挙げられる。ここで、芳香族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、ジアミン及びジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種のジアミンと1種のジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。ここで、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸は、前記したものが挙げられる。
【0027】
芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-2-2)の具体例としては、ポリ(テトラメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド4T/6T)、ポリ(テトラメチレンテレフタラミド/テトラメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド4T/46)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/2-メチルペンタメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/M5T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/カプロアミド)共重合体(ポリアミド6T/6)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド6T/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド6T/612)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/612)等が挙げられる。
【0028】
また、芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-2-2)の具体例としては、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/12)、ポリ(ノナメチレンテレフタラミド/2-メチルオクタメチレンテレフタラミド/ノナメチレンイソフタラミド/2-メチルオクタメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド9T/M8T/9I/M8I)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N/11)、ポリ(ノナメチレンナフタラミド/2-メチルオクタメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド9N/M8N/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンイソフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/10I/1012)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10N/11)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10N/12)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10N/1010)、ポリ(デカメチレンナフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10N/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/11)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/12)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/デカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタラミド/デカメチレンナフタラミド/デカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド10T/10N/1012)等が挙げられる。
【0029】
また、芳香族共重合ポリアミド樹脂(A-2-2)の具体例としては、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンイソフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/12I/1212)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12N/11)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12N/12)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12N/1210)、ポリ(ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12N/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ウンデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/11)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカンアミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/12)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/1210)、ポリ(ドデカメチレンテレフタラミド/ドデカメチレンナフタラミド/ドデカメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド12T/12N/1212)等が挙げられる。
【0030】
<ポリオレフィン系樹脂>
ポリオレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリメチルペンテン(TPX)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基で変性されていてもよい。
【0031】
<ポリスチレン系樹脂>
ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等が挙げられる。ポリスチレン系樹脂は、カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基で変性されていてもよい。
【0032】
<ポリエステル系樹脂>
ポリエステル系樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合体(PET/PEI)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等が挙げられる。
【0033】
<ポリエーテル系樹脂>
ポリエーテル系樹脂としては、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)等が挙げられる。
【0034】
<ポリサルホン系樹脂>
ポリサルホン系樹脂としては、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン(PESU)、ポリフェニルサルホン(PPSU)等が挙げられる。
【0035】
<ポリチオエーテル系樹脂>
ポリチオエーテル系樹脂としては、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等が挙げられる。
【0036】
<ポリケトン系樹脂>
ポリケトン系樹脂としては、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトンケトン(PEKKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等が挙げられる。
【0037】
<ポリニトリル系樹脂>
ポリニトリル系樹脂としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体(NBR)等が挙げられる。
【0038】
<ポリメタクリレート系樹脂>
ポリメタクリレート系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等が挙げられる。
【0039】
<ポリビニル系樹脂>
ポリビニル系樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
【0040】
<セルロース系樹脂>
セルロース系樹脂としては、酢酸セルロース、酪酸セルロース等が挙げられる。
【0041】
<ポリカーボネート系樹脂>
ポリカーボネート系樹脂としては、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0042】
<ポリイミド系樹脂>
ポリイミド系樹脂としては、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルアミドイミド等が挙げられる。
【0043】
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン(PU)、ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。
【0044】
<フッ素系樹脂>
フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体(CPT)等が挙げられる。
【0045】
熱可塑性樹脂(A)は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
<好ましい態様>
熱可塑性樹脂(A)は、遷移金属化合物(C)による効果がより高まる観点から、遷移金属化合物(C)の金属原子と配位可能である末端基(例えば、水酸基、窒素原子含有基(例えば、アミノ基、アミド基、イミド基))を有することが好ましく、窒素原子含有基を有することがより好ましい。
また、熱可塑性樹脂(A)は、成形加工性の観点から、ポリアミド樹脂であることが特に好ましい。ここでポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂(A-1)であることが好ましく、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1-1)であることがより好ましく、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド56、ポリアミド510、ポリアミド66、ポリアミド610及びポリアミド612からなる群から選択される1種以上であることが特に好ましい。
【0047】
ポリアミド樹脂の相対粘度は、特に限定されないが、1.9以上であることが好ましい。物性と成形性の両立の観点から、ポリアミド樹脂の相対粘度は、1.9~4.2であることがより好ましく、2.3~3.2であることが特に好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度は、JIS K 6920に準じて、96重量%の硫酸中、ポリアミド樹脂濃度1重量%、温度25℃の条件下にて測定することができる。ポリアミド樹脂が、相対粘度が異なる2種以上のポリアミド樹脂含む場合、ポリアミド樹脂における相対粘度は、上記内容で測定されてもよい。また、それぞれのポリアミド樹脂の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド樹脂の相対粘度としてもよい。ポリアミド樹脂の相対粘度は、ポリアミド樹脂の製造において重合条件により調整することができる。
【0048】
〔セルロース系繊維(B)〕
セルロース系繊維(B)としては、未修飾セルロース系繊維及び修飾セルロース系繊維が挙げられる。
【0049】
<未修飾セルロース系繊維>
未修飾セルロース系繊維は、セルロース、ホロセルロース及びリグノセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子(以下、「セルロース系高分子」ともいう。)からなる繊維である。
【0050】
<修飾セルロース系繊維>
修飾セルロース系繊維は、未修飾セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子中の多糖及びリグニンの少なくとも一部の水酸基が、置換基で修飾された繊維である。ここで、「セルロース系高分子」としては、セルロース、ホロセルロース及び/又はリグノセルロースが挙げられる。また、「修飾」とは、前記水酸基の水素原子が、前記置換基に置き換えられていることを意味する。置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0051】
アルキル基としては、非置換の炭素原子数1~4のアルキル基、又は、ヒドロキシル基若しくはシアノ基で置換された炭素原子数1~4のアルキル基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0052】
アルケニル基としては、炭素原子数2~4のアルケニル基が挙げられる。炭素原子数2~4のアルケニル基は、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基等が挙げられる。アルケニル基は、アリル基であることが好ましい。
【0053】
アシル基としては、式:R-CO-(式中、Rは、アルキル基又はフェニル基である)で表される基が挙げられる。
アルキルオキシカルボニル基としては、式:RO-CO-(式中、Rは、アルキル基又はフェニル基である)で表される基が挙げられる。
【0054】
Rにおけるアルキル基は、前記した基が挙げられ、非置換の炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましい。
【0055】
Rにおけるフェニル基としては、非置換のフェニル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたフェニル基が挙げられる。
フェニル基の置換基であるアルキル基としては、前記した基が挙げられ、非置換の炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましい。
フェニル基の置換基であるアルコキシ基としては、炭素原子数1~4のアルコキシ基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルコキシ基におけるアルキル基は、炭素原子数1~4のアルキル基において前記した基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。
【0056】
アシル基は、アセチル基(即ち、メチルカルボニル基)、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-エチルベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基、又は、4-エトキシベンゾイル基等が挙げられる。
【0057】
<<置換基による修飾度>>
修飾セルロース系繊維において、修飾セルロース系繊維中のセルロース、ホロセルロース及び/又はリグノセルロースを構成する多糖及びリグニン中の水酸基の置換基による修飾度(「DS」ともいう)は、特に限定されず、所望の特性に応じて適宜設定することができる。ここで、置換基による修飾度とは、修飾セルロース系繊維中のセルロース、ホロセルロース及び/又はリグノセルロースを構成する多糖及びリグニン単位(繰り返し単位)に存在する水酸基が、置換基により修飾された程度である。
【0058】
セルロース系高分子がセルロースである場合は、前記繰り返し単位はグルコピラノース残基であり、この1単位あたりの水酸基数は3である。よって、修飾セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子がセルロースのみで構成されている場合は、置換基による修飾度の上限は3である。
【0059】
リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含む。セルロース系高分子がヘミセルロースである場合は、前記繰り返し単位はキシランにおけるキシロース残基又はアラビノガラクタンにおけるガラクトース残基であり、これらの1単位あたりの水酸基数は2である。また、標準的なリグニンにおける、前記繰り返し単位は標準的なリグニン残基であり、この1単位当たりの水酸基数は2である。よって、修飾セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子がリグノセルロースである場合は、置換基による修飾度の上限は3未満であり、リグノセルロースが含有するヘミセルロース及びリグニンの含有量に依存して、通常2.7~2.8である。
【0060】
ホロセルロースは、セルロース及びヘミセルロースを含む。セルロース及びヘミセルロースについて、前記繰り返し単位の1単位当たりの水酸基数は、それぞれ3及び2である。よって、修飾セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子がホロセルロースである場合は、置換基による修飾度の上限は3未満である。
【0061】
修飾セルロース系繊維において、置換基による修飾度は、0.4~2.55であることが好ましい。置換基による修飾度が0.4~2.55である場合、アミド化合物(C)に対する分散性に優れる修飾セルロース系繊維を得ることができる。置換基による修飾度は0.56~2.00であることがより好ましく、0.60~1.00であることが特に好ましい。
【0062】
置換基による修飾度(DS)は、元素分析、中和滴定法、FT-IR、二次元NMR(H及び13C-NMR)等の各種分析方法等により分析することができる。例えば、置換基がアセチル基である場合、アセチル化セルロース系繊維におけるアセチル化度は、アセチル化に用いられるアセチル化剤(即ち、酢酸の無水物又は酸塩化物等)の量、反応温度、反応時間等を調節することにより調整することができる。
【0063】
<好ましい態様>
セルロース系繊維(B)は、修飾セルロース系繊維であることが好ましい。また、修飾セルロース系繊維における置換基はアシル基であることが好ましく、アセチル基であることが特に好ましい。よって、セルロース系繊維(B)は、アセチル化セルロース系繊維であることが特に好ましい。ここで、「アセチル化セルロース系繊維」とは、修飾セルロース系繊維における置換基がアセチル基である。即ち、セルロース系繊維(B)を構成するセルロース系高分子中の多糖及びリグニンの少なくとも一部の水酸基がアセチル化された繊維である。ここで、「アセチル化」とは、アセチル化セルロース系繊維を構成するセルロース系高分子中の多糖及びリグニンの少なくとも一部の水酸基がアセチル基で修飾された(即ち、水酸基の水素原子がアセチル基(CHCO-)により置換されている)ことを意味する。
【0064】
〔セルロース系繊維(B)の製造方法〕
セルロース系繊維(B)の製造方法は、特に限定されず、所望のセルロース系繊維(B)の態様に応じて適宜設定できる。セルロース系繊維(B)が未修飾セルロース系繊維である場合、セルロース系繊維(B)の製造方法としては、例えば、後述するセルロース系繊維(B)の製造方法(1)が挙げられる。また、セルロース系繊維(B)が修飾セルロース系繊維である場合、セルロース系繊維(B)の製造方法としては、例えば、後述するセルロース系繊維(B)の製造方法(2)が挙げられる。
【0065】
<セルロース系繊維(B)の製造方法(1)>
セルロース系繊維(B)の製造方法(1)は、未修飾セルロース系繊維の製造方法である。未修飾セルロース系繊維の製造方法は、未修飾セルロース系繊維含有材料を解繊して、未修飾セルロース系繊維を得る工程を含む。
【0066】
<<未修飾セルロース系繊維含有材料>>
未修飾セルロース系繊維含有材料は、セルロース系繊維(B)の原料である。未修飾セルロース系繊維含有材料は、セルロース系パルプ(未修飾セルロース系繊維集合体)であることが好ましい。
【0067】
セルロース系パルプは、植物性の原料から分離した、セルロース系高分子からなる繊維集合体を意味する。植物として、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物等が挙げられる。木材としては、シトカスプルース、マツ(トドマツ、アカマツ等)、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等の針葉樹又は広葉樹由来の木材が挙げられる。
【0068】
セルロース系パルプは、リグニンを含まないパルプ(セルロースからなるパルプ、ホロセルロースからなるパルプ等)及びリグニンを含むパルプ(リグノパルプ)を包含する。ここで、リグノパルプは、リグニンが検出される限り、リグニンの含有量が微量であるパルプを包含する。リグノパルプ中のリグニン量は、クラーソン法で定量することができる。リグノパルプにおけるリグニンの含有量は、特に限定されないが、0.1~40質量%であることが好ましく、0.1~35質量%であることがより好ましく、0.1~30質量%であることが特に好ましい。
【0069】
セルロース系パルプは、木材から得られるパルプ(木材パルプ)であることが好ましい。セルロース系パルプは、リグノパルプであることが好ましい。
【0070】
セルロース系パルプは、前記した植物に由来する原料を、機械パルプ化法、化学パルプ化法、又は機械パルプ化法と化学パルプ化法との組み合わせにより処理して得ることができる。このようにして得られるパルプとしては、クラフトパルプ(KP)、機械パルプ(MP)等が挙げられる。クラフトパルプ(KP)としては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)、及び針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)が挙げられる。機械パルプ(MP)としては、砕木パルプ(GP)、リファイナーGP(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。
【0071】
セルロース系繊維含有材料の平均繊維径は、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましい。このような平均繊維径であれば、解繊(ミクロフィブリル化)を効率的に行うことができる。
【0072】
<<平均繊維径>>
未修飾セルロース系繊維含有材料の平均繊維径は、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましい。このような平均繊維径であれば、未修飾セルロース系繊維含有材料の解繊を効率的に行うことができる。
【0073】
<<解繊の方法>>
未修飾セルロース系繊維含有材料の解繊方法としては、パルプを解繊するための公知の解繊方法が挙げられる。前記解繊方法の具体例としては、未修飾セルロース系パルプの水懸濁液又はスラリーを、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸混練機、多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミル等による機械的な摩砕又は叩解することによる解繊方法が挙げられる。これらの解繊方法は、組み合わせて用いてもよい。
【0074】
また、未修飾セルロース系繊維含有材料及び熱可塑性樹脂(A)を一緒に溶融混練することで、溶融混練中に未修飾セルロース系繊維含有材料が解繊されて、熱可塑性樹脂(A)中で、未修飾セルロース系繊維であるセルロース系繊維(B)とすることができる。これにより、未修飾セルロース系繊維含有材料の解繊及び熱可塑性樹脂組成物の製造を効率的に行うことができる。
【0075】
<セルロース系繊維(B)の製造方法(2)>
セルロース系繊維(B)の製造方法(2)は、修飾セルロース系繊維の製造方法である。修飾セルロース系繊維の製造方法は、未修飾セルロース系繊維を修飾して、修飾セルロース系繊維を得る工程を含む。または、修飾セルロース系繊維の製造方法は、未修飾セルロース系繊維含有材料を修飾して、修飾セルロース系繊維含有材料を得る工程、及び、修飾セルロース系繊維含有材料を解繊して、修飾セルロース系繊維を得る工程を含む。
ここで、未修飾セルロース系繊維含有材料については、セルロース系繊維(B)の製造方法(1)において前記したとおりである。
【0076】
<<修飾方法>>
未修飾セルロース系繊維含有材料の修飾方法及び解繊された未修飾セルロース系繊維の修飾方法は、セルロース系高分子の水酸基を、置換基によって修飾するための公知の方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、国際公開2019/163873号に記載の方法が挙げられる。
【0077】
例えば、セルロース系高分子の水酸基の水素原子をアセチル基とするアセチル化反応としては、未修飾セルロース系繊維含有材料を膨潤させることのできる無水非プロトン性極性溶媒中に、前記未修飾セルロース系繊維含有材料を懸濁させる工程と、塩基の存在下で、前記未修飾セルロース系繊維含有材料をアセチル化剤と反応させる工程とを含む方法が挙げられる。ここで、アセチル化剤としては、酢酸の無水物又は酸塩化物等が挙げられる。また、非プロトン性極性溶媒としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。また、塩基としては、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。アシル化反応は、例えば、室温(例えば、25℃)~100℃で、原料成分を撹拌しながら行うことが好ましい。アセチル化剤の量、反応温度、反応時間等を調節することにより、アセチル化セルロース系繊維のアセチル化度を調整することができる。
【0078】
また、アセチル化反応以外の修飾方法としては、例えば、国際公開2019/163873号に記載の方法が挙げられる。
【0079】
<<修飾セルロース系繊維含有材料>>
修飾セルロース系繊維含有材料における、修飾については、前記したとおりである。修飾セルロース系繊維含有材料は、アセチル化セルロース系パルプ(アセチル化セルロース系繊維集合体)であることが好ましい。
【0080】
<<平均繊維径>>
修飾セルロース系繊維含有材料の平均繊維径は、未修飾セルロース系繊維含有材料の平均繊維径について、前記したとおりである。
【0081】
<<解繊の方法>>
アセチル化セルロース系繊維含有材料の解繊方法は、未修飾セルロース系繊維の製造方法において前記したとおりである。
【0082】
また、修飾セルロース系繊維含有材料及び熱可塑性樹脂(A)を一緒に溶融混練することで、溶融混練中に修飾セルロース系繊維含有材料が解繊(ミクロフィブリル化)されて、熱可塑性樹脂(A)中で修飾セルロース系繊維とすることができる。これにより、修飾セルロース系繊維含有材料の解繊及び熱可塑性樹脂組成物の製造を効率的に行うことができる。
【0083】
〔遷移金属化合物(C)〕
遷移金属化合物(C)は、銅(II)化合物、ニッケル(II)化合物及びコバルト(II)化合物からなる群より選択される1種以上の金属(II)化合物である。前記金属(II)化合物としては、水酸化物(II);ハロゲン化物(II)(例えば、塩化物(II)、臭化物(II)、ヨウ化物(II));カルボン酸塩(II)(例えば、酢酸塩(II)、プロピオン酸塩(II)、ステアリン酸塩(II)、安息香酸塩(II)、);無機酸塩(II)(例えば、硫酸塩(II)、リン酸塩(II)、硝酸塩(II)、ホウ酸塩(II))等が挙げられる。遷移金属化合物(C)は、水和物であってもよい。遷移金属化合物(C)は、熱可塑性樹脂組成物中への分散性の観点から、少なくとも銅(II)化合物を含むことが好ましい。
【0084】
(その他の成分(D))
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含むことができる。このような成分として、解繊助剤、水、相溶化剤、界面活性剤、多糖類(デンプン、アルギン酸等)、天然タンパク質(ゼラチン、ニカワ、カゼイン等)、無機化合物(タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属等)、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、結晶化促進剤、着色剤、可塑剤、香料、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤等が挙げられる。なお、熱可塑性樹脂組成物は、多価アルコールを含まないことが好ましい。
【0085】
<解繊助剤>
解繊助剤としては、下記一般式(1):R-CO-N(R)-R (1)〔式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1~4のアルキル基であるか、又は、R及びRは、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rは、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、又は炭素原子数2~4のアシル基である〕で表されるアミド化合物が挙げられる。
【0086】
<R及びR
炭素原子数1~4のアルキル基は、直鎖状又は分岐状であり、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。炭素原子数1~4のアルキル基は、メチル基、エチル基及びn-プロピル基であることが好ましい。
【0087】
炭素原子数3~11のアルキレン基は、直鎖状又は分岐状であり、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。炭素原子数3~11のアルキレン基は、炭素原子数3~5及び炭素原子数9~11のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数3、5、10又は11のアルキレン基であることが特に好ましい。
【0088】
及びRは、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基である場合は、一般式(1)は、Rが結合するCOと、Rが結合する-N(R)-とによって、環を形成する。前記場合のアミド化合物の具体例として、ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-アセチル-ε-カプロラクタム、ラウロラクタム、δ-バレロラクタム、N-メチル-δ-バレロラクタム、ウンデカンラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0089】
<R
炭素原子数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素原子数1~3のアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0090】
炭素原子数2~4のアシル基としては、アセチル基及びプロピオニル基等が挙げられる。炭素原子数2~4のアシル基は、アセチル基であることが好ましい。
【0091】
解繊助剤は、一般式(1)で示されるアミド化合物であって、ここで、R及びRが、互いに結合して、炭素原子数3~11のアルキレン基であり、Rが、水素原子であるアミド化合物であることが好ましい。また、解繊助剤は、ε-カプロラクタム及びラウロラクタムであることがより好ましく、ε-カプロラクタムであることが特に好ましい。
【0092】
(各成分の含有量)
熱可塑性樹脂組成物中の各成分の好ましい含有量は、以下のとおりである。
【0093】
熱可塑性樹脂(A)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、50.0質量%以上98.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以上95.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0094】
セルロース系繊維(B)の含有量は、強度の観点から、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、1.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上25.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0095】
遷移金属化合物(C)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.10質量%以上5.0質量%以下である。遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.10質量%未満である場合、耐衝撃性が劣る。また、遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、5.0質量%超である場合、金属成分がブリードアウトする可能性が高くなる。遷移金属化合物(C)の含有量は、溶融混練時の安定性の観点から、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.20質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。また、遷移金属化合物(C)の含有量は、曲げ強さがより優れる観点から、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.35質量%以上2.5質量%以下であることが特に好ましい。また、銅(II)化合物の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中への分散性の観点から、遷移金属化合物(C)の全量に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0096】
その他の成分(D)として解繊助剤が用いられる場合、解繊助剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.1質量%以上3.5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上2.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上2.2質量%以下であることが特に好ましい。その他の成分(D)の合計の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0質量%~25.0質量%であることが好ましく、0質量%~20.0質量%であることが特に好ましい。
【0097】
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、所望の熱可塑性樹脂組成物が得られる方法であれば特に限定されない。熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、以下の熱可塑性樹脂組成物の第1の製造方法~第3の製造方法が挙げられる。
【0098】
(製造方法1)
熱可塑性樹脂組成物の第1の製造方法(製造方法1)は、以下の工程(1A):
(1A)熱可塑性樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、遷移金属化合物(C)とを溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を得る工程
を含む。
【0099】
製造方法1は、熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分を一緒に溶融混練する方法である。各成分の添加の順番は、任意である。
【0100】
(製造方法2)
熱可塑性樹脂組成物の第2の製造方法(製造方法2)は、以下の工程(2A):
(2A)熱可塑性樹脂(A)と、セルロース系繊維含有材料と、遷移金属化合物(C)とを溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を得る工程
を含む。
【0101】
製造方法2は、セルロース系繊維含有材料及び熱可塑性樹脂(A)を一緒に溶融混練する方法である。製造方法2では、混練中のせん断応力によりセルロース系繊維含有材料の解繊が進行する。
【0102】
(製造方法3)
熱可塑性樹脂組成物の第3の製造方法(製造方法3)は、以下の工程(3A)及び工程(3B):
(3A)マスターバッチを得る工程であって、以下の工程(3A-1)又は工程(3A-2):
(3A-1)熱可塑性樹脂(A)と、セルロース系繊維(B)と、遷移金属化合物(C)とを溶融混練して、マスターバッチを得る工程、又は、
(3A-2)熱可塑性樹脂(A)と、セルロース系繊維含有材料と、遷移金属化合物(C)とを溶融混練して、マスターバッチを得る工程、
及び
(3B)前記マスターバッチと更なる熱可塑性樹脂(A)とを溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を得る工程と
を含む。
【0103】
製造方法3は、いわゆるマスターバッチ法である。工程(3A)は、マスターバッチ混練工程であり、工程(3B)は、希釈混練工程である。ここで、工程(3A-1)は、工程(1A)に相当する。工程(3A-2)は、工程(2A)に相当する。即ち、製造方法1及び製造方法2において、熱可塑性樹脂組成物はマスターバッチとして得られてもよい。このようにして得られたマスターバッチを更なる熱可塑性樹脂(A)によって希釈するように溶融混練することにより、所望の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0104】
(溶融混練)
製造方法1及び製造方法2における溶融混練、並びに製造方法3におけるマスターバッチを得る工程における溶融混練は、上記した解繊助剤の存在下で行うことが好ましく、上記した解繊助剤及び水の存在下で行うことが特に好ましい。解繊助剤を用いて溶融混練を行うことで、セルロース系繊維含有材料の解繊がより進行するか、セルロース系繊維(B)の凝集が抑えられることにより、熱可塑性樹脂(A)中にセルロース系繊維(B)が良好に分散した、熱可塑性樹脂組成物が容易に得られる。また、水を用いることで、セルロース系繊維(B)の分散性がより高まる傾向がある。なお、解繊助剤及び水以外のその他の成分(D)は、任意の段階で添加することができる。
【0105】
<溶融混練の温度>
溶融混練の温度は、熱可塑性樹脂(A)に応じて適宜設定することができるが、225~240℃であることが好ましい。溶融混練時の温度が前記範囲であることにより、熱可塑性樹脂(A)及びセルロース系繊維(B)を均一に混合することができる。
【0106】
(希釈混練)
工程(3B)は、希釈混練工程である。希釈混練における条件は、溶融混練において前記したとおりである。希釈混練は、解繊助剤及び/又は水を用いて行ってもよく、用いないで行ってもよい。
【0107】
<使用量>
溶融混練における成分(A)及び成分(B)の使用量は、熱可塑性樹脂組成物における各成分の含有量となるような量が挙げられる。
また、製造方法3において、マスターバッチを得る場合、成分(B)の使用量は、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、10~40質量部であることが好ましい。
溶融混練における成分(D)の使用量は、成分(B)の解繊を促進できる範囲であり、成分(B)の機能・特性が維持される程度であれば特に限定されないが、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、0~25質量部であることが好ましい。
【0108】
[用途]
熱可塑性樹脂組成物は、成形体に用いることができる。また、熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性及び曲げ強さが優れるため、熱可塑性樹脂組成物を含む成形体(熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体)は、耐衝撃性が要求される成形体、曲げ強さが要求される成形体、又は、耐衝撃性及び曲げ強さが要求される成形体であることができる。成形体の形状としては、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、棒状、粉末状、中空状等が挙げられる。
【0109】
熱可塑性樹脂組成物を含む成形体は、熱可塑性樹脂組成物を金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等の各種公知の成形方法で成形することにより製造することができる。熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂組成物を射出成形により成形して、成形体を得る工程を含む、製造方法であることが好ましい。射出成形機としては、特に限定されず、スクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機等が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融された熱可塑性樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、熱可塑性樹脂組成物、特に熱可塑性樹脂(A)の融点以上とすることが好ましく、「融点+100℃」未満とすることが特に好ましい。
【0110】
本発明に係るセルロース系繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を含む成形体は、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維のみを含有する熱可塑性樹脂組を含む成形体と比べて、軽量で、かつ強度特性に優れる。セルロース系繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を含む成形体は、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機の内装材、外装材、構造材等(例えば、ギア、プーリー、カム、軸受、ケーブルハウジング等);パソコン、テレビ、電話等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;等に使用することができる。また、セルロース系繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物は、成形体の軽量化により、資源使用量の減少に寄与する観点から、SDGs(Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標)のGoal9、13などの達成に貢献し得る。
【実施例0111】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0112】
<評価>
1)曲げ強さ:熱可塑性樹脂組成物を用いて、ISO178に従い、常温下、厚み4mmの試験片を用いて曲げ速度2mm/minで試験を行った。5個の試験片(n=5)についての平均値を求めた。
2)シャルピー衝撃強度(ノッチ無し):熱可塑性樹脂組成物を用いて、ISO179/1eUに従い、常温下、厚み4mmの試験片を用いて試験を行った。10個の試験片(n=10)についての平均値を求めた。
3)相対粘度:JIS K-6920に準拠し、熱可塑性樹脂(A)1gを96%濃硫酸100mlに溶解させて、25℃にて、相対粘度を測定した。
【0113】
<使用成分>
以下の成分を用いた。
1.熱可塑性樹脂(A):
ポリアミド6(UBE社製、相対粘度2.47)
2.セルロース系繊維(B):
アセチル化セルロース系繊維(アセチル化度0.86。平均繊維径35μmのセルロース系繊維を用いて特開2016-176052号公報に記載の方法に準じて製造した。)
3.遷移金属化合物(C):
水酸化銅(富士フィルム和光純薬社製)
4.その他の成分(D):
解繊助剤:ε-カプロラクタム(UBE社製)
水:イオン交換水
ヨウ化銅(富士フィルム和光純薬社製)
水酸化アルミニウム(富士フィルム和光純薬社製)
水酸化カルシウム(富士フィルム和光純薬社製)
【0114】
<実施例1>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
熱可塑性樹脂(A)66.3質量部と、アセチル化セルロース系繊維(B)33.2質量部と、遷移金属化合物(C)0.5質量部をブレンドして、混合物(1a)を得た。得られた混合物(1a)を、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃で溶融混練し、混合物(1a)の溶融混練物をストランド状に押し出した後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチ(MB1)のペレットを作製した。
(2)希釈混練
次に、得られたMB1のペレット43.3質量部と熱可塑性樹脂(A)56.7質量部とをブレンドして混合物(1b)を得た。得られた混合物(1b)を、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃で溶融混練し、混合物(1b)の溶融混練物をストランド状に押し出した後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0115】
<実施例2>~<実施例4>、<比較例2>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
熱可塑性樹脂組成物の全量に対するセルロース系繊維(B)及び/又は遷移金属化合物(C)の量が、表1に示す量となるように、セルロース系繊維(B)及び/又は遷移金属化合物(C)の使用量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて、各例の熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチのペレットを作製した。
(2)希釈混練
熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチのペレットを、各例で得られた熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチのペレットへ変更した以外は、実施例1と同じ方法にて、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0116】
<実施例5>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
熱可塑性樹脂(A)66質量部と、アセチル化セルロース系繊維(B)33質量部と、遷移金属化合物(C)1質量部と、ε-カプロラクタム(アセチル化セルロース系繊維100質量%に対し、200質量%)、水(アセチル化セルロース系繊維100質量%に対し、50質量%)を80℃でブレンドして、混合物(5a)を得た。得られた混合物(5a)を、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃で溶融混練し、混合物(5a)の溶融混練物をストランド状に押し出した後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチ(MB5)のペレットを作製した。
(2)希釈混練
次に、得られたMB5のペレット23.1質量部と熱可塑性樹脂(A)76.9質量部とをブレンドして混合物(5b)を得た。得られた混合物(5b)を、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃で溶融混練し、混合物(5b)の溶融混練物をストランド状に押し出した後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0117】
<実施例6>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
実施例5と同じ方法にて、熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチ(MB6)のペレットを作製した。
(2)希釈混練
次に、得られたMB6のペレット43.3質量部と熱可塑性樹脂(A)56.7質量部とをブレンドして混合物(6b)を得た。得られた混合物(6b)を、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃で溶融混練し、混合物(6b)の溶融混練物をストランド状に押し出した後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0118】
<実施例7>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
実施例5と同じ方法にて、熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチ(MB7)のペレットを作製した。
(2)希釈混練
次に、得られたMB7のペレット69.4質量部と熱可塑性樹脂(A)30.6質量部とをブレンドして混合物(7b)を得た。得られた混合物(7b)を、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃で溶融混練し、混合物(7b)の溶融混練物をストランド状に押し出した後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0119】
<比較例1>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
熱可塑性樹脂(A)66.7質量部と、アセチル化セルロース系繊維(B)33.3質量部をブレンドして、混合物(1a’)を得た。得られた混合物(1a’)を、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式ZSK32Mc)に供給し、シリンダー温度230℃で溶融混練し、混合物(1a’)の溶融混練物をストランド状に押し出した後、水冷により冷却固化し、ペレタイザーでカットすることで、熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチ(MB1’)のペレットを作製した。
(2)希釈混練
熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチを熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチ(MB1’)へ変更した以外は、実施例1と同じ方法にて、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0120】
<比較例3>~<比較例6>
(1)マスターバッチ混練(MB混練)
熱可塑性樹脂組成物の全量に対するセルロース系繊維(B)及び金属化合物の量が、表1に示す量となるように、セルロース系繊維(B)の使用量、並びに、金属化合物の種類及び使用量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて、各例の熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチのペレットを作製した。
(2)希釈混練
熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチのペレットを、各例で得られた熱可塑性樹脂組成物用マスターバッチのペレットへ変更した以外は、実施例1と同じ方法にて、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0121】
結果を表1に示す。表1におけるセルロース系繊維、金属化合物及び解繊助剤の量(重量%)は、熱可塑性樹脂組成物の全量に対する量である。
【0122】
【表1】
【0123】
表1より、実施例の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性及び曲げ強さに優れていた。
実施例1~4の比較によると、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、遷移金属化合物(C)の含有量が多くなると、耐衝撃性がより優れていた。
比較例1及び2は、遷移金属化合物(C)の含有量が、熱可塑性樹脂組成物の全量に対して、0.10質量%未満であるため、耐衝撃性が劣っていた。
比較例3~6は、遷移金属化合物(C)を含まないため、耐衝撃性が劣っていた。
実施例2及び比較例4~6の組成物において、金属化合物の量は同量である。実施例2と比較例4~6との比較により、遷移金属化合物(C)を含む実施例2は、遷移金属化合物(C)以外の金属化合物を含む比較例4~6に比べて、耐衝撃性に優れるのみではなく、曲げ強さにより優れていた。