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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082936
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】表層材及び表層材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/04 20060101AFI20240613BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240613BHJP
   D06N 7/00 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240613BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240613BHJP
   E04C 2/26 20060101ALN20240613BHJP
   E04B 1/94 20060101ALN20240613BHJP
【FI】
B32B17/04 Z
B32B7/027
D06N7/00
B32B9/00 A
B32B27/30 A
B32B27/30 102
E04C2/26 R
E04B1/94 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197165
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】則竹 慎也
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 洋平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴久
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA10
2E001GA12
2E001HA10
2E001HA33
2E001HD11
2E001HF12
2E162CA32
2E162CD04
4F055AA11
4F055CA11
4F055DA02
4F055DA13
4F055EA08
4F055EA24
4F055FA40
4F100AA19A
4F100AA19H
4F100AG00B
4F100AK01A
4F100AK21B
4F100AK21H
4F100AK25B
4F100AK25G
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA24A
4F100CA24H
4F100DD03B
4F100DD06B
4F100DG15B
4F100EH46C
4F100GB07
4F100GB08
4F100HB31C
4F100JD16
4F100JJ06
4F100JJ07
(57)【要約】
【課題】表層材からのホルムアルデヒド放散量をより低減する。
【解決手段】表層材10は、合成樹脂及び吸熱性無機材を含む骨材層1と、骨材層1の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層2とを有し、ガラス不織布はガラス繊維とバインダ樹脂とを含み、バインダ樹脂は、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方からなる。バインダ樹脂としてホルムアルデヒドを含まないアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくとも一方を用いているため、基材層2からのホルムアルデヒド放散量を低減することができ、結果的に表層材10からのホルムアルデヒド放散量を低減することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂及び吸熱性無機材を含む骨材層と、
当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、を有し、
前記ガラス不織布はガラス繊維とバインダ樹脂とを含み、当該バインダ樹脂は、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方であることを特徴とする表層材。
【請求項2】
前記バインダ樹脂は、前記アクリル樹脂及び前記ポリビニルアルコール樹脂であって、
前記バインダ樹脂中の前記アクリル樹脂の含有割合は50質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の表層材。
【請求項3】
前記吸熱性無機材は、水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の表層材。
【請求項4】
前記水酸化アルミニウムの含有量が、前記合成樹脂100質量部に対して400質量部以上であることを特徴とする請求項3に記載の表層材。
【請求項5】
前記骨材層の他方の面に、凹凸模様が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表層材。
【請求項6】
前記骨材層の他方の面に、着色による加飾層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表層材。
【請求項7】
前記骨材層の他方の面に、最表層として表面保護層を備えることを特徴とする請求項1に記載の表層材。
【請求項8】
前記骨材層は、さらに有色骨材を有することを特徴とする請求項1に記載の表層材。
【請求項9】
インクジェット印刷用の表層材であって、
前記有色骨材の粒子径は、37μm以上1000μm以下であり、且つ前記インクジェット印刷により前記骨材層に形成されるドットの径よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載の表層材。
【請求項10】
前記骨材層中の前記有色骨材の含有割合は、5質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項8に記載の表層材。
【請求項11】
前記有色骨材は、黒色骨材、白色骨材、赤色骨材、青色骨材、及び黄色骨材のうちの一つ又は複数であることを特徴とする請求項8に記載の表層材。
【請求項12】
ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施工令第108条の2第1号及び第2号に記載の要件を満たす不燃材料からなることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の表層材。
【請求項13】
合成樹脂及び吸熱性無機材を含む骨材層と、
当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、を有する表層材の製造方法であって、
前記ガラス不織布はガラス繊維とバインダ樹脂とを含み、当該バインダ樹脂としてアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方を用いることを特徴とする表層材の製造方法。
【請求項14】
前記骨材層の上に加飾層を形成する工程を有し、
前記加飾層は、インクジェット印刷により形成されることを特徴とする請求項13に記載の表層材の製造方法。
【請求項15】
合成樹脂と吸熱性無機材と有色骨材とを含む骨材層と、
当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、
を有する表層材の製造方法であって、
ガラス繊維と、バインダ樹脂としてのアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方とを用いて前記基材層としての前記ガラス不織布を形成する工程と、
前記骨材層の他方の面にインクジェット印刷により加飾を行う工程と、を備え、
前記有色骨材の粒子径は37μm以上1000μm以下であり、前記インクジェット印刷によって前記骨材層の面に形成されるドットの径が、前記有色骨材の粒子径よりも大きな径となるように、前記インクジェット印刷を行うことを特徴とする表層材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表層材及び表層材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状天然石調装飾材として、不織布に有機又は無機の混合材料を吹き付けた化粧部材が提案されている。また、これらの材料を建築基準法上の内装制限のある用途に使用するため、不燃化を向上させた表層材なども提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-79630号公報
【特許文献2】特開2021-92057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、不燃商材は基本的に屋内での使用となるため、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド放散量についての検討も必要である。
しかしながら、上記従来の方法にあっては、ホルムアルデヒド放散の観点では、十分ではなく、ホルムアルデヒド放散量をより抑制することの可能な表層材が望まれていた。
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、ホルムアルデヒド放散量をより低減することの可能な表層材及び表層材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、合成樹脂及び吸熱性無機材を含む骨材層と、当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、を有し、前記ガラス不織布はガラス繊維とバインダ樹脂とを含み、当該バインダ樹脂は、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方である表層材が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、合成樹脂及び吸熱性無機材を含む骨材層と、当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、を有する表層材の製造方法であって、前記ガラス不織布はガラス繊維とバインダ樹脂とを含み、当該バインダ樹脂としてアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方を用いる表層材の製造方法が提供される。
【0006】
さらに、本発明の他の態様によれば、合成樹脂と吸熱性無機材と有色骨材とを含む骨材層と、当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、を有する表層材の製造方法であって、ガラス繊維と、バインダ樹脂としてのアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方とを用いて前記基材層としての前記ガラス不織布を形成する工程と、前記骨材層の他方の面にインクジェット印刷により加飾を行う工程と、を備え、前記有色骨材の粒子径は37μm以上1000μm以下であり、前記インクジェット印刷によって前記骨材層の面に形成されるドットの径が、前記有色骨材の粒子径よりも大きな径となるように、前記インクジェット印刷を行う表層材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、表層材からのホルムアルデヒド放散量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る表層材の構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る表層材の他の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
また、以下に示す第一~第二の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
〔第一実施形態〕
<表層材10の構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る表層材10の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、表層材10は、骨材層1と基材層2とを備え、これらは積層されている。
骨材層1は、合成樹脂と吸熱性無機材とを少なくとも含む混合物層で形成される。なお、骨材層1には合成樹脂及び吸熱性無機材の他に、例えば、骨材、潤滑剤、分散剤、増粘剤、光安定剤、架橋剤などを含有させてもよい。
骨材層1の構成としては、吸熱性無機材を骨材又は充填材として使用し、合成樹脂を結合材としてシート化した構成とする。骨材としては、吸熱性無機材の他に、例えば、天然石又はその砕石、有色骨材、寒水砂、セラミックス砕粒から選択した材料を使用してよい。
【0011】
吸熱性無機材は、熱分解する際に吸熱する物質である。吸熱性物質としては、フッ化アルミニウム、水酸化アルミニウム、第二リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、水酸化コバルト、ほう砂、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化コバルトアンモニア錯体等を用いることが可能である。特に、吸熱性物質として、水酸化アルミニウムを用いることで、コーンカロリーメータ試験での発熱量を効率的に抑制することができる。すなわち不燃性を向上させることができる。水酸化アルミニウムとしては天然鉱物を用いてもよく、例えばベーマイト、ギブサイト、ダイアスボアを適用することができる。
骨材層1の風合いや加工性、ハンドリング性、不燃性等を考慮すると、骨材層1中の合成樹脂の含有量は、骨材層1の100質量%に対して、6質量%以上12質量%以下の範囲内とすることが好ましい。また、吸熱性無機材の含有量は、骨材層1の100質量%に対して、40質量%以上90質量%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0012】
特に吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムは、合成樹脂100質量部に対して、水酸化アルミニウムを400質量部以上添加することが好ましい。水酸化アルミニウムを400質量部以上添加することによって、難燃材料、準不燃材料及び不燃材料として建築基準法の規格上要求されている性能である総発熱量8.0MJ/m以下を達成することができる。その結果、ISO5660-1に準拠したコーンカロリ燃焼試験に準拠し、(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8.0MJ/m以下であり、(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えず、かつ(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な外側から内側まで貫通する亀裂及び穴がないという条件を全て満たす状態となり、建築基準法の規格上要求されている性能を全て満たす不燃性を実現することができる。
【0013】
骨材層1の厚さは、特に制限はないが、骨材層1の加工性や不燃性等を考慮して、1.5mm以上2.0mm以下の範囲内が好ましい。
基材層2は、耐熱性の高い繊維であるガラス繊維とバインダ樹脂とを含む。バインダ樹脂として、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方を適用することができる。
バインダ樹脂として、ポリビニルアルコール樹脂を用いる場合には、ポリビニルアルコール樹脂と共にアクリル樹脂を併用することが好ましい。つまり、ポリビニルアルコール樹脂は水溶性材料であるため、バインダ樹脂中のポリビニルアルコール樹脂の割合がある量を超えた場合には、壁面施工後の環境試験において強度低下が生じる可能性がある。これを回避するため、ポリビニルアルコール樹脂とアクリル樹脂とを併用し、さらにバインダ樹脂中のアクリル樹脂の割合を50質量%以上とすることによって、壁面施工後の強度を確保することができる。
【0014】
表層材10の骨材層1側の表面に、賦形等により凹凸模様を付与してもよい。凹凸模様を付与することで、表層材10の意匠性を向上させることができる。
また、図2に示すように表層材10の骨材層1側の表面に、加飾層3を設けても良い。加飾層3は、骨材層1の特性に応じて、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等、公知の印刷方式を用いて形成することができる。特に、表層に凹凸模様を有している場合、一般的なグラビア印刷やオフセット印刷などでは高意匠で加飾することはできないが、非接触の印刷方式であるインクジェット印刷を用いることで高意匠な加飾を施すことができる。
【0015】
さらに、表層材10の骨材層1側の最表面に、図2に示すように表面保護層4を設けても良い。表面保護層4を設けることで、耐久性や、耐候性、汚染性等の性能を向上させることができると共に、艶調整を行い、質感を向上させることができる。
表面保護層4は、例えば、無機系樹脂又は無機系ナノフィラーを添加した有機系樹脂を用いて形成される。
無機系樹脂は、例えば、ポリシロキサン、水ガラス系、ケイ酸塩系、金属アルコキシド系のうち少なくとも一つである。
無機系ナノフィラーは、例えば、Na+安定型アルカリ性のコロイダルシリカである。
【0016】
表面保護層4の硬化方式は、1液硬化方式、2液硬化方式、活性エネルギ線照射硬化方式等、公知の方式を用いることが可能である。表面保護層4のコーティング方式は、グラビアコーター、フローコーター、ナイフコーター、エアードクターコーター、リバースコーター、吹きつけ等、公知のコーティング方式を用いることが可能である。
また、有機系樹脂に添加する無機系ナノフィラーの粒径の測定方法は、レーザー回折法、動的光散乱法、BET法、シアーズ法、遠心沈降法、FFF法等、公知の測定方法を用いることが可能である。
表面保護層4の単位面積当たりの質量は、シート基材の不燃性、意匠性、耐傷性等を考慮して、3.0[g/m]以上20.0[g/m]以下の範囲内とする。
【0017】
<表層材10の製造方法>
次に、図1を参照して、表層材10を製造するための製造方法を説明する。
まず、ガラス繊維をシート状に抄造し、このシート状のガラス繊維に、バインダ樹脂を吹き付け、乾燥させることにより、ガラス不織布を作成する。これにより基材層2を得る。
次に、少なくとも合成樹脂と吸熱性無機材とを含む混合物を攪拌し、金属製のスキージを用いて、攪拌した混合物をガラス不織布(基材層2)上に塗工する。その後、混合物が塗工されたガラス不織布を100℃のオーブンで1時間加熱する。
これにより、基材層2の上に骨材層1が積層された表層材10が形成される。
なお、表層材10の骨材層1側の表面に賦形による凹凸模様を付与する場合には、攪拌した混合物をガラス不織布の上に塗工した後、例えばエンボス版や、耐熱性のエンボスシートなどを利用して混合物上に凹凸模様を形成する。
【0018】
また、表層材10の骨材層1側の表面に着色による加飾層3を形成する場合には、一般的な印刷方式で印刷する。特に、表層材10の骨材層1側の表面に凹凸模様が付与されている状態でさらに着色による加飾層3を形成するときには、インクジェット印刷を用いることで、高意匠な加飾層を形成することができる。
また、表層材10の骨材層1側の最表面に表面保護層4を形成する場合には、ロールコーターを用いて表面保護層4を塗工する。表層材10の骨材層1側の表面に凹凸模様が付与されている場合には、ロールコーターにより塗工した凹部の塗液をスキージ等を利用して掻き取るか、あるいはロールコーターのゴム硬度を低く(柔らかく)することで凹部まで塗工液を行きわたらせ、表面保護層4を形成する。その他、フローコーターによる塗工も好適に用いられる。
【0019】
<第一実施形態の効果>
(1)本発明の第一実施形態に係る表層材10では、基材層2に含まれるバインダ樹脂として、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂のいずれか、若しくはこれらの混合物を用いている。
ここで、アクリル樹脂又はポリビニルアルコール樹脂をバインダ樹脂として用いた場合、バインダ樹脂からのホルムアルデヒド放散はほとんど確認されない。これに対し、バインダ樹脂として、メラミン樹脂を用いた場合には、バインダ樹脂からのホルムアルデヒド放散が確認されてしまう。そのため、バインダ樹脂として、ホルムアルデヒド放散がほとんど確認されないアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂のうちの少なくともいずれか一方を用いることによって、表層材10全体からのホルムアルデヒド放散を低減することができる。
また、バインダ樹脂としてポリビニルアルコール樹脂を用いる場合には、アクリル樹脂と併用し、さらに、バインダ樹脂中のアクリル樹脂の割合を50質量%以上としたため表層材10の強度低下を抑制することができる。
【0020】
(2)骨材層1に含まれる吸熱性無機材として、水酸化アルミニウムを用いている。そのため、コーンカロリーメータ試験における発熱量を効率的に抑制することができる。
また、骨材層1において、水酸化アルミニウムの含有量を、合成樹脂100質量部に対して400質量部以上としたため、建築基準法の規格上要求されている性能である総発熱量8.0MJ/m以下を達成することができる。
(3)骨材層1の基材層2とは逆側の面に、賦形等により凹凸模様を付与すること、又は着色による加飾層3を形成することで、意匠性を向上させることができる。
また、凹凸模様が施されている状態で、さらに着色による加飾層3を設ける場合には、インクジェット印刷を用いて着色を行うことによって、容易に着色することができる。このとき、ホルムアルデヒドを含む界面活性剤等を必要としない顔料を用いて着色することによって、加飾層3からのホルムアルデヒドの放散を抑制することができる。
(4)骨材層1の基材層2とは逆側の面に、最表層として表面保護層4を設けることによって、耐久性や、耐候性、耐汚染性等の性能を向上させると共に、艶調整がなされることで、質感を向上させることができる。
(5)骨材層1において、合成樹脂100質量部に対して吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムの含有量を400質量部以上とし、且つ、基材層2としてガラス不織布を用いているため、表層材10の不燃性を高めることができる。
【0021】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
第二実施形態に係る表層材10aは、第一実施形態に係る表層材10において骨材層1に含まれる成分が異なる。すなわち、第二実施形態に係る表層材10aは、図1に示す表層材10と同様に、骨材層1aと基材層2aとを備え、これらは積層されている。
骨材層1aは、合成樹脂と吸熱性無機材と有色骨材とを少なくとも含む混合物層で形成される。なお、骨材層1aには合成樹脂と吸熱性無機材と有色骨材の他に、例えば、骨材、潤滑剤、分散剤、増粘剤、光安定剤、架橋剤などを含有させてもよい。
骨材層1aの構成としては、吸熱性無機材及び有色骨材を、骨材又は充填材として使用し、合成樹脂を結合材としてシート化した構成とする。また、有色骨材を用いることで、骨材層1aに、色をもたせている。骨材としては、吸熱性無機材及び有色骨材の他に、例えば、天然石又はその砕石、寒水砂、セラミックス砕粒から選択した材料を使用してよい。
【0022】
吸熱性無機材は、熱分解する際に吸熱する物質である。吸熱性物質としては、フッ化アルミニウム、水酸化アルミニウム、第二リン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、水酸化コバルト、ほう砂、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化コバルトアンモニア錯体等を用いることが可能である。特に、吸熱性物質として、水酸化アルミニウムを用いることで、コーンカロリーメータ試験での発熱量を効率的に抑制することができる。すなわち不燃性を向上させることができる。水酸化アルミニウムとしては天然鉱物を用いてもよく、例えばベーマイト、ギブサイト、ダイアスボアを適用することができる。
有色骨材は、骨材層1aの上にインクジェット印刷により模様等を形成する場合には、その粒子径が、37μm以上1000μmの範囲内の値であり、且つ、インクジェット印刷により骨材層1aの上に形成されるドットの直径よりも大きな値であることが好ましい。ハンドリング性及び不燃性等の観点から、骨材層1a中における、有色骨材の含有量は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より十分な不燃性を得る観点からすれば、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0023】
有色骨材としては、黒、白、赤、青、黄の色を発する黒色骨材、白色骨材、赤色骨材、青色骨材、黄色骨材のうちの1種又は複数種の有色骨材を適用することができる。
ここで、有色骨材とは色を有する骨材のことである。この有色骨材は、透明感の高い骨材から隠蔽力の高い骨材、光沢の有る骨材から光沢のない骨材等が挙げられる。全く無色で透明な骨材は、色を有しないため、有色骨材ではない。しかし、骨材層1aの色調に影響を与えない範囲で、無色で透明なガラス粉砕物などの骨材を加えることは、可能である。
有色骨材は、有色天然石を粉砕したものや陶磁器などを粉砕したセルベンなどがある。また、有色天然石や陶磁器を粉砕したものに人工的に着色を施したものや工業的に生産されたものなどの着色骨材がある。なお、人工的に着色する場合、ホルムアルデヒドを含む界面活性剤等を必要としない顔料を用いる等、ホルムアルデヒドを含まない材料を用いて着色する。有色天然石の粉砕物には、花崗岩,蛇紋岩,黒曜石,蛍石,カナリヤ,白玉,寒水,小桜,漆雪,美濃霞,蛇紋等の大理石粉砕粒、珪砂、天然細砂利などが挙げられる。
【0024】
さらに、シラスバルーン、パーライト、ガラスの粉砕物を発泡させたものなどの軽量骨材も挙げることができる。又、上記成分の他に有色骨材として水酸化アルミニウムやハロゲン系、リン系、三酸化アンチモン系化合物などの難燃剤などの成分を加えることも可能である。なお、珪砂や寒水砂、陶磁器砕粒等を、ホルムアルデヒドを含む人工的な顔料を用いて着色した着色骨材は、有色骨材として用いない。
骨材層1aの厚さは、特に制限はないが、骨材層1aの加工性や不燃性等を考慮して、1.5mm以上3.0mm以下の範囲内が好ましい。
基材層2aは、耐熱性の高い繊維であるガラス繊維とバインダ樹脂とを含む。バインダ樹脂として、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方を適用することができる。
【0025】
バインダ樹脂として、ポリビニルアルコール樹脂を用いる場合には、ポリビニルアルコール樹脂と共にアクリル樹脂を併用することが好ましい。つまり、ポリビニルアルコール樹脂は水溶性材料であるため、バインダ樹脂中のポリビニルアルコール樹脂の割合がある量を超えた場合には、壁面施工後の環境試験において強度低下が生じる可能性がある。これを回避するため、ポリビニルアルコール樹脂とアクリル樹脂とを併用し、さらにバインダ樹脂中のアクリル樹脂の割合を50質量%以上とすることによって、壁面施工後の強度を確保することができる。
表層材10aの骨材層1a側の表面に、賦形等により凹凸模様を付与してもよい。凹凸模様を付与することで、表層材10aの意匠性を向上させることができる。
【0026】
また、表層材10aの骨材層1a側の表面に、加飾層3aを設けても良い。加飾層3aは、骨材層1aの特性に応じて、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等、公知の印刷方式を用いて形成することができる。特に、表層に凹凸模様を有している場合、一般的なグラビア印刷やオフセット印刷などでは高意匠で加飾することはできないが、非接触の印刷方式であるインクジェット印刷を用いることで高意匠な加飾を施すことができる。
さらに、表層材10aの骨材層1a側の最表面に、表面保護層4aを設けても良い。表面保護層4aを設けることで、耐久性や、耐候性、汚染性等の性能を向上させることができると共に、艶調整を行い、質感を向上させることができる。
【0027】
なお、骨材層1a側の表面に凹凸模様を付与した状態で、さらにこの凹凸模様の上に表面保護層4aを設ける場合には、凹凸による高低差がある面の上に表面保護層4aを設けることになる。つまり、凹凸模様による面内高低差により、表面保護層4aの塗工に影響を与える可能性があるため、凹凸模様を付与する際には、後工程での、表面保護層4aの塗工性を考慮して、凹凸模様による凹凸の高低差を設定することが好ましい。
表面保護層4aは、例えば、無機系樹脂又は無機系ナノフィラーを添加した有機系樹脂を用いて形成される。
無機系樹脂は、例えば、ポリシロキサン、水ガラス系、ケイ酸塩系、金属アルコキシド系のうち少なくとも一つである。
【0028】
無機系ナノフィラーは、例えば、Na+安定型アルカリ性のコロイダルシリカである。
表面保護層4aの硬化方式は、1液硬化方式、2液硬化方式、活性エネルギ線照射硬化方式等、公知の方式を用いることが可能である。表面保護層4aのコーティング方式は、グラビアコーター、フローコーター、ナイフコーター、エアードクターコーター、リバースコーター、吹きつけ等、公知のコーティング方式を用いることが可能である。
また、有機系樹脂に添加する無機系ナノフィラーの粒径の測定方法は、レーザー回折法、動的光散乱法、BET法、シアーズ法、遠心沈降法、FFF法等、公知の測定方法を用いることが可能である。
表面保護層4aの単位面積当たりの質量は、シート基材の不燃性、意匠性、耐傷性等を考慮して、3.0[g/m]以上20.0[g/m]以下の範囲内とする。
【0029】
<表層材10aの製造方法>
次に、図1を参照して、表層材10aを製造するための製造方法を説明する。
まず、ガラス繊維をシート状に抄造し、このシート状のガラス繊維に、バインダ樹脂を吹き付け、乾燥させることにより、ガラス不織布を作成する。これにより基材層2aを得る。
次に、少なくとも合成樹脂と吸熱性無機材と有色骨材とを含む混合物を攪拌し、金属製のスキージを用いて、攪拌した混合物をガラス不織布(基材層2a)上に塗工する。その後、混合物が塗工されたガラス不織布を100℃のオーブンで1時間加熱する。
【0030】
これにより、基材層2aの上に骨材層1aが積層された表層材10aが形成される。
なお、表層材10aの骨材層1a側の表面に賦形による凹凸模様を付与する場合には、攪拌した混合物をガラス不織布の上に塗工した後、例えばエンボス版や、耐熱性のエンボスシートなどを利用して混合物上に凹凸模様を形成する。
また、表層材10aの骨材層1a側の表面にインクジェット印刷によって加飾層3aを形成する場合には、後工程でインクジェット印刷により骨材層1aに印刷したときのドットの直径よりも、有色骨材の粒子径が大きくなるように粒子径を設定する。
【0031】
また、表層材10aの骨材層1a側の表面に着色による加飾層3aを形成する場合には、一般的な印刷方式で加飾層3aを印刷する。特に、表層材10aの骨材層1側の表面に凹凸模様が付与されている状態でさらに着色による加飾層3aを形成するときには、インクジェット印刷を用いることで、高意匠な加飾層3aを形成することができる。
また、表層材10aの骨材層1a側の最表面に表面保護層4aを形成する場合には、ロールコーターを用いて表面保護層4aを塗工する。表層材10aの骨材層1a側の表面に凹凸模様が付与されている場合には、ロールコーターにより塗工した凹部の塗液を、スキージ等を利用して掻き取るか、あるいはロールコーターのゴム硬度を低く(柔らかく)することで凹部まで塗工液を行きわたらせ、表面保護層4を形成する。その他、フローコーターによる塗工も好適に用いられる。
【0032】
<第二実施形態の効果>
(1)本発明の第二実施形態に係る表層材10aでは、基材層2aに含まれるバインダ樹脂として、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂のいずれか、若しくはこれらの混合物を用いている。
ここで、アクリル樹脂又はポリビニルアルコール樹脂をバインダ樹脂として用いた場合、バインダ樹脂からのホルムアルデヒド放散はほとんど確認されない。これに対し、バインダ樹脂として、メラミン樹脂を用いた場合には、バインダ樹脂からのホルムアルデヒド放散が確認されてしまう。そのため、バインダ樹脂として、ホルムアルデヒド放散がほとんど確認されないアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂のうちの少なくともいずれか一方を用いることによって、表層材10a全体からのホルムアルデヒド放散量を低減することができる。
さらに、骨材層1aは、少なくとも合成樹脂と吸熱性無機材と有色骨材とを含んでいる。そのため、顔料等を用いることなく、骨材層1aに色を持たせることができる。
【0033】
ここで、骨材層1aに色を持たせる方法として、顔料や染料などの着色成分を用いる方法がある。これら着色成分を骨材層1aに混合する場合、その分散層を高めるために、分散剤等の界面活性剤を用いることがある。この界面活性剤には、ホルムアルデヒドを含むものもあり、すなわち、ホルムアルデヒドを含む界面活性剤により骨材層1aからホルムアルデヒドが放散される可能性がある。
これに対し、本発明の第二実施形態に係る表層材10aでは、顔料を用いず有色骨材を用いることで、骨材層1aに色を持たせるようにしている。そのため、界面活性剤を用いる必要がないため、界面活性剤を用いることによるホルムアルデヒドの放散を回避することができ、結果的に表層材10aからのホルムアルデヒド放散量を低減することができる。
また、骨材層1a内には有色骨材が分散して存在するため、表層材10aの表面に傷が入った場合、或いは表層材10aの切断面等であっても、表層材10aの表面と色合いが異なることを抑制することができる。
【0034】
(2)骨材層1aの上にインクジェット印刷により模様等を印刷する場合には、有色骨材の粒子径を、37μm以上1000μm以下であり、且つインクジェット印刷により骨材層1aに形成されるドットの径よりも大きな値とした。有色骨材の粒子径が37μm以上1000μm以下の範囲内であれば、骨材層1a内に有色骨材が分散し易く、また、有色骨材の粒子径が、インクジェット印刷により骨材層1aに形成されるドットの径よりも大きいため、インクジェット印刷を行った後でも、骨材層1a中の有色骨材を視認し易くなり、その結果、表層材10aの傷部分や、切断面等と、表層材10aの表面との色合いの違いを、より確実に抑制することができる。
(3)骨材層1a中の有色骨材の含有割合を、5質量%以上50質量%以下とし、さらに骨材層1aの基材層2aとは逆側の面に凹凸模様を付与しているため、印刷部分と非印刷部分との境界を曖昧にすることができ、意匠的に優れたものとなるインクジェット印刷に適した表層材を得ることができる。つまり、骨材層1a中の有色骨材の含有割合が5質量%未満の場合には、有色骨材が含有されているか否かを骨材層1aの色合いからは判断しにくく、有色骨材の含有割合が50質量%より多い場合には、骨材層1a中の有色骨材が多すぎて着色骨材が目立ってしまい、インクジェット印刷による印刷意匠の妨げになる。有色骨材の含有割合を、5質量%以上50質量%以下とすることで、骨材層1aに適度な色を持たせることができ、すなわちインクジェット印刷の非印刷部分に色を持たせることができる。そのため、骨材層1aの色を選定することによって、印刷部分と非印刷部分との色みの差を小さくすることができ、色みによるこれらの境界を曖昧にすることができる。その結果、印刷意匠性をより高めることができる。
【0035】
(4)有色骨材として、黒色骨材、白色骨材、赤色骨材、青色骨材、及び黄色骨材のうちの一種又は複数種を混合させることによって、より意匠性の高い骨材層1aを得ることができる。
(5)バインダ樹脂としてポリビニルアルコール樹脂を用いる場合には、アクリル樹脂と併用し、さらに、バインダ樹脂中のアクリル樹脂の割合を50質量%以上としたため表層材10aの強度低下を抑制することができる。
また、骨材層1aに含まれる吸熱性無機材として、水酸化アルミニウムを用いている。そのため、コーンカロリーメータ試験における発熱量を効率的に抑制することができる。
また、骨材層1aにおいて、水酸化アルミニウムの含有量を、合成樹脂100質量部に対して400質量部以上としたため、建築基準法の規格上要求されている性能である総発熱量8.0MJ/m以下を達成することができる。
また、骨材層1aにおいて、合成樹脂100質量部に対して吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムの含有量を400質量部以上とし、且つ、基材層2aとしてガラス不織布を用いているため、表層材10aの不燃性を高めることができる。
【0036】
(6)骨材層1aの基材層2aとは逆側の面に、賦形等により凹凸模様を付与すること、又はインクジェット印刷により加飾層を形成することで、意匠性を向上させることができる。
また、凹凸模様が施されている状態で、さらに加飾層3aを設ける場合には、インクジェット印刷を用いて着色を行うことによって、容易に加飾層3aを形成することができる。また、インクジェット印刷を施した後の表層材においても、表層材の表面と切断面との間、表層材の表面の傷がついた面と傷がない面との間における色の違いを抑制することができる。
さらに、骨材層1aの基材層2aとは逆側の面に、最表層として表面保護層を設けることによって、耐久性や、耐候性、耐汚染性等の性能を向上させると共に、艶調整がなされることで、質感を向上させることができる。
【実施例0037】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
試験用の表層材10として、実施例1~8を作成し、比較用として比較例1の表層材を作成した。同様に、試験用の表層材10aとして、実施例13~25を作成し、比較用として、比較例2の表層材を作成した。
【0038】
<表層材10の作製>
ガラス繊維をシート状に抄造し、このシート状のガラス繊維に、バインダ樹脂を吹き付け、乾燥させることにより、ガラス不織布を作製し、基材層2を得た。基材層2の坪量及びバインダ樹脂の材料は表1に示すとおりである。
次に、アクリルエマルジョン樹脂及び表1に示すその他の材料を配合して攪拌し、骨材層1となる混合物を得た。このときのアクリル樹脂量は、アクリルエマルジョン樹脂の固形分量ベースで計量した。
次に、金属製のスキージを用いて、攪拌した混合物をガラス不織布上に塗工し、その後100℃のオーブンで1時間加熱し、骨材層1となる混合物層を得た。
続いてサンドペーパにより混合物層の表面の研磨を行って、骨材坪量が2000g/mとなるように調整した。
【0039】
さらに、インクジェット加飾機を用いて研磨した面に加飾層3を印刷し、さらにロールコーターを用いて表面保護層4を形成した。なお、加飾層3の使用インキは、東京インキ株式会社製 TIC-JET(エーテル系紫外線硬化型インキ)を用いた。また、表面保護層4は、コート剤として、菊水化学工業株式会社製 ビュートップシリコンクリヤーを使用した。なお、実施例8及び比較例1には、表面保護層を設けていない。
以上により、実施例1~8及び比較例1の試験用の表層材を得た。
【0040】
(実施例1)
基材層2として、バインダ樹脂としてのポリビニルアルコール樹脂6〔g/平米〕と、ガラス繊維44〔g/平米〕とを用いてガラス不織布(坪量50〔g/平米〕)を作製した。
また、合成樹脂としてのアクリル樹脂15〔質量%〕と、吸熱性無機材としての水酸化アルミニウム45〔質量%〕と、炭酸カルシウム40〔質量%〕とを攪拌した混合物を用いて、骨材層1(坪量2000〔g/平米〕)を作製した。
さらに、骨材層1の基材層2とは逆側の面に、坪量5〔g/平米〕の加飾層3を設け、さらに加飾層3を覆うように、坪量3〔g/平米〕の表面保護層4を設けた。
これにより、実施例1の表層材を得た。
(実施例2)
バインダ樹脂として、アクリル樹脂3〔g/平米〕とポリビニルアルコール樹脂3〔g/平米〕とを用いたこと以外は、実施例1と同様の材料を用いて実施例2の表層材を作製した。
(実施例3)
バインダ樹脂として、アクリル樹脂4〔g/平米〕とポリビニルアルコール樹脂2〔g/平米〕とを用いたこと以外は、実施例1と同様の材料を用いて実施例3の表層材を作製した。
【0041】
(実施例4)
バインダ樹脂として、アクリル樹脂5〔g/平米〕とポリビニルアルコール樹脂1〔g/平米〕とを用いたこと以外は、実施例1と同様の材料を用いて実施例4の表層材を作製した。
(実施例5)
吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムの量を60〔質量%〕、炭酸カルシウムの量を25〔質量%〕としたこと以外は、実施例4と同様の材料を用いて実施例5の表層材を作製した。
(実施例6)
吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムの量を75〔質量%〕、炭酸カルシウムの量を10〔質量%〕としたこと以外は、実施例4と同様の材料を用いて実施例6の表層材を作製した。
(実施例7)
吸熱性無機材として水酸化アルミニウムに替えて、水酸化マグネシウム75〔質量%〕を用いたこと以外は、実施例6と同様の材料を用いて実施例7の表層材を作製した。
(実施例8)
表面保護層を設けなかったこと以外は、実施例5と同様の材料を用いて実施例8の表層材を作製した。
【0042】
(比較例1)
基材層として、メラミン樹脂4〔g/平米〕と、ガラス繊維44〔g/平米〕とを用いてガラス不織布(坪量48〔g/平米〕)を作製した。
また、合成樹脂としてのアクリル樹脂15〔質量%〕と、吸熱性無機材としての水酸化アルミニウム60〔質量%〕と、炭酸カルシウム25〔質量%〕とを攪拌した混合物を用いて、骨材層(坪量2000〔g/平米〕)を作製した。
表面保護層は設けなかった。これにより、比較例1の表層材を得た。
【0043】
【表1】
【0044】
<表層材10aの作製>
表層材10と同様に、ガラス繊維をシート状に抄造し、このシート状のガラス繊維に、バインダ樹脂を吹き付け、乾燥させることにより、ガラス不織布を作製し、基材層2aを得た。基材層2aの坪量及びバインダ樹脂の材料は、表2に示すとおりである。
次に、アクリルエマルジョン樹脂及び着色骨材、さらに表2に示すその他の材料を配合して攪拌し、骨材層1aとなる混合物を得た。このときのアクリル樹脂量は、アクリルエマルジョン樹脂の固形分量ベースで計量した。
次に、金属製のスキージを用いて、攪拌した混合物をガラス不織布上に塗工し、その後100℃のオーブンで1時間加熱し、骨材層1aとなる混合物層を得た。
【0045】
続いてサンドペーパにより混合物層の表面の研磨を行って、骨材坪量が2000g/mとなるように調整した。
さらに、インクジェット加飾機を用いて研磨した面に加飾層3を印刷し、さらにロールコーターを用いて表面保護層4を形成した。なお、加飾層3の使用インキは、東京インキ株式会社製 TIC-JET(エーテル系紫外線硬化型インキ)である。また、表面保護層4は、コート剤として、菊水化学工業株式会社製 ビュートップシリコンクリヤーを使用した。なお、実施例20及び比較例2には、表面保護層を設けていない。
以上により、実施例9~25及び比較例2となる試験用の表層材を得た。
【0046】
(実施例9)
基材層2aとして、バインダ樹脂としてのポリビニルアルコール樹脂6〔g/平米〕と、ガラス繊維44〔g/平米〕とを用いてガラス不織布(坪量50〔g/平米〕)を作製した。
また、合成樹脂としてのアクリル樹脂15〔質量%〕と、吸熱性無機材としての水酸化アルミニウム45〔質量%〕と、有色骨材としての色砂10〔質量%〕と、炭酸カルシウム30〔質量%〕とを攪拌した混合物を用いて、骨材層1a(坪量2000〔g/平米〕)を作製した。
また、骨材層1aの基材層2aとは逆側の面に、坪量5〔g/平米〕の加飾層3aを設け、加飾層3aを覆うように坪量3〔g/平米〕の表面保護層4aを設けた。
これにより、実施例9の表層材を得た。
なお、有色骨材(色砂)の粒子径は100〔μm〕であり、加飾層3aを作製する際のインクジェット印刷におけるドットのドット径よりも有色骨材の粒子径の方が大きかった。
(実施例10)
バインダ樹脂として、アクリル樹脂3〔g/平米〕とポリビニルアルコール樹脂3〔g/平米〕とを用いたこと以外は、実施例9と同様の材料を用いて実施例10の表層材を作製した。
【0047】
(実施例11)
バインダ樹脂として、アクリル樹脂4〔g/平米〕とポリビニルアルコール樹脂2〔g/平米〕とを用いたこと以外は、実施例9と同様の材料を用いて実施例3の表層材を作製した。
(実施例12)
バインダ樹脂として、アクリル樹脂5〔g/平米〕とポリビニルアルコール樹脂1〔g/平米〕とを用いたこと以外は、実施例9と同様の材料を用いて実施例12の表層材を作製した。
(実施例13)
吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムの量を60〔質量%〕、炭酸カルシウムの量を15〔質量%〕としたこと以外は、実施例12と同様の材料を用いて実施例13の表層材を作製した。
(実施例14)
吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムの量を75〔質量%〕、炭酸カルシウムの量を0〔質量%〕としたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例14の表層材を作製した。
【0048】
(実施例15)
吸熱性無機材として水酸化アルミニウムに替えて、水酸化マグネシウム75〔質量%〕を用いたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例15の表層材を作製した。
(実施例16)
表面保護層を設けなかったこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例16の表層材を作製した。
(実施例17)
有色骨材の粒子径を20〔μm〕としたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例17の表層材を作製した。なお、有色骨材の粒子径は、加飾層3aを作製する際のインクジェット印刷におけるドットのドット径よりも小さかった。
(実施例18)
有色骨材の粒子径を37〔μm〕としたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例18の表層材を作製した。
【0049】
(実施例19)
有色骨材の粒子径を1000〔μm〕としたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例19の表層材を作製した。
(実施例20)
有色骨材の粒子径を1100〔μm〕としたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例20の表層材を作製した。
(実施例21)
有色骨材の含有量を2〔質量%〕とし、炭酸カルシウム量を23〔質量%〕としたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例21の表層材を作製した。
(実施例22)
有色骨材の含有量を5〔質量%〕とし、炭酸カルシウム量を20〔質量%〕としたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例22の表層材を作製した。
【0050】
(実施例23)
有色骨材の含有量を50〔質量%〕とし、バインダ樹脂としてのアクリル樹脂の量を10〔質量%〕、吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムの量を40〔質量%〕とし、炭酸カルシウムの量を0〔質量%〕としたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例23の表層材を作製した。
(実施例24)
有色骨材の含有量を60〔質量%〕とし、吸熱性無機材としての水酸化アルミニウムの量を30〔質量%〕としたこと以外は、実施例23と同様の材料を用いて実施例24の表層材を作製した。
(実施例25)
有色骨材の含有量を0〔質量%〕とし、炭酸カルシウムの量を25〔質量%〕とし、有色骨材に替えて顔料を用いたこと以外は、実施例13と同様の材料を用いて実施例25の表層材を作製した。
(比較例2)
基材層として、メラミン樹脂4〔g/平米〕と、ガラス繊維44〔g/平米〕とを用いてガラス不織布(坪量48〔g/平米〕)を作製した。
また、合成樹脂としてのアクリル樹脂15〔質量%〕と、吸熱性無機材としての水酸化アルミニウム60〔質量%〕と、有色骨材(色砂)10〔質量%〕と、炭酸カルシウム15〔質量%〕とを攪拌した混合物を用いて、骨材層(坪量2000〔g/平米〕)を作製した。
表面保護層は設けなかった。これにより、比較例2の表層材を得た。
【0051】
【表2】
【0052】
上記のようにして形成した表層材10及び10aについて、ホルムアルデヒド放散量、総発熱量、水浸漬試験及びSWOM耐候試験を行った。
ホルムアルデヒド放散量は、JIS A6921に準じた方法で、ホルムアルデヒド放散量を測定した。ホルムアルデヒド放散量は、数値が低い方が好ましい。表1及び表2中、「ND」は検出限界以下であることを示す。
総発熱量は、ISO-5660に準じた方法で、試験開始20分後の総発熱量を測定した。数値が低い方が好ましい。
水浸漬試験は、25℃の温度環境下で純水に48時間浸漬した後、ガラス不織布面側の外観を確認した。外観変化があるか否か、また裏面膨潤が生じているか否かを確認した。裏面膨潤が生じている場合、実使用環境下において、湿度影響による剥離リスクが高まることを示す。
【0053】
SWOM耐候試験は、ブラックパネル温度を63℃に維持し、120分中最初の18分間に純水噴霧する条件で、サンシャインウェザーメータ試験を実施し、表面外観に以上が発生し始めるまでの時間を測定した。数値が高い方が、耐候性が高いことを表す。
なお、表層材10aについては、さらに意匠性を評価した。意匠性は、10人の被験者の目視により評価した。インクジェット印刷を施した後の表層材の表面と、この表層材を切断した断面との色の違いが少ないかどうか、印刷部分と非印刷部分との境界が曖昧であるか、を「高」、「中」、「低」の3段階で評価し、「高」及び「中」を「○」、「低」を「×」として表2中に記載した。
各試験用の表層材に対する試験結果を表1及び表2中に示す。
【0054】
<評価>
基材層を合成樹脂と吸熱性無機材を用いて形成し、骨材層をガラス繊維とバインダ樹脂とを含み、バインダ樹脂としてアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方を用いて形成することによって、基材層にメラミン樹脂を用いた従来の表層材に比較して、ホルムアルデヒド放散量を大幅に低減できること、また、顔料を用いて着色骨材層を得る場合に比較して、有色骨材を用いて着色骨材層を得る場合の方が、ホルムアルデヒド放散量を大幅に低減できることが確認できた。
【0055】
また、バインダ樹脂として、アクリル樹脂とポリビニルアルコール樹脂との混合物を用い、アクリル樹脂の含有割合を50質量%以上とすることで、従来の表層材と同等程度の水浸漬試験結果を得ることができること、合成樹脂100質量部に対して、水酸化アルミニウムを400質量部以上添加することでコーンカロリ燃焼試験において総発熱量が8.0MJ/m以下を満足すること、有色骨材の粒子径や、骨材層中の有色骨材の含有割合を適切な値に設定することで、骨材層中に有色骨材を添加した場合の意匠性の低下を抑制できることが確認できた。
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
【0056】
(1)
合成樹脂及び吸熱性無機材を含む骨材層と、
当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、を有し、
前記ガラス不織布はガラス繊維とバインダ樹脂とを含み、当該バインダ樹脂は、アクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方であることを特徴とする表層材。
(2)
前記バインダ樹脂は、前記アクリル樹脂及び前記ポリビニルアルコール樹脂であって、
前記バインダ樹脂中の前記アクリル樹脂の含有割合は50質量%以上であることを特徴とする上記(1)に記載の表層材。
(3)
前記吸熱性無機材は、水酸化アルミニウムであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の表層材。
(4)
前記水酸化アルミニウムの含有量が、前記合成樹脂100質量部に対して400質量部以上であることを特徴とする上記(3)に記載の表層材。
(5)
前記骨材層の他方の面に、凹凸模様が形成されていることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の表層材。
【0057】
(6)
前記骨材層の他方の面に、着色による加飾層が形成されていることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の表層材。
(7)
前記骨材層の他方の面に、最表層として表面保護層を備えることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の表層材。
(8)
前記骨材層は、さらに有色骨材を有することを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の表層材。
(9)
インクジェット印刷用の表層材であって、
前記有色骨材の粒子径は、37μm以上1000μm以下であり、且つ前記インクジェット印刷により前記骨材層に形成されるドットの径よりも大きいことを特徴とする上記(8)に記載の表層材。
(10)
前記骨材層中の前記有色骨材の含有割合は、5質量%以上50質量%以下であることを特徴とする上記(8)又は(9)に記載の表層材。
【0058】
(11)
前記有色骨材は、黒色骨材、白色骨材、赤色骨材、青色骨材、及び黄色骨材のうちの一つ又は複数であることを特徴とする上記(8)から(10)のいずれか一項に記載の表層材。
(12)
ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施工令第108条の2第1号及び第2号に記載の要件を満たす不燃材料からなることを特徴とする上記(1)から(11)のいずれか一項に記載の表層材。
(13)
合成樹脂及び吸熱性無機材を含む骨材層と、
当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、を有する表層材の製造方法であって、
前記ガラス不織布はガラス繊維とバインダ樹脂とを含み、当該バインダ樹脂としてアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方を用いることを特徴とする表層材の製造方法。
(14)
前記骨材層の上に加飾層を形成する工程を有し、
前記加飾層は、インクジェット印刷により形成されることを特徴とする上記(13)に記載の表層材の製造方法。
(15)
合成樹脂と吸熱性無機材と有色骨材とを含む骨材層と、
当該骨材層の一方の面に積層されたガラス不織布からなる基材層と、
を有する表層材の製造方法であって、
ガラス繊維と、バインダ樹脂としてのアクリル樹脂及びポリビニルアルコール樹脂の少なくともいずれか一方とを用いて前記基材層としての前記ガラス不織布を形成する工程と、
前記骨材層の他方の面にインクジェット印刷により加飾を行う工程と、を備え、
前記有色骨材の粒子径は37μm以上1000μm以下であり、前記インクジェット印刷によって前記骨材層の面に形成されるドットの径が、前記有色骨材の粒子径よりも大きな径となるように、前記インクジェット印刷を行うことを特徴とする表層材の製造方法。
【符号の説明】
【0059】
1、1a 骨材層
2、2a 基材層
3、3a 加飾層
4、4a 表面保護層
10、10a 表層材
図1
図2