(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082956
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】基地局装置、無線通信システム、及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 28/18 20090101AFI20240613BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20240613BHJP
【FI】
H04W28/18 110
H04W24/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197193
(22)【出願日】2022-12-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「5G基地局共用技術に関する研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「有線・無線を統合したネットワーク接続管理・制御技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 良紀
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067DD43
5K067DD46
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH21
(57)【要約】
【課題】短時間での無線環境変化に対応してMCSを決定できる。
【解決手段】目標誤り率以下の誤り率が要求されるデータパケットの送信タイミングにおいて、適用する変調符号化方式の値を決定する制御部と、前記端末装置にデータを送信する送信部と、を有し、前記制御部は、変調符号化方式の値を決定するときに使用した第1通信品質と、データ送信時における第2通信品質との所定期間における差異量の分布を取得し、前記差異分布及び前記目標誤り率に応じて、第1通信品質の補正値を決定し、前記送信部は、前記補正値で補正した通信品質により決定した変調符号化方式を用いてデータを送信する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標誤り率以下の誤り率が要求されるデータパケットの送信タイミングにおいて、適用する変調符号化方式の値を決定する制御部と、
端末装置にデータを送信する送信部と、を有し、
前記制御部は、変調符号化方式の値を決定するときに使用した第1通信品質と、データ送信時における第2通信品質との所定期間における差異量の分布を取得し、前記差異量の分布及び前記目標誤り率に応じて、前記第1通信品質の補正値を決定し、
前記送信部は、前記補正値で補正した通信品質により決定した変調符号化方式を用いてデータを送信する
基地局装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記差異量の分布の前記目標誤り率における分位点の値に応じて、前記補正値を決定すること
請求項1記載の基地局装置。
【請求項3】
前記差異量の分布は、変調符号化方式の値による条件付き分布を含み、
前記補正値を適用する前の通信品質に対応する変調符号化方式の値に対応する前記条件付き分布を用いて、前記補正値を決定する
請求項1記載の基地局装置。
【請求項4】
前記制御部は、通信品質の品質分布を取得し、前記品質分布より通信品質の下限値を算出し、前記下限値に対応する変調符号化方式のMCS下限値を算出し、前記補正値を適用した変調符号化方式が、前記MCS下限値より小さくならないよう制御する
請求項1記載の基地局装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記補正値に対して、データ再送後の誤りの有無情報を用いて求めた第二の補正量を加算する
請求項1記載の基地局装置。
【請求項6】
端末装置にデータを送信する基地局装置における通信制御方法であって、
目標誤り率以下の誤り率が要求されるデータパケットの送信タイミングにおいて、適用する変調符号化方式の値を決定する制御工程と、
前記端末装置にデータを送信する送信工程と、を有し、
前記制御工程は、変調符号化方式の値を決定するときに使用した第1通信品質と、データ送信時における第2通信品質との所定期間における差異量の分布を取得する工程と、
前記差異量の分布及び前記目標誤り率に応じて、前記第1通信品質の補正値を決定する工程を含み、
前記送信工程は、前記補正値で補正した通信品質により決定した変調符号化方式を用いてデータを送信する工程を含む
通信制御方法。
【請求項7】
端末装置と基地局装置を有する無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
目標誤り率以下の誤り率が要求されるデータパケットの送信タイミングにおいて、適用する変調符号化方式の値を決定する制御部と、
前記端末装置にデータを送信する送信部と、を有し、
前記制御部は、変調符号化方式の値を決定するときに使用した第1通信品質と、データ送信時における第2通信品質との所定期間における差異量の分布を取得し、前記差異量の分布及び前記目標誤り率に応じて、前記第1通信品質の補正値を決定し、
前記送信部は、前記補正値で補正した通信品質により決定した変調符号化方式を用いてデータを送信し、
前記端末装置は、
前記第1通信品質を前記基地局装置に送信する端末送信部と、
前記基地局装置が送信したデータを受信する端末受信部と、を有する
無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置、無線通信システム、及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G:5th Generation Mobile Communication System)において、規格化された低遅延、高信頼、大容量などの通信要件を、産業分野で活用するためには、例えば、SLA( Service Level Agreement)保証の仕組み作りが必要である。
【0003】
特に、工場の自動化や敷地内の遠隔制御など、遅延が許されないミッションクリティカルなサービスで使用されるURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)通信のSLA保証の実現が重要である。
【0004】
無線通信の制御方法については、例えば、以下の文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-186969号公報
【特許文献2】特表2010-506537号公報
【特許文献3】特開2006-325264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、工場などで運用されることが多いマルチセル環境では、他セルの通信による干渉が発生し、端末装置における受信SINR(Signal to Interference and Noise Ratio)が大きく変動する場合がある。
【0007】
受信SINRが低下すると、ブロック誤り率(BLER)が上昇し、端末装置におけるパケット受信の失敗率が上昇し、URLLCの要件を守れなくなる場合がある。
【0008】
そこで、基地局装置は、SINRが瞬時的に低下してもパケット受信に失敗しないよう、パケット送信時に適切なMCS(Modulation and channel Coding Scheme:変調符号化方式)の制御を行う必要がある。制御において発生する遅延は不可避であるが、この制御遅延時間内においてSINRが変動してしまうため、適切な適応変調符号化制御を行うことは困難である。
【0009】
そこで、一開示は、短時間での無線環境変化に対応してMCSを決定できる基地局装置、無線通信システム、及び通信制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
目標誤り率以下の誤り率が要求されるデータパケットの送信タイミングにおいて、適用する変調符号化方式の値を決定する制御部と、前記端末装置にデータを送信する送信部と、を有し、前記制御部は、変調符号化方式の値を決定するときに使用した第1通信品質と、データ送信時における第2通信品質との差異値の、所定期間における差異分布を取得し、前記差異分布及び前記目標誤り率に応じて、変調符号化方式の値に加えるオフセット値を決定し、前記送信部は、前記オフセット値を適用した変調符号化方式を用いてデータを送信する。
【発明の効果】
【0011】
一開示は、短時間での無線環境変化に対応してMCSを決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、無線通信システム10の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、基地局装置200の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、端末装置100の構成例を表す図である。
【
図4】
図4は、MCS毎の条件付きSIR変動量分布の例を示す図である。
【
図5】
図5は、SIR変動量分布の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態について説明する。
【0014】
<無線通信システム10について>
図1は、無線通信システム10の構成例を示す図である。無線通信システム10は、基地局装置200-1、2、端末装置100-1,2、ネットワーク400、及びサーバ300を有する。無線通信システム10は、複数のセルを有するマルチセル環境を実現する通信システムであって、例えば、工場や事業所において設置される。
【0015】
基地局装置200-1、2(以降、基地局装置200と呼ぶ場合がある)は、端末装置100-1,2(以降、端末装置100と呼ぶ場合がある)と無線接続し、無線通信を行う装置であり、例えば、eNodeBやgNodeBである。基地局装置200は、例えば、5GやNR(New Radio)などの通信世代に対応する。また、基地局装置200は、1台で構成されてもよいし、CU(Central Unit)とDU(Distributed Unit)などの複数台で構成されてもよい。基地局装置200-1、2は、それぞれ異なるセル(無線通信エリア)を有し、例えば、互いのセルの一部又は全部が重複するエリアに存在する。
【0016】
端末装置100は、基地局装置200と無線接続し、データパケットの送受信を行う通信装置であり、例えば、スマートフォンやタブレット端末、又は工場における無線通信機能を有する機器である。
【0017】
サーバ300は、ネットワーク400を介して基地局装置200と通信し、基地局装置200を制御する。
【0018】
ネットワーク400は、基地局装置200とサーバ300との通信を介するネットワークであり、移動通信ネットワークのコアネットワークに加え、外部のインターネットやローカルネットワークなどにより構成される。
【0019】
<基地局装置200の構成例>
図2は、基地局装置200の構成例を示す図である。基地局装置200は、CPU(Central Processing Unit)210、ストレージ220、メモリ230、無線通信回路250を有する。
【0020】
ストレージ220は、プログラムやデータを記憶する、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置である。ストレージ220は、無線通信制御プログラム221及びMCS制御プログラム222を記憶する。
【0021】
メモリ230は、ストレージ220に記憶されているプログラムをロードする領域である。また、メモリ230は、プログラムがデータを記憶する領域としても使用されてもよい。
【0022】
無線通信回路250は、端末装置100と無線通信を行う装置である。基地局装置200は、無線通信回路250を介して、端末装置100と信号(メッセージ)の送受信を行う。
【0023】
CPU210は、ストレージ220に記憶されているプログラムを、メモリ230にロードし、ロードしたプログラムを実行し、各部を構築し、各処理を実現するプロセッサである。
【0024】
CPU210は、無線通信制御プログラム221を実行することで、送信部を構築し、無線通信制御処理を行う。無線通信制御処理は、端末装置100と無線接続を行い、接続した無線を介して信号(メッセージ)の送受信を行う処理である。基地局装置200は、無線通信制御処理において、端末装置100にデータを送信する。
【0025】
CPU210は、MCS制御プログラム222を実行することで、制御部を構築し、MCS制御処理を行う。MCS制御処理は、下りデータ送信に使用するMCSを決定(制御)する処理である。MCS制御処理は、以下に示す第1方式から第4方式の処理のいずれか、またはいずれかの処理の組み合わせである。
【0026】
<端末装置100の構成例>
図3は、端末装置100の構成例を表す図である。端末装置100は、CPU110、ストレージ120、メモリ130、無線通信回路150を有する。
【0027】
ストレージ120は、プログラムやデータを記憶する、フラッシュメモリ、HDD、又はSSDなどの補助記憶装置である。ストレージ120は、無線通信プログラム121及びMCS制御関連情報送信プログラム122を記憶する。
【0028】
メモリ130は、ストレージ120に記憶されているプログラムをロードする領域である。また、メモリ130は、プログラムがデータを記憶する領域としても使用されてもよい。
【0029】
無線通信回路150は、基地局装置200と無線通信を行う装置である。端末装置100は、無線通信回路150を介して、基地局装置200と信号(メッセージ)の送受信を行う。
【0030】
CPU110は、ストレージ120に記憶されているプログラムを、メモリ130にロードし、ロードしたプログラムを実行し、各部を構築し、各処理を実現するプロセッサである。
【0031】
CPU110は、無線通信プログラム121を実行することで、受信部を構築し、無線通信処理を行う。無線通信処理は、基地局装置200と無線接続し、通信を行う処理である。端末装置100は、無線通信処理において、基地局装置200から下りデータを受信する。
【0032】
CPU110は、MCS制御関連情報送信プログラム122を実行することで、情報送信部を構築し、MCS制御関連情報送信処理を行う。MCS制御関連情報送信処理は、基地局装置200の指示に従い、MCS制御関連情報を基地局装置200に送信する処理である。MCS制御関連情報は、例えば、SINR、CQI、SIR、BLERなど、端末装置100で測定した無線状態に関する測定値を含む。
【0033】
<適応変調符号化制御方法>
基地局装置200が端末装置100に向けた下りデータ送信に使用するMCSを制御する適応変調符号化制御方式について説明する。以下、それぞれの適応変調符号化制御方式について説明する。なお、基地局装置200は、MCSの決定を、データ送信時に行う。また、基地局装置200は、MCSの決定を、例えば、URLLCなどの、BLERの目標値が高い(厳しい条件の)データ送信時に行ってもよい。
【0034】
また、基地局装置200がMCSを決定するタイミングは、例えば、MCSの決定に使用する測定値やデータを含む信号(メッセージ)の受信タイミングであってもよい。
【0035】
なお、決定したMCSは、下りのデータパケット送信時(送信タイミング)において、適用される。
【0036】
<1.第1方式について>
第1方式は、Ack(ACKnowledgement)/Nack(Non-ACKnowledgement)情報を用いたアウターループ制御を用いた方式である。基地局装置200は、端末装置100から下りリンクのSINRを受信する。そして、基地局装置200は、受信したSINRに応じて、MCSを決定し、端末装置100に通知する。基地局装置200は、例えば、最新のSINR値を、内部メモリに記憶する。
【0037】
基地局装置200は、SINR値にアウターループ制御により求めた補正値を加え、MCSを決定するが、第1方式では、この補正値を、AckやNackを受信するごとに調整する。
【0038】
γ´= γ+Δ ・・・式(1)
式(1)は、補正後のSINR値を求める式である。γ´は、補正後のSINR値、γは補正前のSINR値、Δは補正値である。
【0039】
【0040】
式(2)は、補正値の調整を行う式である。if Ack は、Ackを受信した場合を示し、if Nack はNackを受信した場合を示す。Δdown及びΔupは、調整値を示す。なお、Δdown及びΔupは、以下の式(3)の関係を有する。
【0041】
【0042】
目標BLERは、目標とする(要求される)ブロック誤り率であり、この数値に応じてΔdown及びΔupが決定される。
【0043】
第1方式では、Ack又はNackを受信するごとに、補正値の調整を逐次的に行い、適切な補正値を推定する。
【0044】
しかし、例えば、目標BLERが非常に低い場合、Δdownが非常に小さい値となり、適切な補正値となるまでに、多くのAck受信が必要となる。しかし、Ackはパケットを送信した場合に返信されてくる情報であり、適切な補正値に集束するまでに時間がかかる。特に、パケット送信間隔が大きい場合に、適切な補正値に集束するまでに時間がかかる。呼の継続時間が短い場合は、適切な補正値に集束する前に通信が終了してしまう問題もある。そこで、以降に異なる方式を提案する。
【0045】
<2.第2方式について>
第2方式は、MCS毎の条件付きSIR(signal-to-interference ratio)変動量分布を用いて、補正値(MCSオフセット)を制御する方式である。
【0046】
図4は、MCS毎の条件付きSIR変動量の累積分布の例を示す図である。
図4のグラフは、横軸にSIR変動量、縦軸に累積確率を示す。
【0047】
基地局装置200は、任意のタイミング(例えば、通信開始時、通信開始前、システム運用前、定期的など)に、選択MCSごとのSIR変動量の分布を測定し、
図4に示したようなグラフを生成する。なお、基地局装置200は、例えば、SIRをCQIから推測する。
【0048】
SIR変動量は、ある時間区間における始まりと終わりにおけるSIRの差異値である。また、SIR変動量分布は、SIRの変動量の分布であって、例えば、差異値の分布(差異分布)である。
【0049】
SIR変動量は、以下の式(4)で算出される。
【0050】
【数3】
γはSIRを示す。
は時刻tからτ時間経過したときのSIR変動量を示し、
は時刻tからτ時間経過したときのSIR、
は時刻tのSIRを示す。なお、
は、例えば、端末装置100におけるデータ受信時のSIR、
はMCS決定時のSIRを示す。kは、端末装置100の識別を示す。
【0051】
MCS毎の条件付きSIR変動量の分布は、以下の式(5)で表される。
【0052】
【0053】
mk(t)は、CQI(Channel Quality Indicator)より求めたMCS値である。また、iはMCSの番号(種別、インデックス)を示す。
図4は、MCS0~4までの条件付き分布(条件分布)を示す。
【0054】
図4に示すように、基地局装置200は、SIR変動量分布の目標BLERにおける値を所定MCSオフセットとみなす。例えば、MCSがm4で、目標BLERが10のマイナス3乗である場合、m=4のグラフと目標BLERの交点(分位点)とSIR変動量が0との幅である、Δksで示す矢印の幅が、m4のMCSに対応するMCSオフセットとなる。
【0055】
基地局装置200は、条件付き分布がSIR(MCS)に応じて異なるため、MCSに応じたオフセットを決定する。例えば、オフセットは、以下の式(6)で算出される。
【0056】
【0057】
εSは、目標BLERを示す。基地局装置200は、目標BLERを下回らない最大の分位点値をオフセットと決定する。
【0058】
基地局装置200は、以下の式(7)を用いて、MCSを決定する。
【0059】
【0060】
基地局装置200は、式(7)に示すように、オフセットを考慮し、MCSを決定(変更)する。
【0061】
第2方式は、基地局装置200において、Ack、Nack情報と比較してより多くのサンプルを取得することができるCQIを使用してMCSオフセットを算出することで、高速に算出することができ、無線状態の変化に適切に対応したMCSを選択することができる。
【0062】
<3.第3方式について>
第3方式は、SIR変動量分布を用いた、MCSオフセットを制御する方式である。第2方式は、MCS条件付き分布を使用したが、第3方式ではMCS毎の条件分布は使用しない。
【0063】
図5は、SIR変動量分布の例を示す図である。基地局装置200は、任意のタイミングに、SIR変動量の分布を測定し、
図5に示すようなグラフを生成する。なお、基地局装置200は、例えば、SIRをCQIから推測する。
【0064】
SIR変動量を算出する式は、第2方式の式(4)と同様である。
【0065】
SIR変動量の分布は、以下の式(8)で表される。
【0066】
【0067】
図5に示すように、基地局装置200は、SIR変動量分布の目標BLERにおける値を所定MCSオフセットとみなす。例えば、目標BLERが10のマイナス3乗である場合、Δkで示す矢印の幅がオフセットとなる。
【0068】
基地局装置200は、例えば、オフセットを以下の式(9)で算出する。
【0069】
【0070】
しかし、このように一律にオフセットΔkを適用すると、例えば、SIR低い領域で、必要以上にMCSが低下する可能性がある。そこで、第3方式では、CQI分布の下限値を算出し、オフセット適用後のMCSの下限を設定する。
【0071】
基地局装置200は、以下の式(10)を用いて、MCSを決定する。
【0072】
【0073】
f (qmin,k)は、CQI分布の下限値におけるCQIインデックスをMCSインデックスに変更したものである。
【0074】
図6は、CQI分布の例を示す図である。基地局装置200は、
図6に示すように、最小のCQIインデックスである「5」に対応するMCSインデックスを、式(10)における下限値として使用する。
【0075】
基地局装置200は、式(10)に示すように、オフセットを考慮し、MCSを決定(変更)する。
【0076】
第3方式は、基地局装置200において、Ack、Nack情報と比較してより多くのサンプルを取得することができるCQIを使用してMCSオフセットを算出することで、高速に算出することができ、無線状態の変化に適切に対応したMCSを選択することができる。
【0077】
<4.第4方式について>
第4方式は、第2方式又は第3方式のアウターループ制御において階層的アウターループ制御を適用する方式である。
【0078】
図7は、SIR変動量の例を示す図である。
図7は、例えば、縦軸がSIR変動量、横軸が時間を示す。
図7のSIR変動量が大きいとき、干渉が発生している可能性が高い(もしくは干渉が大きい)と考えることができる。第4の方式では、
図7に示すθ
k,sを第二の補正値(補正量)として使用する。
【0079】
例えば、第3方式のオフセットの算出式に、第二の補正値を加えた以下の式(11)で、オフセットを算出する。
【0080】
【0081】
θは、例えば、以下の式(12)又は式(14)において更新する。
【0082】
逐次更新の場合、式(12)を使用し、ブロック更新(所定数のAck/Nackの受信で更新)の場合、式(14)を使用する。
【0083】
式(12)を以下に示す。
【0084】
【0085】
if Ack(再送後)は、データ再送後のACKを受信した場合を示し、if Nack(再送後)は、データを再送した後のNackを受信した場合を示す。θdown及びθupは、調整値を示す。なお、θdown及びθupは、以下の式(13)の関係を有する。すなわち、Ack/Nackによる方式は、データ送信(ここでは再送)に誤りがあったか否か(誤りの有無情報)に応じて行われる制御である。
【0086】
【0087】
式(14)を以下に示す。
【0088】
【0089】
なお、Nは、以下の式(15)で表される。
【0090】
【0091】
これにより、基地局装置200は、第二の補正値θを考慮したMCSの設定を行うことができる。
図7に示すように、装置の個体差等の時間変動が小さい要因による制御目標とのずれの補正を、効率的に行うことができる。
【0092】
[その他の実施の形態]
各方式は、それぞれ組み合わせて使用されてもよい。
【0093】
また、基地局装置200は、例えば、無線通信システム10が設置される環境に応じて、使い分けてもよい。また、基地局装置200は、例えば、各方式を使用した結果を参照し、最も適したものや、良好であったものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0094】
10 :無線通信システム
100 :端末装置
110 :CPU
120 :ストレージ
121 :無線通信プログラム
122 :MCS制御関連情報送信プログラム
130 :メモリ
150 :無線通信回路
200 :基地局装置
210 :CPU
220 :ストレージ
221 :無線通信制御プログラム
222 :MCS制御プログラム
230 :メモリ
250 :無線通信回路
300 :サーバ
400 :ネットワーク