(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008297
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20240112BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20240112BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B41J29/38 202
B41J5/30 B
G06F3/12 303
G06F3/12 357
G06F3/12 378
G06F3/12 343
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110049
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 智基
【テーマコード(参考)】
2C061
2C187
【Fターム(参考)】
2C061AP10
2C061HK05
2C061HN04
2C061HN05
2C061HN15
2C187AD05
2C187BF42
2C187BG38
2C187BG40
2C187BG42
2C187DB14
2C187DB24
(57)【要約】
【課題】複数のテンプレートの内容変更を容易に行うことができ、利便性を向上できる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置100は、印字オブジェクトが所定の態様で割り付けられた複数のテンプレートTPを記憶可能な記憶部106と、ファームウェアプログラムを記憶した記憶部106と、複数のテンプレートTPに適用される1つの共通スクリプトCS、若しくは、複数のテンプレートTPにそれぞれ対応して適用される複数の個別スクリプトISに適用可能な1つの共通スクリプトCS、を記憶可能な記憶部106と、印刷部104と、制御部108と、を有し、テンプレートTPを用いて印字ラベルLを生成する。制御部108は、複数のテンプレートTPのうち適用対象のテンプレートTPに、又は複数の個別スクリプトISのうち適用対象の個別スクリプトISに、記憶部106に記憶された共通スクリプトCSを適用するステップS45を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字オブジェクトが所定の態様で割り付けられた複数のテンプレートを記憶可能な第1記憶部と、
ファームウェアプログラムを記憶した第2記憶部と、
前記複数のテンプレートに適用される1つの共通スクリプト、若しくは、前記複数のテンプレートにそれぞれ対応して適用される複数の個別スクリプトに適用可能な1つの共通スクリプト、を記憶可能な第3記憶部と、
印刷部と、
コントローラと、
を有し、
前記テンプレートを用いて印刷物を生成する印刷装置であって、
前記コントローラは、
前記複数のテンプレートのうち適用対象のテンプレートに、又は前記複数の個別スクリプトのうち適用対象の個別スクリプトに、前記第3記憶部に記憶された前記共通スクリプトを適用する第1適用処理を実行するよう構成されている、印刷装置。
【請求項2】
前記共通スクリプトは書き換え可能に構成されており、
前記コントローラは、さらに、
取得された変更指示に応じて前記共通スクリプトの内容を変更する変更処理を実行する、よう構成されている請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第3記憶部は、
前記複数の個別スクリプトを記憶可能であり、
前記コントローラは、さらに、
前記第3記憶部に記憶された前記複数の個別スクリプトを、対応する適用対象のテンプレートに適用する第2適用処理を実行する、よう構成されている請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記第1適用処理において、前記共通スクリプトを前記適用対象のテンプレートに適用し、
前記第2適用処理において、前記共通スクリプトが適用されたテンプレートに、その適用条件の下、当該テンプレートに対応する個別スクリプトを適用する、よう構成されている請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記共通スクリプトは、
前記個別スクリプトに含まれ得る変数の値を定義しており、
前記コントローラは、
前記第1適用処理において、前記変数を、前記共通スクリプトで定義する値に設定し、
前記第2適用処理において、前記個別スクリプトに前記変数が含まれている場合、前記共通スクリプトで定義された値を当該変数の値として対応する前記テンプレートに適用する、よう構成されている請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記第2適用処理において、前記個別スクリプトに前記変数が含まれている場合、対応する前記テンプレート内に当該変数の値に対応した文字列を生成する、よう構成されている請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
前記共通スクリプトは、
前記複数のテンプレートに含まれ得る可変オブジェクトの内容を定義しており、
前記コントローラは、
前記第1適用処理において、適用対象の前記テンプレートに前記可変オブジェクトが用いられる場合、当該可変オブジェクトが前記共通スクリプトで定義する内容となるよう設定する、よう構成されている請求項1記載の印刷装置。
【請求項8】
前記共通スクリプトは、
前記複数のテンプレートに用いられ得る可変オブジェクトの内容の変更条件を条件式で定義しており、
前記コントローラは、
前記第1適用処理において、適用対象の前記テンプレートに、前記共通スクリプトで定義する条件式を適用することで前記可変オブジェクトの内容を変更する、よう構成されている請求項1記載の印刷装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第1適用処理において、
予め前記共通スクリプトが適用されない指定がなされた第1特定テンプレート、若しくは、対応する前記個別スクリプトにより前記共通スクリプトの不適用の定義がなされた第2特定テンプレート以外の前記テンプレートに対して、前記共通スクリプトを適用する、よう構成されている請求項1記載の印刷装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第1適用処理において、
前記第1特定テンプレート以外の前記テンプレートに対して、前記共通スクリプトを適用し、
さらに、前記共通スクリプトの不適用により前記第1特定テンプレートに係わる前記個別スクリプトに未定義部分が生じる場合に、当該未定義部分を救済するための救済設定処理を実行する、よう構成されている請求項9記載の印刷装置。
【請求項11】
前記個別スクリプトにおいて、条件と各条件に対応した設定内容とからなるセットを定義しており、
前記共通スクリプトにおいて、前記個別スクリプトに含まれる前記セットにて前記設定内容が定義されるような前記条件が与えられている、請求項4記載の印刷装置。
【請求項12】
前記共通スクリプトにおいて、前記個別スクリプトで定義される変数の値の変更が禁止されている、請求項4記載の印刷装置。
【請求項13】
前記共通スクリプトにおいて、所定の文字列に関する定義がなされ、かつ、前記個別スクリプトによる前記文字列の部分抽出使用が禁止されている、請求項4記載の印刷装置。
【請求項14】
印字オブジェクトが所定の態様で割り付けられた複数のテンプレートを記憶した第1記憶部と、
ファームウェアプログラムを記憶した第2記憶部と、
前記複数のテンプレートに適用される1つの共通スクリプト、若しくは、前記複数のテンプレートにそれぞれ対応して適用される複数の個別スクリプトに適用可能な1つの共通スクリプト、を記憶した第3記憶部と、
印刷部と、
コントローラと、
を有し、
前記テンプレートを用いて印刷物を生成する印刷装置であって、
前記コントローラは、
前記複数のテンプレートのうち適用対象のテンプレートに、又は前記複数の個別スクリプトのうち適用対象の個別スクリプトに、前記第3記憶部に記憶された前記共通スクリプトを適用する第3適用処理を実行する、よう構成されている印刷装置。
【請求項15】
前記第3記憶部は、
前記複数の個別スクリプトを記憶しており、
前記コントローラは、さらに、
前記第3記憶部に記憶された前記複数の個別スクリプトを、対応する適用対象の前記テンプレートに適用する第4適用処理を実行する、よう構成されている請求項14記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンプレートを用いて印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、予め用意された複数のテンプレートのうち、ユーザが選択したテンプレートを用いて印刷を行う印刷装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のテンプレートが予め用意されるとき、通常は、各テンプレートがそれぞれ別個のファイルとして構成される。各テンプレートの内容を一斉に変更したいというニーズが生じた場合、複数のテンプレートすべてを新たな内容の新ファイルにそれぞれ作り直す必要があり、不便であった。
【0005】
本発明の目的は、複数のテンプレートの内容変更を容易に行うことができ、利便性を向上できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明の印刷装置は、印字オブジェクトが所定の態様で割り付けられた複数のテンプレートを記憶可能な第1記憶部と、ファームウェアプログラムを記憶した第2記憶部と、前記複数のテンプレートに適用される1つの共通スクリプト、若しくは、前記複数のテンプレートにそれぞれ対応して適用される複数の個別スクリプトに適用可能な1つの共通スクリプト、を記憶可能な第3記憶部と、印刷部と、コントローラと、を有し、前記テンプレートを用いて印刷物を生成する印刷装置であって、前記コントローラは、前記複数のテンプレートのうち適用対象のテンプレートに、又は前記複数の個別スクリプトのうち適用対象の個別スクリプトに、前記第3記憶部に記憶された前記共通スクリプトを適用する第1適用処理を実行するよう構成されている。
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の印刷装置は、印字オブジェクトが所定の態様で割り付けられた複数のテンプレートを記憶した第1記憶部と、ファームウェアプログラムを記憶した第2記憶部と、前記複数のテンプレートに適用される1つの共通スクリプト、若しくは、前記複数のテンプレートにそれぞれ対応して適用される複数の個別スクリプトに適用可能な1つの共通スクリプト、を記憶した第3記憶部と、印刷部と、コントローラと、を有し、前記テンプレートを用いて印刷物を生成する印刷装置であって、前記コントローラは、前記複数のテンプレートのうち適用対象のテンプレートに、又は前記複数の個別スクリプトのうち適用対象の個別スクリプトに、前記第3記憶部に記憶された前記共通スクリプトを適用する第3適用処理を実行する、よう構成されている。
【0008】
本願発明の印刷装置は、印刷部、コントローラ、第1記憶部、第2記憶部、第3記憶部を有している。第1記憶部は複数のテンプレートを記憶可能であり、印刷装置は、テンプレートを用いて印刷物を生成する。本願発明の印刷装置において、上記複数のテンプレートの内容変更を行いたい場合、1つの共通スクリプトが用いられる。第3記憶部が、共通スクリプトを記憶可能である。第3記憶部に共通スクリプトが記憶されている場合、その共通スクリプトを読み出して複数のテンプレートに対して適用することができる。あるいは、本願発明の印刷装置においては、さらに複数の個別スクリプトが用いられる場合もある。各個別スクリプトは、対応する各テンプレートにそれぞれ対応して適用される。この場合には、共通スクリプトは、複数の個別スクリプトに対して適用することができる。
【0009】
共通スクリプトを用いるために、印刷装置のコントローラでは、第1適用処理が実行される。共通スクリプトは、第1適用処理により、適用対象のテンプレート又は個別スクリプトに適用される。適用対象がテンプレートの場合、共通スクリプトの適用によって、対象となる複数のテンプレートの内容を一斉に変更することが可能となる。適用対象が個別スクリプトの場合、共通スクリプトの適用によって、対象となる複数の個別スクリプトの内容を一斉に変更し、さらにその変更によって各個別スクリプトが適用されるテンプレートの内容を一斉に変更することが可能となる。
【0010】
本願発明によれば、複数のテンプレート又は複数の個別スクリプトに適用可能な共通スクリプトを用いることで、複数のテンプレートの内容変更を容易に行うことができ、利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のテンプレートの内容変更を容易に行うことができ、利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る印刷装置を備えた印刷システムの全体構成の一例を表す図である。
【
図2】印刷装置の機能構成の一例を表すブロック図である。
【
図3】共通スクリプトを使用せずに個別スクリプトのみを実行して印刷を行う比較例におけるスクリプトの具体例を表す説明図である。
【
図4】実施形態におけるスクリプト構成の一例を表す説明図である。
【
図5】実施形態におけるスクリプト構成の他の例を表す説明図である。
【
図6】実施形態におけるスクリプト構成のさらに他の例を表す説明図である。
【
図7】共通スクリプトの内容のさらに他の例を表す図である。
【
図8】印刷装置の制御部が実行する制御手順の一例を表すフローチャートである。
【
図9】テンプレートに対して共通スクリプトを不適用とする設定を行う場合の印刷編集画面の一例を表す図、及び、個別スクリプトにより共通スクリプトを不適用とする設定を行う場合の個別スクリプトの内容の一例を表す図である。
【
図10】テンプレートによる印刷編集画面の一例を表す図、及び、未定義オブジェクトの設定画面の一例を表す図である。
【
図11】共通スクリプトの不適用設定により生じた未定義オブジェクトを手当てする変形例において、印刷装置の制御部が実行する制御手順の一例を表すフローチャートである。
【
図12】複数のテンプレートに対して設定内容を定義する条件を指定する変形例における、スクリプト構成の一例を表す図である。
【
図13】個別スクリプトでの変数の値の変更を禁止する変形例における、共通スクリプト及び個別スクリプトの内容の一例、他の例、さらに他の例を表す説明図である。
【
図14】個別スクリプトにおいて変数が演算に使用される回数を制限する変形例における、共通スクリプト及び個別スクリプトの内容の一例を表す説明図である。
【
図15】部分抽出使用を禁止する変形例における、テンプレートの一例を表す図、及び、通スクリプト及び個別スクリプトの内容の一例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<印刷システムの全体構成>
本実施形態に係る印刷装置を備えた印刷システムの全体構成の一例を
図1に示す。
【0014】
図1において、印刷システム1は、サーバ10と、操作端末20と、印刷装置100とを有する。サーバ10と、操作端末20と、印刷装置100とは、ネットワークNWを介して情報送受信可能に接続されている。
【0015】
サーバ10は、図示は省略するが、CPUと、例えばRAMやROM等からなるメモリと、ネットワークNWを介して操作端末20及び印刷装置100等との通信を行う通信制御部と、ハードディスク装置等からなり各種情報を記憶する大容量記憶装置とを有する。大容量記憶装置には、後述するテンプレート、共通スクリプト、個別スクリプト、等が記憶されている。
【0016】
操作端末20は、例えば汎用パーソナルコンピュータである。操作端末20は、
図1に示すような操作部21及び表示部22を備えたノート型パソコンでもよいし、デスクトップ型パソコン等でもよい。操作端末20は、タッチパネルを備えたスマートフォンでもよいし、タブレット端末等でもよい。操作端末20は、図示は省略するが、CPUと、例えばRAMやROM等からなるメモリと、ネットワークNWを介してサーバ10及び印刷装置100等との通信を行う通信制御部と、ハードディスク装置等からなり各種情報を記憶する大容量記憶装置とを有する。
【0017】
印刷装置100は、例えば印字ラベルLを作成するラベルプリンタである。印字ラベルLは印刷物の一例である。印刷装置100は、操作部101及び表示部102を有する。操作部101は、例えばキーボードやボタン等であり、ユーザによる入力操作を受け付ける。ユーザは、操作部101を操作することによって、種々の指示を印刷装置100に入力可能である。表示部102は、例えば液晶ディスプレイであり、種々の情報を表示可能である。
【0018】
<印刷装置の機能構成>
図2に、印刷装置100の機能構成の一例を示す。
【0019】
図2に示すように、印刷装置100は、前述の操作部101及び表示部102に加えて、搬送部103、印刷部104、切断部105、記憶部106、通信制御部107、及び制御部108を有する。これら操作部101、表示部102、搬送部103、印刷部104、切断部105、記憶部106、通信制御部107、及び制御部108は、バス109を介して情報送受信可能に接続されている。
【0020】
搬送部103は、印刷用紙を搬送する。印刷用紙は例えばロール紙である。搬送部103は、例えば印刷部104と対向して配置されるプラテンローラである。搬送部103はプラテンローラ以外のローラ等を有してもよい。
【0021】
印刷部104は、搬送部103により搬送される印刷用紙に印刷を行う。印刷部104は、例えばプラテンローラと対向して配置される印字ヘッドである。
【0022】
切断部105は、搬送部103及び印刷部104よりも印刷用紙の搬送方向の下流側に配置されている。切断部105は、印刷部104により印刷が行われた印刷用紙をカッタにより切断し、印字ラベルLを作成する。
【0023】
記憶部106は、プログラム106a、データ106b、テンプレート106c、及びスクリプト106dを記憶可能に構成されている。プログラム106aは、ファームウェアプログラムの一例である印刷プログラムと、後述の
図8及び
図11のフローチャートに示す処理を実行する処理プログラム等の各種のプログラムを含む。データ106bは、例えば印刷対象の画像データ等の各種のデータを含む。テンプレート106cは、印字オブジェクトが所定の態様でそれぞれ割り付けられた複数のテンプレートを含む。スクリプト106dは、個別スクリプトと共通スクリプトを含む。個別スクリプトは、複数のテンプレートにそれぞれ対応して個別に適用されるスクリプトである。共通スクリプトは、複数のテンプレートに適用される1つのスクリプト、又は、複数の個別スクリプトに共通に適用可能な1つのスクリプトである。「スクリプト」とは、コンピュータが理解できる言語への変換作業を省略してプロセッサが簡単に解釈実行できるようにした簡易プログラムのことである。ファームウェアプログラムは予め記憶部106に記憶されている。その他のプログラム106a、データ106b、テンプレート106c、及びスクリプト106dは、例えばサーバ10から取得されて記憶部106に記憶される。記憶部106が、第1記憶部、第2記憶部、第3記憶部の一例である。
【0024】
通信制御部107は、ネットワークNWを介してサーバ10及び操作端末20等との通信を行う。
【0025】
制御部108は、データ処理を行う装置であり、例えばCPU等のプロセッサである。制御部108は、記憶部106に記憶された各種プログラムや各種スクリプトを実行する。記憶部106のプログラム106aとこれを用いる制御部108がコントローラの一例である。
【0026】
<スクリプトの具体例>
図3~
図7に、スクリプトの具体例を示す。
図3は、本実施形態と比較するための比較例であり、共通スクリプトを使用せずに個別スクリプトのみを使用して印刷を行う場合である。
図3(a)に示すように、データベースDBには例えば各商品の品目と税別の値段が記憶されている。
図3(b)に示すように、テンプレートTPには複数の印字オブジェクトOBa~OBeが予め定められた態様でそれぞれ割り付けられている。印字オブジェクトOBaは品目の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOBbは「税別¥」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOBcは「税込¥」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOBdは税別の値段の数値に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOBeは税込の値段の数値に対応するオブジェクトである。
図3(b)では、例えば商品「チョコレート」が選択されており、印字オブジェクトOBaとして「チョコレート」の文字列が配置されている。データベースDBから「チョコレート」に対応する税別の値段の数値「100」が読み込まれ、印字オブジェクトOBdとして「100」の文字列が配置されている。
【0027】
図3(b)に示すテンプレートTPには、
図3(c)に示す個別スクリプトISが一対一で対応するように設定されている。個別スクリプトISは、税別の値段から税込の値段を算出するスクリプトである。
図3(c)では、個別スクリプトISは、税別の値段に例えば税率を表す係数「1.10」を乗じることで税込の値段を算出する。個別スクリプトISの実行により、算出結果である数値「110」の文字列が印字オブジェクトOBeとして配置されている。
【0028】
上記比較例の場合、各テンプレートTPに対して個別スクリプトISが一対一で設定されているため、各テンプレートTPの内容を一斉に変更したいというニーズが生じた場合、複数のテンプレートTP又は複数の個別スクリプトISの全てを新たな内容に作り直す必要があり、不便である。
【0029】
図4に、本実施形態におけるスクリプト構成の一例を示す。
図4に示す例では、複数のテンプレートTPにそれぞれ適用される複数の個別スクリプトIS1~IS3と、当該個別スクリプトIS1~IS3に共通に適用される1つの共通スクリプトCSが設けられている。個別スクリプトIS1~IS3は、
図3(c)に示した個別スクリプトISと同様に、税別の値段から税込の値段を算出するスクリプトである。個別スクリプトIS1~IS3では、税率を表す係数「1.10」の代わりに、税率を表す変数「Zeiritsu」が使用されている。共通スクリプトCSは、個別スクリプトIS1~IS3に含まれる変数「Zeiritsu」の値を定義している。共通スクリプトCSは書き換え可能に構成されており、ユーザによる変更指示に応じて変数「Zeiritsu」の値を変更することが可能である。個別スクリプトIS1~IS3の内容についても、ユーザによる変更指示に応じて変更可能である。
【0030】
個別スクリプトIS1~IS3及び共通スクリプトCSは、適宜のタイミングで例えばサーバ10から取得され、印刷装置100の記憶部106に記憶されている。制御部108は、個別スクリプトIS1~IS3及び共通スクリプトCSを記憶部106から読み出して取得する。制御部108は、まず共通スクリプトCSを実行して適用対象の個別スクリプトIS1~IS3に適用し、個別スクリプトIS1~IS3における変数「Zeiritsu」を、共通スクリプトCSで定義する値に設定する。
図4では例えば「1.10」に定義されている。次に制御部108は、共通スクリプトCSで定義された値を個別スクリプトIS1~IS3に含まれる変数「Zeiritsu」の値として、個別スクリプトIS1~IS3を実行して対応するテンプレートTPに適用する。制御部108は、個別スクリプトIS1~IS3の実行により、対応するテンプレートTP内に当該変数の値に対応した文字列を生成する。共通スクリプトCSにより、複数の個別スクリプトIS1~IS3中の税率を表す変数の値を一斉に設定することができる。
【0031】
図5に、本実施形態におけるスクリプト構成の他の例を示す。
図5に示す例では、複数のテンプレートTP1~TP3に適用される1つの共通スクリプトCSが設けられている。
図5に示すように、テンプレートTP1には、複数の印字オブジェクトOB1a~OB1cが予め定められた態様でそれぞれ割り付けられている。印字オブジェクトOB1aはバーコードの図柄に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB1bは年号である「平成」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB1cは年月日である「30年4月6日」の文字列に対応するオブジェクトである。
【0032】
テンプレートTP2には、複数の印字オブジェクトOB2a~OB2dが予め定められた態様でそれぞれ割り付けられている。印字オブジェクトOB2aは部門である「営業部」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB2bはシリアルナンバーである「No.123456」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB2cは年号である「平成」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB2dは年月日である「2年12月9日」の文字列に対応するオブジェクトである。
【0033】
テンプレートTP3には、複数の印字オブジェクトOB3a~OB3dが予め定められた態様でそれぞれ割り付けられている。印字オブジェクトOB3aは年号である「平成」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB3bは年月日である「12年7月7日」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB3cは品名である「あさりときのこ」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB3dは重量である「40g」の文字列に対応するオブジェクトである。
【0034】
共通スクリプトCSは、個別スクリプトIS1~IS3に含まれる年号の文字列を表す印字オブジェクトOB1b,OB2c,OB3aの内容を「令和」として定義している。印字オブジェクトOB1b,OB2c,OB3aが可変オブジェクトの一例である。共通スクリプトCSは書き換え可能に構成されており、ユーザによる変更指示に応じて内容を変更することが可能である。共通スクリプトCSは、適宜のタイミングで例えばサーバ10から取得され、印刷装置100の記憶部106に記憶されている。制御部108は、共通スクリプトCSを記憶部106から読み出して取得し、複数のテンプレートTP1~TP3に適用する。制御部108は、テンプレートTP1~TP3に含まれる印字オブジェクトOB1b,OB2c,OB3aが共通スクリプトCSで定義する内容である「令和」となるように設定する。これにより、複数のテンプレートTP1~TP3中の年号を「平成」から「令和」に一斉に変更することができる。
【0035】
図6に、本実施形態におけるスクリプト構成のさらに他の例を示す。
図6に示す例では、テンプレートTP3には、前述の印字オブジェクトOB3a~OB3dに加えて、印字オブジェクトOB3e~OB3hが予め定められた態様でそれぞれ割り付けられている。印字オブジェクトOB3eは「税別¥」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB3fは「税込¥」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB3gは税別の値段の数値に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOB3hは税込の値段の数値に対応するオブジェクトである。テンプレートTP3に対応して個別スクリプトIS3が設定されている。個別スクリプトIS3は、税別の値段から税込の値段を算出する。共通スクリプトCSは、個別スクリプトIS3に含まれる変数「Zeiritsu」の値を定義する。また共通スクリプトCSは、個別スクリプトIS1~IS3に含まれる年号の文字列を表す印字オブジェクトOB1b,OB2c,OB3aの内容を「令和」として定義する。
【0036】
制御部108は、まず共通スクリプトCSを実行して適用対象のテンプレートTP1~TP3に適用する。これにより、テンプレートTP1~TP3における印字オブジェクトOB1b,OB2c,OB3aの「平成」が、共通スクリプトCSで定義する内容「令和」に変更される。制御部108は、共通スクリプトCSを実行して個別スクリプトIS3に適用する。共通スクリプトCSの実行により、個別スクリプトIS3に含まれる変数「Zeiritsu」が共通スクリプトCSで定義する値に設定される。制御部108は、共通スクリプトCSが適用されたテンプレートTP3に、その適用条件の下、当該テンプレートTP3に対応する個別スクリプトIS3を適用する。これにより、個別スクリプトIS3は、共通スクリプトCSで定義された値を変数「Zeiritsu」の値として、テンプレートTPに適用される。
【0037】
図7に、共通スクリプトCSのさらに他の例を示す。
図7に示すように、共通スクリプトCSは、複数のテンプレートTP1~TP3に含まれる印字オブジェクトOB1b,OB2c,OB3aの内容の変更条件を条件式で定義している。制御部108は、適用対象のテンプレートTP1~TP3に、共通スクリプトCSで定義する条件式を適用することで印字オブジェクトOB1b,OB2c,OB3aの内容を変更する。
図7に示す例では、共通スクリプトCSは、変更条件として印字オブジェクトの内容が「平成」だった場合を条件式で定義し、「平成」だった場合には「令和」へ変更する。この場合、処理対象となる印字オブジェクトOB1b,OB2c,OB3aを逐一指定しなくても、共通スクリプトCSの中でそういった文字列を持つオブジェクトを検索して変更することができる。
【0038】
<制御手順>
図8に、上記の処理を実現するために印刷装置100の制御部108が実行する制御手順の一例を示す。例えば操作端末20又は印刷装置100において印字ラベルLの作成指示があった場合に、制御部108は本フローチャートを開始する。
【0039】
ステップS5では、制御部108は、操作端末20の表示部22にテンプレートTPの一覧を表示する。一覧は、例えばテンプレートTPの名称のリストでもよいし、サムネイル等の画像でもよい。制御部108は、テンプレートTPの一覧を印刷装置100の表示部102に表示してもよい。
【0040】
ステップS10では、制御部108は、ユーザにより特定のテンプレートTPが選択されたか否かを判定する。テンプレートTPの選択は、操作端末20の操作部21を介して行われてもよいし、印刷装置100の操作部101を介して行われてもよい。制御部108は、テンプレートTPが選択されるまで本ステップS10を繰り返し(ステップS10:No)、テンプレートTPが選択された場合には(ステップS10:Yes)、次のステップS15に移行する。
【0041】
ステップS15では、制御部108は、上記ステップS10で選択されたテンプレートTPを取得する。制御部108は、テンプレートTPを例えばサーバ10から取得してもよい。既にテンプレートTPがサーバ10から取得されて記憶部106に記憶されている場合には、制御部108はテンプレートTPを記憶部106から読み出して取得してもよい。
【0042】
ステップS20では、制御部108は、上記ステップS15で取得したテンプレートTPに対応する個別スクリプトISを取得する。制御部108は、個別スクリプトISを例えばサーバ10から取得してもよい。既に個別スクリプトISがサーバ10から取得されて記憶部106に記憶されている場合には、制御部108は個別スクリプトISを記憶部106から読み出して取得してもよい。
【0043】
ステップS25では、制御部108は、上記ステップS15で取得したテンプレートTPに対応する共通スクリプトCSを取得する。テンプレートTPに共通スクリプトCSが対応付けされていない場合には、制御部108は、上記ステップS20で取得した個別スクリプトISに対応する共通スクリプトCSを取得する。制御部108は、共通スクリプトCSを例えばサーバ10から取得してもよい。既に共通スクリプトCSがサーバ10から取得されて記憶部106に記憶されている場合には、制御部108は共通スクリプトCSを記憶部106から読み出して取得してもよい。
【0044】
ステップS30では、制御部108は、ユーザにより共通スクリプトCS又は個別スクリプトISの編集画面が開かれ、編集が行われたか否かを判定する。制御部108は、編集が行われていない場合には(ステップS30:No)、後述のステップS40に移行する。制御部108は、編集が行われた場合には(ステップS30:Yes)、次のステップS35に移行する。
【0045】
ステップS35では、制御部108は、上記ステップS30で入力された変更指示に応じて共通スクリプトCS又は個別スクリプトISの内容を変更する。当該ステップS35が変更処理の一例である。
【0046】
ステップS40では、制御部108は、ユーザにより印刷の実行指示がなされたか否かを判定する。印刷の実行指示は、操作端末20の操作部21を介して行われてもよいし、印刷装置100の操作部101を介して行われてもよい。制御部108は、印刷の実行指示がなされていない場合には(ステップS40:No)、上記ステップS30に戻る。制御部108は、印刷の実行指示がなされた場合には(ステップS40:Yes)、次のステップS45に移行する。
【0047】
ステップS45では、制御部108は、上記ステップS25で取得した共通スクリプトCSを実行し、適用対象のテンプレートTP又は個別スクリプトISに適用する。当該ステップS45が第1適用処理の一例である。
【0048】
ステップS50では、制御部108は、上記ステップS20で取得した個別スクリプトISを実行し、適用対象のテンプレートTPに適用する。当該ステップS50が第2適用処理の一例である。
【0049】
ステップS55では、制御部108は、上記ステップS45及びステップS50で実行した共通スクリプトCS及び個別スクリプトISの適用により、対応するテンプレートTP内に共通スクリプトCS及び個別スクリプトISの適用に対応した文字列を生成し、印刷データを生成する。
【0050】
ステップS60では、制御部108は、上記ステップS55で生成した印刷データを印刷部104により印刷用紙に印刷し、印字ラベルLを作成する。以上により本フローチャートを終了する。
【0051】
前述の
図5に示す場合のように個別スクリプトISを実行しない場合には、上記ステップS20及びステップS50は省略される。
【0052】
<実施形態の効果>
印刷装置100は、印刷部104、制御部108、記憶部106を有している。記憶部106は複数のテンプレートTPを記憶可能であり、印刷装置100は、テンプレートTPを用いて印字ラベルLを生成する。印刷装置100において、複数のテンプレートTPの内容変更を行いたい場合、共通スクリプトCSが用いられる。記憶部106が共通スクリプトCSを記憶可能である。記憶部106に共通スクリプトCSが記憶されている場合、その共通スクリプトCSを読み出して複数のテンプレートTPに対して適用することができる。あるいは、印刷装置100においては、さらに複数の個別スクリプトISが用いられる場合もある。各個別スクリプトISは、対応する各テンプレートTPにそれぞれ対応して適用される。この場合には、共通スクリプトCSは、複数の個別スクリプトIPに対して適用することができる。
【0053】
共通スクリプトCSを用いるために、印刷装置100の制御部108は、ステップS45を実行する。共通スクリプトCSは、ステップS45により、適用対象のテンプレートTP又は個別スクリプトISに適用される。適用対象がテンプレートTPの場合、共通スクリプトCSの適用によって、対象となる複数のテンプレートTPの内容を一斉に変更することが可能となる。適用対象が個別スクリプトISの場合、共通スクリプトCSの適用によって、対象となる複数の個別スクリプトISの内容を一斉に変更し、さらにその変更によって各個別スクリプトISが適用されるテンプレートTPの内容を一斉に変更することが可能となる。
【0054】
本実施形態によれば、複数のテンプレートTP又は複数の個別スクリプトISに適用可能な共通スクリプトCSを用いることで、複数のテンプレートTPの内容変更を容易に行うことができ、利便性を向上することができる。
【0055】
また、本実施形態では特に、共通スクリプトCSの内容をユーザが適宜に変更することができる。本実施形態によれば、複数のテンプレートTPの内容変更を容易に行うことができるので、利便性を向上することができる。
【0056】
また、本実施形態では特に、各テンプレートTPに対し個別スクリプトISが個別に適用される場合がある。この場合でも、共通スクリプトCSで各個別スクリプトISの内容を一斉に変更することで、各個別スクリプトISが適用されるテンプレートTPの内容を一斉に変更することができる。
【0057】
また、本実施形態では特に、共通スクリプトCSがテンプレートTPに対して適用される場合には、先に共通スクリプトCSがテンプレートTPに対して適用され、その適用条件の下、当該テンプレートTPに対して対応する個別スクリプトISが適用される。共通スクリプトCSが個別スクリプトISに対して適用される場合には、先に共通スクリプトCSが個別スクリプトISに対して適用され、その適用後の個別スクリプトISがテンプレートTPに対して適用される。本実施形態によれば、共通スクリプトCSにおける定義内容を複数のテンプレートTPに反映させることができ、複数のテンプレートTPの内容変更を容易に行うことができる。
【0058】
また、本実施形態では特に、共通スクリプトCSにより個別スクリプトISの変数の値を設定することができる。本実施形態によれば、その設定後の個別スクリプトISを介して複数のテンプレートTPの内容変更を容易に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態では特に、共通スクリプトCSによる変数の値の設定後の個別スクリプトISにより、テンプレートTP内に変数の値に対応した文字列を生成することができる。本実施形態によれば、ユーザの利便性を向上することができる。
【0060】
また、本実施形態では特に、共通スクリプトCSによりテンプレートTP中の可変オブジェクトが共通スクリプトCSで定義する内容となるように設定することができる。本実施形態によれば、複数のテンプレートTPの内容変更を容易に行うことができる。
【0061】
また、本実施形態では特に、共通スクリプトCSにおいて定義する条件式を、各テンプレートTPに適用することで、複数のテンプレートTPの内容変更を容易に行うことができる。本実施形態によれば、処理対象となる印字オブジェクトを逐一指定しなくても、共通スクリプトCSの中で特定の文字列を持つオブジェクトを検索して変更することができる。
【0062】
<変形例>
上記実施形態は、以上説明した内容に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例について順に説明する。
【0063】
<共通スクリプトの不適用を設定する場合>
共通スクリプトを不適用とする設定を可能としてもよい。
【0064】
図9(a)及び
図9(b)に、共通スクリプトCSを不適用とする設定方法の具体例を示す。
図9(a)は、テンプレートTPに対して共通スクリプトCSを不適用とする設定を行う場合の印刷編集画面の一例である。当該印刷編集画面は、例えば操作端末20の表示部22に表示される。
図9(a)に示すように、印刷編集画面には、テンプレートTP内に共通スクリプトCS又は個別スクリプトISの適用に対応した文字列が生成された印刷データが表示されている。ユーザによる適宜の操作により、メニューウィンドウWD1が表示される。メニューウィンドウWD1には、「共通スクリプト設定」を含む複数の設定メニューが選択可能に表示されている。「共通スクリプト設定」が選択されると、設定ウィンドウWD2が表示される。設定ウィンドウWD2には、共通スクリプトの実行の有無を設定するためのチェックボックスCB1が表示されている。「実行しない」のチェックボックスCB1がチェックされることで、印刷編集画面に表示されたテンプレートTPに対して共通スクリプトCSを適用しないことを設定できる。設定ウィンドウWD2により共通スクリプトCSを適用しないことが設定されたテンプレートTPが第1特定テンプレートの一例である。
【0065】
図9(b)は、個別スクリプトISにより共通スクリプトCSを不適用とする設定を行う場合の個別スクリプトISの内容の一例である。
図9(b)に示すように、個別スクリプトISでは共通スクリプトCSの不適用の定義がなされている。当該個別スクリプトISの適用により、対応するテンプレートTPに対して共通スクリプトCSを適用しないことを設定できる。個別スクリプトISにより共通スクリプトCSを適用しないことが設定されたテンプレートTPが第2特定テンプレートの一例である。
【0066】
本変形例では、制御部108は、設定ウィンドウWD2により共通スクリプトCSを適用しないことが設定されたテンプレートTP、又は、個別スクリプトISにより共通スクリプトCSを適用しないことが設定されたテンプレートTP以外のテンプレートTPに対して、共通スクリプトCSを適用する。
【0067】
本変形例によれば、共通スクリプトCSによる内容変更を例外的に実行させないテンプレートTPをユーザが所望に設定可能となるので、さらに利便性を向上することができる。例えば、共通スクリプトCSで値引き率を定義している場合に、値引きをしたくない商品がある場合、その商品に対応するテンプレートTPに対して共通スクリプトCSの不適用を設定することで、上記のような場合にも柔軟に対応することができる。
【0068】
<共通スクリプトの不適用設定により生じた未定義オブジェクトを手当てする場合>
上述した不適用の設定により共通スクリプトCSを実行させない場合、対応する個別スクリプトISに未定義オブジェクトが生じる場合がある。例えば前述の
図4に示すスクリプト構成において、共通スクリプトCSを実行させない場合、個別スクリプトIS1~IS3における変数「Zeiritsu」の値が未定義となる。このように共通スクリプトの不適用設定により未定義オブジェクトが生じる場合に、当該未定義オブジェクトが手当てされるような設定を可能としてもよい。
【0069】
図10(a)及び
図10(b)に、未定義オブジェクトの設定方法の具体例を示す。
図10(a)はテンプレートによる印刷編集画面の一例である。
図10(a)に示すように、印刷編集画面においてユーザが適宜の操作を行うと、メニューウィンドウWD3が表示される。メニューウィンドウWD3には、「未定義オブジェクト設定」を含む複数の設定メニューが選択可能に表示されている。「未定義オブジェクト設定」が選択されると、未定義オブジェクトの設定画面が表示される。
図10(b)は未定義オブジェクトの設定画面の一例である。
図10(b)に示すように、設定ウィンドウWD4には、エラーの実行の有無を設定するためのチェックボックスCB2と、数値入力部30と、文字列入力部31と、「OK」ボタン32とが表示されている。チェックボックスCB2にチェックがされず、数値入力部30又は文字列入力部31に入力が行われて「OK」ボタン32が操作された場合には、数値入力部30に入力された数値又は文字列入力部31に入力された文字列により未定義オブジェクトが定義される。チェックボックスCB2にチェックがされて「OK」ボタン32が操作された場合には、未定義オブジェクトが生じた場合にはエラー処理が実行され、印刷物の作成が行われない。この場合、数値入力部30及び文字列入力部31は例えばグレーアウトして入力できない状態となる。
【0070】
図11に、上記の処理を実現するために印刷装置100の制御部108が実行する制御手順の一例を示す。
図11に示すフローチャートは、設定ウィンドウWD4においてチェックボックスCB2にチェックがされず、数値入力部30又は文字列入力部31に入力が行われた場合の制御手順である。
図11において、前述の
図8と同様の手順には同符号を付して適宜説明を省略する。
【0071】
ステップS5~ステップS40は、前述の
図8と同様である。ステップS41では、制御部108は、処理対象であるテンプレートTPに対して共通スクリプトCSの不適用が設定されているか否かを判定する。制御部108は、共通スクリプトCSの不適用が設定されていないと判定した場合には(ステップS41:No)、ステップS45に移行する。制御部108は、共通スクリプトCSの不適用が設定されていると判定した場合には(ステップS41:Yes)、ステップS42に移行する。
【0072】
ステップS42では、制御部108は、共通スクリプトCSの不適用により個別スクリプトISにおいて未定義のオブジェクトが生じたか否かを判定する。制御部108は、未定義のオブジェクトが生じていない場合には(ステップS42:No)、後述のステップS44に移行する。制御部108は、未定義のオブジェクトが生じた場合には(ステップS42:Yes)、次のステップS43に移行する。
【0073】
ステップS43では、制御部108は、上述した設定ウィンドウWD4の数値入力部30に入力された数値又は文字列入力部31に入力された文字列により、未定義オブジェクトを定義する。これにより、未定義部分が救済される。当該ステップS43が救済設定処理の一例である。
【0074】
ステップS44では、制御部108は、上記ステップS43において未定義オブジェクトについて定義が行われた個別スクリプトISを実行し、適用対象のテンプレートTPに適用する。その後、ステップS55に移行する。
【0075】
ステップS45~ステップS60は、前述の
図8と同様であるため説明を省略する。上記フローチャートのうち少なくとも上記ステップS43を含む処理手順は、ファームウェアプログラム以外の所定プログラムに基づいて実行されてもよいし、ファームウェアプログラムに基づいて実行されてもよい。
【0076】
本変形例によれば、共通スクリプトCSを実行しない例外設定をした場合に、個別スクリプトISに未定義部分が発生してエラーが生じるのを防止できるので、さらに利便性を向上することができる。
【0077】
<複数のテンプレートに対して設定内容を定義する条件を指定する場合>
共通スクリプトCSにより、複数のテンプレートTPに対して設定内容を定義する条件を指定してもよい。
【0078】
図12に、本変形例におけるスクリプト構成の一例を示す。
図12に示す例では、複数のテンプレートTP1~TP3にそれぞれ適用される複数の個別スクリプトIS1~IS3と、当該個別スクリプトIS1~IS3に共通に適用される1つの共通スクリプトCSが設けられている。個別スクリプトIS1~IS3において、条件と各条件に対応した設定内容とからなるセットを定義しており、共通スクリプトCSにおいて、個別スクリプトIS1~IS3に含まれるセットにて設定内容が定義されるような条件が与えられている。具体的には、
図12に示すように個別スクリプトIS1~IS3は、例えばテンプレートTP1~TP3における文字列の書体を定義するスクリプトである。個別スクリプトIS1は、フラグが1の場合にはゴシック体、フラグが1以外の場合には明朝体とするようにテンプレートTP1の書体を定義する。個別スクリプトIS2は、フラグが2の場合にはゴシック体、フラグが2以外の場合には楷書体とするようにテンプレートTP2の書体を定義する。個別スクリプトIS3は、フラグが3の場合にはゴシック体、フラグが3以外の場合には行書体とするようにテンプレートTP3の書体を定義する。共通スクリプトCSは、フラグの値を定義する。共通スクリプトCSは書き換え可能に構成されており、ユーザによる変更指示に応じてフラグの値を変更することが可能である。
【0079】
制御部108は、まず共通スクリプトCSを実行してテンプレートTP1~TP3に適用する。これにより、テンプレートTP1~TP3に適用するフラグが定義される。制御部108は、その適用条件の下、テンプレートTP1~TP3に対応する個別スクリプトIS1~IS3を実行して当該テンプレートTP1~TP3に適用する。これにより、個別スクリプトIS1~IS3は、共通スクリプトCSで定義されたフラグの値に基づく設定内容とするように、テンプレートTP1~TP3に適用される。
図12では例えばフラグが1であるため、テンプレートTP1の書体はゴシック体、テンプレートTP2の書体は楷書体、テンプレートTP3の書体は行書体に設定されている。
【0080】
本変形例によれば、個別スクリプトIS1~IS3で定義されるセットに含まれる条件を共通スクリプトCSから与えることができる。各条件に対応する設定内容を個別スクリプトIS1~IS3によって実行し、複数のテンプレートTP1~TP3の内容変更を容易に行うことができる。共通スクリプトCSからの指令に対して各テンプレート毎に別の変化をさせることができるので、複数のテンプレートへの指令の柔軟さを向上できる。
【0081】
<個別スクリプトでの変数の値の変更を禁止する場合>
共通スクリプトCSでは、例えば税率や割引率など、勝手に変更されては困る重要な情報が定義される場合がある。そこで共通スクリプトCSで定義する特定の変数の値を、個別スクリプトISにおいて勝手に変更されないように、共通スクリプトCSにおいて個別スクリプトISでの特定の変数の値の変更を禁止してもよい。
【0082】
図13(a)に、本変形例の共通スクリプトCS及び個別スクリプトISの内容の一例を示す。
図13(a)に示すように、共通スクリプトCSは変数「Zeiritsu」の値を定義すると共に、当該変数の値の変更を禁止する。この場合に、個別スクリプトISにおいて変数「Zeiritsu」の値が異なる値に設定された場合、エラー処理が実行され、印刷物の作成が行われない。
【0083】
本変形例によれば、先に実行される共通スクリプトCSにおいて、後から実行される個別スクリプトISで変数の値を勝手に変えられないようにしておくことができる。
【0084】
上記のように、共通スクリプトCSにおいて変数「Zeiritsu」の値の変更を禁止した場合でも、例えば個別スクリプトISにおいて変数「Zeiritsu」を使用せずに直接数値で指定することが可能である。そこで
図13(b)に示すように、個別スクリプトISにおいて変数「Zeiritsu」が全く使用されなかった場合に、エラー処理を実行してもよい。これにより、上記のような改ざんの抜け道を塞ぐことができる。
【0085】
上記のように、個別スクリプトISにおいて変数「Zeiritsu」が使用されなかった場合にエラー処理を実行する場合でも、例えば個別スクリプトISにおいて変数を意味のない使い方で使用することで、エラーを回避することが可能である。「意味のない使い方」とは、例えば印刷結果に影響が出ない使われ方、すなわち印刷されるオブジェクトの内容変更に直接つながらない使われ方のことである。そこで
図13(c)に示すように、個別スクリプトISにおいて変数「Zeiritsu」が意味のない使い方で使用された場合に、エラー処理を実行してもよい。これにより、上記のような改ざんの抜け道を塞ぐことができる。
【0086】
<個別スクリプトにおいて変数が演算に使用される回数を制限する場合>
共通スクリプトCSで定義する特定の変数を、個別スクリプトISにおいて不正に使用されないように、共通スクリプトCSにおいて変数が演算に使用される回数を制限してもよい。
【0087】
図14に、本変形例の共通スクリプトCS及び個別スクリプトISの内容の一例を示す。
図14に示すように、共通スクリプトCSは変数「Zeiritsu」の値を定義すると共に、当該変数を演算に使用する回数を例えば1回に制限する。この場合に、個別スクリプトISにおいて例えば税別の値段の数値に変数「Zeiritsu」を乗じると共に、さらに係数「1.50」を乗じることで変数「Zeiritsu」が不正に使用される場合を考える。この場合、変数「Zeiritsu」に対し、税別の値段の数値との乗算と、係数「1.50」との乗算の2回の演算が実行されるため、エラー処理が実行され、印刷物の作成が行われない。
【0088】
本変形例によれば、共通スクリプトCSで定義される特定の変数が、個別スクリプトISにおいて不正に使用されることを防止できる。
【0089】
<部分抽出使用を禁止する場合>
共通スクリプトCSで定義する特定の変数を、個別スクリプトISにおいて部分的に抽出することで不正に使用されないように、共通スクリプトCSにおいて変数の部分抽出使用を禁止してもよい。
【0090】
図15(a)に、本変形例のテンプレートTPの一例を示す。
図15(a)に示すように、テンプレートTPには複数の印字オブジェクトOBa~OBbが予め定められた態様でそれぞれ割り付けられている。印字オブジェクトOBaは「割引10%」の文字列に対応するオブジェクト、印字オブジェクトOBbは「星マーク」の画像に対応するオブジェクトである。
図15(b)に示すように、テンプレートTPに対応する共通スクリプトCSにおいて、所定の文字列に関する定義がなされ、かつ、個別スクリプトISによる文字列の変更が禁止されている。
図15(b)では、例えば割引率の数値の文字列が「10%」として定義されると共に、当該割引率の数値の文字列の変更が禁止されている。
【0091】
この場合に
図15(b)に示すように、個別スクリプトISにおいて、割引率の数値の文字列を部分的に抽出して他の文字列と組み合わせる処理が実行された場合、エラー処理を実行してもよい。仮に、
図15(b)に示す個別スクリプトISが実行された場合、「割引9」の文字列と「割引10%」の右2文字が組み合わされて「割引90%」に変更されることになる。本変形例によれば、先に実行される共通スクリプトCSにおいて、後から実行される個別スクリプトISで文字列の部分抽出による悪用ができないようにしておくことができる。
【0092】
<共通スクリプトの内容の変更に認証を必要とする場合>
前述のように、共通スクリプトCSには勝手に変更されては困る情報が定義される場合がある。このため、共通スクリプトCSの内容を変更するのに認証を必要としてもよい。個別スクリプトISの内容の変更についても認証を必要としてもよいし、個別スクリプトISについては運用の簡便さのために認証を不要としてもよい。
【0093】
認証の方法としては、次のような方法が考えられる。例えば管理者パスワードを設定しておき、共通スクリプトCSの編集画面を開くのに、管理者パスワードの入力が必要なようにしてもよい。変更後の共通スクリプトCSのデータにデジタル署名が付されていない場合には、共通スクリプトCSを変更できないようにしてもよい。変更後の共通スクリプトCSを取得する取得先のデバイスが物理認証デバイスでない場合には、共通スクリプトCSを取得できないようにしてもよい。物理認証デバイスは、例えばUSBドングルキー等である。
【0094】
本変形例によれば、重要な情報が規定される共通スクリプトCSを勝手に変更することができなくなるので、セキュリティを高めることができる。
【0095】
なお、
図8及び
図11に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0096】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0097】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0098】
100 印刷装置
104 印刷部
106 記憶部(第1記憶部、第2記憶部、第3記憶部の一例)
108 制御部
CS 共通スクリプト
IS 個別スクリプト
IS1~IS3 個別スクリプト
L 印字ラベル(印刷物の一例)
OB1b 印字オブジェクト(可変オブジェクトの一例)
OB2c 印字オブジェクト(可変オブジェクトの一例)
OB3a 印字オブジェクト(可変オブジェクトの一例)
TP テンプレート
TP1~TP3 テンプレート