(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082975
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】衝撃吸収床材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/18 20060101AFI20240613BHJP
E04F 15/22 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E04F15/18 601Z
E04F15/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197221
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 透
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA12
2E220AA44
2E220AC01
2E220AC11
2E220BA04
2E220BA19
2E220CA07
2E220CA10
2E220DA02
2E220DB03
2E220DB06
2E220DB13
2E220GA02Y
2E220GA07Y
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA25X
2E220GA30X
2E220GB33X
2E220GB33Y
2E220GB33Z
2E220GB34Y
2E220GB34Z
2E220GB37Y
2E220GB39Z
2E220GB43X
(57)【要約】
【課題】衝撃吸収床材を設置した後の温度変化による突き上げを抑制することの可能な衝撃吸収床材を提供する。
【解決手段】衝撃吸収床材1は、設置面上に互いに隣り合うように配置される複数の床材パネル2と、複数の床材パネル2の上に、複数の床材パネル2の上面全てを覆うように積層される一の床上材3と、を備えており、隣り合う床材パネル2同士の間にスペーサ4を備える。床材パネル2が熱膨張した場合に、熱膨張分が、床材パネル2同士の間に設けた隙間に吸収されると共にスペーサ4が変形することによって吸収され、その結果床材パネル2の突き上げが抑制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に互いに隣り合うように配置される複数の床材パネルと、
当該複数の床材パネルの上に、当該複数の床材パネルの上面全てを覆うように積層される一の床上材と、を備える衝撃吸収床材であって、
隣り合う前記床材パネル同士の間にスペーサを備えることを特徴とする衝撃吸収床材。
【請求項2】
前記スペーサは、前記床材パネルの厚み方向の一部にのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収床材。
【請求項3】
前記スペーサは、前記床材パネルの端面に、平面視で部分的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収床材。
【請求項4】
前記床材パネルは、前記設置面上に設置される床下地材と当該床下地材の上に積層される中間材と、を備え、
前記床上材は、前記中間材の上に積層されることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収床材。
【請求項5】
前記スペーサは、前記床下地材と前記中間材とに跨がって設けられていることを特徴とする請求項4に記載の衝撃吸収床材。
【請求項6】
前記スペーサは、上下方向に延びる断面視で、前記床下地材と接する長さよりも前記中間材と接する長さの方が大きくなるように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の衝撃吸収床材。
【請求項7】
前記床材パネルの形状は平面視で正方形であって、前記スペーサは、前記床材パネルの各辺の端面の一部に設けられ、且つ前記床材パネル2の重心を4回対称点とする位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の衝撃吸収床材。
【請求項8】
前記床材パネルの形状は平面視で正方形であり、当該正方形の一辺の長さをLとし、隣り合う前記床材パネル同士の間隔をDとしたとき、「L/D」は、300以上3000以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の衝撃吸収床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収床材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高齢者の転倒骨折が社会問題化しており、高齢者が要介護となる要因の10%は転倒骨折が占めている。また、医療事故においても、転倒骨折が20~25%を占めている。転倒による骨折箇所は、年代によって大きく異なり、60歳代以降になると大腿骨骨折のリスクが急増している。大腿骨骨折は、入院治療が必要となり、歩行できない状態が長期間続くため、骨量が減少して、症状が深刻化し易く、要介護状態を招き易くなっている。
また、幼稚園、保育園、認定こども園等の幼児保育関連施設においても、転倒骨折による事故は、全体の2割強を占めている。
そのため、転倒時の衝撃を吸収することで、骨折リスクを低下させるようにした床材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の床材においては、設置面上に、中間材と床下地材とを含む積層体を隙間なく敷き詰めた後、積層体の上に床上材を設置することで施工している。このような床材においては、環境温度が施工時の温度から上昇した場合に、積層体の熱膨張が生じ、積層体が設置面から盛り上がる現象(突き上げ)が生じる可能性がある。床面に生じる突き上げは、歩行の際の障害となり、歩行者が転倒する要因となる。
本発明は、上述した問題点に鑑み、衝撃吸収床材を設置した後の温度変化による突き上げを抑制し、実用性への影響が少ない衝撃吸収床材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、設置面上に互いに隣り合うように配置される複数の床材パネルと、複数の床材パネルの上に、複数の床材パネルの上面全てを覆うように積層される一の床上材と、を備える衝撃吸収床材であって、隣り合う床材パネル同士の間にスペーサを備える衝撃吸収床材が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、施工後の温度変化による突き上げを抑制することの可能な衝撃吸収床材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る衝撃吸収床材の構成の一例を示す、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図2】スペーサの配置位置を説明するための説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【
図3】スペーサの配置位置を説明するための説明図である。
【
図4】評価用床材試料の一例を示す、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0009】
(実施形態)
以下、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る衝撃吸収床材1を説明する。
図1において、(a)は衝撃吸収床材1の平面図、(b)は(a)のA-A′面における断面図である。なお、
図1(a)において、判りやすくするために床上材3は記載していない。
(衝撃吸収床材の構成)
衝撃吸収床材1は、
図1に示すように複数の床材パネル2と、複数の床材パネル2の上面全体を覆うように設けられた、1つの床上材3とを備える。また、隣り合う床材パネル2同士の間にはスペーサ4が設けられている。
床材パネル2の形状は、平面視で矩形であって、
図1の場合には、平面視で正方形に形成されている。床材パネル2は、辺同士が隣り合うように整列して配置される。床材パネル2同士の間にスペーサ4を設けることで、複数の床材パネル2を、所定の間隔を空けて設置するようになっている。
図1では、縦4枚、横4枚の計16枚の床材パネル2が配置され、これら16枚の床材パネル2の上面全体を覆うように、一枚の床上材3が積層されている。なお、床材パネル2と床上材3との関係はこれに限るものではなく、n×m枚の床材パネル2に対して1枚の床上材3を設けるようにすればよい。また、床材パネル2の枚数が異なる複数の衝撃吸収床材1を混在して設置するように構成してもよい。例えば、2×1枚の床材パネル2を備える衝撃吸収床材1と、4×4枚の床材パネル2を備える衝撃吸収床材1とが混在して設置されていてもよい。
床材パネル2を設置面に設置する場合、床材パネル2を設置面に接着剤により接着することは必須ではないが、ずれ等の観点から、床材パネル2は接着剤や両面テープ等で接着することが好ましい。
【0010】
<床材パネル>
床材パネル2は、衝撃吸収性の観点から、所定の性状を有する床下地材21と中間材22とを含むことが好ましい。床材パネル2は、例えば床下地材21と中間材22とを接着材で接着した積層体で構成されるが、床下地材21と中間材22との間に他の層を設けてもよい。
【0011】
<床下地材>
床下地材21は、床材パネル2の設置面側に配置され、衝撃吸収床材1にかかる歩行時の圧力を吸収し、緩衝性を高める機能を担う。床下地材21は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂で形成され、独立発泡や連続発泡等の発泡構造を有していてもよい。
また、床下地材21は、アスカーC硬度で40以上70以下の範囲にあることが好ましい。アスカーC硬度が40に満たないと、荷重が加わったときの衝撃吸収床材1の変形が大きくなり、歩行者がバランスを失いやすいなど歩行感の低下が生じる。アスカーC硬度が70を超えると衝撃吸収床材1の緩衝性の低下が顕著に生じる。なお、アスカーC硬度とは、日本ゴム協会標準規格に規定されたアスカーC硬度計による測定値を表す。
床下地材21は、厚さが3mm以上15mm以下の範囲にあることが好ましい。床下地材21の厚さが3mmに満たないと十分な緩衝性が得られず、15mmを超えると前述の歩行感の低下が顕著に生じる。
【0012】
<中間材>
中間材22は、床材パネル2の表面側、すなわち、床上材3と接する側に配置され、床上材3から床下地材21にかかる荷重を分散し、衝撃吸収性や耐静荷重性を向上させる。
中間材22は、例えば、合板等の木質基材や、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の熱可塑性樹脂が用いられる。中間材22は、木粉、タルク、炭酸カルシウムなどのフィラーを含有しても良い。
【0013】
中間材22の性状は、曲げ剛性が30Nm2以上100Nm2以下の範囲にあることが好ましい。中間材22の曲げ剛性が30Nm2に満たないと、衝撃時の撓みを床下地材21で吸収しきれず衝撃吸収性の低下が顕著に生じる。中間材22の曲げ剛性が100Nm2を超えると、十分な荷重分散効果が得られず衝撃吸収性の低下が顕著化する。
中間材22の厚みは、3mm以上6mm以内の範囲にあることが好ましい。中間材22の厚みが3mmに満たないと、衝撃時の撓みを床下地材21で吸収しきれず衝撃吸収性の低下が顕著に生じる。中間材22の厚みが6mmを超えると、荷重分散効果が十分に得られず衝撃吸収性が不足する場合がある。
【0014】
床材パネル2の形状は、設置面に敷き詰めることのできる形状として、矩形、平行四辺形、正三角形、正六角形など考えられるが、床材パネル2の生産および施工の観点から矩形であることが好ましい。矩形状のパネルは、正方形又は長方形を単独で用いても、組合せて用いても良いが、床材パネル2の隙間を適正な量で容易に付与できる、正方形を単独で用いることがさらに好ましい。
床材パネル2の上面の面積は、0.08m2以上2m2以下の範囲内にあることが好ましい。床材パネル2の面積が0.08m2に満たないと床材パネルの使用枚数が多くなり施工時の作業効率が顕著に低下する。面積が2m2を超えると、パネル生産、運搬、施工が難しくなる。
【0015】
<床上材>
床上材3は、衝撃吸収床材1の表面を構成する層であり、歩行時にかかる圧力や転倒時の衝撃等を床材パネル2の面内に分散させることで、歩行感や緩衝性を高める機能のほか、衝撃吸収床材1の摩耗などに対する保護、意匠性の付与などの機能を担う。通常は床材パネル2に接着剤や両面テープなどで積層されるが、床上材3と床材パネル2との間に別の層を設けても良い。
床上材3は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の樹脂材料をシート状に加工した部材が用いられ、意匠層や表面保護層などが適宜設けられていてよい。
床上材3の厚さは、1mm以上10mm以下であることが好ましい。床上材3の厚さが1mmに満たないと緩衝性が不足し、10mmを超えると重量が大きくなり施工時に支障が生じる。
【0016】
<スペーサ>
スペーサ4は、床材パネル2の熱膨張による設置面からの突出(突上げ)を回避するために用いられる。スペーサ4の形成方法は、床材パネル2の敷き詰め後、床材パネル2間に所定の距離が存在すれば方式は問わないが、例えば所定の厚みのテープを各床材パネルの端面に貼ることで形成される。
スペーサ4による床材パネル2間の距離は、床材パネル2のサイズと床材パネル2の線膨張係数とにより適当な範囲が決定されるが、特に同一サイズの正方形の床材パネル2を単独で用いる場合は単純化され、正方形の床材パネル2の一辺の長さ(辺長)をL、隣り合う床材パネル2同士の間隔をDとしたときに、「L/D」が300以上3000以下の範囲となる値に設定される。
「L/D」が3000を超える場合は、床材パネル2の線膨張に対するパネル間の距離が不足し、「突上げ」が発生するリスクが顕著になる。(L/D)が300未満の場合は、パネル継ぎ目での緩衝性の不足や、歩行時の違和感など実用上の問題が発生しやすくなる。
【0017】
図2は、正方形の床材パネル2を単独で用い、スペーサ4として粘着テープを床材パネル2の端面に設けた場合の平面図である。スペーサ4は
図2(a)に示すように、床材パネル2の端面全体に配置しても良いが、床材パネル2が膨張した時のスペーサ4の変形による応力発生、及び設置面に床材パネル2を設置するときに、スペーサ4の有無で識別される2種類の床材パネル2を用いる必要が生じることを考慮すると、床材パネル2の各辺の端面の一部の、床材パネル2の重心を4回対称点とする位置に設置することが好ましい。このようにスペーサ4を配置すると床材パネル2を設置する際に、同一種類の床材パネル2を向きを問わずに設置することができる。なお、スペーサ4を床材パネル2の端面の一部に用いる場合は、床材パネル2を敷き詰めた際にスペーサ4が均等に配置されることが好ましい。
【0018】
スペーサ4は、床材パネル2の厚み方向の一部に設けられることが好ましい。仮に、床材パネル2の厚み方向全体にスペーサ4を設けた場合、床材パネル2が熱膨張した際に、スペーサ4が変形すると、スペーサ4自体が床材パネル2の表面よりも盛り上がってしまう可能性があるためである。
また、スペーサ4は、床材パネル2の断面図(
図3(b))に示すように、床下地材21と中間材22との境界にまたがって設けられることが好ましく、さらに、スペーサ4は、床下地材21よりも中間材22寄りの位置に設けられることが好ましい。スペーサ4を、床下地材21と中間材22との境界に跨がって設けることにより、床材パネル2を設置した後の熱膨張時に、発泡体などで形成される床下地材21にスペーサ4が部分的に潜り込むことで、床材パネル2間の応力が緩和し、突上げが生じにくくすることができる。なお、スペーサ4の設置位置を床下地材21のみに接する位置とした場合、床材パネル2を設置する際に、スペーサ4の床下地材21への潜り込みにより必要なパネル間隔が確保できないことがある。
【0019】
また、スペーサ4を設置する際には、上下方向に延びる断面視で、床下地材21と接する長さよりも中間材22と接する長さの方が大きくなるように、つまり、スペーサ4の、床材パネル2の厚み方向の中央部が床下地材21と中間材22との境界よりも上側となるように設けることがさらに好ましい。スペーサ4を、中間材22寄りの位置に設けることにより、床材パネル2を設置した後の床材パネル2の膨張時における床材パネル2間の応力緩和、及び床材パネル2設置時に必要な床材パネル2の間隔の確保、の両効果をより有効に得ることができる。
なお、
図3(b)は、
図3(a)に示す床材パネル2のB-B′面における断面図である。
【0020】
スペーサ4は、床材パネル2の熱膨張時に、床材パネル2の変形に伴って変形する必要がある。スペーサ4は、その硬度が、デュロメータタイプA(JISK6253)による測定値として、30以上80以下の範囲内であることが好ましい。硬度が30未満であると床材パネル2の設置に十分なスペースを確保できないことがあり、80を超えると床材パネル2設置後熱膨張時の応力緩和が不十分となり突上げが生じる可能性がある。
スペーサ4の材料としては、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどを成分とする材料が好適に用いられる。
【0021】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る衝撃吸収床材1は、床材パネル2同士の間にスペーサ4を挟んで床材パネル2を設置面上に敷き詰め、さらに床材パネル2の上に床上材3を積層した構成を有する。
そのため、衝撃吸収床材1を設置した後、温度環境の変化が生じ、床材パネル2が膨張したとしても、床材パネル2同士の間にはスペーサ4の幅相当だけ隙間が存在するため、床材パネル2の膨張分は、スペーサ4により生じる床材パネル2間の隙間やスペーサ4の収縮や変形によって吸収される。その結果、衝撃吸収床材1が設置された場所の温度環境が変化することにより、床材パネル2が熱膨張した場合であっても、突き上げが生じることを抑制することができる。そのため、特に高齢者等が衝撃吸収床材1上を歩行する際に、突き上げに起因して転倒することを抑制することができる。
その結果、転倒により転倒骨折等が生じることを抑制できるだけでなく、転倒すること自体を抑制することができる。
【0022】
また、上記実施形態において、スペーサ4は、床材パネル2の端面全体に設けてもよいが、平面視で矩形の床材パネル2の端面に部分的に設けている。そのため、仮にスペーサ4自体が膨張したとしても、床材パネル2及びスペーサ4の膨張分は、床材パネル2間の隙間で吸収することができ、より一層、突き上げが生じることを抑制することができる。
また、上記実施形態においては、床材パネル2間にスペーサ4を設けることで、床材パネル2同士の間に隙間を設けている。そのため、床材パネル2同士でスペーサ4を挟むようにして床材パネル2を配置することによって、床材パネル2間の隙間を容易に確保することができ、また、全ての床材パネル2間の隙間を容易に均一にすることができる。
【実施例0023】
以下、実施例1~3の衝撃吸収床材1と、比較例1の衝撃吸収床材とについて説明する。
(実施例1)
下記材料を用い、中間材22に床下地材21を接着することで辺長450mmの正方形の床材パネル2を作製し、
図3に示すように、床材パネル2の各辺の端面の一部であり、床材パネル2の厚み方向の一部に、床下地材21と中間材22とに跨がるようにスペーサ4を設けた。続いて、環境試験室内5℃にて被施工体に8枚の床材パネル2を接着後(
図4(a))、8枚の床材パネル2全体を覆うように床上材3を接着することで衝撃吸収床材1が施工された評価用試料板を作製した(
図4)。なお、
図4(a)は評価用試料板の平面図、(b)は
図4(a)の、C-C′面における断面図である。
図4(a)において、判りやすくするために、床上材3は記載していない。
床下地材21:ポリエチレン発泡体、450×450×t7mm、アスカーC硬度62
中間材22:炭酸カルシウム含有ポリ塩化ビニル板、450×450×t4mm、曲げ剛性61Nm
2
床上材3:ポリ塩化ビニルシート、1820×900×t2mm
接着剤:溶剤系ウレタン樹脂接着剤
スペーサ4:粘着剤付きクロロプレンゴムテープ、20×5×t0.5mm
被施工体11:ケイカル板、1820×900×t12mm
【0024】
(実施例2)
実施例1においてスペーサ4の厚みをt0.1mmとしたことを除いては実施例1と同様の手順で評価用試料板を作製した。
(実施例3)
実施例1においてスペーサ4の厚みをt2mmとしたことを除いては実施例1と同様の手順で評価用試料板を作製した。
【0025】
(比較例1)
実施例1においてスペーサ4を設けないことを除いては実施例1と同様に、評価用試料板を作製した。
(評価方法及び評価基準)
実施例1~3の評価用試料板と、比較例1の評価用試料板とに対し、上述のように、環境試験質内で5℃の温度環境下で評価用床材試料を作成後、環境温度を55℃まで上昇させ、このときの衝撃吸収床材の「突き上げ」を観察した。その後、環境温度を5℃まで低下させ、このときの衝撃吸収床材の「表面状態」を観察した。「突き上げ」及び「表面状態」は、以下の基準により目視で評価した。
(突上げ)
○:衝撃吸収床材全体に変形が確認されない。
×:床上材3側が膨らむように評価用床材試料全体が湾曲している(評価用床材試料を水平面に置いた際に、評価用床材試料の中央部の裏面が1mm以上水平面から離れる。)。
(表面状態)
○:衝撃吸収床材の表面状態に異常が確認されない
×:床材パネル2同士の境界部分の上部において、床上材3に「膨れ」が認められる。
評価結果を表1に示す。
【0026】
【0027】
実施例1の衝撃吸収床材は、床材パネルのサイズ(正方形の床材パネルの一辺の長さL)と、隣り合う床材パネル同士の間隔Dとの比「L/D」が「900」であり、適正範囲300以上3000以下の範囲内である。そのため、環境温度上昇時の熱膨張による床材パネルの膨張分が、床材パネル同士の間隔D及び床材パネルの膨張に伴うスペーサの変形によって吸収され、突き上げが回避される。また、床上材の表面状態に異常は確認されず外観上の異常は生じていない。すなわち実用上問題がない。
また、床材パネルのサイズLと間隔Dとの比「L/D」が「4500」であり、パネルサイズLに対して、床材パネル2間の間隔Dが比較的小さい実施例2では、環境温度上昇時には評価用床材試料全体が湾曲し突き上げが生じたが、その後環境温度が衝撃吸収床材を作成したときの温度まで低下すると、衝撃吸収床材の表面に異常は見られなかった。
【0028】
逆に、床材パネルのサイズLと間隔Dとの比「L/D」が「225」であり、パネルサイズLに対して間隔Dが比較的大きい実施例3では、環境温度上昇時には突き上げが生じることはないものの、その後環境温度が衝撃吸収床材を作成したときの温度まで低下すると、衝撃吸収床材の表面に膨れが認められた。この表面の膨れは、床上材3の弛みに起因して生じ、床材パネル2同士の間隔Dが大きいと、床材パネル2が熱膨張する際に平面方向に変形しやすくなる。そのため、床材パネル2同士の継ぎ目に集中する床上材3の変形が大きくなり、冷却後に床上材3の弛みとして視認される。
さらに、スペーサ4を設けない比較例1の場合は、床材パネル同士が接して配置されるため、環境温度上昇時には床材パネルの膨張分が吸収されないため、突き上げが発生し、さらに環境温度が衝撃吸収床材を作成したときの温度まで低下した場合には衝撃吸収床材の表面に膨れが認められた。
【0029】
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
(1)
設置面上に互いに隣り合うように配置される複数の床材パネルと、
当該複数の床材パネルの上に、当該複数の床材パネルの上面全てを覆うように積層される一の床上材と、を備える衝撃吸収床材であって、
隣り合う前記床材パネル同士の間にスペーサを備えることを特徴とする衝撃吸収床材。
(2)
前記スペーサは、前記床材パネルの厚み方向の一部にのみ設けられていることを特徴とする上記(1)に記載の衝撃吸収床材。
【0030】
(3)
前記スペーサは、前記床材パネルの端面に、平面視で部分的に設けられていることを特徴とする上記(1)及び(2)に記載の衝撃吸収床材。
(4)
前記床材パネルは、前記設置面上に設置される床下地材と当該床下地材の上に積層される中間材と、を備え、
前記床上材は、前記中間材の上に積層されることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の衝撃吸収床材。
(5)
前記スペーサは、前記床下地材と前記中間材とに跨がって設けられていることを特徴とする上記(4)に記載の衝撃吸収床材。
【0031】
(6)
前記スペーサは、上下方向に延びる断面視で、前記床下地材と接する長さよりも前記中間材と接する長さの方が大きくなるように設けられていることを特徴とする上記(5)に記載の衝撃吸収床材。
(7)
前記床材パネルの形状は平面視で正方形であって、前記スペーサは、前記床材パネルの各辺の端面の一部に設けられ、且つ前記床材パネル2の重心を4回対称点とする位置に設けられていることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の衝撃吸収床材。
(8)
前記床材パネルの形状は平面視で正方形であり、当該正方形の一辺の長さをLとし、隣り合う前記床材パネル同士の間隔をDとしたとき、「L/D」は、300以上3000以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の衝撃吸収床材。