(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008298
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ダンプ車両
(51)【国際特許分類】
B60P 1/04 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B60P1/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110050
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】稲井 恵一
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 行人
(57)【要約】
【課題】荷箱の上方の障害物のために積載物を排出できない場合のやり直し作業を少なくできるダンプ車両
【解決手段】ダンプ車両1は、車両本体1Aと、荷箱30と、荷箱30を傾動させるダンプ装置25と、荷箱30の上方にある障害物の上下方向の位置を検出する検出装置45と、荷箱30に積載された積載物を排出可能な荷箱30の角度を積載物の安息角に基づいて求める第1処理装置と、検出装置45によって検出された障害物の位置に基づき荷箱30を傾斜可能な角度を求める第2処理装置と、第2処理装置によって求められた角度が第1処理装置によって求められた角度以上であれば積載物を荷箱30から排出可能であると判定し、第1処理装置によって求められた角度よりも小さければ積載物を荷箱30から排出不能であると判定する判定装置と、を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体に傾動可能に支持された荷箱と、
前記荷箱を傾動させるダンプ装置と、
前記荷箱の上方にある障害物の上下方向の位置を検出する検出装置と、
前記荷箱に積載された積載物を排出可能な前記荷箱の角度を積載物の安息角に基づいて求める第1処理装置と、
前記検出装置によって検出された障害物の位置に基づき、前記荷箱を傾斜可能な角度を求める第2処理装置と、
前記第2処理装置によって求められた角度が前記第1処理装置によって求められた角度以上であれば積載物を前記荷箱から排出可能であると判定し、前記第1処理装置によって求められた角度よりも小さければ積載物を前記荷箱から排出不能であると判定する判定装置と、を備えている、ダンプ車両。
【請求項2】
積載物の種類を入力可能な入力装置と、
積載物の種類と積載物ごとの安息角とが記憶された記憶装置と、をさらに備え、
前記第1処理装置は、前記入力装置に入力された積載物の安息角を前記記憶装置から読み出し、前記読み出した安息角に基づいて、積載物を排出可能な前記荷箱の角度を求めるように構成されている、
請求項1に記載のダンプ車両。
【請求項3】
前記荷箱に積載された積載物の重量を取得する重量取得装置と、
前記荷箱内の画像を取得する撮像装置と、
前記撮像装置によって取得された画像から前記荷箱に積載された積載物の体積を推定する体積推定装置と、
前記重量取得装置によって取得された積載物の重量と前記体積推定装置によって推定された積載物の体積とから、積載物の推定密度を算出する密度推定装置と、
積載物の密度と安息角との対応テーブルが記憶された記憶装置と、をさらに備え、
前記第1処理装置は、前記密度推定装置によって算出された推定密度に基づいて積載物の安息角を前記記憶装置の前記対応テーブルから読み出し、前記読み出した安息角に基づいて、積載物を排出可能な前記荷箱の角度を求めるように構成されている、
請求項1に記載のダンプ車両。
【請求項4】
前記ダンプ装置によって可能な前記荷箱の最大傾斜角が記憶された記憶装置と、
積載物を前記荷箱から排出可能であると判定された場合であって前記第2処理装置によって求められた角度が前記記憶装置に記憶された最大傾斜角以下である場合に、前記ダンプ装置を駆動して、前記第2処理装置によって求められた角度まで前記荷箱を傾斜させ、積載物を前記荷箱から排出可能であると判定された場合であって前記第2処理装置によって求められた角度が前記最大傾斜角よりも大きい場合に、前記ダンプ装置を駆動して、前記最大傾斜角まで前記荷箱を傾斜させるダンプ制御装置と、をさらに備えている、
請求項1に記載のダンプ車両。
【請求項5】
積載物の排出地点を設定する排出地点設定装置と、
前記排出地点設定装置によって設定された排出地点まで前記車両本体を走行させる自動運転装置と、をさらに備え、
前記排出地点設定装置は、設定された排出地点において積載物を前記荷箱から排出不能であると判定された場合には、排出地点を変更するように構成されている、
請求項1に記載のダンプ車両。
【請求項6】
前記第2処理装置によって求められた角度と前記荷箱の角度との差が所定角度よりも小さくなると警告を発する警告装置をさらに備えている、
請求項1に記載のダンプ車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、荷台を囲む枠に上方の障害物を感知するセンサを設けたダンプトレーラが開示されている。特許文献1のダンプトレーラによれば、障害物をセンサで感知した場合には警報装置に警報を発生させ、運転者にこれを知らせることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているようなダンプ車両によれば、上方の障害物を検知するセンサにより、荷箱をダンプしたときに上方の障害物に衝突させるおそれを低減することができる。しかし、上方の障害物に衝突しないような荷箱の傾斜角では、荷箱に積載された積載物が滑り落ちず、荷箱から排出されないことがあり得る。そのような場合には、荷箱を再び着座させ、排出場所を変更してから同じ作業を繰り返さなければならない。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷箱の上方の障害物のために積載物を排出できない場合のやり直し作業を少なくできるダンプ車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るダンプ車両は、車両本体と、前記車両本体に傾動可能に支持された荷箱と、前記荷箱を傾動させるダンプ装置と、前記荷箱の上方にある障害物の上下方向の位置を検出する検出装置と、前記荷箱に積載された積載物を排出可能な前記荷箱の角度を積載物の安息角に基づいて求める第1処理装置と、前記検出装置によって検出された障害物の位置に基づき前記荷箱を傾斜可能な角度を求める第2処理装置と、前記第2処理装置によって求められた角度が前記第1処理装置によって求められた角度以上であれば積載物を前記荷箱から排出可能であると判定し、前記第1処理装置によって求められた角度よりも小さければ積載物を前記荷箱から排出不能であると判定する判定装置と、を備えている。
【0007】
上記ダンプ車両によれば、積載物の排出予定地点において積載物を排出可能かどうかが、荷箱を実際に傾けてみなくても分かる。よって、積載物が排出不可の場合、荷箱を傾斜させ、再度着座させる作業を省略することができる。これにより、荷箱の上方の障害物のために積載物を排出できない場合のやり直し作業を少なくできる。
【0008】
本発明の好ましい一態様によれば、ダンプ車両は、積載物の種類を入力可能な入力装置と、積載物の種類と積載物ごとの安息角とが記憶された記憶装置と、をさらに備えている。前記第1処理装置は、前記入力装置に入力された積載物の安息角を前記記憶装置から読み出し、前記読み出した安息角に基づいて、積載物を排出可能な前記荷箱の角度を求めるように構成されている。
【0009】
上記ダンプ車両によれば、積載物の種類が多様であっても、積載物を排出可能な荷箱の傾斜角を求めることができる。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、ダンプ車両は、前記荷箱に積載された積載物の重量を取得する重量取得装置と、前記荷箱内の画像を取得する撮像装置と、前記撮像装置によって取得された画像から前記荷箱に積載された積載物の体積を推定する体積推定装置と、前記重量取得装置によって取得された積載物の重量と前記体積推定装置によって推定された積載物の体積とから積載物の推定密度を算出する密度推定装置と、積載物の密度と安息角との対応テーブルが記憶された記憶装置と、をさらに備えている。前記第1処理装置は、前記密度推定装置によって算出された推定密度に基づいて積載物の安息角を前記記憶装置の前記対応テーブルから読み出し、前記読み出した安息角に基づいて、積載物を排出可能な前記荷箱の角度を求めるように構成されている。
【0011】
積載物の安息角は、積載物の密度に関わる要素、例えば水分の含有量や粒径によって変わり得る。上記ダンプ車両によれば、そのような積載物の密度による荷箱の必要傾斜角の違いに対応できる。
【0012】
本発明の好ましい一態様によれば、ダンプ車両は、前記ダンプ装置によって可能な前記荷箱の最大傾斜角が記憶された記憶装置と、積載物を前記荷箱から排出可能であると判定された場合であって前記第2処理装置によって求められた角度が前記記憶装置に記憶された最大傾斜角以下である場合に、前記ダンプ装置を駆動して、前記第2処理装置によって求められた角度まで前記荷箱を傾斜させ、積載物を前記荷箱から排出可能であると判定された場合であって前記第2処理装置によって求められた角度が前記最大傾斜角よりも大きい場合に、前記ダンプ装置を駆動して、前記最大傾斜角まで前記荷箱を傾斜させるダンプ制御装置と、をさらに備えている。
【0013】
上記ダンプ車両によれば、荷箱上方の障害物によって荷箱の傾斜可能角度が制限されない場合には荷箱の最大傾斜角まで、荷箱上方の障害物によって荷箱の傾斜可能角度が制限される場合には第2処理装置によって求められた角度まで荷箱が傾斜される。すなわち、状況に応じて可能な最大の角度まで荷箱が傾斜される。そのため、より迅速に積載物を排出することができる。
【0014】
本発明の好ましい一態様によれば、ダンプ車両は、積載物の排出地点を設定する排出地点設定装置と、前記排出地点設定装置によって設定された排出地点まで前記車両本体を走行させる自動運転装置と、をさらに備えている。前記排出地点設定装置は、設定された排出地点において積載物を前記荷箱から排出不能であると判定された場合には、排出地点を変更するように構成されている。
【0015】
上記ダンプ車両によれば、自動運転の場合でも、積載物の排出可否の判定を行うことができ、また、積載物の排出が不可である場合には排出地点を変えることができる。
【0016】
本発明の好ましい一態様によれば、ダンプ車両は、前記第2処理装置によって求められた角度と前記荷箱の角度との差が所定角度よりも小さくなると警告を発する警告装置をさらに備えている。
【0017】
上記ダンプ車両によれば、例えば運転者のミスにより荷箱を障害物に接触させる可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のダンプ車両によれば、荷箱の上方の障害物のために積載物を排出できない場合のやり直し作業を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】荷箱が着座位置にあるときのダンプトラックの側面図である。
【
図4】荷箱が傾斜した状態にあるときのダンプトラックの側面図である。
【
図8】積載物の種類と安息角との関係テーブルの一例である。
【
図10】第2実施形態に係るダンプトラックの側面図である。
【
図11】第2実施形態に係る排出判定システムのブロック図である。
【
図12】第3実施形態に係る積載物排出システムのブロック図である。
【
図13】第3実施形態に係るダンプトラックによる積載物排出のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るダンプトラック1の側面図である。
図2はダンプトラック1の平面図であり、
図3はダンプトラック1の背面図である。
【0021】
図1に示すように、ダンプトラック1は、シャシフレーム2と、シャシフレーム2に支持されたキャブ(運転室)3と、シャシフレーム2に支持された前輪5および後輪6と、キャブ3の後方かつシャシフレーム2の上に配置されたサブフレーム7と、サブフレーム7に支持された荷箱30とを備えている。また、ダンプトラック1は、動力を発生させる駆動源としてのエンジン9と、動力取り出し装置(以下、PTOという)10とを備えている。本実施形態では、前輪5または後輪6は、駆動源の動力を受けて回転する車輪の一例である。シャシフレーム2、キャブ3、サブフレーム7、エンジン9、およびPTO10は、車両本体1Aを構成している。キャブ3の内部には、図示しない運転席が設けられている。以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、上記運転席に座った運転手から見た前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0022】
荷箱30は、車両本体1Aに傾動可能に支持されている。
図1に示すように、荷箱30の後部は、車幅方向に延びるヒンジ軸8により、サブフレーム7の後端部に回動可能に支持されている。車両本体1Aは、荷箱30の後部を回動可能に支持する回動支持部13を有している。
図4は、荷箱30が傾斜したときのダンプトラック1の側面図である。ダンプトラック1は、荷箱30を傾動させるダンプ装置25を備えている。ダンプ装置25は、油圧シリンダ26と、リンク機構27と、を備えている。リンク機構27は、車両本体1Aおよび荷箱30に連結されている。油圧シリンダ26は、リンク機構27に接続されている。油圧シリンダ26は、リンク機構27を介して荷箱30を回動させる。
【0023】
図5に示すように、ダンプトラック1は、油圧シリンダ26が組み込まれた油圧回路20を備えている。油圧回路20は、油圧シリンダ26に加えて、オイルタンク21と、油圧ポンプ22と、図示しない切替弁とを有している。PTO10は、エンジン9の動力を取り出し、その動力を油圧ポンプ22に伝達する。油圧回路20では、上記切替弁を適宜切り替えることにより、油圧ポンプ22によって昇圧された油が油圧シリンダ26に供給される。これにより、油圧シリンダ26が駆動され、荷箱30がヒンジ軸8(
図4参照)周りに回動する。
【0024】
図1および
図2に示すように、荷箱30は、底板31と、底板31の前端部から起立した前壁32と、底板31の左端部から起立した左壁33と、底板31の右端部から起立した右壁34と、テールゲート35とを有している。前壁32は底板31の前端部から上方に延びている。前壁32は、左壁33、右壁34およびテールゲート35のいずれよりも高い位置まで上方に延びている。
図1に示すように、例えば、前壁32はキャブ3の上端よりも高い位置まで上方に延びている。
【0025】
テールゲート35は、左右方向に延びるヒンジ軸37周りに回動可能に構成されている。テールゲート35は、底板31の後端部から起立する閉位置と、閉位置に対して傾斜したまたは垂直な開位置との間で回動可能である。
図4では、テールゲート35が閉位置にあるときの状態を実線で表し、開位置にあるときの状態を仮想線で表している。テールゲート35が閉位置にあると、荷箱30の後方は閉じられる。テールゲート35が開位置にあると、荷箱30は後方に開かれる。荷箱30から積載物を排出するときには、荷箱30が傾斜し、テールゲート35は開位置に回動する。これにより、荷箱30が後方に開かれ、荷箱30から積載物を円滑に排出することができる。積載物は、特に限定されない。積載物としては、例えば、土砂、砂利、金属粉末、セラミック粉末、灰、石炭、豆などの食物が挙げられる。また、その状態は、例えば、粉末の粒度や水分によって変わり得る。
【0026】
図6は荷箱30の背面図である。ただし、
図6では前壁32の図示は省略している。
図6に示すように、荷箱30の底板31の後面には、フック39が設けられている。テールゲート35には、フック39が係止可能な左右方向に延びる係止バー38が設けられている。フック39は、図示しないレバーに連結されている。作業者がレバーを手動操作することにより、フック39を係止バー38に係止することができ、また、その係止を解除することができる。フック39が係止バー38に係止すると、テールゲート35はヒンジ軸37周りに回動不能となり、テールゲート35は閉位置に保持される。フック39の係止バー38に対する係止が解除されると、テールゲート35は閉位置から開位置に回動可能となる。フック39および係止バー38は、テールゲート35を閉位置に保持する手動ロック機構36を構成している。
【0027】
図1に示すように、車両本体1Aは、荷箱30の底部を支持する着座部11を有している。着座部11は、サブフレーム7の上に設けられている。
図1に示すように、荷箱30が水平な状態にあるときに、荷箱30の底部は着座部11によって支持される。詳しくは、荷箱30には、底板31と、底板31を補強する主桁31aとが備えられており、その主桁31aが着座部11に支持される。一方、
図7に示すように、荷箱30をヒンジ軸8周りに回動させることによって傾斜させると、荷箱30の底部は着座部11から離間する。
【0028】
図4に示すように、ダンプトラック1は、荷箱30に積載された積載物の重量(以下、積載重量という)を測定する重量計40を備えている。本実施形態に係る重量計40は、積載物が積載された荷箱30の重量(すなわち、荷箱30自体の重量と積載物の重量との合計)を測定し、その重量から荷箱30自体の重量を減算することにより、積載物の重量を算出する。なお、荷箱30自体の重量は予め特定されている。そのため、積載物が積載された荷箱30の重量を測定することと、積載重量を測定することとは、技術的に等価な事項である。本明細書において、積載重量の測定には、積載重量そのものを測定することと、積載重量と相関関係のある重量(上記の例で言うと、積載物が積載された荷箱30の重量)を測定することとが含まれる。言い換えると、積載重量の測定には、積載重量を特定できる任意の重量の測定が含まれる。
【0029】
本実施形態では、重量計40はロードセル式の重量計、または、油圧シリンダ26の油圧に基づいて積載重量を演算する重量計である。ただし、重量計40の種類および構成は何ら限定されず、従来からダンプトラックの荷箱の積載重量を測定する重量計として用いられている任意の重量計を用いることができる。
【0030】
ダンプトラック1は、荷箱30の上方にある障害物の上下方向の位置を検出する上方センサ45を備えている。本実施形態では、上方センサ45は、超音波を発するように構成され、障害物によって反射された超音波が到達する時間によって障害物との間の距離を測定する超音波センサである。ただし、上方センサ45の種類は特に限定されず、従来から用いられている任意の障害物センサを用いることができる。上方センサ45は、例えば、荷箱30の上方の画像を取得するように構成され、画像に基づいて障害物との距離を推定するカメラであってもよい。上方センサ45は、例えば、障害物との距離を検出可能な光電センサやミリ波レーダーであってもよい。
【0031】
ダンプトラック1が積載物の排出等のために荷箱30を回動させる場所の上方には、建物の天井、橋脚、架線、信号等、荷箱30に衝突し得る障害物が設けられている場合がある。上方センサ45は、荷箱30の上方にあるそのような障害物に荷箱30が衝突することを防止するためのものである。
図1に示すように、上方センサ45は、ここでは、荷箱30の前壁32の上縁に配置されている。上方センサ45は、例えば、シートを収容する凹部を前壁32が備えている場合、その凹部内に設けられてもよい。上方センサ45は、例えば、キャブ3の側(前方)に向かって延びるように前壁32に設けられたステーに支持されてもよい。ただし、上方センサ45が設置される場所は、特に限定されない。上方センサ45は、例えば、キャブ3に設けられていてもよい。
【0032】
ダンプトラック1は、さらに、荷箱30の傾斜角を検出する傾斜センサ50を備えている。本実施形態では、傾斜センサ50は、重力方向(鉛直方向)を検出する加速度センサである。
図4に示すように、傾斜センサ50は、荷箱30に取り付けられ、荷箱30とともに傾斜する。荷箱30の傾斜は、好ましくは、車両本体1Aに取り付けられ、車両本体1Aの傾斜を測定する他のセンサとともに用いられるとよい。ただし、ダンプトラック1が荷箱30を傾斜させる場所は、ほとんどの場合、水平に近い場所である。そのため、車両本体1Aの傾斜を測定する他のセンサは用いられなくてもよい。傾斜センサ50の構成は特に限定されない。傾斜センサ50は、例えば、油圧シリンダ26のロッドの位置を測定し、その位置から荷箱30の傾斜角を算出するように構成されていてもよい。
【0033】
また、ダンプトラック1は駐車ブレーキ12を備えている。荷箱30への土砂等の積込作業は、駐車ブレーキ12をOFFにした状態で行われる場合もある(例えば、アスファルトの剥離工事の場合、ロードカッターと前後に並んで走行しながら積込みを行う)が、停車状態で行う方が好ましい場合もあり、駐車ブレーキ12をONにした状態で行われる場合がある。駐車ブレーキ12がONされると、ダンプトラック1の停車状態が保たれる。一方、ダンプトラック1の走行時には、駐車ブレーキ12はOFFにされている。
図1に示すように、本実施形態に係るダンプトラック1は、駐車ブレーキ12のON/OFFを検出する駐車ブレーキ検出装置55を備えている。
【0034】
前述したように、油圧ポンプ22を用いた作業を行う際には、エンジン9の動力がPTO10を介して油圧ポンプ22に伝達される。すなわち、PTO10がエンジン9の動力を取り出し、油圧ポンプ22に伝達する。以下では、PTO10がエンジン9の動力を取り出していることをPTO10がONされていると言い、PTO10がエンジン9の動力を取り出していないことをPTO10がOFFされていると言うこととする。油圧ポンプ22を駆動するときには、PTO10はONされる。ダンプトラック1の走行時には、エンジン9の動力は前輪5または後輪6に伝達され、油圧ポンプ22には伝達されない。ダンプトラック1の走行時には、PTO10はOFFされる。
【0035】
本実施形態では、ダンプトラック1は、荷箱30に積載された積載物を荷箱30から排出可能かどうかを判定する排出判定システム100を備えている。
図7は、排出判定システム100のブロック図である。
図7に示すように、排出判定システム100は、積載物の種類を入力可能な入力装置101と、積載物の種類と積載物ごとの安息角とが記憶されたメモリ102と、積載物を排出可能な荷箱30の角度(以下、必要傾斜角とも呼ぶ)を積載物の安息角に基づいて求める必要傾斜角算出装置103と、上方センサ45によって検出された障害物の位置に基づき、荷箱30を傾斜可能な角度(以下、可能傾斜角とも呼ぶ)を求める可能傾斜角算出装置104と、荷箱30に積載された積載物を荷箱30から排出可能かどうかを判定する判定装置105と、判定装置105による判定結果を運転者に知らせる報知装置106と、を備えている。
【0036】
排出判定システム100の構成は特に限定されない。排出判定システム100は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。排出判定システム100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。
【0037】
入力装置101は、例えば、キャブ3内に設けられている。入力装置101への積載物の種類の入力は、例えば、ダンプトラック1の運転者によって行われる。入力装置101は、予め登録された積載物の種類の中から1つの積載物を選択できるように構成されていてもよい。入力装置101は、ダンプトラック1の運転者等によって入力が行われるものでなくてもよい。入力装置101への入力は、例えば、ダンプトラック1のスケジュール等を管理するシステムから情報を受けて自動で行われてもよい。
【0038】
メモリ102には、積載物の種類と積載物ごとの安息角とが記憶されている。
図8は、積載物の種類と安息角との関係テーブルの一例である。安息角は、積まれた粉体が滑り出さない限度の角度である。安息角を越えると、積載物の山は崩れて滑り始める。荷箱30を安息角よりも傾斜させると、積載物を荷箱30から排出することができる。
【0039】
必要傾斜角算出装置103は、入力装置101に入力された積載物の安息角をメモリ102から読み出し、読み出した安息角に基づいて必要傾斜角(積載物を荷箱30から排出可能な荷箱30の角度)を求めるように構成されている。必要傾斜角は、メモリ102に記憶された積載物の安息角と等しくてもよい。この場合、必要傾斜角算出装置103は、入力装置101に入力された積載物の安息角をメモリ102から読み出すだけであってもよい。ただし、必要傾斜角は、メモリ102に記憶された積載物の安息角より大きく設定されてもよい。メモリ102には、積載物の安息角に所定の角度を加算した角度が予め記憶され、必要傾斜角算出装置103は、この角度をメモリ102から読み出してもよい。必要傾斜角算出装置103は、メモリ102から読み出した積載物の安息角に所定の角度を加算し、必要傾斜角を算出するように構成されていてもよい。または、必要傾斜角算出装置103は、例えば、メモリ102から読み出した積載物の安息角に周囲環境に応じて変動する角度を加算し、必要傾斜角を算出するように構成されていてもよい。上記変動する角度は、例えば、周囲の湿度に応じて変動してもよい。周囲の湿度が高いと、積載物が湿り、積載物の山が崩れにくい。その場合、ダンプトラック1は、湿度を測定する湿度計を備えていてもよい。このように、必要傾斜角を「求める」ことには、メモリ102から読み出した積載物の安息角をそのまま必要傾斜角として利用することと、メモリ102から読み出した積載物の安息角を利用して必要傾斜角を算出することとが含まれる。
【0040】
可能傾斜角算出装置104は、上方センサ45によって検出された障害物の位置に基づき、可能傾斜角(荷箱30を傾斜可能な角度)を求めるように構成されている。可能傾斜角は、例えば、上方センサ45によって検出された障害物よりも所定の距離だけ下方に荷箱30の上端が位置するような荷箱30の角度である。
【0041】
判定装置105は、可能傾斜角算出装置104によって求められた可能傾斜角が必要傾斜角算出装置103によって求められた必要傾斜角以上であれば積載物を荷箱30から排出可能であると判定するように構成されている。判定装置105は、また、可能傾斜角算出装置104によって求められた可能傾斜角が必要傾斜角算出装置103によって求められた必要傾斜角よりも小さければ積載物を荷箱30から排出不能であると判定する。すなわち、荷箱30を傾けていくと、積載物が荷箱30から滑り落ちるよりも前に荷箱30が上方の障害物に接触すると判定する。判定装置105は、例えば、判定作業を開始する操作端をキャブ3内に備えていてもよい。
【0042】
報知装置106は、例えば、キャブ3内に設けられている。報知装置106は、荷箱30に積載された積載物を荷箱30から排出可能か排出不能であるかを表示してもよい。あるいは、報知装置106は、荷箱30に積載された積載物を荷箱30から排出不能である場合にだけ、そのことを表示してもよい。報知装置106による表示の方法は特に限定されない。報知装置106は、例えば、積載物を荷箱30から排出可能か排出不能であるかを表示するランプを備えていてもよい。報知装置106は、例えば、積載物を荷箱30から排出可能か排出不能であるかを音声で回答するように構成されていてもよい。
【0043】
本実施形態では、排出判定システム100は、荷箱30の角度が可能傾斜角算出装置104によって求められた可能傾斜角に近くなると警告を発する警告装置107を備えている。警告装置107は、可能傾斜角と荷箱30の角度との差が所定角度よりも小さくなると警告を発する。荷箱30の角度は、傾斜センサ50によって測定されている。警告の種類は特に限定されないが、例えば、警告音である。また、排出判定システム100は、荷箱30を可能傾斜角よりも傾斜させることを禁止する制限装置108を備えている。
【0044】
図9は、積載物排出のフローチャートである。本実施形態では、積載物の排出作業はダンプトラック1の運転者が行う。ステップS01では、運転者が積載物の種類を入力装置101に入力する。積載物排出のステップS02では、積載物の排出予定地点にダンプトラック1を駐車する。ステップS01とステップS02とは、順番が逆であってもよい。続くステップS03において、積載物を荷箱30から排出可能かどうかが判定される。ステップS03の結果がYESの場合(積載物を荷箱30から排出可能と判定された場合)、ステップS04Aで積載物を排出可能であることが運転者に報知される。ステップS03の結果がNOの場合(積載物を荷箱30から排出不能と判定された場合)、ステップS04Bで積載物を排出不能であることが運転者に報知される。
【0045】
ステップS04Aにおいて積載物を排出可能であることが運転者に報知されると、運転者は、ステップS05においてPTO10をONにする。運転者は、ステップS06において荷箱30を傾斜させ、積載物を荷箱30から排出する。荷箱30の角度の制御は運転者の作業によるが、荷箱30の角度が可能傾斜角に近くなると警告が発せられる。これにより、作業者は、それ以上の荷箱30の傾斜は、荷箱30が障害物に接触しないことの確認を要することを認識する。さらに、荷箱30の回動は、荷箱30の角度が可能傾斜角に到達すると停止される。
【0046】
ステップS04Bにおいて積載物を排出できないことが運転者に報知されると、運転者は、ステップS07においてダンプトラック1を他の排出地点の候補地に移動させる。ステップS07の移動は、例えば数m以内の短い移動であってもよい。ステップS07の後、作業者は、再度のステップS02においてダンプトラック1を他の排出地点に停車させた後、再びステップS03の判定を行う。ステップS03からの流れは、前述と同じである。
【0047】
ステップS06の積載物の排出が完了すると、ステップS08において作業者は荷箱30を着座させる。ステップS09では、作業者は、PTO10をOFFし、ダンプトラック1を走行可能な状態とする。
【0048】
このように、本実施形態に係るダンプトラック1は、荷箱30の上方にある障害物の上下方向の位置を検出する上方センサ45と、荷箱30に積載された積載物を排出可能な荷箱30の角度(必要傾斜角)を求める必要傾斜角算出装置103と、上方センサ45によって検出された障害物の位置に基づき荷箱30を傾斜可能な角度(可能傾斜角)を求める可能傾斜角算出装置104と、可能傾斜角算出装置104によって求められた可能傾斜角が必要傾斜角算出装置103によって求められた必要傾斜角以上であれば積載物を荷箱30から排出可能であると判定し、必要傾斜角算出装置103によって求められた必要傾斜角よりも小さければ積載物を荷箱30から排出不能であると判定する判定装置105と、を備えている。かかるダンプトラック1によれば、積載物の排出予定地点において積載物を排出可能かどうかが、荷箱30を実際に傾けてみなくても分かる。よって、従来のダンプトラックでは、荷箱を傾斜させ、積載物が排出できなければ荷箱を着座させ、ダンプトラックの場所を移動する、というものであった積載物が排出不可の場合のやり直し作業の一部を省略することができる。すなわち、積載物の排出の可否を事前に判定し、積載物が排出できないと判定されればダンプトラック1を移動させるというように、やり直し作業を短縮できる。
【0049】
本実施形態に係るダンプトラック1は、積載物の種類を入力可能な入力装置101と、積載物の種類と積載物ごとの安息角とが登録されたメモリ102と、を備え、必要傾斜角算出装置103は、入力装置101に入力された積載物の安息角をメモリ102から読み出し、読み出した安息角に基づいて必要傾斜角を求めるように構成されている。かかるダンプトラック1によれば、積載物の種類が多様であっても、必要傾斜角を求めることができる。
【0050】
本実施形態に係るダンプトラック1は、可能傾斜角と荷箱30の角度との差が所定角度よりも小さくなると警告を発する警告装置107を備えている。かかる警告装置107によれば、運転者のミスにより荷箱30を障害物に接触させるおそれを低減することができる。
【0051】
なお、ダンプトラック1は、積載物を荷箱30から排出不能であると判定装置105によって判定された場合には、ダンプ装置25の駆動を不可とするように構成されていてもよい。例えば、ダンプトラック1は、積載物を荷箱30から排出不能であると判定装置105によって判定された場合には、PTO10をOFFするように構成されていてもよい。かかるダンプトラック1によれば、積載物を荷箱30から排出不能と判定されたにもかかわらず、運転者の過誤等によって荷箱30の回動を開始することを防止できる。
【0052】
[第2実施形態]
第2実施形態では、必要傾斜角を求める方法が第1実施形態とは異なる。以下の第2実施形態、および他の実施形態の説明では、第1実施形態と共通の機能を奏する部材には第1実施形態と共通の符号を使用する。また、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0053】
図10は、第2実施形態に係るダンプトラック1の側面図である。
図11は、第2実施形態に係る排出判定システム100のブロック図である。
図10に示すように、第2実施形態に係るダンプトラック1は、荷箱30内の画像を取得する荷箱カメラ60を備えている。荷箱カメラ60は、ここでは、荷箱30の前壁32に設けられ、後方を撮影するように構成されている。ただし、荷箱カメラ60の位置等は特に限定されるわけではない。
図11に示すように、本実施形態では、排出判定システム100は、荷箱30に積載された積載物の重量を重量計40から取得する重量取得装置109と、荷箱カメラ60によって取得された画像から荷箱30に積載された積載物の体積を推定する体積推定装置110と、重量取得装置109によって取得された積載物の重量と体積推定装置110によって推定された積載物の体積とから、積載物の推定密度を算出する密度推定装置111と、を備えている。積載物の体積は、例えば、荷箱30内の積載物の高さを測定することによって推定される。荷箱30の底面積は、予め分かっている。なお、重量取得装置109は、重量計40からではなく、他の装置、例えば、ダンプトラック1の外部の重量計によって計測された積載物の重量を当該外部の重量計から取得するように構成されていてもよい。その場合、ダンプトラック1は重量計40を備えていなくてもよい。
【0054】
本実施形態に係るメモリ102には、積載物の密度と安息角との対応テーブルが記憶されている。本実施形態に係る必要傾斜角算出装置103は、密度推定装置111によって算出された推定密度に基づいて積載物の安息角をメモリ102の対応テーブルから読み出し、読み出した安息角に基づいて、積載物を排出可能な荷箱30の角度(必要傾斜角)を求めるように構成されている。
【0055】
積載物の安息角は、積載物の種類が同じであっても、密度に関わる要素、例えば水分の含有量や粒径によって変わり得る。本実施形態によれば、そのような積載物の種類以外の要素に対応できる。なお、積載物の安息角は、積載物の種類および密度の両方に紐づけて登録されていてもよい。
【0056】
[第3実施形態]
第3実施形態では、ダンプトラック1は、積載物の排出予定地点まで自動運転され、積載物を自動で排出する。その際、積載物を荷箱30から排出可能かどうかを自動で判定する。
【0057】
図12は、第3実施形態に係る積載物排出システム100Aのブロック図である。
図12に示すように、本実施形態に係る積載物排出システム100Aは、積載物の排出地点を設定する排出地点設定装置112と、排出地点設定装置112によって設定された排出地点まで車両本体1Aを走行させる自動運転装置113と、を備えている。排出地点設定装置112は、設定された排出地点において積載物を荷箱30から排出不能であると判定された場合には、排出地点を変更するように構成されている。また、本実施形態では、メモリ102は、ダンプ装置25によって可能な荷箱30の最大傾斜角を記憶している。ダンプ装置25によって可能な荷箱30の最大傾斜角は特に限定されないが、例えば、45度から55度である。荷箱30の最大傾斜角は、ここでは、メモリ102に安息角が記憶された全ての積載物を排出可能な角度に設定されている。ダンプトラック1は、さらに、積載物を荷箱30から排出可能であると判定装置105によって判定された場合であって可能傾斜角算出装置104によって求められた可能傾斜角がメモリ102に記憶された最大傾斜角以下である場合に、ダンプ装置25を駆動して可能傾斜角まで荷箱30を傾斜させるダンプ制御装置114を備えている。ダンプ制御装置114は、積載物を荷箱30から排出可能であると判定された場合であって可能傾斜角算出装置104によって求められた可能傾斜角がメモリ102に記憶された最大傾斜角よりも大きい場合には、ダンプ装置25を駆動して、最大傾斜角まで荷箱30を傾斜させるように構成されている。
【0058】
図13は、第3実施形態に係るダンプトラック1による積載物排出のフローチャートである。
図13に示すように、本実施形態に係る積載物排出作業では、ステップS11において、積載物の排出地点が設定される。ステップS11では、複数の排出地点の候補が優先順位とともに設定されてもよい。ステップS12では、ダンプトラック1が自動運転により、積載物の排出地点まで走行し、停車する。ステップS13では、図示しない車速センサにより、ダンプトラック1の停車が確認される。ステップS14では、駐車ブレーキ12がONされる。駐車ブレーキ12がONしたことは、駐車ブレーキ検出装置55によって検出される。ここに示す例では、PTO10は後でONされるが、駐車ブレーキ12のONの直後にONされてもよい。
【0059】
ステップS15では、積載物を荷箱30から排出可能かどうかが判定される。判定方法は、これまでに説明したいずれの方法であってもよい。ステップS15の結果がYESの場合(積載物を荷箱30から排出可能と判定された場合)、ステップS16でPTOがONされる。続くステップS17では、可能傾斜角算出装置104によって求められた可能傾斜角が荷箱30の最大傾斜角以下かどうかが判定される。可能傾斜角が荷箱30の最大傾斜角以下である場合(ステップS17の結果がYESの場合)、ステップS18Aにおいて荷箱30の傾斜角が算出された可能傾斜角に設定される。ステップS18Aに続くステップS19Aでは、荷箱30が可能傾斜角まで回動され、積載物が自動排出される。
【0060】
ステップS17の結果がNOの場合(可能傾斜角が荷箱30の最大傾斜角よりも大きい場合)、ステップS18Bにおいて荷箱30の傾斜角が荷箱30の最大傾斜角に設定される。ステップS18Bに続くステップS19Bでは、荷箱30が最大傾斜角まで回動され、積載物が自動排出される。かかる制御によれば、状況に応じて可能な最大の角度(荷箱30の上方の障害物によって荷箱30の傾斜可能角度が制限されない場合には荷箱30の最大傾斜角、荷箱30の上方の障害物によって荷箱30の傾斜可能角度が制限される場合には可能傾斜角算出装置104によって求められた可能傾斜角)まで荷箱30が傾斜されるため、迅速に積載物を排出することができる。
【0061】
ステップS15の結果がNOの場合(積載物を荷箱30から排出不能と判定された場合)、ステップS20において、排出地点が第2の候補地点に変更される。ステップS20の後、再びステップS12が行われる。ステップS12からの流れは、前述と同じである。
【0062】
ステップS19AまたはS19Bの積載物の排出が完了すると、ステップS21において荷箱30が着座される。このとき、重量計40が計測する荷箱30の重量により、積載物の排出が完了したかどうかが判定されてもよい。ステップS22では、PTO10がOFFされる。これにより、ダンプトラック1は、走行可能な状態となる。
【0063】
本実施形態によれば、自動運転のダンプトラック1において、積載物が排出不可の場合のやり直し作業の一部を省略することができる。自動運転では、積載物が荷箱30から滑り落ち始めたかどうかを運転者が確認しない。そのため、積載物を荷箱30から排出可能かどうかを排出作業前に判定する技術は、自動運転の場合にも有効である。
【0064】
以上、本発明の実施のいくつかの形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎない。本発明は、他にも様々な形態で実施することができる。例えば、積載物の種類は、カメラ等で撮像した積載物の画像に基づき、人工知能(AI)によって特定されてもよい。その他、特に言及されない限り、実施形態は本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0065】
1 ダンプトラック(ダンプ車両)
1A 車両本体
25 ダンプ装置
30 荷箱
40 重量計
45 上方センサ(検出装置)
60 荷箱カメラ(撮像装置)
101 入力装置
102 メモリ(記憶装置)
103 必要傾斜角算出装置(第1処理装置)
104 可能傾斜角算出装置(第2処理装置)
105 判定装置
107 警告装置
109 重量取得装置
110 体積推定装置
111 密度推定装置
112 排出地点設定装置
113 自動運転装置
114 ダンプ制御装置