IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

特開2024-82993電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082993
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197262
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB21
3D333CC14
3D333CD05
3D333CD09
3D333CD14
3D333CD21
3D333CD23
3D333CD27
3D333CD44
3D333CE04
3D333CE06
3D333CE10
(57)【要約】
【課題】より小型化される電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】電動パワーステアリング装置は、ピニオン軸に取り付けられるウォームホイールと、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、ピニオン軸を収容し第1取付部を有する第1ハウジングと、第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、第2取付部を第1取付部に対して支持する支持部材と、を備える。第1取付部および第2取付部の少なくとも一方には支持穴が設けられ、他方には、支持穴に挿入される支持部材が設けられる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるピニオン軸と、
前記ピニオン軸における第1方向の一方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、
第1方向と交差する第2方向に延び、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、
前記ピニオン軸を収容し且つ第1方向の一方側に第1取付部を有する第1ハウジングと、当該第1ハウジングに対して第1方向の一方側に隣接して配置され、前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容し、且つ、前記第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、
前記第2取付部を前記第1取付部に対して支持する支持部材と、
を備え、
前記第1取付部および前記第2取付部の少なくとも一方には、
止まり穴または貫通孔である支持穴が設けられ、他方には、当該支持穴に挿入される前記支持部材が設けられる、
電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記第1ハウジングにおける第1方向の一方側には、
前記ピニオン軸の外周側であって前記第1取付部の内周側に配置され、且つ、第1方向の一方側に凸に形成される環状凸部が設けられ、
前記第2ハウジングにおける第1方向の他方側には、前記環状凸部に挿入される環状凹部が設けられ、当該環状凹部の内周面と前記環状凸部の外周面との間には間隙が設けられる、
請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記支持部材は、第1方向に延びるピンであり、
前記支持穴は、前記第1取付部および前記第2取付部にそれぞれ設けられ、
前記ピンは、前記第1取付部の前記支持穴と前記第2取付部の前記支持穴との双方に挿入される、
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記ピンは、前記第1取付部の前記支持穴と前記第2取付部の前記支持穴との双方に、しまり嵌めの状態で嵌まる、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記支持穴は、
前記第1取付部に設けられ且つ互いに離隔して配置される第1支持穴および第2支持穴と、前記第2取付部に設けられ、且つ、前記第1支持穴に対応して配置される第3支持穴および前記第2支持穴に対応して配置される第4支持穴と、を含み、
前記ピンは、第1ピンおよび第2ピンを含み、
前記第1支持穴および前記第3支持穴には、前記第1ピンがしまり嵌めの状態で嵌合され、
前記第2支持穴および前記第4支持穴には、前記第2ピンが挿入され、
前記第2支持穴および前記第4支持穴の一方においては、前記第2ピンがしまり嵌めの状態で嵌合され、
前記第2支持穴および前記第4支持穴の他方は、第1方向から見て、前記第1ピンを中心とする第1円弧の周方向に沿って延びる円弧状であり、前記第2支持穴および前記第4支持穴の前記他方においては、前記第2ピンが挿入された状態で当該他方の支持穴の周方向の端部の内周面と前記第2ピンとの間に間隙が設けられる、
請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記支持穴は、
前記第1取付部および前記第2取付部において、第1方向から見て、前記ウォームホイールと前記ウォームシャフトとの間の領域に配置される、
請求項3から5のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
前記ボルトは、第1ボルトおよび第2ボルトを含み、
前記第1取付部は、第1方向から見て、前記ウォームホイールに対して前記ウォームシャフトの反対側に位置する第1フランジと、前記ウォームシャフトに対して前記ウォームホイールの反対側に位置する第2フランジとを有し、
前記第2取付部は、前記第1フランジに対応する第3フランジと、前記第2フランジに対応する第4フランジとを有し、
前記第1フランジおよび前記第3フランジは、前記第1ボルトを介して締結され、
前記第2フランジおよび前記第4フランジは、前記第2ボルトを介して締結される、
請求項6に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
第1方向に延びるピニオン軸と、
前記ピニオン軸における第1方向の一方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、
第1方向と交差する第2方向に延び、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、
前記ピニオン軸を収容し且つ第1方向の一方側に第1取付部を有する第1ハウジングと、当該第1ハウジングに対して第1方向の一方側に隣接して配置され、前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容し、且つ、前記第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、
前記第2取付部を前記第1取付部に対して、第1方向から見て揺動可能に支持する支持部材と、
を備え、
前記第1取付部および前記第2取付部の一方には、前記ボルトが貫通する第1ボルト孔が設けられ、他方には、前記ボルトの雄ねじ部が噛み合う雌ねじ部を有する第2ボルト孔が設けられる、
電動パワーステアリング装置の製造方法であって、
前記第1取付部に対して第1方向の一方側に前記第2取付部を配置した状態で、前記第1ボルト孔から前記ボルトを挿入し前記第2ボルト孔の前記雌ねじ部に前記ボルトの前記雄ねじ部を仮締めすることにより、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを仮組み付けする、ハウジングの仮組み付けステップと、
前記ハウジングの仮組み付けステップの後に、検査装置を用いて、前記ウォームシャフトを回転させたときのトルクの値を検出し、当該トルクの値が規格範囲の上限値よりも大きい、または、下限値よりも小さい場合に、前記第1ハウジングに対して前記第2ハウジングを前記支持部材を中心に揺動させて、当該トルクの値が前記規格範囲の前記上限値と前記下限値との間になるように、前記ホイール歯部と前記シャフト歯部との噛み合い状態を調整する、ウォームシャフトのトルク調整ステップと、
前記ウォームシャフトのトルク調整ステップの後に、前記ボルトの前記雄ねじ部を前記第2ボルト孔の前記雌ねじ部に本締めすることにより、前記第1ハウジングに前記第2ハウジングを本組み付けする、ハウジングの本組み付けステップと、を含む、
電動パワーステアリング装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電動パワーステアリング装置は、ピニオン軸と、ウォームホイールと、ウォームシャフトと、ハウジングと、を備える。具体的には、ピニオン軸の軸方向の端部にウォームホイールが取り付けられる。ウォームホイールの径方向外側にはウォーム歯部が設けられ、当該ウォーム歯部は、ウォームシャフトのシャフト歯部に噛み合う。ウォームシャフトは、モータの出力軸に回転可能に取り付けられる。
【0003】
ハウジングは、ピニオン軸を収容する第1ハウジングと、ウォームホイールおよびウォームシャフトを収容する第2ハウジングと、を備える。第1ハウジングには、径方向外側に突出する複数の第1フランジが設けられ、第2ハウジングには、第1フランジに重なる第2フランジが複数設けられる。第1フランジは、ボルトを介して第2フランジに締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-271913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1フランジ、第2フランジおよびボルトの数を減らして、径方向の突出長さを小さくすればハウジング全体を小型化することができる。
【0006】
ここで、ウォームシャフトからウォームホイールに力が伝達されると、その反作用としてウォームホイールからウォームシャフトに反力が加わる。ボルトの数を減らすと、当該反力を抑えきれずに第2ハウジングが第1ハウジングから外れやすくなるため、第1フランジ、第2フランジおよびボルトの数を減らしてハウジングを小型化することが困難である。
【0007】
本開示は、前述の課題に鑑みてなされたものであって、より小型化される電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、一態様に係る電動パワーステアリング装置は、第1方向に延びるピニオン軸と、前記ピニオン軸における第1方向の一方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、第1方向と交差する第2方向に延び、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、前記ピニオン軸を収容し且つ第1方向の一方側に第1取付部を有する第1ハウジングと、当該第1ハウジングに対して第1方向の一方側に隣接して配置され、前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容し、且つ、前記第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、前記第2取付部を前記第1取付部に対して支持する支持部材と、を備え、前記第1取付部および前記第2取付部の少なくとも一方には、止まり穴または貫通孔である支持穴が設けられ、他方には、当該支持穴に挿入される前記支持部材が設けられる。
【0009】
前述したように、特許文献1では、第1フランジ、第2フランジおよびボルトの数を減らして、径方向の突出長さを小さくすればハウジングを小型化することができる。しかし、ボルトの数を減らすと、ウォームホイールからウォームシャフトに加わる反力を抑えきれずに、第2ハウジングが第1ハウジングから外れる可能性がある。従って、第1フランジ、第2フランジおよびボルトの数を減らしてハウジングを小型化することが困難である。
【0010】
これに対して、本開示では、ボルトに加えて支持部材を介して第1取付部および第2取付部を支持する。ここで、本開示において、ボルトを介して第1取付部と第2取付部とを締結するためには、締結工具をボルトの頭部に嵌めてボルトを回転させながら、ボルトの雄ねじ部を、第1取付部または第2取付部の雌ねじ部に締結させる作業が必要となる。よって、電動パワーステアリング装置におけるボルトを配置する部位に、ボルト締結作業を行うスペースが必要となる。また、ボルトは、頭部の径が雄ねじ部の径よりも大きくなるため、例えば、ボルトをハウジングの上側から締結させる場合、ボルトの頭部を配置できるスペースが必要となる。このように、ボルトを介する締結では、ハウジングに締結スペースが必要となるが、ハウジングにおける径方向の内側の部位には締結スペースが少ないため、径方向の外側端部のフランジを設け、当該フランジにボルトを配置することが想定される。このように、ボルトのみの締結では、ハウジングが径方向に大きくなってしまう。
【0011】
これに対して、本開示のように、ボルトに加えて支持部材を設け、第1取付部または第2取付部に支持穴を設け、当該支持穴に支持部材を挿入する態様にすれば、ボルトのみによる締結よりもスペースが小さくてもすむ。従って、本開示によれば、ボルトおよびフランジの数を減らしてハウジングを小型化することが可能となる。
【0012】
望ましい態様として、前記第1ハウジングにおける第1方向の一方側には、前記ピニオン軸の外周側であって前記第1取付部の内周側に配置され、且つ、第1方向の一方側に凸に形成される環状凸部が設けられ、前記第2ハウジングにおける第1方向の他方側には、前記環状凸部に挿入される環状凹部が設けられ、当該環状凹部の内周面と前記環状凸部の外周面との間には間隙が設けられる。
【0013】
従って、環状凸部に環状凹部を挿入した状態で、第1ハウジングに対して第2ハウジングを径方向に移動させることが可能である。従って、例えば、ウォームホイールとウォームシャフトとの相対距離を変えることにより、ホイール歯部とシャフト歯部との噛み合い状態を調整することが可能となる。
【0014】
望ましい態様として、前記支持部材は、第1方向に延びるピンであり、前記支持穴は、前記第1取付部および前記第2取付部にそれぞれ設けられ、前記ピンは、前記第1取付部の前記支持穴と前記第2取付部の前記支持穴との双方に挿入される。
【0015】
従って、第1取付部の支持穴と第2取付部の支持穴との双方にピンを挿入するという簡単な作業で、第1ハウジングに第2ハウジングを支持させることができる。
【0016】
望ましい態様として、前記ピンは、前記第1取付部の前記支持穴と前記第2取付部の前記支持穴との双方に、しまり嵌めの状態で嵌まる。これによれば、第1ハウジングに対する第2ハウジングの径方向の移動を阻止した状態で、第1ハウジングに第2ハウジングを支持させることができる。
【0017】
望ましい態様として、前記支持穴は、前記第1取付部に設けられ且つ互いに離隔して配置される第1支持穴および第2支持穴と、前記第2取付部に設けられ、且つ、前記第1支持穴に対応して配置される第3支持穴および前記第2支持穴に対応して配置される第4支持穴と、を含み、前記ピンは、第1ピンおよび第2ピンを含み、前記第1支持穴および前記第3支持穴には、前記第1ピンがしまり嵌めの状態で嵌合され、前記第2支持穴および前記第4支持穴には、前記第2ピンが挿入され、前記第2支持穴および前記第4支持穴の一方においては、前記第2ピンがしまり嵌めの状態で嵌合され、前記第2支持穴および前記第4支持穴の他方は、第1方向から見て、前記第1ピンを中心とする第1円弧の周方向に沿って延びる円弧状であり、前記第2支持穴および前記第4支持穴の前記他方においては、前記第2ピンが挿入された状態で当該他方の支持穴の周方向の端部の内周面と前記第2ピンとの間に間隙が設けられる。
【0018】
これによれば、第1ハウジングに対して第2ハウジングを、平面視で第1ピンを中心とする円弧に沿って揺動させることができる。従って、例えば、ホイール歯部とシャフト歯部との噛み合い状態を調整することが容易になる。
【0019】
望ましい態様として、前記支持穴は、前記第1取付部および前記第2取付部において、第1方向から見て、前記ウォームホイールと前記ウォームシャフトとの間の領域に配置される。
【0020】
ウォームシャフトは、ウォームホイールからの反力を受けるため、第2ハウジングにおいてウォームシャフトの近傍部分が、最も第1ハウジングから外れる力が大きくなる。従って、ウォームホイールとウォームシャフトとの間の領域に支持穴を配置し、当該支持穴にピンを挿入することにより、より少ない数のピンで第1ハウジングに第2ハウジングを支持することができる。
【0021】
望ましい態様として、前記ボルトは、第1ボルトおよび第2ボルトを含み、前記第1取付部は、第1方向から見て、前記ウォームホイールに対して前記ウォームシャフトの反対側に位置する第1フランジと、前記ウォームシャフトに対して前記ウォームホイールの反対側に位置する第2フランジとを有し、前記第2取付部は、前記第1フランジに対応する第3フランジと、前記第2フランジに対応する第4フランジとを有し、前記第1フランジおよび前記第3フランジは、前記第1ボルトを介して締結され、前記第2フランジおよび前記第4フランジは、前記第2ボルトを介して締結される。
【0022】
このように、ボルトを2本配置する場合は、ウォームホイールに対してウォームシャフトの反対側に位置する第1フランジおよび第3フランジと、ウォームシャフトに対してウォームホイールの反対側に位置する第2フランジおよび第4フランジとに配置することが望ましい。即ち、第1フランジおよび第3フランジにボルトを配置することにより、ウォームホイールをより強固に支持することができ、第2フランジおよび第4フランジにボルトを配置することにより、ウォームシャフトをより強固に支持することができる。
【0023】
一態様に係る電動パワーステアリング装置の製造方法は、第1方向に延びるピニオン軸と、前記ピニオン軸における第1方向の一方側に取り付けられ、且つ、外周にホイール歯部が設けられるウォームホイールと、第1方向と交差する第2方向に延び、前記ホイール歯部と噛み合うシャフト歯部を有し、且つ、モータの駆動力によって回転するウォームシャフトと、前記ピニオン軸を収容し且つ第1方向の一方側に第1取付部を有する第1ハウジングと、当該第1ハウジングに対して第1方向の一方側に隣接して配置され、前記ウォームホイールおよび前記ウォームシャフトを収容し、且つ、前記第1取付部にボルトを介して取り付けられる第2取付部を有する第2ハウジングと、を含むハウジングと、前記第2取付部を前記第1取付部に対して、第1方向から見て揺動可能に支持する支持部材と、を備え、前記第1取付部および前記第2取付部の一方には、前記ボルトが貫通する第1ボルト孔が設けられ、他方には、前記ボルトの雄ねじ部が噛み合う雌ねじ部を有する第2ボルト孔が設けられる、電動パワーステアリング装置の製造方法であって、前記第1取付部に対して第1方向の一方側に前記第2取付部を配置した状態で、前記第1ボルト孔から前記ボルトを挿入し前記第2ボルト孔の前記雌ねじ部に前記ボルトの前記雄ねじ部を仮締めすることにより、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを仮組み付けする、ハウジングの仮組み付けステップと、前記ハウジングの仮組み付けステップの後に、検査装置を用いて、前記ウォームシャフトを回転させたときのトルクの値を検出し、当該トルクの値が規格範囲の上限値よりも大きい、または、下限値よりも小さい場合に、前記支持部材を中心にして、前記第1ハウジングに対して前記第2ハウジングを揺動させて、当該トルクの値が前記規格範囲の前記上限値と前記下限値との間になるように、前記ホイール歯部と前記シャフト歯部との噛み合い状態を調整する、ウォームシャフトのトルク調整ステップと、前記ウォームシャフトのトルク調整ステップの後に、前記ボルトの前記雄ねじ部を前記第2ボルト孔の前記雌ねじ部に本締めすることにより、前記第1ハウジングに前記第2ハウジングを本組み付けする、ハウジングの本組み付けステップと、を含む。
【0024】
このように、本開示に係る電動パワーステアリング装置の製造方法では、ウォームシャフトのトルクを検出して規格範囲を外れた場合は、支持部材を中心に第2ハウジングを揺動させてホイール歯部とシャフト歯部との噛み合い状態を調整する。即ち、単に、第1ハウジングに第2ハウジングを組み付けるだけではなく、ホイール歯部とシャフト歯部との噛み合い状態を適正な状態にしたのち、第1ハウジングに第2ハウジングを組み付ける。よって、ウォームシャフトとウォームホイールとのガタつきによる騒音が抑制され、且つ、ステアリングホイールの操舵がより軽くなる状態となる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、より小型化される電動パワーステアリング装置および電動パワーステアリング装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
図2図2は、図1の一部を示す斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III線による断面図である。
図4図4は、図1の一部を示す斜視図である。
図5図5は、図4を別の方向から見た斜視図である。
図6図6は、図5から第2ハウジングを取り外した状態を示す模式図である。
図7図7は、第1の態様に係る支持穴の配置を示す模式図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線による断面図である。
図9A図9Aは、図7のIXA-IXA線による断面図である。
図9B図9Bは、図7のIXB-IXB線による断面図である。
図10図10は、平行ピンを示す模式図であり、(a)は平行ピンの側面図、(b)は平行ピンの平面図である。
図11図11は、テーパーピンの側面図である。
図12図12は、溝ピンを示す模式図であり、(a)は溝ピンの側面図、(b)は溝ピンの平面図である。
図13図13は、第2の態様に係る支持穴の配置を示す模式図である。
図14図14は、ウォームシャフトの揺動を示す模式図である。
図15図15は、ピンを配置する領域を示す模式図である。
図16図16は、ボルトを配置する領域を示す模式図である。
図17図17は、ウォームシャフトのフリクションの検査装置を示す模式図である。
図18図18は、ウォームシャフトの角度と実トルクとの関係を概念的に示すグラフである。
図19図19は、実トルクが規格下限値より小さい状態を概念的に示す、ウォームシャフトの角度と実トルクとの関係を示すグラフである。
図20図20は、実トルクが規格上限値より大きい状態を概念的に示す、ウォームシャフトの角度と実トルクとの関係を示すグラフである。
図21図21は、ウォームシャフトのフリクションの調整による実トルクの変化を概念的に示すグラフである。
図22図22は、変形例1に係る支持部材を介して第1取付部を第2取付部に支持する態様を示す模式図であり、(a)は第1取付部の突起を第2取付部の支持穴に挿入する前の状態を示し、(b)は第1取付部の突起を第2取付部の支持穴に挿入した後の状態を示す図である。
図23図23は、変形例2に係る貫通孔にピンを挿入した第1および第2取付部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、同一構造の部位には同一符号を付けて、説明を省略する。なお、本実施形態において、Z方向を第1方向とし、X方向を第2方向とする。Z方向は、Y方向と交差する。X方向は、Y方向およびZ方向と交差する。Z1側は第1方向の一方側、Z2側は第1方向の他方側である。
【0028】
[実施形態]
実施形態に係る電動パワーステアリング装置について説明する。図1は、実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。図2は、図1の一部を示す斜視図である。図3は、図1のIII-III線による断面図である。
【0029】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、ステアリングホイール10と、第1ステアリングシャフト11と、第2ステアリングシャフト12と、操舵ピニオン軸13と、ラック軸15と、タイロッド16と、アシストピニオン軸(ピニオン軸)21と、ウォームホイール23と、ウォームシャフト27と、モータ70と、ハウジング400と、を備える。ハウジング400は、操舵側ハウジング3と、アシスト側ハウジング40と、を含む。電動パワーステアリング装置100は、例えばいわゆるデュアルピニオンタイプのステアリング装置である。
【0030】
図1に示すように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11に連結され、第1ステアリングシャフト11は、ユニバーサルジョイント111を介して第2ステアリングシャフト12に連結される。第2ステアリングシャフト12は、ユニバーサルジョイント121を介して操舵ピニオン軸13に連結される。操舵ピニオン軸13の下端部の外周には、ピニオン歯14が設けられる。
【0031】
図1に示すように、ラック軸15は、X方向に延びる。ここで、ラック軸15の中心軸を中心軸AX2(図3参照)とすると、中心軸AX2の軸方向は、X方向に沿っている。即ち、ラック軸15は、中心軸AX2の軸方向に延びる。X方向は、例えば車両の車幅方向である。図1に示すように、ラック軸15の部位のうちX2側の外周には、ラック歯151が設けられる。ラック歯151は、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14と噛み合う。ラック軸15の部位のうちX1側の外周には、ラック歯152が設けられる。ラック歯152は、アシストピニオン軸21のピニオン歯22と噛み合う。ラック軸15のX1側およびX2側の両端部は、タイロッド16を介して車輪17に連結される。
【0032】
以上説明したように、ステアリングホイール10は、第1ステアリングシャフト11、第2ステアリングシャフト12を介して操舵ピニオン軸13に連結される。従って、運転者がステアリングホイール10に対して、左または右方向に操舵トルクを付与することにより、第1ステアリングシャフト11と第2ステアリングシャフト12とを介して操舵ピニオン軸13に操舵トルクが伝達される。そして、操舵ピニオン軸13のピニオン歯14は、ラック歯151と噛み合うため、操舵トルクは、ラック軸15がX方向に移動する力に変換される。
【0033】
また、図示しない操舵トルクセンサにより、ステアリングホイール10に付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じて、図示しないコントローラがモータ70に電流を供給する。モータ70に電流が供給されると、モータ70にウォームホイール23とウォームシャフト27とを介して接続されたアシストピニオン軸21に、モータ70が発生させたアシストトルクが伝達され、アシストピニオン軸21に接続されたラック軸15がX方向に移動するアシスト力が発生する。
【0034】
すなわち、ステアリングホイール10を操舵することにより生じる操舵トルクに応じてモータ70を駆動することにより、ラック軸15がX方向に移動することを補助することができる。
【0035】
次に、ハウジング400について説明する。図1および図2に示すように、ハウジング400は、X2側の操舵側ハウジング3とX1側のアシスト側ハウジング40とを含む。図2に示すように、操舵側ハウジング3のX2側の端部およびアシスト側ハウジング40のX1側の端部には、それぞれ車体取付部31、413が取り付けられる。車体取付部31には、貫通孔32が設けられ、貫通孔32に締結部材(例えばボルト)が挿入される。車体取付部413には、貫通孔414が設けられ、貫通孔414に締結部材(例えばボルト)が挿入される。即ち、締結部材を貫通孔32、414に貫通させたのち車体に締結することにより、操舵側ハウジング3およびアシスト側ハウジング40が車体に取り付けられる。
【0036】
操舵側ハウジング3には、操舵ピニオン軸13およびラック軸15におけるX2側の部位が収容される。具体的には、操舵ピニオン軸13の先端部は、操舵ピニオン軸収容部33の内部に収容される。アシスト側ハウジング40には、アシストピニオン軸21、ウォームホイール23、ウォームシャフト27およびラック軸15におけるX2側の部位が収容される。
【0037】
図2および図3に示すように、アシスト側ハウジング40は、ラック軸収容部411と、第1ハウジング4と、第2ハウジング5と、を備える。ラック軸収容部411は、ラック軸15を収容する。第1ハウジング4は、アシストピニオン軸(ピニオン軸)21を収容する。第1ハウジング4は、本体部41と、本体部41におけるZ1側(第1方向の一方側)の部位に設けられるフランジ(第1取付部)42とを有する。第2ハウジング5は、第1ハウジング4に対してZ1側に隣接して配置される。第1ハウジング4および第2ハウジング5については、詳細に後述する。
【0038】
図3に示すように、アシストピニオン軸21は、Z方向(第1方向)に延びる。アシストピニオン軸21は、ピニオン歯22を有する。アシストピニオン軸21におけるZ1側の部位は、軸受242を介してフランジ42に回転可能に支持される。アシストピニオン軸21におけるZ2側の部位は、軸受241を介して本体部41に回転可能に支持される。アシストピニオン軸21におけるZ2側の端部にはナット25が締結される。ナット25は、軸受241を支持する。
【0039】
ラック軸15は、Y1側の側面にラック歯152を有する。ラック歯152は、ピニオン歯22と噛み合う。ラック軸15におけるY2側の側面は、湾曲面である。ラック軸15のY2側には、ラックガイド153と、スプリング154と、封止部材155と、が設けられる。具体的には、筒状のラックガイド収容部412が第1ハウジング4からY2側に向けて突出する。ラックガイド収容部412の内側に、ラックガイド153と、スプリング154と、が収容される。ラックガイド収容部412のY2側の端部には、封止部材155が嵌められる。スプリング154が縮んだ状態で、ラックガイド153とスプリング154とが収容されるため、スプリング154がラックガイド153をY1側に押すと、ラックガイド153がアシストピニオン軸21に押し付けられる。これにより、ラック軸15のラック歯152とアシストピニオン軸21のピニオン歯22との噛み合いが保持される。
【0040】
図3に示すように、ウォームホイール23は、アシストピニオン軸21のZ1側の端部に嵌合される。ウォームホイール23は、芯金部231と、ホイール歯部232とを備える。ホイール歯部232は、ウォームシャフト27のシャフト歯部271に噛み合う。ウォームシャフト27は、中心軸AX1を有する。中心軸AX1は、X方向(第2方向)に延びる。ウォームシャフト27は、モータ70(図2参照)の出力軸に回転可能に取り付けられる。即ち、図2に示すように、モータ取付フランジ部7は、第2ハウジング5の一部であり、モータ取付フランジ部7にモータ70が取り付けられる。このモータ70が回転駆動すると、出力軸と共にウォームシャフト27が回転し、ウォームシャフト27に噛み合うウォームホイール23も回転する。
【0041】
次に、第1ハウジング4および第2ハウジング5について説明する。図3に示すように、第1ハウジング4は、本体部41と、フランジ42と、を備える。
【0042】
本体部41は、Z方向に延びる筒状の部材である。本体部41は、アシストピニオン軸21における軸受242が取り付けられる部位よりもZ2側の部位を収容する。本体部41におけるZ2側の端部は開口され、当該開口はキャップ26で封止される。
【0043】
フランジ42は、本体部41におけるZ1側の端部から径方向外側に向けて延びる。フランジ42は、第1取付部とも称する。フランジ42は、径方向内側に環状凸部401を有する。環状凸部401は、Z1側に凸に形成される。環状凸部401は、中心軸AX3の軸回りの周方向に沿って延びる。環状凸部401の外周面401aには、シール部材収容溝514が周方向に沿って設けられる。シール部材収容溝514は、径方向内側に凹む。シール部材収容溝514には、シール部材Sが収容される。環状凸部401の内周面401bには、軸受242の外輪が当接する。環状凸部401は、アシストピニオン軸21の外周側であってフランジ42の内周側に配置される。なお、環状凸部401に対してZ1側には、ウォームホイール23が配置される。
【0044】
図3に示すように、第2ハウジング5は、ウォームホイール23およびウォームシャフト27を収容する。第2ハウジング5は、側面部51と、天面部52と、第2取付部330とを有する。側面部51は、ウォームホイール23およびウォームシャフト27の側部を外周側から覆う。天面部52は、ウォームホイール23およびウォームシャフト27の上部(Z1側の部位)をZ1側から覆う。側面部51には、環状凸部401に嵌まる環状凹部402が設けられる。図3では明記していないが、環状凹部402の内周面402aと環状凸部401の外周面401aとの間には、径方向に小さい間隙が設けられる。
【0045】
第2取付部330は、例えば、フランジ331であり、当該フランジ331は、第1取付部のフランジ42にボルト200を介して締結される。本実施形態では、Z2側からZ1側に向けてボルトBLを挿入して締結する。即ち、フランジ42には、ボルトBLの雄ねじ部220が貫通する第1ボルト孔42aが設けられ、フランジ331には、雌ねじ部332を有する第2ボルト孔333が設けられる。ボルトBLの頭部210は、フランジ42の下面に当接する。ボルトBLの雄ねじ部220は、フランジ42の第1ボルト孔42aを貫通してフランジ331の雌ねじ部332に噛みあう。これにより、フランジ42とフランジ331とがボルトBLを介して固定される。
【0046】
なお、ボルトBLの上下位置は、反対であってもよい。即ち、ボルトBLの頭部210がZ1側で雄ねじ部220がZ2側であり、第2取付部330のフランジ331に第1ボルト孔を形成し、フランジ42に第2ボルト孔を形成してもよい。
【0047】
次に、第1取付部および第2取付部に設けられるフランジについて具体的に説明する。図4は、図1の一部を示す斜視図である。図5は、図4を別の方向から見た斜視図である。図6は、図5から第2ハウジングを取り外した状態を示す模式図である。図7は、第1の態様に係る支持穴の配置を示す模式図である。
【0048】
図4から図6に示すように、第1取付部であるフランジ42は、第1フランジ424と第2フランジ425A、425Bとを含み、第2取付部330であるフランジ331は、第3フランジ334と第4フランジ335A、335Bとを含む。
【0049】
第1フランジ424は、第3フランジ334に対応する。具体的には、第1フランジ424のZ1側に第3フランジ334が重なる。第2フランジ425Aは、第4フランジ335Aに対応する。具体的には、第2フランジ425AのZ1側に第4フランジ335Aが重なる。第2フランジ425Bは、第4フランジ335Bに対応する。具体的には、第2フランジ425BのZ1側に第4フランジ335Bが重なる。
【0050】
ここで、図6に示すように、第1ハウジング4の環状凸部401には、周方向に沿って複数の凹部43が等間隔で配置される。凹部43は、Z2側に凹む。図3を参照して説明したように、環状凸部401に対してZ1側には、ウォームホイール23が配置される。従って、第1フランジ424および第3フランジ334は、Z方向から見て、ウォームホイール23に対してウォームシャフト27の反対側(即ち、ウォームホイール23に対してY2側)に位置する。また、第2フランジ425A、425Bと第4フランジ335A、335Bとは、Z方向から見て、ウォームシャフト27に対してウォームホイール23の反対側(即ち、ウォームシャフト27に対してY1側)に位置する。第2フランジ425Aおよび第4フランジ335Aは、第2フランジ425Bおよび第4フランジ335Bに対してX2側に位置する。
【0051】
また、第1フランジ424、第2フランジ425Aおよび第2フランジ425Bには、それぞれボルト孔424a、425Aa、425Baが設けられる。第3フランジ334、第4フランジ335Aおよび第4フランジ335Bには、それぞれボルト孔334a、335Aa、335Baが設けられる。
【0052】
ボルト孔424aは、ボルト孔334aに対応する。ボルト孔424aとボルト孔334aとの一方は、前述した第1ボルト孔であり、他方は第2ボルト孔である。ボルト孔425Aaは、ボルト孔335Aaに対応する。ボルト孔425Aaとボルト孔335Aaとの一方は、前述した第1ボルト孔であり、他方は第2ボルト孔である。ボルト孔425Baは、ボルト孔335Baに対応する。ボルト孔425Baとボルト孔335Baとの一方は、前述した第1ボルト孔であり、他方は第2ボルト孔である。
【0053】
また、図7に示すように、本実施形態において、ボルトBLは、例えば、第1ボルトBL1および第2ボルトBL2、BL3を含む。第1フランジ424および第3フランジ334は、第1ボルトBL1を介して締結される。第2フランジ425Aおよび第4フランジ335Aは、第2ボルトBL2を介して締結される。第2フランジ425Bおよび第4フランジ335Bは、第2ボルトBL3を介して締結される。
【0054】
(第1の態様に係る支持穴の配置)
次に、ピンの支持穴を配置する位置(領域)を説明する。まず、第1の態様に係る支持穴の位置を説明する。図7は、第1の態様に係る支持穴の配置を示す模式図である。図8は、図7のVIII-VIII線による断面図である。図9Aは、図7のIXA-IXA線による断面図である。図9Bは、図7のIXB-IXB線による断面図である。図10は、平行ピンを示す模式図であり、(a)は平行ピンの側面図、(b)は平行ピンの平面図である。図11は、テーパーピンの側面図である。図12は、溝ピンを示す模式図であり、(a)は溝ピンの側面図、(b)は溝ピンの平面図である。
【0055】
本実施形態では、第1取付部であるフランジ42は、第2取付部330であるフランジ331に対して支持部材640を介して支持される。即ち、前述したように、第1取付部と第2取付部330とは、ボルトBLを介して締結されるが、更に、支持部材640を介して、第1取付部に対して第2取付部330が支持される。以下に詳細に説明する。
【0056】
支持部材640は、例えば、一例としてピン650が適用可能であるが、本発明では、ピン650以外にも、突起650Aであってもよい。突起650Aについては、後述する変形例で説明する。本実施形態では、ピン650を適用した例を以下に説明する。
【0057】
図7では、ピン650を挿入する支持穴600として2箇所に設ける例を示すが、少なくとも1箇所あればよい。すなわち、止まり穴610、または、止まり穴620を備えていればよい。
【0058】
止まり穴610および止まり穴620は、挿入されるピン650と当接することにより、それぞれ、ウォームホイール23からウォームシャフト27に加わる反力を受けることで、第1ハウジング4に対する第2ハウジング5の回転を抑制することができる。また、止まり穴610を中心に第1ハウジング4に対して第2ハウジング5を回転(揺動)させることにより、ウォームホイール23とウォームシャフト27との間の噛み合いを調整することができる。
【0059】
なお、図7では、Z2側の第1取付部(フランジ42)を示しており、第2取付部330は省略している。支持穴600は、例えば「止まり穴600A」および「貫通孔」を含むが、本実施形態では、「止まり穴600A」を適用した態様を説明し、後述する変形例2において、「貫通孔600C、600D」を適用した態様を説明する。
【0060】
図7に示す止まり穴610(支持穴600、止まり穴600A)は、Z方向から見て円形である。具体的には、図8に示すように、第1取付部(フランジ42)に設ける止まり穴610と、第2取付部330に設ける止まり穴611と、は共にZ方向から見て円形である。ピン650はZ方向に延びる円柱形状を有する。ピン650は、止まり穴610と止まり穴611との双方にしまり嵌めの状態で嵌まる。詳細には、止まり穴610の周方向の全周および止まり穴611の周方向の全周に、ピン650がしまり嵌めの状態で嵌まる。
【0061】
図7に示す止まり穴620(支持穴600、止まり穴600A)は、Z方向から見て略楕円形である。具体的には、図9Aに示すように、略楕円形の短軸方向においては、第1取付部(フランジ42)に設ける止まり穴620と、第2取付部330に設ける止まり穴631との双方に、ピン650がしまり嵌めの状態で嵌まる。
【0062】
しかし、図9Bに示すように、略楕円形の長軸方向においては、第1取付部(フランジ42)に設ける止まり穴620の内周面とピン650との間には、間隙が設けられる。第2取付部330に設ける止まり穴631には、ピン650がしまり嵌めの状態で嵌まる。従って、第2取付部330に対して第1取付部(フランジ42)が移動可能である。なお、第1取付部(フランジ42)に設ける止まり穴620にピン650がしまり嵌めの状態で嵌まり、第2取付部330に設ける止まり穴631の内周面とピン650との間には、間隙が設けられるようにしてもよい。
【0063】
なお、ピン650は、種々の形状のものが適用可能である。例えば、図10に示すような平行ピン660は、軸方向に延びる細長い円柱形状であり、軸方向のいずれの断面においても同一径の円の断面形状を有する。よって、(a)では長方形の形状を有し、(b)では円形の形状を有する。図11は、テーパーピン670を示す。テーパーピン670は、軸方向の一方側に向かうに従って径が徐々に小さくなる形状を有する。図12は、溝ピン680を示す。(a)に示すように、溝ピン680の外周面682には、軸方向に延びる溝部681が設けられる。(b)に示すように、溝部681に対して周方向の両側には、突起683が設けられる。
【0064】
(第2の態様に係る支持穴の配置)
図13は、第2の態様に係る支持穴の配置を示す模式図である。図14は、ウォームシャフトの揺動を示す模式図である。
【0065】
図13および図14に示すように、第2の態様に係る支持穴は、第1取付部であるフランジ42に設けられる止まり穴610(第1支持穴)と止まり穴620A(第2支持穴)とを含む。ピン650は、第1ピン651と第2ピン652とを含む。第1ピン651および第2ピン652は共に平行ピンである。図14に示すように、止まり穴610(第1支持穴)には、第1ピン651が嵌まり、止まり穴620A(第2支持穴)には第2ピン652が嵌まる。
【0066】
止まり穴610(第1支持穴)は、図7および図8を参照して説明した止まり穴と同じである。よって、第1ピン651は、止まり穴610(第1支持穴)の周方向の全周および止まり穴610(第1支持穴)に対応する止まり穴611(第3支持穴)の周方向の全周に、しまり嵌めの状態で嵌まる。
【0067】
止まり穴620A(第2支持穴)は、Z方向から見て、第1ピン651を中心とする第1円弧C1の周方向に沿って延びる円弧状であるが、周方向に沿って延びる略楕円形であってもよい。従って、図9Bと同様に、止まり穴620A(第2支持穴)の長手方向(第1円弧C1の周方向)においては、第1取付部(フランジ42)に設ける止まり穴620A(第2支持穴)の周方向の端部の内周面と第2ピン652との間には、間隙が設けられる。止まり穴620A(第2支持穴)に対応して第2取付部330に設けられる第4支持穴には、第2ピン652がしまり嵌めの状態で嵌まる。従って、第1取付部(フランジ42)に対して第2取付部330が、第1ピン651を中心とする第1円弧C1の周方向に沿って揺動可能である。
【0068】
具体的には、図14に示すように、第2ハウジング5に収容されるウォームシャフト27は、矢印Pの方向に移動可能である。例えば、第2ハウジング5に力を加えることにより、ウォームシャフト27Aからウォームシャフト27Bを経てウォームシャフト27Cの位置に移動する。
【0069】
(支持穴の配置領域)
図15は、ピンを配置する領域を示す模式図である。図15に示すように、ピン650を配置する領域は、例えば、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3が望ましく、特に第1領域R1が望ましい。第1領域R1は、モータ取付フランジ部7の付近に形成される。モータ取付フランジ部7には、モータ70が取り付けられるため、モータ取付フランジ部7付近は、比較的高強度に形成する必要がある。従って、モータ取付フランジ部7付近の部位は、肉厚を厚くする等の対策により、強度を高くして金属材料をより多く設けられる。
【0070】
また、第2ハウジング5を鋳造で成形する場合、第1領域R1付近に空間を設けようとすると第1領域R1付近に中子を配置する必要がある。しかし、鋳造工程が複雑化するため、第1領域R1付近には中子を配置しない場合が多い。この場合、当該第1領域R1付近には、金属材料が多く設けられる。
【0071】
すなわち、第1領域R1は、ピン650を配置するための金属材料とスペースが確保しやすいため、第1領域R1を設ける領域として好適である。
【0072】
第1領域R1は、第1取付部および第2取付部330において、ウォームホイール23とウォームシャフト27との間であってX2側に位置する領域である。第1領域R1は、縁r11と、縁r12と、縁r13とで囲まれる。縁r11は、ウォームホイール23とウォームシャフト27との間における第1取付部および第2取付部330のX2側の縁である。縁r12は、ウォームホイール23の外周縁の一部である。縁r13は、ウォームシャフト27におけるY2側の縁である。
【0073】
第2領域R2は、ウォームホイール23とウォームシャフト27との間であってX1側に位置する領域である。第2領域R2は、縁r21と、縁r22と、縁r23とで囲まれる。縁r21は、ウォームホイール23とウォームシャフト27との間における第1取付部および第2取付部330のX1側の縁である。縁r22は、ウォームホイール23の外周縁の一部である。縁r23は、ウォームシャフト27におけるY2側の縁である。
【0074】
第3領域R3は、ウォームシャフト27に対してウォームホイール23と反対側に位置する。換言すると、第3領域R3は、第1取付部および第2取付部330において、ウォームシャフト27よりもY1側に位置する。第3領域R3は、縁r31と、縁r32とで囲まれる。縁r31は、第1取付部および第2取付部330におけるY1側の縁である。縁r32は、ウォームシャフト27におけるY1側の縁である。
【0075】
図16は、ボルトを配置する領域を示す模式図である。図16においては、第2フランジ427の形状が、前述した例えば図7に示す第2フランジ425A、425Bの形状と異なる。具体的には、第2フランジ425A、425Bにおいては、第2フランジ425Aと第2フランジ425Bとの間に、Z方向から見て、Y2側(ウォームホイール23側)に向けて凹む凹部が設けられる。しかし、第2フランジ427は、当該凹部がなく、第2フランジ427におけるY1側の縁は、X方向に沿って略直線状に延びる。なお、第1フランジ424は例えば図7に示す第1フランジ424と同じ形状である。即ち、第1フランジ424は、Z方向から見て、ウォームホイール23に対してウォームシャフト27の反対側に位置する。第2フランジ427は、ウォームシャフト27に対してウォームホイール23の反対側に位置する。また、第2取付部330においては、第1フランジ424に対応する第3フランジ334と、第2フランジ427に対応する第4フランジ337と、を有する。
【0076】
第1ボルトBL1は、第1フランジ424および第3フランジ334に設けたボルト孔に配置される。第2ボルトBL2は、第2フランジ427および第4フランジ337におけるX方向の中央部に設けたボルト孔に配置される。このように、2本のボルトBLを設ける場合は、図16に示す態様が望ましい。
【0077】
(ウォームシャフト27のトルク調整方法)
次に、ウォームシャフト27のトルク調整方法を説明する。トルクが規定範囲の下限値よりも小さいと、ウォームシャフト27とウォームホイール23とのガタつきによる騒音が生じる。トルクが規格範囲の上限値よりも大きいとステアリングホイール10の操舵が重くなる。従って、ウォームシャフト27のトルクを規格範囲の範囲内に収めることが望ましい。
【0078】
図17は、ウォームシャフトのフリクションの検査装置を示す模式図である。図18は、ウォームシャフトの角度と実トルクとの関係を概念的に示すグラフである。図19は、実トルクが規格下限値より小さい状態を示す、ウォームシャフトの角度と実トルクとの関係を概念的に示すグラフである。図20は、実トルクが規格上限値より大きい状態を概念的に示す、ウォームシャフトの角度と実トルクとの関係を示すグラフである。図21は、ウォームシャフトのフリクションの調整による実トルクの変化を概念的に示すグラフである。
【0079】
図17に示すように、ウォームシャフト27のフリクションの検査装置800は、検査用モータ70Aと、押圧アクチェエータ80と、図示しない制御装置と、を備える。
【0080】
検査用モータ70Aは、制御装置から回転指令θ_refを受けて、ウォームシャフト27を回転させる。検査用モータ70Aは、図示しないトルクセンサと角度センサを内蔵している。これらのトルクセンサと角度センサにより、検査用モータ70Aは、ウォームシャフト27の回転角度θ_actと、実トルクT_actと、を出力する。
【0081】
押圧アクチェエータ80は、制御装置から押圧指令F_refを受けて、実押圧F_actを出力する。押圧アクチェエータ80は、当該実押圧F_actにより、第2ハウジング5におけるウォームシャフト収納部53を押し、第1ピン651を中心として、第1ハウジング4に対して第2ハウジング5を揺動させる。
【0082】
検査用モータ70Aを回転させながら、ウォームシャフト27の回転角度θ_actと実トルクTactの関係を取得すると、図18に示すフリクション特性線図が得られる。図18における上部には、検査用モータ70Aを左回転させたときのフリクション特性線図が記載され、下部には、検査用モータ70Aを右回転させたときのフリクション特性線図が記載される。検査用モータ70Aを左回転させたときの規格範囲の上限値はL1であり、下限値はL2である。検査用モータ70Aを右回転させたときの規格範囲の下限値はL3であり、上限値はL4である。図18の態様では、検査用モータ70Aを左回転させた場合と右回転させた場合との双方において、実トルクT_actが規格範囲の範囲内に入っている。
【0083】
これに対して、図19の態様では、検査用モータ70Aを左回転させた場合と右回転させた場合との双方において、実トルクT_actが規格範囲の下限値L2、L3を下回っている。図20の態様では、検査用モータ70Aを左回転させた場合と右回転させた場合との双方において、実トルクT_actが規格範囲の上限値L1、L4を上回っている。
なお、実トルクT_actが規格範囲の下限値L2、L3を下回っている場合には、フリクションが過少であるため、ウォームシャフト27をウォームホイール23側に押し込み、ホイール歯部232とシャフト歯部271(図3参照)との噛み合いをきつくする。実トルクT_actが規格範囲の上限値L1、L4を上回っている場合には、フリクションが過大であるため、ウォームシャフト27をウォームホイール23側に押し込む量を減らし、ホイール歯部232とシャフト歯部271(図3参照)との噛み合いを緩めればよい。
【0084】
次に、ウォームシャフト27のフリクションの調整方法について説明する。まず、押圧アクチェエータ80により、第2ハウジング5におけるウォームシャフト収納部53を押圧力F=F0(所定値)で押圧し、図21に示すように、押圧しながら所定時間(t0からt1までの時間)ウォームシャフト27を回転させる。t0からt1までの時間の間に、取得したトルクが規格範囲に入っているかどうかを制御装置が判定する。規格範囲に入っていないと制御装置が判断した場合には、制御装置が押圧力を強くするか、弱くするかを判断して、検査用モータ70Aに対して制御装置が押圧指令F_refを出力する。図21の時間t0からt1までにおいては、トルクが上限値L1を超えているため、制御装置が押圧指令F_refを出力して押圧力Fを低下させる。その後、再度、所定時間(時間t1からt2まで)の間、ウォームシャフト27を回転させながら取得したトルクが規格範囲に入っているかどうかを制御装置が判定し、制御装置が押圧指令F_refを出力する。トルクが規格範囲に入るまで上記操作を繰り返す。
【0085】
(電動パワーステアリング装置の製造方法)
次に、電動パワーステアリング装置の製造方法について説明する。
【0086】
電動パワーステアリング装置の製造方法は、ハウジングの仮組み付けステップと、ウォームシャフトのトルク調整ステップと、ハウジングの本組み付けステップと、を含む。
【0087】
(ハウジング400の仮組み付けステップ)
ハウジング400の仮組み付けステップにおいては、第1ハウジング4と第2ハウジング5とを仮組み付けする。具体的には、図3に示すように、環状凸部401に環状凹部402を嵌めながら、第1ハウジング4のフランジ42(第1取付部)に対するZ1側に、第2ハウジング5の第2取付部330を配置する。そして、ボルトBLを例えばZ2側から第1ボルト孔42aに挿入し、ボルトBLを回転させながら、雄ねじ部220を雌ねじ部332の途中部分まで仮締めする。これにより、第1ハウジング4のZ1側に第2ハウジング5が仮組み付けされる。
【0088】
(ウォームシャフト27のトルク調整ステップ)
ハウジング400の仮組み付けステップの後に、ウォームシャフト27のトルク調整ステップを行う。ウォームシャフト27のトルク調整ステップは、大まかには、検査装置800を用いて、ウォームシャフト27を回転させたときのトルクの値を検出し、当該トルクの値が規格範囲の上限値よりも大きい、または、下限値よりも小さい場合に、図14を参照して説明したように、第1ハウジング4に対して第2ハウジング5を第1ピン651(支持部材)を中心に揺動させ、図21を参照して詳細に説明したように、当該トルクの値が規格範囲の上限値と下限値との間になるように、ホイール歯部232とシャフト歯部271(図3参照)との噛み合い状態を調整する。
【0089】
(ハウジング400の本組み付けステップ)
ウォームシャフト27のトルク調整ステップの後に、ハウジング400の本組み付けステップを行う。ハウジング400の仮組み付けステップにおいては、ボルトBLの雄ねじ部220を雌ねじ部332に仮締めしたが、ハウジング400の本組み付けステップにおいては、ボルトBLの雄ねじ部220を雌ねじ部332に本締めする。これにより、第1ハウジング4に第2ハウジング5が本組み付けされる。
【0090】
[変形例1]
次に、支持部材に係る変形例1を説明する。図22は、変形例1に係る支持部材を介して第1取付部を第2取付部に支持する態様を示す模式図であり、(a)は第1取付部の突起を第2取付部の支持穴に挿入する前の状態を示し、(b)は第1取付部の突起を第2取付部の支持穴に挿入した後の状態を示す図である。
【0091】
図22(a)に示すように、変形例に係る支持部材640は、突起650Aである。第2取付部330Aには、突起650Aが一体に設けられる。突起650Aは、フランジ42A側に突出する。突起650Aは、例えばピン状の凸部である。第1取付部であるフランジ42Aには、止まり穴600Bが設けられる。止まり穴600Bには、突起650Aが挿入可能である。
【0092】
従って、図22(a)の矢印に示すように、第2取付部330Aをフランジ42Aに向けて移動させると、図22(b)に示すように、突起650Aが止まり穴600Bに挿入される。これにより、突起650Aを介して、第2取付部330Aがフランジ42Aに支持される。
【0093】
[変形例2]
次に、支持穴の例として貫通孔を適用した変形例2について簡単に説明する。図23は、変形例2に係る貫通孔にピンを挿入した第1および第2取付部の断面図である。
【0094】
図23に示すように、第1取付部(フランジ42)には、支持穴600としての貫通孔600Cが厚さ方向に貫通して設けられる。第2取付部330には、支持穴600としての貫通孔600Dが厚さ方向に貫通して設けられる。貫通孔600Cおよび貫通孔600Dには、支持部材640としてのピン650が挿入および嵌合される。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置100は、アシストピニオン軸(ピニオン軸)21と、外周にホイール歯部232が設けられるウォームホイール23と、シャフト歯部271を有するウォームシャフト27と、フランジ42(第1取付部)を有する第1ハウジング4と、第2取付部330を有する第2ハウジング5と、を含むハウジング400と、第2取付部330をフランジ42に対して支持する支持部材640と、を備える。フランジ42および第2取付部330の少なくとも一方には支持穴600が設けられ、他方には、支持穴600に嵌まる支持部材640が設けられる。
【0096】
前述したように、特許文献1では、第1フランジ、第2フランジおよびボルトの数を減らして、径方向の突出長さを小さくすればハウジングを小型化することができる。しかし、ボルトの数を減らすと、ウォームホイールからウォームシャフトに加わる反力を抑えきれずに、第2ハウジングが第1ハウジングから外れる可能性がある。従って、第1フランジ、第2フランジおよびボルトの数を減らしてハウジングを小型化することが困難である。
【0097】
これに対して、本実施形態では、ボルトBLに加えて支持部材640を介してフランジ42および第2取付部330を支持する。
【0098】
ここで、本実施形態において、ボルトBLを介してフランジ42と第2取付部330とを締結するためには、締結工具をボルトBLの頭部に嵌めてボルトBLを回転させながら、ボルトBLの雄ねじ部220を、フランジ42または第2取付部330の雌ねじ部に締結させる作業が必要となる。よって、締結作業を行うスペースが必要となる。また、ボルトBLは、頭部の径が雄ねじ部220の径よりも大きくなるため、例えば、ボルトBLをハウジング400の上側から締結させる場合、ボルトBLの頭部を配置できるスペースが必要となる。このように、ボルトBLを介する締結では、スペースが必要となるが、平面視で径方向の内側にはスペースが少ないため、径方向の外側端部のフランジにボルトBLを配置する必要性が高い。このように、ボルトBLのみの締結では、ハウジング400が径方向に大きくなってしまう。
【0099】
これに対して、フランジ42または第2取付部330に支持穴600を設け、支持穴600に支持部材640を嵌める態様であれば、ボルトBLによる締結よりもスペースが小さくてもすむため、平面視で径方向の内側の部位に支持穴600を配置することができる。従って、本実施形態によれば、ボルトBLおよびフランジの数を減らしてハウジング400を小型化することが可能となる。なお、支持穴600としては、前述した図8に示す止まり穴および前述した図23に示す貫通孔の双方が含まれる。
【0100】
第1ハウジング4におけるZ1側には、Z1側に凸に形成される環状凸部401が設けられる。第2ハウジング5におけるZ2側には、環状凸部401に嵌まる環状凹部402が設けられる。環状凹部402の内周面402aと環状凸部401の外周面401aとの間には間隙が設けられる。
【0101】
従って、環状凸部401に環状凹部402を嵌めた状態で、平面視で、第1ハウジング4に対して第2ハウジング5を僅かな距離だけ移動させることが可能である。従って、例えば、ウォームホイール23とウォームシャフト27との相対距離を変えることにより、ホイール歯部232とシャフト歯部271との噛み合い状態を調整することが可能となる。
【0102】
支持部材640は、Z方向に延びるピン650である。ピン650は、フランジ42の止まり穴610と第2取付部330の止まり穴611との双方に嵌まる。
【0103】
従って、フランジ42の止まり穴610と第2取付部330の止まり穴611との双方にピン650を嵌めるという簡単な作業で、第1ハウジング4に第2ハウジング5を支持させることができる。
【0104】
ピン650は、フランジ42の止まり穴610と第2取付部330の止まり穴611との双方に、しまり嵌めの状態で嵌まる。これによれば、第1ハウジング4に対して第2ハウジング5の移動を阻止した状態で、第1ハウジング4に第2ハウジング5を支持させることができる。
【0105】
支持穴は、止まり穴(第1支持穴)610および止まり穴(第2支持穴)620Aと、止まり穴(第3支持穴)611および第4支持穴と、を含む。止まり穴610および止まり穴611には、第1ピン651がしまり嵌めの状態で嵌合される。止まり穴620Aおよび第4支持穴には、第2ピン652が嵌合される。止まり穴620Aおよび第4支持穴の一方においては、第2ピン652がしまり嵌めの状態で嵌合される。止まり穴620Aおよび第4支持穴の他方は、Z方向から見て、第1ピン651を中心とする第1円弧C1の周方向に沿って延びる円弧状であり、止まり穴620Aおよび第4支持穴の他方においては、第2ピン652が嵌合された状態で他方の止まり穴の周方向の端部の内周面と第2ピン652との間に間隙が設けられる。
【0106】
これによれば、第1ハウジング4に対して第2ハウジング5を、第1ピン651を中心として揺動させることができる。従って、例えば、ホイール歯部232とシャフト歯部271との噛み合い状態を調整することが容易になる。
【0107】
支持穴600は、フランジ42および第2取付部330において、Z方向から見て、ウォームホイール23とウォームシャフト27との間の領域に配置される。
【0108】
ウォームホイール23は、ウォームシャフト27からの反力を受けるため、第2ハウジング5においてウォームシャフト27の近傍部分が、最も第1ハウジング4から外れる力が大きくなる。従って、ウォームホイール23とウォームシャフト27との間の領域に支持穴600を配置し、当該支持穴600にピン650を嵌めることにより、より少ない数のピン650で第1ハウジング4に第2ハウジング5を支持することができる。
【0109】
フランジ42は、第1フランジ424と、第2フランジ427とを有し、第2取付部330は、第3フランジ334と、第4フランジ337とを有する。第1フランジ424および第3フランジ334は、第1ボルトBL1を介して締結され、第2フランジ427および第4フランジ337は、第2ボルトBL2を介して締結される。
【0110】
このように、ボルトBLを2本配置する場合は、ウォームホイール23に対してウォームシャフト27の反対側に位置する第1フランジ424および第3フランジ334と、ウォームシャフト27に対してウォームホイール23の反対側に位置する第2フランジ427および第4フランジ337とに配置することが望ましい。即ち、第1フランジ424および第3フランジ334にボルトBLを配置することにより、ウォームホイール23をより強固に支持することができ、第2フランジ427および第4フランジ337にボルトBLを配置することにより、ウォームホイール23をより強固に支持することができる。
【0111】
電動パワーステアリング装置100の製造方法は、ハウジング400の仮組み付けステップと、ウォームシャフト27のトルク調整ステップと、ハウジング400の本組み付けステップと、を含む。
【0112】
ハウジング400の仮組み付けステップは、第1ハウジング4のフランジ42(第1取付部)に対するZ1側に、第2ハウジング5の第2取付部330を配置した状態で、第1ボルト孔42aからボルトBLを挿入し第2ボルト孔333の雌ねじ部332にボルトBLの雄ねじ部220を仮締めする。ウォームシャフト27のトルク調整ステップは、ウォームシャフト27を回転させたときのトルクの値を検出し、第2ハウジング5を第1ハウジング4に対して、第1ピン651(支持部材)を中心に揺動させてホイール歯部232とシャフト歯部271(図3参照)との噛み合い状態を調整する。ハウジング400の本組み付けステップは、ボルトBLの雄ねじ部220を第2ボルト孔333の雌ねじ部332に本締めする。
【0113】
このように、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置100の製造方法では、ウォームシャフト27のトルクを検出して規格範囲を外れた場合は、第1ピン651を中心に第2ハウジング5を揺動させてホイール歯部232とシャフト歯部271との噛み合い状態を調整する。即ち、単に、第1ハウジング4に第2ハウジング5を組み付けるだけではなく、ホイール歯部232とシャフト歯部271との噛み合い状態を適正な状態にしたのち、第1ハウジング4に第2ハウジング5を組み付ける。よって、ウォームシャフト27とウォームホイール23とのガタつきによる騒音が抑制され、且つ、ステアリングホイール10の操舵がより軽くなる状態となる。
【0114】
なお、支持部材640の一例として、例えば、実施形態で説明したピン650、および、変形例で説明した突起650Aが適用可能である。換言すると、本発明に係る「支持部材640」は、ハウジングと別体となるピン650でもよく、ハウジングに直接形成されてハウジングと一体となる突起650Aでもよい。
【符号の説明】
【0115】
3 操舵側ハウジング
4 第1ハウジング
5 第2ハウジング
7 モータ取付フランジ部
10 ステアリングホイール
11 第1ステアリングシャフト
12 第2ステアリングシャフト
13 操舵ピニオン軸
14 ピニオン歯
15 ラック軸
16 タイロッド
17 車輪
21 アシストピニオン軸
22 ピニオン歯
23 ウォームホイール
26 キャップ
27 ウォームシャフト
27A、27B、27C ウォームシャフト
31 車体取付部
32 貫通孔
33 操舵ピニオン軸収容部
40 アシスト側ハウジング
41 本体部
42、42A フランジ(第1取付部)
42a 第1ボルト孔
43 凹部
51 側面部
52 天面部
53 ウォームシャフト収納部
70 モータ
70A 検査用モータ
80 押圧アクチェエータ
100 電動パワーステアリング装置
111 ユニバーサルジョイント
121 ユニバーサルジョイント
151、152 ラック歯
153 ラックガイド
154 スプリング
155 封止部材
220 雄ねじ部
231 芯金部
232 ホイール歯部
241 軸受
242 軸受
271 シャフト歯部
330、330A 第2取付部
331 フランジ(第2取付部)
332 雌ねじ部
333 第2ボルト孔
334 第3フランジ
334a、335Aa、335Ba ボルト孔
335A 第4フランジ
335B 第4フランジ
337 第4フランジ
400 ハウジング
401 環状凸部
401a 外周面
401b 内周面
402 環状凹部
402a 内周面
411 ラック軸収容部
412 ラックガイド収容部
413 車体取付部
414 貫通孔
424 第1フランジ
424a、425Aa、425Ba ボルト孔
425A、425B、427 第2フランジ
514 シール部材収容溝
600 支持穴
600A、600B 止まり穴(支持穴)
600C、600D 貫通孔(支持穴)
610 止まり穴(第1支持穴)
611 止まり穴(第3支持穴)
620 止まり穴
620A 止まり穴(第2支持穴)
631 止まり穴
640 支持部材
650 ピン(支持部材)
650A 突起(支持部材)
651 第1ピン
652 第2ピン
660 平行ピン
670 テーパーピン
680 溝ピン
681 溝部
682 外周面
683 突起
800 検査装置
AX1、AX2、AX3 中心軸
BL ボルト
BL1 第1ボルト
BL2、BL3 第2ボルト
C1 第1円弧
R1 第1領域
r11、r12、r13 縁
R2 第2領域
r21、r22、r23 縁
R3 第3領域
r31、r32 縁
S シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23