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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082998
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197269
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】和泉 一輝
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA06
5H181AA14
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181CC27
5H181EE10
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
5H181MA44
(57)【要約】
【課題】ゲート通過後の道路区間において他車両と接触する可能性を低減可能な車両制御装置、車両制御方法を提供する。
【解決手段】自動運転ECU30が備えるプロセッサは、地図データ等に基づいて、ゲート地点までの残り距離、及び、ゲート通過後に走行予定の道路へと続くゲートの位置情報を取得する。プロセッサ31は、ゲート通過後に走行予定の道路へと続くゲートの中から目標ゲートを選択するとともに、自車両が現在走行中のレーンの延長線上に目標ゲートが存在するか否かを判定する。自車両が現在走行中のレーンの延長線上に目標ゲートが存在しない場合、プロセッサ31は、目標ゲートに接続する車線に向けての移動を開始する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自律的に走行させる自動運転制御を実行する車両制御装置であって、
周辺監視センサの出力信号、外部装置から受信した無線信号、又は地図データに基づいて、有料道路において複数のゲートが設けられている地点であるゲート地点についての情報を取得することと、
前記ゲート地点を前記車両が通過後において前記車両が走行予定の道路であるゲート後道路にかかるデータを取得することと、
前記ゲート地点に設けられている複数の前記ゲートのうち、前記ゲート後道路に近い前記ゲートを目標ゲートに設定することと、
前記目標ゲートの手前側に存在する準備区間に前記車両が入ったことに基づいて、前記目標ゲートが存在する方向に向けての横移動を開始することと、を実行する車両制御装置。
【請求項2】
前記目標ゲートまでの残り距離が所定値未満となった時点において、前記目標ゲートに向けた車線移動が完了できていない場合には、前記目標ゲートを他の前記ゲートに変更するとともに、前記自動運転制御を終了する可能性があることをドライバに報知する処理を実行する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記自動運転制御のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて先行車に追従するように前記車両を走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(F51)を備え、
前記先行車を認識しているか否かに応じて、前記目標ゲートを通過する際の目標速度を変更する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記先行車を補足している場合には、前記ゲートを通行する際に許容されている最大速度に応じた所定の第1速度を目標速度に設定する一方、
前記先行車を補足していない場合には、前記第1速度よりも小さい第2速度を前記目標速度に設定する、請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記先行車を補足している場合には、前記ゲートを通行する際の前記先行車の通過速度を目標速度に設定する一方、
前記先行車を認識していない場合には、前記ゲートを通行する際に許容されている最大速度よりも小さい所定値を前記目標速度に設定する、請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記周辺監視センサの前記出力信号、前記外部装置から受信した無線信号、又は前記地図データに基づいて、車線区画線が存在しない無車線区間を走行しているか否かを判定するとともに、
前記無車線区間において横方向への移動を行う場合には、所定の対外通知制御を実行するよう構成されており、
前記対外通知制御は、方向指示器を作動させること、ハザードランプの点灯、ホーンの作動、ウェルカムランプの点灯、及び、移動方向を示す画像を対外表示装置に表示することの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記ゲートを通過後に横方向に移動する場合には、前記目標ゲートを通過している時から、又は、前記ゲートの通過後において所定距離移動するまでに、方向指示器の作動を開始する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記目標ゲートを通過した後の横移動量が前記目標ゲートを通過する前の横移動量よりも小さくなるように前記目標ゲートを設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記目標ゲートに後退中の他車両が存在すること、ハザードランプを点灯させている他車両を存在すること、又は、前記目標ゲートが封鎖されていることを検知した場合には、前記目標ゲートを変更するか、又は、運転交代要求を実施する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項10】
周辺監視義務がない前記自動運転制御を実施する第1モードと、周辺監視義務がある前記自動運転制御を行う第2モードを切り替え可能に構成された、請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記ゲート地点から所定距離以内を走行中は、前記第2モードを維持する車両制御装置。
【請求項11】
前記ゲート地点までの残り距離が所定値未満となっても、前記目標ゲートに接続する車線への移動が完了できていない場合には、前記目標ゲートを他の前記ゲートに変更することと、
新たに設定された前記目標ゲートを通過した後に車線変更を行う必要があるか否かを判断することと、
車線変更が必要であると判断した場合には、車線変更を完了させる必要がある地点である最終変更地点を特定することと、
前記ゲートから前記最終変更地点が所定距離以上離れている場合には、前記ゲートから所定距離離れてから車線変更を実施する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項12】
目的地が設定されていない場合には、前記車両が現在走行している車線の延長線上にあるゲートを目標ゲートに設定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項13】
前記自動運転制御のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて前記車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(F51)を備え、
前記ゲートまでの残り距離が所定値未満であることに基づいて、先行車追従制御を停止する、請求項1から12の何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項14】
前記ゲート地点を基準として定まる領域であるゲート領域に前記車両が進入したことに基づいて、走行速度の目標値である目標速度を、ゲート通過用の所定値に設定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項15】
車両を自律的に走行させる自動運転制御を実行するための車両制御方法であって、
周辺監視センサの出力信号、外部装置から受信した無線信号、又は地図データに基づいて、有料道路において複数のゲートが設けられている地点であるゲート地点についての情報を取得することと、
前記ゲート地点を前記車両が通過後において前記車両が走行予定の道路であるゲート後道路にかかるデータを取得することと、
前記ゲート地点に設けられている複数の前記ゲートのうち、前記ゲート後道路に近い前記ゲートを目標ゲートに設定することと、
前記目標ゲートの手前側に存在する準備区間に前記車両が入ったことに基づいて、前記目標ゲートが存在する方向に向けての横移動を開始することと、を含む車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転で有料道路のゲートを通過する車両制御装置、車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有料道路のゲートを自動運転にて通過する車両制御装置が開示されている。当該車両制御装置は、通行料金の支払いのためのカードが車両に装着されているか否かに応じて通過予定のゲートを変更しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6692935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両は、ゲート通過後に分岐路が存在する場合、目的地に応じた道路に向かって横方向(左又は右)に移動することがある。車両ごとに目的地は異なりうるため、ゲート周辺では、車両同士の軌道は交差しやすく、接触のリスクが高まりうる。当然、ゲート通過後における横方向の移動量が多いほど、接触リスクが高まりうる。
【0005】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、ゲート通過後の道路区間において他車両と接触する可能性を低減可能な車両制御装置、車両制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される車両制御装置は、車両を自律的に走行させる自動運転制御を実行する車両制御装置であって、周辺監視センサの出力信号、外部装置から受信した無線信号、又は地図データに基づいて、有料道路において複数のゲートが設けられている地点であるゲート地点についての情報を取得することと、ゲート地点を車両が通過後において車両が走行予定の道路であるゲート後道路にかかるデータを取得することと、ゲート地点に設けられている複数のゲートのうち、ゲート後道路に近いゲートを目標ゲートに設定することと、目標ゲートの手前側に存在する準備区間に車両が入ったことに基づいて、目標ゲートが存在する方向に向けての横移動を開始することと、を実行する。
【0007】
また、本開示の車両制御方法は、車両を自律的に走行させる自動運転制御を実行するための車両制御方法であって、周辺監視センサの出力信号、外部装置から受信した無線信号、又は地図データに基づいて、有料道路において複数のゲートが設けられている地点であるゲート地点についての情報を取得することと、ゲート地点を車両が通過後において車両が走行予定の道路であるゲート後道路にかかるデータを取得することと、ゲート地点に設けられている複数のゲートのうち、ゲート後道路に近いゲートを目標ゲートに設定することと、目標ゲートの手前側に存在する準備区間に車両が入ったことに基づいて、目標ゲートが存在する方向に向けての横移動を開始することと、を含む。
【0008】
上記装置/方法によれば、ゲート通過前に、横方向における自車両の位置をゲート後道路に近づけられるため、ゲート通過後において自車両が横方向に移動する量を低減できる。その結果、他車両と接触する可能性を低減可能となる。
【0009】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】自動運転システムの構成を示す図である。
図2】自動運転ECUの機能ブロック図である。
図3】ゲートの通過にかかる自動運転ECUの作動を示すフローチャートである。
図4】ゲート通過後に走行予定の道路に応じた目標ゲートの設定例を説明するための図である。
図5】ゲート通過前の車線変更が必要か否かの判断にかかる処理のフローチャートである。
図6】臨時制御の一例を示すフローチャートである。
図7】ゲート地点との距離に応じた自動運転ECUの動作を説明するための図である。
図8】ゲート地点との距離に応じた自動運転ECUの他の動作例を説明するための図である。
図9】ゲート地点との距離に応じた自動運転ECUの他の動作例を説明するための図である。
図10】ゲート地点との距離に応じた自動運転ECUの他の動作例を説明するための図である。
図11】目標ゲートの他の設定例を説明するための図である。
図12】目標ゲートの設定にかかるプロセッサの作動を説明するためのフローチャートである。
図13】対外通知制御の実施にかかるプロセッサの作動を説明するためのフローチャートである。
図14】先行車追従制御の停止にかかるプロセッサの作動を説明するためのフローチャートである。
図15】ゲート通過時の目標速度の設定例について説明するためのフローチャートである。
図16】ゲート通過時の目標速度の設定例について説明するためのフローチャートである。
図17】ゲート通過後に車線数が減少する場合における目標ゲートの設定例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<前置き>
以下、図面を参照しながら本開示の1つの実施形態について説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。以下に述べる種々の補足や変形例などは、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分についてはそれよりも前の説明を適用することができる。
【0012】
図1は、本開示に係る自動運転システムSysの概略的な構成の一例を示す図である。以降では自動運転システムSysが搭載されている車両を自車両とも記載する。また、本開示における自車レーンとの記載は、道路が備える複数のレーンのうち、自車両が走行しているレーンを指す。自車レーンは、エゴレーンと呼ぶこともできる。隣接レーンとは、自車レーンに隣接するレーンである。
【0013】
本開示における先行車とは、自車両の前方に存在する車両の中で、自車両と同一のレーンを走行し、且つ、自車両から最も近い車両を指す。後続車は、自車レーンにおいて自車両の後方を走行している他車両を指す。前方車両には、自車レーンにおいて自車前方を走行している車両に限らず、1つ以上隣のレーンにおいて自車前方を走行する他車両も含まれる。後方車両も同様に、後続車だけでなく、自車両の斜め後ろを走行する車両も含まれる。
【0014】
本開示におけるドライバとは、実際に運転しているか否かに関わらず、運転席に着座している人物、つまり運転席乗員を指す。例えば本開示におけるドライバとは、自動運転終了時に自動運転システムSysから運転操作の権限及び責務を受け取るべき人物を指しうる。本開示におけるドライバとの記載は、運転席乗員と置き換えることができる。自車両は、車両外部に存在するオペレータによって遠隔操作される遠隔操作車両であってもよい。自動運転システムSysから運転操作を引き継ぐ人物は、車両外部に存在するオペレータであってもよい。ここでのオペレータとは、車両の外部から遠隔操作によって車両を制御する権限を有する人物を指す。オペレータもまた、ドライバの概念に含まれる。
【0015】
自動運転システムSysは、自車両を所定の経路に沿って自律的に走行させる、いわゆる自動運転機能を提供する。運転操作の自動化の度合い(以下、自動化レベル)は、米国自動車技術会(SAE International)が定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えば以下のレベル0~5の6段階に区分されうる。
【0016】
レベル0は、システムは何も制御しない、完全手動運転に相当するレベルである。レベル1は、操舵と加減速との何れかをシステムがサポートするレベルである。レベル1には、アダプティブクルーズコントロール(Adaptive Cruise Control:ACC)のみが実行されるケースが含まれる。レベル2は、アクセルとブレーキ操作による速度調整と、ハンドル操作による左右の制御(つまり操舵)の両方をシステムが実施するレベルを指す。レベル2では、ドライバによる周辺監視(いわゆるアイズオン)は必要であるものの、システムが実質的に車両を自律的に走行させる。本開示では、レベル2相当の制御を、周辺監視義務のある自動運転制御、レベル2自動運転制御、又は準自動運転制御とも称する。
【0017】
レベル3は、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)内においてシステムが全ての運転タスクを実行する一方、緊急時にはシステムからドライバに操作権限が移譲されるレベルを指す。ODDは、自動運転を実行可能な条件規定するものである。レベル4は、対応不可能な所定の道路、極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施するレベルである。レベル5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施するレベルである。
【0018】
自動化レベル3~5がドライバによる周辺監視が不要となる自動化レベル、換言すれば自動運転に対応するレベルである。故に本開示では、レベル3以上に相当する車両制御を周辺監視義務のない自動運転制御とも称する。
【0019】
以下の自動運転システムSysは、使用される地域の法規及び慣習、搭載車両の特性/搭載設備等に適合するように適宜変更して実施可能である。以下におけるシステムとは、特段の断りが無い限り、自動運転システムSysを指す。
【0020】
<自動運転システムSysの全体構成について>
自動運転システムSysは一例として図1に示す種々の構成を備える。すなわち、自動運転システムSysは、周辺監視センサ11、車両状態センサ12、ロケータ13、地図記憶部14、無線通信機15、乗員状態センサ16、ボディECU17、対外表示装置18、及び走行アクチュエータ19を備える。また、自動運転システムSysは、車載HMI20、及び自動運転ECU30を備える。なお、ECUは、Electronic Control Unitの略であり、電子制御装置を意味する。HMIは、ヒューマンマシンインターフェース(Human Machine Interface)の略である。
【0021】
自動運転ECU30は、周辺監視センサ11などといった上記装置/センサのそれぞれと車両内ネットワークIvNを介して相互通信可能に接続されている。車両内ネットワークIvNは、車両内に構築されている通信ネットワークである。車両内ネットワークIvNの規格としては、Controller Area Network(以降、CAN:登録商標)や、Ethernet(登録商標)など、多様な規格を採用可能である。また、一部の装置/センサは自動運転ECU30と専用の信号線によって直接的に接続されていてもよい。装置同士の接続形態は適宜変更可能である。
【0022】
周辺監視センサ11は、検出範囲に存在する物体を検出するセンサである。周辺監視センサ11は、自車両の周辺環境をセンシングする自律センサと解する事ができる。周辺監視センサは物体検出センサと言い換え可能である。自動運転システムSysは、複数の周辺監視センサ11を備えうる。自動運転システムSysは例えば周辺監視センサ11として、カメラ111及びミリ波レーダ112を備える。
【0023】
カメラ111は、例えば車両前方を所定の画角で撮像するように配置された、いわゆる前方カメラである。カメラ111は、フロントガラスの車室内側の上端部や、フロントグリル、ルーフトップ等に配置されている。カメラ111は、画像フレームを生成するカメラ本体部に加えてカメラECUを含みうる。カメラ本体部は、少なくともイメージセンサとレンズとを含む。カメラECUは、プロセッサとメモリを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)などである。カメラECUは、画像フレームに対して認識処理を施す事により、所定の検出対象物を検出するECUである。カメラECUは、例えばディープラーニングを適用した識別器を用いて検出対象として登録されている物体を検出及び識別する。また、カメラECUは、画像フレーム内における検出物の位置情報(例えば画素座標)から、自車両に対する検出物の相対位置座標を算出する。
【0024】
カメラ111の検出対象物には、例えば、歩行者や、他車両などの移動体が含まれる。カメラ111の検出対象物には、道路端や、路面標示、道路沿いに設置される構造物といった地物も含まれる。路面標示には、レーンの境界を示す車線区画線、横断歩道、停止線、導流帯、安全地帯、及び規制矢印が含まれる。道路沿いに設置される構造物とは、道路標識、ガードレール、縁石、電柱、信号機などである。カメラ111は、その他、前方車両のハザードランプや方向指示器(いわゆるウィンカー)といった灯火装置の点灯状態も検出しうる。
【0025】
自動運転システムSysは複数のカメラ111を備えていてもよい。例えば自動運転システムSysは、カメラ111として、前方カメラの他に、車両側方を撮像する側方カメラや、車両後方を撮像する後方カメラを備えていても良い。なお、カメラ画像を解析することで検出対象物体を検出する機能は、例えば自動運転ECU30など、他のECUが備えていても良い。自動運転システムSys内における機能配置は適宜変更可能である。カメラ111は、検出物にかかるデータを車両内ネットワークIvNに出力する。車両内ネットワークIvNに流れるデータは適宜自動運転ECU30によって参照される。
【0026】
ミリ波レーダ112は、所定方向に向けてミリ波又は準ミリ波といった探査波を送信するとともに、当該送信波が物体で反射されて返ってきた反射波の受信データを解析することにより、自車両に対する物体の相対位置や相対速度を検出するデバイスである。自動運転システムSysは、複数のミリ波レーダ112を備えうる。複数のミリ波レーダ112には、前方ミリ波レーダ及び後方ミリ波レーダが含まれる。前方ミリ波レーダは、車両前方に向けて探査波を送信するミリ波レーダ112であって、例えば、フロントグリルや、フロントバンパに設置されている。後方ミリ波レーダは、車両後方に向けて探査波を送信するミリ波レーダ112であって、例えば、リアバンパに設置されている。各ミリ波レーダ112は、検出物の相対位置及び相対速度を示すデータを生成し、検出結果として自動運転ECU30等に出力する。ミリ波レーダ112の検出対象物には、他車両や、歩行者などの他、マンホール(鉄板)、ランドマークとしての立体構造物などが含まれうる。
【0027】
周辺監視センサ11は、カメラ111及びミリ波レーダ112の他、LiDAR、ソナー等などであってよい。LiDARは、Light Detection and Ranging、又は、Laser Imaging Detection and Rangingの略である。LiDARは、レーザ光を照射することによって、検出方向ごとの反射点の位置を示す3次元点群データを生成するデバイスである。LiDARはレーザレーダとも称される。LiDARやソナーに関しても、自動運転システムSysはそれぞれ複数個備えていても良い。自動運転システムSysが備える周辺監視センサ11の組み合わせは適宜変更可能である。各周辺監視センサ11の検出結果は自動運転ECU30に入力される。
【0028】
車両状態センサ12は、自車両の状態に関する情報を検出するセンサである。車両状態センサ12には、車速センサ、操舵角センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、アクセルペダルセンサ等が含まれる。車速センサは、自車の走行速度を検出するセンサである。操舵角センサは、操舵角を検出するセンサである。加速度センサは、自車両の前後方向に作用する加速度、左右方向に作用する横加速度等を検出するセンサである。ヨーレートセンサは、自車の角速度を検出するセンサである。アクセルペダルセンサは、アクセルペダルの踏込量/踏込力を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサは、ブレーキペダルの踏込量/踏込力を検出するセンサである。車両状態センサ12は、検出対象とする物理状態量の現在の値(つまり検出結果)を示すデータを車両内ネットワークIvNに出力する。車両状態センサ12として自動運転システムSysが使用するセンサの種類は適宜設計されればよい。
【0029】
ロケータ13は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星から送信される航法信号を用いて自車両の位置座標を算出及び出力するデバイスである。ロケータ13は、GNSS受信機及び慣性センサ等を含む。ロケータ13は、GNSS受信機で受信する航法信号、慣性センサの計測結果、及び車両内ネットワークIvNに流れる車速情報等を組み合わせ、自車両の自車位置及び進行方向等を逐次算出する。本開示ではロケータ13が算出した自車両の位置座標を示すデータを自車位置データと称する。ロケータ13は、自車位置データを自動運転ECU30に向けて出力する。
【0030】
地図記憶部14は、地図データが保存されている記憶装置である。地図記憶部14が保持する地図データは、いわゆるHD(High Definition)マップデータであってよい。地図記憶部14に保存されている地図データは、道路の3次元形状や、レーン区画線などの路面標示の設置位置、交通標識の設置位置等が、自動運転等に必要な精度で含んでいる。当該地図データは、ゲート地点データを含む。ゲート地点データは、有料道路において料金徴収のためのゲートが設置されている地点であるゲート地点についてのデータである。地図データは、ゲート地点毎のデータを含みうる。本開示におけるゲート地点/ゲートとの表現は、料金所と読み替えることができる。
【0031】
ゲート地点データは、ゲート地点の構造等を示すデータである。1つのゲート地点において、複数のゲートが道路幅方向に並んで設置されうる。ゲート地点データは、代表位置座標と、ゲートの設置数と、各ゲートの詳細位置と、ゲート毎の精算方式などに関するデータを含む。ゲートの設置数はレーン数と言い換え可能である。各ゲートが1つのレーン(通路)を提供する。代表位置座標は、ゲート地点の位置を概略的に示す位置座標である。代表位置座標は、例えば横に並ぶ複数のゲートのうち、真ん中、或いは右端、或いは左端に位置するゲート(以降、代表ゲート)の位置座標であってよい。本開示では、代表位置座標にて表されるゲート地点から前後所定距離以内となる道路区間を、ゲート領域とも称する。ゲート領域は、ゲートの前後に存在する、車線区画線が設けられていない区間(以降無車線区間)であってもよい。ゲート領域は、接続道路に対して道路幅が拡張されている区間であってもよい。
【0032】
ゲートの詳細位置のデータは、緯度及び経度などの座標データであってよい。ゲート詳細位置は、右端又は左端のゲートを1番として定まる番号で表現されても良い。精算方式のデータは、道路の通考料金の精算(決済)方式を示す。精算方式は、手動精算方式と自動精算方式とに区分可能である。手動精算方式は、ドライバが現金又はクレジットカードを、ゲートのスタッフに手渡すか、又は、ゲートに設置されている精算機に投入することで通行料を支払う方式である。自動精算方式は、車両に搭載されている無線通信機(いわゆる車載器)と、ゲートに設置されている無線通信設備(いわゆる路側機)とが無線通信を行うことで、車種や通行区間に応じた決済を行う方式である。なお、日本においては、手動精算方式は「一般」、自動精算方式は「ETC(登録商標)」などと呼ばれうる。ETCは、Electronic Toll Collectionの略である。
【0033】
地図記憶部14に保存される地図データは、無線通信機15が地図サーバなどから受信したデータによって更新されてもよい。地図記憶部14は、無線通信機15が地図サーバから受信した地図データを、データの有効期限が切れるまで一時的に保持するための記憶装置であっても良い。地図記憶部14が保持する地図データは、ゲート地点データを含む限り、ナビゲーション用の地図データであるナビ地図データであっても良い。
【0034】
無線通信機15は、自車両が外部装置と無線通信を実施するための装置である。外部装置には、サーバ、交通情報センタ、路側機、及び他車両の一部又は全部が含まれてよい。無線通信機15は、セルラー通信を実施可能に構成されている。セルラー通信とは、LTE(Long Term Evolution)や4G、5Gなどに準拠した無線通信を指す。なお、無線通信機15は、セルラーV2X(PC5/SideLink/Uu)を実施するように構成されていても良い。
【0035】
また、無線通信機15は、狭域通信を実施可能に構成されている。本開示における狭域通信とは、通信可能距離が数百m以内に限定される無線通信を指す。使用される狭域通信の方式は、IEEE802.11pに対応するDSRC(Dedicated Short Range Communications)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energyなどであってよい。狭域通信方式は、前述のセルラーV2Xであってもよい。無線通信機15は、ゲート通過時において、ゲートに設置された路側機と通行料決済にかかるデータ通信を実施可能に構成されていても良い。例えば無線通信機15は、ETC2.0に対応する車載器であってもよい。
【0036】
無線通信機15は、外部装置からゲート地点についての情報を受信しても良い。例えば、無線通信機15は、サーバ又はセンタから、ゲート地点の位置情報や、通行可能なゲート、封鎖されているゲートの情報などを受信してもよい。無線通信機15は、車車間通信により周辺車両から車両情報を受信してもよい。車両情報には、速度や、現在位置、方向指示器の作動状態、加速度、移動軌跡などが含まれうる。ここでの周辺車両とは、車車間通信可能な範囲に存在する車両を指す。
【0037】
乗員状態センサ16は、ドライバの状態を検出するセンサである。乗員状態センサ16は、例えば、ドライバステータスモニタ(以降、DSM:Driver Status Monitor)であってよい。DSMは、ドライバの顔画像に基づいてドライバの顔の向きや視線方向、瞼の開き度合い等を検出するセンサである。乗員状態センサ16としてのDSMは、ドライバの顔を撮影可能なように、例えば運転席のヘッドレスト部に光軸を向けた姿勢にて、インストゥルメントパネルや、フロントガラスの上端部等に配置されている。乗員状態センサ16としてのDSMは、ドライバの顔の向きや、視線方向、瞼の開き度合い等を示すドライバ状態データを自動運転ECU30に送信する。乗員状態センサ16は、脈拍センサやサーモカメラなどであってもよい。
【0038】
ボディECU17は、車両に搭載されたボディ系の車載機器を統合的に制御するECUである。ボディ系の車載機器には、灯火装置、ホーン、ドアロックモータなどが含まれる。灯火装置には、ヘッドライト、ハザードランプ、方向指示灯、バックライト、ウェルカムランプなどが含まれる。ボディ系の車載機器には、対外表示装置18が含まれていても良い。
【0039】
対外表示装置18は、リアウィンドウに画像を投影するプロジェクタである。対外表示装置18は、自動運転ECU30からの入力信号に基づいて、他車両のドライバと意思疎通を図るための画像を表示しうる。例えば対外表示装置18は、自車両の移動方向を示す画像や、隣接レーンを走行する後方車両に向けて通行権の譲渡(換言すれば割込の許可)を依頼する画像を表示する。対外表示装置18は、照射光がリアウィンドウに当たる姿勢で、例えば車室内の天井部(例えば窓枠部の上端付近)に設けられている。
【0040】
対外表示装置18は、サイドウィンドウ又は自車周辺の路面に投影するものであってもよい。対外表示装置18は、車両近傍の路面に画像を投影するようにサイドミラーに設けられていても良い。ヘッドライトやバックライトが対外表示装置18として動作するように構成されていてもよい。対外表示装置18は、表示面を車両側方又は後方に向けて配置された液晶ディスプレイなどであってもよい。
【0041】
車載HMI20は、乗員と自動運転システムSysとが情報をやり取りするためのインターフェース群である。車載HMI20は、ドライバへ向けて情報を通知するためのデバイスである報知デバイスとして、ディスプレイ21、及びスピーカ22を備える。また、車載HMI20は、乗員からの操作を受け付ける入力インターフェースとしての入力装置23を含む。
【0042】
自動運転システムSysは、ディスプレイ21として、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up Display)、メータディスプレイ、及びセンターディスプレイのうちの1つ又は複数を備える。HUDは、フロントガラスの所定領域に画像光を投影することにより、ドライバによって知覚されうる虚像を映し出す装置である。メータディスプレイはインストゥルメントパネルにおいて運転席の正面に位置する領域に配置されたディスプレイである。センターディスプレイはインストゥルメントパネルの車幅方向中央部に設けられたディスプレイである。メータディスプレイ及びセンターディスプレイは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイを用いて実現されうる。ディスプレイ21は自動運転ECU30から入力される信号に応じた画像を表示する。スピーカ22は、自動運転ECU30から入力される信号に対応する音を出力する装置である。本開示における音との表現には、通知音、音声、音楽などが含まれる。
【0043】
自動運転システムSysは、上記以外の報知デバイスとして、バイブレータやアンビエントライトなどを備えても良い。アンビエントライトは、複数のLED(light emitting diode)によって実現される、発光色や発光強度を調停可能な照明装置である。アンビエントライトは、インストゥルメントパネル及びステアリングホイール、Aピラー等に設けられている。Aピラーはウィンドシールドの横に存在するピラーである。Aピラーはフロントピラーとも呼ばれうる。
【0044】
入力装置23は、自動運転システムSysに対するドライバの指示操作を受け付けるための装置である。入力装置23としては、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアリングスイッチや、ステアリングコラム部に設けられた操作レバー、センターディスプレイに積層されたタッチパネルなどを採用可能である。自動運転システムSysは、複数種類のデバイスを入力装置23として備えていても良い。
【0045】
入力装置23は、ドライバの操作に対応する電気信号である操作信号を自動運転ECU30に出力する。操作信号は、ドライバの操作内容を示す情報を含む。自動運転システムSysは、入力装置23を介して動作モードの変更にかかる指示を受け付ける。動作モードの変更にかかる指示には、自動運転の開始及び終了にかかる指示も含まれる。自動運転システムSysは、ドライバの各種指示を、音声認識によって取得可能に構成されていても良い。マイクなどの音声入力にかかるデバイスも入力装置23に含めることができる。なお、車載HMI20と自動運転ECU30との間には、例えばHCU(HMI Control Unit)が介在していても良い。HCUは、ドライバへの情報通知を統合的に制御する装置である。
【0046】
自動運転ECU30は、周辺監視センサ11の検出結果などをもとに走行アクチュエータ19を制御することにより、運転操作の一部又は全部をドライバの代わりに実行するECUである。自動運転ECU30は自動運行装置とも称される。走行アクチュエータ19には例えばブレーキアクチュエータ、電子スロットル、及び操舵アクチュエータなどが含まれる。操舵アクチュエータには、EPS(Electric Power Steering)モータが含まれる。なお、自動運転ECU30と走行アクチュエータ19との間には、操舵制御を行う操舵ECUや、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU、及びブレーキECU等、他のECUが介在していてもよい。
【0047】
自動運転ECU30は、プロセッサ31、メモリ32、ストレージ33、通信インターフェース34、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として構成されている。メモリ32は書き換え可能な揮発性の記憶媒体である。メモリ32は、例えばRAM(Random Access Memory)である。ストレージ33は、例えばフラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性である。ストレージ33には、プロセッサ31によって実行されるプログラムである車両制御プログラムが格納されている。車両制御プログラムには、ゲート通過時の走行計画を作成するゲート応答プログラムも含まれる。プロセッサ31が車両制御プログラムを実行することは、車両制御方法が実行されることに相当する。
【0048】
自動運転ECU30は、自動化レベルが異なる複数の動作モードを備える。各動作モードは、ドライバが担当する運転タスクの範囲、換言すればシステムが介入する運転タスクの範囲が異なる。動作モードは運転モードと言い換え可能である。ここでは一例として自動運転ECU30は、完全手動モードと、レベル2モードと、レベル3モードと、を少なくとも含む複数の動作モードを切り替え可能に構成されている。
【0049】
完全手動モードは、ドライバがすべての運転タスクを実行する動作モードである。完全手動モードは、自動運転ECU30が実質的な車両制御を実行しないモードに相当する。完全手動モードは、自動運転ECU30が動作を停止するモード(いわゆる停止モード)であっても良い。完全手動モードにおいて自動運転ECU30は、レベル2又はレベル3モードに移るための準備処理として、走行環境の認識処理をバックグラウンドで(換言すれば潜在的に)実施し続けてもよい。
【0050】
レベル2モードは、周辺監視義務のある自動運転制御、換言すれば、自動化レベル2相当の車両制御を行う動作モードである。レベル2モードは、準自動運転モード、或いは、アイズオン自動運転モードと呼ぶことができる。レベル2モードは、ハンズオンレベル2モードと、ハンズオフレベル2モードとに細分化されていてもよい。本実施形態の自動運転ECU30は、ハンズオンレベル2モードは、ドライバよるステアリングホイールの把持が必要なモードである。ハンズオフレベル2モードは、ドライバよるステアリングホイールの把持が不要な動作モード、換言すればハンズオフが許容される動作モードである。なお、本開示におけるハンズオンは、ステアリングを保持することを指す。ハンズオフとはステアリングから手を離す行為を指す。アイズオンとは自車両の移動方向に関連する車外領域(主として前方)を監視することを指す。アイズオフとは、自車両の移動方向に関連する車外領域から以上目を離す行為を指す。
【0051】
レベル3モードは、周辺監視義務のない自動運転制御、すなわち自動化レベル3相当の車両制御を実行する動作モードである。自動運転ECU30は、レベル4以上に相当する自動運転制御を実施可能であってもよい。レベル3モードは、自動運転モード又はアイズオフ自動運転モードとよぶことができる。自動運転ECU30は複数のプロセッサ31を備えていてよい。レベル3以上の自動運転制御を実行するプロセッサは、レベル2以下の車両制御を実行するプロセッサとは別に設けられていても良い。
【0052】
自動運転ECU30は、自動運転モードである間、ドライバによって設定された目的地へ向かう走行予定経路に沿って自車両が走行するように、車両の操舵、加速、減速あ(換言すれば制動)等を自動で実施する。自動運転ECU30は、目的地が設定されていない場合であっても、ODDを充足する範囲を走行/周遊し続けるようにルートを選択し、自律的な走行を継続してもよい。
【0053】
ODDは、例えば(a)走行路が高速道路又は中央分離帯とガードレール等が整った自動車専用道路であること、(b)降雨量が所定の閾値以下であること、(c)渋滞状態であること等を含みうる。ここでの自動車専用道路とは、歩行者や自転車の進入が禁止されている道路であって、例えば高速道路などの有料道路などを含む。また、渋滞状態とは例えば、走行速度が渋滞判定値(例えば、30km/h程度)以下であり、かつ、自車両の前方及び後方の所定距離(例えば20m)以内に他車両が存在する状態を指す。その他、(d)全て/所定数以上の周辺監視センサ11が正常に動作していること、(e)路上駐車車両が存在しないことなどもODDに含めることができる。自動運転可能/不可と判定する条件、換言すればODDを定義する詳細条件は、適宜変更可能である。
【0054】
また、自動運転ECU30は、レベル2モードである間も、実質的に車両を自律的に走行させるための制御を実施する。すなわち、走行環境の認識、走行軌道の計画、及び制御への反映/フィードバックを実施する。制御への反映には、加速及び減速による速度調整や、操舵制御などが含まれる。以下における自動運転との記載は、特段の注釈が無い限り、レベル2相当の準自動運転に置き換え可能である。
【0055】
なお、自動運転ECU30は、自動運転モードでは、ドライバのセカンドタスクが許容される。レベル3自動運転で許容されるセカンドタスクとは、読書やスマートフォンの操作といった、すぐに運転操作に復帰可能なものに限定されうる。自動運転モードは、ドライバによるステアリング/ペダル操作(いわゆるオーバーライド)の他、システム限界や、ODDの退出等に起因して終了される。
【0056】
<自動運転ECUの構成について>
自動運転ECU30は、自動運転プログラムを実行することによって実現される機能部として図2に示す機能部を備える。すなわち自動運転ECU30は、情報取得部F1、環境認識部F2、モード制御部F3、計画部F4、及び制御実行部F5を有する。
【0057】
情報取得部F1は、自動運転及び運転支援といった車両制御を実施するための多様な情報を取得する構成である。情報取得部F1は、カメラ111を含む種々の周辺監視センサ11からセンシングデータ(つまり検出結果)を取得する。センシングデータには、移動体、地物、及び障害物といった、自車周辺に存在する物体についてのデータが含まれる。各検出物のデータは、検出物の位置、移動速度、及びその種別又は大きさを含みうる。
【0058】
地物にかかるセンシングデータは、車線区画線及び、道路端の検出結果にかかるデータを含みうる。車線区画線のデータは、位置データだけでなく線種データを含んでいてもよい。線種は連続線(実線)か破線かで表現されうる。センシングデータは、車線区画線を認識できているか否かといった車線区画線の認識状況、及び、道路端を認識できているか否かといった道路端の認識状況を示すデータも含まれうる。
【0059】
また、情報取得部F1は、車両状態センサ12から、自車両の走行速度や加速度、ヨーレート、外部照度など、車両の状態を示すデータを取得する。さらに、情報取得部F1は、ロケータ13から自車位置データを取得する。情報取得部F1は、地図記憶部14を参照することにより周辺地図情報を取得する。
【0060】
情報取得部F1は、無線通信機15との協働により、外部装置から送信されたデータを取得する。例えば情報取得部F1は、前方車両から車車間通信にて送信されてきた車両情報を取得しうる。また、情報取得部F1は、無線通信機15との協働により、自車両が所定時間以内に通過予定の道路区間についての動的地図データを取得する。ここでの動的地図データは、渋滞情報や、合流車情報などが含まれる。
【0061】
情報取得部F1は、入力装置23からの信号に基づき、自動運転システムSysに対するドライバの操作なども取得する。例えば情報取得部F1は、自動運転の開始及び終了にかかる指示信号を入力装置23から取得する。また情報取得部F1は、自動運転システムSysの作動状態に関するデータも、種々の装置/ソフトウェアモジュールから取得する。例えば情報取得部F1は、ACC機能の作動状態(オン/オフ)、及び、先行車を認識しているか否かといったデータも取得する。また、情報取得部F1は、周辺監視センサ11が正常に動作しているか否かといった、種々のコンポーネントの作動状態も管理する。情報取得部F1は、乗員状態センサ16から、目の開度や視線方向を示すドライバ状態データを取得する。
【0062】
情報取得部F1が逐次取得する種々のデータは、例えばメモリ32等の一時記憶媒体に保存され、環境認識部F2やモード制御部F3などによって利用される。なお、各種情報は、種別ごとに区分されてメモリ32に保存されうる。また、各種情報は、例えば最新のデータが先頭となるようにソートされて保存されうる。取得から一定時間が経過したデータは破棄されうる。本開示における「取得」には、自動運転ECU30自身が他の装置/センサから入力されたデータなどを元に演算することによって生成/検出/判定することも含まれる。システム内の機能配置は適宜変更可能であるためである。
【0063】
環境認識部F2は、情報取得部F1が取得した自車位置データやセンシングデータ、及び地図データに基づいて、自車両の走行環境を認識する。環境認識部F2は、カメラ111とミリ波レーダ112など、複数の周辺監視センサ11の検出結果を、所定の重みで統合するセンサフュージョン処理により、自車両の走行環境を認識してもよい。
【0064】
走行環境には、道路の曲率や、車線数、自車レーン番号、天候、路面状態、交通量、ゲート地点までの残り距離などが含まれる。自車レーン番号は、道路における自車レーンの位置を示す番号であって、左の道路端を基準として定まる。自車レーン番号は、自車レーンの左に存在するレーンの数を直接的に又は間接的に表す。もちろん、自車レーン番号は右側の道路端を基準として表現されても良い。自車レーン番号は、道路端から自車両までの距離、左右で検出されている車線区画線の数、及び地図データの一部又は全部を用いて特定されてよい。自車レーン番号は、地図データと自車位置データとから特定されても良い。自車レーン番号の特定は、カメラ111又はロケータ13にて実施されてもよい。天候や路面状態は、カメラ111の認識結果と、情報取得部F1が取得した天候情報とを組み合わせることにより特定可能である。道路構造に関してはカメラ111の認識結果の他、地図データ又は前方車両の軌跡情報を用いて特定されても良い。
【0065】
環境認識部F2は、自車両の前方所定距離以内に存在する道路の構造に係る情報を、周辺監視センサ11の出力信号、外部装置からの受信信号、及び地図データの少なくとも何れか1つに基づいて取得する。道路構造には、ゲート地点の位置、分岐路の位置、車線区画線の数、道路幅などが含まれる。環境認識部F2は、ゲート地点に関する詳細情報として、ゲート地点までの残り距離を取得する。ゲート地点までの残り距離は、地図データに基づいて取得してもよいし、カメラ111で検出された案内標識のデータをもとに特定されても良い。環境認識部F2は、ゲート地点までの残り距離は、前方車両から受信する挙動データ又はセンシングデータをもとに特定しても良い。環境認識部F2は、地図データや前方車両の走行軌跡から、ゲートの数、及びゲートごとの精算方式を取得してもよい。環境認識部F2は、通過に停止を伴っているゲートは手動精算方式のゲートと見なし、前方車両が停車せずに通過しているゲートは自動精算方式のゲートと見なしても良い。環境認識部F2においてゲート地点にかかる情報を取得する機能部がゲート認識部F21に相当する。
【0066】
走行環境には、車両周辺に存在する物体の位置や、種別、移動速度なども含まれる。環境認識部F2は、情報取得部F1が取得した多様なデータに基づき、周辺車両の位置及び挙動を認識する。周辺車両を認識する処理を担当するソフトウェア/ハードウェアモジュールが周辺車両認識部F22に相当する。その他、環境認識部F2は、ODDに関連する車外環境情報や、ドライバ状態データを取得する。
【0067】
モード制御部F3は、情報取得部F1が取得した種々の情報に基づき、自動運転ECU30の動作モードを制御する。動作モードの切り替えは、入力装置23から入力される操作信号に基づいて実行される。例えばモード制御部F3は走行環境がODDを充足している状態において、入力装置23から自動運転の開始指示信号が入力された場合には、動作モードを完全手動モードまたはレベル2モードから自動運転モードへ切り替える。また、モード制御部F3は、自動運転モード中において、環境認識部F2が認識している走行環境がODDを充足しなくなることが予見された場合には、完全手動モードに移行することを決定し、その旨を計画部F4に通知してよい。
【0068】
その他、モード制御部F3は、自動運転モード又はレベル2モード中において、ドライバによるオーバーライド操作が検知された場合には、完全手動モードに切り替える。オーバーライド操作とは、ハンドル/ペダル類といった操作部材に対する乗員の操作を指す。自動運転ECU30はドライバによるオーバーライド操作が行われたことを検出した場合には、速やかに運転権限をドライバに移譲するとともに、手動運転に切り替わったことを音声出力等にて報知する。なお、自動運転モード終了時に遷移する動作モードは、レベル2モードであってもよい。
【0069】
計画部F4は、レベル2以上の自動運転として実行する制御内容を計画する構成である。計画部F4は、動作モードがレベル3又はレベル2モードである場合に有効化されうる。計画部F4は、レベル3又はレベル2モードである間、環境認識部F2による走行環境の認識結果に基づき、自律的に走行させるための走行計画を生成する。走行計画は制御計画と呼ぶこともできる。走行計画には、時刻ごとの走行位置や目標速度、操舵角などが含まれる。すなわち、走行計画には、算出した経路における速度調整のための加減速のスケジュール情報や、操舵量のスケジュール情報を含みうる。
【0070】
例えば計画部F4は、中長期の走行計画として、経路探索処理を行い、自車位置から目的地までの走行予定経路を決定する。なお、目的地が設定されていない場合、計画部F4は、自動運転を継続可能なルートを走行予定経路として選択してもよい。走行予定経路は、これから所定時間(例えば10分)以内に通行する道路についてのデータを含む。
【0071】
計画部F4は、中長期の走行計画に沿った走行を行うための短期の制御計画として、車線変更の走行計画、レーン中心を走行する走行計画、先行車に追従する走行計画、及び障害物回避の走行計画等が生成する。例えば計画部F4は、短期の制御計画として、認識している自車レーンの中央を走行する経路を走行計画として生成したり、認識している先行車の挙動又は走行軌跡に沿う経路を走行計画として生成したりする。計画部F4が作成した制御計画は制御実行部F5に入力される。
【0072】
計画部F4は、車両の走行に直接的に関係する制御計画の他に、ディスプレイ21などの報知デバイスを用いた乗員への通知処理に係る計画も策定する。例えば計画部F4は、挙動予告、モード変更通知、アイズオン要求、ハンズオン要求、TOR(Take Over Request)予告といった、ドライバへの予告/要求を実施するタイミングを計画する。挙動予告とは、車線変更や追い越し、減速などといった予定されている車両挙動を予告する処理である。挙動予告には、例えば通行予定のゲート番号など、ゲート地点で予定している自車両の挙動の予告も含まれる。モード変更通知は、動作モードを変更すること、或いは、動作モードを変更予定であることをドライバに通知する処理である。
【0073】
アイズオン要求は、レベル3モード中において、念のためにドライバに周囲の監視をするように要求する処理である。ハンズオン要求は、レベル3モード中又はハンズオフレベル2モード中において、ドライバにステアリングホイールを軽く把持するように依頼する処理である。TOR予告は、TORの可能性が高まっていることを通知する処理である。TORは、ドライバに運転操作の引き継ぎを要求すること、換言すれば自動運転を終了することである。
【0074】
予告及び要求を含む各種の通知は、その内容に応じたアイコン画像を、ディスプレイ21に表示することを含む。各種通知は、重要性や緊急度に応じて、通知音の出力、音声メッセージの出力、アンビエントライトの点滅、及びバイブレータの振動の一部又は全部を伴っていても良い。
【0075】
制御実行部F5は、計画部F4で策定された制御計画に基づく制御指令を生成し、走行アクチュエータ19やディスプレイ21等へ向けて逐次出力する。また、制御実行部F5は、計画部F4の計画や外部環境に基づき、方向指示器やヘッドライト、ハザードランプ等の点灯状態も、走行計画や外部環境に応じて制御する。
【0076】
制御実行部F5は、先行車追従制御を実行するためのサブシステムとしてACCシステムF51を備える。ACCシステムF51は、計画部F4の作成した計画に基づき、先行車追従制御を実行する。すなわち、ACCシステムF51は、先行車を認識できている場合には、設定車速の範囲内で先行車との車間距離/車間時間を一定とするように車速を制御する。またACCシステムF51は、先行車を認識していない場合には、設定車速を維持する。ACCシステムF51は先行車追従制御部と言い換えることもできる。
【0077】
制御実行部F5は、ディスプレイ21やスピーカ22といった報知デバイスを用いたドライバへの通知/提案を行うためのサブシステムとして通知制御部F52を備える。種々の通知/提案は、ディスプレイ21への画像表示や、スピーカ22からの音声メッセージ出力によって実現されうる。
【0078】
例えば通知制御部F52は、計画部F4にて設定されたタイミングにて、所定時間以内に到達するゲート地点に対して予定している自車両の挙動を示す情報を、ディスプレイ21及びスピーカ22の少なくとも何れか一方を用いて通知する。より具体的には、通知制御部F52は、通過予定のゲートである目標ゲートや、ゲート通過前の軌道、ゲート通過後の軌道などを示す画像データ又は音声データを、ディスプレイ21又はスピーカ22に向けて出力する。
【0079】
なお、計画部F4と制御実行部F5の機能配置は適宜変更可能である。これらは統合されていても良い。計画部F4及び制御実行部F5を含むソフトウェア/ハードウェアモジュールが車両制御部Fnに相当する。
【0080】
<ゲート地点への応答について>
ここではレベル2又はレベル3モード中において自車両がゲート地点から所定距離以内を走行するシーンにおける自動運転ECU30の作動について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。図3に示すフローチャートは、レベル2/レベル3モードである間、定期的に実行されうる。図3に示すフローチャートは一例として、ステップS101~S110を含む。以下のステップの実行主体としてのプロセッサ31との記載は、文脈に即して、情報取得部F1、環境認識部F2、モード制御部F3、計画部F4、又は、制御実行部F5に置き換えられてよい。
【0081】
ステップS101は、プロセッサ31が種々の情報を取得するステップである。情報取得部F1は、例えば、自車位置座標、自車レーン番号、走行予定経路、ゲート地点までの残り距離、周辺車両の情報などを取得する。周辺車両の情報には、先行車の有無が含まれる。また、先行車が存在する場合には、先行車との車間距離や相対速度なども周辺車両の情報に含まれる。周辺車両の情報には、先行車以外の他車両の位置や速度なども含まれる。なお、ステップS101に相当する処理は、S103以降においても定期的に実行される。
【0082】
ステップS102は、ゲート地点までの残り距離が所定の準備開始距離以下となったか否かを判定するステップである。ゲート地点まで残り距離は、道路の延伸方向における自車両からゲート地点までの距離である。準備開始距離は例えば500mである。準備開始距離は、250mや750mなどであってもよい。ゲート地点までの残り距離の判断材料としては、前述の通り、周辺監視センサ11の出力や、外部装置からの受信データ、地図データなどを採用可能である。
【0083】
なお、準備開始距離は、走行速度や走行路の種別に応じて動的に決定されても良い。準備開始距離は、ゲート地点に自車両が到達するまでの時間の長さの概念で定義されてもよい。準備開始距離は、現在走行している道路の車線数が多いほど長い値が設定されてもよい。準備開始距離は、前方にあるゲート地点に設置されているゲートの数が多いほど長い値が設定されてもよい。本開示ではゲート地点までの残り距離が所定の準備開始距離以下となる道路区間を準備区間とも称する。各図に示す「Dy」は、ゲート地点までの残り距離を示している。また、図3に示す「Dstb」は、準備開始距離を表している。ゲート地点までの残り距離との記載は適宜、目標ゲートまでの残り距離と言い換えることもできる。
【0084】
ゲート地点までの残り距離が準備開始距離以下である場合(S102 YES)、プロセッサ31はステップS103以降のシーケンスを実行する。つまり、ステップS103以降の処理は、ゲート地点までの残り距離が所定の準備開始閾値未満となったことに基づいて実行される。一方、ゲート地点までの残り距離が準備開始距離を超過している場合には(S102 NO)、本フローを終了する。本フローを終了した場合、終了時点から所定の休止時間が経過した場合には本フローを再実行しうる。休止時間は例えば500ミリ秒や、1秒、2秒などに設定されうる。
【0085】
ステップS103は、目標ゲートを設定するステップである。目標ゲートは、ゲート地点に設けられている複数のゲートのうち、自車両が通過するゲートである。なお、目標ゲートの設定は、ゲート地点までの残り距離が準備開始距離以下となる前に実行されてもよい。プロセッサ31は、複数のゲートのうち、ゲート地点通過後に自車両が走行する予定の道路であるゲート後道路に対応するゲートを目標ゲートに設定する。
【0086】
ゲート後道路に対応するゲートとは、ゲート後道路の正面に位置するゲート、換言すれば、ゲート通過後まっすぐ走行すればゲート後道路に進入可能なゲートを指す。ゲート後道路に対応するゲートとは、ゲート後道路へと続くゲートと解することができる。逆の観点に依れば、或るゲートに対応する道路とは、ゲートの正面に位置する道路、当該ゲートから最も近い道路、又はゲートから最寄りの道路端に沿って連なる道路と解することができる。なお、プロセッサ31は、ゲート後道路に対応するゲートが複数存在する場合には、現在の自車レーンの延長線から最も近いゲートを目標ゲートに設定してもよい。
【0087】
例えば図4に示すようにゲート地点の後方の道路が、第1道路Rt1と第2道路Rt2とに分岐している場合であって、且つ、第2道路Rt2が自車両にとってのゲート後道路に相当する場合、第3ゲートGt3を目標ゲートに設定する。なお、第3ゲートGt3だけでなく、第4ゲートGt4もゲート後道路としての第2道路Rt2に対応するゲートである。第4ゲートGt4よりも第3ゲートGt3のほうが、自車レーンに近い。よって図4に示すシーンにおいては、プロセッサ31は第3ゲートGt3を目標ゲートに設定しうる。なお、図4の「Hv」は自車両を指し示す符号である。
【0088】
もちろん第3ゲートGt3が特定の不使用条件が充足している場合、プロセッサ31は第3ゲートGt3ではなく第4ゲートGt4を目標ゲートに設定しても良い。不使用条件が充足する場合とは、例えば、封鎖されている場合、精算方式が手動精算方式である場合、第4ゲートGt4に比べて第3ゲートGt3が混んでいる場合などである。目標ゲートの選択アルゴリズムは、適宜変更されても良い。プロセッサ31は、自動精算方式が可能なゲートの中から目標ゲートを選択してよい。
【0089】
ただし、自車両が自動精算処理を実施不能な場合、プロセッサ31は手動精算方式が可能なゲートの中から目標ゲートを選択してよい。自動精算処理を実施不能な場合とは、自動精算用のカードが所定の車載器に挿入されていない場合などを指す。精算方式等の観点から自車両が通行可能なゲートが1つしかない場合、プロセッサ31は当該ゲートを目標ゲートに設定して良い。封鎖等により利用可能なゲートが1つしかない場合もまたプロセッサ31は当該ゲートを目標ゲートに設定して良い。その他、目的地が設定されていない場合、プロセッサ31は自車レーンの延長線上にあるゲートを目標ゲートに設定してもよい。また、プロセッサ31は目的地が設定されていない場合、レベル3モードを維持可能な道路をゲート後道路に設定した上で目標ゲートに設定してもよい。
【0090】
目標ゲートの設定が完了すると、プロセッサ31は、目標ゲートの位置と現在の自車位置との関係をもとに、目標ゲートの通過に向けた事前の車線変更が必要か否かを判定する(S104)。事前の車線変更とは、ゲート直前ではなく、ゲートからある程度離れた区間での車線変更を指す。例えばゲートから50m以上離れた区間での車線変更が、ゲート通過に向けた事前の車線変更に相当する。事前の車線変更は、目標ゲートに向けての横移動の一例に相当する。事前の車線変更の要否判定は、例えば図5に示すようにステップS201~S210を含む。
【0091】
ステップS201は、現在の自車レーンに対応するゲートである正面ゲートを特定するステップである。正面ゲートは、自車レーンの延長線上に存在するゲートである。ステップS202は、正面ゲートが目標ゲートと一致するか否かを判定するステップである。正面ゲートが目標ゲートと一致する場合(S202 YES)、プロセッサ31は、車線変更は不要であると判定する(S203)。
【0092】
一方、正面ゲートが目標ゲートと一致しない場合(S202 NO)、プロセッサ31は、目標ゲートが正面ゲートの右に存在するか否かを判定する(S204)。目標ゲートが正面ゲートの右に存在する場合には(S204 YES)、さらにプロセッサ31は自車レーンの右側に他のレーンが存在するか否かを判定する(S205)。自車レーンの右側に他のレーンが存在する場合(S205 YES)、プロセッサ31は、右車線変更フラグをオンに設定する(S206)。右車線変更フラグは、右側に車線変更する必要があることを示すフラグである。図3、5等及び本書に記載の「LC」は車線変更(Lane Change)を表す。自車レーンの右側に他のレーンが存在しない場合(S205 NO)、プロセッサ31は、右移動保留フラグをオンに設定する(S207)。右移動保留フラグは、道路の拡張等により、自車両が右側に移動可能となったタイミングで移動を開始する必要があることを示すフラグである。フラグがオフに設定されている場合とは、当該フラグに紐づく制御をプロセッサ31は実行する必要がないことを意味する。
【0093】
また、目標ゲートが正面ゲートの左に存在する場合には(S204 NO)、プロセッサ31は自車レーンの左側に他のレーンが存在するか否かを判定する(S208)。自車レーンの左側に他のレーンが存在する場合(S208 YES)、プロセッサ31は、左車線変更フラグをオンに設定する(S209)。左車線変更フラグは、左側に車線変更する必要があることを示すフラグである。自車レーンの左側に他のレーンが存在しない場合(S208 NO)、プロセッサ31は、左移動保留フラグをオンに設定する(S210)。左移動保留フラグは、道路の拡張によって自車両が左方向に移動可能となったタイミングで左方向への移動を開始する必要があることを示すフラグである。
【0094】
上記の判定処理にて右又は左車線変更フラグがオンとなった場合が、事前の車線変更が必要な場合(S104 YES)に相当する。また、目標ゲートと正面ゲートが一致している場合、及び、道路構造的に車線変更できない場合が車線変更不要な場合(S104 NO)に相当する。
【0095】
車線変更が不要な場合には(S104 NO)、プロセッサ31は通常制御を実施する(S105)。通常制御は、目標ゲートに向かって道なりに走行する制御、換言すれば車線変更相当する大きな横移動を実施しない制御である。なお、通常制御実行時であっても、右移動保留フラグまたは左移動保留フラグがオンである場合には、例えば、ゲート前無車線区間又は道路幅拡張区間に入ったタイミングで、目標ゲートに向かって横移動を開始する。
【0096】
本開示における無車線区間とは、路面に車線区画線が付与されていない区間である。無車線区間には、一部のゲートに続く道路にのみ、区画線/ペイントが付加されている区間も含まれる。このような無車線区間は、ゲートの前後に存在することがある。ゲート前無車線区間は、ゲートの入口側に存在する無車線区間である。ゲート後無車線区間は、ゲートの退出側に存在する無車線区間である。ゲート前無車線区間における走行軌道は、自車レーンの終端と目標ゲートとをつなぐように設定されうる。無車線区間は、ゲート地点として一時的に道路幅を拡張した区間である場合も多い。よって、無車線区間との記載は、道路幅拡張区間と置き換えられてもよい。
【0097】
プロセッサ31は、車線変更が必要と判定した場合には(S104 YES)、ゲート地点までの残り距離が所定のLC開始距離未満となったか否かを判定する(S106)。LC開始距離は、目標ゲートに向けた車線変更を開始するためのパラメータである。LC開始距離は準備開始距離よりも小さい値に設定されうる。LC開始距離は前述の準備開始距離と同じであっても良い。図中の「Dlc」はLC開始距離を示している。LC開始距離が第1距離に相当する。準備開始距離及びLC開始距離は、後述するゲート前領域を包含するように、ゲート前領域の長さよりも大きい値に設定される。
【0098】
プロセッサ31は、ゲート地点までの残り距離がLC開始距離未満である場合には、目標ゲートが存在する方向への車線変更を試行し始める(S107)。なお、実際に車線変更が実施可能かどうかは、目標レーンの交通状況による。ステップS108は、車線変更が実施できたか否かを判定するステップである。車線変更を実施できた場合には(S108 YES)、通常制御を実行する(S105)。
【0099】
一方、車線変更が未完了である場合には、ゲート前領域に進入したか否かを定期的に判定する(S109)。ゲート前領域とは、ゲート地点の前方所定距離以内の道路区間である。ゲートの前方とは進行方向逆方向に相当する。なお、ゲートの後方とは道路又はゲートに設定されている進行方向(通過方向)に相当する。ゲート前領域とみなす距離が第2距離に相当する。第2距離は、50mや100m、又は、150mなどの一定値であってよい。或いは第2距離はゲートの数が多いほど大きい値に設定されても良い。ゲート前領域は、ゲート前無車線区間であってもよい。その場合、ゲート前無車線区間の長さが第2距離に相当しうる。
【0100】
プロセッサ31は、ゲート前領域に入っても車線変更が完了できていない場合(S109 YES)、プロセッサ31は臨時制御を実行する。臨時制御は、目標ゲートの通過に適した車線への事前移動が困難であった場合の制御に相当する。臨時制御では、通常制御に比べて、ゲート直前での横方向への移動量が相対的に大きくなりうる。よって、臨時制御では、周辺車両との距離が縮まり、システム限界となる可能性が通常制御実行時よりも高まりうる。
【0101】
臨時制御は、例えば図6に示すようにステップS301~S306を含みうる。ステップS301は、アイズオン要求を実行するステップである。ステップS301は、ゲート前領域に入っても目標ゲートに対応する車線へ移動できていないことに基づいてシステムがドライバに対して周辺状況の監視を依頼するステップに相当する。臨時制御がアイズオン要求を含むことにより、ドライバが運転操作を引き継ぎやすくなる。アイズオンを要求するアイコン画像の表示は、目標ゲートの正面に到達するまでは継続されてよい。
【0102】
ステップS302は、目標ゲートに向けての横移動を試行するステップである。ここでの横移動は、前進しながら横に進むこと、すなわち、操舵角を所定値以上に設定した状態で前進することを含む。横移動は進路変更と呼ぶこともできる。横移動には、車線変更の他、無車線区間において斜め右または左に進むことも含む。横移動の試行は、ウインカーランプを点灯させながら道なりに(まっすぐに)進むことを含みうる。
【0103】
横移動の試行は、車線区画線が設けられている道路区間でも継続されうる。また、横移動の試行は、ゲート前無車線区間に入った後も継続されうる。横移動の試行時の速度は所定値以下に制限されてもよい。横移動の試行時の目標速度は、ドライバの設定値よりも所定量小さい値に設定しても良い。ここでの目標速度は、車速制御を行う際の目標値である。また、無車線区間で横移動の試行を実施する場合、プロセッサ31は、ハザードランプを点灯させてもよい。ステップS302で実行される横移動もまた、目標ゲートが存在する方向に向けての横移動に相当する。
【0104】
ステップS303は、目標ゲートにつづく明示的/仮想的なレーンに入れたか否かを判定するステップである。目標ゲートにつづく明示的なレーンとは、実際にゲートから進行方向逆側に向かって伸びている車線区画線で定義されているレーンを指す。仮想的なレーンとは、車線区画線は無いものの、ゲートの向きから推定されるレーンを指す。仮想的なレーンは他車両の軌跡、車列が伸びる方向、ゲートと道路とを結ぶ方向などから定まりうる。
【0105】
目標ゲートにつづくレーンは、端的には、目標ゲートの正面に位置する路面領域である。よってステップS303は、自車両が目標ゲートの正面に到達できたか否かを判定するステップと解することができる。目標ゲートの前に車列ができている場合、当該車列の末尾に到達した場合も目標ゲートの正面に到達できた場合に含まれる。自車両が目標ゲートの正面に到達できた場合には(S303 YES)、プロセッサ31は通常制御に復帰してよい(S308)。例えば通常制御に復帰することは、方向指示器又はハザードランプの点灯を停止すること、対外表示装置18の表示を停止することなどを含みうる。
【0106】
ステップS304は、ゲート地点までの残り距離が所定のゲート変更距離未満となったか否かを判定するステップである。ゲート変更距離は、目標ゲートを、現在の自車位置から到達可能な範囲において、最も目標ゲートに近いゲートに変更する距離である。変更後の目標ゲートとの区別のため、ここでは当初の目標ゲートを第1希望ゲートとも称する。また、変更後の目標ゲートを第2希望ゲートとも称する。
【0107】
ゲート変更距離は、第1希望ゲートへの到達を諦める条件を規定するパラメータの1つと解することができる。図中の「Dc」はゲート変更距離を表している。ゲート変更距離は、例えば25mや50m、75mなどの一定値であってよい。またゲート変更距離は、ゲート前無車線区間の長さの50%や25%など、ゲート前無車線区間の長さに応じた値に設定されても良い。ゲート変更距離は、ゲート前領域の長さである第2距離よりも小さく設定されている。本開示においてゲート変更距離は第3距離と呼ぶこともできる。
【0108】
プロセッサ31は、ゲート地点までの残り距離がゲート変更距離未満となっても第1希望ゲートの正面に到達できなかった場合(S304 YES)、目標ゲートを第2希望ゲートに変更する(S305)。第2希望ゲートは前述の通り、残り距離で無理なく自車両が到達可能なゲートのうち、最も第1希望ゲートに近いものである。残り距離がゲート変更距離未満となったタイミングで自車両の正面に存在するゲートが、第2希望ゲートとなりうる。上記構成によれば、ゲート直前での横移動が制限されるため、周辺車両との接触リスクを低減可能となる。
【0109】
ステップS306は、自動運転にて第2希望ゲートを通過するステップである。プロセッサ31は、第2希望ゲートを通過したことに基づいてTOR予告を実施する(S307)。第2希望ゲートを通過した場合には、第1希望ゲートを通過した場合に比べて、ゲート通過後の横移動量が大きい。また、自車両がゲート後道路へ入るためには、第1希望ゲートを通過してきた他車両の間に自車両が割り込む必要もある。このように第2希望ゲートを通過した場合には、システム限界に達する可能性が高い。事前にTORの可能性をドライバに通知しておくことにより、スムーズな運転交代が実現可能となりうる。
【0110】
上記の臨時制御は、ゲート地点までの残り距離がゲート変更距離未満となっても、第1希望ゲートに続く車線に移動できなかった場合に、TOR予告をする制御に相当する。TOR予告は、ゲート地点までの残り距離が第2距離未満となっても第1希望ゲートに続く車線に移動できなかったタイミングで実施されても良い。プロセッサ31は、第2希望ゲートを通過する前にTOR予告を実施しても良い。ステップS307の実行条件及び実行タイミングは適宜変更可能である。
【0111】
なお、プロセッサ31は右移動保留フラグがオンに設定されている状況において、道路の拡張等によって右側に走行可能なスペースが生じた場合には、右側道路端に略平行な軌道で目標ゲートに向かって走行してよい。また、プロセッサ31は左移動保留フラグがオンに設定されている状況において、道路の拡張等によって自車両左側に走行可能なスペースが生じた場合には、左側道路端に略平行な軌道で目標ゲートに向かって走行してよい。
【0112】
<動作モードの制御例>
プロセッサ31は、図7に示すように、ゲート地点に対する自車両の位置に応じて、動作モードを自動的に変更しても良い。図7では、プロセッサ31が通常領域ではレベル3モードを維持する一方、ゲート付近ではレベル2モードに移行するパターンを例示している。プロセッサ31は、ゲート前領域ではハンズオフレベル2モードとなり、ゲート後領域ではハンズオンレベル2モードに移行してもよい。モード変更にかかる通知は、随時実施される。
【0113】
ゲート後のほうが、ゲート前よりも車両同士の軌道が交差しやすい。よってゲート通過直後のエリアを走行するシーンは、高度な判断又は他車両とのコミュニケーションが要求される可能性が高まる。ゲート通過前に比べてゲート通過後の自動化レベルを下げる構成によれば、上記シーンにおいて、ドライバ判断にて適正に応答可能となりうる。その結果、円滑な交通が実現可能となる。
【0114】
ここでのゲート後領域は、道路延伸方向においてゲートから50mや100m以内となる領域を指す。プロセッサ31は、ゲート後無車線区間をゲート後領域とみなしてもよい。ゲート後方に分岐点が存在する場合、プロセッサ31は、分岐点までをゲート後領域とみなしても良い。通常領域は、ゲート前領域でもゲート後領域でもない領域を指す。
【0115】
もちろん、プロセッサ31は、ゲート後領域を走行中である場合も、ゲート前領域を走行しているときと同様に、ハンズオフレベル2モードを適用しても良い。第1希望ゲートに到達できたか否かに応じてゲート通過後の動作モードは変更しても良い。プロセッサ31は第1希望ゲートを通過できた場合にはゲート通過後もハンズオフレベル2モードを維持する一方、第1希望ゲートを通過できなかった場合にゲート通過後の動作モードをハンズオンレベル2モードに設定しても良い。
【0116】
また、ゲート前領域では横方向の移動量が大きいため、ゲート前領域を走行中である場合のほうがゲート後領域を走行中である場合よりもドライバが運転操作に関与したほうがよいとの考え方もある。よってプロセッサ31は、図8に示すように、ゲート前領域ではハンズオンレベル2モードとなり、ゲート後領域ではハンズオフレベル2モードとなるように構成されていてもよい。当該制御方針によれば、ドライバの好み応じたゲートを通過しやすくなるといった効果も奏する。
【0117】
また、プロセッサ31は図9に示すように、ゲート通過する際もレベル3モードを維持し続けてもよい。その場合、プロセッサ31は、レベル3モードを維持しつつも、ドライバに向けてアイズオンやハンズオンを依頼してもよい。さらには、第1希望ゲートを通過できたか否か、及び、ゲート通過後に横移動が必要か否かに応じて、TOR予告を実施しても良い。当該構成によれば、ドライバが運転操作のパートナー/助手として振る舞い、より安全性が高まりうる。また、実際にシステムからドライバへの運転交代が必要となった場合においてもスムーズにドライバが運転操作を引き継ぎ可能となるといった利点も有する。このようにプロセッサ31はゲート前領域ではレベル3モードを維持しても良い。プロセッサ31は、ゲート通過後にゲート後道路に向けて横移動が必要な場合には、レベル3モードからレベル2モードに移行しても良い。
【0118】
以上ではゲート地点までの距離が準備開始距離未満となった時点での動作モードがレベル3モードである場合について述べた。上記説明は、ゲート地点までの距離が準備開始距離未満となった時点での動作モードがハンズオフレベル2モードである場合にも適用可能である。例えば図10に示すように、通常領域ではハンズオフレベルモードを適用する一方、ゲート後領域ではハンズオンレベル2モードに移行しても良い。ゲート前領域でハンズオフレベル2モードを維持するか否かは、ゲート前領域での横移動が必要か否かによって変更されても良い。ゲート後領域において横移動が不要である場合、プロセッサ31はゲート後領域においてもハンズオフレベル2モードを維持してもよい。
【0119】
<目標ゲートの設定例>
第1希望ゲートとしての目標ゲートは、必ずしもゲート後道路の正面に位置するゲートに設定されなくとも良い。プロセッサ31は、ゲート前横移動量がゲート後横移動量以上となる限りにおいて、ゲート後道路に対応しないゲートの中から第1希望ゲートを選択してもよい。
【0120】
ここでのゲート前横移動量は、ゲート通過前における横方向への移動量である。ゲート前横移動量は、ゲート通過前における車線変更の回数などで表現される。ゲート後横移動量は、ゲート通過後においてゲート後道路に入るために必要な横方向への移動量である。本開示では、ゲート通過にかかる移動量をトータル横移動量とも称する。トータル横移動量は、ゲート地点までの距離が準備開始距離未満となった時点での自車レーンに対応する正面ゲートから、ゲート後道路に対応するゲートまでの横方向の距離である。ゲート後横移動量は、トータル横移動量からゲート前横移動量を減算した値である。
【0121】
プロセッサ31は、ゲート後道路に対応しないゲートの中から、ゲート後横移動がなるべく小さくなるゲートを、第1希望ゲートに設定することが好ましい。ここでは説明簡略化のため、横移動量は車線数/ゲート数で表現するが、実際にはメートルなどで表現されても良い。
【0122】
例えば図12に示すように自車両が第1レーンから第2道路Rt2に移動する場合のトータル横移動量は4レーンである。正面ゲートは第2ゲートGt2であり、第2道路Rt2に対応するゲートの中で最寄りのゲートは第6ゲートGt6であるためである。図中において自車レーンの正面ゲート、及び、第2道路Rt2に対応するゲートを明示するために、自車レーンからゲートに向かう仮想的な延長線、及び、第2道路Rt2からゲートに向かう延長線をドットパターンのハッチングで示している。なお、第7ゲートGt7及び第8ゲートGt8も、第2道路Rt2に対応するゲートに相当する。図11において第5ゲートGt5よりも左側に位置するゲートは、第1道路Rt1に対応するゲートである。
【0123】
図11に示すようにトータル横移動量が4である場合には、プロセッサ31は、ゲート前横移動量を3、ゲート後横移動量を1に割り振り、第5ゲートGt5を目標ゲートに設定しても良い。自車両がゲート前領域に存在する状況においては、ゲートによってゲート後領域に存在する物体は検出しにくい。ゲート後横移動量をゲート前横移動量よりも大きくなるように目標ゲートを設定してしまうと、ゲート通過後の制御難易度が高まってしまう。ゲート通過前には検出されていなかった障害物が存在する可能性があるためである。ゲート前領域とゲート後領域とを比較した場合、ゲート前領域のほうが周辺車両を見落としている可能性は小さい。ゲート前横移動量をゲート後横移動量以上となるように目標ゲートを設定することにより、安全性を高めることができる。
【0124】
図12は上記技術思想に対応するプロセッサ31の作動を示すフローチャートである。ステップS401はゲート後道路に入るために、横移動が必要か否かを判定するステップである。ステップS401は、現在の自車レーンに対応する正面ゲートと、ゲート後道路に対応するゲートとを特定し、トータル横移動量を算出する工程を含みうる。なお、正面ゲートがゲート後道路に対応している場合、トータル横移動量は0となりうる。ステップS401はゲート地点までの残り距離が所定値未満となったタイミングで実施されてよい。ここでの所定値は、準備開始距離であってもよいし、準備開始距離とは異なる値であってもよい。
【0125】
ステップS402は、ゲート前横移動量がゲート後横移動量以上となるように目標ゲートを設定し、走行経路を作成するステップである。その際、可能な限りゲート後横移動量が小さくなるように目標ゲートを設定することが好ましい。図中の「ΔX_bfr」はゲート前横移動量を表し、「ΔX_aft」はゲート後横移動量を表している。
【0126】
<ゲート後領域で横移動する場合の作動例>
プロセッサ31は、図13に示すように、ゲート後領域で横移動する必要がある場合(S501)、ゲート通過直後から対外通知制御を実施しても良い(S502)。対外通知制御は、周辺車両に自車両の移動方向を通知する制御である。
【0127】
対外通知制御は、方向指示器の作動であってよい。対外通知制御は、ハザードランプの点灯と方向指示器の作動と交互に繰り返す制御であってもよい。対外通知制御は、ホーンを鳴らすことを含んでいても良い。対外通知制御は、対外表示装置18に自車両の移動方向を示す画像、又は、移動方向に存在する後方車両に向けて割込の許可を依頼する画像を表示することを含んでいても良い。対外通知制御は、移動方向のウェルカムランプを点灯/点滅させることを含んでいても良い。対外通知制御は、車外に向けて光/音を出力する複数のデバイスを順番に作動させる制御であってもよい。例えば対外通知制御は、方向指示器を作動させた後に、ハザードランプの点灯、ホーンの作動、及び、対外表示装置18への移動方向を示す画像の表示の少なくとも1つを実施するシーケンスを含んでいても良い。
【0128】
対外通知制御は、通常時とは異なるパターンで方向指示器を点滅させる制御であってもよい。点滅のパターンの構成要素としては、明滅のリズムや速度、点灯時間と消灯時間の比率、明るくなる速度などがある。対外通知制御は、通常時よりも高い点滅速度で、移動方向に対応する方向指示器を点滅させる制御であってもよい。通常時とは、右左折時や、直線区間での車線変更実施時など、ゲート直前直後以外のシーンを指す。本開示では通常時において方向指示器を点滅させる速度を第1点滅速度、対外通知制御における点滅速度を第2点滅速度と称する。第1点滅速度は70回/分などであってよい。第2点滅速度は、第1点滅速度よりも所定量大きい値に設定されている。第2点滅速度は、法律等で規定される点滅速度の最大値に設定されてよい。例えば第2点滅速度は120回/分又は100回/分などに設定されうる。プロセッサ31は、横移動が完了するまで対外通知制御を継続しても良いし、実行開始から一定時間経過したタイミングで停止してもよい。
【0129】
なお、プロセッサ31は、ゲート前無車線区間を走行中における横移動の試行中においても、対外通知制御を実施してもよい。ゲート前における対外通知制御は、ゲート後における対外通知制御よりも、通知の強度(アピール度合い)は弱められても良い。点滅の速度が速いほど、或いは、光の強度が大きいほど、通知の強度は高くなる。また、対外通知制御に使用するデバイスの数が多いほど、通知の強度は高くなる。これらの制御は、無車線区間において横方向に移動する際に、方向指示器を作動させること、ハザードランプの点灯、ホーンの作動、及び、対外表示装置18への移動方向を示す画像の表示の少なくとも1つを実施することに相当する。
【0130】
なお、プロセッサ31は、第1希望のゲートを通過できなかった場合であっても、ゲート通過後において直ちに車線変更を実施する必要がない場合には、一定距離進んでから車線変更を実施しても良い。ゲート通過直後に車線変更を実施する必要がない場合とは、例えば、ゲートから分岐点までの距離が300m以上である場合などである。ゲート通過直後に車線変更を実施する必要がない場合において車線変更を解禁する距離であるLC解禁距離は100mや200mなどであってよい。
【0131】
分岐路と本線との接続点が、プロセッサ31にとって車線変更を完了させる必要がある地点である最終変更地点に相当する。直ちに車線変更を実施する必要がない場合には、ゲート地点から最終変更地点までの距離がLC解禁距離以上である場合が含まれる。プロセッサ31は、第1希望ゲートを通過できなかった場合であっても、直ちに車線変更を実施する必要がない場合にはゲート領域を抜けてから車線変更を試行するように構成されていても良い。ゲート後領域に比べて通常領域においては周辺車両の進路は安定していることが期待できる。上記構成によれば、より安全に車線変更が実施可能となりうる。
【0132】
<先行車追従機能の制御>
プロセッサ31は、図14に示すように、ゲート地点までの残り距離が所定値未満となったタイミングにおいて先行車を追従している場合(S601 YES)には、先行車に追従する機能をオフにしてもよい(S602)。先行車が通りたいゲートと、自車両の目標ゲートは異なりうるためである。また、プロセッサ31は先行車が自車両の目標ゲートとは異なるゲートに向かって横移動を始めたことに基づいて、追従状態を解除しても良い。
【0133】
ゲート領域で先行車追従制御をオフにした場合、プロセッサ31は、目標速度をゲート通過用の基本速度に設定して良い(S603)。図中の「Vbs」は基本速度を表している。基本速度は、20kmなどの一定値であってよい。なお、基本速度は、通過上限速度に所定の係数を乗じた値であってもよい。通過上限速度は、ゲートを通過可能な最大速度である。通過上限速度は一定値であってもよいし、ゲート毎の固有の値が動的に適用されても良い。プロセッサ31は、ゲートに応じた通過上限速度を、地図データの参照により取得しても良いし、ゲート付近設置された速度標識を画像認識することで取得しても良い。また、プロセッサ31は、路側機との無線通信により通過上限速度を取得しても良い。
【0134】
もちろん、プロセッサ31は、ゲート付近でも先行車追従機能をオンにしたままであっても良い。その場合、プロセッサ31は、先行車を認識できているか否かに応じて、ゲート通過速度を変更しても良い。ゲート通過速度は、ゲート通過時の設定車速、換言すれば速度の目標値である。プロセッサ31は、ゲートから所定距離(例えば15m)手前の時点で先行車を認識できている場合には、先行車を認識できていない場合に比べて、ゲート通過速度を所定量高い値に設定する。便宜上、先行車を認識できていない場合に適用される速度を第1速度、先行車を認識できている場合に適用される速度を第2速度と称する。第1速度及び第2速度は何れも、通過上限速度よりも小さい値に設定されている。
【0135】
例えば通過上限速度が20km/hに設定されている場合、第1速度は10km/h、第2速度は20km/hに設定されて良い。通過上限速度をVmx、第1速度をVgt1、第2速度をVgt2とすると、Vgt1=α・Vmx、Vgt2=β・Vmxで決定されて良い。βは例えば0.8以上、1.0以下の値に設定される係数である。αは、0.5以上β未満の値に設定されている。αはβよりも小さい任意の値であってもよい。
【0136】
先行車を認識しており、当該先行車に追従している場合には、なるべく追従状態が維持されることが好ましいシーンもある。先行車追従中には通過上限速度の範囲内でなるべく早い値をゲート通過速度として採用することにより、先行車をロストするおそれを低減できる。なお、第2速度を適用した結果、先行車との車間距離が所定値未満となった場合、プロセッサ31は適正な車間距離/車間時間を保つように減速しても良い。
【0137】
図15は上記技術思想に対応するプロセッサ31の作動例を示すフローチャートである。ステップS610は、ゲートから所定距離手前の時点で先行車を認識できているか否かを判定するステップである。ゲート手前にて先行車を認識していない場合には(S611 NO)、プロセッサ31はゲート通過速度を第1速度に設定する一方、ゲート手前にて先行車を認識している場合には、プロセッサ31はゲート通過速度を第2速度に設定する。図中の「Vgt」はゲート通過速度を、「Vgt1」は第1速度を、「Vgt2」は第2速度をそれぞれ表している。
【0138】
また、プロセッサ31は、ゲートの所定距離手前にて先行車を認識している場合には、先行車がゲートを通過した際の速度を自車両のゲート通過速度として採用してもよい。具体的には、プロセッサ31は、図16に示すように、ゲート手前にて先行車を認識している場合には(S621 YES)、先行車がゲートを通過する際の速度を取得する(S623)。図中の「Vprevc」は先行車がゲートを通過した際の速度を表している。そして、プロセッサ31は、自車両のゲート通過速度を先行車がゲートを通過した際の速度に設定する(S624)。なお、ゲート手前にて先行車を認識していない場合(S621 NO)、ゲート通過速度を基本速度に設定する(S622)。図中の「Vbs」は基本速度を表している。
【0139】
ゲートを通過した先行車は加速しうる。一方、ゲート通過前の自車両が加速することは好ましくない。上記構成によれば、先行車のリアルタイムの速度には追従しない。上記構成によれば、ゲート通過前における不必要な加速を抑制可能となる。
【0140】
<実施例のまとめ>
上記プロセッサ31は、ゲート地点までの残り距離が所定値未満となったことに基づいて、目標ゲートに連なる車線への移動を開始する。このような構成によれば、時間的に余裕を持って段階的に目標ゲートに近づくことができる。換言すれば、ゲートの直前での横移動量を低減できる。ゲート後領域だけではなく、ゲートの直前領域もまた比較的、車両同士の軌道が交差しやすい区間である。上記構成によれば、ゲート付近において他車両と異常接近する可能性をより一層低減できる。ここでの異常接近とは、接触の危険をドライバに感じさせるほど接近した状態であって、例えば車両同士の離隔が0.5m未満となる状態を指す。
【0141】
プロセッサ31は、目標ゲートまでの残り距離が所定値未満となっても目標ゲートに連なる車線までの移動が完了できていない場合には、自動運転制御を終了する可能性があることをドライバに報知する。当該構成によれば、仮にTORを実施せざるをえない状況に陥ったとしても、スムーズな運転交代が可能となりうる。
【0142】
また、プロセッサ31は、先行車を認識しているか否かに応じて、目標ゲートを通過する際の目標速度を変更しうる。例えば先行車を認識できていない場合には相対的に遅い第1速度を目標速度に適用する一方、先行車を認識できている場合には相対的に速い第2速度を目標速度に適用する。当該構成によれば先行車をロストするおそれを低減できる。また先行車を認識していない場合には、先行車を認識している場合に比べて低速でゲートを通過するため、安全性を高めることができる。
【0143】
もちろん、プロセッサ31は、先行車を認識できている場合には、当該先行車がゲートを通過する際の速度を目標速度として採用してもよい。当該制御は、ゲート通過時における先行車の挙動を再現することに対応する。先行車と同様の挙動を自車両が取ることにより、交通の流れを乱すおそれを低減できる。
【0144】
プロセッサ31は、無車線区間において横移動を実施する場合には、対外通知制御として、方向指示器を作動させること、ハザードランプの点灯、ホーンの作動、及び、対外表示装置18への移動方向を示す画像の表示の少なくとも1つを実施する。当該構成によれば、周辺車両のドライバが自車両の挙動を認識しやすくなる。また、その結果として、異常接近の可能性を低減できる。
【0145】
さらにプロセッサ31は、ゲートを通過後に横移動する必要がある場合には、ゲート通過中のタイミングで、又は、目標ゲートを通過してから所定距離移動するまでに、対外通知制御として方向指示器の作動を開始する。当該構成によれば、周辺車両のドライバがゲート通過後の自車両の挙動を早期に認識可能となるといった利点を有する。
【0146】
プロセッサ31は、ゲート通過後の横移動量がゲート通過前の横移動量よりも小さくなるように、目標ゲートを設定する。換言すれば、プロセッサ31は、ゲート通過後の横移動量がゲート通過前の横移動量よりも小さくなるように、ゲート付近における走行軌道を生成する。当該構成によれば、上記の通り、安全性を高めることができる。
【0147】
プロセッサ31は、第1希望ゲートを通過できなかった場合であっても、直ちに車線変更を実施する必要がない場合には、ゲート領域を抜けてから車線変更を試行する。当該構成によれば、より一層安全性が高まる。
【0148】
なお、地図データに基づいて目標ゲートを設定する構成においては、目標ゲートに近づいてから初めて、目標ゲートが故障車等で通行不可となっていることを認識することが起こりうる。このような動的な事象は、地図データに反映されるまでに時間がかかるためである。プロセッサ31は、目標ゲートにおいて後退中又はハザードランプを点灯させている他車両をカメラ111等にて検知した場合には、目標ゲートを変更するか、又は、運転交代要求を実施してもよい。プロセッサ31は、目標ゲートが封鎖されていることを検知した場合も同様に、目標ゲートを変更するか、又は、運転交代要求を実施してもよい。上記シーンにおいて目標ゲートを変更する作動によれば、自動運転の継続性を高めることができる。また、上記シーンにおいて運転交代を実施する構成によれば、ドライバに不測の事態における応答を任せることができる。
【0149】
<地図を用いたゲート領域への進入判定>
地図データは、ノードデータとリンクデータを備えうる。ノードデータは、複数の道路上の特徴点(ノード)についてのデータである。例えば、道路が交差、合流、分岐する地点、車線が増減する地点、ゲート地点などがノードに設定される。リンクデータは、ノード間を結ぶ道路区間(リンク)についてのデータである。リンクデータは、リンクを特定する固有番号であるリンクID、リンクの長さを示すリンク長、リンク方向、リンクの形状情報、リンクの始端と終端とのノード座標又はノード番号、及び道路属性などについてのデータを含む。ノードデータは、ノード毎に固有の番号であるノードID、ノードの位置座標、名称、種別、ノードに接続するリンクのリンクID等のデータを含む。
【0150】
このようなノードデータは、当該ノードに関連する領域の道路形状を示すノード内地図データを含んでいても良い。ノード内地図データは、ノードを基準とする一定範囲内の部分地図データに相当する。
【0151】
地図記憶部14に保存されている地図データが、上記のようにノード内地図データを有する場合、プロセッサ31は、ゲート地点に紐づくノード内地図データが示す範囲内に自車両が入ったことに基づいて、ステップS103以降の種々の処理を実施しても良い。換言すれば、ゲート地点までの残り距離が所定値未満となった場合には、ゲート地点に紐づくノード内地図データが示す範囲内に自車両が入った場合も含まれる。ゲート領域は、ゲート地点に紐づくノード内地図データが示す範囲であってもよい。
【0152】
<ゲート後に車線が減るシーンへの適用例>
以上では、ゲート地点の後方に分岐路が存在する場合におけるプロセッサ31の作動について説明したが、これに限らない。本開示は図17に示すように、ゲート地点の後方に存在する道路が1本である場合、換言すれば分岐路が存在しない場合にも適用可能である。図17に示すようにゲート後方にある道路が1つである場合、当該道路がゲート後道路に相当する。
【0153】
また図17に示すように、有料道路の後方所定距離以内で道路幅及び車線数が減少することもある。ゲート地点での道路幅に対してゲート後道路の幅が小さい場合、例えば右端又は左端のゲートを通過した車両の軌道は道路延伸方向に対して斜めとなりうる。つまり仮にゲートの後方に分岐路が存在しない場合であっても、道路幅が減少する構造をゲート後領域が有する場合、車両同士の軌道が交差しやすくなる。そのため、車両同士の接触が起こりやすい。
【0154】
そのような課題に対し、本開示にプロセッサ31は、前述の通り、複数のゲートのうち、ゲート後道路の正面に位置するゲートを設定するため、図17に示すような道路構造においてもゲート後横移動量を抑制できる。また、その結果としてゲート後領域においてゲート後道路に入る車列に割り込みを行う必要もなくなる。なお、図17においては第2ゲートGt2、第3ゲートGt3、及び第4ゲートGt4がゲート後道路に対応するゲートに相当する。自車レーンが第1レーンである場合、第2ゲートGt2が目標ゲートとなりうる。ただし、第2ゲートGt2が封鎖中又は自車両の精算方式に対応していない場合には、第3ゲートGt3など、その他のゲートを目標ゲートに設定しても良い。
【0155】
ステップS201~S210を含むステップS104~S109の判定処理は、目標ゲートが自車両にとっての正面ゲートなるまで繰り返し実施されても良い。目標ゲートに向けた車線変更は、複数回実施されても良い。また、無車線区間においても仮想的なレーンは存在しうる。仮想的なレーンは、多くの車両が通る軌道、換言すれば妥当性/合理性がある軌道と解することができる。そのような事情から無車線区間での横移動もまた車線変更に含まれてよい。
【0156】
上記プロセッサ31は、ゲート地点までの残り距離が準備開始距離以下となる道路区間を準備距離とみなす態様について述べたが、プロセッサ31はゲート前領域を準備区間とみなすように構成されていても良い。また、プロセッサ31は、無車線区間を準備区間とみなすように構成されていても良い。
【0157】
<本開示が適用可能な車両について>
上記の実施形態は、道路上を走行する多様な車両に適用可能である。本開示は、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等、道路上を走行可能な多様な車両に搭載可能である。原動機付き自転車も二輪自動車に含めることができる。自車両は電動車でもよいし、エンジン車であってもよい。電動車には、電気自動車のみならず、プラグインハイブリッド車や、ハイブリッド車、燃料電池車を含めることができる。本開示のシステム/装置/方法等が適用される車両は、個人によって所有されるオーナーカーであってもよいし、サービスカーであってもよい。サービスカーとは、例えば、カーシェアリングサービスや車両貸し出しサービスに供される車両を指す。サービスカーには、タクシーや路線バス、乗り合いバスなどが含まれる。
【0158】
<付言(1)>
この明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。また、以下に列挙する技術的思想に対応する車両制御方法及びコンピュータプログラムも本開示の範囲に含まれる。
【0159】
[技術的思想1]
車両を自律的に走行させる自動運転制御を実行する車両制御装置であって、
周辺監視センサの出力信号、外部装置から受信した無線信号、又は地図データに基づいて、有料道路において複数のゲートが設けられている地点であるゲート地点についての情報を取得することと、
前記ゲート地点を前記車両が通過後において前記車両が走行予定の道路であるゲート後道路にかかるデータを取得することと、
前記ゲート地点に設けられている複数の前記ゲートのうち、前記ゲート後道路に近い前記ゲートを目標ゲートに設定することと、
前記目標ゲートの手前側に存在する準備区間に前記車両が入ったことに基づいて、前記目標ゲートが存在する方向に向けての横移動を開始することと、を実行する車両制御装置。
【0160】
[技術的思想2]
前記車両制御装置は、
前記目標ゲートまでの残り距離が所定値未満となった時点において、前記目標ゲートに向けた車線移動が完了できていない場合には、前記目標ゲートを他の前記ゲートに変更するとともに、前記自動運転制御を終了する可能性があることをドライバに報知する処理を実行する、技術的思想1に記載の車両制御装置。
【0161】
[技術的思想3]
前記自動運転制御のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて先行車に追従するように前記車両を走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(F51)を備え、
前記先行車を認識しているか否かに応じて、前記目標ゲートを通過する際の目標速度を変更する、技術的思想1又は2に記載の車両制御装置。
【0162】
[技術的思想4]
前記先行車を補足している場合には、前記ゲートを通行する際に許容されている最大速度に応じた所定の第1速度を目標速度に設定する一方、
前記先行車を補足していない場合には、前記第1速度よりも小さい第2速度を前記目標速度に設定する、技術的思想3に記載の車両制御装置。
【0163】
[技術的思想5]
前記先行車を補足している場合には、前記ゲートを通行する際の前記先行車の通過速度を前記目標速度に設定する一方、
前記先行車を認識していない場合には、前記ゲートを通行する際に許容されている最大速度よりも小さい所定値を前記目標速度に設定する、技術的思想3に記載の車両制御装置。
【0164】
[技術的思想6]
前記周辺監視センサの前記出力信号、前記外部装置から受信した無線信号、又は前記地図データに基づいて、車線区画線が存在しない無車線区間を走行しているか否かを判定するとともに、
前記無車線区間において横方向への移動を行う場合には、所定の対外通知制御を実行するよう構成されており、
前記対外通知制御は、方向指示器を作動させること、ハザードランプの点灯、ホーンの作動、ウェルカムランプの点灯、及び、移動方向を示す画像を対外表示装置に表示することの少なくとも1つを含む、技術的思想1から5の何れか1つに記載の車両制御装置。
【0165】
[技術的思想7]
前記ゲートを通過後に横方向に移動する場合には、前記目標ゲートを通過している時から、又は、前記ゲートの通過後において所定距離移動するまでに、方向指示器の作動を開始する技術的思想1から6の何れか1つに記載の車両制御装置。
【0166】
[技術的思想8]
前記目標ゲートを通過した後の横移動量が前記目標ゲートを通過する前の横移動量よりも小さくなるように前記目標ゲートを設定する、技術的思想1から7の何れか1つ車両制御装置。
【0167】
[技術的思想9]
前記目標ゲートに後退中の他車両が存在すること、ハザードランプを点灯させている他車両を存在すること、又は、前記目標ゲートが封鎖されていることを検知した場合には、前記目標ゲートを変更するか、又は、運転交代要求を実施する、技術的思想1から8の何れか1つに記載の車両制御装置。
【0168】
[技術的思想10]
周辺監視義務がない前記自動運転制御を実施する第1モードと、周辺監視義務がある前記自動運転制御を行う第2モードを切り替え可能に構成された、技術的思想1から9の何れか1つに記載の車両制御装置であって、
前記ゲート地点から所定距離以内を走行中は、前記第2モードを維持する車両制御装置。
【0169】
[技術的思想11]
前記ゲート地点までの残り距離が所定値未満となっても、前記目標ゲートに接続する車線への移動が完了できていない場合には、前記目標ゲートを他の前記ゲートに変更することと、
新たに設定された前記目標ゲートを通過した後に車線変更を行う必要があるか否かを判断することと、
車線変更が必要であると判断した場合には、車線変更を完了させる必要がある地点である最終変更地点を特定することと、
前記ゲートから前記最終変更地点が所定距離以上離れている場合には、前記ゲートから所定距離離れてから車線変更を実施する、技術的思想1から10の何れか1つに記載の車両制御装置。
【0170】
[技術的思想12]
目的地が設定されていない場合には、前記車両が現在走行している車線の延長線上にあるゲートを目標ゲートに設定する、技術的思想1から11の何れか1つに記載の車両制御装置。
【0171】
[技術的思想13]
前記自動運転制御のためのサブシステムとして、所定の車間距離をおいて前記車両を先行車に追従するように走行させる先行車追従制御を実施する先行車追従制御部(F51)を備え、
前記ゲートまでの残り距離が所定値未満であることに基づいて、先行車追従制御を停止する、技術的思想1から12の何れか1つに記載の車両制御装置。
【0172】
[技術的思想14]
前記ゲート地点を基準として定まる領域であるゲート領域に前記車両が進入したことに基づいて、走行速度の目標値である目標速度を、ゲート通過用の所定値に設定する技術的思想1から12の何れか1つに記載の車両制御装置。
【0173】
[技術的思想15]
車両を自律的に走行させる自動運転制御を実行する車両制御装置であって、
周辺監視センサの出力信号、外部装置から受信した無線信号、又は地図データに基づいて、有料道路において複数のゲートが設けられている地点であるゲート地点についての情報を取得することと、
基準として定まる領域であるゲート領域に前記車両が進入したことに基づいて、走行速度の目標値である目標速度を、ゲート通過用の所定値に設定することと、を実行する車両制御装置。
【0174】
<付言(2)>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。本開示に示す種々の処理フローは、他の処理と並列的に、又は、組み合わせて、又は部分的に置き換えて実施されてよい。なお、本開示におけるゲート地点までの残り距離が所定値未満となった場合に相当する表現は、ゲート領域に自車両が進入した場合、と置き換えられてもよい。例えばステップS102は、ゲート領域に自車両が進入したか否かを判定するステップであっても良い。
【0175】
また、本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。例えばプロセッサ31が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。プロセッサ(演算コア)としては、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)などを採用可能である。プロセッサ31が備える機能の一部又は全部は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)、IC(Integrated Circuit)、及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)の何れかを用いて実現されていてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていればよい。プログラムの記録媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等を採用可能である。コンピュータをプロセッサ31として機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0176】
11 周辺監視センサ、14 地図記憶部、15 無線通信機、18 対外表示装置、21 ディスプレイ、22 スピーカ、30 自動運転ECU、31 プロセッサ、32 メモリ、F1 情報取得部、F2 環境認識部、F21 ゲート認識部、F22 周辺車両認識部、F3 モード制御部、F4 計画部、F5 制御実行部、F51 ACCシステム(先行車追従制御部)、F52 通知制御部、Fn 車両制御部、Sys 自動運転システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図17