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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083006
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】リーブオン液状殺菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240613BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240613BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240613BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240613BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240613BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20240613BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240613BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20240613BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20240613BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
A61K45/00
A61Q17/00
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/40
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/12
A61K31/14
A61P31/04
A61P31/12
A61P17/00 101
A01N33/12 101
A01P3/00
A01N25/30
A01N31/02
A01N25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197277
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 有紀
(72)【発明者】
【氏名】森川 利哉
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD02F
4C076DD37
4C076DD41
4C076FF70
4C083AB032
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC231
4C083AC302
4C083AC692
4C083AD042
4C083BB04
4C083CC02
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE10
4C083EE11
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA90
4C084ZB33
4C084ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA41
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA90
4C206ZB33
4C206ZB35
4H011AA02
4H011BA02
4H011BA05
4H011BB03
4H011BB04
4H011BC06
4H011DA13
(57)【要約】
【課題】炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤を含有し、特に皮膚の殺菌性及びその持続効果に優れ、乾燥が速いリーブオン液状殺菌剤組成物を提供する。
【解決手段】成分(A):OH基数/C原子数が0.45以下のポリオール、
成分(B):成分(A)及び炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤、並びに、
成分(C):カルボン酸又はその塩
を含有するリーブオン液状殺菌剤組成物であって、前記組成物中の前記成分(A)の含有量が0.2質量%以上30質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(B)の含有量が0.01質量%以上10質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(C)の含有量が0.01質量%以上15質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(A)に対する3価の金属イオンの質量比(3価の金属イオン/成分(A))が0.2以下であり、25℃におけるpHが3.5以上7.0以下であるリーブオン液状殺菌剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):OH基数/C原子数が0.45以下のポリオール、
成分(B):成分(A)及び炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤、並びに、
成分(C):カルボン酸又はその塩
を含有するリーブオン液状殺菌剤組成物であって、
前記組成物中の前記成分(A)の含有量が0.2質量%以上30質量%以下であり、
前記組成物中の前記成分(B)の含有量が0.01質量%以上10質量%以下であり、
前記組成物中の前記成分(C)の含有量が0.01質量%以上15質量%以下であり、
前記組成物中の前記成分(A)に対する3価の金属イオンの質量比(3価の金属イオン/成分(A))が0.20以下であり、
25℃におけるpHが3.5以上7.0以下である、リーブオン液状殺菌剤組成物。
【請求項2】
前記成分(B)が、カチオン系殺菌剤、ヨウ素系殺菌剤、フェノール系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、テルペノイド系殺菌剤、塩素系殺菌剤、及び両性界面活性剤系殺菌剤からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のリーブオン液状殺菌剤組成物。
【請求項3】
前記組成物中の前記成分(A)に対する成分(B)の質量比(成分(B)/成分(A))が0.001以上5以下である、請求項1又は2に記載のリーブオン液状殺菌剤組成物。
【請求項4】
さらに成分(D):OH基数/C原子数が0.45超のポリオールを0.01質量%以上5.0質量%以下含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のリーブオン液状殺菌剤組成物。
【請求項5】
さらに成分(E):ノニオン性界面活性剤を0.005質量%以上0.1質量%未満含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のリーブオン液状殺菌剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーブオン液状殺菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の調査によれば、人の日常生活における菌又はウイルスの感染経路としては接触感染が多いことが知られてきている。接触感染は主として、菌又はウイルスの感染者、ドアノブ、ハンドル、食器、玩具、その他日用品、内装品等の被接触物に手指が接触することにより起こる。
【0003】
このような日常生活での接触行動による菌又はウイルスの接触感染を予防する方法が求められている。
手指を介しての菌又はウイルスの接触感染を予防する方法として、手指にエタノール等の炭素数5以下のモノアルコールを適用して殺菌消毒する方法が知られている。しかしながら殺菌乃至消毒成分として用いられるエタノール等の、炭素数5以下のモノアルコールは揮発性が高く、皮膚表面に長時間残留させることが難しいため、殺菌性能の持続性が充分ではなかった。
【0004】
そこで、エタノール以外の殺菌成分を配合した皮膚外用剤が検討されている。
例えば特許文献1には、カチオン殺菌消毒剤、低級アルコール、油性基剤、高級脂肪族アルコール、親油性と親水性の非イオン界面活性剤、水溶性多価アルコール及び精製水を含み、かつ効果持続型の殺菌消毒クリームが、皮膚、手指及び外傷性傷の持続的な消毒効果と手荒れ防止効果を兼ね備えたものであることが開示されている。
特許文献2には、哺乳動物の皮膚表面に存在する細菌およびウイルスを抑制できる、皮膚pHを約4未満にまで低減することができる化合物または組成物が開示され、該化合物または組成物は、フェノール系抗菌剤、第四アンモニウム抗微生物剤、アニリド、ビスグアニジン、およびこれらの混合物からなるグループから選択される抗微生物剤をさらに含むことが記載されている。
特許文献3には、相乗的に効果的な量の、一種以上の植物性成分、ベンジルアルコール、及び1,3-プロパンジオールを含む防腐組成物であって、植物性成分対ベンジルアルコールが特定の比率で存在し、組成物のpHが3~5の範囲にある防腐組成物、及び、該防腐組成物を含むパーソナルケア製品が開示されている。
【0005】
また、エタノール以外の殺菌成分を配合したウエットシートも知られている。特許文献4には、繊維材料からなる基材シートに液剤が含浸されてなるウエットシートであって、前記液剤は、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸若しくはこれらの酸の塩、又はこれらの酸及び塩から選択される2種以上の組み合わせ、第四級アンモニウム塩型界面活性剤、及び水を含有するとともにエタノールを非含有であり、所定のpH範囲であるものが、除菌抗菌効果が高いにもかかわらず、肌に対する刺激性が低いことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-284412号公報
【特許文献2】特表2008-523064号公報
【特許文献3】特表2012-532141号公報
【特許文献4】特開2020-199090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、前記特許文献で使用されているカチオン系の殺菌剤は、ステンレス、ガラス等の無機物と比較してヒトの皮膚表面に対する殺菌効果が得られ難いという知見が得られた。またカチオン系の殺菌剤は、皮膚刺激性、人体への安全性等の観点から、皮膚用の組成物中への配合量が実質的に制限されることがある。そのため従来技術では、カチオン系の殺菌剤による皮膚の殺菌性及びその持続効果は充分なものとはいえないことがわかった。
加えてリーブオン型の液状組成物では、実使用上、対象物に適用した後の乾燥が速いことも要求される。この点については、前記特許文献では言及されていない。
【0008】
本発明は、炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤を含有し、特に皮膚の殺菌性及びその持続効果に優れ、乾燥が速いリーブオン液状殺菌剤組成物の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定のポリオール、炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤、及び、カルボン酸又はその塩をそれぞれ特定量含有し、前記ポリオールに対する3価の金属イオンの質量比、及びpHが所定の範囲にあるリーブオン液状殺菌剤組成物が、上記効果を奏することを見出した。
すなわち本発明は、
成分(A):OH基数/C原子数が0.45以下のポリオール、
成分(B):成分(A)及び炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤、並びに、
成分(C):カルボン酸又はその塩
を含有するリーブオン液状殺菌剤組成物であって、
前記組成物中の前記成分(A)の含有量が0.2質量%以上30質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(B)の含有量が0.01質量%以上10質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(C)の含有量が0.01質量%以上15質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(A)に対する3価の金属イオンの質量比(3価の金属イオン/成分(A))が0.20以下であり、25℃におけるpHが3.5以上7.0以下であるリーブオン液状殺菌剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤を含有し、特に皮膚の殺菌性及びその持続効果に優れ、乾燥が速いリーブオン液状殺菌剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[定義]
本明細書において「リーブオン殺菌剤組成物」とは、対象物に適用後、水洗等で除去せずに対象物表面に残留させて用いる殺菌剤組成物を意味する。
本明細書において「液状」とは、25℃において流動性を有するものを意味し、好ましくは25℃における粘度が後述する範囲であるものをいう。
【0012】
[リーブオン液状殺菌剤組成物]
本発明のリーブオン液状殺菌剤組成物(以下、単に「(本発明の)組成物」ともいう)は、
成分(A):OH基数/C原子数が0.45以下のポリオール、
成分(B):成分(A)及び炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤、並びに、
成分(C):カルボン酸又はその塩
を含有するリーブオン液状殺菌剤組成物であって、
前記組成物中の前記成分(A)の含有量が0.2質量%以上30質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(B)の含有量が0.01質量%以上10質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(C)の含有量が0.01質量%以上15質量%以下であり、前記組成物中の前記成分(A)に対する3価の金属イオンの質量比(3価の金属イオン/成分(A))が0.20以下であり、25℃におけるpHが3.5以上7.0以下である。
本発明の組成物は上記構成を有することにより、特に皮膚の殺菌性及びその持続効果に優れ、乾燥が速いリーブオン液状殺菌剤組成物となる。
【0013】
本発明の組成物が上記効果を奏する理由については定かではないが、次のように考えられる。
前記の通り、本発明者らは、ヒトの皮膚表面は、成分(B)である、成分(A)及び炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤による殺菌効果が得られ難いという知見を得た。これは、該殺菌剤と皮膚との相互作用により皮膚に吸着することに起因して、人の皮膚表面上において殺菌活性が低下すると考えられる。
【0014】
一方、本発明の組成物では、成分(A)であるポリオールが殺菌成分として作用し、且つ、成分(B)の殺菌活性の低下を抑制する機能も有していると考えられる。
成分(A)であるポリオールは、親水部であるヒドロキシ基と、炭素原子を含む疎水部とを有する。そして、前記疎水部が水の三次元水素結合ネットワークを歪ませるないし破壊することにより、菌周囲の水の環境を変化させ、例えば菌の親水性の膜タンパク質を変性させる作用を有していると考えられる。
成分(A)は、OH基数/C原子数が0.45以下であることで上記作用による殺菌性に優れると考えられる。
また成分(A)はエタノール等の炭素数5以下のモノアルコールよりも揮発性が低く、皮膚に適用した後にも、高濃度で長時間皮膚表面付近に留まることができる。また、皮膚表面で成分(B)の溶媒としての役割も果たし、成分(B)の皮膚表面への吸着を抑制し、皮膚に対する殺菌活性の低下を抑制する効果が得られ、殺菌性及びその持続効果が向上すると考えられる。
【0015】
成分(C)は主として本発明の組成物のpHを安定させて殺菌性を確保し且つ皮膚刺激を抑制するために、本発明の組成物のpHを3.5以上7.0以下の範囲に調整する目的で用いられる。
成分(C)は組成物中で少なくとも一部がイオン化しており、対イオンであるカウンターカチオンの選択が、本発明の組成物の殺菌性及び乾燥速度に影響する。具体的には、本発明の組成物中の成分(A)に対する3価の金属イオンの質量比(3価の金属イオン/成分(A))が所定値を超える場合には、皮膚に対する殺菌性及び組成物の乾燥速度が共に低下する傾向が見られた。その理由としては、成分(C)のカウンターカチオンが3価の金属イオンであると、成分(B)より先に3価の金属イオンが菌に吸着し、成分(B)が菌に吸着しづらくなる結果、組成物の殺菌性及びその持続効果を阻害するためと考えられる。乾燥速度の低下については、3価の金属イオンは価数が大きく、且つ、イオン表面の電荷密度が大きく、イオンによって拘束される水和水が多くなるために、組成物中の水の揮発が遅くなるためと考えられる。
【0016】
以上の理由により、上記成分(A)~(C)をそれぞれ所定量含有し、成分(A)に対する3価の金属イオンの質量比(3価の金属イオン/成分(A))が所定値以下であり、25℃におけるpHが所定の範囲である本発明の組成物は、特に皮膚の殺菌性及びその持続効果に優れ、乾燥速度も向上すると考えられる。
【0017】
本発明の組成物の適用対象物は、本発明の有用性が高いという観点で、好ましくは皮膚であり、より好ましくは頭皮を除く皮膚である。すなわち本発明の組成物は、好ましくは皮膚用のリーブオン液状殺菌剤組成物である。
本発明の有用性が高いという観点で、本発明の組成物は、手指用のリーブオン液状殺菌剤組成物であることがより好ましい。
【0018】
本発明の組成物が殺菌性を発現する対象となる菌としては、該組成物との接触により不活性化又は死滅するものであれば特に制限されず、例えば厚生労働省の保育所における感染症対策ガイドラインに記載の微生物を適用することができる。
具体的には、菌としてはグラム陽性細菌である炭疽菌、結核菌、溶血性レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌等、あるいはグラム陰性細菌であるセラチア菌、野兎病菌、ペスト菌、ブルセラ菌、鼻疽菌、コレラ菌、サルモネラ菌、赤痢菌、大腸菌、百日咳菌等が挙げられる。
なお、本実施例では、セラチア菌を例に挙げて殺菌性を評価しているが、本発明の組成物が消毒対象とする菌はこれに限定されない。
【0019】
また、本発明の組成物は、菌だけでなく、ウイルスに対する消毒剤組成物としても使用することができる。該ウイルスとしては、エンベロープウイルスであるアレナウイルス、エボラウイルス、痘そうウイルス、ナイロウイルス、マールブルグウイルス、コロナウイルス、サル痘ウイルス、ベータコロナウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、風しんウイルス、麻しんウイルス等、及びノンエンベロープウイルスであるエンテロウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス等が挙げられる。
【0020】
<成分(A):OH基数/C原子数が0.45以下のポリオール>
成分(A)として用いられるポリオールは、OH基数/C原子数が0.45以下のポリオールである。
成分(A)のOH基数/C原子数は、殺菌性及びその持続効果向上の観点、並びに乾燥速度向上の観点から、0.45以下であり、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下である。また、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.17以上である。また、本発明の組成物の低温安定性を向上させる観点から、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.27以上、よりさらに好ましくは0.30以上である。
【0021】
成分(A)は、殺菌性及びその持続効果向上の観点、並びに乾燥速度向上の観点から、低分子化合物であることが好ましい。具体的には、成分(A)の分子量は、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは500以下、よりさらに好ましくは300以下、よりさらに好ましくは250以下、よりさらに好ましくは200以下、よりさらに好ましくは150以下、である。また、成分(A)の揮発を抑制して殺菌性の持続効果を向上させる観点、及び乾燥速度向上の観点から、好ましくは80以上、より好ましくは100以上である。
【0022】
成分(A)のC原子数は、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、5以上、好ましくは6以上であり、殺菌性及びその持続効果向上の観点、並びに乾燥速度向上の観点からは、好ましくは24以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは16以下、よりさらに好ましくは12以下、よりさらに好ましくは11以下である。
また成分(A)のOH基数は、殺菌性及びその持続効果向上の観点、並びに乾燥速度向上の観点から、好ましくは2以上5以下、より好ましくは2以上4以下、さらに好ましくは2以上3以下であり、よりさらに好ましくは2である。
【0023】
成分(A)の具体例としては、鎖状ポリオール、環状構造を有するポリオールが挙げられ、これらのいずれも用いることができる。成分(A)は、疎水部によって、菌周囲の水の三次元水素結合ネットワークを歪ませるないし破壊することにより、菌が安定に存在できなくなることによって殺菌性を発現させる観点から、好ましくは鎖状ポリオールであり、疎水部を有することにより殺菌性及びその持続効果を向上させる観点から、より好ましくは鎖状ジオール又は鎖状トリオールであり、よりさらに好ましくは鎖状ジオールである。なお鎖状ポリオールにおいて、OH基の結合位置は特に制限されない。
【0024】
成分(A)として含有される鎖状ポリオールとしては、例えば、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール等の直鎖状ジオール;
1,2,7-ヘプタントリオール、1,2,8-オクタントリオール、1,2,9-ノナントリオール、1,2,10-デカントリオール等の直鎖状トリオール;
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール、(ラウリル/ミリスチル)グリコールヒドロキシプロピルエーテル、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデカン-1,2,3-トリオール等の分岐鎖状ジオール又はトリオール;及び、
ポリエチレングリコール等のポリマー;等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を含有することができる。
また、成分(A)中の鎖状ポリオールの含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0025】
上記の中でも、殺菌性及びその持続効果向上の観点、並びに乾燥速度向上の観点から、成分(A)は、好ましくはジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2,10-デカントリオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール、及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2,10-デカントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、及び3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオールからなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、及び3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオールからなる群から選ばれる1種以上である。また、組成物を皮膚に塗布した際の、乾燥後のべたつきの少なさの観点から、よりさらに好ましくはジプロピレングリコール、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオールからなる群から選ばれる1種以上である。さらに、本発明の組成物の低温安定性の観点から、よりさらに好ましくはジプロピレングリコールである。
【0026】
<成分(B):成分(A)及び炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤>
成分(B)は、成分(A)及び炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤である。好適な成分(B)としては、カチオン系殺菌剤、ヨウ素系殺菌剤、フェノール系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤、テルペノイド系殺菌剤、塩素系殺菌剤、両性界面活性剤系殺菌剤からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの殺菌剤は、特に皮膚外用剤組成物において好適に用いられるものである。
【0027】
カチオン系殺菌剤としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
ヨウ素系殺菌剤としては、ポビドンヨード、ポリビニルアルコールヨード、シクロデキストリンヨード等が挙げられる。
フェノール系殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、フェノキシエタノール等が挙げられる。
ビグアナイド系殺菌剤としては、クロルヘキシジングルコン酸塩等が挙げられる。
テルペノイド系殺菌剤としては、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリル、β-グリチルレチン酸等が挙げられる。
塩素系殺菌剤としては、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素化イソシアヌル酸等が挙げられる。
両性界面活性剤系殺菌剤としては、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩、アルキルポリアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0028】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記の中でも、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、成分(B)は、好ましくはカチオン系殺菌剤、ヨウ素系殺菌剤、フェノール系殺菌剤、及びビグアナイド系殺菌剤からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはカチオン系殺菌剤、及びビグアナイド系殺菌剤からなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくは塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、及びクロルヘキシジングルコン酸塩からなる群から選ばれる1種以上であり、よりさらに好ましくは塩化ベンザルコニウムである。
成分(B)が塩化ベンザルコニウムの場合、殺菌性を向上させる観点から、アルキル基の炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、より好ましくは10以上、よりさらに好ましくは12以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、よりさらに好ましくは16以下である。
成分(B)がアルキルトリメチルアンモニウムクロリドの場合、殺菌性を向上させる観点から、アルキル基の炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは15以下である。
成分(B)がジアルキルジメチルアンモニウムクロリドの場合、殺菌性を向上させる観点から、アルキル基の炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
【0029】
<成分(C):カルボン酸又はその塩>
成分(C)におけるカルボン酸としては、皮膚外用剤組成物に用いられるものが好ましい。
該カルボン酸としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グリセリン酸、グルコン酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、ソルビン酸等の脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族カルボン酸;ピルビン酸、ウロカニン酸、ポリグルタミン酸等のその他のカルボン酸が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
上記の中でも、殺菌性を向上させる観点、組成物のpHを所望の範囲に調整する観点、及び皮膚刺激を抑制する観点から、成分(C)におけるカルボン酸としては、好ましくは乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ギ酸、酢酸、コハク酸、アジピン酸、ソルビン酸、及び安息香酸からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは乳酸、クエン酸、リンゴ酸、及びコハク酸からなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくは乳酸である。
【0030】
成分(C)におけるカルボン酸の塩としては、殺菌性及びその持続効果向上の観点、並びに乾燥速度向上の観点から、好ましくはカルボン酸の1価又は2価の金属塩であり、より好ましくはカルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。そして、組成物の乾燥過程におけるきしみの無さの観点、乾燥後のしっとり感向上の観点から、さらに好ましくはカルボン酸の1価の金属塩であり、よりさらに好ましくはカルボン酸のアルカリ金属塩であり、よりさらに好ましくはカルボン酸のナトリウム塩及びカリウム塩からなる群から選ばれる1種以上、よりさらに好ましくはカルボン酸のナトリウム塩である。
【0031】
すなわち成分(C)としては、好ましくは乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、ギ酸、酢酸、コハク酸、アジピン酸、ソルビン酸、安息香酸、及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは乳酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくは乳酸又はその塩であり、よりさらに好ましくは乳酸及び乳酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上であり、よりさらに好ましくは乳酸を含む態様である。
成分(C)が乳酸を含む場合、成分(C)全量中における乳酸の含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%以下である。
【0032】
<含有量>
組成物中の成分(A)の含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点、並びに乾燥速度向上の観点から、0.2質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、よりさらに好ましくは1.5質量%以上、よりさらに好ましくは2.0質量%以上である。また、乾燥速度向上の観点、乾燥後のべたつきの少なさの観点、並びに経済性の観点から、30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは4.0質量%以下、よりさらに好ましくは3.5質量%以下である。
【0033】
組成物中の成分(B)の含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、0.01質量%以上であり、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。また、人体への安全性の観点、組成物の乾燥過程における皮膚へのなじみやすさの観点、及び、乾燥後のべたつきの少なさの観点から、10質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0034】
組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、0.21質量%以上、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上、さらに好ましくは0.50質量%以上、よりさらに好ましくは1.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.0質量%以上である。また、乾燥速度向上の観点、乾燥後のべたつきの少なさの観点、及び皮膚刺激を抑制する観点からは、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは3.5質量%以下、よりさらに好ましくは3.2質量%以下である。
【0035】
組成物中の成分(C)の含有量は、殺菌性を向上させる観点、及び、組成物のpHを所望の範囲に調整する観点から、0.01質量%以上であり、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、組成物のpHを所望の範囲に調整する観点、乾燥速度向上の観点、及び皮膚刺激を抑制する観点から、15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.0質量%以下、よりさらに好ましくは1.0質量%以下である。
なお本明細書において、成分(C)としてカルボン酸の塩を用いる場合、成分(C)の含有量とは、カルボン酸換算の量である。
【0036】
組成物中の成分(A)~(C)の合計含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.30質量%以上、さらに好ましくは0.50質量%以上、よりさらに好ましくは1.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.1質量%以上である。また、乾燥速度向上の観点、乾燥後のべたつきの少なさの観点、及び皮膚刺激を抑制する観点からは、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは3.5質量%以下である。
【0037】
<3価の金属イオン>
本発明の組成物中の成分(A)に対する3価の金属イオンの質量比(3価の金属イオン/成分(A))は、殺菌性及びその持続効果向上の観点、乾燥速度向上の観点、並びに乾燥過程におけるきしみの無さの観点、乾燥後のしっとり感向上の観点から、0.20以下であり、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下、さらに好ましくは0.05以下、よりさらに好ましくは0.02以下、よりさらに好ましくは0.01以下、よりさらに好ましくは0.005以下であり、よりさらに好ましくは0である。
ここでいう3価の金属イオンとしては、Al3+イオン、Fe3+イオン等が挙げられる。3価の金属イオンの供給源は特に限定されず、成分(C)であるカルボン酸塩由来の金属イオンでもよく、その他成分に由来する金属イオンであってもよい。
【0038】
組成物中の3価の金属イオンの含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点、乾燥速度向上の観点、並びに乾燥過程におけるきしみの無さの観点、乾燥後のしっとり感向上の観点から、好ましくは0.20質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下、よりさらに好ましくは0.05質量%以下、よりさらに好ましくは0.02質量%以下、よりさらに好ましくは0.01質量%以下、よりさらに好ましくは0.005質量%以下であり、よりさらに好ましくは0質量%である。
組成物中の3価の金属イオンの含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)により、下記条件で測定することができる。
<ICP-AES>
(使用装置)
サーモフィッシャーサイエンティフィック社製「iCAP 6500Duo」
(測定条件)
RFパワー:1150W、補助ガス流量:0.5L/min、ネブライザーガス流量:0.7L/min、クーラントガス流量:12L/min
ICP-AES測定の際、まず、測定試料を乾式灰化法で前処理する。試料を石英るつぼに入れ、加熱灰化を行う。灰化は、電気炉を用いて550℃で実施する。その後、灰化した試料を塩酸、硝酸もしくは硫酸へ溶解し、ICP-AESの測定を実施する。
また、組成物中の3価の金属イオンの含有量は、金属イオンあるいはその供給源となる成分の配合量がわかっている場合には、計算により求めることができる。
【0039】
<1価又は2価の金属イオン>
本発明の組成物は、殺菌性及びその持続効果を低下させずに乾燥過程におけるきしみの無さ、乾燥後のしっとり感を向上させる観点から、好ましくは1価又は2価の金属イオン、より好ましくは1価の金属イオンを含有する。
該金属イオンとしては、好ましくはアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアルカリ金属イオンであり、さらに好ましくはナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群から選ばれる1種以上、よりさらに好ましくはナトリウムイオンである。1価又は2価の金属イオンの供給源は特に限定されず、成分(C)であるカルボン酸塩由来の金属イオンでもよく、その他成分に由来する金属イオンであってもよい。
【0040】
組成物中の1価又は2価の金属イオンの含有量は、殺菌性及びその持続効果を低下させずに乾燥過程におけるきしみの無さ、乾燥後のしっとり感を向上させる観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、乾燥速度向上の観点、並びに乾燥過程におけるきしみの無さの観点、乾燥後のしっとり感向上の観点から、好ましくは0.50質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下、よりさらに好ましくは0.05質量%以下である。
組成物中の1価又は2価の金属イオンの含有量は、3価の金属イオンの含有量と同様の方法で求めることができる。
【0041】
<成分(D):OH基数/C原子数が0.45超のポリオール>
本発明の組成物は、皮膚への塗り広げやすさの観点、乾燥過程における皮膚へのなじみやすさの向上の観点から、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに成分(D):OH基数/C原子数が0.45超のポリオールを含有することができる。
成分(D)のOH基数/C原子数は、0.45超、好ましくは0.50以上であり、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下、よりさらに好ましくは1.2以下である。
【0042】
成分(D)は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点から、低分子化合物であることが好ましい。具体的には、成分(D)の分子量は、好ましくは1,000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは500以下、よりさらに好ましくは200以下、よりさらに好ましくは150以下である。また、成分(D)の揮発を抑制する観点から、好ましくは80以上、より好ましくは90以上である。
【0043】
成分(D)のC原子数は、好ましくは3以上であり、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点、入手性の観点、組成物の低温安定性を向上させる観点からは、好ましくは24以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは12以下、よりさらに好ましくは8以下、よりさらに好ましくは6以下である。
また成分(D)のOH基数は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点、並びに乾燥過程における皮膚へのなじみやすさの観点から、好ましくは2以上6以下、より好ましくは2以上5以下、さらに好ましくは2以上4以下である。
【0044】
成分(D)は、鎖状ポリオール、環状構造を有するポリオールが挙げられ、皮膚への塗り広げやすさと、乾燥過程における皮膚へのなじみやすさの観点、並びに入手性の観点から、好ましくは鎖状ポリオールである。なお鎖状ポリオールにおいて、OH基の結合位置は特に制限されない。
成分(D)として用いられるポリオールとしては、例えば、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブタンジオール等の直鎖状ジオール;グリセロール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール等の直鎖状トリオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール等の分岐鎖状ポリオール;ソルビトール等の糖アルコール;並びにポリグリセリン等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
上記の中でも、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点、組成物の低温安定性を向上させる観点、入手性の観点からは、成分(D)は、好ましくはプロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-ブチレングリコール、グリセロール、及びソルビトールからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはグリセロールである。
【0045】
本発明の組成物が成分(D)を含有する場合、組成物中の成分(D)の含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点からは、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、よりさらに好ましくは1.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.0質量%以上である。また、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点からは、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
【0046】
また、組成物中の成分(A)の含有量に対する成分(D)の含有量の質量比(成分(D)/成分(A))は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点から、好ましくは0.003以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.025以上、よりさらに好ましくは0.05以上、よりさらに好ましくは0.1以上、よりさらに好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは25以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5.0以下、よりさらに好ましくは2.0以下である。
また、成分(D)中の鎖状ポリオールの含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0047】
<成分(E):ノニオン性界面活性剤>
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに成分(E):ノニオン性界面活性剤を含有することができる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、アルキルグリセリルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルサッカライド、アルキルアミンオキサイド、及びアルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。
上記の中でも、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点から、好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、及びアルキルグリセリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、アルキルグリセリルエーテル、アルキルサッカライド、アルキルアミンオキサイド、及びアルキルアミドアミンオキサイドにおけるアルキル基、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルにおけるアルケニル基、及び、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、高級脂肪酸ショ糖エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、好ましくは炭素数8以上22以下、より好ましくは炭素数10以上18以下である。
【0048】
本発明の組成物が成分(E)を含有する場合、組成物中の成分(E)の含有量は、好ましくは0.005質量%以上であり、殺菌性及びその持続効果、乾燥速度の低下を抑制する観点からは、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.05質量%以下である。
また、界面活性剤(但し、成分(B)、成分(C)に該当するものを除く)全量中の成分(E)の含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、よりさらに好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0049】
<水>
本発明の組成物は、成分(A)~(C)を溶解又は分散させる観点、及び対象物に適用しやすくする観点から、さらに水を含有することが好ましい。
本発明の組成物が水を含有する場合、組成物中の水の含有量は、剤型によっても異なるが、成分(A)~(C)を溶解又は分散させる観点、及び対象物に適用しやすくする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上、よりさらに好ましくは90%超、よりさらに好ましくは95質量%以上である。上限は99.78質量%以下であり、好ましくは99.5質量%以下である。
組成物中の水の含有量は、成分(A)~(C)の残部であってもよい。この観点から、組成物中の成分(A)~(C)及び水の合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%以下である。
【0050】
<水性媒体>
本発明の組成物は、成分(A)~(C)を溶解させる観点、及び対象物に適用しやすくする観点から、さらに水以外の水性媒体を含有することができる。水以外の水性媒体としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数5以下のモノアルコールが挙げられる。
但し本発明の組成物は、エタノールの含有量が少なくても殺菌性を発現し得る。組成物中のエタノールの含有量は、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、よりさらに好ましくは0.5質量%以下、よりさらに好ましくは0.2質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下、よりさらに好ましくは0.07質量%以下、よりさらに好ましくは0.05質量%以下であり、実質0質量%であってもよい。
【0051】
<その他の成分>
本発明の組成物は、前述した成分以外に、必要に応じて他の成分、例えば、アニオン性界面活性剤(成分(C)に該当するものを除く)、両性界面活性剤(成分(B)に該当するものを除く)、成分(C)以外のpH調整剤(水酸化ナトリウム等)、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、制汗剤、香料、保湿剤、感触調整剤、抗炎症剤等を含有させることもできる。
【0052】
なお、殺菌性及びその持続効果、乾燥速度の低下を抑制する観点、並びに皮膚刺激抑制の観点から、以下に記載の成分の含有量が少ないことが好ましい。
本発明の組成物中のベンジルアルコールの含有量は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点、組成物の低温安定性の観点、並びに皮膚刺激抑制の観点から、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、よりさらに好ましくは0.07質量%以下、よりさらに好ましくは0.05質量%以下であり、実質0質量%であってもよい。
【0053】
本発明の組成物中の植物性成分の含有量は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点、組成物の低温安定性の観点から、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、よりさらに好ましくは0.07質量%以下、よりさらに好ましくは0.05質量%未満、よりさらに好ましくは0.01質量%未満であり、実質0質量%であってもよい。
上記植物性成分としては、精油、植物エキス、柑橘類抽出物、グレープフルーツ種子抽出物、キンセンカ油、クルクミン化合物(テトラヒドロクルクミノイド)等が挙げられる。
【0054】
本発明の組成物中のカチオン性ポリマーの含有量は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点から、好ましくは0.1質量%未満であり、より好ましくは0.07質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%未満、よりさらに好ましくは0.01質量%未満であり、実質0質量%であってもよい。
本明細書においてカチオン性ポリマーとは、好ましくはカチオン性基を有し、且つ全体として正に帯電するポリマーを意味する。「アニオン性基及び両性基を実質的に有さない」とは、カチオン性基に対するアニオン性基及び両性基のモル量が好ましくは0.1%以下であることをいう。また本明細書においてカチオン性基とは、カチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基であり、具体的には、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基が挙げられる。
上記カチオン性ポリマーとしては、カチオン化多糖類、カチオン化セルロース、カチオン化でんぷん、カチオン化グアーガム、カチオン化ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテルアミノ変性シリコーン、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-33、ポリクオタニウム-37、ポリクオタニウム-38、ポリクオタニウム-39、ポリクオタニウム-47、ポリクオタニウム-49、ポリクオタニウム-51、ポリクオタニウム-52、ポリクオタニウム-53、ポリクオタニウム-61、ポリクオタニウム-64、ポリクオタニウム-65等が挙げられる。
【0055】
本発明の組成物中の亜鉛塩の含有量は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点から、好ましくは0.1質量%未満であり、より好ましくは0.07質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%未満、よりさらに好ましくは0.01質量%未満であり、実質0質量%であってもよい。
【0056】
本発明の組成物中の銀化合物の含有量は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点から、好ましくは0.1質量%未満であり、より好ましくは0.07質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%未満、よりさらに好ましくは0.01質量%未満であり、実質0質量%であってもよい。
本発明の組成物中のカチオン性界面活性剤(成分(B)に該当するものを除く)の含有量は、殺菌性及びその持続効果、並びに乾燥速度の低下を抑制する観点から、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%未満、よりさらに好ましくは0.1質量%未満であり、実質0質量%であってもよい。
【0057】
組成物中の成分(A)、成分(B)及び炭素数5以下のモノアルコールの合計含有量は、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、好ましくは0.21質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上、さらに好ましくは0.30質量%以上、よりさらに好ましくは0.50質量%以上、よりさらに好ましくは1.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.0質量%以上である。また、乾燥速度向上の観点、乾燥後のべたつきの少なさの観点、及び皮膚刺激を抑制する観点からは、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5.0質量%以下、よりさらに好ましくは3.5質量%以下、よりさらに好ましくは3.2質量%以下である。
【0058】
<pH>
本発明の組成物の25℃におけるpHは、殺菌性及びその持続効果向上の観点、皮膚刺激抑制の観点から、3.5以上であり、好ましくは3.7以上、より好ましくは3.8以上である。また、殺菌性及びその持続効果向上の観点から、7.0以下であり、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.5以下、さらに好ましくは5.0以下、よりさらに好ましくは4.5以下である。
組成物の25℃におけるpHは、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0059】
<粘度>
本発明の組成物の25℃における粘度は、皮膚への塗り広げやすさの観点から、好ましくは1.0mPa・s以上、より好ましくは2.0mPa・s以上、さらに好ましくは3.0mPa・s以上であり、乾燥速度の低下を抑制する観点から、好ましくは1,000mPa・s以下、さらに好ましくは700mPa・s以下、よりさらに好ましくは500mPa・s以下、よりさらに好ましくは300mPa・s以下、よりさらに好ましくは100mPa・s以下である。
なお、本発明の組成物の25℃における粘度は、25℃においてB型粘度計((株)東機産業製「TVB-10M」)を用いて3回測定し、その平均値とする。
対象の粘度に応じた測定条件は以下である:
・粘度:1~10mPa・s
治具L/Adp、回転数60rpm
・粘度:10~100mPa・s
治具M1、回転数60rpm
・粘度100mPa・s超1,000mPa・s以下
治具M2、回転数30rpm
・粘度1,000mPa・s超10,000mPa・s以下
治具M3、回転数12rpm
・粘度10,000mPa・s超100,000mPa・s以下
治具M4、回転数6rpm
【0060】
<剤型>
組成物の剤型は液状である限り特に制限されず、乳化組成物の形態であってもよい。該乳化組成物としては水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物のいずれでもよい。
【0061】
本発明の組成物は、前記の通り、皮膚用のリーブオン液状殺菌剤組成物であることが好ましく、手指用のリーブオン液状殺菌剤組成物であることがより好ましい。好ましい製品形態としては、手指用殺菌剤又は消毒剤が挙げられる。
【0062】
[皮膚の殺菌方法]
本発明はまた、本発明のリーブオン液状殺菌剤組成物を皮膚に適用する工程を含む、皮膚の殺菌方法を提供することができる。
前記組成物を皮膚に適用する方法は適用部位等に応じて適宜選択でき、例えば、組成物を皮膚表面に塗布、噴霧等して適用することができる。
【0063】
前記方法においては、前記組成物を皮膚に適用した後に水洗等で該組成物を除去せず、皮膚表面に残留させることが好ましい。該組成物をリーブオン液状殺菌剤組成物として用いて、殺菌成分である成分(A)及び成分(B)、並びに成分(C)を皮膚表面に残留させることにより、殺菌性及びその持続効果を発現するためである。
【0064】
組成物を皮膚に適用する工程にいて、組成物の適用量は特に制限されない。高い殺菌性及びその持続効果を発現する観点からは、通常、両手のひらに対し、前記組成物を好ましくは0.1mL以上5mL以下の範囲で適用する。
【0065】
前記組成物は予め水、石鹸、ボディソープ、ハンドソープなどで皮膚を洗浄し、洗浄後の皮膚に適用してもよく、未洗浄の皮膚に適用することもできる。洗浄後の皮膚は、生来存在する皮膚の保護成分が洗い流され、外界に存在する菌やウイルスの防御力が低下している状態であることから、洗浄後の皮膚に前記組成物を適用することがより好ましい。
【0066】
[使用]
本発明はさらに、炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤の皮膚上での殺菌効果を増強又は持続させるための、OH基数/C原子数が0.45以下のポリオールの使用を提供する。
上記特定のポリオールは、上記殺菌剤と組み合わせて用いることにより、前述した作用機構に基づき、皮膚上での殺菌効果を増強又は持続させることができる。
上記において、炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤、OH基数/C原子数が0.45以下のポリオール、並びにこれらの好適態様については、それぞれ、前記成分(B)、前記成分(A)と同じである。
【実施例0067】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0068】
(pH)
殺菌剤組成物のpHは、25℃においてpHメーター(電極:6367-10D((株)堀場製作所製))を用いて測定した。
【0069】
(菌液の調製)
殺菌性評価には、下記方法により調製したセラチア菌(NBRC12648株)の菌液を用いた。
セラチア菌(NBRC12648株)を、滅菌済みカルチャーチューブ(ワトソン社、2332-012S)に入れた4mLのLB液体培地(富士フイルム和光純薬(株)製、LB培地「ダイゴ」)に播種し、37℃で16時間、振盪培養した。培養終了後、培養液を滅菌済みマイクロチューブ2本(ワトソン社、ハイパーマイクロチューブ132-620CS)に1.6mLずつ分注し、遠心分離機(トミー精工社製、MX-307)で、8000Gで3分間遠心分離を行った。次に、当該LB液体培地を除去した後、純水1.6mLを添加し、ボルテックスミキサー(ケニス社製「Vortex-Genie2」)で30秒間混合した後、遠心分離機で、8000Gで3分間遠心分離を行い、純水を除去する洗浄操作を2回行った。続いて、セラチア菌を回収した後、純水を用いてセラチア菌を懸濁した溶液が、分光光度計(エッペンドルフ社製、Eppendorf BioSpectrometer basic)を用いて波長600nmにおける濁度OD600が10になるように調整し、菌液を得た。
【0070】
〔a.組成物の塗布直後の殺菌活性(対数減少値)〕
被験者の前腕内側部を20℃の水道水で10秒間濡らし、「ビオレu Rg」(花王(株)製)1プッシュを適用し、30秒間前腕を擦り洗いし、20℃の水道水で30秒間濯いで洗浄した。25℃、60%RHの環境下、10分待機後、表1~8に記載の殺菌剤組成物を前腕内側部の皮膚表面(2.0cmの範囲、参考例1,2においては、それぞれ、ステンレス表面、ガラス表面)に一定量(2.0μL/2.0cm)、均一に塗布した。
5分間静置し乾燥後、前記方法で調製した菌液を、殺菌剤組成物適用後の皮膚表面に一定量(2.0μL/2.0cm)、均一に塗布した。この状態で、所定時間(表中に記載の「菌との接触時間」)静置した後、カルチャースワブ2本と中和液(3g/L レシチン(富士フイルム和光純薬(株)製、レシチン, 大豆由来)、20g/L Tween80(富士フイルム和光純薬(株)製、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、0.02M リン酸水素二ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製、りん酸水素二ナトリウム・12水和物)、0.01M リン酸二水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製、りん酸二水素ナトリウム二水和物)、9g/L 塩化ナトリウム(シグマアルドリッチ社製、塩化ナトリウム、生化学用)水溶液)1.5mLを用いて塗布した菌液を回収した。
次いで、インキュベーションリーダー「HiTS」((株)サイニクス製)を用いて、下記方法により生存菌数を測定して、菌数の減少量(生存菌数/初期の生菌数)を確認した。
インキュベーションリーダー「HiTS」中で37℃にて液体培養し、波長600nmにおける吸光度(濁度)OD600を経時で測定して、菌液中の生菌数の増殖曲線を作成した。同時に既知の生菌数を有する菌液を段階希釈し、同様に培養及び増殖曲線の作成を行い、一定の濁度に到達する時間と生菌数との検量線を作成した。各サンプルの一定濁度に到達するまでの時間と検量線の関係より、回収した菌液中の生存菌数を推定し、菌数の減少量を確認した。
菌数の減少度合い(対数減少値)については、上記菌数減少量の-log値をとり、表1~8に「評価結果a」として示した。この値が大きいほど、殺菌活性が高いことを意味する。
【0071】
〔b.組成物の持続性評価時間経過後の殺菌活性(対数減少値)〕
上記a.において、表1,2,8に記載の殺菌剤組成物を適用対象物に塗布した後の静置時間(5分間)を、各表に記載の「持続性評価のための静置時間」に変更したこと以外は、上記a.と同様の操作を行った。菌数の減少度合い(対数減少値)については、菌数減少量の-log値をとり、表1,2,8に「評価結果b」として示した。この値が大きいほど、殺菌活性が高いことを意味する。
【0072】
〔c.純水の塗布直後の殺菌活性(対数減少値)〕
表1~8に記載の組成物に替えて純水を用いて、前記a.と同様の方法で殺菌活性を評価した(評価結果c)。
【0073】
〔d.純水の持続性評価時間経過後の殺菌活性(対数減少値)〕
表1,2,8に記載の組成物に替えて純水を用い、前記c.と同様の方法で殺菌活性を評価した(評価結果d)。
【0074】
さらに、評価結果aとcとの差分(a-c)、及び、評価結果bとdとの差分(b-d)を算出し、それぞれ、表1~8及び表1,2,8に示した。(a-c)の値が大きいほど、殺菌剤組成物の塗布直後(初期)の殺菌性向上効果が高く、(b-d)の値が大きいほど、殺菌性の持続効果が高いことを意味する。
【0075】
(乾燥までの時間)
殺菌剤組成物を被験者の手に塗り広げ始めた直後から、塗布した組成物が乾ききったと感じるまでの時間を測定した。被験者5名により測定した時間の平均値を評価値とし、表1~8に「乾燥までの時間(秒)」として示した。
【0076】
(手指に塗布した時の使用感)
被験者の両手を20℃の水道水で10秒間濡らし、「ビオレu Rg」(花王(株)製)を1プッシュ適用して30秒間両手を擦り洗いし、20℃の水道水で30秒間濯いで、洗浄した。25℃、相対湿度50%RHの環境下、2分待機後、殺菌剤組成物1.0mLを片方の手のひらに適用し、両手全体に満遍なく塗り広げ、以下の項目について評価を行った。評価は気温25℃、相対湿度60%RHの環境下で実施した。なお、評価は専門パネラー5名で実施し、5名のスコアの平均値を表5に記載した。
【0077】
〔乾燥過程のきしみの無さ〕
殺菌剤組成物を被験者の両手全体に満遍なく塗り広げた後から90秒経過時点での手指全体のきしみの無さを、下記評価基準に従って5段階で評価した。スコアの平均を評価値とし、表5に「乾燥過程のきしみの無さ」として示した。なお、その評価基準では、実施例5の乾燥過程のきしみの無さを評価3としたが、これは従来品よりも良好であり、他の大半の実施例はそれよりもさらに性能が良く、数値が高いほど乾燥過程のきしみの無さに優れることを意味する。
実施例5よりきしむ :1
実施例5よりややきしむが、許容範囲 :2
実施例5と同等 :3
実施例5よりややきしまない :4
実施例5よりきしまない :5
【0078】
(乾燥後のしっとり感)
殺菌剤組成物を両手全体に満遍なく塗り広げ、5分間乾燥させた後の手指全体のしっとり感を、下記評価基準に従って5段階で評価した。スコアの平均を評価値とし、表5に「乾燥後のしっとり感」として示した。なお、その評価基準では、実施例5の乾燥後のしっとり感を評価3としたが、これは従来品よりも良好であり、他の大半の実施例はそれよりもさらに性能が良く、数値が高いほど乾燥後のしっとり感に優れることを意味する。
実施例5よりしっとり感が劣る :1
実施例5よりしっとり感がやや劣るが、許容範囲 :2
実施例5と同等 :3
実施例5よりややしっとり感がある :4
実施例5よりしっとり感がある :5
【0079】
実施例1~27、参考例1~2、比較例1~8(リーブオン液状殺菌剤組成物の調製及び評価)
表に示す量の各成分を配合し、室温にて混合して、リーブオン液状殺菌剤組成物を調製した。表1~8に記載した各成分の配合量は、各成分の有効成分量(質量%)である。
得られた組成物を用いて、前記方法により評価を行った。結果を表1~8に、使用成分を表9に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
【表9】
【0089】
表1~8より、本発明の組成物は、殺菌性及びその持続効果に優れ、乾燥が速いことがわかる。
表1の比較例1と参考例1,2との対比から、成分(A)を含有せず、殺菌剤として成分(B)のみを含有する殺菌剤組成物は、適用対象物が皮膚である場合(比較例1)、ステンレス、ガラス(参考例1,2)よりも殺菌性が得られにくいことがわかる。これに対し、表1の実施例1と比較例1との対比によれば、本発明の組成物は皮膚に適用した場合でも殺菌性及びその持続効果が向上していることがわかる。
表2の実施例2と比較例2~4との対比によれば、成分(B)を含有しない比較例2、成分(A)を含有しない比較例3、成分(A)に替えて成分(D)を用いた比較例4では、いずれも殺菌性及びその持続効果が低下した。
表4の実施例9~11と比較例5との対比によれば、質量比(3価の金属イオン/成分(A))が0.2を超えた場合、組成物の乾燥速度が低下することがわかる。
【0090】
表5では金属イオン種による、リーブオン液状殺菌剤組成物の性能への影響を検討した。実施例5と実施例9,12との対比によれば、組成物中のナトリウムイオン濃度が高い実施例9,12の方が、組成物の乾燥過程のきしみの無さや乾燥後のしっとり感が良好であることがわかる。一方で3価の金属イオンであるアルミニウムイオンを含有する実施例10及び比較例5の組成物は、ナトリウムイオンを含む場合でも乾燥過程のきしみの無さや乾燥後のしっとり感が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、炭素数5以下のモノアルコール以外の殺菌剤を含有し、特に皮膚の殺菌性及びその持続効果に優れ、乾燥が速いリーブオン液状殺菌剤組成物を提供できる。