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  • 特開-電源装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083008
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20240613BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240613BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197280
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】堀井 秀一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 淳
(72)【発明者】
【氏名】平山 篤史
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA08
5G503CB11
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503HA01
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】電源装置を均等化するための演算負荷を軽減すること
【解決手段】
上位コントローラ13は、複数の電池モジュール11の下位コントローラ12でそれぞれ設定された目標値を調整するための調整値を設定する第1処理が実行されるように構成されている。複数の下位コントローラ12は、当該調整値に基づいて、下位コントローラ12でそれぞれ設定された目標値を更新する第2処理が実行されるように構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の電池モジュールと、
上位コントローラと
を有し、
前記複数の電池モジュールは、
直列に接続された複数の電池セルと、
前記複数の電池セルのそれぞれの残容量を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記複数の電池セルの残容量に基づいて、当該複数の電池セルの残容量を均等化するための目標値を設定する処理が実行されるように構成された下位コントローラと、
前記下位コントローラによって設定された目標値に従って前記複数の電池セルの残容量を均等化するための均等化処理部と
をそれぞれ有し、
前記上位コントローラは、前記複数の電池モジュールの下位コントローラでそれぞれ設定された前記目標値を調整するための調整値を設定する第1処理が実行されるように構成されており、
前記複数の電池モジュールの下位コントローラは、当該調整値に基づいて、前記下位コントローラでそれぞれ設定された目標値を更新する第2処理が実行されるように構成されている、
電源装置。
【請求項2】
前記複数の電池モジュール間で、残容量を均等化する際に、
前記上位コントローラは、前記調整値を、前記複数の電池モジュールの下位コントローラに送信し、
前記下位コントローラは、前記上位コントローラから前記調整値を受信し、当該調整値に基づいて目標値を更新して、対応する電池モジュールの均等化処理部が更新された目標値に基づいて制御されるように構成された、
請求項1に記載された電源装置。
【請求項3】
前記下位コントローラは、前記電池モジュールに組み込まれた複数の電池セルのうち最も残容量が少ない電池セルの残容量を前記目標値として設定するように構成された、請求項1に記載された電源装置。
【請求項4】
前記上位コントローラは、前記複数の下位コントローラから取得された複数の前記目標値のうち最も低い目標値を前記調整値として設定するように構成された、請求項3に記載された電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003-47111号公報は、自動車用の電源装置が開示されている。同公報で開示される電源装置は、複数の分割ユニットを直列に接続している組電池と、各々の分割ユニットに接続している複数の電池状態検出回路と、各々の電池状態検出回路に外部通信バスを介して接続しているバッテリECUとを備える。各々の電池状態検出回路は、電圧検出器とA/D変換器とユニット演算回路と通信回路を備える。電池状態検出回路は、ユニット演算回路で各々の分割ユニットの状態を検出し、外部通信バスを介して、検出された分割ユニットの状態をバッテリECUに伝送する。つまり、同公報に開示された技術では、分割ユニットの状態が検出されてバッテリECUに伝達される。かかる構成によって、バッテリECUの負荷を軽くして安価なものを使用しながら、電池モジュールで構成される分割ユニットの状態が独立してより詳細に検出される。衝突時の安全性と信頼性を向上する、雑音による誤差を少なくしてより正確に分割ユニットの状態が検出される。などの効果が挙げられている。
【0003】
特開2014-68524号公報に開示された電源装置は、直列接続された複数の二次電池セルを有する組電池と、二次電池セルとそれぞれ並列に接続され、対応する二次電池セルの放電を行う複数の放電回路と、を備えている。充電制御回路は、組電池に対して定電流充電を行い、複数の二次電池セルのうち一又は複数の二次電池セルの電圧が所定の第1電圧に至った場合に、第1電圧に至った一又は複数の二次電池セルに接続された放電回路を駆動して放電を行うとともに、当該組電池に対して定電圧充電を行う。また、充電制御回路は、放電が行われている二次電池セルの電圧が第1電圧よりも低い所定の第2電圧に至った場合に、放電を停止し、再び定電流充電から放電示停止までの充電処理を繰り返す。かかる構成によって、組電池装置を構成している全ての二次電池セルの容量が十分に使われ、実効容量が確保される、とされている。
【0004】
国際公開第2012/53426号公報では、各電池モジュールに、マイコン等の制御回路を設けることは、高度な制御管理が可能となる半面、電池モジュール毎に複雑な電子回路を配置することとなり、極めて回路構成が複雑化し、処理も大変となる上、製造及び管理維持コストも高騰するという問題があり、特に大量生産される車載用の電源装置においては、コストダウンの要求が強く、より簡易で安価な構成が求められていた、とされている。同公報で開示された電源装置は、直列及び/又は並列に接続された複数の電池セルが積層した電池ブロックと、電池セルの状態を検出するための電池状態検出部と、他の機能モジュール又はメインコントローラとデータ通信するための通信インターフェースと、通信インターフェースを介して通信されるデータを記録可能なメモリ部と、を備えている。メインコントローラは、複数の機能モジュールと、各機能モジュールの通信インターフェースと、通信ラインを介して接続される。複数の機能モジュールが、出力ライン上で直列及び/又は並列に接続されている。かかる構成によって、演算機能を機能モジュールから省略し、演算自体はメインコントローラで纏めて行うことによって、全体の構成を簡素化できる。また機能モジュールのハードウェア構成を共通化することで製造コストを低減できる。さらに一部の機能モジュールに不具合が生じても該当する機能モジュールのみを交換でき、メンテナンスの面でも有利となる、などとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-47111号公報
【特許文献2】特開2014-68524号公報
【特許文献3】国際公開第2012/53426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数の電池モジュールが組み込まれた電源装置は、搭載される電池の数が多くなると、その分、均等化処理のための演算が煩雑になる傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示される電源装置は、直列に接続された複数の電池モジュールと、上位コントローラとを有している。複数の電池モジュールは、直列に接続された複数の電池セルと、複数の電池セルのそれぞれの残容量を検出する検出部と、検出部で検出された前記複数の電池セルの残容量に基づいて、当該複数の電池セルの残容量を均等化するための目標値を設定する処理が実行されるように構成された下位コントローラと、下位コントローラによって設定された目標値に従って前記複数の電池セルの残容量を均等化するための均等化処理部とをそれぞれ有している。上位コントローラは、複数の電池モジュールの下位コントローラでそれぞれ設定された前記目標値を調整するための調整値を設定する第1処理が実行されるように構成されている。複数の下位コントローラは、当該調整値に基づいて、下位コントローラでそれぞれ設定された目標値を更新する第2処理が実行されるように構成されている。
【0008】
かかる電源装置によれば、組み込まれた複数の電池セルの残容量を、全体として均等化するための演算処理が少なくてすむ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ここで開示される電源装置10を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここでの開示を説明する。特に限定されない限りにおいて、ここでの開示は、本願の特許請求の範囲に記載された発明を限定することを意図したものではない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、ここで開示される電源装置10を模式的に示すブロック図である。電源装置10は、複数の電池モジュール11と、上位コントローラ13とを備えている。図1では、一部の電池モジュール11で内部構造が展開されている。内部構造が展開されていない電池モジュール11も、内部構造が展開された電池モジュール11と同様の構成を有している。図1に示された形態では、複数の電池モジュール11は、それぞれ直列に接続されており、車両の負荷100(電動モータなどの駆動装置)や外部電源200などに接続される。
【0012】
電池モジュール11には、下位コントローラ12がそれぞれ組み込まれている。下位コントローラ12は、上位コントローラ13に通信可能に接続されている。下位コントローラ12は、電池モジュール11を制御するコントローラであり、上位コントローラ13は、電源装置10に組み込まれた複数の電池モジュール11を協働させるべく制御するコントローラである。上位コントローラ13は、例えば、外部コントローラ14(車載ECU)に通信可能に接続されているとよい。図1に示された形態では、電源装置10の外部に設けられた外部コントローラ14(例えば、車載ECU)は、上位コントローラ13に通信路61で接続されている。複数の電池モジュール11を制御する下位コントローラ12は、上位コントローラ13に対してそれぞれ同じ通信路62で接続されている。なお、電源装置10は、図1に示す形態に限定されない。例えば、外部コントローラ14(例えば、車載ECU)は、上位コントローラ13と下位コントローラ12とが接続された通信路62に接続されていてもよい。
【0013】
〈電池モジュール11〉
ここで、電池モジュール11は、複数の電池セル31と、検出部32と、均等化処理部33と、下位コントローラ12とを備えている。
【0014】
〈複数の電池セル31〉
複数の電池セル31は、予め定められた数の単セルが直列に接続された電池群である。複数の電池セル31は、例えば、複数の単セルが一列に並べられているとよい。また、複数の電池セル31は、バスバーによって順に直列に接続されていてもよい。ここでは、電池モジュール11に含まれる複数の電池セルをいうときは、「複数の電池セル」とし、単セルをいうときは「単セル」という。
【0015】
このような電池モジュール11では、放電時には、過放電を防止する観点において、残容量が最小のセルによって放電が制限されうる。また、充電時には、過充電を防止する観点において、残容量が最大のセルによって充電が制限されうる。電池モジュール11に含まれる各単セル31aの残容量が均等であると、各単セル31aの残容量がばらついている場合に比べて充放電の制限が生じにくくなり、電池モジュール11により高い性能を発揮させることができる。
【0016】
この実施形態では、電池モジュール11は、検出部32と、均等化処理部33の各種処理を具現化するハード構成として、それぞれ均等化回路11aと、検出回路11bとを備えている。
【0017】
〈検出部32〉
検出部32は、複数の電池セル31のそれぞれの残容量を検出する処理が実行される部位である。ここで、残容量は、SOCとも称される。SOCは、State Of Chargeの略語である。残容量(SOC)=(Cr/Cf)×100(%)で得られる。ここで、Crは残容量[Ah]、Cfは満充電容量[Ah]であり、単位[Ah]は、電池に蓄えられた電荷の量を表す。
【0018】
複数の電池セル31のそれぞれの残容量を直接検出することは難しい。残容量は、例えば、電池電圧から推測される。また、残容量は、例えば、充放電の電流値の履歴から算出されうる。この実施形態では、検出部32は、複数の電池セル31から残容量を検出するための情報を取得し、当該取得された情報に基づいて、各単セルの残容量をそれぞれ得るものでもよい。図1に示された形態では、例えば、電池モジュール11に含まれる各単セル31aの電池の状態についての測定値を検出するための検出回路11bを通じて、各単セル31aの温度や電圧や電流値が得られるように構成されているとよい。
【0019】
例えば、温度は、温度センサによって測定されてもよい。温度センサは、電池モジュール11の各単セル31aに設けられていてもよいし、電池モジュール11にいくつか設けられた温度センサによって各単セル31aが推定されてもよい。例えば、電池モジュール11において、単セル31aが一列に並べられている場合には、電池モジュール11の中央部と、両端部とに設けられた温度センサと温度センサとの距離に基づいて、単セル31aの温度が得られるように構成されていてもよい。電圧値は、単セル31aにそれぞれに設けられた電圧センサに基づいて得られるよい。電流値は、電池モジュール11に流れる電流を検知する電流センサ20によって得られるとよい。このように、検出部32は、温度や電圧や電流値に基づいて、複数の電池セル31のそれぞれの残容量が検出されるものであるとよい。検出部32は、例えば、各種センサから温度や電圧や電流値などの情報を取得する部位と、得られた情報に基づいて残容量を取得する部位とを含んでいてもよい。
【0020】
〈下位コントローラ12〉
下位コントローラ12は、検出部32で検出された複数の電池セル31の残容量に基づいて、当該複数の電池セル31の残容量を均等化するための目標値を設定する処理が実行されるように構成されている。この電源装置10は、複数の電池モジュール11を備えている。複数の電池モジュール11は、それぞれ独立して下位コントローラ12によって制御され、電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量が均等化されうる。電池モジュール11には、マイコンが組み込まれているとよい。下位コントローラ12は、例えば、各電池モジュール11に組み込まれたマイコンの一つの機能として具現化されているとよい。
【0021】
〈均等化処理部33〉
均等化処理部33は、下位コントローラ12によって設定された目標値に従って複数の電池セル31の残容量を均等化するための処理が実行される部位である。
【0022】
この実施形態では、電池モジュール11は、下位コントローラ12によって設定された目標値に従って複数の電池セル31の残容量を均等化するための均等化回路11aが組み込まれている。均等化回路11aは、例えば、各単セル31aに対して抵抗を接続した閉回路を構成し、閉回路の開閉がスイッチで制御される回路構成とされうる。単セル31aを抵抗に短絡させると、単セル31aの電力が消費され、当該単セル31aの残容量が下がる。この場合、均等化処理では、例えば、電池モジュール11の中で最も残容量が少ない単セル31aの残容量が、均等化の目標値に設定されるとよい。
【0023】
この実施形態では、電池モジュール11に含まれる複数の電池セル31の残容量を均等化するための処理では、下位コントローラ12によって設定された目標値に従って、均等化回路11aが制御されるとよい。下位コントローラ12は、検出回路11bから取得される各単セル31aの温度や電圧や電流値などの情報に基づいて、各単セル31aの残容量を得る。そして、下位コントローラ12は、1つの電池モジュール11の中で最も残容量が少ない単セル31aの残容量を、均等化の目標値に設定されるとよい。このように均等化の目標値が設定され、均等化回路11aが制御されることによって、電池モジュール11の中で最も残容量が少ない単セル31aの残容量に合わせられる。これにより、電池モジュール11内の複数の電池セル31の残容量が均等化される。
【0024】
電源装置10に組み込まれた複数の電池モジュール11に組み込まれた全ての単セル31aの電池容量が同じであり、かつ、複数の電池モジュール11が直列に接続されている場合には、電源装置10に組み込まれた複数の電池モジュール11に組み込まれた全ての単セル31aの残容量を全体として均等化することが望ましい。この場合、電源装置10に組み込まれた複数の電池モジュール11に組み込まれた全ての単セル31aの残容量を全体として均等化する場合、例えば、電源装置10に組み込まれた複数の電池モジュール11に組み込まれた全ての単セル31aの中で最も残容量が少ない単セル31aの残容量に基づいて、均等化の目標値が設定されるとよい。
【0025】
ところで、電気モーターなどを介して電気で駆動力を得る電動車両では、車両走行駆動用の電源として、複数の電池モジュールを備えた電源装置が用いられる。このうち純粋に電池に蓄えられた電力を基に駆動する電気自動車(BEV: Battery Electric Vehicle)では、満充電での充電による走行距離を大きくするために、1台の車両に搭載されるセル数が多くなっている。ここで、搭載される電池の数が多くなると、その分、均等化処理のための演算が煩雑になる。
【0026】
例えば、図1では、8個の電池モジュール11が直列に接続されている。25個の単セル31aで構成された電池モジュールが、8つあり、全体で200セルが直列に接続されている場合、200セルのそれぞれ電池情報が収集されて、均等化のための目標値が設定されるとよい。さらに、2倍(16個)の電池モジュール11が直列に接続されていると、全体で400セルが直列に接続された状態になる。この場合、例えば、400セルから電池情報(例えば、電圧の情報)を収集し、予め定められた演算によって均等化のための目標値を設定されるとよい。また、全体として、直列に接続される電池セルがさらに多くなることも想定される。このように直列に接続された電池モジュールが増えれば増えるほど、全体として直列で接続されるセル数が増える。ここで、1セル当たりの電圧が4.3Vであるとすると、25セル×8モジュールで200セルが直列に接続されていると、860Vになる。さらに、25セル×16モジュールで400セルが直列に接続されていると、1,720Vになる。さらに、25セル×32モジュールで800セルが直列に接続されていると、3,440Vになる。このようにセル数が増えれば増えるほど、高い電圧が得られる。他方で、均等化のための目標値を設定するに収集される電池情報が多くなったり、通信負荷や演算負荷が大きくなったりすることが想定される。
【0027】
〈上位コントローラ13〉
図1に示された電源装置10は、上位コントローラ13を備えている。図1に示された電源装置10では、上位コントローラ13は、第1処理が実行されるように構成されている。加えて、複数の下位コントローラ12は、第2処理が実行されるように構成されている。
【0028】
〈第1処理〉
第1処理は、複数の電池モジュール11の下位コントローラ12でそれぞれ設定された目標値を調整するための調整値を設定する処理である。例えば、第1処理では、上位コントローラ13は、複数の電池モジュール11の下位コントローラ12でそれぞれ設定された目標値を取得する。上位コントローラ13は、複数の下位コントローラ12から取得された複数の目標値のうち最も低い目標値を調整値として設定する。この際、下位コントローラ12から上位コントローラ13に送られる情報は、均等化の目標値だけである。また、上位コントローラ13では、下位コントローラ12から送られてきた均等化の目標値に基づいて、調整値が設定される。下位コントローラ12から送られてきた均等化の目標値の数は、電池モジュール11の数と同じであり、電池モジュール11に組み込まれた単セル31aの数に比べて各段に少ない。
【0029】
〈第2処理〉
第2処理は、第1処理で調整値が設定された場合に、複数の下位コントローラ12が、当該調整値に基づいて、下位コントローラ12でそれぞれ設定された目標値を更新する処理である。かかる第2処理では、上位コントローラ13で設定された調整値が、複数の下位コントローラ12に送られる。複数の下位コントローラ12は、それぞれ当該調整値に基づいて目標値を更新する。この際、上位コントローラ13と下位コントローラ12との間で通信される情報量が少なく、下位コントローラ12の処理量も少ない。
【0030】
かかる第2処理の結果、調整値に基づいて各下位コントローラ12は、各下位コントローラ12の制御対象である電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量を均等化するための目標値が更新される。これにより、電源装置10の各電池モジュール11の下位コントローラ12において、電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量を均等化させるための目標値が上位コントローラ13で調整された調整値に一致する。各電池モジュール11では、下位コントローラ12で更新された目標値に基づいて均等化処理が行なわれる。この結果、電源装置10の各電池モジュール11に組み込まれた全ての単セル31aは、上位コントローラ13で調整された調整値に基づいて均等化される。
【0031】
このように、電源装置10では、電源装置10の各電池モジュール11に組み込まれた全ての単セル31aを均等化させるため、上記の第1処理と第2処理が実行される。かかる第1処理と第2処理では、上位コントローラ13と下位コントローラ12との間で通信される情報量が少ない。また、下位コントローラ12で設定された目標値を、上位コントローラ13で設定された調整値に更新する処理も処理量としては少ない。かかる第1処理と第2処理での通信量や処理量は、電源装置10で直列に接続された電池モジュールが増えてもそれほど増えない。
【0032】
この実施形態では、下位コントローラ12は、制御対象である電池モジュール11に組み込まれた複数の単セル31aのうち、最も残容量が少ない単セル31aの残容量を均等化の目標値として設定するように構成されている。上位コントローラ13は、複数の下位コントローラから取得された複数の目標値のうち最も低い目標値を調整値として設定するように構成されている。上位コントローラ13は、各下位コントローラ12から取得された複数の目標値のうち最も低い目標値を調整値として設定する。
【0033】
下位コントローラ12は、当該調整値に基づいて、下位コントローラ12でそれぞれ設定された目標値を更新する第2処理が実行される。第2処理が実行されることにより、各下位コントローラ12で設定される目標値が、上位コントローラ13で設定された調整値になる。これにより、各下位コントローラ12の制御対象である電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量が、上位コントローラ13で設定された調整値に従って均等化される。これにより、電源装置10に組み込まれた全ての単セル31aの残容量が、均等化される。ここで、上位コントローラ13は、各下位コントローラ12から取得された複数の目標値のうち最も低い目標値を調整値として設定する。このため、電源装置10に組み込まれた全ての単セル31aの残容量は、各下位コントローラ12から取得された複数の目標値のうち最も低い目標値になるように均等化される。この場合、残容量が少ない単セル31aの残容量に合わせて均等化が図られる処理では、残容量が多い単セル31aを抵抗に短絡させるとよい。このため、均等化のための回路構成や処理が簡単になる。
【0034】
図1に示された電源装置10では、8個の電池モジュール11が直列に接続されている。各電池モジュールに直列に接続された25個の単セル31aが組み込まれているとする。この場合、電源装置10全体では、200個の単セル31aが直列に接続されている。電源装置10では、全体で直列に接続された200個の単セル31aの残容量を均等化する際に、8個の電池モジュール11の下位コントローラ12で設定される目標値が上位コントローラ13に送られ、上位コントローラ13で調整値が設定される。そして、各電池モジュール11の下位コントローラ12で調整値に合わせて目標値が更新される。この結果、電源装置10では、全体で直列に接続された200個の単セル31aの残容量が均等化される。さらに、4倍(32個)の電池モジュール11が直列に接続されており、全体で800セルが直列に接続された場合でも、上位コントローラ13は、各下位コントローラ12から送られてきた均等化の目標値に基づいて、調整値を設定する処理が実施されるとよい。このため、均等化のための目標値を設定するに収集される情報が少なく、上位コントローラ13と下位コントローラ12との間の通信負荷や演算負荷が小さくなる。つまり、電源装置10は、電源装置10に組み込まれた全ての単セル31aの残容量の情報が全て収集されて、均等化のための目標値が設定される必要はなく、通信負荷や演算負荷が各段に少なくなる。
【0035】
上位コントローラ13は、電源装置10に組み込まれた複数の電池モジュール11間で残容量を均等化する際に機能するとよい。電源装置10に組み込まれた複数の電池モジュール11は、例えば、電源装置10が充電スポットを通じて外部電源200に接続されて充電される際に、残容量が均等化されるとよい。具体的には、電源装置10が電気自動車に搭載されている場合には、停車中に充電される際に、複数の電池モジュール11間で残容量が均等化されるとよい。例えば、電気自動車に搭載された電源装置では、車両がキーオンされたタイミングで、下位コントローラ12において、複数の電池モジュール11間の残容量のばらつきが測定され、放電を行うセル、容量が決定されるとよい。キーオン、走行、キーオフ、充電のサイクルで電源装置10に組み込まれた複数の電池モジュール11の残容量が均等化されるとよい。
【0036】
また、上位コントローラ13が起動していない時は、下位コントローラ12は、それぞれ独立して電池モジュール11を制御し、電池モジュール11内に組み込まれた複数の電池セル31の残容量をそれぞれ均等化する。上位コントローラ13が起動した後は、複数の電池モジュール11に組み込まれた下位コントローラ12は、上位コントローラ13に目標値を送る。そして、上位コントローラ13で設定された調整値に合わせて、複数の電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量をそれぞれ均等化するための目標値を更新する。このように、下位コントローラ12は、上位コントローラ13が起動していない時は、独立して複数の電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量をそれぞれ均等化する。上位コントローラ13が起動している時は、下位コントローラ12は、上位コントローラ13で設定された調整値に合わせて、複数の電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量をそれぞれ均等化するための目標値が更新する。
【0037】
なお、以上の説明では、電源装置10の各電池モジュール11が上位コントローラ13と通信していることを前提としているが、電源装置10は、電源装置10の一部の電池モジュール11が上位コントローラ13と通信していないような不具合が生じている場合でも、機能する。つまり、電源装置10の各電池モジュール11に組み込まれた下位コントローラ12は、それぞれ単独で電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量を均等化するための目標値を設定する処理が実行されるように構成されている。このため、電源装置10の一部の電池モジュール11が上位コントローラ13と通信していないような不具合が生じている場合でも、当該不具合が生じている電池モジュール11では、調整値に基づいて均等化されない。しかし、下位コントローラ12で設定される目標値に従って、当該電池モジュール11に組み込まれた複数の電池セル31の残容量は均等化される。このように、電源装置10の一部の電池モジュール11が上位コントローラ13と通信していないような不具合が生じている場合でも、各電池モジュール11では、複数の電池セル31の残容量は均等化される。また、不具合が生じていない他の電池モジュール11では、上位コントローラ13で設定された調整値に基づいて複数の電池セル31の残容量が均等化される。複数の電池モジュール11のうち、一部の電池モジュール11に通信障害などの障害がある場合には、当該電池モジュール11が交換されることで電源装置10全体として復旧可能である。
【0038】
また、上位コントローラ13は、上位コントローラ13に接続される電池モジュール11の数は、増減可能に構成されていてもよい。例えば、上位コントローラ13に接続される電池モジュール11が追加されることで、電源装置10の容量を拡充できるように構成されていてもよい。電源装置10は、電池モジュール11毎の交換や追加が容易になり、メンテナンスや、全体の容量の変更が容易になる。
【0039】
以上、ここで開示される発明について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示される発明の実施形態は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【0040】
以上の通り、本明細書には、以下の各項に記載の開示が含まれている。
項1:
直列に接続された複数の電池モジュールと、
上位コントローラと
を有し、
前記複数の電池モジュールは、
直列に接続された複数の電池セルと、
前記複数の電池セルのそれぞれの残容量を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記複数の電池セルの残容量に基づいて、当該複数の電池セルの残容量を均等化するための目標値を設定する処理が実行されるように構成された下位コントローラと、
前記下位コントローラによって設定された目標値に従って前記複数の電池セルの残容量を均等化するための均等化処理部と
をそれぞれ有し、
前記上位コントローラは、前記複数の電池モジュールの下位コントローラでそれぞれ設定された前記目標値を調整するための調整値を設定する第1処理が実行されるように構成されており、
前記複数の下位コントローラは、当該調整値に基づいて、前記下位コントローラでそれぞれ設定された目標値を更新する第2処理が実行されるように構成されている、
電源装置。
【0041】
項2:
前記複数の電池モジュール間で、残容量を均等化する際に、
前記上位コントローラは、前記調整値を、前記複数の電池モジュールの下位コントローラに送信し、
前記下位コントローラは、前記上位コントローラから前記調整値を受信し、当該調整値に基づいて目標値を更新して、対応する電池モジュールの均等化処理部が更新された目標値に基づいて制御されるように構成された、項1に記載された電源装置。
【0042】
項3:
前記下位コントローラは、前記電池モジュールに組み込まれた複数の電池セルのうち最も残容量が少ない電池セルの残容量を前記目標値として設定するように構成された、項1に記載された電源装置。
【0043】
項4:
前記上位コントローラは、前記複数の下位コントローラから取得された複数の前記目標値のうち最も低い目標値を前記調整値として設定するように構成された、項3に記載された電源装置。
【符号の説明】
【0044】
10 電源装置
11 電池モジュール
11a 均等化回路
11b 検出回路
12 下位コントローラ
13 上位コントローラ
14 外部コントローラ
20 電流センサ
31 電池セル
31a 単セル
32 検出部
33 均等化処理部
61 通信路
62 通信路
100 負荷
200 外部電源
図1