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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083010
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】排水配管
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20240613BHJP
   E03C 1/284 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E03C1/12 D
E03C1/284
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197282
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平井 良典
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA01
2D061AA02
2D061AB03
2D061AB04
2D061AC01
2D061AC07
2D061AC08
2D061DA01
2D061DA02
2D061DA03
2D061DD03
2D061DD14
(57)【要約】
【課題】
排水配管には、排水配管内の圧力の変化による不具合を解消するため吸気弁や排気弁、正負圧緩和装置など圧力調整機構が接続される場合がある。しかし、これら圧力調整機構は可動部分を含む構造が多く、排水配管を流れる排水が圧力調整機構に触れると可動部分が動作しなくなり不具合が生じる恐れがある。排水の流路上に凸部等を設けて圧力調整機構に排水が流れ込み難くする方法もあるが排水を完全に防止することは困難であり、また凸部によって排水性能が悪化する恐れもあった。
【解決手段】
排水配管を、排水が通過する配管部材と、前記配管部材の側面に開口部を設け、前記開口部から前記配管部材の側面方向に延出して設けられた枝管部と、前記枝管部に接続される前記配管部材内の空気の圧力を調整する圧力調整機構と、前記開口部に配置された、気体の通過を許容し、液体の通過を許容しない防水体と、から構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が通過する配管部材と、
前記配管部材の側面に開口部を設け、前記開口部から前記配管部材の側面方向に延出して設けられた枝管部と、
前記枝管部に接続される前記配管部材内の空気の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記開口部に配置された、気体の通過を許容し、液体の通過を許容しない防水体と、
から構成されることを特徴とする排水配管。
【請求項2】
前記防水体は、撥水性を有する素材、又は撥水加工を施した素材を微細な網目状に構成し薄膜状としたことを特徴とする請求項1に記載の排水配管。
【請求項3】
前記排水配管は、
前記枝管部内に筒状のインナー部材を配置し、
前記インナー部材は、前記開口部側の端部を前記開口部の周縁に沿った形状とし、
前記インナー部材の前記開口部側の端部に薄膜状の前記防水体を取着することで、前記開口部に、前記配管部材の内側面に沿うようにして前記防水体を配置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水配管。
【請求項4】
前記排水配管に、
上流からの排水が下方に向かう第一降下部と、
前記第一降下部の下流であって排水の方向を上方に反転させる反転部と、
前記反転部の下流であって排水の流れが下方から上方に向かう上昇部と、
前記上昇部の下流であって、排水の方向を下方又は水平方向に屈曲させる屈曲部と、
からなる封水式排水トラップを備えると共に、
前記開口部を前記屈曲部に備えたことを特徴とする請求項3に記載の排水配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内の気圧を調整する圧力調整機構を備えた排水配管に関するものであって、更に詳しくは圧力調整機構に排水が流入することを防止しつつ、良好な排水性能を維持した排水配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台や流し台、浴槽など、排水機器には使用した排水を下水側に処理するため、配管部材を組み合わせた排水配管が備えられる。これら排水配管は、漏水を防止するため配管部材の接続箇所は水密且つ気密的に接続されると共に、下水側から臭気が屋内側に逆流することを防止するため、通常は排水配管上に排水トラップと呼ばれる気体の通過を不可能にする構成を備えている。
上記のように、通常の排水配管は排水口以外に大気解放されている箇所が無いため、排水口以外の箇所からは通気ができない構造とされている。そのため、排水口から排水が流入して排水口からの通気も不可能な状態になると、排水配管内が排水配管外に対して正圧又は負圧となり、不具合が生じる場合がある。
このような排水配管内の空気圧の問題を解消するため、排水配管には、排水配管内の圧力を調整する圧力調整機構が備えられる場合がある。
【0003】
特許文献1に記載の排水トラップは、排水配管に備えられる排水トラップであって、管体にU字形状の屈曲部分を構成し、この屈曲部分に排水を溜めて排水の流路上に排水が満水状態となる部分を設けることで、臭気を含んだ空気や害虫類の通過を不可能とし、下水側から屋内側に逆流することを防止している。
この排水が溜まって流路を満水状態とする部分を封水部、封水部に溜まって流路を満水状態とする排水を封水と呼ぶ。特許文献1に記載の排水トラップは、封水を利用して臭気を含んだ空気や害虫類が下水側から屋内側に逆流することを防止するトラップ機能を発生させる構成の排水トラップである。このような封水を利用する排水トラップを封水式排水トラップと呼ぶ。
【0004】
また、特許文献1に記載の排水トラップは、封水部よりも下流側の排水配管に、上方向きの枝管部を設け、この枝管部に圧力調整機構としての吸気弁を備えてなる。
吸気弁は、常時は閉弁して排水配管内から排水配管外への気体また液体の通過を防止すると共に、排水配管内が排水配管外に比べて負圧となると開弁し、排水配管内が排水配管外と同じ気圧になるまで排水配管内に供給を行うように構成されている。
【0005】
特許文献1に記載された排水トラップが採用された排水配管に、排水口から排水が行われると、排水は排水口から排水トラップを通過し下水側に排出される。
この時、排水トラップの封水部に排水が封水として溜まることで、臭気や害虫類が下水側から屋内側に逆流することを防止するトラップ機能を発生させる。
【0006】
排水が行われる際に、排水量が多いと、排水配管内に排水が満水状態となり、サイホン現象と呼ばれる現象が起きる場合がある。
これは、排水の際に、排水配管内が満水状態となると、下流に排出された排水と同量の排水が上流側から下流側に引き込まれる現象である。自然排水の速さは排水トラップや横管部分より縦管部分のほうが速いが、排水トラップや横管部分の下流に縦管部分があると、前述の引き込みにより、縦管部分と同じ速さで排水トラップや横管部分の排水が行われる。
即ち、サイホン現象時には排水トラップや横管部分では自然排水を超えた速さで排水が行われる。又、この時排水配管内は空気が不足した負圧の状態となる。
サイホン現象には排水が高速で行われるというメリットもあるが、排水が終了する際に排水が過剰に排出されてしまい、封水部の封水が不足して流路が満水状態とならず下水側から屋内側に臭気を含んだ空気や害虫類の逆流が可能となる破封という状態になる場合があった。
【0007】
これに対し、特許文献1に記載の排水トラップでは、上記したサイホン現象が発生した場合、吸気弁が開弁し、排水配管外から排水配管内へ空気の供給を行うことで、排水配管内の負圧を解消し、サイホン現象を終了させる。このようにして排水の終了時に排水が過剰に排出されることを防止し、排水トラップが破封することを防止している。
尚、枝管部側に排水が逆流した場合や、排水配管内が正圧となった場合には、吸気弁は閉口を維持し、排水配管外に臭気を含んだ空気や排水が流出することを防止する。
【0008】
上記特許文献1に記載された圧力調整機構は排水トラップの下流に備えられた吸気弁であるが、圧力調整機構は他に、特許文献2に記載された排水配管内が正圧となった時に排水配管内の空気を排水配管外に排気する排気弁や、特許文献3に記載された伸縮する容器(隔膜チューブ)を利用して排水配管内の気圧の変動を緩和する正負圧緩和装置等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012- 7360号
【特許文献2】特開2004-19131号
【特許文献3】特開2009-57780号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した圧力調整機構は排水配管に接続されるため、常に排水に触れる可能性を有している。しかし、特許文献1乃至特許文献3に記載の各圧力調整機構は可動部分を含む構成であり、排水の表面張力や排水が乾いた際に固着が生じることにより離間すべき箇所が正しく離間しない場合や、排水に含まれた砂などの塵芥を可動部分に噛み込むことによって動作が正常に行われなくなる場合がある、という問題があった。
【0011】
特許文献1に記載の発明では、排水配管の流路上に設けた、枝管部との継ぎ目となる開口部に管内凸部を設けて吸気弁に排水の飛沫が飛びにくい構造としているが、開口部を通過する全ての飛沫を防止することはできないため、上記問題を完全に解決することはできなかった。
また、排水配管の流路上に管内凸部を突出して設けるため、管内凸部によって排水の流れが乱される乱流が生じる場合や、管内凸部の分排水配管の流路が狭くなることで排水量が減少する場合等、排水性能が悪化するという問題があった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑み発明されたものであって、枝管部を設け、該枝管部に圧力調整機構を備えた排水配管において、排水や排水の飛沫が枝管部側に侵入することを防止し、更に排水配管の流路に突出部分が生じない構造として排水性能の悪化が生じない、圧力調整機構を備えた排水配管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の発明は、排水が通過する配管部材と、
前記配管部材の側面に開口部を設け、前記開口部から前記配管部材の側面方向に延出して設けられた枝管部と、
前記枝管部に接続される前記配管部材内の空気の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記開口部に配置された、気体の通過を許容し、液体の通過を許容しない防水体と、
から構成されることを特徴とする排水配管を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排水配管を構成する配管部材に開口部を設け、この開口部から延出した枝管部に圧力調整機構を接続した排水配管の開口部に、気体の通過を許容し、液体の通過を許容しない防水体を配置することで、枝管部や、枝管部に接続されている圧力調整機構に排水の飛沫が付着することや、排水が侵入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一の実施の形態の排水配管を示す断面図である。
図2図1の主要部材を示す断面図である。
図3図2の部材構成を示す断面図である。
図4】吸気弁の部材構成を示す断面図である。
図5】インナー部材の(a)断面図、(b)平面図、(c)右側面図、(d)斜視図である。
図6】(a)インナー部材と防水体の断面図である。(b)インナー部材に防水体を取り付けた状態での断面図である。
図7】第二の実施の形態の主要部材を示す断面図である。
図8図7の部材構成を示す断面図である。
図9】インナー部材の(a)断面図、(b)平面図、(c)左側面図、(d)斜視図である。
図10】(a)インナー部材と防水体の断面図である。(b)インナー部材に防水体を取り付けた状態での断面図である。
図11】圧力調整機構を備えない排水配管を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の態様に係る排水配管は、排水が通過する配管部材と、
前記配管部材の側面に開口部を設け、前記開口部から前記配管部材の側面方向に延出して設けられた枝管部と、
前記枝管部に接続される前記配管部材内の空気の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記開口部に配置された、気体の通過を許容し、液体の通過を許容しない防水体と、
から構成されることを特徴とする排水配管である。
【0017】
本態様によれば、配管部材上に設けた開口部に気体の通過を許容し、液体の通過を許容しない防水体を配置したことで、開口部から延出された枝管部、及び枝管部に接続された圧力調整機構に排水が触れることが無くなり、圧力調整機構が排水に触れることで生じる作動不良等を無くすことができる。
【0018】
また、本発明の第2の態様に係る排水配管では、第1の態様において、
前記防水体を、撥水性を有する素材、又は撥水加工を施した素材を微細な網目状に構成し薄膜状として構成しても良い。
【0019】
本態様によれば、防水体の構成を明確化することができる。
【0020】
また、本発明の第3の態様に係る排水配管では、第1の態様又は第2の態様において、
前記枝管部内に筒状のインナー部材を配置し、
前記インナー部材は、前記開口部側の端部を前記開口部の周縁に沿った形状とし、
前記インナー部材の前記開口部側の端部に薄膜状の前記防水体を取着することで、前記開口部に、前記配管部材の内側面に沿うようにして前記防水体を配置するように構成してもよい。
【0021】
本態様によれば、インナー部材を利用して、防水体を配管部材の内側面に沿うようにして配置することで、排水配管内の排水の流路に、排水の流れの障害や、排水の流路を狭める凹凸の無い構造とすることができ、排水性能が悪化することの無い排水配管とできる。
【0022】
また、本発明の第4の態様に係る排水配管では、第3の態様において、前記排水配管に、
上流からの排水が下方に向かう第一降下部と、
前記第一降下部の下流であって排水の方向を上方に反転させる反転部と、
前記反転部の下流であって排水の流れが下方から上方に向かう上昇部と、
前記上昇部の下流であって、排水の方向を下方又は水平方向に屈曲させる屈曲部と、
からなる封水式排水トラップを備えると共に、
前記開口部を前記屈曲部に備えて構成してもよい。
【0023】
本態様によれば、排水配管内の気圧の変動による不具合が起きやすい封水式排水トラップにおいて、枝管部を設けて圧力調整機構を接続することで、破封など気圧の変動による不具合の発生を防ぐと共に、屈曲部に開口部を設けることで封水が開口部に流入しない構成とすることができ、メンテナンス等で開口部を解放する際にも封水が排水配管外に流出することが無い構成とできる。
また、例えば排水トラップの構成上屈曲部を円弧面等で形成した場合でも、インナー部材の端部を屈曲部の円弧に沿った形状とすることで、容易に防水体を排水配管の内面を成す円弧形状とすることができ、排水性能を良好なものをすることができる。
【0024】
以下に、本発明の第一の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
尚、以下で説明する実施の形態は、包括的な、又は具体的な例を示すものであって、数値や形状、素材、構成要素とその配置・位置、接続形態、手順等は一例であり、本発明を限定するものではない。また、以下の実施の形態における各構成の内、独立項に記載されていない構成は、必要に応じて適宜変更可能な構成である。
【0025】
まず、防水体3について説明する。
本実施の形態の防水体3は、撥水性を有するテフロン(登録商標)と呼ばれる、表面の水接触角が90度以上となるポリ四フッ化エチレンを主原料とし、微細な網目状に構成することで、0.1マイクロメートル乃至10マイクロメートル程度の大きさの小孔を多数備えた多孔質膜に成型したものである。
本実施の形態のポリ四フッ化エチレンを主原料とした多孔質膜からなる防水体3の厚み(軸方向の長さ)は、0.4ミリメートル程度の薄膜状である。
上記した防水体3は、その厚みが0.4ミリメートル程度であることと、ポリ四フッ化エチレンの素材に由来する樹脂の可撓性及び若干の弾性を備えてなる。
上記のように構成した防水体3は、後述するインナー部材4の開口部1側の端部の形状に合致する略楕円形状に切断して使用される。
【0026】
上記のように構成した防水体3は、小孔からの気体の通過を許容すると共に、その撥水性によって湯水等液体を表面から弾くことで湯水等液体の通過を許容しない。
このようにして、本実施の形態の防水体3は、流体の内、気体は通過させるが液体は不要物として通過させない、という機能を有する。また、気体の通過の際に気体の中に含まれる塵芥等も不要物として取り除く機能を有する。
【0027】
次に、第一の実施の形態の排水配管について、以下に記載する。
図1乃至図3に図示した本実施の形態の排水配管は、排水機器としての洗面台Sに施工される排水配管であって、前述した防水体3と、以下に記載する排水口部材11、トラップ部材5、圧力調整機構としての吸気弁6、及び継手部材等の配管部材より構成される。
【0028】
洗面台Sは、以下に記載する槽体としての洗面ボウルBと、洗面ボウルBを上方に載置する箱体であるキャビネット部Cとから構成される。
洗面ボウルBは、上方が開口した箱体形状の槽体であって、その底面には後述する排水口部材11を取り付ける取付穴B1を設けてなる。
キャビネット部Cは、上方が開口した箱体であって、上方に洗面ボウルBを載置すると共に、その内部に排水配管を配置する。またキャビネット部Cの下方には、床下配管の端末である立上管(図示せず)の位置に合わせた開口を備えてなる。
【0029】
排水口部材11は、図3等に示したように、略円筒形状を成す部材であって、その内部の上端部分に排水口11aを形成する。排水口部材11の上端の外側方向に、周縁に沿ってフランジ部11bを突出して設けてなると共に、フランジ部11bの下方に雄ネジを設けてなる。
また、上記雄ネジに螺合する雌ネジを備えた板ナット部材12を備えてなる。
【0030】
トラップ部材5は、図3等に示したように、管体を屈曲させた部材であって、上方から下方に向かって延出された管体部分である第一降下部5a、第一降下部5aの下端から約180度の円弧を形成して管体の方向を上方に反転させる反転部5b、反転部5bの端部から上方に向かって延出された上昇部5c、上昇部5cの上端から約180度の円弧を形成して管体の方向を下方に反転させる屈曲部5d、屈曲部5dの端部から下方に向かって延出された管体部分である第二降下部5e、から構成される。
また、屈曲部5d上であって、上昇部5cと第二降下部5eの中間位置の上方となる壁面に開口部1を設け、該開口部1から上方に向かって延出した円筒形状を成す枝管部2を備えてなる。
【0031】
更に、トラップ部材5の枝管部2内に、以下に記載するインナー部材4を着脱自在に配置してなる。
インナー部材4は、図5に示したように、その外側形状が枝管部2の内側形状と略合致する形状を備えた筒状の部材であって、一方の端部の内、上方側の端部には枝管部2の上端に係止する鍔部4aを備えてなる。
また、インナー部材4は、開口部1側の端部に防水体3を取着した状態で、インナー部材4を枝管部2内に収納すると、防水体3の表面が、配管部材であるトラップ部材5の内側面に対し段差なく連続して沿うように構成されている。
また鍔部4aに当接するようにして枝管部2の内面に気密的且つ水密的に接続するためのパッキン4bを備えてなる。
【0032】
排水配管を施工する際は、図6(a)に示したように、インナー部材4と薄膜状の防水体3を用意し、図6(b)に示したように、インナー部材4の開口部1側の端部に、防水体3を、糊などを利用し取着して使用する。
開口部1は複数の円弧の組み合わせによる複雑な形状を形成してなり、その開口部1の周縁に沿う形状としたインナー部材4の開口部1側の端部も複雑な形状を形成してなるが、防水体3は可撓性を有するため、インナー部材4の開口部1側の端部の形状に合わせて支障なく変形させて貼り付け、取着することができる。
このようにすることで、インナー部材4を枝管部2内に配置した状態において、インナー部材4の端部に取り付けられた防水体3は、配管部材であるトラップ部材5の内側面に対し段差などを生じない。このように、トラップ部材5の内側面に対し段差なく連続して沿うようにして防水体3を配置することが可能となった。
尚、インナー部材4の端部が、開口部1の形状に沿わない方向に配置されることを防止するために、インナー部材4と枝管部2内側面に凹凸を設けて、防水体3が開口部1に沿う方向でのみインナー部材4を枝管部2内に配置できるように構成しても良い。
【0033】
継手部材は部材同士を接続する管体であって、第一の実施の形態では、上端部の内面に排水口部材11の雄ネジと螺合する雌ネジを備え、下端がトラップ部材5の第一降下部5aの上端に接続される第一の継手部材14aと、トラップ部材5の第二降下部5eと下水側に連通する床下配管との間を接続する第二の継手部材14bの2つの継手部材を備えてなる。
【0034】
図3及び図4に示した、圧力調整機構としての吸気弁6は、以下に記載する、弁部材本体8、カバー体10、逆流防止弁9より構成される。各部材の接続には、詳述しないが、袋ナットとパッキンを利用したネジによる接続が利用される。
【0035】
弁部材本体8は、直管形状の管体であって、下方の端部はトラップ部材5の枝管部2の端部に接続され、上方の端部には後述するカバー体10が取り付けられる。
【0036】
カバー体10は、略オワン形状の部材の内部に円筒部分10aを設けた部材であって、該円筒部分10aの下端が弁部材本体8の上端に接続固定される。
また、円筒部分10aの側面に通気窓10bが設けられてなり、円筒部分10aの内外は通気可能に構成されてなる。通気窓10bの周囲にはオワン形状部分が配置されており、通気に際して埃などが通気窓10b内から吸気弁6内に入り難い構造となっている。
また、カバー体10と弁部材本体8とを接続する際に、後述する逆流防止弁9の周縁部9cを挟持することで、吸気弁6内に逆流防止弁9を固定する。
【0037】
逆流防止弁9は、ゴム等の可撓性及び弾性を備えた素材からなり、弾性を備えた円筒である筒体部9aと、この筒体部9aの一方の端部が近接し内側面が当接して閉口状態となった開閉部9bと、筒体部9aの他方の端部から外側方向に延出した周縁部9cを備えてなる。
【0038】
上記した各部材は、以下のようにして吸気弁6として組み立てられる。
弁部材本体8の内部に逆流防止弁9の開閉部9b及び筒体部9aを収納し、周縁部9cを弁部材本体8の上端に係止した状態で、カバー体10と弁部材本体8とを接続することで、逆流防止弁9の周縁部9cが挟持され、吸気弁6の組み立てが完了する。
【0039】
以下に、上記した吸気弁6の動作について説明する。
弁部材本体8に接続された配管側の気圧が負圧となると、つまり排水配管外の大気圧が相対的に排水配管内よりも正圧となると、逆流防止弁9の開口部1は素材に由来する弾性の作用により変形し、開閉部9bは内側面が当接した閉口状態から内側面が離間した開口状態となる。開閉部9bが開口したことで、排水配管外の空気が吸気弁6内を通過して排水配管内に供給され、排水配管内の負圧を解消する。
排水配管内の負圧が解消されて、弁部材本体8に接続された排水配管側の気圧と排水配管外の大気圧がほぼ等しくなると、逆流防止弁9の弾性によって再び開閉部9bの内面が当接した閉口状態に戻る。
また、逆流防止弁9の下流側、即ち排水配管内が排水配管外よりも正圧となった場合、開閉部9bには外部から圧力が作用することで、開閉部9bの内側面の当接がより強く行われて閉口状態を維持するため、排水配管内の空気等が排水配管外に流出することが防止される。
【0040】
上記のように、本実施の形態の逆流防止弁9は、流体の圧力が作用しない状態では開閉部9bが閉口し、流体の圧力が作用して開閉部9bが開口した場合でも流体の圧力が低下すると弾性の作用により開閉部9bが自動的に閉口することから自閉式と呼ばれる。即ち、本実施の形態の逆流防止弁9は、自閉式逆流防止弁9である。
【0041】
次に、第一の実施の形態の排水配管の施工方法について、以下に記載する。
尚、特に詳述しないが、排水配管の接続箇所は、必要に応じ、接着や袋ナットとパッキンを利用した接続等の方法によって水密的に接続される。
まず、防水体3を取り付けたインナー部材4をトラップ部材5の枝管部2内に収納し、更に枝管部2の端部に吸気弁6を接続する。インナー部材4の鍔部4aを、パッキン4bを介し枝管部2と吸気弁6とで挟持することでインナー部材4を枝管部2内に水密的に配置固定できる。
このようにすることで、防水体3は、配管部材であるトラップ部材5の開口部1の位置で、トラップ部材5の内側面に段差なく沿うようにして配置される。
【0042】
次に、洗面ボウルBの取付穴B1に排水口部材11を挿入し、フランジ部11bの下面が取付穴B1の周縁上面に当接するようにする。
次に、排水口部材11の雄ネジを板ナット部材12の雌ネジと螺合させることで、取付穴B1の周縁をフランジ部11bの下面と板ナット部材12の上面とで挟持して、排水口部材11が洗面ボウルBに対して固定される。
次に、第一の継手部材14aを排水口部材11の下端に接続し、更に、第一の継手部材14aの下端を、トラップ部材5の上流側端部(第一降下部5aの上端)に接続する。
更に、トラップ部材5の下流側端部(第二降下部5eの下端)を、第二の継手部材14bの上端に接続し、第二の継手部材14bの下端をキャビネット部Cの開口を介して下水側の配管に接続されている立上管に接続して、図1また図2に図示したように、第一の実施の形態の排水配管の接続が完了する。
【0043】
上記した第一の実施の形態の排水配管は以下のように使用される。
上記排水配管が施工された洗面台Sにおいて、使用により洗面ボウルB内に排水が生じると、排水は排水口11aから排水口部材11内、第一の継手部材14a、トラップ部材5、第二の継手部材14bを通過し、床下配管を介して下水側に排出される。
また、排水がトラップ部材5内を通過する際に、第一降下部5aから上昇部5cの上縁までの流路部分までに排水が溜まることで、図2に示したように、流路部分が満水状態となり、下水側からの臭気を含んだ空気や害虫類が排水口11a側に逆流することが防止される。
即ち、トラップ部材5内の第一降下部5aから上昇部5cの上縁までの流路部分までに溜まった排水は封水であり、トラップ部材5の第一降下部5aから上昇部5cの上縁までが封水部である。
このように、第一の実施の形態のトラップ部材5は封水式排水トラップを形成している。
【0044】
また、上記した第一の実施の形態のトラップ部材5には、屈曲部5d上に開口部1が設けられているが、この開口部1にはインナー部材4を利用し、防水体3がトラップ部材5の内側面に沿って配置されている。防水体3とトラップ部材5の開口部1周縁の内側面との間には段差などはなく、防水体3はトラップ部材5の内側面に対し滑らかに連続して配置されているため、トラップ部材5の内側面側で排水の流れに乱れが生じる要因は無い。
また、防水体3は前述のように排水を通過させることは無く、排水に対しては壁面のように機能するため、排水が枝管部2側に侵入して排水の流れに乱れが生じる要因は無い。
上記のように、トラップ部材5内を排水が通過する際に、開口部1の周囲で段差や凹凸による排水の流れが乱れる要因が無いため、排水に乱流が生じることは無い。また、排水の流路が狭められるなどの排水の流量が減少する要素も無い。このため、排水はトラップ部材5内をスムーズに通過することができ、本実施の形態のトラップ部材5及び本実施の形態のトラップ部材5を採用した排水配管は良好な排水性能を得ることができる。
【0045】
また、排水の際にサイホン現象が生じる等して排水配管側の気圧が負圧となると、逆流防止弁9の開閉部9bが閉口状態から開口状態となり、排水配管外の空気が吸気弁6、枝管部2、防水体3を通過して排水配管内に供給され、排水配管内の負圧を解消する。
結果、図2に示したように封水水面Wが上昇部5cの上端位置になるまで封水が溜まるため、破封の生じにくい封水式排水トラップとすることができる。
排水配管内の負圧が解消されて、弁部材本体8に接続された排水配管側の気圧と排水配管外の大気圧がほぼ等しくなると、逆流防止弁9の弾性によって再び開閉部9bの内面が当接した閉口状態に戻る。
また、逆流防止弁9の下流側、即ち排水配管内が排水配管外よりも正圧となった場合、開閉部9bには外部から圧力が作用することで開閉部9bの内側面の当接がより強く行われて閉口状態を維持するため、排水配管内の空気等が排水配管外に流出することが防止される。
【0046】
また、使用により防水体3の表面に塵芥等が付着し、防水体3の通気性が低下する場合があるが、本実施の形態の排水配管では次のようにして塵芥等の付着による防水体3の通気性の低下に対応することができる。
1.防水体3の表面は、トラップ部材5の内側面に対し段差なく連続して沿うように構成されている。このため、トラップ部材5内を排水が通過する際は、防水体3の表面を排水が高速で通過し、その際に付着した塵芥を排水が洗い流すため、防水体3の通気性の低下を防ぐことができる。
2.長期の使用などにより防水体3の表面に塵芥等が付着して通気性が低下した場合、枝管部2と吸気弁6の接続を解除し、インナー部材4を取り出して防水体3を洗浄することで塵芥を取り除き、防水体3の通気性の低下を解消することができる。また、インナー部材4ごと防水体3を新しいものに交換することで、防水体3の通気性を復元するようにしても良い。
【0047】
次に、第二の実施の形態の排水配管について、以下に記載する。
図7に図示した本実施の形態の排水配管は、空気調和機のドレン排水用の配管に接続される排水配管であって、段落0025及び段落00026に記載した防水体3と、以下に記載するY字管13、トラップ部材5、圧力調整機構としての排気弁7、及び継手部材等の配管部材より構成される。
【0048】
図示しない本実施の形態の空気調和機は、空気調和機としては大型とされる仕様であり、建築物の建物全体、又はフロア全体に対して、空気の温度、湿度、清浄度を調整するように構成されている。具体的な動作としては、屋外の空気を吸気し、調整を行った後に屋内に供給し、また屋内の空気を吸気し屋外に排気することで、建物全体やフロア全体の空気調和を行う。
この空気調和の際に、空気調和機内の空気を圧縮(加圧)する場合や温度を下げる場合があり、空気に含まれていた水分が結露することで排水が生じる。この結露等によって生じた排水を、ドレン排水として空気調和機に備えられたドレン配管14cから排出する。
本実施の形態のドレン配管14cは、上記空気調和機の作動時、空気調和機の送風の為のファンの作動の影響等によってドレン配管14c内に加圧が行われる。
【0049】
Y字管13は、図7及び図8に示したように上下に向けて設けられた管体部分である縦管部13aと、縦管部13aの壁面に開口部1を設け、この開口部1から縦管部13aの側面方向であって縦管部13aに対し上向きに約45度傾斜して設けられた管体部分である枝管部2と、から構成されている。
【0050】
更に、Y字管13の枝管部2内に、以下に記載するインナー部材4を着脱自在に配置してなる。
インナー部材4は、図10に示したように、その外側形状が枝管部2の内側形状と略合致する形状を備えた筒状の部材であって、一方の端部の内、上方側の端部には枝管部2の上端に係止する鍔部4aを備えてなる。
また、インナー部材4は、開口部1側の端部に防水体3を取着した状態で、インナー部材4を枝管部2内に収納すると、防水体3の表面が、配管部材であるトラップ部材5の内側面に対し段差なく連続して沿うように構成されている。
また鍔部4aに当接するようにして枝管部2の内面に気密的且つ水密的に接続するためのパッキン4bを備えてなる。
【0051】
排水配管を施工する際、図10(a)に示したように、インナー部材4と薄膜状の防水体3を用意し、図10(b)に示したように、インナー部材4の開口部1側の端部に、防水体3を、糊などを利用し取着して使用する。
インナー部材4の開口部1側の端部は、開口部1の周縁に沿う複雑な形状を形成してなるが、防水体3は可撓性を有するため、インナー部材4の開口部1側の端部の形状に合わせて支障なく変形させて貼り付け、取着することができる。
このようにすることで、インナー部材4を枝管部2内に配置した状態において、インナー部材4の端部に取り付けられた防水体3は、配管部材であるY字管13の内側面に対し段差などを生じない。このように、縦管部13aの内側面に対し段差なく連続して沿うようにして防水体3を配置することが可能となった。
尚、インナー部材4の防水体3が開口部1の形状に沿わない方向に配置されることを防止するために、インナー部材4と枝管部2内側面に凹凸を設けて、防水体3が開口部1に沿う方向でのみインナー部材4を枝管部2内に配置できるように構成しても良い。
【0052】
トラップ部材5は、図8等に示したように、管体を屈曲させた部材であって、上方から下方に向かって延出された管体部分である第一降下部5a、第一降下部5aの下端から約180度の円弧を形成して管体の方向を上方に反転させる反転部5b、反転部5bの端部から上方に向かって延出された上昇部5c、上昇部5cの上端から約90度の円弧を形成して管体の方向を水平方向に反転させる屈曲部5d、屈曲部5dの端部から水平方向に向かって延出された管体部分である横管部5fから構成される。
【0053】
継手部材は部材同士を接続する管体であって、第二の実施の形態では、トラップ部材5の横管部5fと下水側に連通する配管との間を接続する第二の継手部材14bを備えてなる。
【0054】
図7及び図8に示した、圧力調整機構としての排気弁7は、第一の実施の形態に記載した吸気弁6と同一の部材によって構成されている。
本実施の形態の排気弁7は、第一の実施の形態に記載した吸気弁6に対して、逆流防止弁9の方向を逆方向に、即ちカバー体10の円筒部分10a内に逆流防止弁9の開閉部9b及び筒体部9aを収納し、周縁部9cを弁部材本体8の上端に係止した状態で、カバー体10と弁部材本体8とを接続することで、逆流防止弁9の周縁部9cが挟持され、排気弁7として構成される。
【0055】
以下に、上記した排気弁7の動作について説明する。
排気弁7に接続された配管側の気圧が正圧となると、逆流防止弁9の開閉部9bは素材に由来する弾性の作用により変形し、内側面が当接した閉口状態から内側面が離間した開口状態となる。開閉部9bが開口したことで、排水配管内の空気が排気弁7内を通過して排水配管外に排気され、排水配管内の正圧を解消する。
排水配管内の正圧が解消されて、排気弁7に接続された排水配管側の気圧と排水配管外の大気圧がほぼ等しくなると、逆流防止弁9の弾性によって再び開閉部9bの内面が当接した閉口状態に戻る。
【0056】
次に、第二の実施の形態の排水配管の施工方法について、以下に記載する。
尚、特に詳述しないが、排水配管の接続箇所は、必要に応じ、接着や袋ナットとパッキンを利用した接続等の方法によって水密的に接続される。
まず、防水体3を取り付けたインナー部材4をY字管13の枝管部2内に収納し、更に枝管部2の端部に排気弁7を接続する。
インナー部材4の鍔部4aを、パッキン4bを介し枝管部2と排気弁7とで挟持することでインナー部材4を枝管部2内に水密的に配置固定できる。
このようにすることで、防水体3は、配管部材であるY字管13の開口部1の位置で、Y字管13の内側面に段差なく沿うようにして配置される。
【0057】
次に、Y字管13の縦管部13aの上端を空気調和機のドレン配管14cに接続し、Y字管13の縦管部13aの下端を、トラップ部材5の上流側端部(第一降下部5aの上端)に接続する。
更に、トラップ部材5の下流側端部(横管部5fの端部)を第二の継手部材14bの端部に接続して、第二の実施の形態の排水配管の接続が完了する。尚、トラップ部材5は図示しない支持具等で床面上に固定される。
【0058】
上記した第二の実施の形態の排水配管は以下のように使用される。
上記排水配管が施工された空気調和機において、使用により前述したように空気調和機内に結露が生じ、排水としてドレン配管14cから排出されると、排水はドレン配管14cからY字管13の縦管部13a、トラップ部材5、第二の継手部材14bを通過し、下水側に排出される。
また、排水がトラップ部材5内を通過する際に、第一降下部5aから上昇部5cの上縁までの流路部分までに排水が溜まって封水を形成することで、下水側からの臭気を含んだ空気や害虫類が排水口11a側に逆流することが防止される。
このように、第二の実施の形態のトラップ部材5は封水式排水トラップを形成している。
【0059】
また、上記した第二の実施の形態のY字管13の縦管部13aには開口部1が設けられているが、この開口部1にはインナー部材4を利用し、防水体3がトラップ部材5の内側面に沿って配置されている。防水体3と縦管部13aの開口部1周縁の内側面との間には段差などはなく、防水体3はトラップ部材5の内側面に対し滑らかに連続して配置されているため、縦管部13aの内側面側で排水の流れに乱れが生じる要因は無い。
また、防水体3は前述のように排水を通過させることは無く、排水に対しては壁面のように機能するため、排水が枝管部2側に侵入して排水の流れに乱れが生じる要因は無い。
上記のように、縦管部13a内を排水が通過する際に、開口部1の周囲で段差や凹凸による排水の流れが乱れる要因が無いため、排水に乱流が生じることは無い。また、排水の流路が狭められるなどの排水の流量が減少する要素も無い。このため、排水はY字管13の縦管部13a内をスムーズに通過することができ、本実施の形態の排水配管は良好な排水性能を得ることができる。
【0060】
また、本実施の形態のドレン配管14cは、空気調和機の作動時、送風の為のファンの作動等によってドレン配管14c内に加圧が行われるため、ドレン配管14cに接続されている封水の上流側が正圧となる。図11に示したような、圧力調整機構の無い封水式排水トラップを備えた排水配管の場合、封水の上流側が正圧となると、正圧の圧力分、上流側の封水水面Wが下流側の封水水面Wに比べて降下し、降下した体積分の封水が下流側に排出される。空気調和機の作動が止まると正圧も解消するが、流出した封水は失われたままであるため、封水が充分にある場合に比べ、些細な振動や、下流側で瞬間的な正圧・負圧が作用した際に、臭気を含んだ空気や害虫類の逆流が可能となる破封状態になりやすい、という問題がある。
【0061】
しかし、本実施の形態では、図7に示したように、排水配管において、封水の上流側に接続される配管部材であるY字管13に枝管部2を設け、この枝管部2に排気弁7を備えてなるため、封水の上流側の排水配管の気圧が正圧となると、逆流防止弁9の開閉部9bが閉口状態から開口状態となり、封水の上流側の排水配管の空気が防水体3、枝管部2、排気弁7を通過して排水配管外に排気され、正圧を解消する。空気調和機の作動時は継続的にドレン配管14c内に加圧が行われるため、排気弁7の逆流防止弁9の開閉部9bも継続的に開口状態となるが、この時には常に逆流防止弁9内から逆流防止弁9外に排気が行われているため、塵芥等が開閉部9bを通過して排水配管内に侵入することは無い。
正圧が解消されることにより、上流側と下流側の封水水面Wは同一の高さとなり、封水の流出も生じないため、段落0060に記載したような封水の流出による破封が生じやすい、という問題を解消することができる。
空気調和機の作動が停止し、封水の上流側の排水配管の正圧が解消されて、排水配管側の気圧と排水配管外の大気圧がほぼ等しくなると、逆流防止弁9の弾性によって再び開閉部9bの内面が当接した閉口状態に戻る。
【0062】
また、使用により防水体3の表面に塵芥等が付着し、防水体3の通気性が低下する場合があるが、本実施の形態の排水配管では次のようにして塵芥等の付着による防水体3の通気性の低下に対応することができる。
1.防水体3の表面は、縦管部13aの内側面に対し段差なく連続して沿うように構成されている。このため、縦管部13a内を排水が通過する際は、防水体3の表面を排水が高速で通過し、その際に付着した塵芥を排水が洗い流すため、防水体3の通気性の低下を防ぐことができる。
2.長期の使用などにより防水体3の表面に塵芥等が付着して通気性が低下した場合、枝管部2と吸気弁6の接続を解除し、インナー部材4を取り出して防水体3を洗浄することで塵芥を取り除き、防水体3の通気性の低下を解消することができる。また、インナー部材4ごと防水体3を新しいものに交換することで、防水体3の通気性を復元するようにしても良い。
【0063】
本発明の実施の形態は以上であるが、本発明の排水配管は発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。
例えば、圧力調整機構として第一の実施の形態では吸気弁6を、第二の実施の形態では排気弁7を採用しているが、本発明の圧力調整機構は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許文献3にあるような、自身が変形することで体積を変化させる伸縮する容器を利用した正負圧緩和装置を枝管部2に接続し、排水配管内の気圧の変動を緩和する構成としても良い。
また、防水体3を備えており排水配管内から排水配管外への排水の流出が生じない構成としていることから、圧力調整機構を、単なる開口を設けて大気解放する構成としても良い。
【0064】
また、開口部1と枝管部2を設ける位置について、第一の実施の形態ではトラップ部材5の屈曲部5dの中間位置、第二の実施の形態ではY字管13の縦管部13aにそれぞれ設けているが、必要に応じて排水配管を構成する配管部材の、希望する任意の位置に設けて構わない。但し、通気を行う構成のため、トラップ部材5の場合は封水部を避け屈曲部5dや横管部5fに設けるなど、排水の行われていない状態では排水が存在しない位置に設けると好適である。
【0065】
また、防水体3を開口部1に配置する方法として、上記実施の形態ではインナー部材4を利用する方法を採用しているが、流路上に防水体3の厚み分の段差を生じるものの、開口部1の周縁に直接防水体3を貼り付けることで開口部1に防水体3を取り付ける等の方法を採用しても良い。
また、上記各実施の形態では、排水配管を構成する管体の内側面を管体の軸方向視円形形状として構成しているが、開口部1の形状を簡易とする等の理由により、排水配管を構成する管体の内側面を管体の軸方向視四角形形状としても良い。この場合、開口部1は平坦面によって構成されるため、防水体3も平坦形状として構成することができる。
また、インナー部材4に防水体3を取り付ける方法としても、防水体3を開口部1の周縁に沿った形状のキャップ状として成型し、このキャップ状の防水体3をインナー部材4に嵌合させるようにするなど、インナー部材4に防水体3を取り付ける方法も特に限定するものではない。
【0066】
また、排水配管を接続する機器として、第一の実施の形態では洗面台S、第二の実施の形態では空気調和機に排水配管を接続しているが、排水配管を接続する機器として、流し台や浴槽、浴室等の機器に、本発明の排水配管を採用しても構わない。
【0067】
また、上記各実施の形態では、逆流防止弁9を、弾性素材を利用した自閉式逆流防止弁9により構成しているが、ヒンジなどにより弁体が管体の解放端部を開閉する構造の逆流防止弁9や、軸に沿って弁体が昇降し管体の解放端部を開閉する構造の逆流防止弁9を採用しても構わない。
【0068】
また、第二の実施の形態の空気調和機は作動によりドレン配管14cに加圧を行い、接続された排水配管を正圧とする構成であったが、空気調和機は上記構成の他、作動によりドレン配管14cに減圧を行い、接続された排水配管を負圧とする構成の空気調和機も存在する。
このようなドレン配管14cに減圧を生じる空気調和機に接続された排水配管では、封水がドレン配管14c側に引き込まれることで、上昇部5cの封水が完全に失われて破封が生じる恐れや、封水が空気調和機まで逆流する恐れがある。
このような空気調和機に排水配管を接続する場合、第二の実施の形態の排水配管の枝管部2に、排気弁7に替えて第一の実施の形態の吸気弁6を接続することで、排水配管外の空気を排水配管内に供給して、封水の上流側に発生する負圧を解消し、負圧による破封などの不具合の生じない排水配管とすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 開口部 2 枝管部
3 防水体 4 インナー部材
4a 鍔部 4b インナー部材のパッキン
5 トラップ部材 5a 第一降下部
5b 反転部 5c 上昇部
5d 屈曲部 5e 第二降下部
5f 横管部 6 吸気弁
7 排気弁 8 弁部材本体
9 逆流防止弁 9a 筒体部
9b 開閉部 9c 周縁部
10 カバー体 10a 円筒部分
10b 通気窓 11 排水口部材
11a 排水口 11b フランジ部
12 板ナット部材 13 Y字管
13a 縦管部 14a 第一の継手部材
14b 第二の継手部材 14c ドレン配管
B 洗面ボウル B1 取付穴
C キャビネット部 S 洗面台
W 封水水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11