(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083026
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】地盤改良工法、地盤改良工法に使用する掘削ロッド装置及び地盤改良装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240613BHJP
E02D 5/46 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D5/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197298
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】510081492
【氏名又は名称】OGATA住宅基盤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】緒方 克英
【テーマコード(参考)】
2D040
2D041
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040AB14
2D040BB01
2D040BD05
2D040CA01
2D040CB03
2D040EA01
2D041AA01
2D041BA52
2D041DA12
(57)【要約】
【課題】地盤改良工法において、掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さにする作業を直接的な手作業によらず、効率よく行うことができる地盤改良工法を提供する。
【解決手段】
地盤改良工法は、内部に掘削土が残る掘削孔を形成する工程と、掘削孔の内部に結合材を注入する工程と、掘削孔の内部の掘削土と結合材を混合撹拌し未固化の混合物をつくる工程と、掘削ロッド3の吐出口390と掘削ヘッド43との距離を、掘削ヘッド43に対して掘削ロッド3をスライドさせて、掘削ヘッド3が未固化の混合物内部で回転したときの吐出口390近傍の未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さにする工程と、未固化の混合物の内部において吐出口390を上昇させながら、結合材を注入して、未固化の芯部を形成する工程と、掘削孔の内部の未固化の混合物と未固化の芯部を固化させる工程とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を、掘削ロッドを中心とする掘削ヘッドの回転により所要の深さまで掘削して内部に掘削土が残る掘削孔を形成する工程と、
前記掘削孔の内部に、前記掘削ロッド先端部の結合材注入部により結合材を注入する工程と、
前記掘削孔の内部の掘削土と前記結合材を、前記掘削ロッドを中心とする撹拌部材の回転により混合撹拌し、前記掘削孔の内部に未固化の混合物をつくる工程と、
前記結合材注入部と前記掘削ヘッドとの距離が、前記未固化の混合物内部で前記掘削ヘッドが回転したときに、前記結合材注入部近傍の前記未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さになるまで、前記掘削ヘッドに対して前記掘削ロッドをスライドする工程と、
前記結合材注入部を前記掘削孔の内底部又はその近傍から上昇させながら、前記未固化の混合物の中心に前記結合材注入部により前記結合材を注入して、前記結合材で未固化の芯部を形成する工程と、
前記掘削孔の内部の前記未固化の混合物と前記未固化の芯部を固化させる工程とを備える
地盤改良工法。
【請求項2】
前記掘削ヘッド及び前記撹拌部材が、前記掘削ロッドに沿ってスライド可能、回転可能、かつスライド方向の所定の二箇所において所定の回転方向で固定可能に取り付けてあり、前記結合材注入部と前記掘削ヘッド及び前記撹拌部材との距離を所定の長さにする工程を、前記所定の二箇所間で、前記掘削ロッドをスライドさせて、前記掘削ロッドに対する前記掘削ヘッド及び前記撹拌部材の固定位置を変えることにより行う
請求項1記載の地盤改良工法。
【請求項3】
地盤を、掘削ロッドを中心とする掘削ヘッドの回転により所要の深さまで掘削して内部に掘削土が残る掘削孔を形成する工程と、
前記掘削孔の内部に、前記掘削ロッド先端部の結合材注入部により結合材を注入する工程と、
前記掘削孔の内部の掘削土と前記結合材を、前記掘削ロッドを中心とする撹拌部材の回転により混合撹拌し、前記掘削孔の内部に未固化の混合物をつくる工程とを並行して行う
請求項1又は2記載の地盤改良工法。
【請求項4】
前記結合材注入部を前記掘削孔の内底部又はその近傍から上昇させながら、前記未固化の混合物の中心に前記結合材注入部により前記結合材を注入して、前記結合材で未固化の芯部を形成する工程を、前記未固化の混合物を撹拌せずに行う
請求項1又は2記載の地盤改良工法。
【請求項5】
前記未固化の芯部に、固化したときの芯部を補強できる強度を有する芯材を入れる工程を備える
請求項1又は2記載の地盤改良工法。
【請求項6】
液状の結合材を通す流路、先端に設けてある掘削部材、その近傍に設けてある結合材注入部を有する掘削ロッドと、
該掘削ロッドに軸周方向へ回転可能、かつ長さ方向にスライド可能で、その先部に設けられた掘削ヘッド、該掘削ヘッドに隣接して設けられた撹拌部材、その軸周方向に回転可能に設けられ、前記掘削ヘッド、及び前記撹拌部材の回転直径より長い振れ止め部材とを有し、前記結合材注入部と前記掘削ヘッドとの距離が、前記未固化の混合物内部で前記掘削ヘッドが回転したときに、前記結合材注入部近傍の前記未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さになるまで、前記掘削ヘッドに対して前記掘削ロッドをスライドして、スライド方向の所定の二箇所において所定の回転方向で固定可能に嵌装されている回転体とを備える
掘削ロッド装置。
【請求項7】
前記掘削ロッドが、相互に長さ方向で接続、及び分解可能な複数のロッドを有し、所定の二つのロッドには前記所定の二箇所に対応する係合突起が設けられ、前記回転体には、前記係合突起と係合して所定の回転方向で固定可能である係合受部を有する
請求項6記載の掘削ロッド装置。
【請求項8】
作業機本体と、該作業機本体に備えてある昇降回転駆動装置と、該昇降回転駆動装置に取り付けられた掘削ロッド装置とを備え、
該掘削ロッド装置は、液状の結合材を通す流路、先端に設けてある掘削部材、その近傍に設けてある結合材を吐出する結合材注入部を有する掘削ロッドと、
該掘削ロッドに軸周方向へ回転可能、かつ長さ方向にスライド可能で、その先部に設けられた掘削ヘッド、該掘削ヘッドに隣接して設けられた撹拌部材、その軸周方向に回転可能に設けられ、前記掘削ヘッド、及び前記撹拌部材の回転直径より長い振れ止め部材を有し、スライド方向の所定の二箇所において所定の回転方向で前記掘削ロッドに固定可能に嵌装されている回転体とを備える
地盤改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良工法、地盤改良工法に使用する掘削ロッド装置び地盤改良装置に関するものである。詳しくは、施工現場で土壌の中に結合材を注入し、土壌と結合材を混合撹拌して柱状に固化させ、地盤の土質に関係なく杭構造体の所定の強度が得られるようにする地盤改良工法において、作業工程中での掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さにする作業を、結合材が漏れ出すことなく、かつ作業者による直接的な手作業によらず、効率よく行うことができる地盤改良工法、地盤改良工法に使用する掘削ロッド装置及び地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
干拓地等、軟弱な地盤に構造物を構築する場合には、地盤を強固にするための地盤改良が行われる。地盤改良工法には、従来から様々なものがあり、例えば土壌の内部にセメントミルク等の液状の結合材を注入して混合撹拌し、コンクリート構造物である多数の杭構造体(柱状体ともいう)を構築する工法がある。
【0003】
この工法では、特に土壌が腐植土等の有機質土である場合は、骨材としての土が軟らかいために、固化した杭構造体の強度が目的の強度に達しないことがあり、固化後に鋼材等の補強材の施工が必要になることがあった。
【0004】
本願発明者は、上記のような土壌の内部に杭構造体を構築して地盤を改良する地盤改良工法において、鋼材等の補強材を使用しなくても、地盤の土質に関係なく杭構造体の所定の強度が得られるようにした技術を特許文献1において既に提案しており、その技術は目的達成のために極めて有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の地盤改良工法、地盤改良工法に使用する掘削ロッド及び地盤改良装置には、次のような課題があった。すなわち、工法の最後の工程では、掘削孔の内部の未固化の混合物の内底部から、掘削ヘッド、及び各撹拌部材を回転させながら上昇させ、ノズルから混合物の中心に結合材を注入して、混合物の中心に結合材のみを充填し、未固化の芯部が徐々に柱状に形成される。
【0007】
このとき、撹拌部材とノズル先端の吐出口との距離が近いと、芯部の形成において、掘削ヘッド、及び各撹拌部材の回転による混合物の乱れの影響を受けやすく、芯部が歪(いびつ)になって固化後の強度が充分でなくなる可能性があった。
【0008】
このため、地盤改良装置は、短いノズルを長いノズルに交換することができるようになっており、作業工程の途中、すなわち結合材の注入による未固化の芯部の形成の前に、ノズル先端から撹拌部材までの距離を長くして、形成される芯部が混合物の撹拌の影響を受けにくいようにすることにより、上記問題を解消することができた。
【0009】
しかし、短いノズルと長いノズルの交換作業は、作業者による直接的な手作業であるため所要の手間がかかり、効率が良くない。更には、ノズルの取り外しによって、掘削ロッドを通っている結合材の流路の途中が一旦開放されるため、流路に残っている結合材の多くが漏れ出してしまい、作業者を含めて周囲をひどく汚してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、施工現場で土壌の中に結合材を注入し、土壌と結合材を混合撹拌して柱状に固化させ、地盤の土質に関係なく杭構造体の所定の強度が得られるようにする地盤改良工法において、作業工程中での掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さにする作業を、結合材が漏れ出すことなく、かつ作業者による直接的な手作業によらず、効率よく行うことができる地盤改良工法、地盤改良工法に使用する掘削ロッド装置及び地盤改良装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔1〕本発明は、地盤を、掘削ロッドを中心とする掘削ヘッドの回転により所要の深さまで掘削して内部に掘削土が残る掘削孔を形成する工程と、前記掘削孔の内部に、前記掘削ロッド先端部の結合材注入部により結合材を注入する工程と、前記掘削孔の内部の掘削土と前記結合材を、前記掘削ロッドを中心とする撹拌部材の回転により混合撹拌し、前記掘削孔の内部に未固化の混合物をつくる工程と、前記結合材注入部と前記掘削ヘッドとの距離が、前記未固化の混合物内部で前記掘削ヘッドが回転したときに、前記結合材注入部近傍の前記未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さになるまで、前記掘削ヘッドに対して前記掘削ロッドをスライドする工程と、前記結合材注入部を前記掘削孔の内底部又はその近傍から上昇させながら、前記未固化の混合物の中心に前記結合材注入部により前記結合材を注入して、前記結合材で未固化の芯部を形成する工程と、前記掘削孔の内部の前記未固化の混合物と前記未固化の芯部を固化させる工程とを備える地盤改良工法である。
【0012】
本発明の地盤改良工法によれば、地盤を、掘削ロッドを中心とする掘削ヘッドの回転により所要の深さまで掘削して内部に掘削土が残る掘削孔を形成することができ、掘削孔の内部に、掘削ロッド先端部の結合材注入部により結合材を注入することができ、掘削孔の内部の掘削土と結合材を、掘削ロッドを中心とする撹拌部材の回転により混合撹拌し、掘削孔の内部に未固化の混合物をつくることができる。
【0013】
また、結合材注入部と掘削ヘッドとの距離が、未固化の混合物内部で掘削ヘッドが回転したときに、結合材注入部近傍の未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さになるまで、掘削ヘッドに対して掘削ロッドをスライドして掘削ヘッドが未固化の混合物内部で回転したときの結合材注入部近傍の未固化の混合物の乱れが生じにくいようにすることができる。
【0014】
このときの、掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を所定の長さにする作業は、掘削ロッドを掘削ヘッド及び撹拌部材に対してスライドさせて行うことができるので、掘削ロッドの部品の取り外しが生じないため結合材が漏れ出すことがない。また、作業者による直接的な手作業によらず、例えば掘削ヘッド及び撹拌部材を掘削ロッドに嵌装した状態で地面に置き、これに対して掘削ロッドを押し込むようにスライドさせる等、作業機の操作により作業を効率よく行うことができる。
【0015】
そして、未固化の混合物の内部において、結合材注入部を掘削孔の内底部又はその近傍から上昇させながら、未固化の混合物の中心に結合材注入部により結合材を注入して、結合材で未固化の芯部を形成することができ、掘削孔の内部の未固化の混合物と未固化の芯部を固化させて、これを必要数設けることで、地盤改良を行うことができる。
【0016】
〔2〕本発明の地盤改良工法は、前記掘削ヘッド及び前記撹拌部材が、前記掘削ロッドに沿ってスライド可能、回転可能、かつスライド方向の所定の二箇所において所定の回転方向で固定可能に取り付けてあり、前記結合材注入部と前記掘削ヘッド及び前記撹拌部材との距離を所定の長さにする工程を、前記所定の二箇所間で、前記掘削ロッドをスライドさせて、前記掘削ロッドに対する前記掘削ヘッド及び前記撹拌部材の固定位置を変えることにより行う構成とすることもできる。
【0017】
この場合は、掘削ロッドの所定の二箇所のうち、一方の箇所で固定して掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を短くして掘削を行い、掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を、掘削ヘッド及び撹拌部材が未固化の混合物内部で回転したときの結合材注入部近傍の未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さにする場合は、スライドして他方の箇所で固定して行うことができる。このように、作業機による操作を行う際に、所定の二箇所で固定することができるので、結合材注入部と掘削ヘッドの距離、すなわち所定の長さの正確な設定が可能になる。
【0018】
〔3〕本発明の地盤改良工法は、地盤を、掘削ロッドを中心とする掘削ヘッドの回転により所要の深さまで掘削して内部に掘削土が残る掘削孔を形成する工程と、前記掘削孔の内部に、前記掘削ロッド先端部の結合材注入部により結合材を注入する工程と、前記掘削孔の内部の掘削土と前記結合材を、前記掘削ロッドを中心とする撹拌部材の回転により混合撹拌し、前記掘削孔の内部に未固化の混合物をつくる工程とを並行して行う構成とすることもできる。
【0019】
この場合は、掘削孔の形成と結合材の注入、及び掘削土と結合材の混合撹拌を、掘削開始から掘削孔の形成終了までの一行程(1ストローク)で行うことができる。これにより、この一行程に続いて、未固化の混合物の内部において、結合材注入手段を掘削孔の内底部から上昇させながら、未固化の混合物の中心に結合材注入部により結合材を注入して、未固化の芯部を形成するまでの一行程、合わせて二つの行程を行うことで、掘削開始から未固化の芯部の形成までの作業を最短で行うことができるので、作業効率に優れる。
【0020】
〔4〕本発明の地盤改良工法は、前記結合材注入部を前記掘削孔の内底部又はその近傍から上昇させながら、前記未固化の混合物の中心に前記結合材注入部により前記結合材を注入して、前記結合材で未固化の芯部を形成する工程を、前記未固化の混合物を撹拌せずに行う構成とすることもできる。
【0021】
この場合は、未固化の混合物の中心に未固化の芯部を形成する際に、混合物が流動して大きく乱れるようなことがないので、形成される未固化の芯部の形状にも乱れが生じにくく、形状に歪な部分がない整った形状の芯部を形成することができるので、固化したときの芯部の強度にも優れる。
【0022】
〔5〕本発明の地盤改良工法は、前記未固化の芯部に、固化したときの芯部を補強できる強度を有する芯材を入れる工程を備える構成とすることもできる。
【0023】
この場合は、固化した芯部の強度を芯材によって、より高めることができ、これを備える杭構造体の強度も更に高めることができるので、特に地盤の強度又は耐力をより高める必要がある施工の場合、好適に採用できる。
【0024】
〔6〕本発明は、液状の結合材を通す流路、先端に設けてある掘削部材、その近傍に設けてある結合材注入部を有する掘削ロッドと、該掘削ロッドに軸周方向へ回転可能、かつ長さ方向にスライド可能で、その先部に設けられた掘削ヘッド、該掘削ヘッドに隣接して設けられた撹拌部材、その軸周方向に回転可能に設けられ、前記掘削ヘッド、及び前記撹拌部材の回転直径より長い振れ止め部材とを有し、前記結合材注入部と前記掘削ヘッドとの距離が、前記未固化の混合物内部で前記掘削ヘッドが回転したときに、前記結合材注入部近傍の前記未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さになるまで、前記掘削ヘッドに対して前記掘削ロッドをスライドして、スライド方向の所定の二箇所において所定の回転方向で固定可能に嵌装されている回転体とを備える掘削ロッド装置である。
【0025】
本発明の掘削ロッド装置によれば、掘削ロッドの所定の二箇所のうち、一方の箇所で固定して掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を短くして掘削を行うことができる。そして、掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドとの距離が、未固化の混合物内部で掘削ヘッドが回転したときに、結合材注入部近傍の未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さになるまで、掘削ヘッドに対して掘削ロッドをスライドする場合は、スライドして他方の箇所で固定して行うことができる。
【0026】
このように、作業機による操作を行う際に、所定の二箇所で固定することができるので、結合材注入部と掘削ヘッドの距離、すなわち所定の長さの正確な設定が可能になる。なお、「未固化の混合物の乱れが生じにくい」は、混合物の乱れが生じない場合も含む。
【0027】
〔7〕本発明の掘削ロッド装置は、前記掘削ロッドが、相互に長さ方向で接続、及び分解可能な複数のロッドを有し、所定の二つのロッドには前記所定の二箇所に対応する係合突起が設けられ、前記回転体には、前記係合突起と係合して所定の回転方向で固定可能である係合受部を有する構成とすることもできる。
【0028】
この場合は、地盤改良工事を行う前の準備段階において、掘削ロッドに回転体を嵌装するときに、一体物である掘削ロッドの一方向へ嵌装する場合と相違して、作業時上側となる係合突起を回転体の軸孔に通す必要がない。すなわち、所定の二つのロッドのうち、一方のロッドを係合突起がない側から軸孔に挿入して係合突起を係合受部に係合することができる。
【0029】
そして、ロッドの端部が軸孔を貫通して軸孔を出たところで、係合突起を有する他方のロッドを接続できるようにすることで、嵌装が可能になる。なお、その後は接続したロッドを他のロッドに接続して一体化し、掘削ロッドとする。
【0030】
〔8〕本発明は、作業機本体と、該作業機本体に備えてある昇降回転駆動装置と、該昇降回転駆動装置に取り付けられた掘削ロッド装置とを備え、該掘削ロッド装置は、液状の結合材を通す流路、先端に設けてある掘削部材、その近傍に設けてある結合材を吐出する結合材注入部を有する掘削ロッドと、該掘削ロッドに軸周方向へ回転可能、かつ長さ方向にスライド可能で、その先部に設けられた掘削ヘッド、該掘削ヘッドに隣接して設けられた撹拌部材、その軸周方向に回転可能に設けられ、前記掘削ヘッド、及び前記撹拌部材の回転直径より長い振れ止め部材を有し、スライド方向の所定の二箇所において所定の回転方向で前記掘削ロッドに固定可能に嵌装されている回転体とを備える地盤改良装置である。
【0031】
本発明の地盤改良装置は、上記〔6〕、〔7〕の作用を有する掘削ロッド装置を備えているので、施工現場で土壌の中に結合材を注入し、土壌と結合材を混合撹拌して柱状に固化させ、地盤の土質に関係なく杭構造体の所定の強度が得られるようにする地盤改良工法において、作業工程中での掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さにする作業を、結合材が漏れ出すことなく、かつ作業者による直接的な手作業によらず、作業機を操作して効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、施工現場で土壌の中に結合材を注入し、土壌と結合材を混合撹拌して柱状に固化させ、地盤の土質に関係なく杭構造体の所定の強度が得られるようにする地盤改良工法において、作業工程中での掘削ロッドの結合材注入部と掘削ヘッドの距離を未固化の混合物の乱れが生じにくい所定の長さにする作業を、結合材が漏れ出すことなく、かつ作業者による直接的な手作業によらず、作業機を操作して効率よく行うことができる地盤改良工法、地盤改良工法に使用する掘削ロッド及び地盤改良装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の地盤改良装置の一実施の形態を示す説明図である。
【
図2】本発明の掘削ヘッド部の一実施の形態を示す分解説明図である。
【
図3】掘削ヘッド部からの掘削ロッドの突出長が短い状態を示す説明図である。
【
図4】掘削ヘッド部からの掘削ロッドの突出長が長い状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の地盤改良工法の第1の実施形態を示す作業工程の説明図である。
【
図6】本発明の地盤改良工法の第2の実施形態を示す作業工程の説明図である。
【
図7】地盤改良工法の第1、第2の実施形態を示す作業工程における掘削ヘッド部の高さの推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき、更に詳細に説明する。
図1乃至
図4を参照する。
まず、本発明の地盤改良工法において使用する地盤改良装置Aについて説明する。
地盤改良装置Aは、地中削孔機1と、地中削孔機1が有するガイドセル2、ガイドセル2に沿って昇降し地盤を掘削して掘削孔を形成する掘削ロッド装置Rを備えている。ガイドセル2には、掘削ロッド3をワイヤで吊り込むためのウインチ21を備えている。
【0035】
地中削孔機1は、クローラ式の削孔機本体10と、削孔機本体10の前部に上下方向に向けて油圧シリンダー11を介し角度調整可能に取り付けられたガイド体12を備えている。削孔機本体10には、地盤改良装置Aを安定させるアウトリガー13が備えられている。
【0036】
ガイド体12には、ガイドセル2が、油圧シリンダー(
図1では見えない)でガイド体12に沿って一定の範囲で昇降調節ができるようにして取り付けられている。ガイドセル2の下端部には、前方へ向け接続部材22が設けられ、その先端には後述する掘削ロッド3を通して回転自在に保持する円筒形状の軸受23が取り付けてある。また、ガイドセル2は、その前側にほぼ全長にわたって設けられたガイド部20を有している。
【0037】
ガイド部20には、油圧モーターを駆動源とする昇降回転駆動装置であるドリフター30が、ガイド部20に沿って昇降移動自在に取り付けられている。ドリフター30は、所定の長さの掘削ロッド3を保持しており、掘削ロッド3は、作業時、ほぼ鉛直方向へ向けて垂下される。また、掘削ロッド3の先端部には、掘削ロッド3と共に掘削ロッド装置Rを構成する回転体4が嵌装されている。
【0038】
掘削ロッド3は、所要長さのロッド31、31a、31b、31c、31dを着脱可能に接続して所要の長さに形成されている。各ロッド31、31a、31b、31c、31dは、中心部に結合材(柱体原料)であるセメントミルクを通す流路39が軸線方向に貫通して設けてある。なお、流路39には、図示していないミキサープラントからセメントミルクが供給される構造となっている。
【0039】
先端のロッド31は、流路39の結合材注入部である吐出口390を有するノズルとなっており、その先端部には三角板状のビット32が台板320を介して直径方向に固定されている。なお、ビット32の径方向中央には、流路39を塞がないようにする半円形の切欠部(符号省略)が形成されている。ロッド31の基端部(
図2(b)で上端部)には、周壁の相対する二箇所に互いに平行な溝孔330を上下斜め向かいに設けた接続凸部33が形成されている。
【0040】
また、ロッド31の先部の台板320近傍には、所要の間隔をおいて直方体状の下部係合突起35が形成されている。下部係合突起35は、後述する回転体4の下部係合受部41に入って係合し、回転体4を所定の回転方向(正逆回転方向)で固定可能である。
【0041】
ロッド31には、ロッド31より短いロッド31aが接続される。ロッド31aの基端部(
図2(b)で上端部)には、ロッド31の上記接続凸部33と同様の、溝孔330を設けた接続凸部33が形成されている。また、ロッド31aの先端部(
図2(b)で下端部)には、接続凸部33を嵌め入れる接続凹部34が設けてある。
【0042】
ロッド31aの周壁には、接続凹部34に掛かるように、上記ロッド31の接続凸部33の溝孔330に対応するピン孔340が貫通して設けてある。また、ロッド31aの基端部の接続凸部33近傍には、所要の間隔をおいて直方体状の上部係合突起36が設けてある。上部係合突起36は、後述する回転体4の上部係合受部42に入って係合し、回転体4を所定の回転方向(正逆回転方向)で固定可能である。
【0043】
そして、ロッド31とロッド31aの接続に当たっては、ロッド31の接続凸部33にロッド31aの接続凹部34を嵌め込み、ロッド31の各溝孔330とロッド31aのピン孔340を合わせ、それぞれに細棒状のピン341を差し込む。これにより、ロッド31とロッド31aは接続することができ、ピン341を抜いて取り外すこともできる。
【0044】
また、掘削ロッド3には、回転体4が嵌装されている。回転体4は、回転中心部に略円筒形状の中心管40を有している(
図2(a)参照)。中心管40の軸孔49の内径は、上記各ロッド、すなわち掘削ロッド3の外径より若干大きく、嵌装したときに掘削ロッド3の周方向への回転と長さ方向へのスライドができるように形成されている。
【0045】
中心管40の長さ方向の両端部には、
図2(a)で下部に位置する下部係合受部41と、上部に位置する上部係合受部42が設けてある。下部係合受部41と上部係合受部42との間隔(距離)は、後述するように、下部係合受部41にロッド31の下部係合突起35を係合した状態から、下部係合受部41と下部係合突起35の係合を外して回転体4に対して掘削ロッド3をスライドさせて上部係合受部42にロッド31aの上部係合突起36を係合したときの後述する掘削ヘッド43からの掘削ロッド3(ロッド31)の突出長が、作業工程の最後に後述する芯部6を形成するときに、芯部6が掘削ヘッド43や撹拌羽根47、48の混合物5の撹拌による影響を受けにくい距離(長さ)となるように設定されている。
【0046】
下部係合受部41は、周壁を表裏貫通して設けてあり、下部係合突起35が入って係合する係合口410と、係合口410の周方向一端に設けてある出入口411で構成されている。上部係合受部42は、同じく周壁を表裏貫通して設けてあり、上部係合突起36が入って係合する係合口420と、係合口420の周方向中央に設けてある出入口421で構成されている。なお、下部係合受部41と上部係合受部42は、中心管40の周方向において略同じ位置に設けてあるが、これに限定せず、適宜位置に設けることもできる。
【0047】
回転体4の中心管40の先端部(
図2で下端部)には、掘削ヘッド43が固定されている。掘削ヘッド43は、中心管40を挟んで軸線方向と直角かつ直径方向に固定された二枚の掘削羽根430と、掘削羽根430の下側に長さ方向へ所要間隔で複数固定された掘削歯431で構成されている。
【0048】
なお、回転体4の中心管40の長さは、上記先端部のロッド31の長さよりやや短く形成され、ロッド31を下から挿入し、下部係合突起35と後述する下部係合受部41を係合させたときに、基端部の接続凸部33全体が中心管40の端部から突出する長さに形成されている(
図3参照)。
【0049】
また、中心管40において掘削ヘッド43より上方には、所要間隔をおいて二箇所に中心管40を中心として軸周方向に自由回転が可能な縦板状の振れ止めブレード45、46が設けてある。振れ止めブレード45、46は、中心管40の長さ方向へは動かず、その方向は、中心管40と直角、かつ直径方向であり、その長さは、掘削羽根430より所定の長さだけ長くなるように形成されている(
図2乃至
図4参照)。
【0050】
そして、中心管40において、上記振れ止めブレード45、46の間と、基端寄りには、撹拌羽根47、48が固定されている。撹拌羽根47、48は、中心管40と直角、かつ直径方向に設けられ、互いに軸周方向へ90°を成して形成されている。また、直径方向両側のブレード(符号省略)の上下傾斜方向は、両側で互いに逆方向にしてある。
【0051】
ここで、
図1乃至
図4、及び
図5、
図7(a)を参照して、地盤改良工法の第1の実施形態、及び地盤改良装置Aの各部の作用を説明する。
【0052】
(1)地盤改良装置Aを地盤改良を行う場所(軟弱な地盤上)に設置する。このとき、掘削ロッド装置Rの掘削ロッド3の掘削ヘッド43からの突出長さは、下部係合突起35と下部係合受部41が係合した短い状態である(
図1、
図3参照)。
【0053】
(2)地盤改良装置Aの掘削ロッド3を、下部係合突起35のロックが掛かった状態の回転体4と共に回転させながら下降させ、掘削ヘッド43で軟弱な地盤5の掘削を開始する(
図5(a)参照)。
【0054】
(3)更に、掘削ヘッド43による掘削を進める。このとき、掘削ヘッド43で掘削される掘削孔50の内径より長い振れ止めブレード45、46の両側先端部は、掘削ヘッド43による掘削(及び撹拌)に伴い形成される掘削孔50の孔壁に刺さるように入り込み、自身の回転は止まって、以降は掘削孔50の深部へ移動しながらロッド31の回転の振れ止め(軸受)としての機能を果たす。
【0055】
(4)このようにして、掘削孔50が次第に深く形成されると共に、掘削孔50の内部に土壌が削られて生じた掘削土(符号省略)が溜まっていく。また、並行して、ロッド31先端の吐出口390から結合材であるセメントミルクが掘削孔50の内部に注入され、掘削土と混じり合う。
【0056】
更に、セメントミルクは、回転する掘削ヘッド43、及び撹拌羽根47、48によって掘削土と混合撹拌され、未固化の混合物6がつくられていく。掘削孔50を所定の深さまで形成したところで、掘削ロッド装置Rの下降は停止される。なお、このとき掘削孔50の底部には、ロッド31先端のビット32による穴(符号省略)が形成されている(
図5(b)、
図7(a)撹拌・注入のところを参照)。
【0057】
(5)そして、未固化の混合物6の深部において、掘削ヘッド43、及び撹拌羽根47、48を回転させながら、繰り返し細かく上下動させ、掘削孔50の底部近傍の混合物5の深部を混合撹拌する(
図7(a)繰り返しのところを参照))。
【0058】
(6)次に、掘削ロッド装置Rを徐々に上昇させながら、未固化の混合物6を更に撹拌し、掘削孔50内の未固化の混合物6から抜き取る(
図5(c)、
図7(a)再撹拌のところを参照)。なお、混合撹拌用のセメントミルクの注入は、上記のように掘削ロッド装置Rの下降時に行うのではなく、抜き取りに向かう上昇時に行うこともできる。
【0059】
(7)掘削孔50の外に出した後、掘削ロッド3の掘削ヘッド43からの突出長さを、上部係合突起36と上部係合受部42が係合した長い状態に変更する(
図4、
図5(d)、
図7(a)ロッド伸長のところを参照)。具体的には、一旦、掘削ロッド装置Rの掘削ヘッド43が地盤5に接地するように降ろして、ドリフター30を操作し、下部係合突起35を回して出入口411から抜き取り、下部係合受部41との係合を外す。
【0060】
そして、ロッド31が回転体4の中心管40の下端部から、つまり掘削ヘッド43より突き出すようにスライドさせて先部を地盤5に突き刺すようにし、ロッド31の上部係合突起36を出入口421から係合口42に入れて回転させて係合するまでの操作を行って突出長を所定の長さに設定するのが好ましいが、これに限定するものではない。
【0061】
このように、ロッド31の掘削ヘッド43からの突出長を長い状態に変更する作業は、地中削孔機1を操作して行うことができ、作業者による直接的な手作業は不要であるので、作業の手間が低減される。更には、作業に当たって、掘削ロッド3の結合材の流路39の途中が開放されることがないため、流路39内のセメントミルクが多く漏れ出してしまうことがなく、作業者を含めて周囲をひどく汚してしまうことを防止できる。
【0062】
(8)再び、掘削ヘッド43と撹拌羽根47、48を回転させて、掘削ロッド装置Rを掘削孔50内に下降させ、掘削ヘッド43、撹拌羽根47、48で未固化の混合物6を混合撹拌しながら掘削孔50の底部の穴にロッド31先端部を当てるように位置させる(
図5(e)、
図7(a)貫入のところを参照)。このようにして、掘削孔50の内部にセメントミルクと掘削土が全体に充分混合撹拌された未固化の混合物6がつくられる。なお、掘削孔50に沿う掘削ヘッド43、及び撹拌羽根47、48の行程数(昇降回数)、行程長等は適宜調整、又は設定することができ、本実施の形態に限定するものではない。その後、ロッド31の先端を底部からやや上昇させる(
図5(e)、(f)参照)。
【0063】
(9)掘削孔50内部の未固化の混合物6の内部の上記位置から、掘削ヘッド43、及び撹拌羽根47、48を回転させて上昇させながら、ロッド31の吐出口390から未固化の混合物6の中心に、セメントミルクを適正な圧力で注入する。また。このときの、注入の開始点は、上記のように掘削孔50の底部よりやや上に位置しており、ここから未固化の混合物6の中心にセメントミルクのみが充填されてつくられた未固化の芯部7が徐々に柱状に形成される。
【0064】
そして、掘削ロッド装置Rが未固化の混合物6から出ることにより、未固化の混合物6の上部まで未固化の芯部7が形成される(
図5(f)、及び
図5(g)、
図7(a)芯部注入・引抜のところを参照)。なお、未固化の芯部7をつくるための注入開始位置は、上記位置に限定するものではなく、上記底部の穴から、或いは適宜高さ位置から開始することもできる。そして、軟弱な地盤5の所定の箇所(必要な箇所)で、上記(1)~(9)の工程によって同様の施工を行う。
【0065】
なお、掘削ロッド3の先部(ロッド31)は、上記のように当初の突出長より長くし伸ばしてあるので、掘削ヘッド43と撹拌羽根47、48は、当初よりロッド31先端の吐出口390から所定の距離(長さ)離れている。したがって、未固化の芯部7の形成において、掘削ヘッド43(及び撹拌羽根47、48)の回転による未固化の混合物6の乱れの影響は受けにくいため、未固化の芯部7は歪な形にはなりにくく、結果的に後述する固化芯部7aの強度にも優れる。
【0066】
また、未固化の芯部7の形成の際に、掘削ヘッド43、及び撹拌羽根47、48を回転させないで上昇させることもできる。この場合は未固化の混合物6が流動して大きく乱れるようなことがより少なくなるので、形成される未固化の芯部7の形状にも乱れがより生じにくい。
【0067】
(10)最後に、掘削孔50の内部の未固化の混合物6と未固化の芯部7を、所定の期間養生を行って固化する。これにより、地盤5の内部に所定の深さに柱状に固化して形成された固化混合物6aと、固化混合物6aの中心に固化して形成された固化芯部7aからなる杭構造体8が必要数施工され、軟弱だった地盤5を強固な地盤に改良することができる(
図5(g)参照)。
【0068】
このように、従来の一般的な工法においても使用される結合材であるセメントミルクのみを主材料として固化芯部7aを形成することで、杭構造体8の強度を高めることができ、例えば土壌が有機質土である等、骨材としての土が軟らかい場合でも、固化した杭構造体8の充分な強度が得られるので土質を選ばない。また、やむを得ず撹拌能力が低い装置を使用する場合等、撹拌が不十分で杭構造体に未固化部分が多く生じたとしても、固化した固化芯部7aによって充分な強度を付与することができる。
【0069】
なお、固化芯部7aは固化したセメントであるので、例えば杭構造体8の施工後に施工部の天端の高さを低くする調整を行う際に、鋼材等の補強材を使用している場合のように、補強材をガスで溶断する等の煩雑な手間がかからず、バックホーのアタッチメント(ショベル等)で破壊するなどして、作業を比較的容易に行うことができる。
【0070】
このように、施工現場で土壌の中に結合材を注入し、土壌と結合材を混合撹拌して柱状に固化させ、地盤の土質に関係なく杭構造体8の所定の強度が得られるようにする地盤改良工法において、作業工程中での掘削ロッド3の結合材の吐出口390と掘削ヘッド43との距離を未固化の混合物6の乱れが生じにくい所定の長さにする作業(作業工程中での掘削ロッド3先部の長さを長くする作業)を、結合材が漏れ出すことなく、かつ作業者による直接的な手作業によらず、作業機を利用して効率よく行うことができる。
【0071】
次に、
図1乃至
図4、及び
図6、
図7(b)を参照して、地盤改良工法の第2の実施形態、及び地盤改良装置Aの各部の作用を説明する。なお、この第2の実施形態は、掘削ロッド3を長くする工程のみが上記第1の実施形態の(6)、(7)の工程と異なるだけで、他の工程は略同じであるので、主に掘削ロッド3を長くする工程について説明し、他の工程の説明は省略する。
【0072】
上記第1の実施形態の(1)~(5)の工程と同様の工程に続いて、掘削ロッド装置Rを未固化の混合物6の内部でやや上昇させ、その高さで維持しながら、掘削ロッド3の掘削ヘッド43からの突出長さを上部係合突起36と上部係合受部42が係合した長い状態に変更する(
図4、
図6(c)、(d)、
図7(b)ロッド伸長のところを参照)。
【0073】
具体的には、未固化の混合物6の内部にある掘削ロッド装置Rの掘削ヘッド43を、ドリフター30を操作し、下部係合突起35を回して出入口411から抜き取り、下部係合受部41との係合を外す。このとき、掘削ロッド装置Rは混合物6の内部である程度の浮力を以て支えられるので、作業は比較的容易に行うことができる。
【0074】
そして、この状態から、ロッド31が回転体4の中心管40の下端部より、つまり掘削ヘッド43より突き出すようにスライドさせて、ロッド31の上部係合突起36を出入口421から係合口42に入れて回転させて係合するまでの操作を行って突出長を所定の長さに設定する。
【0075】
このように、ロッド31の掘削ヘッド43からの突出長を長い状態に変更する作業は、第1の実施形態と同様に、地中削孔機1を操作して行うことができ、作業者による直接的な手作業は不要であるので、作業の手間が低減される。更には、作業に当たって、掘削ロッド3の結合材の流路39の途中が開放されることがないため、流路39内のセメントミルクが多く漏れ出してしまうことがなく、作業者を含めて周囲をひどく汚してしまうことを防止できる点も同様である。なお、以下の工程は上記(8)~(10)の工程と同様であるので説明を省略する。
【0076】
なお、図示はしないが、地盤改良工法の他の例として、未固化の混合物6の中心に、未固化の芯部7を形成した後、芯部7の固化が進まないうちに、作業者による手作業等で所定の長さの芯材(鋼管等)を芯部7に沿ってその中に入れ込むこともできる。なお、芯材は固化した固化芯部7aを補強できる充分な強度があれば、鋼管の他にも、例えば鉄筋籠、鋼棒、H鋼等を採用することができる。
【0077】
そして、そのまま未固化の混合物6と未固化の芯部7を固化させれば、固化した固化芯部7aの強度を鋼管によって高めることができ、これを備える杭構造体8の強度も更に高めることができる。したがって、この構造は、特に地盤の強度又は耐力をより高める必要がある施工の場合、より効果的である。
【0078】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
A 地盤改良装置
1 地中削孔機
10 削孔機本体
11 油圧シリンダー
12 ガイド体
13 アウトリガー
2 ガイドセル
20 ガイド部
21 ウインチ
22 接続部材
23 軸受
R 掘削ロッド装置
3 掘削ロッド
30 ドリフター
31、31a、31b、31c、31d ロッド
32 ビット
320 台板
33 接続凸部
330 溝孔
34 接続凹部
340 ピン孔
341 ピン
35 下部係合突起
36 上部係合突起
39 流路
390 吐出口
4 回転体
40 中心管
41 下部係合受部
410 係合口
411 出入口
42 上部係合受部
420 係合口
421 出入口
43 掘削ヘッド
430 掘削羽根
431 掘削歯
45、46 振れ止めブレード
47、48 撹拌羽根
49 軸孔
5 地盤
50 掘削孔
6 未固化の混合物
6a 固化混合物
7 未固化の芯部
7a 固化芯部
8 杭構造体