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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008303
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】充放電器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110062
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 統公
(72)【発明者】
【氏名】木村 和峰
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730AS08
5H730BB27
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD16
5H730DD32
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730FD01
5H730FG02
(57)【要約】
【課題】 双方向AC/DCコンバータにDABコンバータが連結されて系統電力網とバッテリとの間にて電力を伝送する充放電器に於いて、バッテリから系統電力網への放電時に於ける伝送効率を向上させる。
【解決手段】 充放電器10は、バッテリ500に接続される絶縁型の双方向DC/DCコンバータ部分100と、それと系統電力網400との間に接続される双方向AC/DCコンバータ部分200と、AC/DCコンバータ部分に接続されたDC/DCコンバータ部分の端子間に接続された平滑コンデンサと、DC/DCコンバータ部分とAC/DCコンバータ部分のスイッチング素子のフルブリッジ回路110,120、210の状態を制御するスイッチング制御手段600とを含み、バッテリの電力を系統電力網へ伝送する際には、AC/DCコンバータ部分を連続的に作動し、DC/DCコンバータ部分を作動状態と停止状態を繰返すよう間欠的に作動する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端子間がバッテリに接続される絶縁型の双方向DC/DCコンバータ部分と、その他方の端子間と系統電力網との間に接続される双方向AC/DCコンバータ部分と、前記双方向AC/DCコンバータ部分に接続された前記双方向DC/DCコンバータ部分の前記他方の端子間に接続された平滑コンデンサと、前記双方向DC/DCコンバータ部分と前記双方向AC/DCコンバータ部分のそれぞれに於けるスイッチング素子のフルブリッジ回路の状態を制御するスイッチング制御手段とを含む充放電器であって、前記スイッチング制御手段が、前記バッテリの電力を前記系統電力網へ伝送する際には、前記双方向AC/DCコンバータ部分を連続的に作動し、前記双方向DC/DCコンバータ部分を作動状態と停止状態を繰返すよう間欠的に作動するよう前記フルブリッジ回路の状態を制御する充放電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電器に係り、より詳細には、系統電力網から車両に搭載されたバッテリへの充電とバッテリから系統電力網又はそれに接続された家庭負荷への放電に利用される充放電器に係る。
【背景技術】
【0002】
交流の系統電力網と直流のバッテリとの間での電力の伝送には、AC/DC変換(バッテリへの充電時)及びDC/AC変換(バッテリからの放電時)の機能と直流電圧変換(DC/DC)の機能とを有する充放電器が用いられる。そのような充放電器としては、例えば、図1に示されている如く、スイッチング素子の単相フルブリッジ回路を有する双方向AC/DCコンバータ200の直流側の入出力端子に、トランスを介して二つの(スイッチング素子の)単相フルブリッジ回路を接続して成る絶縁型の双方向DC/DCコンバータ(DAB(Dual-Active-Bridge)コンバータ)100の入出力端子を連結した回路構成のものが利用可能である。かかる回路構成に於けるDABコンバータに関しては、例えば、特許文献1に於いて、伝送電力が所定値以上のときには、二つのフルブリッジ回路のスイッチングの位相差を変化させることにより伝送電力を調整する連続運転を行い、伝送電力が所定値未満のときには、二つのフルブリッジ回路のスイッチングの位相差を固定して、スイッチング動作を間欠的に停止する間欠運転を行うことにより、幅広い伝送電力において高効率を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-130997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1の如き充放電器の利用に関して、系統電力網からバッテリへの充電時には、通常、充放電器の(伝送効率が高くなるように設定されている)定格電力(例えば、3.3kW)にて電力が伝送される(ここで、「伝送効率」とは、伝送時の出力/入力の割合である。)。これに対し、バッテリから系統電力網への放電の際には、伝送電力は、系統電力網にて電力を使用する機器(負荷)の消費電力に応じた値(例えば、数百W)となるので、定格電力から外れ、伝送効率が悪化する。この点に関し、本発明の発明者等は、図1の如き充放電器に於けるバッテリから系統電力網への放電時に於いて、双方向AC/DCコンバータの部分は、連続的に動作させながら、DABコンバータの部分では、系統電力網へ投入する電力よりも定格電力に近い電力値にて伝送を間欠的に実行し、その際のDABコンバータの出力の変動をコンバータ間に接続されている平滑コンデンサに吸収させ、これにより、伝送電力が定格電力より低い場合の伝送効率をより高くできることが見出した。本発明に於いては、この知見が利用される。
【0005】
かくして、本発明の一つの課題は、双方向AC/DCコンバータにDABコンバータが連結されて系統電力網とバッテリとの間にて電力を伝送する充放電器に於いて、バッテリから系統電力網への放電時に於ける伝送効率を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、一方の端子間がバッテリに接続される絶縁型の双方向DC/DCコンバータ部分と、その他方の端子間と系統電力網との間に接続される双方向AC/DCコンバータ部分と、前記双方向AC/DCコンバータ部分に接続された前記DC/DCコンバータ部分の前記他方の端子間に接続された平滑コンデンサと、前記双方向DC/DCコンバータ部分と前記双方向AC/DCコンバータ部分のそれぞれに於けるスイッチング素子のフルブリッジ回路の状態を制御するスイッチング制御手段とを含む充放電器であって、前記スイッチング制御手段が、前記バッテリの電力を前記系統電力網へ伝送する際には、前記双方向AC/DCコンバータ部分を連続的に作動し、前記双方向DC/DCコンバータ部分を作動状態と停止状態を繰返すよう間欠的に作動するよう前記フルブリッジ回路の状態を制御する充放電器によって達成される。
【0007】
上記の構成に於いて、「絶縁型の双方向DC/DCコンバータ部分」とは、上記のDABコンバータの如くトランスを介してスイッチング素子のフルブリッジ回路が二つ接続され直流電圧の変換を双方向に行うコンバータであってよい。「双方向AC/DCコンバータ部分」とは、スイッチング素子のフルブリッジ回路により交流電力と直流電力との間の変換を双方向に行うコンバータであって、力率改善動作を実行できるものであってよい。「平滑コンデンサ」は、双方向DC/DCコンバータ部分の入出力端子間に接続される、この分野に用いられる通常のものであってよいコンデンサである。双方向DC/DCコンバータ部分と双方向AC/DCコンバータ部分との作動は、任意の形式のスイッチング制御手段が、平滑コンデンサの電圧とリアクトルの電流とがそれぞれ目標値となるようにフィードバック制御によるフルブリッジ回路のスイッチング制御(スイッチング素子の切換制御)を行うことにより達成される。
【0008】
そして、上記の本発明の構成では、バッテリの電力を系統電力網へ伝送する際、即ち、バッテリの放電時に於いて、AC/DCコンバータ部分(以下、「AC/DC部分」と称する。)については、連続的にフルブリッジ回路のスイッチング制御を実行する一方、DC/DCコンバータ部分(以下、「DC/DC部分」と称する。)については、フルブリッジ回路のスイッチング制御を行って電力伝送を行う作動状態と、フルブリッジ回路のスイッチング制御を行わず、電力伝送を行わない停止状態とを交互に繰返す間欠的な作動が実行される。この場合、DC/DC部分の作動状態に於いて、バッテリから伝送されてきた電力の一部がAC/DC部分との間の平滑コンデンサに蓄積され、DC/DC部分が停止状態にあるときにはバッテリからの電力伝送はないが、平滑コンデンサから蓄積された電力が放出されるので、AC/DC部分を介して連続的に系統電力網へ電力が伝送されることとなる。その際、バッテリから系統電力網へ伝送される電力は、DC/DC部分の作動状態に伝送される電力量をその間欠的な作動のサイクル時間で割った値となるので、DC/DC部分の作動状態での伝送電力の大きさが連続的に系統電力網へ送出する電力よりも高い値に設定できることとなる。従って、バッテリの放電時に於いて、DC/DC部分の作動状態での伝送電力が定格電力により近い値とすることができ、伝送電力を系統電力網へ連続的に送出すべき電力に設定した状態でDC/DC部分を連続的に作動する場合に比して、効率をより高くできることとなる。
【0009】
実施の態様に於いて、バッテリの放電時のDC/DC部分の間欠的な作動は、平滑コンデンサの電圧に基づいて実行されてよい。具体的には、スイッチング制御手段は、平滑コンデンサの電圧が(適宜設定される)目標電圧より低い(適宜設定される)下限値を下回ったときに、DC/DC部分を作動状態にし(これにより、平滑コンデンサの電圧が上昇される。)、平滑コンデンサの電圧が目標電圧より高い(適宜設定される)上限値を上回ったときに、DC/DC部分を停止状態にするように(平滑コンデンサの電圧が下降される。)、DC/DC部分のフルブリッジ回路のスイッチング制御を実行するよう構成されていてよい。なお、作動状態にあるDC/DC部分にて伝送される電力の大きさと方向は、平滑コンデンサ電圧とトランスを挟んだ二つのフルブリッジ回路に接続されたリアクトルの電流とに基づいて二つのフルブリッジ回路のスイッチングの位相差を調節することにより制御される。
【0010】
ところで、上記の如くバッテリの放電時にDC/DC部分の作動と停止を繰り返す間欠的な作動に於いて、かかる作動を繰返す「間欠周波数」(作動開始時点の周期の逆数)は、DC/DC部分の作動中の伝送電力と、平滑コンデンサの容量、電圧の変動幅及び平均電圧とにより決定されるところ、かかる間欠作動の実行時には、その間欠周波数の音が発生する。そして、その間欠周波数が人の良く聞こえる周波数帯域にある場合には、その間欠作動により生ずる音が周囲の騒音となり得る。そこで、DC/DC部分の間欠作動により生ずる音が人の聴覚に於いて騒音となり得る場合には、それを回避すべく、DC/DC部分は、間欠的に作動せずに、(効率は低下するが)連続的に作動されてよい。この点に関し、人の可聴帯域に於ける聴覚は、周波数が低くなると、低下するので、DC/DC部分は、上記の間欠周波数が(人の聴覚感度に基づき適宜設定される)所定値を下回るときに間欠作動され、上記の間欠周波数が所定値を上回るときには、連続作動されてよい。
【発明の効果】
【0011】
かくして、上記の本発明の構成によれば、車両等のバッテリから系統電力網又はそれに接続された家庭負荷への電力を供給する場合に、DC/DC部分を間欠作動にすることで、系統電力網への伝送電力がDC/DC部分の定格電力よりも低い場合の伝送効率が改善される。本発明は、充放電器の構成要素は変更せずに、制御装置の制御構成を変更することにより達成できる点でも有利である。
【0012】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態による充放電器の回路図である。
図2図2(A)は、DC/DC部分の間欠作動に於ける処理をフローチャートの形式で表わした図であり、図2(B)は、かかる間欠作動により得られる伝送効率の上昇幅の例を示した図である。
図3図3は、本実施形態による充放電器のバッテリの放電時に於ける(A)DC/DC部分の出力と、(B)平滑コンデンサの電圧(DCリンク電圧)と、(C)AC/DC部分の出力と、AC/DC部分から系統電力網に投入される(D)電流と(E)電圧との時間経過の例を示している。
図4図4(A)は、DC/DC部分からの放電電力の要求値に応じて算定される間欠周波数に応じて、DC/DC部分の運転モードを選択する処理をフローチャートの形式で表わした図であり、図4(B)は、間欠作動時と連続作動時とに於ける発生音レベルの変化幅の例を示した図である。
【符号の説明】
【0014】
10…充放電器,100…双方向DC/DCコンバータ部分,200…双方向AC/DCコンバータ部分,110、120、210…フルブリッジ回路,300…ACフィルタ,400…系統電力網,500…バッテリ,Cd…平滑コンデンサ,L1、L2、L3…リアクトル,Tr…トランス
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。図中、同一の符号は、同一の部位を示す。
【0016】
充放電器の構成と基本作動
図1を参照して、本実施形態の充放電器10は、交流の系統電力網400と直流のバッテリ500(車載バッテリ等)との間にて電力を双方向に伝送するよう構成される。充放電器10に於いて、具体的には、所謂、DABコンバータ、即ち、絶縁型の双方向DC/DCコンバータの構成のDC/DC部分100が、一方の入出力端子間がバッテリ500に接続され、平滑コンデンサCdの接続された他方の入出力端子間が、双方向AC/DCコンバータの構成のAC/DC部分200の一方の入出力端子間に接続され、AC/DC部分200の他方の入出力端子間が系統電力網400に接続される。なお、系統電力網400とAC/DC部分200との間には、系統電力網への伝導ノイズを低減するためのACフィルタ300が設けられてよい。そして、DC/DC部分100、AC/DC部分200に於けるフルブリッジ回路110、120、210の各スイッチング素子のON/OFF状態は、平滑コンデンサCdの電圧Vd、系統電力網400に接続されたAC/DC部分200の端子間電圧Vac、電流Iac、リアクトルL1、L2、L3を参照してスイッチング制御部600により制御される。スイッチング制御部600は、任意の形式のコンピュータ装置のプログラムの作動により構成されてよい。
【0017】
充放電器10の基本作動は、端的に述べれば、系統電力網400からバッテリ500へ電力を伝送する際(バッテリの充電時)には、AC/DC部分200にて、平滑コンデンサCdの電圧Vdが目標値になるように、リアクトルL3の電流が回路210のスイッチングにより制御され、DC/DC部分100にて、平滑コンデンサCdの電圧VdとリアクトルL1、L2とを参照して、バッテリ500へ投入される電力が目標値となるようにフルブリッジ回路110、120のスイッチングが制御される。一方、バッテリ500から系統電力網400へ電力を伝送する際(バッテリの放電時)には、DC/DC部分100にて、平滑コンデンサCdの電圧Vdが目標値になり、系統電力網400へ投入される電力が目標値となるようにフルブリッジ回路110、120のスイッチングが制御され、AC/DC部分200にて、フルブリッジ回路210のスイッチングにより系統連携規定に適合するように周波数・電圧・力率が制御される(力率改善(PFC(power factor correction))動作)。なお、DC/DC部分100に於ける伝送電力の大きさと方向は、フルブリッジ回路110、120のスイッチングの位相差の調節により制御される(例えば、特許文献1参照)。
【0018】
バッテリの放電時の電力伝送効率を改善する構成
上記の充放電器10の構成は、一般に、伝送される電力が定格電力であるときに電力の伝送効率(出力/入力)が最も高くなるように設計されている。この点に関し、バッテリの充電時に伝送される電力は、充放電器10とバッテリ500とが耐え得る範囲で任意に設定できるので、定格電力での電力伝送を実施することで、高効率の電力伝送が可能である。一方、バッテリの放電時に伝送されるべき電力は、系統電力網側にある負荷の要求する電力に応じて決まるので、必ずしも電力は定格電力にて伝送されず、その場合、伝送効率が低下し得ることとなる。
【0019】
ところで、充放電器10の回路構成に於いて、上記の如く、DC/DC部分とAC/DC部分との間に平滑コンデンサCdが接続されており、かかる平滑コンデンサCdは、DC/DC部分から伝送されてくる電力に変動があっても、その変動を或る程度にて吸収することができる。即ち、バッテリの放電時のDC/DC部分を、作動と停止とを周期的に繰返す態様にて間欠的に作動する場合でも、系統電力網側へ系統連携規定に適合する電力を伝送することが可能である。その際、系統電力網側へ伝送される電力の大きさは、間欠作動の1周期にDC/DC部分の作動中に伝送された電力量を1周期の時間で割った値となるので、DC/DC部分の作動中に伝送される電力を系統電力網側へ伝送する電力よりも定格電力に近づけることが可能となり、その分、伝送効率が高くできることとなる。そこで、本実施形態に於いては、バッテリの放電時に於いて、AC/DC部分は、連続的に作動させながら、DC/DC部分の作動を間欠的にして伝送効率の改善が図られる。
【0020】
DC/DC部分のバッテリの放電時の間欠的作動に於ける作動状態と停止状態との切換は、平滑コンデンサCdの電圧(DCリンク電圧)Vdを参照して実行されてよい。具体的には、間欠作動は、図2(A)、図3(B)を参照して、DCリンク電圧Vdがその目標値Vd_aveより低い下限値Vd_minを下回っているときに、DC/DC部分の作動を開始し(ステップ1、2、3、4)、DCリンク電圧Vdが上昇し、その目標値Vd_aveより高い上限値Vd_maxに達すると、DC/DC部分が停止状態にされ(ステップ1、5、6、7)、その後、DCリンク電圧Vdが下降し、Vd_minまで下がると、DC/DC部分の作動が開始するというサイクルを繰返すことで達成される。なお、目標値Vd_ave、下限値Vd_min、上限値Vd_maxは、系統電力網の電圧と平滑コンデンサの容量Cdに応じて適宜設定されてよい。かかる構成によれば、図3(A)に例示の如く、DC/DC部分が作動状態にあるときのみ、バッテリ500から平滑コンデンサCdへ向かって電力Pout2が伝送され、DC/DC部分が停止状態にあるときには、電力伝送が行われないこととなる。なお、電力Pout2の大きさは、DC/DC部分のブリッジ回路110、120のスイッチング制御により任意に設定される。かかるDC/DC部分の間欠作動によれば、DC/DC部分からの伝送電力が変動することになるが、平滑コンデンサCdの蓄電機能によって、そこから系統電力網側へ取り出される電力の大きさが平滑化され、図3(C)の如く、AC/DC部分200の系統電力網側の端子間の出力電力Pout1は、略一定の電力Pout2よりも低い値となり、系統電力網400へ投入される電流Iacと電圧Vacとは、図3(D)、(E)の如く略同位相とになり、力率が略1に制御でき、系統連携規定に適合した電力の伝送が可能となる。
【0021】
かくして、上記の如くDC/DC部分の作動を間欠的にすると、DC/DC部分の作動中の伝送電力は、系統電力網から要求される電力よりも定格電力に近い値とすることができ、伝送効率が向上されることとなる。実際、DC/DC部分の定格電力が3.3kWである構成に於いて、系統電力網への伝送電力を500Wとしたとき、図2(B)の如く、3.3kWにて間欠作動させた場合、DC/DC部分の伝送電力500Wにして連続作動させた場合よりも効率が約10%高くなることが見出された。
【0022】
DC/DC部分の間欠作動に起因する騒音の対策
上記のDC/DC部分の間欠的な作動に於いては、作動状態が繰返される周波数(間欠周波数)fは、
f=Pout2/(Cd・ΔV・Vd_ave) …(1)
となり(ここで、Cdは、平滑コンデンサの容量であり、ΔV=Vd_max-Vd_minである。)、この間欠周波数fの音が発生する。この間欠周波数fが人の良く聞こえる周波数帯域にある場合には、かかる音が周囲の騒音となり得るので、そのときには、伝送効率は低下するが、DC/DC部分は連続的に作動されてよい。この点に関し、人の可聴帯域に於ける聴覚感度は、周波数が低くなると、低下するので、DC/DC部分の間欠作動は、間欠周波数fが人の聴覚感度が高くなり始める値(所定値)を下回るときに実行され、間欠周波数fが所定値を上回るときには、DC/DC部分は、連続作動されてよい。実施に於いては、図4(A)を参照して、式(1)に於いて、Cd、ΔV、Vd_aveは、予め決定された値となるので、Pout2が決定されると(ステップ11)、間欠周波数fが決定されることとなる。そこで、間欠周波数fが所定値frを下回るときには、図2(A)に於いて説明した態様にてDC/DC部分の間欠作動が実行され(ステップ12、13)、間欠周波数fが所定値frを上回るときには、DC/DC部分は、連続作動されてよい(ステップ12、14)。この場合、伝送電力は、系統電力網の要求電力に設定されることとなる。所定値frは、人の聴覚感度特性(A特性)を参照して、感度の下がる周波数(例えば、100Hz)に適宜設定されてよい。例えば、間欠周波数fが1kHzのとき、図4(A)のフローで40Hz時の間欠制御実行とすることで、連続作動の実行時には、間欠作動の実行時よりも35%ほど騒音レベルが抑制できることが試算されている(図4(B))。かかる構成によれば、バッテリの放電時に於いて、騒音の悪化に配慮しながら、伝送効率の向上が図られ、バッテリの余剰電力の有効活用が期待される。
【0023】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4