(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083035
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】学習装置、推定装置、学習方法、推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61B5/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197313
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502054196
【氏名又は名称】学校法人武蔵野大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 圭子
(72)【発明者】
【氏名】岩本 実結
(72)【発明者】
【氏名】中西 崇文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 龍太郎
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PR01
4C038PR04
4C038PS00
4C038PS03
(57)【要約】
【課題】感情の推定の精度を向上させること。
【解決手段】本発明の一態様は、所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御部、を備える学習装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御部、
を備える学習装置。
【請求項2】
前記学習では、前記係数画像の画像データと正解データとの組を用いた学習であり、前記学習に用いられる係数画像は、所定の時間にわたって同じ感情を誘起する環境において取得対象から得られた生体時系列を、前記変換関数列に属する関数の重ね合わせで表現するときの重ね合わせの係数を示す画像、である、
請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記環境は、前記取得対象が略同一の感情を抱き続ける写真を前記取得対象が見続ける環境である、
請求項2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記環境は、前記取得対象が略同一の感情を抱き続ける動画を前記取得対象が見続ける環境である、
請求項2に記載の学習装置。
【請求項5】
前記変換関数列は直交関数系である、
請求項1に記載の学習装置。
【請求項6】
前記重ね合わせの係数は、短時間フーリエ変換によって得られる係数である、
請求項5に記載の学習装置。
【請求項7】
所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御部を備える学習装置、の得た学習済みの感情推定モデルを用いて、推定対象の感情の推定を行う推定部、
を備える推定装置。
【請求項8】
所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御ステップ、
を有する学習方法。
【請求項9】
所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御ステップを有する学習方法、の得た学習済みの感情推定モデルを用いて、推定対象の感情の推定を行う推定ステップ、
を有する推定方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の学習装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項7に記載の推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、推定装置、学習方法、推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の感情を推定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、Webページから算出される特徴量と、Webページの閲覧期間中に取得されたユーザの生体信号の特徴量とに基づいて、ユーザが持った感情の種類を表す情報を推定結果として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、必ずしも推定の精度が良いわけでは無かった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、感情の推定の精度を向上させる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御部、を備える学習装置である。
【0007】
本発明の一態様は、所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御部を備える学習装置、の得た学習済みの感情推定モデルを用いて、推定対象の感情の推定を行う推定部、を備える推定装置である。
【0008】
本発明の一態様は、所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御ステップ、を有する学習方法である。
【0009】
本発明の一態様は、所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列である変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体信号の時系列である生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である係数画像の画像データに基づき、前記生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである感情推定モデルの学習を行う制御ステップを有する学習方法、の得た学習済みの感情推定モデルを用いて、推定対象の感情の推定を行う推定ステップ、を有する推定方法である。
【0010】
本発明の一態様は、上記の学習装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0011】
本発明の一態様は、上記の推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感情の推定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の推定システムの概要を説明する説明図。
【
図2】実施形態における実験で得られたスペクトログラムの第1の例を示す図。
【
図3】実施形態における実験で得られたスペクトログラムの第2の例を示す図。
【
図4】実施形態における実験で得られたスペクトログラムの第3の例を示す図。
【
図5】実施形態における実験で得られたスペクトログラムの第4の例を示す図。
【
図6】実施形態における学習装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図7】実施形態における学習装置が備える制御部の機能構成の一例を示す図。
【
図8】実施形態における学習装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図9】実施形態における推定装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図10】実施形態における推定装置が備える制御部の機能構成の一例を示す図。
【
図11】実施形態における推定装置が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
図1は、実施形態の推定システム100の概要を説明する説明図である。推定システム100は、学習装置1と、推定装置2と、を備える。学習装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部11を備え、プログラムを実行する。
【0015】
制御部11は、学習処理を実行する。学習処理は、感情推定モデルの学習を行う。学習は機械学習を意味する。感情推定モデルは、生体信号の時系列である生体時系列を示す画像の画像データに基づいて、生体時系列の生体信号を発した人又は動物の感情を推定する数理モデルである。学習は、生体時系列を示す画像の画像データと正解データとの組を用いた学習である。正解データは、具体的には、感情を示すデータである。感情は、例えば、嬉しい感情や、哀しい感情である。以下、生体時系列を示す画像の画像データと正解データとの学習に用いられる組、を感情推定モデル学習データという。
【0016】
生体信号は、例えば、心拍であってもよいし、脈拍であってもよいし、脳波であってもよいし、呼気又は吸気であってもよいし、発汗であってもよい。生体時系列は、例えばウェアラブル生体センサによって取得される。
【0017】
生体時系列を示す画像は、具体的には、所定の関数列であって属する任意の2つの関数が線形独立な関数列(以下「変換関数列」という。)に属する関数の重ね合わせで生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である。変換関数列は、例えば直交関数系である。
【0018】
このような重ね合わせの係数は、例えば変換対象の生体時系列に対する短時間フーリエ変換によって得られる係数(すなわちフーリエ係数)である。すなわち、このような直交関数系は、例えば、正規直交関数系の三角関数の関数列である。なお、このような場合、生体時系列を示す画像はスペクトログラムである。
【0019】
このように、生体時系列を示す画像とは、具体的には、変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像であるので、以下、生体時系列を示す画像を係数画像という。
【0020】
学習に用いられる係数画像が示す重ね合わせ係数を有する生体時系列は、例えば、所定の時間にわたって同じ感情を誘起する環境において取得対象の人又は動物から得られた生体時系列である。所定の時間にわたって同じ感情を誘起する環境は、例えば、取得対象が略同一の感情を抱き続ける写真を取得対象が見続ける環境である。
【0021】
所定の時間にわたって同じ感情を誘起する環境は、例えば、取得対象が略同一の感情を抱き続ける動画を取得対象が見続ける環境であってもよい。所定の時間にわたって同じ感情を誘起する環境は、例えば、取得対象が略同一の感情を抱き続ける音楽を取得対象が聞き続ける環境であってもよい。所定の時間にわたって同じ感情を誘起する環境は、例えば、取得対象が略同一の感情を抱き続ける食事を取得対象が取り続ける環境であってもよい。
【0022】
このように、学習に用いられる係数画像は例えば、所定の時間にわたって同じ感情を誘起する環境において取得対象から得られた生体時系列を、変換関数列に属する関数の重ね合わせで表現するときの重ね合わせの係数を示す画像、である。
【0023】
なお、学習は、感情推定モデルの学習が可能な方法であればどのような機械学習の方法であってもよく、例えば畳み込みニューラルネットワークを用いた学習であってもよい。機械学習の方法は、例えば転移学習であってもよいし、ファインチューニングであってもよいし、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を用いた学習であってもよいし、Attention機構を用いた学習であってもよい。
【0024】
制御部11は、学習の終了に関する所定の条件(以下「学習終了条件」という。)が満たされるまで学習を行う。すなわち、学習処理は、学習終了条件が満たされるまで行われる。学習終了条件が満たされた時点の感情推定モデルが推定装置2によって用いられる。学習終了条件が満たされた時点の数理モデルとは、いわゆる、学習済みの数理モデルである。そこで以下、学習終了条件が満たされた時点の感情推定モデルを学習済み感情推定モデル、という。
【0025】
学習終了条件は、学習の終了に関する条件であればどのような条件であってもよい。学習終了条件は、例えば、学習による学習対象の更新が所定の回数行われた、という条件である。学習終了条件は、例えば更新による学習対象の変化が所定の変化より小さい、という条件であってもよい。制御部11による学習における学習対象は、具体的には、感情推定モデルである。
【0026】
なお数理モデルの更新とは学習対象の数理モデルが有するパラメータの値を更新することを意味する。
【0027】
制御部11は、学習終了条件が満たされた場合に、学習終了条件が満たされた時点の感情推定モデルを学習済み感情推定モデルとして取得する。
【0028】
推定装置2は、学習装置1の得た学習済み感情推定モデルを用い、推定対象から得られた係数画像の画像データに基づき、推定対象の感情を推定する。推定対象から得られた係数画像とは、具体的には、変換関数列に属する関数の重ね合わせで推定対象から得られた生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す係数画像、である。
【0029】
<係数画像を用いることが奏する効果について>
上述したように、係数画像は、変換関数列に属する関数の重ね合わせで生体時系列を表現するときの重ね合わせの係数、を示す画像である。したがって、係数画像の方が生体時系列そのものよりも情報量が多い。そのため、学習において係数画像を用いることは、生体時系列を用いるよりも推定の精度の高い学習済み感情推定モデルの取得を可能とする。
【0030】
上述したように、係数画像は例えばスペクトログラムである。取得対象の人の感情が楽しい時に得られた生体時系列と、取得対象の人の感情が悲しい時に得られた生体時系列と、のそれぞれについてスペクトログラムを実験で得たので、ここで数個の例を紹介する。なお、実験において生体時系列の生体信号は、心拍であった。
【0031】
図2は、実施形態における実験で得られたスペクトログラムの第1の例を示す図である。
図2の画像G1は、取得対象の人の感情が楽しい時に得られた心拍の時系列の一例である。横時は時刻を示し、縦軸は心拍を示す。
図2の画像G2は、画像G1が示す時系列をフーリエ変換して得たスペクトログラムである。横時は時刻を示し、縦軸は周波数を示す。
【0032】
図3は、実施形態における実験で得られたスペクトログラムの第2の例を示す図である。
図3の画像G3は、取得対象の人の感情が悲しい時に得られた心拍の時系列の一例である。横時は時刻を示し、縦軸は心拍を示す。
図3の画像G4は、画像G3が示す時系列をフーリエ変換して得たスペクトログラムである。横時は時刻を示し、縦軸は周波数を示す。
【0033】
図4は、実施形態における実験で得られたスペクトログラムの第3の例を示す図である。
図4の画像G5は、取得対象の人の感情が楽しい時に得られた心拍の時系列の一例である。横時は時刻を示し、縦軸は心拍を示す。
図4の画像G6は、画像G5が示す時系列をフーリエ変換して得たスペクトログラムである。横時は時刻を示し、縦軸は周波数を示す。
【0034】
図5は、実施形態における実験で得られたスペクトログラムの第4の例を示す図である。
図5の画像G7は、取得対象の人の感情が楽しい時に得られた心拍の時系列の一例である。横時は時刻を示し、縦軸は心拍を示す。
図5の画像G8は、画像G7が示す時系列をフーリエ変換して得たスペクトログラムである。横時は時刻を示し、縦軸は周波数を示す。
【0035】
図2~
図5のスペクトログラムは、悲しいときの心拍の時系列の方が、周波数が高い傾向にあることを示す。このような傾向は、単に心拍の時系列を見ても得ることが難しい。このように、係数画像は時系列そのものよりも情報量が多い。
【0036】
図6は、実施形態における学習装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。
図7は、実施形態における学習装置1が備える制御部11の機能構成の一例を示す図である。
【0037】
学習装置1は、上述したように、バスで接続されたCPU等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部11を備え、プログラムを実行する。学習装置1は、プログラムの実行によって制御部11、入力部12、通信部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0038】
より具体的には、プロセッサ91が記憶部14に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、学習装置1は、制御部11、入力部12、通信部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0039】
制御部11は、学習装置1が備える各種機能部の動作を制御する。制御部11は、例えば学習処理を実行する。制御部11は、例えば学習実行部111を備える。学習実行部111は、学習処理を実行する。
【0040】
制御部11は、例えば入力制御部112を備える。入力制御部112は、入力部12の動作を制御し、入力部12に入力された情報を取得する。したがって、例えば入力部12に感情推定モデル学習データが入力される場合、入力制御部112は感情推定モデル学習データを取得する。制御部11は、例えば通信制御部113を備える。通信制御部113は、通信部13の動作を制御し、通信部13を介した情報の送受信を行う。したがって、例えば通信部13に感情推定モデル学習データが入力される場合、通信制御部113は、感情推定モデル学習データを取得する。
【0041】
制御部11は、例えば記憶制御部114を備える。記憶制御部114は、記憶部14の動作を制御する。記憶制御部114は、記憶部14の動作を制御することで、例えば記憶部14の記憶する情報を読み出す。制御部11は、例えば出力制御部115を備える。出力制御部115は、出力部15の動作を制御する。
【0042】
入力部12は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部12は、これらの入力装置を学習装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部12は、学習装置1に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部12には、例えばユーザによる学習処理の開始の指示が入力される。入力部12には、例えば感情推定モデル学習データが入力される。
【0043】
通信部13は、学習装置1を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部13は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば感情推定モデル学習データの送信元の装置である。通信部13は、感情推定モデル学習データの送信元の装置との通信によって、感情推定モデル学習データを取得する。通信部13は、例えば制御部11の得た学習済み感情推定モデルを推定装置2に送信する。学習済み感情推定モデルを推定装置2に送信するとは、学習済み感情推定モデルのパラメータ及びハイパーパラメータの値を推定装置2に送信することを意味する。
【0044】
記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置(non-transitory computer-readable recording medium)を用いて構成される。記憶部14は学習装置1に関する各種情報を記憶する。記憶部14は、例えば入力部12又は通信部13を介して入力された情報を記憶する。したがって、記憶部14は、例えば感情推定モデル学習データを記憶する。記憶部14は、例えば学習処理で生じた各種情報を記憶する。記憶部14は、例えば感情推定モデルを記憶する。
【0045】
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部15は、これらの表示装置を学習装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部15は、例えば入力部12又は通信部13に入力された情報を出力する。
【0046】
図8は、実施形態における学習装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。入力部12又は通信部13に1又は複数の感情推定モデル学習データが入力され、入力された1又は複数の感情推定モデル学習データを制御部11が取得する(ステップS101)。次に制御部11は、ステップS101で取得された1又は複数の感情推定モデル学習データを用いて、学習終了条件が満たされるまで、感情推定モデルの学習が行われる(ステップS102)。感情推定モデルの学習により、学習済み感情推定モデルが得られる。
【0047】
ステップS102における学習の一例を説明する。学習では、例えば、ステップS101で取得された1又は複数の感情推定モデル学習データの1つが選択され、そこに含まれる係数画像に基づいて感情推定モデルが感情を推定することが行われる。学習では次に感情推定モデルの推定の結果と、感情推定モデル学習データの含む正解データとの違いを小さくするように、所定の規則にしたがって感情推定モデルを更新することが、行われる。このような、選択と推定と更新との処理が、学習終了条件が満たされるまで、行われる。なお、選択される感情推定モデル学習データは、既に学習に用いられたもの以外の感情推定モデル学習データから選択される。
【0048】
ステップS102が学習処理の一例である。
【0049】
図9は、実施形態における推定装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10は、実施形態における推定装置2が備える制御部21の機能構成の一例を示す図である。
【0050】
推定装置2は、バスで接続されたCPU等のプロセッサ93とメモリ94とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。推定装置2は、プログラムの実行によって制御部21、入力部22、通信部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0051】
より具体的には、プロセッサ93が記憶部24に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ94に記憶させる。プロセッサ93が、メモリ94に記憶させたプログラムを実行することによって、推定装置2は、制御部21、入力部22、通信部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0052】
制御部21は、推定装置2が備える各種機能部の動作を制御する。制御部21は、学習済みモデル実行部211を備える。学習済みモデル実行部211は、学習済み感情推定モデルを実行する。
【0053】
制御部21は、例えば入力制御部212を備える。入力制御部212は、入力部22の動作を制御し、入力部22に入力された情報を取得する。したがって、例えば入力部22に学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データが入力される場合、入力制御部212は学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データを取得する。
【0054】
制御部21は、例えば通信制御部213を備える。通信制御部213は、通信部23の動作を制御し、通信部23を介した情報の送受信を行う。したがって、例えば通信部23に学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データが入力される場合、通信制御部213は、学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データを取得する。
【0055】
制御部21は、例えば記憶制御部214を備える。記憶制御部214は、記憶部24の動作を制御する。記憶制御部214は、記憶部24の動作を制御することで、例えば記憶部24の記憶する情報を読み出す。制御部21は、例えば出力制御部215を備える。出力制御部215は、出力部25の動作を制御する。
【0056】
入力部22は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部22は、これらの入力装置を推定装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部22は、推定装置2に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部22には、例えばユーザによる学習済み感情推定モデルの開始の指示が入力される。入力部22には、例えば学習済み感情推定モデルの実行対象の係数画像の画像データが入力される。
【0057】
通信部23は、推定装置2を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部23は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データの送信元の装置である。通信部23は、学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データの送信元との通信によって、学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データを取得する。外部装置は、例えば学習装置1である。通信部23は、学習装置1との通信によって、学習済み感情推定モデルを取得する。
【0058】
記憶部24は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置(non-transitory computer-readable recording medium)を用いて構成される。記憶部24は推定装置2に関する各種情報を記憶する。記憶部24は、例えば学習済み感情推定モデルを記憶する。記憶部24は、例えば入力部22又は通信部23を介して入力された情報を記憶する。したがって、記憶部24は、例えば学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データを記憶する。記憶部24は、例えば学習済み感情推定モデルの実行により生じた各種情報を記憶する。
【0059】
出力部25は、各種情報を出力する。出力部25は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部25は、これらの表示装置を推定装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部25は、例えば入力部22又は通信部23に入力された情報を出力する。
【0060】
図11は、実施形態における推定装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。入力部22又は通信部23に学習済み感情推定モデルの実行対象の画像データが入力され、入力された画像データを制御部21が取得する(ステップS201)。実行対象の画像データは、具体的には、推定対象の人又は動物から得られた生体時系列を変換関数列に属する関数の重ね合わせで表現するときの重ね合わせの係数、を示す係数画像の画像データである。
【0061】
次に制御部21は、ステップS201で取得された画像データに対して学習済み感情推定モデルを実行する(ステップS202)。より具体的には、制御部21の備える学習済みモデル実行部211が、ステップS201で取得された画像データに対して学習済み感情推定モデルを実行する。ステップS202の実行により、推定対象の感情が推定される。次に制御部21は、出力部25の動作を制御して、出力部25にステップS202で推定された感情、を示す情報を出力させる(ステップS203)。
【0062】
このようにして制御部21は推定対象の感情を推定する。
【0063】
<実験結果>
なお、係数画像として心拍の時系列のスペクトログラムを用い、機械学習の方法として畳み込みニューラルネットワークを用いた実験では、学習済みの感情推定モデルの推定の精度について、76.0%という結果が得られた。
【0064】
このように構成された学習装置1は、係数画像の画像データを用いて感情推定モデルの学習を行う。したがって、上述の<係数画像を用いることが奏する効果について>で説明したように、学習装置1は、より推定の精度の高い学習済み感情推定モデルの取得が可能である。そのため、学習装置1は感情の推定の精度を向上させることができる。
【0065】
また、このように構成された推定装置2は、学習装置1の得た学習済みの感情推定モデルを用いた推定を行う。そのため、推定装置2は感情の推定の精度を向上させることができる。
【0066】
<適用例>
学習装置1の得た学習済みの感情推定モデルは、例えば、画像表示プログラムに用いられてもよい。画像表示プログラムは、スマートフォンやパソコン等の端末装置で実行されるプログラムである。画像表示プログラムは、ユーザから得た生体時系列に基づいて係数画像を生成し、生成した係数画像に基づいてユーザの感情を推定し、推定結果とともに、推定結果に応じた画像を表示するプログラムである。このような場合、画像表示プログラムを実行する装置が推定装置2の一例である。
【0067】
(変形例)
なお、学習装置1の備える入力部12又は通信部13には必ずしも係数画像の画像データが正解データとともに入力される必要はない。学習装置1の備える入力部12又は通信部13には、係数画像の画像データに代えて生体時系列が正解データとともに入力されてもよい。このような場合、学習装置1の制御部11は生体時系列から係数画像の画像データを得る。このような場合、学習装置1の制御部11が得た係数画像の画像データが、正解データとともに感情推定モデル学習データとして、感情推定モデルの学習に用いられる。
【0068】
なお、推定装置2の備える入力部22又は通信部23には必ずしも係数画像の画像データが入力される必要はない。推定装置2の備える入力部22又は通信部23には、係数画像の画像データに代えて生体時系列が入力されてもよい。このような場合、推定装置2の制御部21は生体時系列から係数画像の画像データを得る。このような場合、推定装置2の制御部21は、推定装置2の制御部21が得た係数画像の画像データに対して学習済み感情推定モデルに入力され、推定対象の感情が推定される。
【0069】
なお、学習装置1及び推定装置2のそれぞれは、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、制御部11及び制御部21が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
【0070】
なお、学習装置1及び推定装置2の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0071】
なお推定装置2の備える制御部21は、推定部の一例である。
【0072】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
100…推定システム、 1…学習装置、 2…推定装置、 11…制御部、 12…入力部、 13…通信部、 14…記憶部、 15…出力部、 111…学習実行部、 112…入力制御部、 113…通信制御部、 114…記憶制御部、 115…出力制御部、 21…制御部、 22…入力部、 23…通信部、 24…記憶部、 25…出力部、 211…学習済みモデル実行部、 212…入力制御部、 213…通信制御部、 214…記憶制御部、 215…出力制御部、 91…プロセッサ、 92…メモリ、 93…プロセッサ、 94…メモリ