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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083036
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】車両用リッドロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/90 20140101AFI20240613BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20240613BHJP
【FI】
E05B81/90
E05B83/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197314
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 敏行
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH02
2E250JJ48
2E250KK02
2E250LL13
(57)【要約】
【課題】少ない部品点数の簡単構成で良好かつ確実な操作性を確保し得る緊急用リッドロック解除機構を備えた車両用リッドロック装置を提供する。
【解決手段】駆動用アクチュエータ21aと、一端が蓋体10に係合し蓋体の閉状態を維持する位置と、駆動用アクチュエータの駆動力により軸方向に後退し蓋体との係合を解除する位置との間で移動自在に設けられるロックピン22と、使用者が把持するハンドル部材23と、一端がロックピンの他端に接続され他端がハンドル部材の一部に接続され、ハンドル部材が牽引されてロックピンを軸方向に後退させ蓋体との係合を解除させるケーブル24とを具備する車両用リッドロック装置1であって、ハンドル部材は車両内部構造物15に対しハンドル部材を固定するクリップ部23aを一体に形成し、ハンドル部材がクリップ部により車両内部構造物に固定されたとき、ハンドル部材は固定面に対し傾倒自在である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用アクチュエータと、
一端が車体外装パネルに設けられる蓋体の一部に係合して当該蓋体の閉状態を維持する第1の位置と、前記駆動用アクチュエータの駆動力を受けて軸方向に後退して前記蓋体の一部との係合を解除し前記蓋体が開状態となることを許容する第2の位置との間で移動自在に設けられるロックピンと、
使用者により把持されるハンドル部材と、
一端が前記ロックピンの他端に接続され、他端が前記ハンドル部材の一部に接続されており、前記使用者が前記ハンドル部材を牽引すると前記ロックピンが前記軸方向に後退して当該ロックピンの前記蓋体の一部への係合を解除させるケーブルと、
を具備する車両用リッドロック装置であって、
前記ハンドル部材は、車両内部構造物に対して当該ハンドル部材を固定するクリップ部が一体に形成されており、
前記ハンドル部材が前記クリップ部によって前記車両内部構造物に固定された状態にあるとき、前記ハンドル部材は、前記車両内部構造物の固定面に対して傾倒自在であることを特徴とする車両用リッドロック装置。
【請求項2】
前記ハンドル部材は、前記車両内部構造物に形成された嵌合孔に前記クリップ部が嵌合してスナップフィットにより前記車両内部構造物に対して固定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用リッドロック装置。
【請求項3】
前記ハンドル部材は、
前記ケーブルの他端が外周面上の一部に対して接続され、前記使用者により把持される把持部と、
前記把持部の外周面の一部から外方に向けて延設され、先端側周縁の一部位に被係止突部が形成される支持腕部と、
前記クリップ部が一平面上から外方に向けて突設される平板部と、
前記支持腕部の先端側周縁において前記被係止突部が形成されている位置に対して前記支持腕部の長軸を挟んで対向する他の一部位と、前記平板部の周縁の一部位とを連結するヒンジ部と、
前記平板部の周縁において他面から前記クリップ部の突出方向とは反対方向に延出する梁部の先端に形成され、前記被係止突部に対し係脱自在に構成される係止爪部と、
を具備し、
前記ハンドル部材は、
前記被係止突部が前記係止爪部に係止されているときには、前記支持腕部が前記平板部の平面に対して直立した状態が維持され、
前記把持部に対して所定の方向の牽引力が加わったときには、前記係止爪部による前記被係止突部の係止状態が解除されることにより、前記支持腕部が前記把持部と共に前記ヒンジ部を回転中心として前記平板部の平面に対して傾倒することを特徴とする請求項1に記載の車両用リッドロック装置。
【請求項4】
前記ヒンジ部は、前記支持腕部と前記平板部とを一体成形したセルフヒンジ構造からなることを特徴とする請求項3に記載の車両用リッドロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両に適用される車両用リッドロック装置、特に緊急時にリッドロック状態を手動で解除するためのリッドロック解除機構を備えた車両用リッドロック装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、燃料供給口(フューエルフィラー)若しくは充電ケーブルを接続する給電インレット等が配設されている内部空間を露呈させ得る開口を外部に対して開閉自在に構成されるリッド(蓋体)が設けられている。また、この種の車両には、燃料供給時若しくは給電時以外のときには当該リッドの閉状態を維持する一方、燃料供給時若しくは給電時には当該リッドの閉状態を解除して開状態を許容するリッドロック装置が設けられている。
【0003】
従来の車両用リッドロック装置は、例えば駆動用アクチュエータ等の駆動源を用いて棒状部材(ロックピン)を移動させて、当該ロックピンをリッドに対して係合又は抜去させることにより、当該リッドの閉状態を維持し又は閉状態を解除した開状態を許容し得る構成を有している。
【0004】
また、従来のこの種の車両用リッドロック装置には、例えば駆動用アクチュエータ等の駆動源によるロックピンの移動が不可能になった場合等の緊急時に、使用者(ユーザー)が手動操作を行うことでロックピンによるリッドの閉状態を解除することができる緊急用リッドロック解除機構を備えたものがある。
【0005】
この種の緊急用リッドロック解除機構を備えた車両用リッドロック装置については、例えば特開2011-214242号公報等によって、従来種々の提案がなされている。
【0006】
前記特開2011-214242号公報等によって開示されている車両用リッドロック装置は、ロックピンの後端にケーブルの一端が接続されており、このケーブルの他端にはハンドル部材が接続されている。このハンドル部材は、車体ボデーの嵌合孔に着脱自在に配置されている。そして、緊急時には、使用者(ユーザー)は車体ボデーに固定されたハンドル部材を取り外して、当該ハンドル部材を所定の方向に牽引することでロックピンによるリッドの閉状態を解除することができる構成を有している。
【0007】
前記特開2011-214242号公報等に開示される構成によれば、使用者(ユーザー)は、緊急時に車体ボデーに固定されたハンドル部材を取り外す操作と、取り外した当該ハンドル部材を牽引する操作等、複数の煩雑な操作を行う必要があるという問題点がある。
【0008】
また、緊急用リッドロック解除機構は、緊急時等に使用されるものであるため、その使用頻度は低い。そのため、従来の車両用リッドロック装置における緊急用リッドロック解除機構を構成する部品、例えばハンドル部材等は、通常、車体ボデー内部の狭く目立たない空間に配置されているのが普通である。
【0009】
したがって、ハンドル部材等の配置によっては、ハンドル部材を取り外す際の操作性が必ずしも良好ではない場合がある。例えば、前記特開2011-214242号公報等に開示される構成では、緊急時において、車体ボデーに固定されているハンドル部材を取り外す際の使用者(ユーザー)の操作ミス等に起因して、ハンドル部材を車体ボデー内部に取り落としてしまう可能性があるという問題点がある。
【0010】
そこで、このような種々の問題点を解決するための提案が、例えば特開2013-113059号公報,実開平5-7872号公報等によって開示されている。
【0011】
前記特開2013-113059号公報,実開平5-7872号公報等によって開示されている車両用リッドロック装置の緊急用リッドロック解除機構では、緊急時において、ハンドル部材を車体ボデーから取り外すことなく、車体ボデーに固定された状態のハンドル部材を所定の方向に牽引することによって、リッドの閉状態を解除する構成を実現している。
【0012】
例えば、前記特開2013-113059号公報等に開示されている車両用リッドロック装置は、車体ボデーに固定された支持部材に対してハンドル部材が所定の方向(ケーブル牽引方向)にスライド移動自在とする構成を具備している。
【0013】
前記実開平5-7872号公報等に開示されている車両用リッドロック装置は、ケーブルの他端は、車体ボデーに固定した支持部材を挿通させて支持されており、当該ケーブルの他端を牽引することでリッドの閉状態を解除する構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011-214242号公報
【特許文献2】特開2013-113059号公報
【特許文献3】実開平5-7872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、前記特開2013-113059号公報,前記実開平5-7872号公報等に開示されている構成では、ハンドル部材と、ハンドル部材を車体ボデーに固定する支持部材等、複数の構成要素部材が必要となるために、機構自体の構造が複雑になってしまうと共に、製造コストが増大してしまうという問題点がある。
【0016】
本発明の目的とするところは、少ない部品点数により簡単な構成で、良好な操作性及び確実な動作を確保することができ、かつ低コスト化に寄与し得る緊急用リッドロック解除機構を備えた車両用リッドロック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の車両用リッドロック装置は、駆動用アクチュエータと、一端が車体外装パネルに設けられる蓋体の一部に係合して当該蓋体の閉状態を維持する第1の位置と、前記駆動用アクチュエータの駆動力を受けて軸方向に後退して前記蓋体の一部との係合を解除し前記蓋体が開状態となることを許容する第2の位置との間で移動自在に設けられるロックピンと、使用者により把持されるハンドル部材と、一端が前記ロックピンの他端に接続され、他端が前記ハンドル部材の一部に接続されており、前記使用者が前記ハンドル部材を牽引すると前記ロックピンが前記軸方向に後退して当該ロックピンの前記蓋体の一部への係合を解除させるケーブルと、を具備する車両用リッドロック装置であって、前記ハンドル部材は、車両内部構造物に対して当該ハンドル部材を固定するクリップ部が一体に形成されており、前記ハンドル部材が前記クリップ部によって前記車両内部構造物に固定された状態にあるとき、前記ハンドル部材は、前記車両内部構造物の固定面に対して傾倒自在である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少ない部品点数により簡単な構成で、良好な操作性及び確実な動作を確保することができ、かつ低コスト化に寄与し得る緊急用リッドロック解除機構を備えた車両用リッドロック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の車両用リッドロック装置を備える車両の外観を概略的に示す外観斜視図
図2】本発明の一実施形態の車両用リッドロック装置の構成の概念図
図3図2の車両用リッドロック装置に含まれる緊急用リッドロック解除機構の構成を示すと共に作用を説明する概略図
図4図3の状態の後の作用図
図5図4の状態の後の作用図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の車両用リッドロック装置を備える車両の外観を概略的に示す外観斜視図である。図2は、本発明の一実施形態の車両用リッドロック装置の構成を概念的に示す図である。図3図4図5は、図2の車両用リッドロック装置に含まれる緊急用リッドロック解除機構の構成及び作用を説明する概略図である。図3図4図5は、図2の矢印[3]方向から見た状態を示している。なお、図3図4図5においては、緊急用リッドロック解除機構の構成部材のうちハンドル部材とケーブルのみを示している。
【0022】
図1において符号Mは、本発明の一実施形態の車両用リッドロック装置1(図1に不図示;図2参照)を備える車両を示している。車両Mは、例えば後部側面の車体外装パネル11の所定の位置にリッド10が設けられている。このリッド10は、燃料供給口若しくは充電ケーブルを接続する給電インレット等が配設されている内部空間を露呈させ得る開口を外部に対して開閉自在に構成する蓋体である。また、車両Mの後部領域にはラゲッジルーム12が設けられている。
【0023】
本実施形態の車両用リッドロック装置1(図2参照)は、車両Mの内部であって、リッド10及びラゲッジルーム12の近傍に配設されている。図2において、符号13は、ラゲッジルーム12の内部空間12aと車両内部空間14との間を隔てる隔壁を概念的に示している。つまり、図2においては、本実施形態の車両用リッドロック装置1が、ラゲッジルーム12の隔壁13を隔てて車両内部空間14側に配置されている様子を示している。
【0024】
図2において、符号20は、燃料供給口若しくは給電インレット等を含む構成ユニットである。以下の説明においては、給油口ユニット等20と略記する。
【0025】
リッド10は、当該給油口ユニット等20に対向する位置において、車体外装パネル11(図2では不図示;図1参照)の開口に対し、例えばヒンジ等を用いて開閉自在に取り付けられている。
【0026】
なお、これら給油口ユニット等20やリッド10等の基本的な構成については、従来の車両用リッドロック装置に適用されるものと略同様である。したがって、これらの構成部材については周知技術が適用されているものとして、その詳細構成の説明及び図示は省略する。
【0027】
本実施形態の車両用リッドロック装置1は、図2に示すように、駆動用アクチュエータ21aを含む本体21と、ロックピン22と、緊急用リッドロック解除機構等によって構成されている。
【0028】
駆動用アクチュエータ21aは、本体21の筐体内に配設される電動モータ等からなる駆動源である。本体21の内部には、駆動用アクチュエータ21a以外に、当該駆動用アクチュエータ21aからの駆動力をロックピン22へと伝達する駆動力伝達機構(不図示)等が配設されている。そして、当該駆動用アクチュエータ21aの駆動力は、ロックピン22を軸方向に移動させる。ここで、ロックピン22の軸方向を、図2において矢印Xで示している。そして、図2の矢印X1で示す方向をロックピン22の後退方向というものとする。また、図2の矢印X2で示す方向を、ロックピン22の突出方向とする。
【0029】
ロックピン22は、図2の矢印X2方向へ移動したとき、一端がリッド10の一部に係合して、リッド10の閉状態を維持する。また、ロックピン22は、図2の矢印X1方向へ移動したとき、リッド10の一部との係合状態が解除されて、リッド10の開状態を許容する。
【0030】
ロックピン22は、硬質の棒状からなる部材である。ロックピン22は、軸方向Xに沿う方向において本体21に対して突没自在に支持されている。そして、ロックピン22は、通常の場合には、一端22aが給油口ユニット等20を通してリッド10の一部に係合して当該リッド10の閉状態を維持する。このときのロックピン22の位置を第1の位置というものとする。ロックピン22が第1の位置にあるとき、リッド10は閉状態で固定されて、リッド10の開状態への変位が阻止される。
【0031】
一方、駆動用アクチュエータ21aが所定の操作を受けて駆動されると、当該駆動用アクチュエータ21aの駆動力は、所定の駆動力伝達機構(不図示)を通してロックピン22に作用する。なお、この場合における所定の操作とは、例えばリッド解除操作或いはドアロック解除操作等である。
【0032】
ロックピン22は、当該駆動用アクチュエータ21aの駆動力を受けて、軸方向Xにおける後退方向X1へ移動する。これにより、ロックピン22は、リッド10の一部との係合が解除される。これにより、リッド10は開状態への変位が許容される。このときのロックピン22の位置を第2の位置というものとする。このように、ロックピン22は、第1の位置と第2の位置との間で移動自在に設けられている。
【0033】
なお、ロックピン22自体の構成及び当該ロックピン22の移動機構等については、従来の車両用リッドロック装置に適用されるものと略同様である。したがって、その詳細な構成の説明及び図示は省略する。
【0034】
緊急用リッドロック解除機構は、ハンドル部材23と、ケーブル24等によって構成されている。
【0035】
ハンドル部材23は、緊急時に使用者(ユーザー)により把持されて所定の手動操作を受容するための操作部材である。ここで、緊急時とは、具体的には、例えば駆動用アクチュエータ21aによるロックピン22の移動(後退)が、故障或いは電力不足等の各種要因により不可能になってしまったような場合等を想定している。
【0036】
ハンドル部材23は、例えばラゲッジルーム12内に設けられる隔壁13に形成された開口13aの近傍に設けられている。なお、図2においては、図示を省略しているが、当該開口13aには、着脱自在に構成される開口蓋体が設けられている。通常の場合、開口13aは当該開口蓋体によって覆われている。したがって、開口13aが開口蓋体によって覆われている状態では、ハンドル部材23は、ラゲッジルーム12から隠された状態とされている。そして、緊急時等、緊急用リッドロック解除機構を使用する場合には、開口蓋体を取り外して、ハンドル部材23に対する所定の操作を行うことになる。
【0037】
そのために、ハンドル部材23は、隔壁13の開口蓋体を取り外して、開口13aから使用者(ユーザー)が手指等を伸ばした場合に容易に届く位置に配置されている。
【0038】
ハンドル部材23は、図2に示すように、クリップ部23aによって車両内部構造物15の一壁面に対して固定されている。このクリップ部23aは、ハンドル部材23と一体に形成されている。
【0039】
この場合において、ハンドル部材23は、車両内部構造物15に形成された嵌合孔15aにクリップ部23aが嵌合してスナップフィットにより車両内部構造物15に対して固定されている。なお、ハンドル部材23のさらに詳細な構成については後述する。
【0040】
ケーブル24は、ロックピン22とハンドル部材23との間を接続する紐状部材である。ケーブル24の一端は、本体21を通してロックピン22の他端22bに接続されている。ケーブル24の他端は、ハンドル部材23の一部に接続されている。
【0041】
ここで、ハンドル部材23のさらに詳細な構成を説明する。ハンドル部材23は、図3に示すように、上述したクリップ部23aのほかに、把持部23bと、支持腕部23cと、平板部23dと、ヒンジ部23eと、梁部23fと、係止爪部23gと、被係止突部23h等を有して形成されている。ここで、ハンドル部材23は、例えば合成樹脂材料等によって一体に形成されている。
【0042】
把持部23bは、例えば緊急時等に使用者(ユーザー)が把持して操作するための操作部である。本実施形態において把持部23bは、例えば使用者(ユーザー)が操作のために手指等を通すことのでき得る程度の内径を有する略リング形状に形成されている。また、把持部23bの外周面上の所定の一部には、ケーブル24の他端が接続されている。
【0043】
支持腕部23cは、把持部23bの外周面上の所定の一部から外方に向けて延設される梁状部位である。ここで、支持腕部23cと把持部23bとは一体に形成されている。
【0044】
把持部23bにおける支持腕部23cの配置は、例えば把持部23bにおいてケーブル24の他端が接続されている部位に対して周方向に略90度程度回転した部位に設けられている(図3等参照)。なお、支持腕部23cにおいて、把持部23bと接続している側の部位を基端と呼称する。また、支持腕部23cの基端部から延設した先の部位を先端と呼称する。
【0045】
支持腕部23cの先端側の周縁の一部位には、当該支持腕部23cの外表面から同支持腕部23cの中心軸(図3の符号Y参照)に沿う方向に対して略直交する方向に外部に向けて突出する被係止突部23hが一体に形成されている。被係止突部23hは、例えば先端が略半球形状に形成されている。この被係止突部23hは、後述する係止爪部23gに係脱される構成部位である。
【0046】
なお、詳細は後述するが、ハンドル部材23において、被係止突部23hが係止爪部23gに係止された状態を、本ハンドル部材23の通常状態と呼称する。ハンドル部材23が通常状態にある時、支持腕部23cは、平板部23dに対し略直立状態に設定される。また、このとき同時に、支持腕部23cは、車両内部構造物15の一壁面の取付面或いは固定面に対し、略直立状態に固定される。このとき、支持腕部23cの中心軸Yは、平板部23d及びクリップ部23aの中心軸Y1と一致する。
【0047】
平板部23dは、平板形状からなり、当該ハンドル部材23の基台部となる構成部材である。平板部23dの一平面には、当該一平面に対して略直交する方向において外方に向けて突出するクリップ部23aが一体に設けられている。
【0048】
ここで、平板部23dにおいてクリップ部23aが設けられているがわの一平面を、当該平板部23dの裏面と呼称する。この平板部23dの裏面は、当該ハンドル部材23が、車両内部構造物15の一壁面に固定されるとき、当該車両内部構造物15の一壁面の外表面に対向して配置される面である。なお、平板部23dの裏面とは反対側の面を表(おもて)面と呼称する。
【0049】
平板部23dの表面には、周縁の所定の位置からクリップ部23aの突出方向とは反対方向に延出する梁部23fが設けられている。この梁部23fは、弾性を有する片持ち梁状に形成されている。当該梁部23fは、平板部23dと一体に形成されている。
【0050】
梁部23fの先端には、係止爪部23gが一体に形成されている。この係止爪部23gは、被係止突部23hに対して係脱自在に構成されるフック形状からなる。ここで、梁部23f及び係止爪部23gは、被係止突部23hが形成されている部位に対向する位置に形成されている。
【0051】
ヒンジ部23eは、支持腕部23cの先端側周縁の一部位と、平板部23dの周縁の一部位とを一体に連結する構成部材である。ヒンジ部23eの一端は、支持腕部23cの先端側周縁において被係止突部23hが形成されている位置に対して支持腕部23cの中心軸Yを挟んで対向する位置に接続されている。また、ヒンジ部23eの他端は、平板部23dの周縁において、梁部23fが形成されている位置に対して平板部23dの中心軸Y1(図3参照)を挟んで対向する位置に接続されている。この場合において、ヒンジ部23eは、支持腕部23c及び平板部23dと一体成形したセルフヒンジ構造として形成されている。
【0052】
このヒンジ部23eを設けることにより、ハンドル部材23がクリップ部23aによって車両内部構造物15に対して固定された状態にあるとき、ハンドル部材23の把持部23bを含む支持腕部23cは、車両内部構造物15の一壁面の外表面(固定面)に対して傾倒自在に構成されている。
【0053】
なお、ここで改めて、ケーブル24と、ヒンジ部23eと、梁部23f及び係止爪部23gと、被係止突部23hとのそれぞれの位置関係を説明する。なお、各構成部材の位置関係を示すのに際しては、ハンドル部材23が通常状態にあるときを想定している。
【0054】
ケーブル24の配置されている位置に対し、ヒンジ部23eは、中心軸Yを挟んで対向する位置に配置されている。
【0055】
梁部23f及び係止爪部23gと被係止突部23hとは、中心軸Yに対して同じ側に配置されている。かつ、梁部23f及び係止爪部23gと、被係止突部23hとは、中心軸Yに沿う方向に対向する位置に配置されている。
【0056】
また、ケーブル24の配置されている位置に対し、梁部23f,係止爪部23g,被係止突部23hは、中心軸Yに対して同じ側に配置されている。
【0057】
そして、梁部23f,係止爪部23g,被係止突部23hの配置されている位置に対して、ヒンジ部23eは、中心軸Yを挟んで対向する位置に配置されている。
【0058】
このような構成により、ハンドル部材23は、クリップ部23aによって車両内部構造物15の一壁面に対して固定される。このとき、平板部23dの一平面(裏面)は、車両内部構造物15の一壁面の外表面に対向して配置される。
【0059】
そして、このとき、ハンドル部材23は、支持腕部23cが平板部23dの平面(即ち、車両内部構造物15の外表面)に対して略直立状態となり、かつ被係止突部23hが係止爪部23gによって係止される。
【0060】
つまり、ハンドル部材23が車両内部構造物15の一壁面に対して固定された状態で、被係止突部23hが係止爪部23gに係止されているとき、支持腕部23cは平板部23dの平面(即ち、車両内部構造物15の外表面)に対して略直立状態で維持される。この状態が、ハンドル部材23の通常状態である(図3に示す状態)。
【0061】
ハンドル部材23が通常状態(図3の状態)にあるとき、把持部23bに対して所定の方向(図3の矢印X4方向)への牽引力が加わったとすると、支持腕部23cは把持部23bと共にヒンジ部23eを回転中心として平板部23dの平面(即ち、車両内部構造物15の外表面)に対して傾倒する。これと同時に、係止爪部23gによる被係止突部23hの係止状態は解除される構成となっている。
【0062】
このように構成される本実施形態の車両用リッドロック装置1において、緊急用リッドロック解除機構の作用を、図2図5を用いて以下に簡単に説明する。
【0063】
まず、ハンドル部材23は、図2図3に示すように通常状態にあるものとする。この状態において、使用者(ユーザー)がハンドル部材23の把持部23bに手指等をかけて、例えば図2図3の矢印X4方向へと把持部23bを牽引する。
【0064】
すると、把持部23bを含む支持腕部23cは、ヒンジ部23eを回転中心として図2図3図4に示す矢印R1方向への回動を開始する。これに伴って、被係止突部23hも、同様に、矢印R1に沿う方向に移動する。すると、被係止突部23hは、係止爪部23gの外面に沿って移動する。このとき、梁部23fは、図4の矢印R2方向に撓む。
【0065】
やがて、被係止突部23hは、係止爪部23gを乗り越える。これにより、係止爪部23gによる被係止突部23hの係止状態は解除される。なお、図4に示す状態は、係止爪部23gによる被係止突部23hの係止状態が解除される直前の状態を示している。
【0066】
そして、係止爪部23gによる被係止突部23hの係止状態が完全に解除された状態になると、梁部23fは、自身の弾性復元力によって図5の矢印R3方向に復帰して、撓み状態は解消される。
【0067】
使用者(ユーザー)による把持部23bの矢印X4方向への牽引が継続されると、把持部23bを含む支持腕部23cは、平板部23dの平面に対して矢印R1方向へと傾倒する。これに伴って、把持部23bは、ケーブル24を図2図4の矢印X3方向へ牽引する。すると、ケーブル24は、同X3方向へ移動する。なお、図5に示す状態は、把持部23bを含む支持腕部23cが、矢印X4方向の牽引を受けて、平板部23dの平面に対して矢印R1方向へと傾倒し、ケーブル24が矢印X3方向へ牽引されている途中の状態を示している。
【0068】
ケーブル24が矢印X3方向へ移動すると、ロックピン22は、図2の矢印X1方向(後退方向)に移動する。すると、ロックピン22によるリッド10の一部への係合が解除される。これにより、リッド10は、開状態への変位が許容される状態になる。
【0069】
ここで、ハンドル部材23の把持部23bの牽引を解除しても、図5に示す状態(ハンドル部材23の傾倒状態)は維持される。したがって、このときリッド10に対する所定の開操作を行うと、リッド10を開状態とすることができる。なお、リッド10に対する所定の開操作とは、例えばリッド10の外表面を手指等により一押しする操作等である。
【0070】
以上説明したように上記一実施形態によれば、車両用リッドロック装置1における緊急用リッドロック解除機構において、ハンドル部材23は、一体に形成されたクリップ部23aにより、車両内部構造物15に対して固定されている。このとき、ハンドル部材23は、車両内部構造物15の固定面に対して傾倒自在に構成されている。
【0071】
この場合において、ハンドル部材23は、被係止突部23hと係止爪部23gとが係止状態にある時には、車両内部構造物15の固定面に対して略直立状態で固定されている。一方、被係止突部23hと係止爪部23gとの係止状態が解除された時には、ハンドル部材23の把持部23bを含む支持腕部23cは、ヒンジ部23eによって車両内部構造物15の固定面に対して傾倒自在となる。
【0072】
ここで、ハンドル部材23は、クリップ部23aと、把持部23bと、支持腕部23cと、平板部23dと、ヒンジ部23eと、梁部23fと、係止爪部23gと、被係止突部23hとが一体に形成されている。
【0073】
このような構成とすることにより、本実施形態の車両用リッドロック装置1においては、部品点数の削減を実現しながら、把持部23bを牽引するという簡単な一操作を行うのみで、容易にリッド10の閉状態を解除することができる。
【0074】
また、ハンドル部材23は、一体に形成したクリップ部23aによって車両内部構造物15に固定される構成としたので、緊急時等、ハンドル部材23を使用するときには、ハンドル部材23を車体から取り外す必要が無い。したがって、緊急時等のハンドル部材23の操作時には、当該ハンドル部材23を取り落としてしまうようなこともない。
【0075】
そして、ハンドル部材23を構成する構成部材を一体に形成したことにより、部品点数を削減することができ、よって製造コストの低減化に寄与することができる。
【0076】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0077】
1…車両用リッドロック装置
10…リッド(蓋体)
11…車体外装パネル
12…ラゲッジルーム
12a…内部空間
13…隔壁
13a…開口
14…車両内部空間
15…車両内部構造物
15a…嵌合孔
20…給油口ユニット等
21…本体
21a…駆動用アクチュエータ
22…ロックピン
22a…一端(ロックピン)
22b…他端(ロックピン)
23…ハンドル部材
23a…クリップ部
23b…把持部
23c…支持腕部
23d…平板部
23e…ヒンジ部
23f…梁部
23g…係止爪部
23h…被係止突部
24…ケーブル
M…車両
図1
図2
図3
図4
図5