(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008304
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20240112BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20240112BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01R15/18 C
G01R15/20 C
G01R19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110063
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】南 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 博之
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB01
2G025AB02
2G025AC01
2G035AA01
2G035AB00
2G035AC02
2G035AD20
2G035AD21
(57)【要約】
【課題】導線を流れる被測定電流をより高い精度で測定することが可能な電流センサを提供する。
【解決手段】電流センサ1は、被測定電流が流れる導線50の周囲を囲むように配置可能な磁気コア11と、磁気コア11の予め定められた部分の磁束をそれぞれ検出する複数の磁気センサ12と、複数の磁気センサ12に対応して設けられた複数のアンプ13と、複数の磁気センサ12に対応して設けられた複数の帰還コイル14と、複数の帰還コイル14の各々を流れる電流が合わさった電流に基づき、被測定電流を検出する電流検出部16と、を備える。複数のアンプ13の各々は、対応する磁気センサ12の出力を増幅して当該磁気センサ12の出力に応じた電流を出力する。複数の帰還コイル14の各々は、磁気コア11に巻かれて配置され、対応するアンプ13が出力する電流を、対応する磁気コア11の予め定められた部分の磁束を打ち消す方向に流す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定電流が流れる導線の周囲を囲むように配置可能な磁気コアと、
前記磁気コアの予め定められた部分の磁束をそれぞれ検出する複数の磁気センサと、
前記複数の磁気センサに対応して設けられた複数のアンプと、
前記複数の磁気センサに対応して設けられた複数の帰還コイルと、
前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流が合わさった電流に基づき、前記被測定電流を検出する電流検出部と、
を備え、
前記複数のアンプの各々は、対応する前記磁気センサの出力を増幅して当該磁気センサの出力に応じた電流を出力し、
前記複数の帰還コイルの各々は、前記磁気コアに巻かれて配置され、対応する前記アンプが出力する電流を、対応する前記磁気コアの予め定められた部分の前記磁束を打ち消す方向に流す、
電流センサ。
【請求項2】
前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流が合わさった電流が流れる抵抗を更に備え、
前記電流検出部は、前記抵抗の両端の電圧に基づき、前記被測定電流を検出する、
請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記複数の磁気センサは、前記磁気コアの中心から見て等しい角度で配置された前記磁気コアの複数の部分の磁束を、前記予め定められた部分の磁束として検出する、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流に基づき、前記磁気コアに対する前記導線の位置を検出する位置検出部を更に備える、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記磁気コアは開閉可能である、請求項1に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
導線に被測定電流が流れると、電磁誘導作用により導線の周辺に磁界が発生する。特許文献1,2には、このような電磁誘導作用を利用して、導線の周辺に位置する磁気コア内に発生した磁界の測定値に基づき、被測定電流を測定するクランプセンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-18765号公報
【特許文献2】特開2003-43073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成においては、磁気コアの中央に導線が位置しない場合における、被測定電流の測定精度に改善の余地があった。
【0005】
そこで、本開示は、導線を流れる被測定電流をより高い精度で測定することが可能な電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る電流センサは、被測定電流が流れる導線の周囲を囲むように配置可能な磁気コアと、前記磁気コアの予め定められた部分の磁束をそれぞれ検出する複数の磁気センサと、前記複数の磁気センサに対応して設けられた複数のアンプと、前記複数の磁気センサに対応して設けられた複数の帰還コイルと、前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流が合わさった電流に基づき、前記被測定電流を検出する電流検出部と、を備え、前記複数のアンプの各々は、対応する前記磁気センサの出力を増幅して当該磁気センサの出力に応じた電流を出力し、前記複数の帰還コイルの各々は、前記磁気コアに巻かれて配置され、対応する前記アンプが出力する電流を、対応する前記磁気コアの予め定められた部分の前記磁束を打ち消す方向に流す。
【0007】
したがって、電流センサは、導線が磁気コアの中央からずれて位置する場合であっても、不均一に分布する磁束を効果的に打ち消すことができ、大型化することなく残留磁束を低減することが可能である。よって、電流センサによれば、導線を流れる被測定電流をより高い精度で測定することができる。
【0008】
一実施形態において、前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流が合わさった電流が流れる抵抗を更に備え、前記電流検出部は、前記抵抗の両端の電圧に基づき、前記被測定電流を検出する。したがって、シンプルな構成で、複数の帰還コイルの各々を流れる電流が合わさった電流に基づき、被測定電流を検出することができる。
【0009】
一実施形態において、前記複数の磁気センサは、前記磁気コアの中心から見て等しい角度で配置された前記磁気コアの複数の部分の磁束を、前記予め定められた部分の磁束として検出してもよい。したがって、電流センサは、複数の帰還コイルから出力される電流に基づき、高い精度で被測定電流を測定することが可能である。
【0010】
一実施形態において、前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流に基づき、前記磁気コアに対する前記導線の位置を検出する位置検出部を更に備える。したがって、磁気コアに対する導線の位置を検出することが可能である。
【0011】
一実施形態において、前記磁気コアは開閉可能であってもよい。したがって、電流センサにより導体を容易にクランプすることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一実施形態によれば、磁気コアの中央に導線が位置しない場合であっても、導線を流れる被測定電流をより高い精度で測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】比較例に係る電流センサの構成を示す図である。
【
図2】比較例に係る電流センサの構成を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る電流センサの構成例を示す図である。
【
図4】
図3の電流センサの動作を説明する図である。
【
図5】
図3の電流センサの動作を説明する図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る電流センサの構成例を示す図である。
【
図7】
図6の電流センサの動作を説明する図である。
【
図8】
図6の電流センサの動作を説明する図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る電流センサの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<比較例>
図1は、第1の比較例に係る電流センサ9aの構成を示す図である。電流センサ9aは、一次導体50を流れる被測定電流を測定するゼロフラックス方式のセンサである。電流センサ9aは、磁気コア91、磁電変換素子92、アンプ93、二次巻き線94、及び抵抗95を備える。
【0015】
一次導体50を電流が流れると、電磁誘導作用により、一次導体50の電流に応じた磁界が一次導体50の周辺に形成される。磁電変換素子92は、磁性体である磁気コア91のギャップ部(空隙)に設けられ、磁気コア91内に発生した磁束の強度に応じた電流をアンプ93へ出力する。アンプ93は、磁電変換素子92から入力された電流を増幅し、フィードバック電流Isとして二次巻き線94へ出力する。二次巻き線94は、磁気コア91に生ずる磁束を相殺するために、磁気コア91に巻回される。アンプ93から出力されたフィードバック電流Isは二次巻き線94を経て抵抗95へ出力される。抵抗95において検出された電圧は増幅され、増幅された電圧は一次導体50を流れる電流値に換算される。ここで、抵抗95における電圧は、一次導体50が磁気コア91の中央に位置する場合を基準として、一次導体50の電流値に換算される。
【0016】
電流センサ9aのように、1つの磁電変換素子92を備えた構成においては、一次導体50が磁気コア91の中央からずれると、一次導体50を流れる電流値が一定であっても、磁電変換素子92を通過する磁束の強度が大きく変化する。その結果、フィードバック電流Isは一次導体50の位置に応じて大きく変化し、抵抗95の電圧から換算される一次導体50の測定値の誤差が大きくなる。
【0017】
例えば、
図1において一次導体50が磁気コア91の中央よりも右に位置し、磁電変換素子92に近づくと、磁電変換素子92は、一次導体50が磁気コア91の中央に位置する場合よりもより強度が高い磁束を検出する。その結果、二次巻き線94を流れるフィードバック電流Isはより大きくなり、実際に一次導体50を流れる電流よりも大きな値が一次導体50の電流値として測定される。他方、
図1において一次導体50が磁気コア91の中央よりも左に位置し、磁電変換素子92から遠ざかると、磁電変換素子92は、一次導体50が磁気コア91の中央に位置する場合よりもより強度が低い磁束を検出する。その結果、二次巻き線94を流れるフィードバック電流Isはより小さくなり、実際に一次導体50を流れる電流よりも小さな値が一次導体50の電流値として測定される。
【0018】
図2は、第2の比較例に係る電流センサ9bの構成を示す図である。電流センサ9bは、電流センサ9aと異なり、磁気コア91a,91bの間のギャップ部に設けられた2つの磁電変換素子92a,92bを備える。電流センサ9bは、これらの磁電変換素子92a,92bにおいて検出された磁束に応じた電流を加算器96において加算した電流値に応じた電流をフィードバック電流Isとして出力する。その結果、電流センサ9bは、一次導体50が磁気コア91の中央からずれることによるフィードバック電流Isの変動を低減することができる。
【0019】
しかし、電流センサ9bにおいては、磁気コア91a,91bに対する一次導体50の位置にかかわらず、磁気コア91a,91bの全体にわたって同一のフィードバック電流Isが負帰還電流として二次巻き線94を流れる。そのため、フィードバック電流Isによっては、磁気コア91a,91bに対する位置によって勾配が異なる磁束密度を十分に打ち消すことができず、残留磁束が存在してしまう。このような残留磁束は、フィードバック電流Isに応じた抵抗95の電圧に基づく一次導体50の電流の測定値の誤差の要因となる。さらに、一次導体50を流れる電流が大きくなるにつれて、磁気コア91a,91b内部の残留磁束も増大し、やがて磁気コア91a,91bの飽和磁束密度に達する。残留磁束が磁気コア91a,91bの飽和磁束密度に達するとフィードバック電流Isはもはや一次導体50を流れる電流の大きさを十分に反映せず、抵抗95の電圧に基づく一次導体50の電流の測定値の誤差がさらに大きくなってしまう。磁気コア91a,91bの断面積を増大させることで、残留磁束が飽和磁束密度に達するまでの一次導体50を流れる電流を増やすことができるが、その場合、電流センサ9bが大型化してしまう。
【0020】
このように、比較例に係る電流センサ9a,9bにおいては、磁気コア91,91a,91bの中央に導線が位置しない場合における、導線を流れる被測定電流の測定精度に改善の余地があった。
【0021】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0022】
本開示の一実施形態に係る電流センサは、複数の磁電変換素子、及び、磁電変換素子毎にその近傍の磁気コアの部分に巻回された複数の二次巻き線を備え、複数の二次巻き線から出力されるフィードバック電流の合計値に基づき、被測定電流を測定する。したがって、本開示に係る電流センサは、不均一に分布する磁束強度を効果的に打ち消すことができ、大型化することなく残留磁束を低減することが可能である。よって、本開示に係る電流センサによれば、導線を流れる被測定電流をより高い精度で測定することが可能である。
【0023】
図3は、本開示の一実施形態に係る電流センサ1aの構成例を示す図である。電流センサ1aは、一次導体50を流れる被測定電流を測定する装置である。一次導体50は被測定電流が流れる導線であり、図面の手前から奥へ延伸する。電流センサ1aは、一次導体50に交流電流が流れた場合と直流電流が流れた場合のいずれの場合においても、その電流値を測定することができる。電流センサ1aは、磁気コア11(11a,11b)、2つの磁電変換素子12(12a,12b)、2つのアンプ13(13a,13b)、2つの二次巻き線14(14a,14b)、抵抗15、及び電流検出部16を備える。
図3に示すように、電流センサ1aにおいて、磁電変換素子12a、アンプ13a、二次巻き線14a、及び抵抗15を接続する経路と、磁電変換素子12b、アンプ13b、二次巻き線14b、及び抵抗15を接続する経路とは、互いに並列に接続される。
【0024】
磁気コア11(11a,11b)は、磁束の通路となる環状に構成された磁性体である。磁気コア11(11a,11b)は、一次導体50の周囲を囲むように配置可能である。一次導体50を電流が流れると、電磁誘導作用により、一次導体50の電流に応じた磁界が一次導体50の周辺に形成される。磁気コア11(11a,11b)は、磁電変換素子12(12a,12b)における磁束検出の感度を高める。磁気コア11(11a,11b)は、例えば、鉄により構成してもよい。
【0025】
図3の磁気コア11は、互いに対向する2つの磁気コア11a,11bを備え、磁気コア11a,11bの間には磁電変換素子12(12a,12b)を設けるためのギャップ部(空隙)が設けられるが、磁気コア11の構成はこのようなものに限られない。例えば、磁気コア11は、1つの連続した磁性体により構成してもよいし、3つ以上の磁性体により構成してもよい。磁気コア11は、3つ以上のギャップ部を備えてもよい。磁気コア11は、複数の磁性体に分割され、例えばヒンジ機構により、これらの磁性体が開閉可能となるようにしてもよい。ヒンジ機構等により磁気コア11を開閉可能とすることで、ユーザは、電流センサ1aにより一次導体50を容易にクランプすることが可能である。
【0026】
磁電変換素子12(12a,12b)は、磁気コア11(11a,11b)の予め定められた部分の磁束を検出する磁気センサである。
図3の例では、電流センサ1aは、2つの磁気コア11a,11bの間に設けられたギャップ部に磁電変換素子12(12a,12b)を備える。磁電変換素子12(12a,12b)は、例えば、ホール素子、又は、フラックスゲートとしてもよい。2つの磁電変換素子12(12a,12b)は、磁気コア11(11a,11b)の中心から見て互いに対向するように設けられてもよい。
図3の例では、磁電変換素子12aは、磁気コア11(11a,11b)の
図3における左側に設けられ、磁気コア11(11a,11b)の左側の部分の磁束を検出する。磁電変換素子12bは、磁気コア11(11a,11b)の
図3における右側に設けられ、磁気コア11(11a,11b)の右側の部分の磁束を検出する。磁電変換素子12(12a,12b)は、それぞれ検出した磁束の強度を対応するアンプ13(13a,13b)へ出力する。
【0027】
アンプ13(13a,13b)は、対応する磁電変換素子12(12a,12b)の出力を増幅し、その磁電変換素子12の出力に応じた電流をフィードバック電流Is1,Is2として対応する二次巻き線14(14a,14b)へ出力する増幅器である。
【0028】
二次巻き線14(14a,14b)は、磁気コア11に巻回された帰還コイルである。二次巻き線14(14a,14b)は、磁気コア11に巻かれて配置され、対応するアンプ13が出力する電流を、磁気コア11の予め定められた部分の磁束を打ち消す方向に流す。例えば、二次巻き線14(14a,14b)は、対応する磁電変換素子12(12a,12b)の近傍の磁気コア11の部分に巻回され、周辺に生じた磁束を相殺するための磁束を発生させてもよい。具体的には、二次巻き線14a,14bは、対応する磁電変換素子12a,12bが中心に位置するような磁気コア11の部分に巻回されてもよい。
図3の例では、二次巻き線14aは磁気コア11(11a,11b)の左半分に巻回され、二次巻き線14bは磁気コア11(11a,11b)の右半分に巻回されている。
図3に示すように、アンプ13aから出力されたフィードバック電流Is1は二次巻き線14aを経て抵抗15へ出力される。アンプ13bから出力されたフィードバック電流Is2は二次巻き線14bを経て抵抗15へ出力される。フィードバック電流Is1,Is2は互いに並列に接続された経路を経て抵抗15へ出力されるため、抵抗15には、フィードバック電流Is1,Is2の合計値Is1+Is2が入力される。
【0029】
抵抗15は、フィードバック電流Is1,Is2の合計値Is1+Is2を検出するためのシャント抵抗器である。このように抵抗15には、複数の二次巻き線14(14a,14b)の各々を流れる電流が合わさった電流が流れる。抵抗15は、各二次巻き線14(14a,14b)と、グラウンドとの間に配置される。
【0030】
電流検出部16は、複数の二次巻き線14(14a,14b)の各々を流れる電流が合わさった電流に基づき、一次導体50を流れる被測定電流を検出する装置である。電流検出部16は、抵抗15の両端の電圧に基づき、被測定電流を検出してもよい。電流検出部16は、例えば、抵抗15の両端子間の電圧を増幅し、増幅された電圧を、一次導体50を流れる電流値に換算してもよい。ここで、電流検出部16は、抵抗15における電圧を、一次導体50が磁気コア11(11a,11b)における基準位置(例えば、磁気コア11の中央)に設けられた場合を基準として、予め定められた換算式により一次導体50の電流値に換算してもよい。
【0031】
上記のように、電流センサ1aは、磁電変換素子12a,12b毎にその近傍の磁気コア11の部分に巻回された二次巻き線14a,14bを備え、磁電変換素子12a,12bにおいて検出された磁束に応じたフィードバック電流Is1,Is2を流す。したがって、電流センサ1aは、一次導体50が磁気コア11(11a,11b)の中央からずれた位置に存在する場合であっても、二次巻き線14a,14b毎にその周辺に分布する磁束を効果的に打ち消すことができる。
【0032】
図4及び
図5は、一次導体50が磁気コア11(11a,11b)の中央からずれた位置に存在する場合における、
図3の電流センサ1aの動作を説明する図である。
図4において、一次導体50は、磁気コア11(11a,11b)の中央から右にずれた位置に存在している。そのため、一次導体50に同じ大きさの電流が流れている場合であっても、磁気コア11の左半分の領域61には、一次導体50が磁気コア11(11a,11b)の中央に位置する場合よりも小さな磁束が発生する。その結果、磁気コア11の左半分に設けられた二次巻き線14aには小さなフィードバック電流Is1が流れ、一次導体50の位置に応じて適切な負帰還電流により磁束がキャンセル(相殺)される。一方、磁気コア11の右半分の領域62には、一次導体50が磁気コア11(11a,11b)の中央に位置する場合よりも大きな磁束が発生する。その結果、磁気コア11の右半分に設けられた二次巻き線14bには大きなフィードバック電流Is1が流れ、一次導体50の位置に応じて適切な負帰還電流により磁束がキャンセルされる。一次導体50に大きな電流が流れたとしても、その電流の大きさに応じて二次巻き線14bにより大きな電流が流れるため、残留磁束が磁気コア11の飽和磁束密度に達するのを防ぐことができる。また、電流センサ1aは、フィードバック電流Is1,Is2の合計値Is1+Is2に基づき一次導体50を流れる電流を測定するため、一次導体50の位置に関わらず高い精度で一次導体50の電流を測定することが可能である。
【0033】
図5において、一次導体50は、磁気コア11(11a,11b)の中央から左にずれた位置に存在している。そのため、一次導体50に同じ大きさの電流が流れている場合であっても、磁気コア11の左半分の領域61には、一次導体50が磁気コア11(11a,11b)の中央に位置する場合よりも大きな磁束が発生する。その結果、磁気コア11の左半分に設けられた二次巻き線14aには大きなフィードバック電流Is1が流れ、一次導体50の位置に応じて適切な負帰還電流により磁束がキャンセルされる。一次導体50に大きな電流が流れたとしても、その電流の大きさに応じて二次巻き線14aにより大きな電流が流れるため、残留磁束が磁気コア11の飽和磁束密度に達するのを防ぐことができる。一方、磁気コア11の右半分の領域62には、一次導体50が磁気コア11(11a,11b)の中央に位置する場合よりも小さな磁束が発生する。その結果、磁気コア11の右半分に設けられた二次巻き線14bには小さなフィードバック電流Is1が流れ、一次導体50の位置に応じて適切な負帰還電流により磁束がキャンセルされる。また、電流センサ1aは、フィードバック電流Is1,Is2の合計値Is1+Is2に基づき一次導体50を流れる電流を測定するため、一次導体50の位置に関わらず高い精度で一次導体50の電流を測定することが可能である。
【0034】
このように、磁電変換素子12(12a,12b)は、それぞれその対応する磁気コア11の部分(例えば、領域61,62)における磁束に応じたフィードバック電流Is1,Is2を、対応する二次巻き線14(14a,14b)へ流す。このように、電流センサ1aは、磁電変換素子12(12a,12b)と二次巻き線14(14a,14b)をセットに並列動作させる。したがって、一次導体50が磁気コア11の中央からずれて位置する場合であっても、電流センサ1aは、磁気コア11の各部分に残留する磁束をほぼゼロにすることが可能となる。その結果、電流センサ1aは、磁気コア11を大型化することなく磁気コア11内の磁束を飽和させることなく、被測定電流を高い精度で測定することができる。
【0035】
なお、電流センサ1aは、磁電変換素子12、アンプ13、及び二次巻き線14を含む2つの経路が並列に接続された構成を備えるが、電流センサ1は、このような経路を2つ以上の任意の個数備えてもよい。電流センサ1は、磁電変換素子12、アンプ13、及び二次巻き線14を含むより多くの経路を備えることで、一次導体50が磁気コア11の中央からずれた場合に、磁気コア11内に生じる残留磁束をさらに効果的に打ち消すことができる。
【0036】
図6は、本開示の一実施形態に係る電流センサ1bの構成例を示す図である。電流センサ1bは、磁電変換素子12(12a~12d)、アンプ13(13a~13d)、及び二次巻き線14(14a~14d)を含む4つの経路が並列に接続された構成を備える。
【0037】
図6の構成において、一次導体50を電流が流れると、一次導体50の電流に応じた磁界が一次導体50の同心円状に形成される。4つの磁電変換素子12(12a~12d)はそれぞれ、磁気コア11(11a~11d)のギャップ部(空隙)に設けられ、磁気コア11内の予め定められた部分に発生した磁束の強度を検出する。
図6の例では、磁電変換素子12aは磁気コア11の上側の磁束を検出する。磁電変換素子12bは磁気コア11の左側の磁束を検出する。磁電変換素子12cは磁気コア11の下側の磁束を検出する。磁電変換素子12dは磁気コア11の右側の磁束を検出する。磁電変換素子12(12a~12d)は、それぞれ検出結果をアンプ13(13a~13d)へ出力する。
【0038】
アンプ13(13a~13d)はそれぞれ、対応する磁電変換素子12(12a~12d)から入力された磁束の検出結果を増幅し、フィードバック電流Is1~Is4として対応する二次巻き線14(14a~14d)へ出力する。
【0039】
二次巻き線14(14a~14d)は、対応する磁電変換素子12(12a~12d)により検出された磁気コア11内の磁束を相殺するために、磁気コア11の対応する部分に巻回される。
図6の例では、二次巻き線14aは、磁気コア11の上側に巻かれている。二次巻き線14bは、磁気コア11の左側に巻かれている。二次巻き線14cは、磁気コア11の下側に巻かれている。二次巻き線14dは、磁気コア11の右側に巻かれている。アンプ13(13a~13d)から出力されたフィードバック電流Is1~Is4は、対応する二次巻き線14(14a~14d)を経て抵抗95へ出力される。フィードバック電流Is1~Is4は互いに並列に接続された経路を経て抵抗15へ出力されるため、抵抗15には、フィードバック電流Is1~Is4の合計値Is1+Is2+Is3+Is4が入力される。
【0040】
抵抗15は、互いに並列に接続された二次巻き線14(14a~14d)とグラウンドとの間に設けられる。抵抗15の両端子間の電圧は増幅され、増幅された電圧が一次導体50を流れる電流値に換算される。
【0041】
上記のように、電流センサ1bは、磁電変換素子12a~12d毎にその近傍の磁気コア11の部分に巻回された二次巻き線14a~14dを備え、磁電変換素子12a~12dにおいて検出された磁束に応じたフィードバック電流Is1~Is4を流す。したがって、電流センサ1bは、一次導体50が磁気コア11の中央からずれた位置に存在する場合であっても、一次導体50のより詳細な位置に基づき、二次巻き線14a~14d毎にその周辺に分布する磁束を効果的に打ち消すことができる。
【0042】
図7及び
図8は、一次導体50が磁気コア11(11a~11d)の中央からずれた位置に存在する場合における、
図6の電流センサ1bの動作を説明する図である。
図7において、一次導体50は、磁気コア11(11a~11d)の中央から右にずれた位置に存在している。そのため、一次導体50に同じ大きさの電流が流れている場合であっても、磁気コア11の左半分の領域61には、一次導体50が磁気コア11(11a~11d)の中央に位置する場合よりも小さな磁束が発生する。その結果、磁気コア11の左側に設けられた二次巻き線14bには小さなフィードバック電流Is2が、上側、下側に設けられた二次巻き線14a,14cには中程度の大きさのフィードバック電流Is1,Is3が流れ、一次導体50の位置に応じて適切な負帰還電流により磁束がキャンセルされる。一方、磁気コア11の右半分の領域62には、一次導体50が磁気コア11(11a~11d)の中央に位置する場合よりも大きな磁束が発生する。その結果、磁気コア11の右側に設けられた二次巻き線14dには大きなフィードバック電流Is4が流れ、一次導体50の位置に応じて適切な負帰還電流により磁束がキャンセルされる。一次導体50に大きな電流が流れたとしても、その電流の大きさに応じて二次巻き線14dにより大きな電流が流れるため、残留磁束が磁気コア11の飽和磁束密度に達するのを防ぐことができる。また、電流センサ1bは、フィードバック電流Is1~Is4の合計値Is1+Is2+Is3+Is4に基づき一次導体50を流れる電流を測定するため、一次導体50の位置に関わらず高い精度で一次導体50の電流を測定することが可能である。
【0043】
図8において、一次導体50は、磁気コア11(11a~11d)の中央から左にずれた位置に存在している。そのため、一次導体50に同じ大きさの電流が流れている場合であっても、磁気コア11の左半分の領域61には、一次導体50が磁気コア11(11a~11d)の中央に位置する場合よりも大きな磁束が発生する。その結果、磁気コア11の左側に設けられた二次巻き線14bには大きなフィードバック電流Is2が流れ、一次導体50の位置に応じて適切な負帰還電流により磁束がキャンセルされる。一次導体50に大きな電流が流れたとしても、その電流の大きさに応じて二次巻き線14bにより大きな電流が流れるため、残留磁束が磁気コア11の飽和磁束密度に達するのを防ぐことができる。一方、磁気コア11の右半分の領域62には、一次導体50が磁気コア11(11a~11d)の中央に位置する場合よりも小さな磁束が発生する。その結果、磁気コア11の上側、下側に設けられた二次巻き線14a,14cには中程度の大きさのフィードバック電流Is1,Is3が、右側に設けられた14dには小さなフィードバック電流Is4が流れ、一次導体50の位置に応じて適切な負帰還電流により磁束がキャンセルされる。また、電流センサ1bは、フィードバック電流Is1~Is4の合計値Is1+Is2+Is3+Is4に基づき一次導体50を流れる電流を測定するため、一次導体50の位置に関わらず高い精度で一次導体50の電流を測定することが可能である。
【0044】
また、電流センサ1は、複数の二次巻き線14の各々を流れる電流に基づき、磁気コア11に対する一次導体50の位置を検出してもよい。
図9は、本開示の一実施形態に係る電流センサの構成例を示す図である。
図9において、電流センサ1cは、
図6~
図8を参照して説明した電流センサ1bの構成に加えて、電流計17(17a~17d)、及び位置検出部18を備える。
【0045】
電流計17(17a~17d)は、二次巻き線14(14a~14d)を流れるフィードバック電流Is1~Is4を測定する電流計である。
【0046】
位置検出部18は、電流計17(17a~17d)が測定した二次巻き線14a~14dの各々を流れるフィードバック電流Is1~Is4に基づき、磁気コア11に対する一次導体50の位置を検出する。磁気コア11に対する一次導体50の位置は、磁気コア11における各磁電変換素子12の位置と、フィードバック電流Is1~Is4の比とに基づき決定される。
【0047】
位置検出部18は、各フィードバック電流Is1~Is4と、磁気コア11に対する一次導体50の位置との対応関係を予め保持しておき、その対応関係を参照して、磁気コア11に対する一次導体50の位置を検出してもよい。このような構成によれば、位置検出部18は、一次導体50の位置を高速に検出することができる。電流センサ1cは、磁電変換素子12、アンプ13、及び二次巻き線14を含む経路を3つ以上備え、各二次巻き線14を流れるフィードバック電流を用いることで、このような一次導体50の位置検出を正確に行うことができる。
【0048】
以上のように、電流センサ1(1a,1b,1c)は、磁気コア11、複数の磁電変換素子12、複数の磁電変換素子12に対応して設けられた複数のアンプ13、複数の磁電変換素子12に対応して設けられた複数の二次巻き線14、及び電流検出部16を備える。電流センサ1(1a,1b,1c)において、磁気コア11は、被測定電流が流れる一次導体50の周囲を囲むように配置可能である。複数の磁電変換素子12は、磁気コア11の予め定められた部分の磁束をそれぞれ検出する。複数のアンプ13の各々は、対応する磁電変換素子12の出力を増幅してその磁電変換素子12の出力に応じたフィードバック電流を出力する。複数の二次巻き線14の各々は、磁気コア11に巻かれて配置され、対応するアンプ13が出力するフィードバック電流を対応する磁気コア11の予め定められた部分の磁束を打ち消す方向に流す。電流検出部16は、複数の二次巻き線14の各々を流れる電流が合わさった電流に基づき、被測定電流を検出する。
【0049】
このように、電流センサ1は、複数の磁電変換素子12、及び、磁電変換素子12毎にその近傍の磁気コア11の部分に巻回された複数の二次巻き線14を備え、複数の二次巻き線14から出力されるフィードバック電流の合計値に基づき、被測定電流を測定する。したがって、本開示に係る電流センサ1は、不均一に分布する磁束強度を効果的に打ち消すことができ、大型化することなく残留磁束を低減することが可能である。よって、本開示に係る電流センサ1によれば、一次導体50を流れる被測定電流をより高い精度で測定することが可能である。
【0050】
なお、複数の磁電変換素子12は、磁気コア11の中心から見て等しい角度で配置された磁気コア11の複数の部分の磁束を、予め定められた部分の磁束として検出してもよい。例えば、
図6のように、4つの磁電変換素子12(12a~12d)が設けられる場合は、磁気コア11の中心から見て90度の間隔で4つの磁電変換素子12(12a~12d)を設けてもよい。このように構成することで、電流センサ1は、複数の二次巻き線14から出力されるフィードバック電流に基づき、高い精度で被測定電流を測定することが可能である。
【0051】
また、電流センサ1(1a,1b,1c)は、複数の二次巻き線14の各々を流れる電流が合わさった電流が流れる抵抗15を備え、電流検出部16は、抵抗15の両端の電圧に基づき、被測定電流を検出する。したがって、電流センサ1は、シンプルな構成で、複数の二次巻き線14の各々を流れる電流が合わさった電流に基づき、被測定電流を検出することができる。なお、電流検出部16は、抵抗15の両端の電圧を測定するのではなく、例えば、非接触センサにより複数の二次巻き線14の各々を流れる電流が合わさった電流を測定してもよい。
【0052】
以上のように、ゼロフラックス方式の電流センサ1は、磁電変換素子12及び二次巻き線14を一対のセットとしたものを複数並列に配置し、それぞれの磁電変換素子12が検出した磁束に応じたフィードバック電流を対応する二次巻き線14に流す。したがって、電流センサ1は、磁気コア11を大型化することなく、一次導体50の位置が磁気コア11の中央からずれたとしても、残留磁束に起因した磁気飽和による測定感度低下を防ぐことができる。電流センサ1は、例えば、貫通型又はクランプ型のAC/DC(交流/直流)電流センサとして実施されてもよい。前述の電流検出部16が検出した一次導体50の電流値、及び、位置検出部18が検出した一次導体50の位置は、ディスプレイ等の表示装置、又は、任意の記憶媒体に出力されてもよい。
【0053】
本開示の実施形態例について以下に付記する。
[1]
被測定電流が流れる導線の周囲を囲むように配置可能な磁気コアと、
前記磁気コアの予め定められた部分の磁束をそれぞれ検出する複数の磁気センサと、
前記複数の磁気センサに対応して設けられた複数のアンプと、
前記複数の磁気センサに対応して設けられた複数の帰還コイルと、
前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流が合わさった電流に基づき、前記被測定電流を検出する電流検出部と、
を備え、
前記複数のアンプの各々は、対応する前記磁気センサの出力を増幅して当該磁気センサの出力に応じた電流を出力し、
前記複数の帰還コイルの各々は、前記磁気コアに巻かれて配置され、対応する前記アンプが出力する電流を、対応する前記磁気コアの予め定められた部分の前記磁束を打ち消す方向に流す、
電流センサ。
[2]
前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流が合わさった電流が流れる抵抗を更に備え、
前記電流検出部は、前記抵抗の両端の電圧に基づき、前記被測定電流を検出する、
[1]に記載の電流センサ。
[3]
前記複数の磁気センサは、前記磁気コアの中心から見て等しい角度で配置された前記磁気コアの複数の部分の磁束を、前記予め定められた部分の磁束として検出する、[1]又は[2]に記載の電流センサ。
[4]
前記複数の帰還コイルの各々を流れる電流に基づき、前記磁気コアに対する前記導線の位置を検出する位置検出部を更に備える、[1]から[3]のいずれか一つに記載の電流センサ。
[5]
前記磁気コアは開閉可能である、[1]から[4]のいずれか一つに記載の電流センサ。
【0054】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1a,1b 電流センサ
11a,11b,11c,11d 磁気コア
12a,12b,12c,12d 磁電変換素子
13a,13b,13c,13d アンプ
14a,14b,14c,14d 二次巻き線
15 抵抗
16 電流検出部
17a,17b,17c,17d 電流計
18 位置検出部
50 一次導体
61,62 領域
9a,9b 電流センサ(比較例)
91,91a,91b 磁気コア
92,92a,92b 磁電変換素子
93 アンプ
94 二次巻き線
95 抵抗
96 加算器