(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083040
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】屋内設置形冷凍機
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20240613BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
F25B49/02 560
H05K7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197325
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 颯
(72)【発明者】
【氏名】楠野 真悠
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322BA01
5E322BA03
5E322BB04
5E322EA04
5E322EA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気部品と水との直接接触を防止して水による電気部品の不具合を抑制することのできる屋内設置形冷凍機を提供する。
【解決手段】電気部品箱は、第1室に収容された第1基板と、第2室に収容された第2基板と、第2室に収容された電気部品と、箱本体の正面部に取り付けられ、正面部と電気部品との間に介在して、電気部品を正面部に固定する台座部と、を備える。箱本体は、正面部の上端に、正面部から張り出してカバー部材と重なり合う張出部を有するとともに、張出部を厚さ方向に貫通する開口部を有し、カバー部材は、張出部と重なり合う端縁部に、開口部に挿入可能であり、カバー部材を箱本体に取り付けた状態で開口部に係止される鉤状部を有し、台座部は、正面部との間に開口部に対して上下方向に重なる空間を形成して、電気部品を正面部から水平方向に離間させた状態で保持する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体形状をなし、前記多面体の各面部により包囲された第1室を形成する箱本体と、
前記箱本体に対してその正面部を覆うように着脱可能に取り付けられ、前記正面部が臨む第2室を形成するカバー部材と、を備える電気部品箱を備え、
前記電気部材箱は、
前記第1室に収容された第1基板と、
前記第2室に収容された第2基板と、
前記第2室に収容された電気部品と、
前記正面部に取り付けられ、前記正面部と前記電気部品との間に介在して、前記電気部品を前記正面部に固定する台座部と、を備え、
前記箱本体は、前記正面部の上端に、前記正面部から張り出して前記カバー部材と重なり合う張出部を有するとともに、前記張出部をその厚さ方向に貫通する開口部を有し、
前記カバー部材は、前記張出部と重なり合う端縁部に、前記開口部に挿入可能であり、前記カバー部材を前記箱本体に取り付けた状態で前記開口部に係止される鉤状部を有し、
前記台座部は、前記正面部との間に前記開口部に対して上下方向に重なる空間を形成して、前記電気部品を前記正面部から水平方向に離間させた状態で保持する、屋内設置形冷凍機。
【請求項2】
前記電気部品は、電源線を接続して、前記第1基板および前記第2基板のうち少なくとも一方に電力を供給可能に構成された電源端子台である、請求項1に記載の屋内設置形冷凍機。
【請求項3】
前記正面部は、
前記箱本体の下面部から起立して、上方へ延びる第1縦壁部と、
前記箱本体の上面部から垂下して、下方へ延びる第2縦壁部と、
前記第1縦壁部と前記第2縦壁部とを水平方向に繋ぐ横壁部と、を含み、
前記第2基板は、前記第1縦壁部に取り付けられ、
前記台座部は、前記第2縦壁部に取り付けられ、前記横壁部よりも上方に下端部を有し、前記下端部と前記横壁部との間に、前記空間から続く隙間を形成する、請求項1に記載の屋内設置形冷凍機。
【請求項4】
前記第1基板には強電部品が搭載され、
前記第2基板には主として弱電部品が搭載されている、請求項1に記載の屋内設置形冷凍機。
【請求項5】
冷媒を圧縮可能に構成された圧縮機と、
前記圧縮機による圧縮後の冷媒から放熱可能に構成された熱交換器と、を備え、
前記第1基板は、前記圧縮機を駆動するインバータ回路が実装された制御基板であり、
前記第2基板は、前記冷凍機の運転に関わる条件を設定する設定基板であって、前記冷凍機の運転状態を表示する表示部が実装され、
前記カバー部材は、前記正面部と対向して、前記表示部を前記第2室の外部から視認可能に形成された表示窓が設けられ、
前記表示窓は、その中心が前記表示部の中心に対して上方にずらして配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の屋内設置形冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、屋内設置形冷凍機に係り、特にその電気部品を収容する電気部品箱を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを制御する電気部品箱として、特許文献1には、空気調和機の運転に関わる各種電気部品を収容する電気部品箱が開示されている。具体的には、上面開口状の箱本体の内部に薄板金属製のフレームが嵌め込まれ、このフレームに形成された電気部品挿入孔にマグネットリレー等の電気部品を挿入し、フレームと箱本体の底面との間で電気部品を挟持することで、電気部品を箱本体に固定し、収容するようにした電気部品箱が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組み立てる際の都合や冷却等の目的のため、電気部品箱には開口部が設けられる場合がある。そして、開口部の存在により内外が連通した状態にあると、この開口部を介して電気部品箱の内部に水が浸入する可能性がある。内部に浸入した水は、電気部品箱の内壁を伝って移動し、内部に収容されている電気部品に接触して、漏電等、電気部品と水との接触による諸々の不具合を生じさせる原因となり得る。
【0005】
また、屋内設置形冷凍機では、室内機や遠隔操作装置を備えた空気調和機とは異なり、屋内設置形冷凍機そのものに使用者等が操作可能な操作部や表示部が設けられるのが一般的であり、操作部や表示部が実装された低電圧の基板は、保守点検等の際に作業者が接触する可能性のある強電系の電気部品とは、安全確保のために分けて収容する必要がある。一例として、手動操作の対象である電気部品、例えば、設定用の基板を、インバータ回路が実装され、高電圧が印加される基板とは分けて構成し、両者の基板を個別に収容することが想定される。
【0006】
ここで、運転に関わる条件を設定しまたは設定済みの条件を変更したりする機会を確保するため、設定基板が収まる収容部のみを開放可能に構成する場合に、取り外しの作業における効率等を考慮して着脱の容易性または迅速性を優先すれば、本体部と収容部との接合部における密閉性が損なわれ、水が内部に浸入しやすい状況が生じ得る。屋内設置形冷凍機は、屋内に設置されるため、空気調和機の室外機とは異なり、通常は雨水の侵入はない。しかし、屋内設置形冷凍機は、ドレン水が生じる各種装置に組み込まれることがある。また、屋内設置形冷凍機は冷凍サイクル部品を搭載していることから重量が大きく、機器の収納棚の下部に配置されることが多いため、上部に設置された機器等から水滴が滴下する可能性もある。このため、屋内に設置されるとしても電気部品の収容部への水の浸入に配慮した設計が必要である。
【0007】
このような実状に鑑み、本発明は、電気部品と水との直接接触を防止して水による電気部品の不具合を抑制することのできる屋内設置形冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明の実施形態に係る屋内設置形冷凍機は、多面体形状をなし、前記多面体の各面部により包囲された第1室を形成する箱本体と、前記箱本体に対してその正面部を覆うように着脱可能に取り付けられ、前記正面部が臨む第2室を形成するカバー部材と、を有する電気部品箱を備える。この電気部品箱は、前記第1室に収容された第1基板と、前記第2室に収容された第2基板と、前記第2室に収容された電気部品と、前記正面部に取り付けられ、前記正面部と前記電気部品との間に介在して、前記電気部品を前記正面部に固定する台座部と、を備える。前記箱本体は、前記正面部の上端に、前記正面部から張り出して前記カバー部材と重なり合う張出部を有するとともに、前記張出部をその厚さ方向に貫通する開口部を有し、前記カバー部材は、前記張出部と重なり合う端縁部に、前記開口部に挿入可能であり、前記カバー部材を前記箱本体に取り付けた状態で前記開口部に係止される鉤状部を有し、前記台座部は、前記正面部との間に前記開口部に対して上下方向に重なる空間を形成して、前記電気部品を前記正面部から水平方向に離間させた状態で保持する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る屋内設置形冷凍機の全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す屋内設置形冷凍機に設けられる電気部品箱の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す電気部品箱の内部構成を、箱本体の一部およびカバー部材を透視状態にして示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す電気部品箱の内部構成を、箱本体の一部およびカバー部材を取り外した状態で示す斜視図である。
【
図5】
図2に示す電気部品箱の内部構成を、箱本体の一部およびカバー部材を取り外した状態で示す正面図である。
【
図7】
図2に示す電気部品箱の、
図6に示すA-A線による断面図である。
【
図8】
図2に示す電気部品箱の、
図7に示す断面における台座部およびその周辺の構成を示す拡大図である。
【
図9】
図2に示す電気部品箱の上面図であり、
図9に示すB-B線による断面を示す。
【
図11】
図2に示す電気部品箱に備わる設定基板の表示部とカバー部材の表示窓との位置関係を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気部品箱1を備えた屋内設置形冷凍機R(以下、「冷凍機R」という)の全体構成を示す正面図である。
【0012】
本実施形態に係る冷凍機Rは、強度が高く厚みのある鉄板の折り曲げ材からなる底板4と、この底板4に夫々搭載され、固定された電気部品箱1、圧縮機2および熱交換器3と、を備える。冷凍機Rは屋内に設置されることから、風雨の対策は不要であるため、その外郭となる側板や天板は存在せず、底板4上に冷凍機Rを構成する各機器1~3等が露出した状態で設置されている。
【0013】
圧縮機2は、動力源として電動モータ(図示せず)を内蔵し、電動モータの動力により駆動して、冷媒を圧縮する。本実施形態において、圧縮機2は、ガス冷媒を圧縮し、圧縮により高温高圧となったガス冷媒を吐出する。
【0014】
熱交換器3は、縦長円柱タンク形状をなすとともに、金属製であり、内部に冷媒が流通するコイル状の熱交換用配管を収容し、その周囲が熱交換用の流水で満たされている。熱交換用配管は、冷媒配管を介して圧縮機2と接続されており、熱交換器3は、圧縮後のガス冷媒を受容し、内部を満たす流水との熱交換により冷却する。流水には、中水、工業用水や地下水等が利用される。本実施形態において、熱交換器3は、凝縮器として動作し、ガス冷媒は、熱交換器3において熱を放出して凝縮し、低温の液体に変化する。このように、冷凍機Rは、水冷冷凍機である。
【0015】
凝縮後の液冷媒は、冷却対象とする外部装置に供給され、外部装置での冷却に用いられる。冷却対象として、例えば、恒温槽または半導体等の各種電子機器の製造装置が挙げられる。冷媒は、外部装置における冷却時に気体への状態変化を生じ、ガス冷媒に変化する。冷却後のガス冷媒は、冷凍機Rに環流される。このように、冷媒は、冷凍機Rと外部装置との間を、状態変化を伴いながら循環する冷凍サイクルを形成している。。
【0016】
冷凍機Rは、圧縮機2および熱交換器3という重量物を備えるため、冷凍機Rの底板4が配置されるのは、冷凍機Rが据え付けられる施設の床面上ないし屋内設備の底面近傍の低い位置である。このため、電子部品箱1は、屋内において、冷凍機Rの使用者や保守点検等を行う作業者の視線に関して水平よりも下方、つまり、使用者等が起立時に見下ろす位置に設置される。
【0017】
電気部品箱1の外観を示す
図2中、電気部品箱1の正面が向く方向を矢印Df、背面が向く方向を矢印Dr、右側面が向く方向を矢印Dr、左側面が向く方向を矢印Dl、上面が向く方向を矢印Du、下面が向く方向を矢印Ddで夫々示す。
【0018】
図3および
図4は、電気部品箱1の内部構成を示し、
図4は、電気部品箱1の箱本体11の上面部11uおよび右側面部11saに加え、カバー部材12を取り外した状態を示す。
【0019】
図2に示すように、電気部品箱1は、多面体形状、本実施形態では、縦長の直方体となる六面体形状の箱状をなす。電気部品箱1は、冷凍機Rの運転に関わる各種電気部品として、制御基板111および設定基板121を収容するとともに、これらの基板111、121その他の電気部品への電力供給のための電源端子台122を収容する。
【0020】
図3および
図4に示すように、電気部品箱1は、箱本体11と、カバー部材12と、を備える。
【0021】
電気部品箱1は、その内部が、箱本体11により包囲される空間(以下「第1部品収容室」という)c1と、箱本体11の正面部11fとカバー部材12とにより包囲される空間(以下「第2部品収容室」という)c2と、に区画される。つまり、第1部品収容室c1および第2部品収容室c2は、後に述べる箱本体11の正面部11fを境界として互いに隔てられた状態にある。本実施形態において、箱本体11の内部は、発熱量が比較的大きい強電部品を搭載する制御基板111やその関連部品の収容に用いられ、カバー部材12の内部は、発熱量が比較的小さい弱電部品を主として搭載する設定基板121等の制御系電気部品の収容に用いられる。制御基板111には、100Vから200Vの単相または三相の商用電源電圧が印加され、設定基板121には、商用交流電源から降圧して生成した直流12Vおよび5Vが印加される。本実施形態では、設定基板121上に設けた降圧用のトランスMを用いてこれらの直流電圧を生成しているが、制御基板111で生成された低圧直流電圧を設定基板121が受電するようにしても良い。制御基板111と設定基板121とは、その基板上のコネクタCNを介して複数の配線で接続されており、相互に電力供給や制御信号の授受が可能である。第1部品収容室c1は、本実施形態に係る「第1室」に相当し、第2部品収容室c2は、本実施形態に係る「第2室」に相当する。
【0022】
箱本体11は、上面部11uと、下面部11dと、上面部11uおよび下面部11dを互いに繋ぐ前後左右の各面部11f、11r、11sa、11sbと、を有する多面体形状をなす。ここで、多面体形状とは、複数の平面を結合して構成される形状をいう。本実施形態において、箱本体11は、上面部11u、下面部11d、正面部11f、背面部11r、右側面部11saおよび左側面部11sbを有する概略六面体形状をなし、正面部11fは、互いに水平方向にずらして形成された上下2つの縦壁部11f1、11f2を、横壁部11f3により水平方向に繋いだ段差形状をなす(
図3)。2つの縦壁部のうち一方、つまり、下側の第1縦壁部11f1は、箱本体11の下面部11dから起立して、鉛直上方へ延び、横壁部11f3の外方側端縁に繋がり、他方の縦壁部、つまり、上側の第2縦壁部11f2は、箱本体11の上面部11uから垂下して、鉛直下方へ延び、横壁部11f3の内方側端縁に繋がっている。
【0023】
これに対し、正面部11f以外の箱本体11の各面部、つまり、上面部11u、下面部11d、背面部11r、右側面部11saおよび左側面部11sbは、いずれも一つの平面部と各面部を重ね合わせるために折り曲げられた鍔状部Fとを備える。上面部11uは、正面部11f(具体的には、第2縦壁部11f2)の上端縁と背面部11rの上端縁とを繋ぎ、下面部11dは、正面部11f(具体的には、第1縦壁部11f1)の下端縁と背面部11rの下端縁とを繋ぐ。さらに、右側面部11saは、正面部11fの右端縁と背面部11rの右端縁とを繋ぎ、左側面部11sbは、正面部11fの左端縁と背面部11rの左端縁とを繋ぐ。より具体的には、電気部品箱1を極力少ない部品で形成するために、正面部11f、下面部11d、背面部11rおよび左側面部11sbは、一枚の第1板金部材を折り曲げて成形し、上面部11uおよび右側面部11saは、一枚の第2板金部材を折り曲げて成形することにより構成する。これにより、箱本体11の外郭は、正面部11f、下面部11d、背面部11rおよび左側面部11sbを形成する第1板金部材と、上面部11uおよび右側面部11saを形成する第2板金部材と、の2枚の成形された板金により構成される。第1板金部材と第2板金部材とは、背面部11rと左側面部11sbとをネジ止めにより固定するとともに、正面部11fと左側面部11sbとをネジ止めにより固定することで、箱状に形成される。形成後の電気部品箱1は、下面部11dの四隅にあるネジ孔A1を用いて底板4にネジ止めにより固定される。下面部11dを除く各面部11f、11r、11u、11saおよび11sbには、外部からの配線接続口や必要な部品を箱本体11の外周に固定するための開口部も設けられている。
【0024】
箱本体11の内部には、これらの各面部11u、11d、11f、11r、11sa、11sbにより包囲された空間として第1部品収容室c1が形成され、第1部品収容室c1には、制御基板111およびリアクタT等の強電部品が収容される。
【0025】
制御基板111は、インバータ回路が実装された回路基板であり、冷凍機Rの圧縮機2を制御する。具体的には、制御基板111は、後に述べる設定基板121により設定される条件に従って、設定基板121からの指示に応じてインバータ回路を動作させて圧縮機2に備わる電動モータの回転速度を制御し、圧縮機2の冷媒吐出流量を調整する。制御基板111は、本実施形態に係る「第1基板」に相当する。
【0026】
制御基板111は、インバータ回路を構成する要素として、複数のコンデンサ1111と、複数のノイズフィルタ1112と、を備え、その四隅に配置されたスペーサを介して左側面部11sbに対して平行な状態で固定されている。制御基板111と左側面部11sbとの隙間は、例えば、1cm程度である。コンデンサ1111は、整流後の電源電圧を平滑化する平滑コンデンサとして機能し、制御基板111に搭載する必要はなく、第1部品収容室c1のいずれの位置に配置することも可能である。同様に、ノイズフィルタ1112も、制御基板111に限らず、制御基板111自体とは別に設けられる基板に搭載することが可能である。また、リアクタTは、力率を向上させるためにインバータ回路と交流電源との間に挿入される大型の重量物であり、第1部品収容室c1において、制御基板111の上方で左側面部11sbにネジ止めにより固定されている。制御基板111に搭載のインバータ回路、コンデンサ1111およびリアクタTは、いずれも強電部品であり、その発熱量も大きい。
【0027】
箱本体11の背面部11rには、ファン112が装着されており、ファン112により形成される気流を箱本体11の内部に流通させることで、第1部品収容室c1に収容されている電気部品を冷却可能である。
【0028】
第1部品収容室c1の冷却促進および第1部品収容室c1に収容されている電気部品の簡易的な保守点検等のため、右側面部11saには、複数の通気孔が形成された通気パネル113が、右側面部11saの残余部分に対して着脱可能に取り付けられている。
【0029】
さらに、
図5から分かるように、箱本体11の左側面部11sbには、基板冷却用のヒートシンク114が装着されており、制御基板111のインバータ回路のスイッチング素子に生じた熱をこのヒートシンク114を介して外部へ放出可能である。箱本体11の左側面部11sbは、ヒートシンク114が箱本体11を貫通して、外側に露出できる開口部を備えている。
【0030】
図3等に示すように、カバー部材12は、箱本体11に対して着脱可能に形成され、箱本体11の正面部11fに取り付けられている。
図3および
図6に示すようにカバー部材12は、正面側端面部12fと、上面側端面部12uと、側面側端面部12sと、を備える。上面側端面部12uは、正面側端面部12fの上側の端縁から正面側端面部12fに対して垂直に延在し、側面側端面部12sは、正面側端面部12fの右側の端縁から正面側端面部12fに対して垂直に延在有する(
図2)。本実施形態では、正面側端面部12fが四辺形形状を有する一方、側面側端面部12sは、箱本体11との接合部の端縁が箱本体11の正面部11f(11f1、11f2、11f3)に沿った形状を有し、側面視でL字状をなすことで、カバー部材12が箱本体11に取り付けられた状態で、カバー部材12の正面側端面部12fは、箱本体11の正面部11fに対して平行に配置される。
【0031】
本実施形態では、箱本体11に、カバー部材12との接合部全体に亘って鍔状部Fが形成される。
【0032】
図2および
図7に示すように、カバー部材12は、一枚の板金部材を折り曲げて成形され、さらに、上面側端面部12uの左右方向略中央において、上面側端面部12uに対して垂直に下方に折り曲げられた鉤状部Hが、上面側端面部12uと一体に形成されている。一方、箱本体11の正面部11fには、正面部11fをその上端でカバー部材12に向けて折り曲げて鍔状部Fが成形され、鍔状部Fには、鉤状部Hが挿入可能な開口部hが設けられている。
【0033】
図6および
図7に示すように、鍔状部Fは、箱本体11の外表面と略面一となるように、正面部11f(11f1、11f2)から起立した状態で形成されている(
図6)。鉤状部Hは、カバー部材12のうち、箱本体11の上面部11uに接合する端面部、具体的には、上面側端面部12uに、この端面部12uに対して垂直な方向に折り曲げて形成されている(
図7)。ここに、箱本体11の開口部hとカバー部材12の鉤状部Hとにより、箱本体11とカバー部材12との係合部が形成される。
【0034】
カバー部材12は、鉤状部Hを箱本体11の開口部hに挿入係止させることにより箱本体11に対して仮止めされ、箱本体11に対する相対位置が確定される。ここで、カバー部材12の正面側端面部12fには、その下端にネジ孔A2が設けられ、箱本体11の下面部11dには、その正面側端縁部に、鉛直方向に立ち上げられた受け部B1が設けられており(
図4)、仮止めの後、カバー部材12のネジ孔A2を箱本体11の受け部B1に合わせ、両者をネジA3によりネジ止めすることにより、カバー部材12が箱本体11に固定される。カバー部材12は、保守点検等の必要に応じてネジA3を緩め、鉤状部Hを開口部hから外すことにより取り外すことが可能である。このように、使用者等により頻繁に着脱される可能性があるカバー部材12は、1本のネジのみにより箱本体11に固定されており、箱本体11に対し、極めて容易に取り付けおよび取り外すことが可能である。
【0035】
図3および
図4に示すとおり、箱本体11の正面部11fとカバー部材12のそれぞれの端面部12f、12u、12sとにより包囲される第2部品収容室c2には、設定基板121および電源端子台122が収容されている。設定基板121は、制御基板111と同様に、その四隅にスペーサが配置され、正面部11fとの間に所定の、例えば、1cm程度の隙間を空けて、正面部11fに対して平行な状態で固定されている。
【0036】
設定基板121は、冷凍機Rの運転に関わる条件を設定する図示しない入力部を備えるとともに、その条件に基づき制御基板111に各種の運転指示を出力するマイクロコントローラ等のCPUを備える。設定基板121は、本実施形態に係る「第2基板」に相当する。
【0037】
さらに、設定基板121は、その表面に、設定された条件および冷凍機Rの運転状態を表示する表示部1211を備える。表示部1211に表示される運転状態には、冷凍機Rに生じた異常を知らせるためのエラーコードが含まれる。エラーコードは、後に述べる
図10に示すように、例えば、「Err」等の異常の発生を示す表示と、「E50」等の異常の内容を示す表示と、を含む。本実施形態において、設定基板121は、箱本体11の正面部11f、具体的には、正面部11fの第1縦壁部11f1に対し、正面部11fに対して平行に縦置きの状態で取り付けられている。冷凍機Rの使用者や冷凍機Rの保守点検等を行う作業者は、箱本体11からカバー部材12を取り外すことで、設定基板121に正対する状態で入力部を操作し、冷凍機Rの運転条件を設定しまたは既に設定済みの条件を変更することが可能である。
【0038】
表示部1211は、例えば、設定基板121に実装された6個の7セグメントLEDにより構成される(
図4)。第2部品収容部C2は、箱本体11の正面部11fとカバー部材12とにより包囲されているため、本体暗い状態にあるが、表示部1211に発光素子であるLEDを用いることで、表示部1211の表示を外部から容易に視認することが可能である。
【0039】
電源端子台122は、制御基板111、設定基板121および電気部品箱1に収容される他の電気部品に電力を供給する端子台であり、商用電源が接続される。電源端子台122を介して電力が供給される対象には、以上に加えてファン112が含まれる。電源端子台122は、電力供給用の電源線(図示せず)が接続される端子部、例えば、三相用の3つの端子部122aを備える(
図5、
図7)。外部電源に接続された電源線を第2部品収容部C2の内部に引き込み、電源端子台122の端子部122aに接続することで、その端止部112aに接続された電気部品に対して給電可能な状態となる。設定基板121にはトランスM、コネクタCNおよび整流回路その他の電気部品が搭載され、電源電圧をトランスM等により降圧した低圧直流電圧が他の電気部品に供給される。
【0040】
図7および
図8に示すように、電源端子台122は、箱本体11の正面部11fに対し、台座部123を介して取り付けられている。本実施形態において、電源端子台122は、正面部11fの第2縦壁部11f2に取り付けられ、設定基板121の上方に配置されている。台座部123は、電源端子台122を載置する平坦部(以下「載置部」という)に対して垂直な横断面において概略コ字状をなして、載置部の左右にL字状の脚部123aを有し、それら左右の脚部123aがネジ等の固定部材により第2縦壁部11f2に固定され、載置部が第2縦壁部11f2に対して平行な状態で取り付けられている。
図7および
図8に示すように、台座部123は、脚部123aの間に位置する載置部の裏側、つまり、箱本体11の正面部11f(第2縦壁部11f2)との間に空間sを形成し、これにより、電源端子台122をカバー部材12の内部において第2縦壁部11f2から水平方向におよそ1cm程度離間した状態で保持する。台座部123の裏側に形成される空間sは、箱本体11の正面部11fの上端に折り曲げ形成された鍔状部Fの開口部hに対し、上下方向に重なる位置に配置され、これにより、電源端子台122は、開口部hを上方から鉛直方向にみた状態で、開口部hに対して正面側にずれた位置に設けられている。
【0041】
本実施形態において、台座部123は、脚部123aや電源端子台122の載置部を含めて一枚の金属製の板材を適宜の箇所で折り曲げることにより形成されている。
【0042】
さらに、
図5および
図7に示すように、台座部123は、箱本体11の正面部11fに取り付けられた状態で、正面部11fのうち、横壁部11f3よりも上方で集結し、換言すれば、横壁部11f3よりも上方に下端部を有する。これにより、台座部123の下端部と箱本体11の横壁部11f3との間に、台座部123の裏側の空間sから続く隙間gが形成される。
【0043】
以上の構成からなる冷凍機Rの電気部品箱1において、外部から水が浸入する可能性があるのは、箱本体11の天井面に位置する開口部hである。台座部123の裏側の空間sおよび台座部123と横壁部11f3との隙間gは、開口部hから第2部品収容室c2の内部に浸入した水が流れる一続きの通水路を形成する。内部に浸入した水は、空間sを通過して隙間gから出た後、正面部11fの横壁部11f3から第1縦壁部11f1に至り、さらに、設定基板121の裏側を第1縦壁部11f1を伝って流れ、カバー部材12のうち、正面側端面部12fの下端縁が底板4との間に形成する隙間を介して第2部品収容室c2から排出される。したがって、万が一、開口部hから電気部品箱1に水が浸入したとしても、内部の電気部品、具体的には、設定基板111および電源端子台122と接触することなく外部に排出され、冷凍機Rに悪影響を与えることが回避される。
【0044】
続いて、
図3および
図10を参照して、本実施形態に係る電気部品箱1に備わる設定基板121の表示部1211とカバー部材12の表示窓Wとの関係について説明する。
【0045】
図3および
図10に示すように、カバー部材12は、箱本体11の正面部11fに対向する平坦な正面側端面部12fに、設定基板121の表示部1211をカバー部材12の外部から視認可能に形成された表示窓Wを有する。表示窓Wは、カバー部材12の正面側端面部12fに長円または楕円形状に形成された厚さ方向の貫通口と、この貫通口を塞ぐようにネジ等の固定部材で正面部11fの内側から固定された透明な窓部材124と、により構成されている。設定基板121の表示部1211には、正常時においては冷凍サイクルの高低圧圧力や温度が表示され、故障時においては先に述べたように異常が発生した事実と異常の内容とを示すエラーコード等が表示される。
【0046】
特に
図10に示すように、表示窓Wは、設定基板121の表示部1211に対して上方にずらして、具体的には、表示窓Wの上下方向の中心CNTaが表示部1211の上下方向の中心CNTbよりも上方に位置するように配置されている。本実施形態において、表示部1211は、複数のセグメントLED、例えば、6つの7セグメントLED1211a、1211bを上下2段に3個ずつ配置して構成され、表示窓Wは、表示部1211に正対する位置よりも、下段に並ぶセグメントLED1211bの高さに略一致する寸法Xだけ上方にずらして配置されている。
【0047】
これにより、上段に並ぶセグメントLED1211aについては水平方向にみた状態で表示窓Wの枠に収まる一方、下段に並ぶセグメントLED1211bについては表示窓Wから外れ、カバー部材12の正面側端面部12fの裏側に隠れた状態にある。下段に並ぶセグメントLED1211bは、床面に近い下方に配置される冷凍機Rの表示部1211を斜め上方から見下ろした状態で表示窓Wを介して全体を視認することが可能である。他方で、より重要な情報が表示される上段のセグメントLED1211aについては使用者等の視線の方向によらず、換言すれば、斜め方向であっても水平方向であっても確認することが可能な状態にあり、重要な情報の迅速な認識を促すことができる。
【0048】
ここで、どのような方向からも表示部1211を視認できるように表示部1211を表示窓Wに近接させて配置できれば良いが、本実施形態のように設定基板121に背高な部品であるトランスMやコネクタCNが実装される場合は、少なくともこれらの背高な実装部品の高さ分だけは空間が必要となり、このような回路基板構成においては表示部1211を表示窓Wに近接させることが困難である。また、表示部1211を別の基板に搭載し、表示窓Wに近接させて設置することも考えられるが、その場合は、設定基板121とは別に表示用の基板を設けることが必要となり、その取り付けや制御基板121との配線接続等が面倒で、部品点数も増加してしまうという弊害を伴う。
【0049】
本実施形態に係る電気部品箱1は、以上の構成を有する。以下に、本実施形態により得られる効果について説明する。
【0050】
第1に、開口部hを通じてカバー部材12の内部に進入した水は、主に箱本体11の正面部11fを伝って重力方向に流れ落ちる。ここで、正面部11fに台座部123を取り付け、カバー部材12の内部、つまり、第2部品収容室c2に収容される電気部品、本実施形態では、電源端子台122をこの台座部123を介して正面部11fに固定し、正面部11fから離間させた状態で保持することで、正面部11fと台座部123との間の空間s、換言すれば、台座部123の裏側の空間sを通水路として利用し、正面部11fを伝って流れ落ちる水がこの通水路を通過するようにして、電気部品に接触する事態を抑制することが可能となる。
【0051】
換言すれば、開口部hを通過した水がカバー部材12の内部を流れ落ちる通水路から、電気部品を外して配置することが可能となる。これにより、電気部品と水との接触を原因とする電気部品の不具合、例えば、漏電または電気部品の故障を抑制することができる。
【0052】
第2に、箱本体11において、正面部11fの上端に、正面部11fから張り出すように設けられた張出部、本実施形態では、上面部11uから略面一に連なる鍔状部Fを設け、カバー部材12の鉤状部Hを係止させる開口部hをこの鍔状部Fに形成することで、開口部hを介してカバー部材12の内部に侵入した水が、制御基板111を含む強電部品が収容されている箱本体11の内部、つまり、第1部品収容室c1へ浸入して、それらの強電部品に接触する事態を極力回避することが可能となる。
【0053】
第3に、台座部123により電源端子台122を固定し、電源端子台122を介して制御基板111および設定基板121に電力を供給可能に構成したことで、開口部hを介してカバー部材12の内部に浸入した水の電源端子台122との接触を抑制し、水との接触を原因として電源端子台122に漏電等が発生する事態を抑制するとともに、これらの基板111および121に生じる不具合を回避し、冷凍機Rの動作の安定を図ることが可能となる。
【0054】
第4に、箱本体11の正面部11fに第1縦壁部11f1、第2縦壁部11f2および横壁部11f3を形成し、設定基板121を第1縦壁部11f1に空間を空けて取り付ける一方、台座部123を第2縦壁部11f2に取り付けることで、開口部hからカバー部材12の内部に浸入し、第2縦壁部11f2を伝って流れまたは開口部hから滴り落ちる水を、第1縦壁部11f1と第2縦壁部11f2とを繋ぐ横壁部11f3に貯留し、第1縦壁部11f1ないし設定基板121へ向かう水の流れを阻害して、設定基板121に水が接触する事態を抑制することが可能となる。
【0055】
そして、台座部123の下端部と横壁部11f3との間に、台座部123の裏側の空間sから続く隙間gを形成することで、空間sに存在する水をこの隙間gから良好に排出し、空間sに過度な水が溜まって通水路に滞留が生じる事態を回避することが可能となる。
【0056】
なお、外部からの水は、開口部hを介してカバー部材12の内部に侵入するほか、箱本体11の上面部11uの内面(つまり、第1部品収容室c1に向く下面)と、正面部11fの上端、具体的には、上端に形成された鍔状部Fと、の隙間を介して正面部11fの背面側、つまり、箱本体11の内部に僅かに浸透してくる可能性もあるが、正面部11fの背面部分には電気部品が全く配置されておらず、固定されてもいないため、万一背面側に水が流れ出たとしても、それが問題となることはない。
【0057】
第5に、設定基板121に表示部1211を設けるとともに、カバー部材12にこの表示部1211を外部から視認可能とする表示窓Wを設け、表示窓Wを、その中心CNTaが表示部1211の中心CNTbよりも上方に位置するように、表示部1211に対して上方にずらして配置することで、電気部品箱1が低い位置に設置され、表示部1211を水平方向には目視することが困難な状況にあっても下方に設置される冷凍機Rを使用者等が上方から見下ろすことで、良好に視認することが可能となる。これにより、使用者等に対し、表示部1211を確認するために大きく腰を屈めるといった無理な動作を強いることが回避される。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
R…冷凍機、1…電気部品箱、2…圧縮機、3…熱交換器、4…底板、11…箱本体、11u…箱本体の上面部、11r…箱本体の下面部、11f…箱本体の正面部、11f1…第1縦壁部、11f2…第2縦壁部、11f3…横壁部、11r…箱本体の背面部、11sa…箱本体の右側面部、11sb…箱本体の左側面部、111…制御基板(第1基板)、112…ファン、113…通気パネル、114…ヒートシンク、12…カバー部材、12u…カバー部材の上面側端面部、12f…カバー部材の正面側端面部、12s…カバー部材の側面側端面部、121…設定基板(第2基板)、1211…表示部、122…電源端子台(電気部品)、123…台座部、124…窓部材、c1…第1部品収容室(第1室)、c2…第2部品収容室(第2室)、F…鍔状部、H…鉤状部、W…表示窓、h…開口部、CNTa…表示窓の中心、CNTb…表示部の中心、T…リアクタ、M…トランス、CN…コネクタ。