(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083041
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ストレス推定装置、ストレス推定システム、ストレス推定方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
A61B5/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197326
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502054196
【氏名又は名称】学校法人武蔵野大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 圭子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 小春
(72)【発明者】
【氏名】中西 崇文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 龍太郎
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ06
4C038PS05
(57)【要約】
【課題】対象者に発生する可能性のあるストレスを推定する技術を提供すること。
【解決手段】対象者の予定を示すスケジュール情報を取得する取得部と、前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する推定部と、を備えたストレス推定装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の予定を示すスケジュール情報を取得する取得部と、
前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する推定部と、
を備えたストレス推定装置。
【請求項2】
前記ストレス度は、心拍数およびR-R間隔から定まるリラックス度、RMSSD(Root Mean Square of the Successive Differences)、または心拍平均にもとづく請求項1に記載のストレス推定装置。
【請求項3】
前記スケジュール情報は、予定が実行される日付、予定が実行される時間帯、予定の内容、予定が実行される場所、および予定をともする人物のいずれかを示す情報を含む請求項1または請求項2に記載のストレス推定装置。
【請求項4】
推定されたストレス度を示す画像を表示する表示制御部を備えた請求項1または請求項2に記載のストレス推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記スケジュール情報を入力して、ストレス度を出力するように構成された学習済みモデルを用いて前記対象者のストレス度を推定する請求項1または請求項2に記載のストレス推定装置。
【請求項6】
ストレス推定装置と、可動部を備えるロボットとを含むストレス推定システムであって、
前記ストレス推定装置は、
対象者の予定を示すスケジュール情報を取得する取得部と、
前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する推定部と、
推定されたストレス度を前記ロボットに出力する送信部と、
を備え、
前記ロボットは、
前記ストレス推定装置が出力したストレス度を受信する受信部と、
受信されたストレス度に応じて前記可動部を可動させる可動制御部と、
を備えたストレス推定システム。
【請求項7】
対象者の予定を示すスケジュール情報を取得し、
前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する、
ストレス推定方法。
【請求項8】
コンピュータを、
対象者の予定を示すスケジュール情報を取得する取得部と、
前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する推定部と、
して機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレス推定装置、ストレス推定システム、ストレス推定方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の感情を推定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、Webページから算出される特徴量と、Webページの閲覧期間中に取得されたユーザの生体信号の特徴量とに基づいて、ユーザが持った感情の種類を表す情報を推定結果として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように推定されたユーザの感情は、ユーザの生体信号に基づく感情であるからユーザ自身の身体の状態を表しているものといえる。近年では、ストレス社会と呼ばれるように日常生活においても多くのストレスが発生する。そのため、人によっては、知らず知らずのうちにストレスを抱え込んでしまい、気持ちが落ち込んでしまうことも考えられる。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、対象者に発生する可能性のあるストレスを推定する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、対象者の予定を示すスケジュール情報を取得する取得部と、前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する推定部と、を備えたストレス推定装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記のストレス推定装置であって、前記ストレス度は、心拍数およびR-R間隔から定まるリラックス度、RMSSD(Root Mean Square of the Successive Differences)、または心拍平均にもとづく。
【0008】
本発明の一態様は、上記のストレス推定装置であって、前記スケジュール情報は、予定が実行される日付、予定が実行される時間帯、予定の内容、予定が実行される場所、および予定をともする人物のいずれかを示す情報を含む。
【0009】
本発明の一態様は、上記のストレス推定装置であって、推定されたストレス度を示す画像を表示する表示制御部を備えた。
【0010】
本発明の一態様は、上記のストレス推定装置であって、前記推定部は、前記スケジュール情報を入力して、ストレス度を出力するように構成された学習済みモデルを用いて前記対象者のストレス度を推定する。
【0011】
本発明の一態様は、上記のストレス推定装置であって、前記心拍変動パラメータを用いて、前記対象者のストレス度合いを表す感情を推定する感情推定部をさらに備え、前記感情推定部は、前記心拍変動パラメータを入力して、感情の情報を出力するように構成された学習済みモデルを用いて前記対象者の感情を推定する。
【0012】
本発明の一態様は、ストレス推定装置と、可動部を備えるロボットとを含むストレス推定システムであって、前記ストレス推定装置は、対象者の予定を示すスケジュール情報を取得する取得部と、前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する推定部と、推定されたストレス度を前記ロボットに出力する送信部と、を備え、前記ロボットは、前記ストレス推定装置が出力したストレス度を受信する受信部と、受信されたストレス度に応じて前記可動部を可動させる可動制御部と、を備えたストレス推定システムである。
【0013】
本発明の一態様は、対象者の予定を示すスケジュール情報を取得し、前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する、ストレス推定方法である。
【0014】
本発明の一態様は、コンピュータを、対象者の予定を示すスケジュール情報を取得する取得部と、前記対象者に身に付けられた生体センサで取得された前記対象者の生体に関する生体データにもとづいて、前記スケジュール情報に示される予定実行時の前記対象者のストレス度を推定する推定部と、して機能させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、対象者に発生する可能性のあるストレスを推定する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態におけるストレス推定システムのシステム構成を表す構成図である。
【
図2】ストレス推定装置の具体的な構成を示す図である。
【
図5】リラックス度の変化と予定の内容や時間帯を示す図である。
【
図6】RMSSDの変化と予定の内容や時間帯を示す図である。
【
図7】心拍平均の変化と予定の内容や時間帯を示す図である。
【
図9】ストレス推定装置の表示部に表示される予定入力画面を示す図である。
【
図10】ストレス推定装置の表示部に表示されるカレンダー表示画面を示す図である。
【
図11】ストレス推定装置の表示部に表示されるストレス一覧表示画面を示す図である。
【
図12】ストレス推定装置の表示部に表示されるストレス警告画面を示す図である。
【
図13】ストレス推定装置の学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】ストレス推定装置の推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】ストレス推定装置のストレス一覧表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】ストレス推定装置の警告画面表示処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17】ストレス推定装置とロボットとが連携する処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図18】ロボット20の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(概要)
本発明では、まず生体データの取得対象となる人物(以下「対象者」という。)の生体データを用いて、対象者の生体データを取得する。生体データからストレス度を求める。ストレス度は、自律神経系(例えば、交感神経及び副交感神経)の活動を表す指標である。ストレス状態とは、交感神経が緊張状態である状態を表し、リラックス状態とは、副交感神経が緊張状態である状態を表す。以下の説明では、ストレス度として、心拍数およびR-R間隔から定まるリラックス度、RMSSD(Root Mean Square of the Successive Differences)、または心拍平均を用いる。
以下、上記処理を実現するための具体的な構成について説明する。
【0018】
図1は、実施形態におけるストレス推定システム100のシステム構成を表す構成図である。ストレス推定システム100は、生体センサ10、ロボット20、およびストレス推定装置30を備える。生体センサ10と、ストレス推定装置30とは、有線又は無線により接続される。ロボット20と、ストレス推定装置30とは、有線又は無線により接続される。無線通信は、例えば短距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標))であってもよい。なお、
図1では、生体センサ10およびロボットの数がそれぞれ1つの場合を示しているが、ストレス推定システム100には、2つ以上の生体センサ10およびロボット20が含まれていてもよい。また、ストレスの推定は、生体センサ10およびストレス推定装置30があれば可能である。したがって、ストレス推定システム100は、ロボット20を除く構成であってもよい。
【0019】
生体センサ10は、対象者の生体データを取得する。生体センサ10は、取得した生体データに、生体データが取得された日時の情報を対応付けてストレス推定装置30に送信する。生体データは、対象者の生体に関する情報であり、例えば対象者の心拍数、心拍の波形を示すデータ(例えば、心電図)、体温、音声の出力レベル、血圧、脈拍等である。生体センサ10は、ウェアラブルなセンサであり、例えばシャツ型のセンサであってもよいし、時計型であってもよい。
【0020】
ストレス推定装置30は、生体センサ10によって取得された生体データにもとづいて、ストレス度を推定する。ストレス推定装置30は、例えばスマートフォン、携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン等の情報処理装置を用いて構成される。ロボット20は、ヒト型ロボットであり、手、足などの可動部を備える。ロボット20は、ストレス推定装置30が出力したストレス度を受信すると、受信されたストレス度に応じて可動部を可動させる。
【0021】
図2は、ストレス推定装置30の具体的な構成を示す図である。ストレス推定装置30は、操作部31、表示部32、通信部33、記憶部34及び制御部35を備える。
【0022】
操作部31は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、タッチパネル、ボタン等の既存の入力装置を用いて構成される。操作部31は、ユーザの指示をストレス推定装置30に入力する際にユーザによって操作される。操作部31は、入力装置をストレス推定装置30に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、操作部31は、入力装置においてユーザの入力に応じて生成された入力信号をストレス推定装置30に入力する。
【0023】
表示部32は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部32は、例えば、推定されたストレス度に関する情報などを表示する。表示部32は、画像表示装置をストレス推定装置30に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部32は、ストレス推定装置30を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0024】
通信部33は、他の装置との間で通信を行う。例えば、通信部33は、生体センサ10およびロボット20との間で通信を行う。通信部33は、生体センサ10から送信された生体データを受信する。通信部33は、ストレス度をロボット20に送信する。
【0025】
記憶部34には、アプリケーションプログラム341、スケジュール情報342、生体データ343、および推定結果344が記憶されている。アプリケーションプログラム341は、制御部35により実行されるプログラム(例えば、ストレス度を推定するためのプログラム)である。制御部35によりアプリケーションプログラム241が実行されることにより、ストレス推定装置30のユーザは、ストレス度推定サービスを利用することが可能になる。スケジュール情報342は、対象者の予定を示す情報である。生体データ343は、生体センサ10から得られた対象者の生体データである。推定結果344は、予定ごとに推定されたストレス度を示すデータである。このうちのスケジュール情報342と推定結果344の詳細は後述する。
【0026】
制御部35は、ストレス推定装置30全体を制御する。制御部35は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部35は、アプリケーションプログラム341を実行することによって、取得部351、推定部352、表示制御部353、および出力部354の機能を実現する。
【0027】
取得部351、取得部351、推定部352、表示制御部353、および出力部354のうち一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)、FPGAなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記憶媒体である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0028】
取得部351、推定部352、表示制御部353、および出力部354の機能の一部は、予めストレス推定装置30に搭載されている必要はなく、追加のアプリケーションプログラムがストレス推定装置30にインストールされることで実現されてもよい。
【0029】
取得部351は、対象者の予定を示すスケジュール情報を取得する。例えば、取得部351は、対象者による操作部31の操作により入力されたスケジュール情報を取得する。または、取得部351は、通信部33によってスケジュール情報を受信したものを取得してもよい。推定部352は、対象者に身に付けられた生体センサ10で取得された対象者の生体に関する生体データにもとづいて、スケジュール情報に示される予定実行時の対象者のストレス度を推定する。具体的に、推定部352は、スケジュール情報を入力して、ストレス度を出力するように構成された学習済みモデルを用いて対象者のストレス度を推定する。表示制御部353は、推定されたストレス度を示す画像を表示部32に表示する。出力部354は、推定されたストレス度をロボット20に出力する。
【0030】
次に、スケジュール情報342と推定結果344の詳細について説明する。
図3は、上述したスケジュール情報342の一例を示す図である。スケジュール情報342は、日付、時間帯、内容、場所、および人物で構成される。スケジュール情報342に含まれる日付、時間帯、内容、場所、および人物を以下の説明では予定パラメータと表現することがある。
図3に示されるように、スケジュール情報342は、各予定に関するいくつかの項目が設けられた情報である。
【0031】
日付は、予定が実行される日付(yyyymmdd)を示す。時間帯は、予定が開始される時刻(hhmm)と予定が終了する時刻(hhmm)により予定の時間帯を示す。予定の内容は、予定がどのようなものかを示す。場所は、予定が実行される場所を示す。人物は、予定をともする人物を示す。例えば、
図3に示される最も上のレコードは、2023年1月17日の10時から12時において、コーディングが予定されており、場所が1号館研究室で、予定をともにする人物がいないことを示す。また、
図3に示される上から3番目のレコードは、2023年1月17日の13時から14時30分において、食事が予定されており、場所は自宅で、予定をともにする人物はα氏であることを示す。
【0032】
図4は、上述した推定結果344の一例を示す図である。推定結果344は、予定実行時の対象者の推測されたストレス度を示す。すなわち、推定結果344に示される日付、時間帯において、推測された対象者のストレス度である。
図4に示されるストレス度は、大きいほど対象者にかかるストレスが高いことを示す。
【0033】
ここで、本実施形態で用いられるリラックス度、RMSSD(Root Mean Square of the Successive Differences)、または心拍平均の変化と予定の内容や時間帯について説明する。
図5は、リラックス度の変化と予定の内容や時間帯を示す図である。
図5に示されるグラフは、横軸が時刻(hhmm)を示し、縦軸がリラックス度(0~100)を示す。リラックス度は、心拍数およびR-R間隔から定まり、大きいほどリラックスしていることを示す。すなわち、大きいほどストレス度は小さいこととなる。また、グラフの上には、予定の内容が示されている。
【0034】
図6は、RMSSDの変化と予定の内容や時間帯を示す図である。
図6に示されるグラフは、横軸が時刻(hhmm)を示し、縦軸がRMSSDを示す。RMSSDは、副交感神経系の活動状態を表す指標であり、例えば連続して隣接する心拍間隔の差の二乗平均平方根を求めることにより算出される。RMSSDの低下は、副交感神経活動の低下を表す。すなわち、RMSSDは、その値が大きいほどストレス度は小さいこととなる。また、
図5と同様に、グラフの上には、予定の内容が示されている。
【0035】
図7は、心拍平均の変化と予定の内容や時間帯を示す図である。
図7に示されるグラフは、横軸が時刻(hhmm)を示し、縦軸が心拍平均(本実施形態では1分あたりの心拍数の平均)を示す。心拍数が大きいほど、ストレス度は大きいと考えられる。したがって、上述した
図5、
図6のグラフとは異なり、値が大きいほどストレス度が大きいこととなる。また、
図5と同様に、グラフの上には、予定の内容が示されている。
【0036】
上述したいずれのグラフにおいても、ストレス度の傾向はほぼ同じとなっている。ストレス度が大きい傾向がある順に並べると、コーディングの時間帯、勉強の時間帯、料理と食事の時間帯、出かけの時間帯となる。このように、一般的には、予定の内容とストレス度には相関関係がある。さらに、ストレス度と相関があると考えられるのは、時間帯、場所、予定をともにする人物が挙げられる。こうした事情から、本実施形態ではこれらの情報を予定パラメータとし、これの予定パラメータを入力すると、ストレス度を出力するように学習させた学習モデルを採用している。なお、ある予定でのストレス度は、前後の予定の内容などに依存することもある。よって、予定パラメータとして、前後の予定の内容などを含むようにしてもよい。
【0037】
次に、ロボット20の構成について説明する。
図8は、ロボット20の具体的な構成を示す図である。ロボット20は、操作部21、表示部22、通信部23、記憶部24および制御部25を備える。
【0038】
操作部21は、ボタン、ディップスイッチ、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。操作部21は、ユーザの指示をロボット20に入力する際にユーザによって操作される。操作部21は、入力装置をロボット20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、操作部21は、入力装置においてユーザの入力に応じて生成された入力信号をロボット20に入力する。
【0039】
表示部22は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部22は、例えば、対象者に対する情報などを表示する。表示部22は、画像表示装置をロボット20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部22は、ロボット20を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0040】
通信部23は、他の装置との間で通信を行う。例えば、通信部23は、ストレス推定装置30との間で通信を行う。通信部23は、ストレス推定装置30から送信されたストレス度を受信する。
【0041】
記憶部34には、動作プログラム241が記憶されている。動作プログラム241は、制御部25により実行されるプログラム(例えば、ストレス度を推定するためのプログラム)である。制御部25により動作プログラム241が実行されることにより、ロボット20のユーザは、ロボット20によるサービスを利用することが可能になる。
【0042】
制御部25は、ロボット20全体を制御する。制御部25は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサやメモリを用いて構成される。制御部25は、動作プログラム241を実行することによって、受信部251、可動制御部252、および表示制御部253の機能を実現する。
【0043】
受信部251は、ストレス推定装置30が出力したストレス度を受信する。可動制御部252は、受信されたストレス度に応じて可動部を可動させる。表示制御部253は、表示部22に表示させる表示内容を制御する。
【0044】
次に、対象者に表示される画面例について説明する。
図9は、ストレス推定装置30の表示部32に表示される予定入力画面50を示す図である。予定入力画面50は、予定パラメータを入力するための画面である。予定入力画面50は、日付入力欄51、時間帯入力欄52、内容入力欄53、場所入力欄54、および人物入力欄55を含む。日付入力欄51は、予定が実行される日付の入力欄である。時間帯入力欄52は、予定が実行される時間帯の入力欄である。内容入力欄53は、予定の内容の入力欄である。場所入力欄54は、予定が実行される場所の入力欄である。人物入力欄55は、予定をともする人物の入力欄である。
【0045】
予定入力画面50において入力された予定パラメータは、スケジュール情報342に記憶される。したがって予定のみを参照することもできる。
図10は、ストレス推定装置30の表示部32に表示されるカレンダー表示画面60を示す図である。
【0046】
カレンダー表示画面60は、カレンダー61および予定欄62を含む。カレンダー61は、予定を表示する日付を選択させるために表示される。選択された日付は、白丸で囲まれる。予定欄62は、選択された日付の予定の内容を時間帯とともに示す。
【0047】
図11は、ストレス推定装置30の表示部32に表示されるストレス一覧表示画面70を示す図である。ストレス一覧表示画面70は、日付71およびストレス度表示欄72を含む。日付71は、ストレス度を表示する日付を示す。ストレス度表示欄72は、予定ごとにストレス度を表示する。
図11の場合、一例として、H、M、Lでストレス度を示している。H、M、L、の順にストレス度は低くなる。例えば、上述したリラックス度は0~100の値をとるので、このリラックス度を用いて数値化するとストレス度=100-リラックス度とすることができる。
【0048】
このストレス度の場合、リラックス度が大きいと、ストレス度は小さくなることから、値が大きいほどストレスが大きい。その上で、例えば70以上のストレス度をHランクとする。40以上70未満のストレス度をMランクとする。40未満のストレス度をLランクとする。例えば、
図11において、コーディングのストレス度はHランクであるので、1月17日の10時から12時は、対象者に大きいストレスが発生すると推定されていることがわかる。このようにすることで、対象者は将来発生するストレスを確認することができる。
【0049】
本実施形態では、
図11に示されるようなストレス一覧として表示することが可能であるが、例えばHランクのストレスが発生することが推定された時間帯が近づいた場合、警告として表示することもできる。
【0050】
図12は、ストレス推定装置30の表示部32に表示されるストレス警告画面80を示す図である。ストレス警告画面80はHランクのストレスの発生が推定されている日時などが表示されるストレス予定欄81を含む。ストレス予定欄には、日付、時間帯、および予定の内容が表示される。このストレス警告画面80は、例えば推定されたストレス度が発生する数時間前など、比較的短時間以内にストレスが発生することを警告するものである。このようにすることで、対象者は比較的将来にストレスが発生することを確認できる。
【0051】
次に、ストレス推定システム100の処理などをフローチャートやシーケンス図を用いて説明する。
図13は、ストレス推定装置30の学習処理の流れを示すフローチャートである。
図13において、ストレス推定装置30は、スケジュール情報342に示される時間帯を参照し、予定開始時刻が到来すると(ステップS101:YES)、生体データをサンプリングする(ステップS102)。ストレス推定装置30は、予定終了時刻が到来すると(ステップS103:YES)、サンプリングした生体データを用いてストレス度を求める(ステップS104)。ストレス推定装置30は、終了した予定の予定パラメータをスケジュール情報342から取得して、求まったストレス度を教師データとして学習させ(ステップS105)、処理を終了する。
【0052】
なお、
図5、
図6、
図7に示されるように、1つの予定の時間帯であっても、ストレス度は一定ではない。例えば、コーディングにおけるストレス度もそれなりのばらつきがあることが読み取れる。そこで、ステップS104において求めるストレス度として、例えばその時間帯で得られたストレス度の平均値や、最大値と最小値との平均値など、何らかの統計処理を行った値が挙げられる。
【0053】
図14は、ストレス推定装置30の推定処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートは、
図9に示した予定入力画面50において予定パラメータの入力が行われた際に実行される。
図14において、ストレス推定装置30は、入力されてスケジュール情報に記憶された予定パラメータを取得する(ステップS201)。ストレス推定装置30は、取得した予定パラメータを学習モデルに入力することで(ステップS202)、ストレス度を取得する(ステップS203)。取得したストレス度を日付および時間帯とともに推定結果344に記憶して(ステップS204)、処理を終了する。
【0054】
図15は、ストレス推定装置30のストレス一覧表示処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートは、対象者によりストレス一覧画面の表示要求が行われた際に実行される。なお、ストレス一覧画面の表示要求は、不図示の画面により入力されたり、所定のハードキーなどが操作された場合に発生する。
図15において、ストレス推定装置30は、現在の日時を取得する(ステップS301)。次いで、ストレス推定装置30は、所定期間内(例えば、現在の日時から1週間以内など)に到来する予定のストレス度を推定結果344から取得する(ステップS302)。ストレス推定装置30は、取得したストレス度を
図11に示したストレス一覧画面として表示して(ステップS303)、処理を終了する。
【0055】
図16は、ストレス推定装置30の警告画面表示処理の流れを示すフローチャートである。
図12に示したストレス警告画面80は、ストレス一覧画面と異なり、比較的短時間以内にストレスが発生することを警告するものであることから、このフローチャートは、例えば1時間経過するたびに実行される。
図16において、ストレス推定装置30は、短時間以内(例えば6時間以内)に到来する予定のストレス度を推定結果344から取得する(ステップS302)。ストレス推定装置30は、取得したストレス度に上述したHランクのストレス度があるか否かを判定する(ステップS402)。Hランクのストレス度がない場合には(ステップS402:NO)、そのまま処理を終了する。Hランクのストレス度がある場合には(ステップS402:YES)、ストレス推定装置30は、ストレス警告画面を表示して(ステップS403)、処理を終了する。
【0056】
図17は、ストレス推定装置30とロボット20とが連携する処理の流れを示すシーケンス図である。
図17において、ストレス推定装置30は、予定が開始される時刻が到来するか、到来が間近になると(ステップS501)、この予定に対して推定されたストレス度を取得する(ステップS502)。上記ステップS501では、予定が開始される時刻が到来するか、到来が間近としているが、これは例えば予定が開始される時刻が到来した時点では既に予定が開始されていることから、タイミング的に間に合わないケースも考えられる。そこで、例えば予定開始時刻5分前など、予定が開始される時刻が間近な時刻とすることで、タイミング的に間に合わせることも可能としている。
【0057】
ストレス推定装置30は、ロボット20にストレス度を通知する(ステップS503)。ストレス度が通知されたロボット20は、ストレス度に応じて可動制御を行う(ステップS504)。このときのロボット20の処理内容についてフローチャートを用いて説明する。
図18は、ロボット20の処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
図18において、ロボット20は、ストレス推定装置30からストレス度を受信すると(ステップS601:YES)、ストレス度を取得する(ステップS602)。ロボット20は、ストレス度が75以上か否かを判定する(ステップS603)。ここでのストレス度は値が大きいほどストレスも大きいものとする。また、閾値「75」は一例である。
【0059】
ストレス度が75以上の場合には(ステップS603:YES)、ロボット20は、「予定取消動作」で可動し(ステップS604)、処理を終了する。この「予定取消動作」は、ストレスが大きいので、可能であれば予定を取り消した方がよいと考えられることから、例えば両手を広げて通行を妨げるような動作である。この「予定取消動作」は一例である。
【0060】
ステップS603において、ストレス度が75未満の場合には(ステップS603:NO)、ロボット20は、ストレス度が50以上か否かを判定する(ステップS605)。閾値「50」は一例である。ストレス度が50未満の場合には(ステップS605:NO)、ロボット20は、自らが可動するほどのストレスではないと判定し、可動することなく処理を終了する。ストレス度が50以上の場合には(ステップS605:YES)、ロボット20は、「癒しの動作」で可動して(ステップS606)、処理を終了する。この「癒しの動作」とは、ストレスを低減させる効果がある動作である。
【0061】
上記フローチャートにおいて、ロボット20が可動した場合には、対象者の操作により可動を停止したり、所定時間経過後に自動的に可動を停止するようにしてもよい。
【0062】
このように、ロボットと連携することにより、対象者はストレスを軽減することが可能となる。また、本実施形態によれば、対象者に発生する可能性のあるストレスを推定する技術を提供することができる。さらに、本実施形態によれば、自分のストレスが何に起因しているのかを調べることができる。これにより、手軽に客観的に自分を見つめることが可能となり、決断力の向上などを図ることができ、さらにストレスに対する解決方法を見出すことも可能となる。
【0063】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10…生体センサ、20…ロボット、21…操作部、22…表示部、23…通信部、24…記憶部、25…制御部、30…ストレス推定装置、31…操作部、32…表示部、33…通信部、34…記憶部、35…制御部、50…予定入力画面、51…日付入力欄、52…時間帯入力欄、53…内容入力欄、54…場所入力欄、55…人物入力欄、60…カレンダー表示画面、61…カレンダー、62…予定欄、70…ストレス一覧表示画面、71…日付、72…ストレス度表示欄、80…ストレス警告画面、100…ストレス推定システム、241…動作プログラム、251…受信部、252…可動制御部、253…表示制御部、341…アプリケーションプログラム、342…スケジュール情報、343…生体データ、344…推定結果、351…取得部、352…推定部、353…表示制御部、354…出力部