(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083050
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】保冷保管装置
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20240613BHJP
F25D 3/00 20060101ALI20240613BHJP
F25D 9/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
B65D81/38 Q
F25D3/00 C
F25D9/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197341
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】518403539
【氏名又は名称】ブランテックインターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】廣兼 美雄
【テーマコード(参考)】
3E067
3L044
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB81
3E067AC03
3E067BA02B
3E067BA02C
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067GA02
3L044AA04
3L044BA03
3L044CA11
3L044DB02
3L044DC03
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】 蓄冷材を利用した保冷保管装置において、保冷容器内の温度のばらつきが抑制され、被冷却物の高い保冷効果が得られるとともに、蓄冷材の冷却を効率的に行うことができる保冷保管装置を提供する。
【解決手段】
保冷保管装置1において、保冷容器30の保冷収納部33を取り囲む側壁部31a~31dと底部32に空間部35を形成し、空間部35内に蓄冷材45を設置する。空間部35には、冷却媒体が、冷却媒体導入部36から導入され、冷却媒体排出部38から排出される。空間部35を流れる冷却媒体により蓄冷材45が冷却される。蓄冷材45の冷却後は、冷却媒体導入部36と冷却媒体排出部38が開閉バルブ36Aと38Aで閉止され、空間部35内に冷却媒体が保持される。保冷収納部33内の被冷却物は、蓄冷材45と空間部35内に充填された冷却媒体により保冷される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を冷凍又は冷蔵状態で保管する保冷保管装置において、
保冷容器を備え、
前記保冷容器は、
前記被冷却物を収納可能な保冷収納部と、
前記保冷収納部を取り囲む壁部と、
前記壁部に形成された空間部と、
前記空間部内に設置された蓄冷材と、
前記空間部内に冷却媒体を導入するための冷却媒体導入部と、
前記空間部内から前記冷却媒体を排出するための冷却媒体排出部と、
前記冷却媒体導入部と前記冷却媒体排出部を閉止して前記空間部内に前記冷却媒体を保持する冷却媒体保持手段と
を備えた保冷保管装置。
【請求項2】
前記保冷容器は、前記壁部として、前記保冷容器の側部を構成する側壁部と、前記保冷容器の底部を構成する底壁部を備え、
前記冷却媒体導入部は、前記側壁部の上端部付近に前記冷却媒体を導入し、
前記冷却媒体排出部は、前記底壁部から前記冷却媒体を排出する請求項1に記載の保冷保管装置。
【請求項3】
前記保冷容器を収容する外側筐体を備え、
前記保冷容器と前記外側筐体との間に断熱材を配設可能となっている請求項1に記載の保冷保管装置。
【請求項4】
前記空間部に、前記空間部の内部を上側の導入空間部と下側の主空間部に区画する区画壁部を備え、
前記区画壁部に、複数の分配孔を備え、
前記冷却媒体導入部により前記導入空間部に導入された前記冷却媒体が、前記複数の分配孔を介して前記主空間部の各所に導入されるようにした請求項1に記載の保冷保管装置。
【請求項5】
前記蓄冷材は、前記空間部の前記保冷収納部側の側面に、固定手段により固定されている請求項1に記載の保冷保管装置。
【請求項6】
前記固定手段は、前記蓄冷材を前記保冷収納部側の側面に押し付けるスプリングメッシュである請求項5に記載の保冷保管装置。
【請求項7】
前記保冷容器は、外側容器と、前記外側容器の内側に配置される内側容器とを備え、
前記空間部は、前記外側容器と前記内側容器の間に形成される請求項1に記載の保冷保管装置。
【請求項8】
前記冷却媒体は、エタノール水溶液、エタノール水溶液の氷スラリー、塩水ブライン、塩水の氷スラリーのいずれかである請求項1に記載の保冷保管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品・医薬品等の被冷却物を冷凍又は冷蔵状態で保管するための保冷保管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種食品・医薬品等の被冷却物(保冷対象物)を冷凍又は冷蔵状態で保管し運搬するための保冷箱(例えばパレットボックス、キャリーバッグ等)が用いられてきている。このような保冷箱には、箱内の温度を低温に保つための蓄冷材が内蔵されることがある。例えば、特許文献1(特開2022-044117号公報)や(特開2021-028556号)には、このような蓄冷材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-044117号公報
【特許文献2】特開2021-028556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、断熱した箱内に蓄冷材を内蔵した保冷箱において、蓄冷材は融解潜熱を効かせており保有冷熱量が大きいものであるため、被冷却物が蓄冷材と適切に隣接して配置されていれば、蓄冷材から被冷却物に効果的に冷熱が付与される。しかしながら、蓄冷材の表面積は保冷箱の大きさに比べて小さいものであるので、蓄冷材の表面から外れた位置にある被冷却物に対しては、蓄冷材からの冷熱の付与が不十分となってしまうことがある。また、保冷箱内部において、蓄冷材が配置されている場所とされていない場所で、温度にばらつきが生じてしまうことがある。このため、従来の保冷箱では、十分な保冷効果が得られない場合があった。また、従来の保冷箱では、利用の度に冷却した蓄冷材を用意し直さなければならず、そのための手間もかかっていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、蓄冷材を利用した保冷保管装置において、保冷容器内の温度のばらつきが抑制され、被冷却物の高い保冷効果が得られるとともに、蓄冷材の冷却を効率的に行うことができる保冷保管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被冷却物を冷凍又は冷蔵状態で保管する保冷保管装置において、保冷容器を備え、前記保冷容器は、前記被冷却物を収納可能な保冷収納部と、前記保冷収納部を取り囲む壁部と、前記壁部に形成された空間部と、前記空間部内に設置された蓄冷材と、前記空間部内に冷却媒体を導入するための冷却媒体導入部と、前記空間部内から前記冷却媒体を排出するための冷却媒体排出部と、前記冷却媒体導入部と前記冷却媒体排出部を閉止して前記空間部内に前記冷却媒体を保持する冷却媒体保持手段とを備えた。
【0007】
前記保冷容器は、前記壁部として、前記保冷容器の側部を構成する側壁部と、前記保冷容器の底部を構成する底壁部を備え、前記冷却媒体導入部は、前記側壁部の上端部付近に前記冷却媒体を導入し、前記冷却媒体排出部は、前記底壁部から前記冷却媒体を排出するようにしてもよい。
【0008】
前記保冷容器を収容する外側筐体を備え、前記保冷容器と前記外側筐体との間に断熱材を配設可能となっていてもよい。
【0009】
前記空間部に、前記空間部の内部を上側の導入空間部と下側の主空間部に区画する区画壁部を備え、前記区画壁部に、複数の分配孔を備え、前記冷却媒体導入部により前記導入空間部に導入された前記冷却媒体が、前記複数の分配孔を介して前記主空間部の各所に導入されるようにしてもよい。
【0010】
前記蓄冷材は、前記空間部の前記保冷収納部側の側面に、固定手段により固定されていてもよい。
【0011】
前記固定手段は、前記蓄冷材を前記保冷収納部側の側面に押し付けるスプリングメッシュであってもよい。
【0012】
前記保冷容器は、外側容器と、前記外側容器の内側に配置される内側容器とを備え、前記空間部は、前記外側容器と前記内側容器の間に形成されてもよい。
【0013】
前記冷却媒体は、エタノール水溶液、エタノール水溶液の氷スラリー、塩水ブライン、塩水の氷スラリーのいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の保冷保管装置(例えば、保冷保管装置1)によれば、保冷容器(例えば、保冷容器30)の壁部(例えば、側壁部31a~31d及び底壁部32)に形成した空間部(例えば、空間部35)内に、冷却媒体を冷却媒体導入部(例えば、冷却媒体導入部36)から導入し冷却媒体排出部(例えば、冷却媒体排出部38)から排出することができるので、空間部内を流れる冷却媒体により、空間部内に配置された蓄冷材(例えば、蓄冷材45)を冷却することができる。また、蓄冷材の冷却後は、冷却媒体保持手段(例えば、冷却媒体導入部36の開閉バルブ36A及び冷却媒体排出部38の開閉バルブ38A)により冷却媒体導入部及び冷却媒体排出部を閉止して、冷却媒体を空間部内に保持して、保冷収納部内の被冷却物の保冷に使用することができる。
【0015】
したがって、保冷容器の保冷収納部(例えば保冷収納部33)内の被冷却物は、蓄冷材からの冷熱により効果的に保冷されるとともに、空間部内に充填された冷却媒体により空間部が形成された広い範囲でまんべんなく冷却されるので、保冷収納部内における温度のばらつきを抑制することができ、高い保冷効果が得られる。また、蓄冷材の冷却(使用のための準備)は、空間部内に冷却媒体を流すだけで効率的に実行でき、また、蓄冷材の冷却後には、蓄冷材の冷却のために空間部内に導入された冷却媒体をそのまま活用して、保冷保管装置を即時利用できるので、極めて使い勝手の良い保冷保管装置を提供できる。
【0016】
また、保冷容器の側壁部(例えば、側壁部31a~31d)の上端部付近に冷却媒体導入部(例えば、冷却媒体導入部36)を設け、底壁部(例えば、底壁部32)に冷却媒体排出部(例えば、冷却媒体排出部38)を設けるようにすれば、冷却媒体を全て排出する場合であっても容易に実行でき、好ましい。
【0017】
また、外側筐体(例えば、外側筐体10)と保冷容器の間に断熱材(例えば、断熱材47)を配置すれば、保冷容器の外側が適切に断熱されるので、保冷効果が高い保冷保管装置を構成できる。
【0018】
また、空間部に区画壁部(例えば、区画壁部41)を設け、区画壁部の上側の導入空間部(例えば、導入空間部42)に導入された冷却媒体が、区画壁部に形成された複数の分配孔(例えば、分配孔44)を通って、区画壁部の下側の主空間部(例えば、主空間部43)の各所に導入されるようにすれば、冷却媒体が主空間部の全域にほぼ均等に流れるようにでき、蓄冷材の冷却を適切に行うことができる。
【0019】
また、蓄冷材を空間部の保冷収納部側の側面に固定するようにすれば、蓄冷材による保冷を、保冷収容部に最も近接した位置から効果的に行うことができる。
【0020】
また、蓄冷材の固定手段をスプリングメッシュ(例えば、スプリングメッシュ46)にすれば、空間部内を流れる冷却媒体は、スプリングメッシュのメッシュ形状の隙間を通過することができるので、空間部を流れる冷却媒体の流れが固定手段によって阻害されないようにできる。
【0021】
また、保冷容器を、外側容器(例えば、外側容器60)と外側容器の内側に配置される内側容器(例えば、内側容器50)とで構成すれば、外側容器内に内側容器を組み付けるだけで、空間部を有する保冷容器を簡単に組み立てることができ、また空間部内への蓄冷材の設置も容易に行える。
【0022】
また、冷却媒体を、エタノール水溶液、エタノール水溶液の氷スラリー、塩水ブライン、塩水の氷スラリーのいずれかとすれば、冷却媒体による蓄冷材の冷却及び被冷却物の保冷を効果的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態における保冷保管装置及び冷却媒体供給・回収装置を示す斜視図である。
【
図2】同じく蓋部を取り外した状態の保冷保管装置を示す平面図である。
【
図8】保冷容器を内側容器と外側容器に分解して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1から
図3には、本発明の一実施形態における保冷保管装置1の全体構成を示す。図示されるように、保冷保管装置1は、外側筐体10と、外側筐体10内に配置された保冷容器30を備えている。
【0025】
外側筐体10は、保冷保管装置1の外側部分を構成する部材であり、本体部11と蓋部12を備えている。本体部11は、保冷容器20が収納される桝形(上部に開口を有する略直方体の箱形状)の部材であり、4面の側面部13a、13b、13c、13dと底面部14とから構成されている。本体部11の上部は、側面部13a~13dの上端辺で囲まれた開口部15となっている。蓋部12は、本体部11の開口部15を閉止する板部材であり、本体部11(側面部13cの上端辺)に対してヒンジ16を介して開閉可能に取り付けられている。
【0026】
本体部11の側面部13a~13dと底面14で囲まれた空間は、保冷容器30が収納され設置される設置空間17となっている。また、側面部13a~13dの内向き面(設置空間17側の面)の所定位置には、保冷容器20を保持するための複数の保持突起18が設けられている。
【0027】
図1には、保冷保管装置1とともに、冷却媒体供給・回収装置20も図示されている。冷却媒体供給・回収装置20は、保冷保管装置1に対して冷却媒体(例えば、エタノール水溶液、エタノール水溶液の氷スラリー、塩水ブライン、塩水の氷スラリー等)の供給及び回収を行うための装置であり、冷却媒体の供給を行うための冷却媒体供給ホース21と、冷却媒体の供給の際に必要に応じて保冷保管装置1からの空気の排出を行うための空気排出ホース22と、冷却媒体の回収を行うための冷却媒体回収ホース23とを備えている。なお、冷却媒体供給・回収装置20に回収された冷却媒体は、再生されて、再び供給用の冷却媒体として使用されることになる。
【0028】
冷却媒体供給ホース21、空気排出ホース22、冷却媒体回収ホース23の先端のコネクタ21A、22A、22Bは、それぞれ保冷保管装置1の側面部13に設けられた冷却媒体導入穴19a、空気排出穴19b、冷却媒体排出穴19cに挿入され、保冷容器30に接続される。これにより、冷却媒体供給・回収装置20から保冷容器30への冷却媒体の供給と、保冷容器30からの冷却媒体の回収及び空気の排出がなされるようになっている。
【0029】
冷却媒体は、保冷保管装置1の保冷容器30に内蔵された蓄冷材の冷却や、保冷容器30における被冷却物の保冷のために用いられる流動体であり、例えば、エタノール水溶液、エタノール水溶液の氷スラリー、塩水ブライン、塩水の氷スラリー等が、冷却媒体として用いられ得る ここで、氷スラリーとは、エタノール水溶液、塩水ブライン等が一部冷凍して氷となったシャーベット状の流動性混合物である。
【0030】
図4から
図8にも詳細に示すように、保冷容器30は、略直方体の桝形(上部に開口を有する略直方体の箱形状)の部材であり、側部を構成する略平坦な4面の側壁部31a、31b、31c、31dと、底部を構成する底壁部32を備えている。側壁部31a~31d及び底壁部32で囲まれた空間は、被冷却物(例えば、各種食品(肉、魚、野菜等の生鮮食品や、弁当等の調理済み食品等)や医薬品等)が収納されて保冷状態で保管される保冷収納部33となっている。
【0031】
保冷容器30の側壁部31a~31dの上端部に囲まれた部分は、上部開口となっている。また、側壁部31a~31dの上端部には、上部開口を取り囲むように、外側に張り出したフランジ部34が設けられている。保冷容器30が外側筐体10内に収納されたときには、フランジ部34が外側筐体10の保持突起18上に載置されることにより、保冷容器30が外側筐体10内の所定位置に保持されるようになっている。
【0032】
側壁部31a~31dと底壁部32の内側部分は、中空構造(中空部)となっており、この中空部が、冷却媒体が導入される空間部35となっている。保冷容器30の所定位置には、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38が備えられており、これらは、空間部35に流体的に連通している。
【0033】
冷却媒体導入部36と空気排出部37は、それぞれ空間部35に対する冷却媒体の導入と空間部35からの空気の排出を行う通路(例えば管路)であり、保冷容器30の側面(本実施形態では側壁部31a)の上端部付近の所定位置に設けられている。冷却媒体の供給時には、冷却媒体導入部36と空気排出部37に、それぞれ冷却媒体供給・回収装置の冷却媒体供給ホース21のコネクタ21Aと空気排出ホース22のコネクタ22Aが接続され、冷却媒体の供給及び空気の排出がなされるようになっている。
【0034】
冷却媒体排出部38は、空間部35から冷却媒体を排出するための通路(例えば管路)であり、保冷容器の底壁部32付近に設けられている。冷却媒体の供給時には、冷却媒体排出部38が冷却媒体回収ホース23のコネクタ23Aに接続され、空間部35から冷却媒体が排出(回収)される。このように、冷却媒体導入部36は保冷容器30の上側に、また冷却媒体排出部38は保冷容器30の下側に、それぞれ設けられているので、冷却媒体導入部36から保冷容器30内に導入された冷却媒体は、冷却媒体供給の圧力に加えて、重力によって冷却媒体排出部38に向けてスムーズに流れていくようになっている。
【0035】
冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38の各々には、流体通路を閉止するための閉止部材として、開閉バルブ36A、37B、38Aが備えられている。
図4には、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38が、開閉バルブ36A、37B、38Aで閉止された状態を示している。
【0036】
開閉バルブ36A、37B、38Aは、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38に冷却媒体供給ホース21、空気排出ホース22、冷却媒体回収ホース23(コネクタ21A、22A、23A)が接続されていない通常の状態では、「バルブ閉」であり、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38を閉止する(流体の流通を禁止する)一方、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38に冷却媒体供給ホース21、空気排出ホース22、冷却媒体回収ホース23が接続されたときには、「バルブ開」となって冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38を通る流体の流通を許容するようになっている。このような構成により、開閉バルブ36A、37B、38Aは、「バルブ閉」の状態において、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38を閉止することにより冷却媒体を空間部35内に保持する冷却媒体保持手段(冷却媒体が空間部35内から排出されずに空間部35内に残った状態とする手段)として機能するものである。
【0037】
空間部35には、冷却媒体導入部36及び空気排出部37の直ぐ下側に位置するように、区画壁部41が設けられている。区画壁部41は、空間部35を上下に分割する隔壁であり、空間部35の横断面と同形の四角環形状を有し、保冷容器30の全周(側壁部31a~31d)にわたって形成されている。空間部35は、区画壁部41により、上側のリング形状の空間である導入空間部42と、下側の主空間部43に分割されている。ここで、主空間部43は、側壁部31a~31d内に形成された側壁部内主空間部43aと、底壁部32内に形成された底壁部内主空間部43bからなる桝形の空間である。
【0038】
区画壁部41には、複数の分配孔44が設けられている。分配孔44は、区画壁部41の全周にわたって適切な間隔をもって配置され、各側壁部31a~31dの各所に複数個ずつ設けられている。これにより、冷却媒体導入部36から導入空間部42に導入された冷却媒体は、冷却媒体導入部36が設けられている側壁部31aだけに沿って主空間部43内に流入して行ってしまうことはなく、区画壁部41上で導入空間部42内を冷却媒体導入部36から離れた場所まで流れていき、区画壁部41の各所に設けられた分配孔44を通って、側壁部内主空間部43aの全体(側壁部31a~31dの4面の全て)においてほぼ均等な流量で下方に流れていくようになっている。
【0039】
主空間部43内には、蓄冷材45が配設され、固定手段により固定されている。蓄冷材45は、収容容器内に蓄冷液を収容した部材であり、蓄冷液を凍らせた状態で使用することで、蓄冷液の融解潜熱を利用した大きな保有冷熱量によって被冷却物の保冷を行うものである。なお、蓄冷材45としては、例えば、上記特許文献1(特開2022-044117号公報)や(特開2021-028556号)に開示されているような既存の蓄冷材を用いればよい。
【0040】
蓄冷材45は、各側壁部31a~31dと底壁部32に対して1つずつ(合計54個)設けられ、主空間部43の保冷収納部33側の側面に沿って固定されている。これにより、蓄冷材45は、保冷収納部33に最も近接した位置において、表面積の大きな部分を保冷収納部33に相対させた形で、保冷収納部33を四方及び下方から取り囲んで配置される。したがって、蓄冷材45から保冷収納部33内への冷熱の付与(伝達)は、側壁部31a~31d及び底壁部32の保冷収納部33側の部分のみを介して、保冷収納部33の側方の4面及び底面から、効果的になされる。なお、蓄冷材45の配設位置、数、寸法は、必要に応じて適宜設定すればよい。例えば、側壁部31a~31d及び底壁部32の各々に対して複数の蓄冷材45を設けるようにしてもよい。
【0041】
各蓄冷材42は、それぞれに対して設けられたスプリングメッシュ46(メッシュ形状に構成されたスプリング部材)によって、主空間部43の保冷収納部33側の側面に押し付けられた状態で固定されている。このように、スプリングメッシュ46を蓄冷材42の固定する固定手段として用いることにより、主空間部43を流通する冷却媒体は、スプリングメッシュ46のメッシュ形状の隙間を通過することができる。したがって、蓄冷材45の固定手段が、空間部35を流れる冷却媒体の流れを阻害することはない。
【0042】
外側筐体10と保冷容器30の間には、保冷容器30を取り囲むように、断熱材47が配置されている。本実施形態において、断熱材47は、保冷容器30の側壁部31a~31dの側方、底壁部32の下方、フランジ部35の上方に、それぞれ配置されており、外側筐体10と保冷容器30の間の空間の大部分が断熱材47で充填された状態となっている。なお、断熱材47は、それを介しての熱伝達を減少させる部材であり、例えば、グラスウール、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、セルロースファイバー等から構成されている。
【0043】
図8に分解された状態を示すように、保冷容器30は、内側容器50と外側容器60を組み合わせた組み立て体として形成されている。内側容器50は、保冷容器30の内側部分を構成する桝形の部材であり、側壁部51a、51b、51c、51dと底壁部52を備えている。また、内側容器50の上部開口の周縁には、外側に張り出したフランジ部54が設けられている。なお、内側容器50は、例えば金属等の熱伝導率の高い材料から形成されている。
【0044】
外側容器60は、保冷容器30の外側部分を構成する桝形の部材であり、側壁部61a、61b、61c、61dと底壁部62を備えている。また、外側容器60の側壁部61a~61dの上端には、外側に張り出すフランジ部64が設けられている。外側容器60は、内側容器50よりも一回り大きな寸法を有しており、側壁部61a~61d及び底壁部62で囲まれた組み付け空間63の中に内側容器50が嵌め込まれることにより、保冷容器30が構成されるようになっている。なお、外側容器60は、内側容器50と比較して、熱伝導率の低い材料から形成しておくとよい。
【0045】
外側容器60の底壁部62の内向き面(上面)には、複数の支持突起65が突設されている。内側容器50が外側容器60に組み込まれたときには、支持突起65が内側容器50の底壁部52に当接する。これにより、内側容器50は、支持突起65により下方から支持されるようになっている。
【0046】
外側容器60の底壁部62のほぼ中央部には、下側に窪んだ凹部62Aが形成されている。保冷容器30の冷却媒体排出部38は、凹部62Aに設けられている。これにより、空間部35を流れてきた冷却媒体は、保冷容器30の最下部に配置された凹部62Aからスムーズに排出される。なお、冷却媒体導入部36及び空気排出部37は、外側容器60の側壁部61aの外向き面に、また区画壁部41は、側壁部61a~61dの内向き面に、それぞれ形成されている。
【0047】
内側容器50を外側容器60に組み付けたときには、内側容器50の側壁部51a~51d及び底壁部52は、それぞれ、外側容器60の側壁部61a~61d及び底壁部62に対して、所定の間隔をもって略平行に配置される。これにより、組み立て体としての保冷容器30においては、内側容器50の側壁部51a~51d及び底壁部52は、それぞれ保冷容器30の側壁部31a~31d及び底壁部32の内側部分(保冷収納部33側の部分)を構成し、外側容器50の側壁部51a~51d及び底壁部52は、それぞれ保冷容器30の側壁部31a~31d及び底壁部32の外側部分(外側筐体10側の部分)を構成する。また、内側容器50の側壁部51a~51d及び底壁部52と外側容器60の側壁部61a~61d及び底壁部62の間の間隙が、全体として、保冷容器30の空間部35を構成するようになっている。
【0048】
また、内側容器50のフランジ部54は、外側容器60のフランジ部64上に重なり合った状態で載置される。これにより、空間部35の上部がフランジ部54で封止されるとともに、重なり合ったフランジ部54と64が、保冷容器30のフランジ部34を構成するようになっている。
【0049】
なお、内側容器50と外側容器60の組み立て前に、スプリングメッシュ46を外側容器60の側壁部61a~61d及び底壁部62の内向き面(上面)に取り付けておき、スプリングメッシュ46に対して蓄冷材45を取り付けておくようにすればよい。これにより、内側容器50を外側容器60に組み付けるだけで、蓄冷材45がメッシュスプリング44により内側容器50の側壁部51a~51d及び底壁部52の外向き面(下面)に押し付けられた状態とすることができ、スプレングメッシュ46と蓄冷材45は、保冷容器30の空間部35内に適切に配置される。
【0050】
このように、本実施形態の保冷容器30は、内側容器50と外側容器60の組み立て体として構成されるので、外側容器60内に内側容器50を組み付けるだけで、極めて簡単に組み立てることができる。保冷容器30の空間部35内への蓄冷材45の設置も容易に行える。
【0051】
また、内側容器50を金属等の熱伝導率の高い材料から形成し、外側容器60を内側容器50よりも熱伝導率の低い材料(断熱性の高い材料)から形成することにより、内側容器50の壁部を介しての蓄冷材45及び冷却媒体から保冷収容部33への熱伝達が効果的になされ、保冷効果が高められる一方で、蓄冷材45及び冷却媒体からの冷熱が外側容器60を介して保冷容器30の外部に逃げ出してしまうことを抑制できる。外側容器60を構成する材料としては、熱伝導度が小さく、且つ低温脆化に対して強いポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いることが好ましい。
【0052】
次に、本実施形態の保冷保管装置1の使用方法について説明する。保冷保管装置1の使用に際しては、まず、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38に対して、それぞれ、冷却媒体供給・回収装置20の冷却媒体供給ホース21、空気排出ホース22、冷却媒体回収ホース23を接続する。このように、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38に冷却媒体供給ホース21、空気排出ホース22、冷却媒体回収ホース23が接続されると、開閉バルブ36A、37A、38Aは、接続前の「バルブ閉」の状態から「バルブ開」の状態に切り換わる。これにより、冷却媒体導入部36及び冷却媒体排出部38を通る冷却媒体の流通と、空気排出部37を通る空気の流通が許容された状態となる。
【0053】
続いて、冷却媒体供給・回収装置20からの冷却媒体を冷却媒体導入部36に注入していく。冷却媒体導入部36に注入された冷却媒体は、まず導入空間部42に導入され、導入空間部35の下方に設けられた区画壁部41の分配孔44を通って、側壁部31a~31dの4面にほぼ均等に分配され、各側壁部31a~31dに形成された側壁部内主空間部43a内を、各側壁部31a~31dにおいてほぼ均等な流量で流れていく。
【0054】
主空間部43を流れる冷却媒体は、側壁部内主空間部43aから底壁部内主空間部43b内に流入して、保管容器30の凹部62Aに達し、凹部62Aに設けられた冷却媒体排出部38から排出されて、冷却媒体供給・回収装置20に回収される。なお、空気排出部37からの空気の排出は、冷却媒体導入部36からの冷却媒体の導入が適切になされるように、適宜実行される。
【0055】
このように、冷却媒体供給・回収装置20と保冷保管装置1の間で冷却媒体を循環させ、空間部35内に冷却媒体を流すことにより、主空間部43(側壁部内主空間部43a及び底壁部内主空間部43b)に設けられた蓄冷材45が冷却されていく。この処理(冷却媒体の循環及び蓄冷材45の冷却)は、蓄冷材45内の蓄冷液が適切に凍結状態となるまで、所定時間にわたって、或いは所定量の冷却媒体が流れきるまで継続される。
【0056】
具体的には、例えば、蓄冷材が-25℃グレードの場合には、-35℃~-40℃に冷却した冷却媒体(例えば、エタノール水溶液、エタノール水溶液の氷スラリー、塩水ブライン、塩水の氷スラリー)を、20分程度にわたって、或いは空間部35の容積の5~10倍程度の流量の冷却媒体が空間部35内を流れきるまで、空間部35内で流通させる。これにより、蓄冷材45は、必要な低温(-25℃)まで冷却され、蓄冷材45内の蓄冷液は適切に凍った状態となる。
【0057】
このように蓄冷材45の冷却が完了したならば、冷却媒体供給・回収装置20による冷却媒体の供給及び回収を停止するとともに、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38から冷却媒体供給ホース21、空気排出ホース22、冷却媒体回収ホース23を取り外す。これにより、開閉バルブ36A、37A、38Aは「バルブ閉」に切り換わり、保冷保管装置1の保冷容器30の空間部35内には、冷却媒体が空間部35全体に充填された状態で保持され、蓄冷材45と冷却媒体による保冷の準備が完了する。続いて、保冷状態で保管すべき被冷却物を、保冷容器30の保冷収納部33内に収納し、蓋部12を閉じることにより、保冷保管装置1による被冷却物の保冷状態での保管・運搬を行う。
【0058】
以上のように、本実施形態の保冷保管装置1によれば、保冷容器30内の被冷却物は、蓄冷材45と、空間部35内に充填された冷却媒体とで保冷される。すなわち、冷却物は、融解潜熱を効かせており保有冷熱量が大きい蓄冷材45からの冷熱による効果的な保冷がなされるとともに、蓄冷材45が配置されていない箇所(側壁部31a~31dにおいて蓄冷材45が配置されていない部分及び底壁部32)においても、空間部35内に充填された冷却媒体からの冷熱による保冷もなされる。したがって、保冷保管装置1によれば、蓄冷材45の表面積が小さくても、保冷容器30の4つの側壁部31a~31d及び底壁部32のほぼ全体から冷熱が付与されるので、保冷容器30の各所で温度差が生じてしまうことを適切に抑制でき、高い保冷効果を得ることができる。
【0059】
また、保冷保管装置1を使用するにあたっての蓄冷材45の冷却(準備)は、保冷容器30の空間部35内で冷却媒体を流す(循環させる)だけで実行できる。したがって、蓄冷材45を冷却して使用可能な状態とする作業を極めて効率的に行える。また、蓄冷材45が冷却されたならば、蓄冷材45の冷却のために空間部35内に導入した冷却媒体をそのまま活用して、保冷保管装置1を即時利用できる。したがって、極めて使い勝手の良い保冷保管装置1を提供できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、これは、本発明の一実施形態を例示するものであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、蓄冷材45の固定手段としてスプリングメッシュ46を用いたが、固定手段としては、空間部35における冷却媒体の流れを阻害しないものであれば、任意の形態を採用し得る。例えば、固定手段として接着剤を採用し、蓄冷材45を空間部35の保冷収納部33側の側面に接着剤で接着するようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、保冷保管装置1及び保冷容器30を、略直方体形状(四角形の桝形)のものとしたが、保冷保管装置及び保冷容器の形状は、このような形態に限られるものではなく、任意の形状を採用し得る。例えば、保冷容器を円筒形状の側壁部を備えるものとしてもよい。また、保冷容器は、必ずしも上部開口を有する必要もなく、保冷収納部に対して被冷却物を出し入れできるものであれば、任意の形態を採用し得る。
【0062】
また、上記実施形態では、保冷容器30が内側容器50と外側容器60から組み立てられるものとしたが、本発明の範囲はこのような形態に限られるものではなく、保冷容器を内側容器と外側容器に分解されないものとしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、保冷容器30が固体状態の被冷却物を保管するのに適したものである例を示したが、本発明の範囲はこのような形態に限られるものではない。例えば、保冷容器を、液体状態の被冷却物を保冷状態で保管するのに適した構成(例えば、タンク形状の保冷容器)とすることもできる。
【0064】
また、上記実施形態では、冷却媒体導入部36、空気排出部37、冷却媒体排出部38を閉止する閉止部材(冷却媒体保持手段)として、開閉バルブ36A、37A、38Aを用いたが、本発明の範囲はこのような形態に限られなく、冷却媒体導入部、空気排出部、冷却媒体排出部を必要に応じて閉止できるものであれば、任意の形態(例えば、蓋又は栓型の部材等)を採用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、各種食品(肉、魚、野菜等の生鮮食品、弁当等の各種調理済み食品等)や医薬品等の被冷却物(保冷対象物)を、保冷状態で保管・運搬するために利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 保冷保管装置
10 外側筐体
11 本体部
12 蓋部
13a~13d 側面部
14 底面部
15 開口部
16 ヒンジ
17 設置空間
18 保持突起
19a 冷却媒体導入穴
19b 空気排出穴
19c 冷却媒体排出穴
20 冷却媒体供給・回収装置
21 冷却媒体供給ホース
22 空気排出ホース
23 冷却媒体回収ホース
30 保冷容器
31a~31d 保冷容器の側壁部
32 保冷容器の底壁部
33 保冷容器の保冷収納部
34 保冷容器のフランジ部
35 保冷容器の空間部
36 冷却媒体導入部
37 空気排出部
38 冷却媒体排出部
36A 冷却媒体導入部の開閉バルブ
37A 空気排出部の開閉バルブ
38A 冷却媒体排出部の開閉バルブ
41 区画壁部
42 導入空間部
43 主空間部
43a 側壁部内主空間部
43b 底壁部内空間部
44 分配孔
45 蓄冷材
46 スプリングメッシュ
47 断熱材
50 内側容器
51a~51d 内側容器の側壁部
52 内側容器の底壁部
54 内側容器のフランジ部
60 外側容器
61a~61d 外側容器の側壁部
62 外側容器の底壁部
62A 凹部
63 組み付け空間
64 外側容器のフランジ部
65 支持突起