(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083072
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】石割パッカーにおける破砕機構の組立構造
(51)【国際特許分類】
E21B 1/24 20060101AFI20240613BHJP
【FI】
E21B1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197375
(22)【出願日】2022-12-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月30日に、平戸福岡株式会社が、平戸福岡株式会社に、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを卸した。 令和4年7月29日に、平戸金属工業株式会社が、平戸金属販売株式会社に、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを卸した。 令和4年7月29日に、平戸金属工業株式会社が、平戸横浜株式会社に、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを卸した。 令和4年7月29日に、平戸金属工業株式会社が、PowerToolsABに、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを卸した。 令和4年7月29日に、平戸金属工業株式会社が、Fatol-MulderBVに、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを卸した。 令和4年4月23日に、平戸金属工業株式会社が、キナン福岡営業所新規オープンフェアにて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。 令和4年6月17日~令和4年6月18日に、平戸金属工業株式会社が、キナン近畿ブロック展示会にて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。 令和4年6月17日~令和4年6月18日に、平戸金属工業株式会社が、キナン中部ブロックミニ展示会にて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。 令和4年7月16日に、平戸金属工業株式会社が、キナン東海ブロックおかげSUMMERdeキナン祭り2022にて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。 令和4年9月9日~令和4年9月10日に、平戸金属工業株式会社が、つなぐ九州グランドフェア2022にて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。 令和4年10月14日~令和4年10月16日に、平戸金属工業株式会社が、株式会社ソクトお客様感謝フェスタ2022にて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年10月15日~令和4年10月16日に、平戸金属工業株式会社が、トーヨースギウエ大展示会2022にて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。 令和4年10月19日~令和4年10月21日に、平戸金属工業株式会社が、キタチャレンジフェスタにて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。 令和4年11月11日~令和4年11月12日に、平戸金属工業株式会社が、ワキタジャンボフェア大阪2022にて、下向章弘が発明した破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーを公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】391027675
【氏名又は名称】平戸金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】下向 章弘
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB14
2D129BA05
2D129BA09
2D129BA17
2D129DB01
2D129DC21
(57)【要約】
【課題】破砕機構の組立にネジなどの連結固定部材を一切使用することなく構成部材の係合凹凸部の組合せを行い、最終作業工程として締付け固定ピンを使用することで全部材中の一か所の係合部分を連結固定できる石割パッカーにおける破砕機構の組立構造を提供する。
【解決手段】内面に係合凹凸部を形成した中空の先端外筒体と、先端外筒体内で係合凹凸部に係合可能な係合凹凸部を外周面に形成したフロントプレートと、フロントプレートに密着して先端外筒体内に収納され先端外筒体の内周面とフロントプレートの各係合凹凸部とに係合可能な位置決め凹凸部を外周面に形成した位置決めライナーと、より組み立て可能に構成し、先端外筒体の周壁対向部に羽根体を閉塞付勢するスプリングをバネ孔を介して挿通し、バネ孔にスプリング基部を押圧固定する固定ピンを係合自在に装着してなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の破砕機構ケース中に羽根体及び矢体とよりなる破砕機構を収納し、
前記羽根体は岩石の穿孔中に挿入可能で相対した一対の羽根単体で開拡可能に構成すると共に、前記矢体は前記破砕機構ケースの後方に設けたアクチュエータに進退可能に連設したテーパー状杆体で構成し、
前記矢体を一対の前記羽根単体間に圧入することにより前記羽根体を開拡作動して岩石を穿孔位置で破砕するように構成した石割パッカーにおいて、
前記破砕機構ケース中の前記破砕機構は、
前記破砕機構ケースの先端部で、内周面に係合凹凸部を形成した中空の先端外筒体と、
前記先端外筒体の内部に配置され、前記係合凹凸部に係合可能な係合凹凸部を外周面に形成したフロントプレートと、
前記フロントプレートに密着して前記先端外筒体の内部に配置され、前記先端外筒体の前記係合凹凸部と前記フロントプレートの前記係合凹凸部とに係合可能な位置決め凹凸部を外周面に形成した位置決めライナーと、
より組み立て可能に構成し、
しかも、前記先端外筒体と前記フロントプレートと前記位置決めライナーとは中央部に前記羽根体と前記矢体とを挿通する挿貫孔を形成し、
更には、前記先端外筒体の周壁対向部には開拡自在の前記羽根体を閉塞付勢するためのスプリングを挿入するための一対のバネ孔を穿設し、一対の前記バネ孔にそれぞれ挿入した前記スプリングの基部を押圧固定する一対の固定ピンを前記周壁対向部に係合自在に装着してなる石割パッカーにおける破砕機構の組立構造。
【請求項2】
前記先端外筒体の前記周壁対向部に外周側から装着される一対の位置決めプレートを備え、
前記位置決めプレートは、
前記先端外筒体の前記バネ孔に連通するバネ孔と、
前記先端外筒体の内部に配置された前記位置決めライナーの外周側に係合する位置決め突部と、を有し
前記先端外筒体は、前記位置決め突部を挿通する挿通孔を穿設したことを特徴とする請求項1に記載の石割パッカーにおける破砕機構の組立構造。
【請求項3】
前記先端外筒体の内部に配置され、前記先端外筒体と前記フロントプレートと前記位置決めライナーとの挿貫孔に連通して前記矢体を挿通する矢体挿通孔を有し、
前記矢体の進出を案内するバックプレートを備えることを特徴とする請求項1に記載の石割パッカーにおける破砕機構の組立構造。
【請求項4】
前記アクチュエータの先端部と前記矢体の基端部は、互いに雌雄嵌合してクレビスピンにより連結するクレビス構造を有し、
前記破砕機構ケースの周壁部には、前記クレビスピンを内部に挿入するピン挿通口を開口させたことを特徴とする請求項1に記載の石割パッカーにおける破砕機構の組立構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネジなどの連結固定部材を一切使用することなく部材の凹凸形状の組立作業によって簡便に石割パッカーの破砕機構を組立てることができる石割パッカーにおける破砕機構の組立構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石割パッカーの破砕機構の一構造形態にあっては、相対した二本の開拡自在の羽根体を岩石の穿孔中に挿入し、テーパー状の矢体を開拡自在の羽根体間に圧入して羽根体を拡開作動することにより、穿孔位置で楔作用を生起して岩石を破砕するように構成している。このように割石パッカーは羽根体の間に圧入する矢体は油圧シリンダに連設されて作動するように構成されている。
【0003】
岩石の破砕を行う羽根体や矢体を保持させる破砕機構は、羽根体及び矢体を保持させる部分であると同時に、拡開作動に伴う高い反力が負荷されるため、耐圧性及び剛性が要求される。
【0004】
このように耐圧性及び剛性が要求される石割パッカーの破砕機構は、一般的に、押圧板や側板などの複数のフレーム部材と、フレーム部材同士を連結する複数のボルトやネジなどの締結部材と、により組立てて構成されるものが広く普及している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の破砕機構は、フレーム部材や締結部材などの多様且つ複数の連設固定部材によって多数の組立手順を経て組み立てるものであるため、構造が複雑となり全体重量も重くなり組立作業性に影響する。また、組立作業が煩雑となる分、石割パッカーの価格にも影響し、結果、破砕機構の石割パッカーの普及に影響を及ぼす虞があった。
【0007】
この発明では、破砕機構の組立にフレーム部材や締結部材などの連結固定部材を一切使用することなく構成部材の係合凹凸部の組合せを行い、その後、最終作業工程として締付け固定ピンを使用して全部材中の一か所の係合部分を連結固定することにより従来の課題を円滑に解消することができる石割パッカーにおける破砕機構の組立構造を提供せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するため、本発明に係る石割パッカーにおける破砕機構の組立構造では、(1)筒状の破砕機構ケース中に羽根体及び矢体とよりなる破砕機構を収納し、前記羽根体は岩石の穿孔中に挿入可能で相対した一対の羽根単体で開拡可能に構成すると共に、前記矢体は前記破砕機構ケースの後方に設けたアクチュエータに進退可能に連設したテーパー状杆体で構成し、前記矢体を一対の前記羽根単体間に圧入することにより前記羽根体を開拡作動して岩石を穿孔位置で破砕するように構成した石割パッカーにおいて、前記破砕機構ケース中の前記破砕機構は、前記破砕機構ケースの先端部で、内周面に係合凹凸部を形成した中空の先端外筒体と、前記先端外筒体の内部に配置され、前記係合凹凸部に係合可能な係合凹凸部を外周面に形成したフロントプレートと、前記フロントプレートに密着して前記先端外筒体の内部に配置され、前記先端外筒体の前記係合凹凸部と前記フロントプレートの前記係合凹凸部とに係合可能な位置決め凹凸部を外周面に形成した位置決めライナーと、より組み立て可能に構成し、しかも、前記先端外筒体と前記フロントプレートと前記位置決めライナーとは中央部に前記羽根体と前記矢体とを挿通する挿貫孔を形成し、更には、前記先端外筒体の周壁対向部には開拡自在の前記羽根体を閉塞付勢するためのスプリングを挿入するための一対のバネ孔を穿設し、一対の前記バネ孔にそれぞれ挿入した前記スプリングの基部を押圧固定する一対の固定ピンを前記周壁対向部に係合自在に装着してなることに特徴を有する。
【0009】
また、本発明に係る石割パッカーにおける破砕機構の組立構造では、以下(2)~(4)の点に特徴を有する。
(2)前記先端外筒体の前記周壁対向部に外周側から装着される一対の位置決めプレートを備え、前記位置決めプレートは、前記先端外筒体の前記バネ孔に連通するバネ孔と、前記先端外筒体の内部に配置された前記位置決めライナーの外周側に係合する位置決め突部と、を有し、前記先端外筒体は、前記位置決め突部を挿通する挿通孔を穿設したこと。
(3)前記先端外筒体の内部に挿嵌され、前記先端外筒体と前記フロントプレートと前記位置決めライナーとの挿貫孔に連通して前記矢体を挿通する矢体挿通孔を有し、前記矢体の進出を案内するバックプレートを備えること。
(4)前記アクチュエータの先端部と前記矢体の基端部は、互いに雌雄嵌合してクレビスピンにより連結するクレビス構造を有し、前記破砕機構ケースの周壁部には、前記クレビスピンを内部に挿入するピン挿通口を開口させたこと。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筒状の破砕機構ケース中に羽根体及び矢体とよりなる破砕機構を収納し、前記羽根体は岩石の穿孔中に挿入可能で相対した一対の羽根単体で開拡可能に構成すると共に、前記矢体は前記破砕機構ケースの後方に設けたアクチュエータに進退可能に連設したテーパー状杆体で構成し、前記矢体を一対の前記羽根単体間に圧入することにより前記羽根体を開拡作動して岩石を穿孔位置で破砕するように構成した石割パッカーにおいて、前記破砕機構ケース中の前記破砕機構は、前記破砕機構ケースの先端部で、内周面に係合凹凸部を形成した中空の先端外筒体と、前記先端外筒体の内部に配置され、前記係合凹凸部に係合可能な係合凹凸部を外周面に形成したフロントプレートと、前記フロントプレートに密着して前記先端外筒体の内部に配置され、前記先端外筒体の前記係合凹凸部と前記フロントプレートの前記係合凹凸部とに係合可能な位置決め凹凸部を外周面に形成した位置決めライナーと、より組み立て可能に構成し、しかも、前記先端外筒体と前記フロントプレートと前記位置決めライナーとは中央部に前記羽根体と前記矢体とを挿通する挿貫孔を形成し、更には、前記先端外筒体の周壁対向部には開拡自在の前記羽根体を閉塞付勢するためのスプリングを挿入するための一対のバネ孔を穿設し、一対の前記バネ孔にそれぞれ挿入した前記スプリングの基部を押圧固定する一対の固定ピンを前記周壁対向部に係合自在に装着してなることとしたため、破砕機構の構造を簡素化しつつ連結固定部材を一切使用することなく構成部材の係合凹凸部の組合せを行うだけで破砕機構の組立を容易に行うことができる。かかる構成を備える破砕機構の組立作業は、次のような手順で簡易に行うことができる。
【0011】
まず、羽根体とフロントプレートを組合せ、破砕機構ケース先端の先端外筒体内に収納配置する。次いで、先端外筒体内に位置決めライナーを挿嵌する。この際に、先端外筒体内の係合凹凸部とフロントプレートの係合凹凸部とに、位置決めライナーの位置決め凹凸部を嵌め込む。これにより、先端外筒体内でのフロントプレートと位置決めライナーとの周方向への動きが規制される。
【0012】
次いで、先端外筒体の周壁対向部のバネ孔に挿通したスプリングを、羽根体の基部に押し当ててスプリング基部を押圧固定する固定ピンを先端外筒体のバネ孔に係合する。すなわち、最終的に固定ピンを使用するだけで、全部材中の一か所の係合部分を連結固定する。これにより、先端外筒体内でのフロントプレートと位置決めライナーとの軸方向への動きが規制される。
【0013】
以上のような組立作業により、羽根体は、スプリングにより閉塞方向へ常時付勢されると共に、矢体の進出・退去動作に伴って拡開・閉塞動作を可能にして、基部で先端外筒体に保持される。また、矢体は、羽根体を構成する一対の羽根単体の間で挟圧されると共に、破砕機構ケースから進出・退去可能にして、破砕機構ケースに保持される。
【0014】
このように、本発明の破砕機構の組立構造では、従来の石割パッカーとは異なり、羽根体や矢体を保持させるフレーム部材や締結部材などの多様な連設固定部材を使用したりアクチュエータと破砕機構ケースとを分離・組立したりすることなく、破砕機構ケースの先端開口から羽根体や矢体を破砕機構ケースの内部に装着できる。
【0015】
すなわち、構造を簡素化して作業者に特別な技能を要求することなく、先端外筒体とフロントライナーと位置決めライナーとをそれぞれ相互に挿嵌係合させる簡単な組立作業だけで、羽根体と矢体との破砕機構ケースへの相対的な位置決めが簡単にでき、組立作業後は羽根体と矢体とを破砕機構ケースの所定位置に安定且つ強固に保持することができる。
【0016】
したがって、繰り返し使用により羽根体や矢体が摩耗したり座屈したりするなどして部材損傷が生じても、新たな羽根体や矢体へ交換する組立作業を誰でも簡単且つ短時間で行うことができ、作業効率を飛躍的に向上させる効果がある。さらに、石割パッカーの使用時には、毎回、楔作用を正しく生起させる動作の再現性を安定させ、本来的なパッカーとしての割石機能を安定させる効果がある。
【0017】
また、破砕機構ケースの先端の先端外筒体内で、フロントライナーと位置決めライナーとが羽根体の基部の周りで密集して配置されるために、中央の矢体の進出動作又は退去動作に伴う矢羽根の拡開動作及び閉塞動作により破砕機構ケースがうける拡開押圧作用をフロントライナーと位置決めライナーで受け止め、破砕機構ケースに座屈損傷が生じることを防止することができる。したがって、パッカーの装置寿命を延命させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーの斜視図である。
【
図2】本発明に係る破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーの分解斜視図である。
【
図3】本発明に係る破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーの模式的側断面図である。
【
図4】本発明に係る破砕機構ケースの構成を示す断面斜視図である。
【
図5】本発明に係るバックプレート及びフロントプレートの構成を示す説明図である。
【
図6】本発明に係る先端外筒体及びフロントプレートの構成を示す説明図である。
【
図7】本発明に係るフロントプレート及び位置決めライナーの構成を示す説明図である。
【
図8】本発明に係る先端外筒体及び位置決めライナーの構成を示す径断面図である。
【
図9】本発明に係る石割パッカーの破砕機構の組立構造を部分的に拡大した模式的側断面図である。
【
図10】本発明に係る石割パッカーの破砕機構の組立構造を示す模式的側断面図である。
【
図11】本発明に係る石割パッカーの破砕機構の組立構造を示す模式的側断面図である。
【
図12】本発明に係る石割パッカーの破砕機構の組立構造を示す模式的側断面図である。
【
図13】本発明に係る石割パッカーの破砕機構の組立構造を示す斜視図である。
【
図14】本発明に係る石割パッカーの破砕機構の組立構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の要旨は、筒状の破砕機構ケース中に羽根体及び矢体とよりなる破砕機構を収納し、前記羽根体は岩石の穿孔中に挿入可能で相対した一対の羽根単体で開拡可能に構成すると共に、前記矢体は前記破砕機構ケースの後方に設けたアクチュエータに進退可能に連設したテーパー状杆体で構成し、前記矢体を一対の前記羽根単体間に圧入することにより前記羽根体を開拡作動して岩石を穿孔位置で破砕するように構成した石割パッカーにおいて、前記破砕機構ケース中の前記破砕機構は、前記破砕機構ケースの先端部で、内周面に係合凹凸部を形成した中空の先端外筒体と、前記先端外筒体の内部に配置され、前記係合凹凸部に係合可能な係合凹凸部を外周面に形成したフロントプレートと、前記フロントプレートに密着して前記先端外筒体の内部に配置され、前記先端外筒体の前記係合凹凸部と前記フロントプレートの前記係合凹凸部とに係合可能な位置決め凹凸部を外周面に形成した位置決めライナーと、より組み立て可能に構成し、しかも、前記先端外筒体と前記フロントプレートと前記位置決めライナーとは中央部に前記羽根体と前記矢体とを挿通する挿貫孔を形成し、更には、前記先端外筒体の周壁対向部には開拡自在の前記羽根体を閉塞付勢するためのスプリングを挿入するための一対のバネ孔を穿設し、一対の前記バネ孔にそれぞれ挿入した前記スプリングの基部を押圧固定する一対の固定ピンを前記周壁対向部に係合自在に装着してなる石割パッカーにおける破砕機構の組立構造を提供せんとするものである。
【0020】
また、前記先端外筒体の前記周壁対向部に外周側から装着される一対の位置決めプレートを備え、前記位置決めプレートは、前記先端外筒体の前記バネ孔に連通するバネ孔と、前記先端外筒体の内部に配置された前記位置決めライナーの外周側に係合する位置決め突部と、を有し前記先端外筒体は、前記位置決め突部を挿通する挿通孔を穿設したことに特徴を有する。
【0021】
また、前記先端外筒体の内部に挿嵌され、前記先端外筒体と前記フロントプレートと前記位置決めライナーとの挿貫孔に連通して前記矢体を挿通する矢体挿通孔を有し、前記矢体の進出を案内するバックプレートを備えることに特徴を有する。
【0022】
また、前記アクチュエータの先端部と前記矢体の基端部は、互いに雌雄嵌合してクレビスピンにより連結するクレビス構造を有し、前記破砕機構ケースの周壁部には、前記クレビスピンを内部に挿入するピン挿通口を開口させたことに特徴を有する。
【0023】
本発明にかかる破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーは、羽根体や矢体を交換する破砕機構の分解・組立作業の際に、従来のように複数の連結固定部材を使用したりアクチュエータと破砕機構を収納配置する破砕機構ケースとを分解・組立したりすることなく、誰でも簡単に矢体や羽根体の組付けを行うことができ、組付け後は動作の安定性を保持して安定した岩石の破砕作業を再現する画期的な破砕装置である。
【0024】
以下、この発明の実施例を図面に基づき詳説する。
図1は破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーの斜視図、
図2は破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーの分解斜視図、
図3は破砕機構の組立構造を備えた石割パッカーの模式的側断面図、
図4は破砕機構ケースの構成を示す断面斜視図、
図5はバックプレート及びフロントプレートの構成を示す説明図、
図6は先端外筒体及びフロントプレートの構成を示す説明図、
図7はフロントプレート及び位置決めライナーの構成を示す説明図、
図8は先端外筒体及び位置決めライナーの構成を示す径断面図、
図9は石割パッカーの破砕機構の組立構造を部分的に拡大した模式的側断面図、
図10から
図12は石割パッカーの破砕機構の組立構造を示す模式的側断面図、
図13及び
図14は石割パッカーの破砕機構の組立構造を示す斜視図である。
【0025】
なお、以下の説明において、特に方向視を定めないかぎり、
図1に示すように、矢体の進出退去方向と羽根体の拡開閉塞方向を基準に、矢体の進出側を前側、矢体の退去側を後側、その一方側を左側、他方側を右側、羽根体の拡開閉塞方向及び矢体の進出退去方向に直交する方向について、一方側を上側、他方側を下側と称する。
【0026】
[1.石割パッカーの概略的構成]
まず、本発明に係る石割パッカーAの概略的構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、石割パッカーAは、概略的には、筒状の破砕機構ケース1と、破砕機構ケース1の後方に連設したアクチュエータ2と、破砕機構ケース1に基端を収納して配置すると共に先端部分を破砕機構ケース1から突出させた破砕機構A1としての羽根体3及び矢体4と、を備え、矢体4を羽根体3に圧入することにより羽根体3を開拡作動して岩石を穿孔位置より破砕するように構成している。
【0027】
破砕機構ケース1は、
図3及び
図4に示すように、その大部分の筒状をなすケース本体部11と、ケース本体部11の先端で一体的に連設した先端外筒体10と、を有する。
【0028】
ケース本体部11は、前後方向に長尺伸延する筒状部であって、断面視で円形の筒孔を、アクチュエータ2と、アクチュエータ2に連設された矢体4とを前後方向へ進出退去可能に配置する空間としている。
【0029】
先端外筒体10は、前後方向に短尺伸延する筒状部であって、断面視で円形の筒孔を羽根体3の基部を収納して配置して先端側に羽根体3を拡開可能に保持する空間としている。
【0030】
先端外筒体10は、軸方向視でケース本体部11の外径よりも大きい外径を有し、ケース本体部11の先端で径方向外側に膨出した形状を呈する。先端外筒体10の周壁は、
図3(a)、
図3(b)及び
図9に示すように、ケース本体部11の周壁より肉厚に形成している。
【0031】
羽根体3は、
図2に示すように、岩石の穿孔中に挿入可能に相対した左右一対の羽根単体30,30’によりなり、破砕機構ケース1の先端外筒体10に対して基部を保持され、先端外筒体10の先端側で開拡可能に構成される。
【0032】
羽根単体30,30’は、全体的に細長の棒状鋼材からなり、基端側から先端側にかけて漸次肉厚のテーパー状に形成されている。羽根単体30,30’は、傾斜して対向する内側面を平坦状に矢体4の左右側の外側面が摺接する摺接面としている。
【0033】
羽根単体30,30’は、
図2に示すように、羽根体3の大部分をなして岩石に当接して楔作用を生起する羽根本体部31,と、基部の外側でスプリング34の先端が嵌り込むスプリング嵌合部32,32’と、基端で上下方向に突出して破砕機構ケース1内で進退方向への動きを規制する突片部33,33’と、を有する。
【0034】
羽根本体部31,31’は、羽根体3の大部分をなし、先端方向に向かって肉厚に形成されており、矢体4の圧入動作によって先端外側部分を拡開して岩石に当接させて楔作用を生起する。羽根本体部31,31’は、断面視で略半円形状に形成しており、略半円の直径部分を矢体4との摺接面にすると共に、略半円の円弧部分を岩石に当接させる当接面に形成している。
【0035】
スプリング嵌合部32,32’は、
図2、
図3(a)及び
図3(b)、
図9に示すように、基部の前後方向の中途の外側面で、羽根体3の拡開・閉塞方向(羽根体3の伸延方向に直交する左右方向)に沿って凹ませた断面視円形の凹溝32a,32a’を形成している。
【0036】
スプリング嵌合部32,32’の上下面は、互いに平行な平坦面とし、後述するフロントプレート70の挿通孔70bと位置決めライナー80の挿通孔80bをなす上下内側面に摺接する摺接面としている。つまり、スプリング嵌合部32,32’は、上下の厚みを、フロントプレート70の挿通孔70b及び位置決めライナー80の挿通孔80bの上下長さと等しくなるように形成している。
【0037】
突片部33,33’は、先端外筒体10内部に係合して保持され、羽根本体部31,31’を先端外筒体10の先端側で拡開可能とする部分である。突片部33,33’は、スプリング嵌合部32,32’より後方側で、羽根体3の上下方向(羽根体3の伸延方向に直交する上下方向)に突出して形成している。
【0038】
矢体4は、破砕機構ケース1の後方に設けたアクチュエータ2に連設し、破砕機構ケース1内部で進退可能としている。
【0039】
矢体4は、
図2に示すように、全体的に細長の三角棒状鋼材からなり、基端側から先端側にかけて漸次肉薄のテーパー状に形成された杆体で構成している。矢体4は、一対の羽根単体30,30’の間に圧入される矢本体部40と、基端部に形成され、アクチュエータ2の先端部に連結する連結部41と、を有する。
【0040】
矢本体部40は、
図2、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、左右側の外面を基端側から先端側に向かって近接させて全体を先端先鋭とするテーパ面とし、同テーパ面を羽根本体部31,31’同士の対向する摺接面に対面して摺接させる摺接面としている。
【0041】
矢本体部40の上下面は、互いに平行な平坦面とし、後述するフロントプレート70の挿通孔70bと位置決めライナー80の挿通孔80bをなす上下内側面に摺接する摺接面としている。つまり、矢体4の矢本体部40は、上下の厚みを、フロントプレート70の挿通孔70b及び位置決めライナー80の挿通孔80bの上下長さと等しくなるように形成している。
【0042】
連結部41は、略方形状に形成され、
図3(a)及び
図3(b)、
図10、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、平面視中央部に矢体4の厚み方向(上下方向)へ貫通したクレビス孔41aを有して構成している。連結部41の上下面は、互いに平行な平坦面とし、後述するアクチュエータ2の先端に設けたクレビス片22a,22a’同士の間で圧着される圧着面としている。
【0043】
アクチュエータ2は、
図2、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、油圧シリンダ20であって、シリンダチューブ21と、シリンダチューブ21から筒軸の先端方向に出没するピストンロッド22とで構成している。なお、アクチュエータ2は、矢体4を進退動作させるものであれば油圧シリンダ20に限定されることはなく、電動式、油圧式、空気圧式、高圧ガス式の別を問わない。
【0044】
油圧シリンダ20は、破砕機構ケース1の筒孔内にピストンロッド22を後方側から挿通し、シリンダチューブ21の前端21aを破砕機構ケース1の後端1aに内嵌可能に構成している。シリンダチューブ21の前端21aの外径は、その大部分をなすシリンダチューブ21の後半部の外径よりもやや縮径している。
【0045】
油圧シリンダ20の周方向の所定位置には、
図1から
図3(b)に示すように、油圧シリンダ20に油圧を排出・供給するための油圧ホースが接続するカプラー23,23’を設けている。カプラー23,23’は、シリンダチューブ21の上側前部で上方に突出した前カプラー23と、シリンダチューブ21の上側後部で上方に突出した後カプラー23’と、で構成される。
【0046】
アクチュエータ2(油圧シリンダ20のピストンロッド22)の先端部には、
図10から
図13(b)に示すように、矢体4の連結部41を上下方向から挟持する板状の上側クレビス片22aおよび下側クレビス片22a’を先端(前側)へ向けて突出している。
【0047】
上側クレビス片22aおよび下側クレビス片22a’の板面の中央部には、矢体4の連結部41を上下側から挟持させた状態で、連結部41に形成されたクレビス孔41aに連通する上側クレビス孔22b及び下側クレビス孔22b’を貫通して形成している。
【0048】
すなわち、アクチュエータ2の先端部と矢体4の基端部とは、アクチュエータ2に設けた上側クレビス片22aおよび下側クレビス片22a’と矢体4の連結部41とを雌雄嵌合させると共に連通させた各クレビス孔41a,22b,22b’にクレビスピン24を挿入することにより、アクチュエータ2と矢体4とを一体的に連結するクレビス構造を有する。なお、符号25は、各クレビス孔41a,22b,22b’に挿入されたクレビスピン24に外嵌される止めリングである。止めリング25は、各クレビス孔41a,22b,22b’に挿入されたクレビスピン24の上部に外嵌され、クレビスピン24が各クレビス孔41a,22b,22b’から脱落することを防止する。
【0049】
また、破砕機構ケース1の周壁部には、クレビスピン24を内部に挿入するピン挿通口1b,1b’を円形状に開口させている。
【0050】
ピン挿通口1b,1b’は、破砕機構ケース1のケース本体部11の周壁において、破砕機構ケース1の後端内部で油圧シリンダ20のピストンロッド22が最退去位置にある状態で、アクチュエータ2の先端部と矢体4の基端部とが雌雄嵌合して連通した各クレビス孔41a,22b,22b’が相対的に位置する上下部に形成される。つまり、上側ピン挿通口1bと下側ピン挿通口1b’とが、各クレビス孔41a,22b,22b’の軸方向と同一方向に貫通して形成される。
【0051】
なお、破砕機構ケース1の後端1aとアクチュエータ2としての油圧シリンダ20の前端21aとは、
図2、及び
図10から
図13(b)に示すように、互いに雌雄嵌合し、ロックナット5を介して連結するように構成されている。
【0052】
破砕機構ケース1の後端1aは、後側開口をシリンダチューブ21の前端21aに外嵌するメス側嵌合部としてケース本体部11の胴部よりやや拡径し、後方から油圧シリンダ20のシリンダチューブ21の前端21aを受け入れて嵌合する。
【0053】
ロックナット5は、環帯状に形成されたカップリング部材であって、
図2、及び
図10から
図13(b)に示すように、破砕機構ケース1に外嵌されて一体的に固定される前側のケース固定部50と、油圧シリンダ20の中途部に外嵌されて着脱可能に固定される後側のシリンダ固定部51と、を有する。つまり、ロックナット5は、内周面において軸方向の中心部を境に、前側にケース固定部50を、後側にシリンダ固定部51を有する。
【0054】
シリンダ固定部51は、固定用のロックピン(図示略)が挿入されるピン挿入孔51aを周方向に一定間隔で複数形成している。また、シリンダチューブ21は、前端21aでシリンダ固定部51のピン挿入孔51aに対応したピン係合溝21bを有する。
【0055】
すなわち、ロックナット5のシリンダ固定部51にシリンダチューブ21の前端21aを内嵌し、連通したピン挿入孔51aとピン係合溝21bにロックピンや螺子などの締結部材(図示略)を挿入して締め込むことにより、破砕機構ケース1と油圧シリンダ20とを一体的に連結している。
【0056】
このようにしてロックナット5により一体的に連結した破砕機構ケース1と油圧シリンダ20との所定位置には、岩石を破砕する作業者が石割パッカーAを持ち上げ操作するための前側ハンドル6及び後側ハンドル6’が設けられている。
【0057】
前側ハンドル6は、上下分割・組立可能に構成され、組立状態で、破砕機構ケース1の軸方向について、周壁に形成されたピン挿通口1b,1b’を閉塞するように上下側から外嵌される。
【0058】
前側ハンドル6は、上半部に相当して作業者が一方の手指で把握するリング状の前側把持部61と、下半部に相当して前側把持部61と共に破砕機構ケース1に固定される前側固定部62と、を有する。
【0059】
前側把持部61は、中央底部を破砕機構ケース1の周壁の上半部に沿う略半円弧状の上側凹部61aと、上側凹部61aの両端からフランジ状に迫り出した上側連結部61b,61bと、側面視で上側連結部61b,61bからそれぞれ前側へオバーハングさせたリング状の把持本体部61cと、により構成される。
【0060】
前側固定部62は、中央部を破砕機構ケース1の周壁の下半部に沿う略半円弧状にした下側凹部62aと、下側凹部62aの両端から左右外側へフランジ状に迫り出した下側連結部62b,62bと、により構成される。
【0061】
すなわち、前側ハンドル6は、上側の前側把持部61と下側の前側固定部62とにより破砕機構ケース1を上下側から挟み込むようにして、上側凹部61aと下側凹部62aとを破砕機構ケース1の周面に当接させ、上側連結部61b,61bと下側連結部62b,62bとを突き合わせてボルトやビスなどの締結部材63を挿通して締め込むことで、破砕機構ケース1に一体的に固定される。
【0062】
換言すれば、前側ハンドル6において、前側把持部61(上側凹部61a)は破砕機構ケース1の上側ピン挿通口1bを閉塞し、前側固定部62(下側凹部62a)は破砕機構ケース1の下側ピン挿通口1b’を閉塞する。
【0063】
また、後側ハンドル6’は、後側ハンドル6’は、基本的に前側ハンドル6と前後対照で同一構成を備える。後側ハンドル6’は、上下分割・組立可能に構成され、組立状態で、油圧シリンダ20の軸方向外周において後端部に上下側から外嵌される。
【0064】
後側ハンドル6’は、上半部に相当して作業者が把持する後側把持部61’と、下半部に相当して後側把持部61’と共に破砕機構ケース1に固定される後側固定部62’と、を有する。
【0065】
後側把持部61’は、中央底部を油圧シリンダ20の周壁の上半部に沿う略半円弧状とした上側凹部61a’と、上側凹部61a’の両端からフランジ状に迫り出した上側連結部61b’,61b’と、側面視で上側連結部61b’,61b’からそれぞれ後側へオバーハングさせたリング状の把持本体部61c’と、により構成される。
【0066】
後側固定部62’は、中央部を油圧シリンダ20の周壁の下半部に沿う略半円弧状とした下側凹部62a’と、下側凹部62a’の両端から左右外側へフランジ状に迫り出した下側連結部62b’,62b’と、で構成される。
【0067】
すなわち、後側ハンドル6’は、上側の後側把持部61’の下側の後側固定部62’とにより油圧シリンダ20を上下側から挟み込むようにして、上側凹部61a’と下側凹部62a’とをシリンダ周面に当接させ、上側連結部61b’,61b’と下側連結部62b’,62b’とを突き合わせてボルトやビスなどの締結部材63’を挿通して締め込むことで、油圧シリンダ20に一体的に固定される。
【0068】
このようにして先端外筒体10及びアクチュエータ2に取り付けた前側ハンドル6及び後側ハンドル6’は、前カプラー23及び後カプラー23’より上方に突出している。
【0069】
詳細には、前側ハンドル6及び後側ハンドル6’は、軸方向視で前カプラー23及び後カプラー23’が設けられる破砕機構ケース1及びアクチュエータ2の外周位置に把持本体部61c,61c’を配置すると共に、把持本体部61c,61c’の上端部をアクチュエータ2の外周面から上方突出する前カプラー23及び後カプラー23’の上端よりも上方に配置している。
【0070】
特に後側ハンドル6’の把持本体部61c’は、間に後カプラー23’を配置した状態で跨設される。これにより、前側ハンドル6及び後側ハンドル6’が前カプラー23及び後カプラー23’をの物理的に損傷することを防止できる。
【0071】
以上のように構成した石割パッカーAは、実際の石割現場において、石割対象の岩石にまずドリルで石割線に沿って複数穿孔し、順次その中に
図3(a)に示すように閉塞形態の羽根体3を挿入し、
図3(b)に示すように間の矢体4を前側(先端側)へ摺動させることにより羽根体3を拡開作動させて石割線に沿った岩石の破砕を行う。
【0072】
[2.破砕機構の具体的構成]
次に、本発明の実施例に係る破砕機構A1の構成について、詳細に説明する。破砕機構A1は、
図2で示すように、破砕機構ケース1先端に設けられ、内周面10aに係合凹凸部12を形成した中空の先端外筒体10と、先端外筒体10の内部に配置され、係合凹凸部12に係合可能な係合凹凸部71を外周面70aに形成したフロントプレート70と、フロントプレート70に密着して先端外筒体10の内部に配置され、先端外筒体10の内面の係合凹凸部12とフロントプレート70の係合凹凸部71とに係合可能な位置決め凹凸部81を外周面80aに形成した位置決めライナー80と、より組み立て可能に構成している。
【0073】
先端外筒体10とフロントプレート70と位置決めライナー80とは、それぞれの中央部に羽根体3と矢体4とを挿通するための挿通孔10b,70b,80bを形成している。各挿通孔10b,70b,80bは、ケース本体部11の筒孔と連通する。
【0074】
また、先端外筒体10の係合凹凸部12と、フロントプレート70の係合凹凸部71と、位置決めライナー80の位置決め凹凸部81とは、先端外筒体10の内部で相互に雌雄嵌合して、破砕機構ケース1の先端で矢体4と羽根体3を作動可能に保持する。
【0075】
先端外筒体10は、
図3及び
図4に示すように、軸方向の略前半部で位置決めライナー80とフロントプレート70と羽根体3のスプリング嵌合部32,32’を収納して配置する大筒部100と、軸方向の略後半部で大筒部100より内径を縮径して羽根体3の突片部33,33’とバックプレート90とを収納して配置する小筒部101と、を有する。
【0076】
先端外筒体10の係合凹凸部12は、先端外筒体10の大筒部100の内周面10aの前部で、周方向に沿って交互に形成された係合凸部120と係合凹部121とにより、軸方向に沿うスプライン溝を形成する。
【0077】
係合凸部120は、
図4に示すように、径断面視で環状扇形状の段部として先端外筒体10の内周面10aから径方向内側へ突出すると共に、先端外筒体10の内周面10aの周方向に沿って一定間隔に複数形成している。係合凸部120は、軸方向視で先端外筒体10の内周の略1/8長さの環状扇形であり、先端外筒体10の内周面10aから直径方向に対向して(軸中心に点対称で)4つ突出して形成されている。
【0078】
より詳細には、
図6(a)から
図6(c)、及び
図8(a)に示すように、先端外筒体10の軸方向視で、直径方向に沿う一方の一対の係合凸部120,120と、直径方向に沿う他方の一対の係合凸部120,120とが相対的に、それぞれ先端外筒体10の軸を中心に内周面10aで十字状に直交して配置される。
【0079】
この係合凸部120が、先端外筒体10の内周面10aにおいて、周方向に沿って一定間隔で複数(4つ)突出して形成されることによって、係合凸部120同士の間、且つ周方向に沿って一定間隔で係合凹部121が複数(4つ)形成される。
【0080】
係合凹部121は、隣接する係合凸部120,120同士の間で、係合凸部120と同じ径断面視で環状扇形状の仮想空間部として形成される。つまり、係合凹部121は、係合凸部120と同様、軸方向視で先端外筒体10の内周の略1/8長さの環状扇形であり、先端外筒体10の内周面10aから直径方向に対向して(軸中心に点対称で)4つ形成される。
【0081】
より詳細には、先端外筒体10の軸方向視で、直径方向に沿う一方の一対の係合凹部121,121と、直径方向に沿う他方の一対の係合凹部121,121とが相対的に、それぞれ先端外筒体10の軸を中心に内周面10aで十字状に直交して配置される。
【0082】
この係合凹凸部12によりなす内側空間には、
図3(a)から
図3(b)、及び
図9に示すように、位置決めライナー80が収納される。すなわち、係合凹凸部12は、位置決めライナー80の収納部として機能する。
【0083】
また、先端外筒体10において、内周面10aの前部に係合凹凸部12が形成されことにより、係合凹凸部12よりも後方にフロントプレート70が収納配置されるフロントプレート収納部13が形成される。
【0084】
換言すれば、先端外筒体10の軸方向において、大筒部100の前半部に位置決めライナー80が嵌着して配置される係合凹凸部12が形成され、先端外筒体10の大筒部100の後半部にフロントプレート70が嵌着して配置されるフロントプレート収納部13が形成される。
【0085】
フロントプレート収納部13は、
図3(a)から
図3(b)、及び
図9に示すように、先端外筒体10の軸方向において、係合凹凸部12と小筒部101との間で、フロントプレート70の板厚に相当する前後長さに形成される。
【0086】
つまり、フロントプレート収納部13は、先端外筒体10の大筒部100の軸方向において、
図3(a)から
図4、及び
図9に示すように、フロントプレート70の係合凸部710の前面が当接する係合凹凸部12の係合凸部120の後面とフロントプレート70の後面が当接する小筒部101の前端部101aとの間の空間部分として形成される。つまり、小筒部101の前端部101aは、フロントプレート70が突き当たる当接段部となる。
【0087】
また、フロントプレート収納部13の後方側には、
図4に示すように、バックプレート90が収納配置されるバックプレート収納部14が形成されている。バックプレート収納部14は、フロントプレート収納部13とケース本体部11との間で、フロントプレート収納部13よりも縮径した小筒部101に形成される。
【0088】
詳細には、バックプレート収納部14は、先端外筒体10の小筒部101の後部に形成される。バックプレート収納部14は、
図4及び
図9に示すように、小筒部101との境目部分となるケース本体部11の前端部110aを、バックプレート90の後周縁面が当接する当接段部としている。
【0089】
また、先端外筒体10の周壁対向部には、
図2から
図4、及び
図8(a)に示すように、羽根体3を閉塞付勢するためのスプリング34を挿入するための一対のバネ孔15,15’が形成されている。
【0090】
バネ孔15,15’は、先端外筒体10の直径方向で周壁に対向して穿設され、内側の挿通孔10bに径方向から連通する。また、バネ孔15,15’は、先端外筒体10の内周面10aから対向して突出する係合凸部120,120の中央部を貫通して形成される。
【0091】
また、バネ孔15,15’の中途部(先端外筒体10の周壁対向部の内部)には、
図8(b)から
図9に示すように、スプリング34を押圧固定する一対の固定ピン85,85’を係止するピン係止溝16,16’が設けらている。
【0092】
詳細については後述するが、固定ピン85,85’は、
図8(a)から
図9に示すように、胴部850,850’に径方向外方へ突出した係合突起851,851’を有する。係合突起851,851’は、胴部850,850’の中途部の周面から軸方向視で直径方向の外側に2つ突出して設けられる。
【0093】
換言すれば、バネ孔15,15’は、固定ピン85,85’の胴部850,850’と係合突起851,851’とによりなす断面視形状に符合して対応する断面視形状で貫設される。詳細には、バネ孔15,15’は、軸方向視において、固定ピン85,85’の胴部850,850’とスプリング34が挿通される円形のバネ挿通部と、バネ挿通部から径方向の外側へ切り欠いて形成され、固定ピン85,85’の係合突起851,851’を挿通する突起挿通部と、を有して形成される。
【0094】
また、ピン係止溝16,16’は、先端外筒体10の接線方向に沿って形成されると共に、バネ孔15,15’の中途部で径方向外側で円環状に凹ませて形成している。
【0095】
これにより、バネ孔15,15’に挿通した固定ピン85,85’をバネ孔15,15’内で回転させ、
図8(b)及び
図9に示すように、胴部850,850’の係合突起851,851’を突起挿通部151,151’からピン係止溝16,16’内に配置して、固定ピン85,85’を先端外筒体10に係合させる。
【0096】
また、先端外筒体10の周壁対向部において、バネ孔15,15’の近傍には、位置決めプレート84,84’に形成され位置決めライナー80の外周側に係合する位置決め突部841,841’を挿通するピン挿通孔17,17’が貫設されている。ピン挿通孔17,17’は、軸方向を、先端外筒体10の接線方向に沿わせると共に、中央のバネ孔15,15’の軸方向に平行にしている。なお、詳細は後述するが、位置決めプレート84,84’は、先端外筒体10の外周壁に係合して、先端外筒体10内に嵌着した位置決めライナー80を固定する。
【0097】
バックプレート90は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、先端外筒体10の内部で、最後部に配置される肉薄の円盤部材であって、矢体4の進出位置を規制すると共に、破砕機構ケース1の内部における矢体4の姿勢を保持する。
【0098】
バックプレート90の外周面90aの所定位置には、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、バックプレート係止ピン93,93’と径方向から係合する係合溝92,92’が上下に2つ切欠き形成されている。係合溝92,92’は、バックプレート90の外周において、直径方向に対向すると共に、径方向の内側に凹ませて形成されている。
【0099】
バックプレート係止ピン93,93’は、
図4で示したように、小筒部101の後端部の周壁をバックプレート90の軸方向視で直径方向に対向して貫通形成した上下一対のピン挿通孔101b,101b’に挿通される。バックプレート90は、
図5(a)に示すように、上下の係合溝92,92’をそれぞれ小筒部101の上下のピン挿通孔101b,101b’に位置付け、同ピン挿通孔101b,101b’にバックプレート係止ピン93,93’を挿入することにより、先端外筒体10の内側に一体的に固定される。
【0100】
また、バックプレート90は、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、板面の中央部に矢体4の矢本体部40が挿通される略方形状の矢体挿通孔91を有する。矢体挿通孔91は、孔径を矢体4の矢本体部40が軸方向(前後方向)へスライド可能な径にすると共に、連結部41よりも小さい径にして形成される。矢体挿通孔91の上下長さは、矢体4における矢本体部40の厚みに略同じとしている。
【0101】
つまり、バックプレート90は、破砕機構ケース1の内部で、矢体4の矢本体部40を矢体挿通孔91に挿通すると共に、矢体4の連結部41よりも前側に配置され、矢体挿通孔91の上下内側面で矢本体部40の上下面に摺接して矢体4の進出・退去動作を案内するガイド板として機能する。
【0102】
なお、矢体挿通孔91は、先端外筒体10の筒孔としての挿通孔10b、後述するフロントプレート70の挿通孔70b、位置決めライナー80の挿通孔80bに連通する。また、
図5(b)中、符号94は、バックプレート90のバックプレート収納部14への離脱・嵌着操作に使用する引っ張り螺子などの操作用工具に係合する工具係合孔94である。
【0103】
フロントプレート70は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、先端外筒体10の内部で、先端外筒体10の係合凹凸部12と小筒部101の前端部101aとの間のフロントプレート収納部13に嵌着する肉厚の円盤部材であって、
図5(c)に示すように、外周面70aに先端外筒体10の係合凹凸部12に軸方向から符合する係合凹凸部71を有する。
【0104】
フロントプレート70の係合凹凸部71は、
図6(a)外周面70aの周方向に沿って交互に形成された係合凸部710と係合凹部711とにより構成される。
図6(b)に示すように、フロントプレート70において、係合凸部710は先端外筒体10の係合凹部121に軸方向から挿通可能に符合する形状を有する。また、係合凹部711は先端外筒体10の係合凸部120に軸方向から挿通可能に符合する形状を有する。
【0105】
係合凸部710は、径断面視で環状扇形状の鍔部として外周面70aから径方向外側へ突出すると共に、外周面70aの周方向に沿って一定間隔に複数形成している。係合凸部710は、軸方向視で先端外筒体10の内周の略1/8長さであり、直径方向に対向して外周面70aから(軸中心に点対称で)4つ突出して形成されている。
【0106】
より詳細には、フロントプレート70の軸方向視で、直径方向に沿う一方の一対の係合凸部710,710と、直径方向に沿う他方の一対の係合凸部710,710とが相対的に、それぞれフロントプレート70の軸を中心に外周面70aで十字状に直交して配置される。
【0107】
この係合凸部710が、フロントプレート70の外周面70aにおいて、周方向に沿って一定間隔で複数(4つ)突出して形成されることによって、係合凸部710同士の間、且つ周方向に沿って一定間隔で係合凹部711が複数(4つ)形成される。
【0108】
係合凹部711は、隣接する係合凸部710,710同士の間で、係合凸部710と同じ径断面視で環状扇形状の仮想空間部として形成される。つまり、係合凹部711は、係合凸部710と同様、軸方向視で先端外筒体10の内周の略1/8長さの環状扇形であり、直径方向に対向してフロントプレート70の外周面70aから(軸中心に点対称で)4つ形成される。
【0109】
より詳細には、フロントプレート70の軸方向視で、直径方向に沿う一方の一対の係合凹部711,711と、直径方向に沿う他方の一対の係合凹部711,711とが相対的に、それぞれフロントプレート70の軸を中心に外周面70aで十字状に直交して配置される。
【0110】
フロントプレート70は、係合凹凸部71の係合凸部710と係合凹部711とをそれぞれ先端外筒体10の係合凹凸部12の係合凹部121と係合凸部120とに挿嵌させて軸方向に後方に移動することにより、先端外筒体10の係合凹凸部12と小筒部101の前端部101aとの間のフロントプレート収納部13に周方向に回転可能に嵌着される。
【0111】
つまり、フロントプレート70を先端外筒体10のフロントプレート収納部13に挿嵌する際には、
図6(b)に示すように、軸方向視で、フロントプレート70の係合凹凸部71を先端外筒体10の係合凹凸部12に逆位相に位置付け、互いに係合凹凸部71と係合凹凸部12とを雌雄嵌合させつつ、先端外筒体10の軸方向の後側へフロントプレート70を移動させる。これにより、フロントプレート70が先端外筒体10のフロントプレート収納部13に収納される。
【0112】
このようなフロントプレート収納部13へのフロントプレート70の収納配置状態において、フロントプレート70の係合凹凸部71と先端外筒体10の係合凹凸部12との嵌合が解除されるため、フロントプレート70はフロントプレート収納部13内部で周方向に回転可能な状態となる。
【0113】
そして、フロントプレート70をフロントプレート収納部13に配置された状態で回転させることにより、
図6(c)に示すように、軸方向視で先端外筒体10の係合凸部120に係合凸部710を重合して配置して係合すると共に、先端外筒体10の係合凹部121に係合凹部711を重合して配置する。
【0114】
つまり、軸方向視で、フロントプレート70の係合凹凸部71を先端外筒体10の係合凹凸部12に同位相に位置付け、互いに係合凹凸部71と係合凹凸部12とを軸方向で対面させて係合する。
【0115】
これにより、フロントプレート70は、フロントプレート収納部13において、先端外筒体10の係合凹凸部12と小筒部101の前端部101aとにより軸方向への動きを規制される。さらに、フロントプレート70は、軸方向視で係合凹凸部71を先端外筒体10の係合凹凸部12と位相を合わせた状態で、位置決めライナー80の位置決め凹凸部81が嵌り込むスプライン溝を形成する。
【0116】
また、フロントプレート70は、
図5(c)、及び
図6(a)から
図6(b)に示すように、板面の中央部に羽根体3の羽根本体部31,31’と矢体4の矢本体部40とが挿通される軸方向視略方形状の挿通孔70bを有する。挿通孔70bは、孔径を羽根単体30,30’の羽根本体部31,31’が径方向で近接離間可能な径にすると共に、羽根単体30,30’の突片部33,33’よりも小さい径にして形成される。
【0117】
より詳細には、挿通孔70bは、軸方向視において、フロントプレート70の中央で矢体4を挿通する略円形の矢体挿通部700bと、矢体挿通部700bの左右側で羽根単体30,30’をそれぞれ挿通する略方形状の羽根体挿通部701b,701b’とを有する。なお、
図5(c)中、符号73は、フロントプレート70のフロントプレート収納部13への離脱・嵌着操作に使用する引っ張り螺子などの操作用工具に係合する工具係合孔73である。
【0118】
つまり、フロントプレート70は、破砕機構ケース1の内部で、矢体4の矢本体部40と羽根体3の羽根本体部31,31’を矢体挿通孔91に挿通すると共に、羽根単体30,30’の突片部33,33’よりも前側に配置され、羽根体3の拡開・閉塞動作を案内するガイド板として機能する。詳細には、挿通孔70bの上下面を、一対の羽根単体30,30’の基部の上下面が摺接する摺接面とすることで、各羽根単体30,30’を左右方向へガイドする。
【0119】
羽根体3は、基部である突片部33,33’を先端外筒体10の小筒部101内で径方向(直径方向)へ移動可能に配置し、後述する位置決めライナー80や位置決めプレート84,84’で固定されたフロントプレート70により軸方向の動きを規制される。
【0120】
換言すれば、先端外筒体10の軸方向において、
図3(a)及び
図3(b)、
図9に示すように、フロントプレート70とバックプレート90との間の小筒部101の内部空間に、羽根体3の突片部33,33’が配置される。つまり、フロントプレート70とバックプレート90とは、先端外筒体10の内部において、一定間隔で配置されることにより羽根体3の基部を保持させる羽根体保持空間部を形成する。
【0121】
また、フロントプレート70は、板面に位置決めライナー80と軸方向から嵌合するライナー内嵌部72を有する。ライナー内嵌部72は、前側板面において、挿通孔70bの周縁部から前側へ突出した突部として形成される。ライナー内嵌部72は、位置決めライナー80の後面側で、位置決めライナー80の挿通孔80bの後方開口縁部に挿嵌される。
【0122】
位置決めライナー80は、
図3(a)及び
図3(b)、
図8及び
図9に示すように、先端外筒体10の内部で、バックプレート90よりも前側の係合凹凸部12に嵌着する肉厚の円盤部材である。位置決めライナー80は、板厚を先端外筒体10の係合凹凸部12の軸方向長さと略同じにして肉厚形成している。
【0123】
位置決めライナー80は、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、外周面80aに、先端外筒体10の係合凹凸部12とフロントプレート70の係合凹凸部71とに軸方向から符合する位置決め凹凸部81を有する。位置決め凹凸部81は、外周面80aの周方向に沿って交互に形成された係合凸部810と係合凹部811とにより構成される。
【0124】
位置決め凹凸部81において、係合凸部810は先端外筒体10の係合凹部821とフロントプレート70の係合凹部711とに軸方向から挿嵌可能に符合する形状を有する。また、係合凹部811は先端外筒体10の係合凸部120とフロントプレート70の係合凹部711とに軸方向から挿嵌可能に符合する形状を有する。
【0125】
係合凸部810は、径断面視で環状扇形状の鍔部として外周面80aから径方向外側へ突出すると共に、外周面80aの周方向に沿って一定間隔に複数形成している。
【0126】
係合凸部810は、軸方向視で先端外筒体10の内周の略1/8長さの環状扇形であり、外周面80aから直径方向に対向して(軸中心に点対称で)4つ突出して形成されている。
【0127】
詳細には、位置決めライナー80の軸方向視で、直径方向に沿う一方の一対の係合凸部810,810と、直径方向に沿う他方の一対の係合凸部810,810とが相対的に、それぞれ位置決めライナー80の軸を中心に外周面80aで十字状に直交して配置される。
【0128】
つまり、位置決めライナー80の外周面80aにおいて、周方向に沿って一定間隔で係合凸部810が複数(4つ)突出して形成されることによって、隣接する係合凸部810同士の間、且つ周方向に沿って一定間隔で、係合凹部811が複数(4つ)形成される。
【0129】
係合凹部811は、隣接する係合凸部810,810同士の間で、係合凸部810と同じ径断面視で環状扇形状の仮想空間部として形成される。
【0130】
詳細には、位置決めライナー80の軸方向視で、直径方向に沿う一方の一対の係合凹部811,811と、直径方向に沿う他方の一対の係合凹部811,811とが相対的に、それぞれ位置決めライナー80の軸を中心に外周面80aで十字状に直交して配置される。
【0131】
また、係合凸部810は、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、フロントプレート70の係合凹部711に軸方向から挿嵌される環状扇形状の鍔部を、側面視で位置決めライナー80の後面よりも軸方向の後方側に延出させている。
【0132】
係合凸部810は、先端外筒体10の係合凹部121に対応して挿嵌される筒体嵌着部810aと、フロントプレート70の係合凹部711に対応して挿嵌されるプレート嵌着部810bと、を有する。プレート嵌着部810bの突出長さは、フロントプレート70の板厚以下、すなわち、フロントプレート70の係合凹部711の軸方向長さ以下に形成される。
【0133】
要するに、先端外筒体10の係合凹凸部12と、フロントプレート70の係合凹凸部71と、位置決めライナー80の位置決め凹凸部81とは、それぞれ同形同大に形成されており、互いにスプライン嵌合をするスプライン構造を有する。
【0134】
すなわち、先端外筒体10の係合凹凸部12とフロントプレート70の係合凹凸部71とを同位相にした先端外筒体10とフロントプレート70とをスプライン溝とし、位置決めライナー80を位置決め凹凸部81を挿嵌させるスプライン軸とする。
【0135】
特に、フロントプレート70と位置決めライナー80とは、内側でライナー内嵌部72と挿通孔80bの後方開口縁部とを嵌合すると共に、外側で係合凹部711に係合凸部810を嵌合する一体的な内外相互嵌合構造を有し、各挿通孔70b,80bを連通させる。
【0136】
また、位置決めライナー80は、
図8(a)に示すように、板面の中央部に羽根体3のスプリング嵌合部32と矢体4の矢本体部40とが挿通され配置される軸方向視方形状の挿通孔80bを有する。挿通孔80bは、孔径を羽根単体30,30’の羽根本体部31,31’が径方向で近接離間可能な幅径にして形成される。
【0137】
より詳細には、挿通孔80bは、軸方向視において、
図7(a)に示すように、位置決めライナー80の中央で矢体4を挿通する略円形の矢体挿通部800bと、矢体挿通部800bの左右側で羽根単体30,30’をそれぞれ挿通する略方形状の羽根体挿通部801b,801b’とを有する。なお、
図8(а)中、符号86は、位置決めライナー80の先端外筒体10への離脱・嵌着操作に使用する引っ張り螺子などの操作用工具に係合する工具係合孔86である。
【0138】
方形状の挿通孔80bを形成する内周面のうち対向する短手面は、
図7(a)から
図8(a)に示すように、一対の係合凹部811,811と同位置に形成される。短手面はそれぞれ、挿通孔80bに挿通した2枚の羽根単体30,30’のスプリング嵌合部32,32’の凹溝32a,32a’が対向する面となる。
【0139】
位置決めライナー80の係合凹部811,811が形成された周壁対向部には、
図7(a)から
図8(a)に示すように、先端外筒体10のバネ孔15,15’に連通すると共にスプリング嵌合部32,32’に対応し、スプリング34、34’を挿通するための一対のバネ孔82,82’が形成されている。
【0140】
バネ孔82,82’は、直径方向に対向して位置決めライナー80の周側壁部に穿設され、内側の挿通孔80bに径方向から連通する。また、バネ孔82,82’は、位置決めライナー80の外周面80aに形成した対向する係合凹部811,811の中央部を貫通すると共に、挿通孔80bの内周面をなす短手面を貫通して形成される。
【0141】
すなわち、先端外筒体10に位置決めライナー80を嵌着した状態において、先端外筒体10のバネ孔15,15’と位置決めライナー80のバネ孔82,82’とが連通し、同連通したバネ孔15,15’,82,82’との径方向内側には、位置決めライナー80の挿通孔80bに配置した羽根単体30,30’のスプリング嵌合部32,32’が位置することとなる。
【0142】
また、位置決めライナー80の周壁対向部において、バネ孔82,82’の近傍には、
図7(a)から
図8(a)に示すように、位置決めプレート84,84’に形成された位置決め突部841,841’の先端部が嵌り込むピン係合溝83,83’が形成されている。
【0143】
ピン係合溝83,83’は、位置決めライナー80の外周面80aにおいて、位置決めライナー80を先端外筒体10に嵌着した状態で、先端外筒体10の周壁対向部に貫設したピン挿通孔17,17’に連通する位置に形成される。詳細には、ピン係合溝83,83’は、バネ孔82,82’の近傍の上下側で係合凹部811,811に隣接した係合凸部810,810の縁部を径方向へ凹ませて上下2つ形成される。
【0144】
これにより、先端外筒体10に軸方向から嵌着して周方向への動きを規制された位置決めライナー80は、連通する先端外筒体10のピン挿通孔17,17’とピン係合溝83,83’とに、位置決めプレート84,84’の位置決め突部841,841’を挿通して係合し、先端外筒体10から軸方向への動きを規制されて固定される。位置決めライナー80は、先端外筒体10に嵌着された状態で、前面を先端外筒体10の前端面と略面一状にする。
【0145】
また、位置決めライナー80の前面の所定位置には、
図13(b)に示すように、樹脂プレート18を係止するための係止突起80c,80c’が突出している。係止突起80c,80c’は、前面において挿通孔80bの近傍の上下側の周縁部から前方へ向けて2つ突出している。
【0146】
樹脂プレート18は、一定厚みの円盤樹脂板であって、
図13(b)に示すように、板面に羽根体3と矢体4を挿通するための方形窓状の挿通孔18aと、位置決めライナー80の係止突起80c,80c’に係合する係合孔18b,18b’とを有する。樹脂プレート18は、位置決めライナー80の前面や先端外筒体10の前端縁面が岩石に直接的に不用意に突き当たり座屈損傷することを防止するアブソーバ機能を果たす。
【0147】
このような位置決めライナー80が、位置決め凹凸部81を先端外筒体10の係合凹凸部12に嵌合して周方向への回転を規制されると共に、先端外筒体10の外側に付設される位置決めプレート84,84’により軸方向への動きを規制されて、先端外筒体10の内部に収納配置される。
【0148】
位置決めプレート84,84’は、
図2、
図8(a)及び
図14(a)に示すように、先端外筒体10の外周壁部に沿う略円弧状の湾曲板部材であって、先端外筒体10のバネ孔15,15’に連通するバネ孔840,840’と、先端外筒体10のピン挿通孔17,17’に挿通される位置決め突部841,841’と、を有する。
【0149】
バネ孔840,840’は、板面の中央部で、固定ピン85,85’の胴部850,850’と係合突起851,851’とによりなす断面視形状に符合して対応する断面視形状で貫設される。
【0150】
また、バネ孔840,840’の外側開口の周縁部には、固定ピン85,85’の頭部852,852’の底縁部に当接する座繰部(図示略)を形成している。座繰部は、バネ孔840,840’を固定ピン85,85’の頭部852,852’の外径よりも小径とし、バネ孔840,840’の上側周縁に固定ピン85,85’の頭部852,852’が当接するように形成される。
【0151】
位置決め突部841,841’は、
図8(a)及び
図14(a)に示すように、先端外筒体10の外周壁部に対向する円弧の内側で、バネ孔840,840’の周縁近傍の板面から突出して形成される。位置決め突部841,841’は、突出方向を、先端外筒体10の接線方向に沿わせると共に、中央のバネ孔840,840’の軸方向に平行としている。
【0152】
固定ピン85,85’は、
図8(a)から
図9、及び
図14(a)に示すように、扁平円盤状の頭部852,852’と、頭部852,852’の下面の中央部で下方伸延する胴部850,850’と、胴部850,850’の周面から径方向の外側へ軸中心に点対称で突出する係合突起851,851’と、スプリング34の基部を押圧する先端部853,853’と、を有する。
【0153】
頭部852,852’の頂面には、固定ピン85,85’を回転させるドライバやコイン等の工具を挿し込む十文字状の工具係合溝852a,852a’が形成されている。
【0154】
先端部853,853’は、胴部850,850’よりも外径を小さくすると共にスプリング34の基部でスプリング34に内嵌される。先端部853,853’と胴部850,850’との境には、スプリング34,34’の基端面に当接してスプリング34,34’を押圧する押圧段部が形成されている。つまり、押圧段部は、胴部850,850’の下端部として、先端部853,853’との境に形成される。
【0155】
スプリング34,34’は、
図2、
図8(a)から
図9、
図14(a)に示すように、圧縮コイルバネであって、先端外筒体10のバネ孔15,15’に径方向から挿入されて先端部で羽根体3に当接して係合し、固定ピン85,85’により押圧されることにより、羽根体3を閉塞付勢する。
【0156】
詳細には、スプリング34,34’は、それぞれ連通する先端外筒体10のバネ孔15,15’と位置決めライナー80のバネ孔82,82’と位置決めプレート84,84’のバネ孔840,840’とに挿通された状態で、先
図8(a)から
図9に示すように、端部を羽根単体30,30’のスプリング嵌合部32,32’における凹溝32a,32a’に嵌着し、基端部から先端外筒体10に係合して固定した固定ピン85,85’により、収縮変形して圧入される。
【0157】
これにより、スプリング34、34’が、固定ピン85,85’により先端外筒体10内部で固定された基端部を固定端として収縮変形し、伸延復帰する反力が先端部から羽根単体30,30’へ伝達され、各羽根単体30,30’同士を対向方向へ常時付勢する。
【0158】
すなわち、矢体4と羽根体3とを破砕機構ケース1に保持させるべく、先端外筒体10の内部でバックプレート90、フロントプレート70、位置決めライナー80を順次嵌着して軸方向に並設し、先端外筒体10の外側部に位置決めプレート84,84’を装着し、バネ孔15,15’にスプリング34を挿し込む。
【0159】
最終的に、固定ピン85,85’を先端外筒体10のピン係止溝16,16’に係合させることで、て破砕機構A1の組立作業を完了することできる。したがって、特殊な工具や特殊な技能を要することなく、誰でも簡単に破砕機構A1の分解作業や組立作業を行うことができる。
【0160】
[3.羽根体の取外し・取付け時の破砕機構の分解・組立作業]
次に、羽根体3の取外し・取付け時における石割パッカーAにおける破砕機構A1の分解・組立作業について説明する。羽根体3の取外し作業や取付け作業は、それぞれ大きく固定ピン脱着工程S1、位置決めライナー脱着工程S2、フロントプレート・羽根体脱着工程S3の3つの一連の工程からなる。以下、各工程S1~S3の概略、羽根体3の取外し作業及び取付け作業について詳細に説明する。
【0161】
(1)固定ピン脱着工程S1
固定ピン脱着工程S1は、固定ピン85,85’を先端外筒体10から離脱又は先端外筒体10に係合する工程であり、羽根体3の取外し作業時に実施する最初の工程又は取付け作業時に実施する最後の工程である。本工程S1は、固定ピン85,85’の取外し・取付け作業の他、スプリング34,34’及び位置決めプレート84,84’の取外し・取付け作業を含む。
【0162】
詳細には、本工程S1は、先端外筒体10及び位置決めライナー80に対し、固定ピン85,85’及びスプリング34,34’並びに位置決めプレート84,84’を解除・係合して、先端外筒体10内の位置決めライナー80の軸方向への動きを解除・規制する工程である。
【0163】
(2)位置決めライナー脱着工程S2
位置決めライナー脱着工程S2は、位置決めライナー80を先端外筒体10内から離脱又は先端外筒体10内に嵌着する工程であり、羽根体3の取外し作業時及び取付け作業時に実施する中間の工程である。本工程S2は、位置決めライナー80の取外し・取付け作業の他、樹脂プレート18の取外し・取付け作業を含む。
【0164】
詳細には、本工程S2は、位置決めライナー80の前面と樹脂プレート18との解除又は係合し、位置決めライナー80の位置決め凹凸部81と先端外筒体10の係合凹凸部12及びフロントプレート70の係合凹凸部71とを解除又は係合し、位置決めライナー80を先端外筒体10から離脱又は先端外筒体10に配置し、先端外筒体10内のフロントプレート70の周方向への動きを解除又は規制する工程である。
【0165】
(3)フロントプレート・羽根体脱着工程S3
フロントプレート・羽根体脱着工程S3は、フロントプレート70及び羽根体3を先端外筒体10内から離脱又は先端外筒体10内へ装着する工程であり、羽根体3の取外し作業時に実施する最後の工程又は取付け作業時に実施する最初の工程である。
【0166】
詳細には、本工程S3は、フロントプレート70を周方向に所定角度(45°)回転させてフロントプレート70の係合凹凸部71と先端外筒体10の係合凹凸部12とを解除又は係合し、先端外筒体10内のフロントプレート70の軸方向への動きを解除又は規制し、フロントプレート70をフロントプレート収納部13から離脱又はフロントプレート収納部13に配置し、羽根体3を先端外筒体10から抜去又は先端外筒体10に保持する工程である。
【0167】
(4)羽根体の取外し作業
羽根体3の取外し作業は、上述した固定ピン脱着工程S1→位置決めライナー脱着工程S2→フロントプレート・羽根体脱着工程S3の順番で行う。羽根体3を先端外筒体10から取外す際、作業者は、まず、固定ピン脱着工程S1として先端外筒体10から固定ピン85,85’と位置決めプレート84,84’とスプリング34,34’を取外す。
【0168】
詳細には、
図14(a)及び
図14(b)に示したように、位置決めプレート84,84’の固定ピン85,85’を回して、先端外筒体10と固定ピン85,85’の係合を解除し、バネ孔15,15’からスプリング34,34’を取り出すと共に、位置決めプレート84,84’を取外す。これにより、先端外筒体10内部に嵌着収納した位置決めライナー80の軸方向へ動きの規制が解除される。
【0169】
次に、作業者は、位置決めライナー脱着工程S2として、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、位置決めライナー80から樹脂プレート18を外し、先端外筒体10から位置決めライナー80を取外す。
【0170】
位置決めライナー80の取外しは、先端外筒体10の内側にある位置決めライナー80を軸方向前側にスライドさせて、先端外筒体10の係合凹凸部12と位置決めライナー80の位置決め凹凸部81とのスプライン嵌合を解除しながら行う。
【0171】
なお、樹脂プレート18の位置決めライナー80からの取外し作業は、固定ピン脱着工程S1に含めることとしてもよい。また、位置決めライナー80の工具係合孔86に引っ張り螺子などの操作用工具を係合させ、同操作用工具を介して位置決めライナー80を軸方向前側へ移動させて先端外筒体10から抜き取ることもできる。
【0172】
次に、作業者は、
図11(a)に示すように、フロントプレート・羽根体脱着工程S3を実施する。位置決めライナー80を先端外筒体10から取り出した状態において、先端外筒体10のバックプレート収納部14内のフロントプレート70は周方向への規制が解かれて回転可能となっている。
【0173】
周方向への規制が解かれたフロントプレート70について、作業者は、一対の羽根単体30,30’の先端部分を把持して挿通孔70b内で離間するように拡げ、羽根単体30,30’の基端の突片部33,33’をフロントプレート70の後面に係合させる。
【0174】
この羽根単体30,30’とフロントプレート70との係合状態で、
図6(b)及び
図6(c)で示したように、羽根単体30,30’を介してバックプレート収納部14内のフロントプレート70を所定角度(45°)回転させることにより、先端外筒体10の係合凹凸部12とフロントプレート70の係合凹凸部71とを軸方向視で逆位相に位置付け、軸方向への係合を解除する。
【0175】
その後、作業者は、フロントプレート70の係合凹凸部71を、先端外筒体10のスプライン溝、すなわち係合凹凸部12に挿通させ、羽根体3ごとフロントプレート70を軸方向の前側に引っ張ることにより、羽根体3とフロントプレート70を先端外筒体10の前側開口から取り出す。なお、フロントプレート70の工具係合孔73に引っ張り螺子などの操作用工具を係合させ、同操作用工具を介してフロントプレート70を軸方向前側に抜き取ることもできる。このようにして、羽根体3の取外し作業を完了する。
【0176】
(5)羽根体の取付け作業
羽根体3の取付け作業は、羽根体3の取外し作業とは逆に、フロントプレート・羽根体脱着工程S3→位置決めライナー脱着工程S2→固定ピン脱着工程S1の順番で行う。羽根体3を先端外筒体10に取付ける際、作業者は、フロントプレート・羽根体脱着工程S3として、新たな羽根体3の基部を先端外筒体10の内部に配置する。
【0177】
詳細には、予め羽根体3をフロントプレート70の挿通孔70bを介して挿通して組み合わせる。次いで、
図10(b)、
図11(a)、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、一対の羽根単体30,30’の突片部33,33’をフロントプレート70ごと先端外筒体10の小筒部101に収納する。この際、一対の羽根単体30,30’の摺動面をバックプレート90の矢体挿通孔91から突出する矢本体部40のテーパー面に対面状態とする。
【0178】
また、
図6(b)から
図7(a)で示したように、フロントプレート70は、先端外筒体10のフロントプレート収納部13へ収納配置される。すなわち、軸方向視で、フロントプレート70の係合凹凸部71を先端外筒体10の係合凹凸部12に逆位相に位置付け、互いに係合凹凸部71と係合凹凸部12とを雌雄嵌合させつつ、先端外筒体10の軸方向の後側へフロントプレート70を移動させてフロントプレート70をフロントプレート収納部13に収納する。
【0179】
次いで、フロントプレート70をフロントプレート収納部13に配置された状態で回転(軸中心に45°回転)させ、
図6(c)で示したように、フロントプレート70の係合凹凸部71を先端外筒体10の係合凹凸部12に同位相に位置付け、互いに係合凹凸部71と係合凹凸部12とを軸方向で対面させて係合する。
【0180】
詳細には、作業者は、一対の羽根単体30,30’の先端部分を把持して挿通孔70b内で離間するように拡げて羽根単体30,30’をフロントプレート70に係合させてフロントプレート70をフロントプレート収納部13内で回転させる。
【0181】
これにより、フロントプレート70は、フロントプレート収納部13において、先端外筒体10の係合凹凸部12と小筒部101の前端部101aとにより軸方向への動きを規制され、係合凹凸部71と先端外筒体10の係合凹凸部12とにより位置決めライナー80の位置決め凹凸部81が嵌り込むスプライン溝を形成する。
【0182】
次に、作業者は、位置決めライナー脱着工程S2として、位置決めライナー80を先端外筒体10の内部に収納配置する。詳細には、
図10(a)、
図10(b)及び
図13(b)に示すように、位置決めライナー80の挿通孔80bに羽根体3と矢体4とを挿通しつつ、フロントプレート70の係合凹凸部71と先端外筒体10の係合凹凸部12とにより先端外筒体10の内部に形成したスプライン溝に位置決め凹凸部81を挿嵌する。
【0183】
このような状態で、先端外筒体10の大筒部100の内部には、
図9で示したように、羽根体3の基部であるスプリング嵌合部32及び突片部33と、フロントプレート70と位置決めライナー80とが配置される。フロントプレート70は、フロントプレート収納部13内での周方向への回転を規制されて羽根体3を保持する。
【0184】
また、先端外筒体10のバネ孔15,15’に位置決めライナー80のバネ孔82,82’が、先端外筒体10のピン挿通孔17,17’に位置決めライナー80のピン係合溝83,83’が、それぞれ連通する。
【0185】
このような位置決めライナー80に樹脂プレート18を取付ける。なお、樹脂プレート18の位置決めライナー80への取付け作業は、フロントプレート・羽根体脱着工程S3に含めることとしてもよいし、固定ピン脱着工程S1に含めることとしてもよい。
【0186】
次に、作業者は、
図14(a)に示すように、固定ピン脱着工程S1として、固定ピン85,85’を先端外筒体10の外側から装着する。詳細には、位置決めプレート84の位置決め突部841,841’をそれぞれ先端外筒体10のピン挿通孔17,17’に挿通し、位置決め突部841,841’の先端部を内部の位置決めライナー80のピン係合溝83,83’に係合させる。
【0187】
また、位置決めプレート84,84’の中央で先端外筒体10のバネ孔15,15’及び位置決めライナー80のバネ孔82,82’に連通したバネ孔840,840’に、スプリング34、34’を挿入する。この際、スプリング34,34’の基部に固定ピン85,85’を取付けておく。
【0188】
最終的に、固定ピン85,85’をスプリング34、34’を押圧しながら先端外筒体10のバネ孔15,15’へ押し込み、固定ピン85,85’を先端外筒体10に係合する。
【0189】
すなわち、スプリング34,34’の先端部を、先端外筒体10の内部に配置した一対の羽根単体30,30’のスプリング嵌合部32,32’に挿嵌し、34,34’を圧縮させながら固定ピン85,85’を先端外筒体10のバネ孔15,15’内へ押し込む。
【0190】
このような状態で、固定ピン85,85’を回転させることにより、
図8(b)及び
図9で示したように、固定ピン85,85’の胴部850,850’の中途部に突出形成した係合突起851,851’を、先端外筒体10のバネ孔15,15’の中途部に形成したピン係止溝16,16’に係合する。
【0191】
先端外筒体10に係合した固定ピン85,85’により、位置決めプレート84,84’を先端外筒体10の外側に装着固定すると共に、位置決めライナー80を先端外筒体10の内側に固定し、対向するスプリング34、34’の復帰力をそれぞれ一対の羽根単体30,30’に伝達して閉塞付勢させる。これにより、
図14(b)のように羽根体3を取付ける際の破砕機構A1の組立作業を完了する。
【0192】
このように、破砕機構ケース1とアクチュエータ2を一体的に連結したままで、
石割パッカーAの羽根体3の交換等を行うことができる。すなわち、羽根体3を取外す際には、順次、前側の先端外筒体10から位置決めライナー80とフロントプレート70と羽根体3とを抜去できる。
【0193】
また、羽根体3を組み付ける際には、逆の手順で先端外筒体10内に新たな羽根体3、フロントプレート70、位置決めライナー80を挿嵌していくだけで新たな羽根体3を先端外筒体10に保持できる。すなわち、羽根体3を取外す際に従来は必須であった破砕機構ケース1とアクチュエータ2との分離・組立作業をすることなく、先端外筒体10の前側開口から簡単に羽根体3の交換作業を行うことができる。
【0194】
[4.矢体の取外し・取付時の破砕機構の分解・組立作業]
次に、矢体4の取外し・取付け時における石割パッカーAにおける破砕機構A1の分解・組立作業について説明する。矢体4の取外し作業や取付け作業は、上述した固定ピン脱着工程S1、位置決めライナー脱着工程S2、フロントプレート・羽根体脱着工程S3に加え、前側ハンドル脱着工程S4、クレビスピン脱着工程S5、バックプレート・矢体着脱工程S6、の6つの一連の工程からなる。以下、各工程S4~S6の概略、矢体4の取外し作業及び取付け作業について詳細に説明する。
【0195】
(1)前側ハンドル脱着工程S4
前側ハンドル脱着工程S4は、前側ハンドル6を破砕機構ケース1から離脱又は破砕機構ケース1に取付ける工程であり、矢体4の取外し作業時に実行する最初の工程又は取付け作業時に実施する最後の工程である。
【0196】
詳細には、本工程S4は、前側ハンドル6について、前側把持部61と前側固定部62とを上下分割又は結合して、破砕機構ケース1内部に通じるクレビスピン24を出し入れする上側ピン挿通口1b及び下側ピン挿通口1b’を開放又は閉塞する工程である。なお、本工程S4は、前述の固定ピン脱着工程S1、位置決めライナー脱着工程S2、フロントプレート・羽根体脱着工程S3のいずれかの工程の前後で実行することとしてもよい。
【0197】
(2)クレビスピン脱着工程S5
クレビスピン脱着工程S5は、クレビスピン24を破砕機構ケース1内部のアクチュエータ2の先端部と矢体4の基端部とに離脱又は取付ける工程であり、矢体4の取外し作業時又は取付け作業時に実施する中間の工程である。本工程S5は、クレビスピン24の取外し・取付け作業の他、止めリング25の取外し・取付け作業を含む。
【0198】
詳細には、本工程S5は、矢体4の基端部の連結部41のクレビス孔41aと、これに連通するアクチュエータ2の先端部の上側クレビス片22a及び下側クレビス片22a’のクレビス孔22b,22b’に対し、クレビスピン24を抜去・挿嵌し、矢体4とアクチュエータ2とを分離・連結する工程である。
【0199】
(3)バックプレート・矢体脱着工程S6
バックプレート・矢体脱着工程S6は、バックプレート90を先端外筒体10内から離脱又は先端外筒体10内へ装着すると共に、矢体4を破砕機構ケース1内のアクチュエータ2から離脱又はアクチュエータ2に連結する工程であり、矢体4の取外し作業時に実施する最後の工程又は取付け作業時に実施する最初の工程である。本工程は、先端外筒体10内のバックプレート90へのバックプレート係止ピン93,93’の取外し・取付け作業を含む。
【0200】
詳細には、本工程S6は、バックプレート90とバックプレート係止ピン93,93’とを解除又は係合し、バックプレート90をバックプレート収納部14から離脱又は配置し、矢体4を破砕機構ケース1の内部から抜去又は破砕機構ケース1の内部で保持する工程である。
【0201】
(4)矢体の取外し作業
矢体4の取外し作業は、上述した羽根体の取外し作業として固定ピン脱着工程S1→位置決めライナー脱着工程S2→フロントプレート・羽根体脱着工程S3を実施した後で、前側ハンドル脱着工程S4→クレビスピン脱着工程S5→バックプレート・矢体脱着工程S6を順番に行う。
【0202】
矢体4を破砕機構ケース1から取外す際、
図11(b)に示すように、作業者は、まず前側ハンドル脱着工程S4として破砕機構ケース1とアクチュエータ2から前側ハンドル6を取外し、破砕機構ケース1の後部に形成した上側ピン挿通口1b及び下側ピン挿通口1b’を開放する。
【0203】
次に、クレビスピン脱着工程S5として、
図12(a)に示すように、矢体4の基端部とアクチュエータ2の先端部とを連結しているクレビスピン24を、上側ピン挿通口1b及び下側ピン挿通口1b’を介して抜去する。この際、アクチュエータ2は、最退去位置に位置付けておく。
【0204】
詳細には、上側ピン挿通口1bから破砕機構ケース1の内部におけるクレビスピン24上部の止めリング25を取外す。その後、矢体4の連結部41のクレビス孔41aとその上下側のアクチュエータ2のクレビス片22a,22aのクレビス孔22b,22b’とに挿通されたクレビスピン24を破砕機構ケース1の上側ピン挿通口1b又は下側ピン挿通口1b’から抜去する。これにより、矢体4とアクチュエータ2の連結が解除される。
【0205】
次に、バックプレート・矢体脱着工程S6として、
図12(b)及び
図12(c)に示すように、先端外筒体10内のバックプレート90と破砕機構ケース1内の矢体4とを先端外筒体10の前側開口から取り出す。
【0206】
詳細には、
図12(a)に示すように先端外筒体10からバックプレート係止ピン93,93’を抜去して、バックプレート90と先端外筒体10との係合を解除する。その後、作業者は、矢体4の先端部分を把持して軸方向の前側に引っ張り、アクチュエータ2先端のクレビス片22a,22aに挟持された連結部41を抜去し、矢体4をアクチュエータ2の先端から取外す。
【0207】
さらに矢体4を軸方向の前側に引っ張ると、
図12(b)及び
図12(c)に示すように、矢体4の連結部41がバックプレート90に係合してバックプレート90が矢体4に追従してバックプレート収納部14から外れる。最終的に、バックプレート90と矢体4とを先端外筒体10の前側開口から抜き取ることができる。
【0208】
(5)矢体の取付け作業
矢体4の取付け作業は、矢体4の取外し作業と逆の順番の作業工程を実施する。すなわち、バックプレート・矢体脱着工程S6→クレビスピン脱着工程S5→前側ハンドル脱着工程S4→フロントプレート・羽根体脱着工程S3→位置決めライナー脱着工程S2→固定ピン脱着工程S1を順番に行う。
【0209】
バックプレート・矢体脱着工程S6として、作業者は、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、矢体4を先端外筒体10の前側開口から破砕機構ケース1内部へ差し入れ、矢体4の連結部41をアクチュエータ2先端の上下側のクレビス片22a,22aの間に挟持させる。このような状態で、矢体4のクレビス孔41aとアクチュエータ2先端のクレビス片22a,22aのクレビス孔22b,22b’とが連通する。
【0210】
また、
図12(a)に示すように、バックプレート90の矢体挿通孔91に矢体4の矢本体部40を挿通させながら、バックプレート90を先端外筒体10のバックプレート収納部14に収納設置する。その後、バックプレート係止ピン93,93’をピン挿通孔101b,101b’に挿入してバックプレート90を先端外筒体10の内部に係合固定する。
【0211】
次に、作業者は、クレビスピン脱着工程S5として、
図12(a)に示すように、破砕機構ケース1に形成したピン挿通口1b,1b’からクレビスピン24を挿入し、同クレビスピン24を矢体4とアクチュエータ2の連通したクレビス孔41a、22b,22b’に挿通する。
【0212】
その後、各クレビス孔41a、22b,22b’への挿通状態でクレビスピン24の上部に、止めリング25を外嵌して固定する。このようにして破砕機構ケース1内部の矢体4の連結部41とアクチュエータ2の先端部とが連結固定される。
【0213】
次に、作業者は、前側ハンドル脱着工程S4として、
図11(b)に示すように、上下分割した前側把持部61及び前側固定部62を組立てて、前側ハンドル6を破砕機構ケース1に取付ける。これにより、
図11(a)に示すように、破砕機構ケース1後部の上側ピン挿通口1b及び下側ピン挿通口1b’が閉塞される。
【0214】
最終的に、上述した(5)羽根体の取付け作業として、フロントプレート・羽根体脱着工程S3、位置決めライナー脱着工程S2、固定ピン脱着工程S1を順次実施して、矢体4の取付け作業を完了する。なお、本工程S4は、(5)羽根体の取付け作業を実施した後に行うこととしてもよい。
【0215】
以上、説明してきたように、本発明に係る石割パッカーの破砕機構の組立構造では、従来の石割パッカーとは異なり、羽根体や矢体を保持させるフレーム部材や締結部材などの多様且つ複数の連設固定部材を使用したりアクチュエータと破砕機構ケースとを分離・組立したりすることなく、破砕機構ケースの先端開口から羽根体や矢体を破砕機構ケースの内部に装着できる。
【0216】
すなわち、作業者に特別な技能を要求することなく、破砕機構ケースの先端部で、先端外筒体とフロントライナーと位置決めライナーとをそれぞれ相互に挿嵌係合させる簡単な組立作業だけで、羽根体と矢体との破砕機構ケースへの相対的な位置決めが簡単にでき、組立作業後は羽根体と矢体とを破砕機構ケースの所定位置に安定且つ強固に保持することができる。
【0217】
したがって、繰り返し使用により羽根体や矢体が摩耗したり座屈したりするなどして部材損傷が生じても、新たな羽根体や矢体へ交換する組立作業を誰でも簡単且つ短時間で行うことができ、作業効率を飛躍的に向上させることができる効果がある。さらに、石割パッカーの使用時には、毎回、楔作用を正しく生起させる動作の再現性を安定させ、本来的なパッカーとしての割石機能を安定させる効果がある。
【0218】
また、破砕機構ケースの先端の先端外筒体内で、フロントライナーと位置決めライナーとが羽根体の基部の周りで密集して配置されるために、中央の矢体の進出動作又は退去動作に伴う矢羽根の拡開動作及び閉塞動作により破砕機構ケースがうける拡開押圧作用をフロントライナーと位置決めライナーで受け止め、破砕機構ケースに座屈損傷が生じることを防止することができる。したがって、パッカーの装置寿命を延命させることができる効果がある。
【0219】
すなわち、本発明は、破砕機構の組立にネジなどの連結固定部材を一切使用することなく構成部材の係合凹凸部の組合せを行い、その後、最終作業工程として締付け固定ピンを使用して全部材中の一か所の係合部分を連結固定することにより従来の課題を円滑に解消することができる石割パッカーにおける破砕機構の組立構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0220】
A 石割パッカー、A1 破砕機構、1 破砕機構ケース、10 先端外筒体、10b 挿通孔(筒孔)、11 ケース本体部、12 係合凹凸部、13 フロントプレート収納部、14 バックプレート収納部、15 バネ孔、16 ピン係止溝、17 ピン挿通孔、18 樹脂プレート、2 アクチュエータ、20 油圧シリンダ、21 シリンダチューブ、22 ピストンロッド、23 カプラー、24 クレビスピン、3 羽根体、30 羽根単体、31 羽根本体部、32 スプリング嵌合部、33 突片部、34 スプリング、5 ロックナット、6 ハンドル、70 フロントプレート、70b 挿通孔、71 係合凹凸部、72 ライナー内嵌部、80 位置決めライナー、80b 挿通孔、81 位置決め凹凸部、82 バネ孔、83 ピン係合溝、84 位置決めプレート、840 バネ孔、841 位置決め突部、90 バックプレート、91 矢体挿通孔、92 係合溝