(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083077
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】紫外線LED照射装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20240613BHJP
G01N 21/91 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G01N21/91 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197381
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
(72)【発明者】
【氏名】松本 謙二
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051BA05
2G051BA20
2G051BC01
(57)【要約】
【課題】
複数の紫外線LEDから構成される紫外線LED照射装置による紫外線照射を、均一に自動調整する。
【解決手段】
複数の紫外線LED3の一つずつに、これに対応する光センサ4、温度センサ5と調光回路を配置し、個別に紫外線LED3の光量を調節する。紫外線LED照射装置1は、さらに可視光カットフィルタ6、表示装置8を備える。光センサ4の位置は、対応する紫外線LED3の近傍の指向角外である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紫外線LEDと、該紫外線LEDと被照射物の間に前記紫外線LEDの照射軸と直交して配置される可視光カットフィルタを有し、前記紫外線LEDが設けられるLED基板と調光回路とを備え、前記可視光カットフィルタは前記紫外線LEDから照射された紫外線を透過させ、可視光の透過を防ぐためのものである蛍光探傷検査用の紫外線LED照射装置において、
前記LED基板は、前記紫外線LEDの近傍に前記紫外線LEDと組となる光センサを備え、
前記光センサは対応する前記紫外線LEDから照射され、前記可視光カットフィルタにて反射した光線を直接受光できるように配置され、
前記光センサの位置は、前記紫外線LEDの指向角外であり、
さらに前記紫外線LED照射装置は、調光制御部を備え、
前記調光制御部は、前記光センサと前記調光回路に接続してこれらを制御可能に構成され、
前記調光回路は、前記複数の紫外線LEDの照射する紫外線の強度について、前記複数の紫外線LEDを個々に調整可能であり、
前記複数の紫外線LEDは、前記調光回路により、それぞれの前記紫外線LEDに対応する前記光センサの出力に基づいて、前記紫外線LEDから出射する紫外線を任意の紫外線強度を維持して前記紫外線LED同士の紫外線強度を略均一になるように調整可能に構成され、
前記紫外線LED照射装置はさらに表示装置を備え、
前記表示装置はキャラクタ表示器又は表示用LEDを備えることを特徴とする紫外線LED照射装置。
【請求項2】
複数の紫外線LEDと、該紫外線LEDと被照射物の間に前記紫外線LEDの照射軸と直交して配置される可視光カットフィルタを有し、前記紫外線LEDが設けられるLED基板と調光回路とを備え、前記可視光カットフィルタは前記紫外線LEDから照射された紫外線を透過させ、可視光の透過を防ぐためのものである蛍光探傷検査用の紫外線LED照射装置において、
前記LED基板は、前記紫外線LEDの近傍に前記紫外線LEDと組となる光センサを備え、
前記光センサは対応する前記紫外線LEDから照射され、前記可視光カットフィルタにて反射した光線を直接受光できるように配置され、
前記光センサの位置は、前記紫外線LEDの指向角外であり、
さらに前記紫外線LED照射装置は、調光制御部を備え、
前記調光制御部は、前記光センサと前記調光回路に接続してこれらを制御可能に構成され、
前記調光回路は、前記複数の紫外線LEDの照射する紫外線の強度について、前記複数の紫外線LEDを個々に調整可能であり、
前記光センサの位置は、前記紫外線LEDの指向角外であり、
前記複数の紫外線LEDは、前記調光回路により、それぞれの前記紫外線LEDに対応する前記光センサの出力に基づいて、前記紫外線LEDから出射する紫外線を任意の紫外線強度を維持して前記紫外線LED同士の紫外線強度を略均一になるように調整可能に構成され、
前記可視光カットフィルタは、350~380nmの波長の光を70パーセント以上透過し、400~700nmの光の透過率を1パーセント以下とする黒フィルタからなることを特徴とする紫外線LED照射装置。
【請求項3】
前記複数の紫外線LEDのそれぞれの前記紫外線LEDにつき、前記紫外線LEDを中心とした場合の前記光センサの同心円上、かつ前記光センサの近傍に温度センサを配置することを特徴とする、請求項1又は2に記載の紫外線LED照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光磁粉探傷試験や蛍光浸透探傷試験で使用する紫外線LED照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光磁粉探傷試験や蛍光浸透探傷試験の分野では、従来メタルハライドランプと反射板を組み合わせて使用されていたが、消費電力が大きいことや水銀の使用による環境影響の懸念から、紫外線LEDへの移行が進んでいる。この紫外線LEDは、近年高出力化が進んではいるが、未だに単体では強度や照射範囲が従来のメタルハライドランプに及ばないため、所定の距離に設定された照射面の範囲において所望の紫外線強度となるように複数の紫外線LED素子(光源)を組み合わせた紫外線LED照射装置が用いられている。
【0003】
メタルハライドランプと同様に、紫外線LED素子も使用とともに劣化し紫外線強度が低下する。紫外線強度が低下した場合には、寿命がつきた紫外線LED素子から交換することになる。紫外線LED素子の寿命には個体差があるため、すべての素子の交換を同時に行わない場合もあるが、寿命に達していない紫外線LED素子も劣化をしており新しく交換した紫外線LED素子よりも暗くなっている。この劣化した紫外線LED素子と新しく交換した紫外線LED素子では、同じ電圧や電流をかけたときでも紫外線強度は異なっており、照射面で合成された紫外線強度に明暗の差が生じて、傷が見えにくくなってしまう。特に画像処理といった用途で、特定の配光分布が得られるようにレンズ等で配光を調節している場合には、個々の紫外線LED素子がほぼ同一の紫外線強度を有していることを前提として配光を調節しているため、個々の紫外線LED素子の紫外線強度を調整して当初意図した所望の分布となるように調整する必要がある。
【0004】
そこで、従来、紫外線LED照射装置の使用時に、検査面に紫外線強度計を置き、測定値が規定値になるように灯具の調光をすることで、検査面での紫外線強度を一定にすることが行われていた。そして、規定値を満足していない場合には、作業者が灯具の調光を行い、作業負担が非常に大きいこととなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、LEDの寿命検知のため、内部用照度センサを持つ発明が開示されている。これは直列に接続されたLEDを並列に接続した回路において、不点灯となった直列回路を照度センサで検知して遮断することで他の並列に接続されている回路が連鎖的に導通不可となることを防ぐものである。これは、不点灯となったLEDを検知するものであり、点灯してはいるが所定の明るさになっていないLEDを調整するものとは異なる。
【0007】
複数の紫外線LED光源から構成される紫外線LED照射装置の不良になった紫外線LEDを一部だけ交換した際、交換しなかった紫外線LEDも多少劣化している為、交換した新品のLED光源が強く発光し、均一な配光分布とはならないという問題があった。この場合、全ての紫外線LEDを同時に交換すれば解決するが、経済的な問題が発生した。
【0008】
そこで、個々の紫外線LEDを調整するには、紫外線強度を測定する必要がある。例えば紫外線照射面において紫外線センサで紫外線強度を測りながら所望の配光が得られるまで紫外線LED素子(光源)を調整していくことが考えられる。複数のLED光源がある場合、一つずつ点灯し、それぞれに対応する紫外線センサの測定値から、個別に紫外線強度を算出する方法がある。しかし、この場合、測定時と実際に使用する時とで発光するLED光源の数が異なる為、回路全体にかかる負荷が変動してしまい、正確な光量値が得られないという問題があった。また、都度一つずつ点灯して調整をするために、探傷試験が中断することとなり、作業効率が落ちてしまうという問題があった。
【0009】
更に、ある紫外線LED素子(光源)の電流値を調整すると、その影響により調整済みの紫外線LED素子(光源)を再度調整しなくてはならなくなるという問題もあった。
【0010】
そこで、この回路の負荷を変動させない為に、全てのLED光源を点灯して調節すると、複数の紫外線LEDから出力される紫外線の合成となってしまうため、どの紫外線LED素子(光源)をどの程度調整すればよいのかわかりにくいという問題があった。
【0011】
また、紫外線LEDによる照射を紫外線センサにより測定をする際に、紫外線LED側から反射光を測定しようとした場合には、照射面での被照射物からの光の反射に影響され、紫外線強度が変動してしまい、適切な測定が難しいという問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、複数の紫外線LEDから構成される紫外線LED照射装置において、個々の紫外線LEDの輝度を測定する手段を確立し、光源の劣化を検出し、さらに、個々の紫外線LEDの輝度を自動調整し均一な照射をする事が可能になる紫外線LED照射装置を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の紫外線LED照射装置は、複数の紫外線LEDと、該紫外線LEDと被照射物の間に前記紫外線LEDの照射軸と直交して配置される可視光カットフィルタを有し、前記紫外線LEDが設けられるLED基板と調光回路とを備え、前記可視光カットフィルタは前記紫外線LEDから照射された紫外線を透過させ、可視光の透過を防ぐためのものである蛍光探傷検査用の紫外線LED照射装置において、前記LED基板は、前記紫外線LEDの近傍に前記紫外線LEDと組となる光センサを備え、前記光センサは対応する前記紫外線LEDから照射され、前記可視光カットフィルタにて反射した光線を直接受光できるように配置され、前記光センサの位置は、前記紫外線LEDの指向角外であり、さらに前記紫外線LED照射装置は、調光制御部を備え、前記調光制御部は、前記光センサと前記調光回路に接続してこれらを制御可能に構成され、前記調光回路は、前記複数の紫外線LEDの照射する紫外線の強度について、前記複数の紫外線LEDを個々に調整可能であり、前記複数の紫外線LEDは、前記調光回路により、それぞれの前記紫外線LEDに対応する前記光センサの出力に基づいて、前記紫外線LEDから出射する紫外線を任意の紫外線強度を維持して前記紫外線LED同士の紫外線強度を略均一になるように調整可能に構成され、前記紫外線LED照射装置はさらに表示装置を備え、前記表示装置はキャラクタ表示器又は表示用LEDを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の紫外線LED照射装置は、複数の紫外線LEDと、該紫外線LEDと被照射物の間に前記紫外線LEDの照射軸と直交して配置される可視光カットフィルタを有し、前記紫外線LEDが設けられるLED基板と調光回路とを備え、前記可視光カットフィルタは前記紫外線LEDから照射された紫外線を透過させ、可視光の透過を防ぐためのものである蛍光探傷検査用の紫外線LED照射装置において、前記LED基板は、前記紫外線LEDの近傍に前記紫外線LEDと組となる光センサを備え、前記光センサは対応する前記紫外線LEDから照射され、前記可視光カットフィルタにて反射した光線を直接受光できるように配置され、前記光センサの位置は、前記紫外線LEDの指向角外であり、さらに前記紫外線LED照射装置は、調光制御部を備え、前記調光制御部は、前記光センサと前記調光回路に接続してこれらを制御可能に構成され、前記調光回路は、前記複数の紫外線LEDの照射する紫外線の強度について、前記複数の紫外線LEDを個々に調整可能であり、前記光センサの位置は、前記紫外線LEDの指向角外であり、前記複数の紫外線LEDは、前記調光回路により、それぞれの前記紫外線LEDに対応する前記光センサの出力に基づいて、前記紫外線LEDから出射する紫外線を任意の紫外線強度を維持して前記紫外線LED同士の紫外線強度を略均一になるように調整可能に構成され、前記可視光カットフィルタは、350~380nmの波長の光を70パーセント以上透過し、400~700nmの光の透過率を1パーセント以下とする黒フィルタからなることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の紫外線LED照射装置は、前記複数の紫外線LEDのそれぞれの前記紫外線LEDにつき、前記紫外線LEDを中心とした場合の前記光センサの同心円上、かつ前記光センサの近傍に温度センサを配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、複数の紫外線LEDと、紫外線LEDと被照射物の間に紫外線LEDの照射軸と直交して配置される可視光カットフィルタを有し、紫外線LEDが設けられるLED基板と調光回路とを備え、可視光カットフィルタは紫外線LEDから照射された紫外線を透過させ、可視光の透過を防ぐためのものである蛍光探傷検査用の紫外線LED照射装置において、LED基板は、紫外線LEDの近傍に紫外線LEDと組となる光センサを備え、光センサは対応する紫外線LEDから照射され、可視光カットフィルタにて反射した光線を直接受光できるように配置され、光センサの位置は、紫外線LEDの指向角外であり、さらに紫外線LED照射装置は、調光制御部を備え、調光制御部は、光センサと調光回路に接続してこれらを制御可能に構成され、調光回路は、複数の紫外線LEDの照射する紫外線の強度について、複数の紫外線LEDを個々に調整可能であり、複数の紫外線LEDは、調光回路により、それぞれの紫外線LEDに対応する光センサの出力に基づいて、紫外線LEDから出射する紫外線を任意の紫外線強度を維持して紫外線LED同士の紫外線強度を略均一になるように調整可能に構成され、紫外線LED照射装置はさらに表示装置を備え、表示装置はキャラクタ表示器又は表示用LEDを備えることを特徴とするので、複数の紫外線LEDの光量を個別に調整するときに、より正確な調整を自動的に行うことができ、蛍光探傷検査等に適した均一な紫外線強度の紫外線を照射することが可能になり、検査の都度の調光の際の作業負担を大幅に減らすことができるとともに、紫外線LEDが劣化した特定の場合にこれを表示可能とすることにより蛍光磁粉探傷検査で見逃しが発生することを防止することができる。
【0017】
また、本発明によれば複数の紫外線LEDと、紫外線LEDと被照射物の間に紫外線LEDの照射軸と直交して配置される可視光カットフィルタを有し、紫外線LEDが設けられるLED基板と調光回路とを備え、可視光カットフィルタは紫外線LEDから照射された紫外線を透過させ、可視光の透過を防ぐためのものである蛍光探傷検査用の紫外線LED照射装置において、LED基板は、紫外線LEDの近傍に紫外線LEDと組となる光センサを備え、光センサは対応する紫外線LEDから照射され、可視光カットフィルタにて反射した光線を直接受光できるように配置され、光センサの位置は、紫外線LEDの指向角外であり、さらに紫外線LED照射装置は、調光制御部を備え、調光制御部は、光センサと調光回路に接続してこれらを制御可能に構成され、調光回路は、複数の紫外線LEDの照射する紫外線の強度について、複数の紫外線LEDを個々に調整可能であり、光センサの位置は、紫外線LEDの指向角外であり、複数の紫外線LEDは、調光回路により、それぞれの紫外線LEDに対応する光センサの出力に基づいて、紫外線LEDから出射する紫外線を任意の紫外線強度を維持して紫外線LED同士の紫外線強度を略均一になるように調整可能に構成され、可視光カットフィルタは、350~380nmの波長の光を70パーセント以上透過し、400~700nmの光の透過率を1パーセント以下とする黒フィルタからなることを特徴とするので、複数の紫外線LEDの光量を個別に調整するときに、より正確な調整を自動的に行うことができ、蛍光探傷検査等に適した均一な紫外線強度の紫外線を照射することが可能になり、検査の都度の調光の際の作業負担を大幅に減らすことができる。
【0018】
更に、本発明の紫外線LED照射装置においては、複数の紫外線LEDのそれぞれの紫外線LEDにつき、紫外線LEDを中心とした場合の光センサの同心円上、かつ光センサの近傍に温度センサを配置することを特徴とするので、複数の紫外線LEDの光量を個別に調整するときに、より正確な調整を自動的に行うことができ、蛍光探傷検査等に適した均一な紫外線強度の紫外線を照射することが可能になり、検査の都度の調光の際の作業負担を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る紫外線LED照射装置1の一部を表した概略図である。
【
図2】LED基板2上にある紫外線LED3等を図示したものである。
【
図3】
図1に示した紫外線LED照射装置1の一部の、紫外線X、X1の軌跡を示した図である。
【
図4】
図1に示した紫外線LED照射装置1の一部の、可視光Yの軌跡を示した図である。
【
図5】本実施形態に係る紫外線LED照射装置1の他の一例を示した説明図である。
【
図6】本実施形態に係る紫外線LED照射装置1を示した斜視図である。
【
図7】本実施形態に係る紫外線LED照射装置1の内部及び照射状況を示した概略図である。
【
図8】本実施形態に係る紫外線LED照射装置1の備える表示装置8を示した概略図である。
【
図9】本実施形態に係る紫外線LED照射装置1の他の一例が備える表示装置9を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。まず、本実施形態に係る紫外線LED照射装置1について説明する。
図1は、紫外線LED照射装置1の一部を示した概略図である。
図2は
図1に示される紫外線LED照射装置1の一部のうち、LED基板2とLED基板2上に設けられている紫外線LED3、光センサ4等を下方向からみるように図示したものである。
図3は
図1で示した紫外線LED照射装置1の一部に、紫外線X、X1の軌跡を追記した概略図である。
図4は、
図1で示した紫外線LED照射装置1の一部に、可視光Yの軌跡を追記した概略図である。
図5は、本実施形態に紫外線LED照射装置1の他の一例として、黒スポンジゴム15を用いた場合の紫外線LED照射装置1の内部を示す断面図である。
図6は、
図1の紫外線LED照射装置1の一部を複数組設けて完全な紫外線LED照射装置1としたものの斜視図である。
図7は
図6の紫外線LED照射装置1の内部を可視化して、紫外線の照射状況も示した概略図である。
図8は紫外線LED照射装置1の備える表示装置8を図示したものである。
図9は
図8に示す表示装置8に代えて用いることのできる表示装置9を図示したものである。なお、本開示においては、説明の便宜上、単に上、下とのみ表すときは
図1、
図3、
図4、
図5、
図7においての上下を示し、左右についても同様とする。
【0021】
まず初めに本発明の概略を説明する。本発明の紫外線LED照射装置1は、主に蛍光探傷検査の際、蛍光磁粉指示模様を得る為に使用する。磁粉探傷検査法では、まず、鉄鋼などの強磁性体の被検査物の表面を清浄にする。次に、電磁石等により強磁性体を磁化する。磁化している最中に磁粉を掛ける連続法と、磁場を除いた後に検出する残留法がある。磁粉は、空気中に磁粉を散布して振り掛ける乾式法と、水や有機溶媒を用いる湿式法がある。蛍光物質が付着した磁粉を振り掛ける。磁粉を振り掛けたところに傷部があり、漏洩磁場があると、そこに磁粉がとどまる。紫外線を照射すると磁粉に付けられた蛍光物質が発光して、傷部の指示模様が得られる。傷部の判定は、目視による。あるいは、撮像装置によって画像化し、コンピューターにより自動的に判定する。傷部が検出された箇所にはマーキングを行い、印を付ける場合がある。コンピューターによる自動判定の場合、自動的にマーキングすることで効率良く傷部が確認できる。
【0022】
本発明の紫外線LED照射装置1は、複数の紫外線LED3から構成される。蛍光磁粉探傷検査法では、正確に蛍光磁粉指示模様を得るために、ある程度の範囲で、均一な紫外線光量分布が必要である。紫外線強度の均一度は例えば15パーセントが要求される。紫外線LED3は、単一のLED(発光ダイオード)または複数のLEDから構成される。そして、各紫外線LED3ごとに光センサ4と図示しない調光回路が設置されている。
図1はひとつの紫外線LED3と光センサ4から構成される、紫外線LED照射装置1の一部である。紫外線LED3と光センサ4を一組として、複数組これを備えるのが、本発明の紫外線LED照射装置1である。
図3,4が示す様に、紫外線LED3は指向性がある。この紫外線LED3は可視光カットフィルタ6を通して被照射物7を照射する。光センサ4は紫外線LED3の指向角外に設置されているため、光センサ4に紫外線及び可視光が直接入射しない。しかし、
図3が示す様に、可視光カットフィルタ6において反射した可視光が光センサ4に到達する。この様に、紫外線LED3の紫外線光量の測定は、可視光カットフィルタ6で反射した光線を、対応する紫外線LED3の指向角外に設けられた光センサ4で測定するので、紫外線照射を妨げる事がなく、個別に、正確に紫外線光量を測定する事が可能であり、照射面における紫外線の均一な光量分布を得ることができる。
【0023】
次に、
図1を示しながら本発明の構成につき詳述する。
図1に示されるように、本発明に係る紫外線LED照射装置1の一部は、LED基板2上に紫外線LED3と光センサ4を有し、紫外線LED3の照射軸αと直交するように、可視光カットフィルタ6を備える。この可視光カットフィルタ6は、好ましくは波長380nm以下の紫外線を90パーセント以上透過し、波長400~700nmの可視光の透過率を5パーセント以下とするフィルタを用いることが好ましい。このような可視光カットフィルタ6とすることで、暗闇でも可視光に邪魔されずに蛍光探傷試験が行えるとともに、可視光を上方に効果的に反射することとなる。
【0024】
また、
図1に示す紫外線LED3から可視光カットフィルタ6までの距離L1と、可視光カットフィルタ6から被照射物7までの距離L2の関係について詳述する。可視光カットフィルタ6から被照射物7までの距離L2は、紫外線LED3から可視光カットフィルタ6までの距離L1の8倍以上であることが好ましい。このように構成することにより、後述するが、
図3の紫外線X1の、反射して上方にむかって伸びている光線が、十分に減衰することとなり、光センサ4への紫外線X1の影響が少なくなり、好ましい。
【0025】
図2は、LED基板2を
図1において下方向からみたものを図示している。LED基板2の上には、中央に紫外線LED3が、その近傍に光センサ4が、光センサ4の近傍に温度センサ5が設けられている。各々の紫外線LED3は、図示しないが、それぞれ光量を調整するための調光回路に接続されている。調光回路はLEDの駆動電圧と電流を制御して、LEDの光量を調節する。調光回路と光センサ4は調光制御部に接続されており、各々の紫外線LED3の光量を調節するように制御して、照射面における紫外線強度を一定にすることが可能である。
調光制御部は、調光設定部、PWM制御部、光センサ制御部、LED温度監視・制御部、LED冷却ファン制御部、警報出力・表示制御部から構成されており、既知の制御装置が用いられてよい。
【0026】
また、光センサ4の受光感度には温度特性があり、光センサ4の温度で出力が変化する。このため、安定した光センサ4の出力により制御を行うためには、光センサ4の温度を測定し、温度補正を行って光センサ4を使用することが好ましい。この温度係数は光の波長によって変化するが、波長が一定の紫外線LED3を用いることで、温度係数は常数とすることができる。熱の拡散量が同心円上では同じ程度であることから、
図2に示すように、温度センサ5は光センサ4と、紫外線LED3を中心とした同心円上に配置することが好ましい。また、調光制御部が、温度センサ5により入力される温度の情報をもとに、温度補正を行って光センサ4を制御するように構成されていると好ましい。
【0027】
次に、
図3を示しながら、本実施形態に係る紫外線LED照射装置1の一部につき、照射される紫外線X、X1の軌跡を説明する。
まず、紫外線LED3は紫外線X、X1を照射している。紫外線Xは、
図3において2つの実線で囲まれている範囲の紫外線で、紫外線LED3から出射した紫外線のうち指向角内のものを示す。つまり
図3は指向角の範囲内の紫外線を示している。紫外線Xは、可視光カットフィルタ6において大部分が透過する。そして、一部が
図3で破線で示されるように、反射し、光センサ4に到達する。
【0028】
図3に示される紫外線Xのうち大部分は、被照射物7を照射することとなる。ただ、紫外線Xのうち、紫外線X1及びその近傍の紫外線については、紫外線LED3から出射し、可視光カットフィルタ6を通過した後、被照射物7において反射し、再び可視光カットフィルタ6を透過して、光センサ4へ到達することがある。光センサ4は、
図3に示される破線の光線及びその近傍の光線を受光することを想定しており、光センサ4を制御する調光制御部もこの想定に基づいて設定されている。しかし、このように紫外線X1が光センサ4に到達してしまった場合、光センサ4が紫外線のみ、あるいは主に紫外線に対し感度を有する場合だと、光センサ4が誤った出力をしてしまうこととなる。その結果、紫外線LED3に流れる電流が所定の量より弱くなってしまうなど、誤った調光がなされてしまうことがある。
【0029】
次に、
図3を示しながら、光センサ4の位置について詳述する。
図3に示されるように、光センサ4はLED基板2上の紫外線LED3近傍に設けられる。この位置は、紫外線LED3の出射する光線の指向角外であり、かつ可視光カットフィルタ6によって、紫外線LED3から出射された光線が反射したことにより生成される光線が、入射可能に設けられている。この、紫外線LED3から出射された光線が反射した光線は、
図3で破線で示される紫外線の軌跡と同様となる。本開示で光線とは紫外線、可視光の双方を含むこととする。
【0030】
本発明の紫外線LED照射装置1の備える図示しない調光制御部は、個々の紫外線LED3の調光回路と個々の光センサ4に接続されている。そして、個々の光センサ4の測定値を用いて、個別に紫外線LED3を調光し、照射面において均一な紫外線強度を確保する。具体的には、光センサ4が受光した光線の強度に応じて、光センサ4が値を出力し、この出力された値をもとに、調光制御部が、紫外線LED3にかける電圧、電流の増減を調整する。この、光センサ4の出力値と紫外線LED3にかけられる電流、電圧の量は、光センサ4の出力値が補正される場合を除き、調光制御部により、連動するように調整される。光センサ4により測定される紫外線LED3の光量が所定の基準値を下回った際、交換の警告信号を発する。この警告信号は調光制御部に接続されたコンピューター等を経由して使用者に知らせるか、または後述する表示装置8、9により表示される。また、ここで所定の基準値とは、たとえば、新品の光量に比べて70パーセント減衰した値である。ここで比較すべき新品の光量の測定値は、調光制御部内の記憶装置に記録保持されている。
【0031】
ここで、再び
図1を示し、L1とL2の関係についてさらに詳述する。紫外線強度は紫外線LED3からの距離の二乗に反比例する。そこで次に紫外線X1につきどの程度被照射物7から反射して、どの程度光センサ4に戻ってくるのかを数式で示す。L2を600mm、L1を40mmとした場合、紫外線LED3から出射した光線について可視光カットフィルタ6での紫外線強度を1W/cm^2とすると、対象物表面では約1W/cm^2 / (600/40) ^2≒4444μW/cm^2となり、対象物の反射率が20パーセントとすると、可視光カットフィルタに戻ってくる紫外線強度は、1W/cm^2×0.2 / (1200/40) ^2≒222μW/cm^2となる。
【0032】
次に、紫外線が
図3で破線で示されている軌跡をたどった場合の紫外線の光量を数式で示す。1W/cm^2の4パーセントが可視光カットフィルタ6で反射されると仮定すると、紫外線強度は1W/cm^2×0.04=40mW/cm^2となる。そうすると、L2がL1の8倍以上であるような関係が成り立つ場合、
図3において被照射物7から反射してきた紫外線X1は、
図3の破線部分の可視光カットフィルタ6から反射して直接光センサ4へと入射する光に比べて十分に減衰して少量となっており、従って光センサ4への影響は小さいこととなる。また、光センサ4には可視光成分も加わることから、紫外線X1の影響はさらに小さくなる。
【0033】
紫外線LED3から出射した光線のうちの可視光成分の光センサ4へ向けた照度をここで算出しておく。紫外線LED3から出射した光線のうち可視光成分は、紫外線LED3の波長分布によれば可視光の波長である400nmから700nmの光線を合算した場合、紫外線LED3の放つ光量のうち約1.39パーセント程度である。そして、紫外線LED3から出射して可視光カットフィルタ6に入射するもののうちの可視光成分も同様の比率となる。この紫外線LED3から可視光カットフィルタ6に入射した可視光成分がほぼすべてが反射されるとする。そうすると、可視光カットフィルタ6に入射した可視光の照度は、紫外線LED3から可視光カットフィルタ6に照射される紫外線が可視光カットフィルタ6の位置で1W/cm^2とすると、可視光成分は約13.9mW/cm^2となる。これが光センサ4の位置まで移動すると、減衰して約3.475mW/cm^2となる。
【0034】
ここで、表1に、本実施形態の一例として、これに用いる光センサ4の分光感度例をグラフにしたものを示す。
【0035】
【0036】
光センサ4は、表1に示す光センサの分光感度例を参照すると明らかなように、紫外線よりも可視光に感度がある。550nm付近で400nmの約1.75倍の感度である。このため、3.475mW/cm^2の可視光成分は、紫外線強度に換算すると6.5mW/cm^2と扱われることとなる。ただ、表1の分光感度例はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
可視光成分の影響が6.5mW/cm^2であり、紫外線Xが可視光カットフィルタ6において反射された光線の光センサ4の位置での紫外線強度は10mW/cm^2であり、
図4の紫外線X1の場合のように被照射物7で反射した光線の光センサ4の位置での紫外線強度は222μW/cm^2である。従って可視光を考慮した外部影響の逓減率は、222μW/cm^2 / (10mW/cm^2+6.5mW/cm^2)約1.3パーセントとなる。光センサ4は紫外線に十分に感度を有することが好ましい。表1に示される感度例のように、紫外線だけでなく可視光にも受光感度を十分に有する光センサ4とすることがさらに好ましい。そして、紫外線にも十分に受光感度を有するが、可視光については紫外線の受光感度よりさらに受光感度が高い光センサ4とすることがより好ましい。ただ、紫外線LED3から出射される光のうち、紫外線と可視光の強度は連動性があると考えられるので、これを利用し、可視光のみに感度を有する光センサ4としてもよい。可視光は可視光カットフィルタ6においてほとんどが反射されるため、灯具箱10より外側の影響を受けることがほぼなく、光センサ4で適切に照度を測定できることとなり、好ましい。
【0038】
また、可視光カットフィルタ6には上記フィルタ以外に、黒フィルタを用いてもよい。黒フィルタの分光特性例を表2に示す。
【0039】
【0040】
表2に示されるように、黒フィルタは可視光カット率が高い。よって黒フィルタを可視光カットフィルタ6に用いることで、紫外線LED3から被検査物7の被照射面に照射される可視光を大幅にカットすることができる。これに加えて、灯具箱10の外部から灯具箱10内への可視光をほとんどカットすることができる。このため、光センサ4に余計な可視光が入ることを防止することができ、好適である。
【0041】
次に、
図4を示しながら、本実施形態に係る紫外線LED照射装置1の一部につき、照射される可視光Yの軌跡を説明する。まず、紫外線LED3は紫外線X1を含む紫外線Xを照射しているとともに、少量だが可視光Yも照射している。可視光Yは、
図4に示されるように、紫外線LED3から出射して可視光カットフィルタ6においてほとんどが反射される。そして、反射した可視光Yの一部は光センサ4に到達する。このとき、可視光Yはほとんどが可視光カットフィルタ6より下側には出ないため、
図3に示される紫外線X1の軌跡をたどるような、被照射物7で反射して光センサ4に到達する可視光は、ほとんど無視できる程度である。従って、光センサ4は、紫外線だけでなく、可視光にも十分に感度を有しておくことが好ましい。このようにすることで、
図3の場合に紫外線X1などの被照射物7で反射した反射光の及ぼす光センサ4への影響を最小限とすることができる。紫外線X1の軌跡をたどる可視光を光センサ4が受光する場合にかなりこの可視光が減衰することとなっているため、光センサ4は、紫外線に感度を有さず、可視光のみに感度を有する光センサ4としても好適である。
【0042】
ここで、可視光カットフィルタ6に黒フィルタを用いる場合、黒フィルタは可視光を吸収する特性を持ち、可視光の反射率も少ない。従って、
図4で示される構成において、可視光が、黒フィルタにおいて反射した場合の可視光Yは、光量が少ないこととなる。黒フィルタは灯具箱10外部からの可視光をほとんどカットするため問題はないが、灯具箱10の外部からの可視光を遮る構造があればさらに好ましい。
【0043】
この可視光を遮る構造について
図5を示しながら詳述する。
図5は灯具箱10内の断面を示した図である。黒フィルタは灯具箱10内部への可視光を遮る役割を果たす。しかし可視光カットフィルタ6に黒フィルタを用いて可視光を灯具箱10内に入れないようにしても、灯具箱10の他の箇所に隙間があるなどにより、可視光を遮れていなければその効果が薄れる。従って、外部からの可視光の侵入を防ぐために、灯具箱10と可視光カットフィルタ6との隙間を埋める必要がある。このために、本発明に係る紫外線LED照射装置1は、
図5に示すように、灯具箱10と可視光カットフィルタ6の間に、黒スポンジゴム15が設けられている。
図5のような黒スポンジゴム15を設ける構成は、可視光カットフィルタ6に黒フィルタ以外を用いる場合でも好適であるが、特に可視光カットフィルタ6に黒フィルタを用いる場合には、より好適である。
【0044】
黒スポンジゴム15は灯具箱10内で可視光カットフィルタ6と灯具箱10の間において、これらの間の隙間ができないように、可視光カットフィルタ6を支持する。これにより、灯具箱10外からの可視光を遮る役割を果たす。それとともに、黒スポンジゴム15は、灯具箱10内に入ってくる可視光を吸収するために、黒色に着色されている。
【0045】
黒スポンジゴム15の材質は、紫外線に強い、フッ素ゴムスポンジ、ネオプレンスポンジ、EPTスポンジ等が適しており、スポンジ硬度は、20~25が好適である。また、
図5に示されるLED基板2は、艶消し黒の加工で、少なくとも灯具箱10内に露出している露出部が、覆われていることが好ましい。通常、支持等のために隠れている部分以外の部分が露出部となる。もちろん、LED基板2は、艶消し黒の加工で全て覆われていてもよい。艶消し黒の加工がされていることで、LED基板2は可視光を吸収することとなる。可視光カットフィルタ6に黒フィルタを使用する場合は、可視光カットフィルタ6から反射した可視光Yが弱いこととなる。そうすると、可視光に感度を有する、特に可視光のみに感度を有する光センサ4とした場合に、余計な光が少しでも外部等から入ることにより、光センサ4が誤った出力となってしまうおそれがある。この場合であっても、LED基板2は、艶消し黒の加工であること、及び黒スポンジゴム15がこのような構成であるため、灯具箱10内に外部から侵入する可視光を可能な限り減らすことができる。よって、光センサ4に余計な可視光が入ることがなく、好適である。
【0046】
艶消し黒の加工は、表面に凹凸をつけて光の反射を抑え光沢を消す加工であるが、そのつや消しの下地処理には、薬品処理の他、ブラスト加工を行うブラスト処理など、既存の技術が用いられてよい。
【0047】
次に、
図6を示しながら、本実施形態に係る紫外線LED照射装置1につき詳述する。
図6は、紫外線LED照射装置1の斜視図である。紫外線LED照射装置1は、
図6に示されるように灯具箱10に格納されていてもよい。灯具箱10は取付金具16により、架台等に固定可能となっている。
図6の紫外線LED照射装置1は
図1の紫外線LED3と光センサ4、温度センサ5、可視光カットフィルタ6の組み合わせが複数組配置されて構成されている。
図1の紫外線LED3と光センサ4、温度センサ5、可視光カットフィルタ6の組み合わせ同士は、お互いに反射板12などの遮蔽装置で遮られていると、光センサ4が隣の紫外線LED3からの光線に影響を受けることがなくなり、より好ましい。
【0048】
次に、
図7を示しながら、本実施形態に係る紫外線LED照射装置1につきさらに詳述する。本発明の紫外線LED照射装置1は、
図7にも示すように灯具箱10に格納されている。さらに、特定の紫外線LED3に対応する光センサ4が、となりあう紫外線LED3からの紫外線や可視光が混入して誤作動を起こすことがないようにするため、紫外線LED3同士の間に仕切りのように反射板12を設けることとしてもよい。これは反射板12に限られず、単に板状の仕切りなどでもよく、遮光できるものであればよい。
【0049】
本発明の紫外線LED照射装置1は、図示しない調光制御部を備える。調光制御部は、光センサ4、温度センサ5、調光回路、表示装置8、9と接続しており、各部を制御する。紫外線LED3の寿命は従来のメタルハライドランプと比較して長いが、しかし、徐々に劣化し光量が減衰する。個々の紫外線LED3の光量があらかじめ定められた値を下回った際に、調光制御部は、交換を示唆する警告信号を発する。ここで、あらかじめ定められた値は、例えば新品の光量の70パーセントである。この値は使用される場所や要求される紫外線強度などの状況により変動する。この新品の光量の測定値は、調光制御部内の記憶装置に保持する。この構成によって各紫外線LED3の光量の調節を的確に行う事ができ、均一で一定な紫外線強度を照射面において確保することを可能とすることができる。
【0050】
また、本発明の紫外線LED照射装置1は、上記制御に代えて、調光制御部が、1つの紫外線LED3が劣化した場合に、その1つの紫外線LED3に対し、個別に電流や電圧を増やすように調整することで、照度を一定に保つよう調整する制御をすることとしてもよい。
ただ、調光制御部により紫外線LED3に供給する電流や電圧を、紫外線LED3の最大定格まで増やしても、照度が上がらない、つまり光センサ4の出力が増大しない場合がある。紫外線LED3は最大定格を超えて電圧をかけると、素子が破壊されてしまうおそれがある。このため、最大定格まで電圧をあげても光センサ4の出力が増大しない場合には、実用上はこれ以上照度をあげられないこととなる。この、光センサ4の出力が増大しない現象の原因は、紫外線LED3を構成する紫外線LED素子が著しく劣化もしくは断線・短絡したものと考えられている。
【0051】
この場合、紫外線LED3は交換する以外に照度を保つ方法がない。そのため、紫外線LED3がやや劣化した場合等に、調光制御部において電圧や電流を増やすように調整することで、照度を一定に保つよう調整する制御に加えて、この調光制御部による制御により紫外線LED3にかける電流、電圧を最大定格まで上げても、光センサ4の出力が必要とされる照度まで増大しないという特定の場合に、調光制御部において、交換を示唆する警告信号を発する。この警告信号に基づいて、調光制御部は、この光センサ4に対応する紫外線LED3の交換を表示装置8,9により文字又は表示用LED11にて表示する制御をすることとすると、好ましい。この必要とされる照度とは、例えば新品の紫外線LED3の光量の70パーセントに設定される。
【0052】
また、調光制御部の個々の紫外線LED3の照度を一定に保つよう調整する制御には、個々の紫外線LED3の照度の測定が必要となる。本発明の紫外線LED照射装置1では、複数の紫外線LED3が設けられ、それぞれの紫外線LED3には対応した光センサ4が備えられている。また、紫外線LED3の電源回路と光センサ4は個別に図示しない調光制御部に接続され、個別に明滅することができるように構成されている。
紫外線LED3を複数備えるので、個々の紫外線LED3の照度の測定に際し、光センサ4は、隣接した紫外線LED3の光の影響を排除できない場合がある。この場合、本発明の紫外線LED照射装置1の作製段階において、測定対象となっている1つの紫外線LED3を消灯しておき、その他の紫外線LED3を点灯させる。そして光センサ4の出力の値を測定する。この消灯した紫外線LED3に対応する光センサ4の出力の値が、隣接した紫外線LED3の光の影響に相当する。ここで得られた光センサ4の出力の値を、紫外線LED照射装置1を実際に使用する際に用いる。具体的には、紫外線LED照射装置1を使用した際に光センサ4から出力される値を、前もって得られた測定対象以外の紫外線LED3が光センサ4に入射することで得られた光センサ4の出力の値を減じるなどの形で加味する補正をすることを可能に、調光制御部を構成する。この場合、光センサ4の出力値を補正して算出された値と、紫外線LED3にかけられる電流、電圧の量は、連動する。これにより、より正確な個々の紫外線LED3の紫外線強度の測定と個別の照度の自動的な調整が可能となる。
【0053】
また、本発明の紫外線LED照射装置1は、表示装置8が設けられていてもよい。表示装置8の一例を
図8に示す。
図8に示されるように、表示装置8は、表示のための表示用LED11と、アラームリセットボタン13を備える。複数ある表示用LED11は、それぞれが、特定の紫外線LED3に対応している。そのため、表示装置8は、どの紫外線LED3が交換が必要かが判別できるように表示することが可能となっている。照度を一定に保つよう調整する制御により紫外線LED3にかける電流、電圧を最大定格まであげても、光センサ4の出力が必要とされる照度まで増大しないという特定の場合において、調光制御部により発される交換を示唆する警告信号に基づいて、この光センサ4に対応する紫外線LED3の交換を表示装置8の、表示用LED11により交換が必要な特定の紫外線LED3を表示する。この表示は調光制御部により制御されている。これにより交換が必要な劣化した紫外線LED3を照度を検査者が都度測定することなくすぐに特定可能となり、蛍光探傷検査等において、きずの見逃しが発生することが防止できる。
【0054】
また、本発明の紫外線LED照射装置1は、照度を一定に保つよう調整する制御により光センサ4の出力が、光センサ4の出力値または出力値が補正された値と連動して紫外線LED3にかけられる電流、電圧が増加した結果、必要とされる照度まで増大しない特定の場合に、調光制御部は、交換を示唆する警告信号を発する。そして、調光制御部の制御により、表示装置8は、表示用LED11を赤色に点灯させて紫外線LED3の交換を促すアラーム出力をする。その際に、
図8に示されるアラームリセットボタン13を押すことで、アラーム出力を停止させることが可能となっている。しかし、アラーム出力が停止しても、調光制御部による照度を一定に保つよう調整する制御により光センサ4の出力が、紫外線LED3にかける電流、電圧を最大定格まであげても、紫外線LED3の照度が必要とされる照度まで増大しない状況が継続しているときには、表示用LED11は点灯を続けるように調光制御部により制御される。
【0055】
次に、
図9を示しながら本発明の紫外線LED照射装置1の他の一例が備える表示装置9につき詳述する。表示装置9は、表示装置8と同様にアラームリセットボタン13を備え、さらにキャラクタ表示器14を備える。
図9に示されるキャラクタ表示器14は、上段にTEPと表示されているが、上段は温度以上になった紫外線LED3に対応した番号を表示している。下段はCHGと表示されているが、これは紫外線強度が低下した紫外線LED3に対応した番号を表示している。表示された紫外線LED3のLED素子を点検、交換することで、メンテナンスが可能となっている。このキャラクタ表示器14に表示されるLEDの番号は、調光制御部に、温度センサ5や光センサ4などから入力される情報に基づいて表示されている。
図9のキャラクタ表示器14は2行16文字のバックライト付きの構成であるが、実際にはこれに限るものではない。キャラクタ表示器14に使用される部材としては文字を表示可能なものであればよく、具体的には、液晶ディスプレイ、グラフィック表示器、デジタルパネルメータ、有機ELディスプレイ等で構成されてもよい。
【0056】
この調光制御部からの警告信号に従って一つの紫外線LED3を交換した際、交換していない紫外線LED3もやや劣化している為、交換した紫外線LED3からの光が強くなってしまう。この場合、本発明の紫外線LED照射装置1は、個別に紫外線LED3の照度を測定して、調光制御部が個別に紫外線LED3の照度を調整し、照射面における紫外線強度が自動で一定になる様に調整することが可能である。
【0057】
光センサ4は、紫外線LED3よりも劣化する速度は遅いものの、光センサ4も紫外線LED3とともに劣化する。この交換の作業性を良好にする為に、光センサ4と紫外線LED3は同一基板上に配設する。この構成により、紫外線LED3の光量の測定が正確になり、照射面において均一な紫外線強度を得ることができる。
【0058】
次に、本実施形態における紫外線LED照射装置1の運用方法につき詳述する。紫外線LED照射装置1の初期設置時において、まず紫外線LED3の被照射物7の被照射面に、紫外線を照射し、この被照射面において、紫外線強度計を用いて紫外線強度の測定を行う。そして、一定の間隔を置いて、光センサ4が劣化していないかを、被照射物7の被照射面において紫外線強度を測定することで、検査する。従来であれば、対応する光センサ4が調光制御部によって制御される調光回路を用いて、個別に紫外線LED3を調光するといったことは行われていなかっため、初期設置後、頻繁に被検査物7の被照射面において紫外線強度計を用いて作業者が紫外線強度測定を行わなければならないこととなっていたが、本発明の紫外線LED照射装置1を用いることで、一定の間隔を置いて、光センサ4が劣化していないかを検査すればよくなることとなる。光センサ4は紫外線LED3に比べて劣化速度がかなり遅い。そのため、本発明の紫外線LED照射装置1では、紫外線強度計を用いて測定する頻度を低下させることが可能となる。
【0059】
また、紫外線LED3はその紫外線照射方向に強い指向性がある。ただ、紫外線LED3の指向角内に光センサ4を置くと、照射面で光センサ4の部分が影になり、照射面における紫外線分布が均一でなくなる場合があり、好ましくない。従って、光センサ4は紫外線LED3の指向角、例えば60度程度の指向角よりも、外側に配置されるのが好ましく、紫外線LED3及び光センサ4、温度センサ5はLED基板2に設けられ、LED基板2ごと容易に交換できる構成であると好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の紫外線LED照射装置は、照射面の光量を均一にすることを可能にする照射装置であり、蛍光磁粉探傷検査や蛍光浸透探傷検査のための紫外線照射装置として使用できる。さらに、紫外線滅菌装置、紫外線硬化装置などの紫外線照射装置にも使用できる、広い応用が可能な装置である。さらに、可視光や赤外線の照射装置にも応用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 紫外線LED照射装置
2 LED基板
3 紫外線LED
4 光センサ
5 温度センサ
6 可視光カットフィルタ
7 被照射物
8,9 表示装置
10 灯具箱
11 表示用LED
12 反射板
13 アラームリセットボタン
14 キャラクタ表示器
15 黒スポンジゴム
16 取付金具
X、X1 紫外線
Y 可視光
α 照射軸
L1 紫外線LEDと可視光カットフィルタの距離
L2 可視光カットフィルタと被照射物の距離