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  • 特開-ロータ及び回転電機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083084
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】ロータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20240613BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197393
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】内山 翔
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CB05
(57)【要約】
【課題】回転電機の効率をさらに改善することである。
【解決手段】ロータコアと、前記ロータコアにV字形状に配置した永久磁石とを有するロータであって、前記永久磁石は、前記ロータコアの径方向に複数層で配置され、前記永久磁石は、前記複数層のうちの第1層に配置された第1永久磁石と、前記複数層のうちの第2層に配置された第2永久磁石とを含み、前記ロータコアは、周方向位置で前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間であって、前記ロータの主たる回転方向の反対側にのみ、ギャップと面した切欠き部を有する、ことを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアと、前記ロータコアにV字形状に配置した永久磁石とを有するロータであって、
前記永久磁石は、前記ロータコアの径方向に複数層で配置され、
前記永久磁石は、前記複数層のうちの第1層に配置された第1永久磁石と、前記複数層のうちの第2層に配置された第2永久磁石とを含み、
前記ロータコアは、周方向位置で前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間であって、前記ロータの主たる回転方向の反対側にのみ、ギャップと面した切欠き部を有する、
ことを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記永久磁石は、前記ロータコアの径方向の2つの層に配置され、
前記切欠き部は、周方向位置で前記2つの層のうちの1層目の前記第1永久磁石と前記2つの層のうちの2層目の前記第2永久磁石との間に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記ロータコアは、径方向外側でギャップを介してステータと対向し、
前記切欠き部は、前記ロータコアの外周面で径方向外側から径方向内側に凹む切欠きである、
ことを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項4】
ステータと、前記ステータとギャップを介して対向するロータとを有する回転電機であって、
前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコアにV字形状に配置した永久磁石とを有し、
前記永久磁石は、前記ロータコアの径方向に複数層で配置され、
前記永久磁石は、前記複数層のうちの第1層に配置された第1永久磁石と、前記複数層のうちの第2層に配置された第2永久磁石とを含み、
前記ロータコアは、周方向位置で前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間であって、前記ロータの主たる回転方向の反対側にのみ、前記ギャップと面した切欠き部を有する、
ことを特徴とする回転電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機においては、例えば、ステータとロータとが径方向にエアギャップを介して対向するように配置される。ロータは、円筒形状のステータの径方向内側の空洞部分に配置される。ステータには電機子巻線が設けられ、ロータには永久磁石が設けられる。回転電機は、電機子巻線に通電されることで、ロータを回転させる。
【0003】
回転電機の一例として、例えばEV(Electric Vehicle)の駆動に用いられる埋込磁石型同期電動機(IPM)が知られている。このような埋込磁石型同期電動機では、ロータにおいて、例えばV字配置した永久磁石を周方向に複数設けるとともに、径方向に二重に設ける。
【0004】
また、このような回転電機の制御としては、d軸電流による磁束が永久磁石の磁束と逆向きになるように制御する弱め界磁制御が知られている。弱め界磁制御は、同じ電圧でも回転速度を高めることができるため、EV用の回転電機の高速運転時の制御として適している。
【0005】
従来、このような回転電機の効率改善について検討されており、特許文献1では、ロータコアの外周面に、ロータコアの軸方向から見てd軸を対称軸として少なくとも一対配置された凹みを有することで、低損失かつ低騒音を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-97434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、回転電機においてはさらなる効率改善が望まれる。
【0008】
本発明は、回転電機の効率をさらに改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るロータは、ロータコアと、前記ロータコアにV字形状に配置した永久磁石とを有するロータであって、前記永久磁石は、前記ロータコアの径方向に複数層で配置され、前記永久磁石は、前記複数層のうちの第1層に配置された第1永久磁石と、前記複数層のうちの第2層に配置された第2永久磁石とを含み、前記ロータコアは、周方向位置で前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間であって、前記ロータの主たる回転方向の反対側にのみ、ギャップと面した切欠き部を有する。
【0010】
上記の一態様のロータにおいて、前記永久磁石は、前記ロータコアの径方向の2つの層に配置され、前記切欠き部は、周方向位置で前記2つの層のうちの1層目の前記第1永久磁石と前記2つの層のうちの2層目の前記第2永久磁石との間に配置される。
【0011】
上記の一態様のロータにおいて、前記ロータコアは、径方向外側でギャップを介してステータと対向し、前記切欠き部は、前記ロータコアの外周面で径方向外側から径方向内側に凹む切欠きである。
【0012】
本発明の一態様に係る回転電機は、ステータと、前記ステータとギャップを介して対向するロータとを有する回転電機であって、前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコアにV字形状に配置した永久磁石とを有し、前記永久磁石は、前記ロータコアの径方向に複数層で配置され、前記永久磁石は、前記複数層のうちの第1層に配置された第1永久磁石と、前記複数層のうちの第2層に配置された第2永久磁石とを含み、前記ロータコアは、周方向位置で前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間であって、前記ロータの主たる回転方向の反対側にのみ、前記ギャップと面した切欠き部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、回転電機の効率をさらに改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るロータを有するモータの一部を拡大して示す断面図である。
図2】モータにおける磁束の流れを示す断面図である。
図3】本実施形態のモータ10と切欠き部を有しないモータとについて、モータ特性のシミュレーション結果を比較する表図である。
図4】無負荷特性及び最大トルク特性のシミュレーション結果について比較して示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るロータについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るロータを有するモータの一部を拡大して示す概略断面図である。図1は、モータ10を、シャフト40が延びる方向である軸方向と直交する面で切断して示す図である。
【0017】
モータ10は、回転電機の一例であって、埋込磁石型同期電動機(IPM)である。またモータ10は、8極48スロットでインナーロータ型のラジアルギャップモータである。図1は、モータ10の断面のうち1極分を、シャフト40の中心軸Jを中心とした扇形に切り出して示す図である。モータ10は、図1に示す構成と同様の構成を、極数分だけ周方向に複数有する。モータ10は、主たる回転方向が一方向である。モータ10は、例えば、車両駆動用モータに適用される。車両は主に前進するため、車両を前進させるためのモータ10の回転方向が主たる回転方向となる。なお、モータ10は、主たる回転方向の逆方向に回転可能であってもよい。
【0018】
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、シャフト40の中心軸Jを単に「中心軸」と呼び、シャフト40の中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0019】
また、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。また「軸方向と直交する方向に拡がる」とは、厳密に軸方向と直交する方向に拡がる場合に加えて、軸方向と直交する方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に拡がる場合も含む。
【0020】
モータ10は、ほぼ円筒形状のステータ20と、ステータ20の径方向内側にギャップを介して対向配置されたロータ30と、ロータ30の径方向内側に固定されたシャフト40と、を有する。
【0021】
ステータ20は、ステータコア21と、電機子巻線22と、を有する。ステータコア21は、径方向外側のバックヨーク部21aと、バックヨーク部21aから径方向内側に延びるティース部21bと、を有する。ティース部21bは、周方向に複数配置される。d軸上にティース部21bを配置したとき、1極あたり5つのティース部21bと対向する。また、q軸上に1つのティース部21bが存在する。電機子巻線22は、隣接するティース部21b同士の間に配置され、ステータコア21に巻き回される。
【0022】
ロータ30は、径方向内側にシャフト40が貫通する貫通孔を有する円筒形状のロータコア31を有する。シャフト40は、ロータコア31に固定され、不図示の軸受によって軸支される。ロータコア31及びシャフト40は、中心軸Jを回転軸とし、図1に示すように反時計方向に回転する。この反時計方向が、モータ10の主たる回転方向である。ロータ30は、この主たる回転方向に回転する。
【0023】
ロータ30は、永久磁石32、33、34及び35を有する。ロータコア31は、軸方向に貫通し、永久磁石32、33、34及び35を収容する貫通孔を有する。永久磁石32、33、34及び35は、ロータコア31の貫通孔に収容されることで軸方向に沿ってロータコア31を貫通し、ロータコア31に固定される。永久磁石32と永久磁石33とは、軸方向と直交するロータコア31の面において、V字形状を成すように配置される。永久磁石34と永久磁石35とは、軸方向と直交するロータコア31の面において、V字形状を成すように配置される。ロータコア31は、永久磁石32、33、34及び35それぞれの周方向両端の位置に、軸方向に貫通する空隙を有する。この空隙は、フラックスバリアの役割を果たす、
【0024】
なお、各永久磁石が配置される径方向位置を層と呼ぶ。永久磁石32及び33は、他の永久磁石と比べて最も径方向外側に配置された1層目の永久磁石である。永久磁石34及び35は、永久磁石32及び33に次いで径方向外側に配置された2層目の永久磁石である。本実施形態では、1層目の永久磁石及び2層目の永久磁石を有する二重の磁石配置であるが、本発明はこれに限られるものではなく、3層目以降の永久磁石も有する多重の磁石配置であってもよい。
【0025】
ここで、1層目の永久磁石32の径方向外側端を端部32aと呼び、1層目の永久磁石33の径方向外側端を端部33aと呼び、2層目の永久磁石34の径方向外側端を端部34aと呼び、2層目の永久磁石35の径方向外側端を端部35aと呼ぶ。ロータコア31は、周方向位置で端部32aと端部34aとの間において、その外周面に径方向外側から径方向内側に凹む切欠きである切欠き部36を有する。切欠き部36は、ロータコア31の軸方向一端から軸方向他端に亘って設けられる。
【0026】
ロータコア31は、周方向位置で端部33aと端部35aとの間においては、その外周面に径方向外側から径方向内側に凹む切欠きを有しない。周方向位置で端部32aと端部34aとの間は、周方向位置で端部33aと端部35aとの間よりも、ロータ30の回転方向の反対側である。すなわち、本実施形態では、ロータコア(例えばロータコア31)に配置された第1層(例えば1層目)の永久磁石(例えば永久磁石32)と、第1層と異なる第2層(例えば2層目)の永久磁石(例えば永久磁石34)との間であって、ロータ(例えばロータ30)の主たる回転方向(例えば反時計方向)の反対側にのみ切欠き部を有することを特徴とする。
【0027】
切欠き部36は、ステータコア21とロータコア31との間のギャップと面している。このため、ステータコア21とロータコア31との間のギャップは、切欠き部36の位置においてのみ拡大した構造となる。
【0028】
切欠き部36の大きさである、切欠き部36の幅(周方向長さ)及び深さ(径方向長さ)は、ロータコア31の遠心力に対する強度を満たせる範囲である。すなわち、永久磁石32、33、34及び35が嵌まる貫通孔、フレックスバリアの役割を果たす空隙、及び切欠き部36のサイズは、ロータコア31の遠心力に対する強度が十分確保できる程度のサイズに定められる。例えば切欠き部36の幅は、最大でも、隣接するティース部21b同士の間隔と同等の長さであることが望ましい。
【0029】
図2は、モータにおける磁束の流れを示す断面図であり、図2(A)は、切欠き部36を有しない従来のモータにおける磁束の流れを示す断面図であり、図2(B)は、図1に示したモータ10における磁束の流れを示す断面図である。また図2(A)及び図2(B)は、電流位相70度の場合の図である。図2(A)の従来のモータは、図1の永久磁石32に相当する磁石132、及び図1の永久磁石34に相当する磁石134を有する。図2(A)の従来のモータは、磁石132と磁石134との間に、図1の切欠き部36に相当する切欠きを有しない。
【0030】
弱め界磁制御した運転では,電流位相が進み極中心付近に主要な磁束の流れができる。図2(A)に示すように、従来は、二重V字の磁石配置における1層目と2層目の永久磁石磁石の間から漏れ出る磁束が。それと対向するティース部とq軸に位置するティース部を介して短絡する短絡磁路が形成されている。この短絡磁路により短絡された磁束はトルクにほとんど寄与しないという問題がある。このため、従来は発生磁束の一部を有効に活用できていない課題がある。
【0031】
一方、図2(B)に示す本実施形態では、切欠き部36を設けたことにより、磁束の短絡を抑制し、トルクに寄与する磁束が増加する。図2(B)と図2(A)とを比較すると、本実施形態では、切欠き部36と対向するティース部21bの磁束が減少していることがわかる。このため、本実施形態によれば、切欠き部36を有しない場合と比べて、発生磁束をより有効に活用できる。
【0032】
図3は、本実施形態のモータ10と切欠き部を有しないモータとについて、モータ特性のシミュレーション結果を比較する表図であり、図3(A)は、高速低トルクの第1条件でモータを運転した場合の比較結果を示す図であり、図3(B)は、高速低トルクの第2条件でモータを運転した場合の比較結果を示す図である。高速低トルクの第1条件は、モータの回転速度が10000[min-1]であり、トルクが5[Nm]である。高速低トルクの第2条件は、モータの回転速度が12000[min-1]であり、トルクが15[Nm]である。なお、図3(A)及び図3(B)において、本実施形態のモータ10の各特性値は、切欠き部を有しないモータの各特性の値を1.00としたときの相対値で示している。
【0033】
図3(A)及び図3(B)を参照してわかるように、本実施形態のモータ10は、切欠き部を有しないモータと比べて、平均トルクの増加が確認できる。また、このとき、本実施形態のモータ10は、トルクリプル、線間電圧、鉄損等の特性は、切欠き部を有しないモータと同等を維持している。
【0034】
上述のように、本実施形態では、ロータコアに配置された第1層の永久磁石と、第1層と異なる第2層の永久磁石との間であって、ロータの回転方向の反対側にのみ、すなわち片側にのみ切欠き部を有する構成とした。ここでは、このような切欠き部を設けたことによる、他の動作領域の特性への影響について述べる。
【0035】
図4は、無負荷特性及び最大トルク特性のシミュレーション結果について比較して示す表図であり、図4(A)は、本実施形態のモータ10と切欠き部を有しないモータとを比較して示す図であり、図4(B)は、特許文献1のように両側に切欠き部を有するモータと切欠き部を有しないモータとを比較して示す図である。なお、図4(A)において、本実施形態のモータ10の各特性値は、切欠き部を有しないモータの各特性の値を1.00としたときの相対値で示している。また、図4(B)において、両側に切欠き部を有するモータの各特性値は、切欠き部を有しないモータの各特性の値を1.00としたときの相対値で示している。
【0036】
図4(A)に示すように、本実施形態のモータ10は、無負荷特性のギャップ磁束密度については切欠き部を有しないモータと同等の特性を示しているが、切欠きの影響により磁束分布に歪みが生じステータ鉄損は微増している。しかしながら鉄損支配領域は、図3(A)及び図3(B)の条件に近い運転となる。このため、その影響はないことが分かる。また本実施形態のモータ10は、界磁磁束量に変化がないため最大トルク特性についても、切欠き部を有しないモータと同等の特性を示している。
【0037】
特許文献1では、本実施形態の永久磁石32と永久磁石34との間及び永久磁石33と永久磁石35との間の両側に切欠き部を有している。図4(B)に示すように、両側に切欠き部を有するモータは、切欠き部を有しないモータと比べて、無負荷特性のギャップ磁束密度が1%低下している。さらに、両側に切欠き部を有するモータは、最大トルク電流通電時には1層目の永久磁石と2層目の永久磁石との間の磁路に大きな磁気抵抗ができることから界磁磁束が低下し、切欠き部を有しないモータと比べて、トルクは5%減少している。
【0038】
このことから、本実施形態のモータ10は、両側に切欠き部を有するモータ及び片切欠き部を有しないモータのいずれよりも優れた特性を示し、片側に切欠き部を有する構成の有効性が確認できた。
【0039】
なお、本実施形態では、永久磁石を2層に配置した構成に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、3層以上に永久磁石を配置する構成にも本発明は適用することができる。例えば、3層に永久磁石を配置した場合は、1層目と2層目の間、及び2層目と3層目の間に切欠き部を設けるようにしてもよい。また、この場合、1層目と3層目の間に切欠き部を設けるようにしてもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、高速低トルク領域などの弱め界磁制御した運転を要する二重V字配置の埋込磁石型同期電動機(IPM)において,トルクに寄与せず短絡していた磁束を有効化することでトルクを向上させることができる。
【0041】
また本実施形態によれば、モータを駆動する入力は、従来と同様でありながら出力を向上することができ、高効率化に寄与することができる。
【0042】
また本実施形態の構成を採用することによる他の運転領域の特性劣化もなく、従来よりも高効率を実現することができる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
10…モータ、20…ステータ、30…ロータ、32、33、34、35…永久磁石、40…シャフト

図1
図2
図3
図4