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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083093
(43)【公開日】2024-06-20
(54)【発明の名称】作業車両の管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240613BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240613BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20240613BHJP
【FI】
G06Q50/02
G05D1/02 N
A01B69/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197410
(22)【出願日】2022-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】織田 湧平
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043DA17
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC15
2B043ED30
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG07
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】圃場の形状に適した作業計画を立案すること。
【解決手段】実施形態に係る作業車両の管理システムは、作業車両と、制御手段とを備える。作業車両は、自動走行しながら圃場で作業を行う。制御手段は、複数の圃場に関するデータであり圃場の形状情報を含む圃場データと、複数の作業車両に関するデータであり作業車両の作業幅情報を含む作業車両データとを有し、圃場データおよび作業車両データに基づいて、作業対象の圃場に対応する作業車両を作業対象の圃場へ差し向ける。制御手段は、圃場データから、圃場に狭小部が存在する場合には狭小部の狭小度合いに応じて狭小部のランク付けを行い、作業車両データから、作業車両の作業幅に応じて作業幅のランク付けを行い、狭小部のランクおよび作業幅のランクを対応させて、圃場に作業車両を割り当てる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行しながら圃場で作業を行う作業車両と、
複数の前記圃場に関するデータであり前記圃場の形状情報を含む圃場データと、複数の前記作業車両に関するデータであり前記作業車両の作業幅情報を含む作業車両データとを有し、前記圃場データおよび前記作業車両データに基づいて、作業対象の前記圃場に対応する前記作業車両を当該圃場へ差し向ける制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記圃場データから、前記圃場に狭小部が存在する場合には該狭小部の狭小度合いに応じて該狭小部のランク付けを行い、
前記作業車両データから、前記作業車両の作業幅に応じて該作業幅のランク付けを行い、
前記狭小部のランクおよび前記作業幅のランクを対応させて、前記圃場に前記作業車両を割り当てる
ことを特徴とする作業車両の管理システム。
【請求項2】
前記狭小部は、前記圃場の角部の角度が鋭角となった部分であり、前記角部の角度が小さいほど狭小度合いが大きくなり、
前記制御手段は、
前記圃場には、前記狭小部の狭小度合いが大きいほど前記作業幅の小さい前記作業車両を割り当てる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の管理システム。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記狭小部が存在する前記圃場に対して前記作業幅の小さい前記作業車両を含む複数の前記作業車両を割り当てる
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両の管理システム。
【請求項4】
前記作業車両データは、前記作業車両の馬力情報を含み、
前記制御手段は、
前記作業車両データおよび前記圃場データから、作業対象の前記圃場に割り当てられた前記作業幅の小さい前記作業車両の他の前記作業車両と比較した馬力の割合と、作業対象の前記圃場の全体面積に占める前記作業幅の小さい前記作業車両の作業対象面積の割合との比が所定の値以上である場合に作業対象の前記圃場を分割し、分割した前記圃場のうち前記狭小部を含まない部分を他の前記作業車両に割り当てる
ことを特徴とする請求項3に記載の作業車両の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の作業車両の作業幅などの作業能力と複数の作業候補地(圃場)とを記憶し、作業車両の作業能力に基づいて作業候補地の中から優先する圃場を抽出して当該作業車両へ作業を行う圃場の位置情報を送信する作業車両の管理システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような作業車両の管理システムでは、複数の作業車両が作業を終了している場合には、作業能力の大きい作業車両へ優先して地図情報(作業を行う圃場の位置情報)を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-203523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような従来の作業車両の管理システムでは、作業能力の大きい作業車両を優先することで作業の効率化を図ることができるものの、作業能力の大きい作業車両は車体も大きく、圃場の形状によっては、耕耘残し(残耕という)が発生することがある。具体的には、圃場に車体の大きな作業車両が作業できないような狭い部分(狭小部)が存在するような場合には、残耕が発生することがある。
【0006】
すなわち、上記したような従来の作業車両の管理システムは、圃場の形状に適した作業計画を立案する点について改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圃場の形状に適した作業計画を立案することができる作業車両の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る作業車両の管理システム(1)は、自動走行しながら圃場(F)で作業を行う作業車両(10)と、複数の前記圃場(F)に関するデータであり前記圃場(F)の形状情報を含む圃場データと、複数の前記作業車両(10)に関するデータであり前記作業車両(10)の作業幅情報を含む作業車両データとを有し、前記圃場データおよび前記作業車両データに基づいて、作業対象の前記圃場(F)に対応する前記作業車両(10)を当該圃場(F)へ差し向ける制御手段(40)とを備え、前記制御手段(40)は、前記圃場データから、前記圃場(F)に狭小部(F)が存在する場合には該狭小部(F)の狭小度合いに応じて該狭小部(F)のランク付けを行い、前記作業車両データから、前記作業車両(10)の作業幅(W)に応じて該作業幅(W)のランク付けを行い、前記狭小部(F)のランクおよび前記作業幅(W)のランクを対応させて、前記圃場(F)に前記作業車両(10)を割り当てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
実施形態に係る作業車両の管理システムによれば、圃場の形状に適した作業計画を立案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る作業車両の管理システムの概要説明図である。
図2図2は、実施形態に係る作業車両の管理システムの機能を示すブロック図である。
図3図3は、作業制御装置および情報処理装置の概要説明図である。
図4図4は、作業制御装置の機能を示すブロック図である。
図5図5は、圃場の形状の説明図である。
図6図6は、作業車両の作業幅のランクの説明図である。
図7図7は、作業対象の圃場に作業車両を割り当てる場合の一例を示す図である。
図8図8は、作業車両の割り当て制御(その1)の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、作業車両の割り当て制御(その2)の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、圃場の角部の説明図(その1)である。
図11図11は、作業対象の圃場に作業車両を割り当てる場合の変形例を示す図である。
図12図12は、圃場の角部の説明図(その2)である。
図13図13は、圃場の角部が曲線形状の場合の鋭角判定の説明図である。
図14図14は、狭小部が存在する圃場の分割の説明図である。
図15図15は、圃場における作業計画(その1)の説明図である。
図16図16は、圃場における作業計画(その2)の説明図である。
図17図17は、圃場における作業計画(その3)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の管理システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
まず、図1図4を参照して実施形態に係る作業車両の管理システム1の構成の一例について説明する。図1は、実施形態に係る作業車両の管理システム1の概要説明図である。図2は、実施形態に係る作業車両の管理システム1の機能を示すブロック図である。図3は、作業制御装置30および情報処理装置40の概要説明図である。図4は、作業制御装置30の機能を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、作業車両の管理システム1は、たとえば、作業車両の一例としてのトラクタ10と、トラクタ10の位置(自己位置)を示す測位点を測定する測位装置20と、トラクタ10による作業関連情報を生成可能な制御ユニットである作業制御装置30と、作業制御装置30と通信可能な情報処理装置40(後述する制御手段)とを備える。
【0014】
また、作業車両の管理システム1では、複数のトラクタ10が制御される。
【0015】
作業車両であるトラクタ10は、農業用トラクタであり、走行車体11と、作業機12とを備える。走行車体11は、圃場F(F-A,F-B,F-C)を走行可能である。作業機12は、たとえば、走行車体11の後部に装着され、圃場Fにおいて対地作業を行う。作業機12は、たとえば、圃場Fの土壌面を耕耘するロータリ耕耘機である。なお、トラクタ10の作業機12としてはロータリ耕耘機などであるが、作業機12は、作業車両10が苗移植機であれば苗植付装置などであり、作業車両10が施肥機であれば施肥装置であり、作業車両10がコンバインであれば刈取装置などである。
【0016】
また、圃場Fには、トラクタ10の進入口FINおよび退出口FOUTが設けられている。なお、圃場Fには、進入口FINおよび退出口FOUTとなる1つの出入口が設けられてもよい。
【0017】
走行車体11は、エンジンと、動力伝達装置とを備える。エンジンは、走行車体11の動力源であるとともに、作業機12の動力源でもある。エンジンは、たとえば、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。動力伝達装置は、エンジンおよび駆動輪を連結可能とするクラッチを有し、クラッチが連結状態の場合に、エンジンの動力を駆動輪および作業機12へ伝達する。また、動力伝達装置は、クラッチが中立状態の場合には、エンジンおよび駆動輪の連結状態が解除され、エンジンの動力が駆動輪へ伝達されない。すなわち、クラッチが中立状態の場合、作業車両であるトラクタ10は減速する。走行車体11は、農道Rや圃場F内を自由に走行することができる。
【0018】
測位装置20は、上記したように、トラクタ10の位置を測定する。具体的には、測位装置20は、たとえば、トラクタ10の自己位置を示す測位点を含む位置情報を取得するGNSS(Global Navigation Satellite System)制御装置である。測位装置であるGNSS制御装置20は、地球上を周回している航法衛星50からの電波を受信してトラクタ10の自己位置を測位可能であり、かつ、計時可能である。すなわち、位置情報には、測位点であるトラクタ10の自己位置の情報と、測位点が測定された時刻の情報とが含まれる。
【0019】
作業制御装置30は、圃場Fにおけるトラクタ10の自動走行(自律走行)を制御する制御装置の一例であって、後述する制御部31(図2参照)と、記憶部32(図2参照)とを備える。なお、作業制御装置30は、たとえば、トラクタ10へ持ち込み可能な情報処理装置である携帯端末装置(たとえば、タブレット端末)などを含んで構成されてもよい。タブレット端末は、たとえば、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信規格によって、制御部31などと無線接続可能である。
【0020】
図2に示すように、作業車両の管理システム1は、たとえば、複数のトラクタ10が、通信ネットワークNを介して少なくとも1つの情報処理装置40と互いに接続可能な状態で構築される。各トラクタ10のそれぞれには、作業制御装置30が設けられる。すなわち、本実施形態に係る作業車両の管理システム1は、いわゆるクラウドコンピューティング(Cloud Computing)が可能なシステムである。
【0021】
作業制御装置30は、少なくともトラクタ10が自動走行可能な走行可能エリア情報を含む作業関連情報を生成することができる。ここで、走行可能エリア情報とは、たとえば、図1に示すように、所定の圃場Fにおいて、トラクタ10が自動走行によって、各圃場F内における有効な耕地(作業エリア)の最外側縁から逸脱することなく、安全に無人走行可能な走行経路(作業経路)Rを含む情報である。
【0022】
情報処理装置40は、CPU(Central Processing Unit)などの処理装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、さらには、入出力装置が設けられたコンピュータなどである。
【0023】
情報処理装置40では、農作業支援サーバ41およびパーソナルコンピュータ(以下、PC)42などが、通信ネットワークNを介して、作業制御装置30と接続される。なお、本実施形態では、情報処理装置40としては、農作業支援サーバ41およびPC42などからなる1つの情報処理装置40が、複数の圃場Fを管理する管理舎H内に設置される。情報処理装置40のPC42は、作業車両の管理システム1において作業を行う圃場Fへトラクタ10を割り当てるために機能する制御手段となる。
【0024】
情報処理装置40は、複数の圃場Fについて、それぞれ圃場識別情報100a~100i(図3参照)に関連付けられた圃場地図情報(後述する圃場データを含む)を後述する記憶部422に記憶している。また、情報処理装置40は、作業制御装置30によって生成された作業関連情報(後述する作業車両データを含む)を取得して、圃場Fごとに独立して記憶部422に記憶することができる。
【0025】
作業制御装置30の制御部31は、エンジンや走行装置などの作業車両(トラクタ10)に搭載される各システムを制御する各種ECU(Electronic Control Unit)111(図4参照)を制御する。
【0026】
制御部31は、トラクタ10を自動走行させる自動走行モードを実行する。なお、制御部31は、作業者(運転者)が搭乗してマニュアル運転するマニュアル走行モードへと切り替えることもできる。また、制御部31は、作業機12の昇降動作、クラッチの連結状態を制御する動力伝達スイッチの開閉動作、走行駆動装置の動作などを制御することができる。
【0027】
なお、自動走行モードは、圃場F内を自動走行によって作業する作業モードと、圃場間移動を自動走行によって行う圃場間移動モードとを含む。制御部31は、情報処理装置40の指示に従ってこれらのモードを切り替える。
【0028】
また、制御部31は、測位装置であるGNSS制御装置20からの位置情報に基づいて、トラクタ10を予め登録された走行経路R図1参照)に沿って自動走行させる。また、制御部31は、圃場Fにおいてトラクタ10が自動走行可能な作業エリアを設定する作業エリア設定モードを設定するとともに、作業エリア設定モードを実行する。
【0029】
図3に示すように、作業制御装置30の記憶部32に記憶される、情報処理装置40から取得した圃場関連情報には、圃場識別情報100a~100iが個々に付与された圃場Fの場所を示す圃場地図情報と、圃場地図情報に関連付けられた作業関連情報とがある。たとえば、地区別に区分されたA地区の圃場F、B地区の圃場F、C地区の圃場Fのそれぞれに、区画された複数の区画圃場A0~A2,B0~B3,C0~C1に関する作業関連情報が必要情報としてデータベース化されて記憶部32に記憶される。
【0030】
このような作業車両の管理システム1では、地図情報によって視覚的に識別できる複数の圃場Fにおいて、トラクタ10によって取得された作業関連情報を、複数の圃場Fのそれぞれに関連付けて、たとえば、情報処理装置40(農作業支援サーバ41など)で一元的に管理することができる。このため、今後の作業計画を立案することが容易となり、利便性が向上する。
【0031】
なお、作業制御装置30がタブレット端末を備える場合も、たとえば、タブレット端末を介して作業関連情報などを農作業支援サーバ41に逐次アップロードすることで、作業計画についてもクラウドコンピューティングを利用して農作業支援サーバ41やPC42で作成することが可能となる。
【0032】
また、自動走行による走行可能エリア情報までも情報処理装置40に記憶されるため、作業対象となる複数の圃場Fのうちのいずれの圃場Fにおいても自動走行による作業が可能となる。
【0033】
また、本実施形態に係る作業車両の管理システム1においては、トラクタ10を自動走行させるための走行経路R図1参照)を含む走行可能エリア情報は、作業制御装置30によって生成される。たとえば、トラクタ10を圃場F内で有人走行(マニュアル走行)させた場合に、作業制御装置30(制御部31)は、走行経路Rを取得し、取得した走行経路Rに基づいて走行可能エリア情報を生成する。
【0034】
作業制御装置30(記憶部32)には、圃場Fにおいて作業する他の車両まで含めたトラクタ10に関し、作業幅W図6参照)や馬力、ホイルベース、トレッド、タイヤ幅、その他の各種諸元を含む作業車両情報(作業車両データ)が記憶される。
【0035】
このように、電子制御によって各部が制御されるトラクタ10は、有人走行をしていないトラクタ10についても自動走行による所定の作業を所定の作業エリアにおいて行うことができる。この場合、自動走行するトラクタ10は、圃場F(図1参照)における作業エリアから逸脱することなく、安全に走行することができる。
【0036】
作業制御装置30には、上記した情報処理装置40と同様に、CPUなどを有する処理装置(制御部31)や、ROM、RAM、HDDなどの記憶装置(記憶部32)、および入出力装置が設けられる。なお、各装置は、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。
【0037】
また、作業制御装置30の制御部31には、各種ECU111の他、たとえば、各種アクチュエータ112、各種センサ113、カメラ114、自動操舵装置115、GNSS制御装置20が接続される。
【0038】
各種アクチュエータ112としては、たとえば、作業機12(図1参照)を昇降させる昇降シリンダなどの様々なシリンダや、エンジンの吸気量を調節するスロットルモータ(電動モータ)などがある。
【0039】
各種センサ113としては、たとえば、圃場Fの作土深を検出する作土深センサ、圃場Fの肥料濃度を検出する肥沃度センサ、収穫物である籾などの重さを検出したり苗の重量を検出したりするロードセルなどの重量センサ、後輪の回転数を検出する回転センサ、走行車体11の傾きを検出する傾きセンサ、および作業クラッチセンサや温度センサなど、様々なセンサがある。
【0040】
カメラ114は、走行車体11の適宜箇所に複数設けられる。カメラ114による撮像データは、たとえば、図1に示す管理舎H内に設置された情報処理装置40などを介して確認することができる。また、作業制御装置30は、カメラ114による撮像データから作物の生育状況や作業状況などを判定することもできる。
【0041】
トラクタ10の自己位置を示す測位点を含む位置情報を取得するGNSS制御装置20は、走行車体11に設けられた受信アンテナ21によって航法衛星50からの電波を受信し、所定時間ごとにGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報(測位点)を所定間隔で取得することができる。
【0042】
作業制御装置30は、GNSS制御装置20が取得する位置情報と位置ごとの作業関連情報とを、圃場F-A,F-B,F-C(図1参照)の場所を示す圃場地図情報とに互いに関連付けて記録した圃場関連情報(図3参照)を、各圃場F-A,F-B,F-Cごとの独立情報として生成する。生成された独立情報は、通信ネットワークN(図2参照)を介して情報処理装置40へ送信される。
【0043】
自動操舵装置115は、トラクタ10の自動走行モードが実行される場合に、GNSS制御装置20が取得する位置情報に基づいて制御部31によって制御される。すなわち、制御部31によって、走行車体11に設けられた操縦ハンドルが自動操作され、走行車体11が自動で運転される。図4に示すように、自動操舵装置115は、任意の回転力を付与して操縦ハンドルを回転させる操舵モータ115aと、操縦ハンドルの回転角度を検知するハンドルポテンショメータ115bとを備える。
【0044】
なお、作業車両の管理システム1として、いわゆるドローンと呼ばれる無人飛行体を利用することも可能である。無人飛行体には、たとえば、トラクタ10に設けられたカメラ114と同じような撮像装置を搭載するとともに、GNSS制御装置20の一部を構築可能なアンテナを設けておくとよい。
【0045】
情報処理装置40のPC42(制御部421)は、各種情報を取得する。制御部421は、たとえば、トラクタ10に設けられた各種センサ113が検出した情報を逐次受信し、受信した情報を、圃場Fに関する圃場情報(圃場データ)なのか、作業車両(トラクタ)10に関する作業車両情報(作業車両データ)なのか、あるいは作業に関するものなのかを判別し、判別結果に応じて、記憶部422を介して、記憶部32の圃場データベース321、作業車両データベース322、あるいは作業データベース323へ格納する。
【0046】
制御部31は、GNSS制御装置20が取得した位置情報を取得する。具体的には、制御部31は、位置情報に含まれる測位点を圃場Fの形状を示す形状情報(圃場データ)として取得する。また、制御部31は、形状情報に基づいてトラクタ10が自動走行可能な作業エリアを設定し、設定した作業エリアに基づいてトラクタ10が自動走行により作業する走行経路(作業経路)R図1参照)を生成する。
【0047】
また、制御部31は、情報処理装置40からの指示に従って、トラクタ10の圃場作業や、圃場間移動における自動走行を制御する。制御部31は、情報処理装置40の指示に従って、自動走行モードにおける作業モード、圃場間移動モードおよび待機モードを切り替える。
【0048】
また、制御部31は、GNSS制御装置20からの位置情報と圃場関連情報に含まれる作業関連情報とに基づいて、トラクタ10が自動走行可能な走行経路情報、すなわち、走行可能エリア情報を自動生成することができる。生成された走行可能エリア情報は、記憶部32の経路データベース324に、区画圃場A0~A2,B0~B3,C0~C1(図3参照)にそれぞれ1対1で対応して記憶される。
【0049】
記憶部32には、制御部31による制御処理に必要な各種プログラムの他、各種情報が記憶される。すなわち、記憶部32は、圃場データベース321、作業車両データベース322、作業データベース323、経路データベース324、さらには、各種プログラムが格納されたプログラム部325を有する。
【0050】
記憶部32には、個々に圃場識別情報100a~100iが付与された圃場F-A,F-B,F-C(図1参照)の場所を示す圃場地図情報に関連付けて、作業関連情報が、複数の圃場F-A,F-B,F-Cごとの独立情報である圃場関連情報として記憶される。すなわち、地区別に区分された圃場F-A,F-B,F-Cそれぞれに、区画された複数の区画圃場A0~A2,B0~B3,C0~C1に関する必要情報が、データベース化されて記憶部32に記憶される。
【0051】
たとえば、圃場データベース321は、圃場Fの位置情報、名称、所有者などの管理情報や、圃場Fの形状を示す形状情報などが含まれる。作業車両データベース322は、作業車両であるトラクタ10の作業幅(耕耘幅)Wの情報(作業幅情報)や馬力情報などの作業能力情報や、ホイルベース、トレッド、タイヤ幅、その他の各種諸元が含まれる。作業データベース323は、圃場Fにおける作業工程に関する情報が含まれる。たとえば、作業データベース323には、過去に行った作業や、未来に行う予定の作業に関する情報が含まれる。経路データベース324は、作業エリア、および作業エリアに設定された走行経路(作業経路)Rに関する情報が含まれる。
【0052】
また、たとえば、記憶部32には、圃場Fの形状と、作業エリアと、基準線とが対応付けて記憶される。これにより、次年度以降において、同じ圃場Fで同じ作業を行う場合に、設定作業を行わなくて済むため、作業者の煩わしさを低減することができる。また、圃場Fの形状は、たとえば、多角形の重心や中心をその圃場Fの代表点として記憶される。
【0053】
また、記憶部32に記憶された各データベースは、所定のソート方法に従ってソート可能である。たとえば、過去の圃場Fを選択する場合には、情報処理装置40(図2参照)のモニタなどに、現在位置に最も近い圃場F(たとえば、代表点)から順にリスト表示される。あるいは、昨年作業を実施した順に表示される。また、登録順に圃場Fが表示されてもよい。
【0054】
プログラム部325には、たとえば、トラクタ10を自動走行させる場合の作業経路情報を生成する作業経路生成プログラムや、生成された作業経路情報にしたがってトラクタ10を自動走行させるための自動操舵プログラムなど、トラクタ10の動作全般を制御するコンピュータプログラムが格納される。
【0055】
作業経路生成プログラムとしては、たとえば、測位装置であるGNSS制御装置20によって測位したトラクタ10の自己位置を示す情報を取得する自己位置取得工程と、取得した自己位置情報と、予め記憶した圃場地図情報とに基づいて、トラクタ10が自動走行可能な走行可能エリア情報を含む走行経路R図1参照)を生成する走行経路生成工程とが含まれる。さらに、走行経路Rに加えて各種の作業関連情報を生成し、生成した情報を情報処理装置へ送信する送信工程が含まれる。
【0056】
また、記憶部32の圃場データベース321には、図3に示す圃場関連情報が記憶される。圃場関連情報は、たとえば、圃場Fを特定する圃場識別情報100a~100iに、圃場Fの位置を地図上で示す画像データからなる圃場地図情報、作業関連情報などが紐づけされ、たとえば、制御部31によって生成される。
【0057】
ここで、作業車両の管理システム1では、たとえば、情報処理装置40は、複数のトラクタ10の作業能力と複数の作業候補地(圃場F)とを記憶し、トラクタ10の作業能力に基づいて作業候補地の圃場Fの中から優先する圃場Fを抽出し、トラクタ10へ作業を行う圃場Fの地図情報(位置情報)を送信し、トラクタ10を圃場Fへと差し向ける。トラクタ10の作業能力とは、たとえば、作業機12による作業幅(耕耘幅)W図6参照)である。
【0058】
ところが、作業幅Wの大きいトラクタ10は車体も大きく、圃場Fの形状によっては残耕が発生することがある。具体的には、圃場Fに車体の大きなトラクタ10が作業できないような狭い部分、いわゆる狭小部F図5参照)が存在するような場合には車体の大きなトラクタ10で作業を行うことができず、残耕が発生することがある。このため、本実施形態では、狭小部Fが存在する圃場Fには、狭小部Fの作業が可能なトラクタ10を割り当てる。
【0059】
次に、図5~9を参照して作業車両(トラクタ)10の割り当て方法について説明する。図5は、圃場Fの形状の説明図である。図6は、作業車両(トラクタ)10の作業幅Wのランクの説明図である。図7は、作業対象の圃場Fに作業車両(トラクタ)10を割り当てる場合の一例を示す図である。図8および9は、作業車両(トラクタ)10の割り当て制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0060】
上記したように、制御手段である情報処理装置40(PC42)(図2参照)は、圃場データと、作業車両データとを有する。圃場データは、複数の圃場Fに関するデータであり、これら複数の圃場Fの形状情報を含む。作業車両データは、複数のトラクタ10に関するデータであり、これら複数のトラクタ10の作業機12による作業幅情報を含む。また、作業車両データは、複数のトラクタ10の馬力情報を含む。
【0061】
情報処理装置40は、圃場データおよび作業車両データに基づいて、複数のトラクタ10の中から作業対象の圃場(作業対象圃場ともいう)Fに対応するトラクタ10を選択し、選択したトラクタ10を作業対象圃場Fへ差し向ける。なお、情報処理装置40によって選択されたトラクタ10は、農道Rなどを自動走行することで、目的地となる作業対象圃場Fへと向かう。
【0062】
本実施形態では、狭小部Fが存在する圃場Fにトラクタ10を割り当てるための制御手段としての情報処理装置40を備える構成としているが、たとえば、狭小部Fが存在する圃場Fにトラクタ10を割り当てるために、制御装置(情報処理装置40のPC42)などではなく、AI(人工知能)を活用する構成としてもよい。
【0063】
図5に示すように、圃場Fには、直角または鈍角の角部F(FC1)のみを有する形状のもの(図中の左側)の他、少なくとも1つの鋭角の角部F(FC2)を有する形状のもの(図中の右側)がある。鋭角の角部FC2は、圃場Fにおける、車体の大きなトラクタ10が作業できないような狭い部分、いわゆる狭小部Fとなることがある。作業制御装置30は、圃場Fに狭小部Fが存在する圃場Fには、後述するように、作業幅Wの小さいトラクタ10を差し向ける。
【0064】
このため、情報処理装置40は、直角または鈍角の角部FC1のみを有する形状の圃場Fには、通常どおり、圃場の広さ(面積)に応じてトラクタ10を選択し、鋭角の角部FC2を有する形状の圃場F(すなわち、狭小部Fが存在する圃場F)には、狭小部Fの作業が可能なトラクタ10を選択して、作業対象圃場Fへトラクタ10を差し向ける。
【0065】
図6に示すように、作業車両の管理システム1(図1参照)は、車格(車体の大きさやエンジンの排気量などによって定められた格付けのこと)の異なる複数のトラクタ10を備える。情報処理装置40は、車格に応じて複数のトラクタ10を複数段階に分けている。具体的には、情報処理装置40は、作業機12による作業幅Wに応じて複数のトラクタ10を、たとえば、「クラスA~D」の4段階に分けている。たとえば、「クラスA」が作業幅Wの最も大きいトラクタ10であり、「クラスB」が「クラスA」の次に作業幅Wの大きいトラクタ10(トラクタ10群)であり、「クラスC」が「クラスB」の次に作業幅Wの大きいトラクタ10であり、「クラスD」が作業幅Wの最も小さいトラクタ10(トラクタ10群)である。
【0066】
そして、本実施形態では、「クラスC」および「クラスD」のトラクタ10が、狭小部Fが存在する圃場Fの作業を担当する。なお、トラクタ10は、このような4段階のクラス分けに限定されず、たとえば、「大」、「小」の2段階にクラス分けしてもよいし、「大」、「中」、「小」の3段階にクラス分けしてもよい。また、トラクタ10は、5段階以上にクラス分けしてもよい。このようなクラス分けの場合でも、作業幅Wの小さいトラクタ10(トラクタ10群)が、狭小部Fが存在する圃場Fの作業を担当する。
【0067】
情報処理装置40は、圃場データから、作業対象圃場Fに狭小部Fが存在する場合には、この狭小部Fの狭小度合いに応じて、この狭小部Fのランク付けを行う。以下では、狭小部Fのランクを「狭小ランク」という。図5に示すように、狭小部Fは、圃場Fの角部Fの角度が小さいほど、その狭小度合いは大きくなる。狭小ランクは、たとえば、狭小度合いが大きいほど高ランクとして設定し、狭小度合いが小さいほど低ランクとして設定している。
【0068】
また、情報処理装置40は、作業車両データから、トラクタ10の作業幅Wに応じて、作業幅Wのランク付けを行う。以下では、作業幅Wのランクを「作業幅ランク」という。図6に示すように、一般的に、トラクタ10の車格が大きいほど作業幅Wも大きくなる。作業幅ランクは、たとえば、作業幅Wが大きいほど高ランクとして設定し、作業幅Wが小さいほど低ランクとして設定している。
【0069】
そして、情報処理装置40は、トラクタ10を作業対象圃場Fへ差し向ける場合には、狭小ランクおよび作業幅ランクを対応させて、この作業対象圃場Fにトラクタ10を割り当てる。具体的には、情報処理装置40は、作業対象圃場Fに狭小部Fが存在する場合、狭小部Fの作業が可能なように、狭小ランクに応じた作業幅ランクのトラクタ10を作業対象圃場Fへ差し向ける。この場合、情報処理装置40は、作業対象圃場Fには、狭小部Fの狭小度合いが大きいほど作業幅Wの小さいトラクタ10を割り当てる。すなわち、狭小ランクが高いほど作業幅ランクの低いトラクタ10を割り当てる。
【0070】
また、たとえば、角部Fの角度が60°以上の狭小部Fが存在する圃場Fには、クラスCのような中型のトラクタ10を割り当て、角部Fの角度が60°以上の狭小部Fが存在する圃場Fには、クラスDのような小型のトラクタ10を割り当てる。なお、クラスCまたはDのトラクタが担当する狭小部Fの条件は、オペレータなどで設定可能である。
【0071】
また、情報処理装置40は、狭小部Fが存在する作業対象圃場Fに対して、作業幅Wの小さい(作業幅ランクの低い)トラクタ10を含む複数のトラクタ10を割り当ててもよい。この場合、作業幅ランクの低いトラクタ10以外のトラクタ10としては、作業対象圃場Fの広さ(面積)に応じた作業幅ランクのトラクタ10を割り当てることが好ましく、作業幅ランクの低いトラクタ10には狭小部Fの作業を担当させ、他のトラクタ10には狭小部F以外の部分の作業を担当させる。
【0072】
図7に示すように、狭小部Fが存在する作業対象圃場Fへ複数のトラクタ10を差し向ける場合、情報処理装置40は、各トラクタ10の作業負荷の偏りを抑えるために、たとえば、作業幅ランクの低いトラクタ10には作業対象圃場Fの狭小部Fを含む周縁部分F1の作業(回り耕)を担当させ、他のトラクタ10に作業対象圃場Fの周縁部分F1以外の部分F2の作業を担当させることで、各トラクタ10の作業負荷のバランスをとる。このように、狭小部Fの作業を担当するトラクタ10の作業面積が大きくなりそうな場合には、このトラクタ10に周縁部分F1の作業(回り耕)のみを担当させるように自動計算することで、各トラクタ10の作業負荷のバランスをとる。
【0073】
なお、各トラクタ10は、オペレータが作業負荷の分配を承認しないと作業を開始しないよう制御される。また、作業負荷が略均等に分配されても、小回りが必要な圃場Fに大型のトラクタ10が作業を行うような場合は、オペレータが作業負荷の偏りを許容した再計算を要求することができる。また、圃場Fには、圃場Fの面積に応じて各クラスA~Dのトラクタ10を割り当ててもよい。
【0074】
具体的には、情報処理装置40は、作業車両データから、作業対象圃場Fに割り当てられた作業幅Wの小さいトラクタ10における他のトラクタ10と比較した馬力の割合を算出する。また、情報処理装置40は、作業車両データおよび圃場データから、作業対象圃場Fの全体面積Sに占める作業幅Wの小さいトラクタ10の作業対象面積S1の割合を算出する。
【0075】
情報処理装置40は、作業対象圃場Fに割り当てられた作業幅Wの小さいトラクタ10における他のトラクタ10と比較した馬力の割合と、作業対象圃場Fの全体面積Sに占める作業幅Wの小さいトラクタ10の作業対象面積S1の割合とを比較する。
【0076】
情報処理装置40は、作業対象圃場Fに割り当てられた作業幅Wの小さいトラクタ10における他のトラクタ10と比較した馬力の割合と、作業対象圃場Fの全体面積Sに占める作業幅Wの小さいトラクタ10の作業対象面積S1の割合との比が所定の値以上である場合に作業対象圃場Fの面積(全体面積)Sを分割し、分割した作業対象圃場Fの面積(全体面積)Sのうち、狭小部Fを含む周縁部分F1の面積S1を作業幅Wの小さいトラクタ10に割り当て、狭小部Fを含まない部分F2の面積S2を他のトラクタ10に割り当てる。
【0077】
図7に示す例では、たとえば、作業対象圃場Fにおいて、狭小部Fを含む周縁部分F1(面積S1)をクラスCまたはDのトラクタ10に担当させ、狭小部Fを含まない部分F2(面積S2)をクラスAまたはBのトラクタ10に担当させる。
【0078】
たとえば、作業対象圃場Fの全体面積Sが300mを、150馬力のトラクタ10、100馬力のトラクタ10および50馬力のトラクタ10(たとえば、クラスCまたはDのトラクタ10)で作業する場合、150馬力のトラクタ10が150mの面積、100馬力のトラクタ10が100mの面積、50馬力のトラクタ10が50mの面積を作業する。クラスCまたはDのトラクタ10の作業対象面積S1が大き過ぎる、すなわち、クラスCまたはDのトラクタ10に対する負荷がかかり過ぎる場合は作業効率が低下するため、同一の作業対象圃場FにおいてクラスAまたはBのトラクタ10に作業を担当(分担)させることで作業効率の低下を抑制することができる。
【0079】
なお、複数のトラクタ10で1つの作業対象圃場Fを作業する場合、一斉に作業を行うと他のトラクタ10が隣接耕耘などの隣接作業から入るため、鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10を先に作業させることで、他のトラクタ10から邪魔されることなく、狭小部Fの作業を行うことができる。
【0080】
また、鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10に狭小部Fの作業のみを担当させる場合、狭小部Fの作業を終えた鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10を狭小部F以外の部分の作業へ復帰させてもよい。新たに狭小部Fの作業が必要になった場合には、鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10に狭小部Fを作業させる。
【0081】
また、情報処理装置40は、圃場Fごとに最初に評価のポイント(たとえば、10ポイント)を設定し、条件によって減点し、残ったポイント数に応じて鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10を割り当ててもよい。この場合、情報処理装置40は、たとえば、圃場Fの広さ(面積)で減点し(狭いほど減点大)、圃場Fの形状で減点し(たとえば、「三角形>台形>その他の形状」のように、三角形を最も減点大、次に台形を減点大・・・)、角部Fが曲線形状(ラウンド形状)の場合に減点し、残ったポイント数が所定の閾値以下であれば鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10を割り当てる。
【0082】
図8に示すように、トラクタ10の割り当て制御では、情報処理装置40は、複数の圃場Fから作業対象圃場Fを指定する(ステップS101)。次いで、情報処理装置40は、圃場データに基づいて、指定した作業対象圃場Fに狭小部Fが存在するか否かを判定する(ステップS102)。
【0083】
情報処理装置40は、ステップS102の処理において作業対象圃場Fに狭小部Fが存在すると判定した場合(ステップS102:Yes)、狭小ランクに対応する作業幅ランクのトラクタを決定する(ステップS103)。
【0084】
次いで、情報処理装置40は、複数のトラクタ10から、決定した作業幅ランクのトラクタ10を選択する(ステップS104)。そして、情報処理装置40は、選択したトラクタ10を作業対象圃場Fへ差し向け(ステップS105)、処理を終了する。
【0085】
なお、情報処理装置40は、ステップS102の処理において作業対象圃場Fに狭小部Fが存在しないと判定した場合には(ステップS102:No)、作業対象圃場Fの広さ(面積S)に応じた作業幅ランクのトラクタ10を選択し(ステップS106)、選択したトラクタ10を作業対象圃場Fへ差し向け(ステップS105)、処理を終了する。
【0086】
また、図9に示すように、トラクタ10の割り当て制御では、トラクタ10を選択する場合、情報処理装置40は、作業車両データから、作業対象圃場Fに割り当てられたトラクタ10における他のトラクタ10と比較した馬力の割合を算出する(ステップS201)。次いで、情報処理装置40は、作業車両データおよび圃場データから、作業対象圃場Fに割り当てられたトラクタ10における、作業対象圃場Fの全体面積Sに占めるこのトラクタ10の作業対象面積S1の割合を算出する(ステップS202)。
【0087】
次いで、情報処理装置40は、作業対象圃場Fに割り当てられたトラクタ10の馬力の割合と、このトラクタ10の作業対象面積S1の割合を比較し(ステップS203)、このトラクタ10の馬力の割合とトラクタ10の作業対象面積S1の割合との比が所定の値以上か否かを判定する(ステップS204)。
【0088】
情報処理装置40は、ステップS204の処理においてこのトラクタ10の馬力の割合とトラクタ10の作業対象面積S1の割合との比が所定の値以上と判定した場合(ステップS204:Yes)、作業対象圃場F(全体面積S)を分割する(ステップS205)。そして、情報処理装置40は、作業対象圃場Fにおいて、狭小部Fを含む部分F1に作業幅Wの小さいトラクタ10を割り当て、狭小部Fを含まない部分F2に他のトラクタ10を割り当て(ステップS206)、処理を終了する。
【0089】
なお、情報処理装置40は、ステップS204の処理においてこのトラクタ10の馬力の割合とトラクタ10の作業対象面積S1の割合との比が所定の値未満と判定した場合には(ステップS204:No)、作業対象圃場Fの分割処理(ステップS205)やトラクタ10の作業分担処理(ステップS206)は行わず、処理を終了する。
【0090】
図10は、作業対象の圃場Fに作業車両(トラクタ)10を割り当てる場合の変形例を示す図である。図10に示すように、圃場(作業対象圃場)Fの形状が矩形でない場合、情報処理装置40は、この圃場Fで最大面積となる矩形の領域(矩形部分F3)と、鋭角の角部F(狭小部F)を含む部分F4とを設定する。
【0091】
情報処理装置40は、矩形部分F3を鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10以外のトラクタ10に割り当て、矩形部分F3以外の部分(狭小部Fを含む部分F4)を鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10に割り当てる。図10に示す例では、情報処理装置40は、たとえば、圃場Fにおいて、矩形部分F3をクラスAまたはBのトラクタ10に担当させ、矩形部分F3以外の部分(狭小部Fを含む部分F4)をクラスCまたはDのトラクタ10に担当させる。
【0092】
図11および12は、圃場Fの角部Fの説明図である。図11に示すように、圃場Fの一辺が曲線の場合、情報処理装置40は、角部Fにおいて曲線の接線(仮想線)L1を設定し、接線L1の傾きによって角部Fの角度を設定する。また、図12に示すように、圃場Fの角部Fが曲線形状(ラウンド形状)の場合、情報処理装置40は、角部Fを形成する2辺の延長線(仮想線)L2を設定し、延長線L2のなす角度を角部Fの角度として設定する。
【0093】
図13は、圃場Fの角部Fが曲線形状の場合の鋭角判定の説明図である。図13に示すように、作業対象圃場Fの角部Fが曲線形状(ラウンド形状)の場合、情報処理装置40は、角部Fを形成する2辺の延長線(仮想線)L2のなす角度が鋭角であり、通常であれば作業幅Wの小さいトラクタ10を差し向けるところ、角部Fのアール(曲率半径)が十分に大きい(所定の値以上の大きさの)場合には、鋭角と判定しない。この場合、情報処理装置40は、たとえば、クラスA~Dのトラクタ10(図7および10参照)に、作業を行いながら曲がれるアールの下限値を設定し、角部Fのアールよりも小さい下限値を有するトラクタ10を割り当てる。
【0094】
図14~17は、圃場Fにおける作業計画の一例の説明図である。図14に示すように、圃場Fの形状が矩形でない場合(三角形は除く)、情報処理装置40は、この圃場Fを、分割線L3(仮想線)を用いて複数(2つ)の部分Fa,Fbに分割し、それぞれの部分Fa,Fbにトラクタ10を割り当てる。この場合、分割線L3は、1つの頂点を通り、かつ、向かい合う辺に対して直角となるように設定する。
【0095】
また、分割線L3は、1つの圃場Fですべてのパターンをシミュレーションして、2分割された面積の差が最も大きくなるものを選ぶことが好ましい。この場合、大きい面積を車格の大きいトラクタ10で作業する割合を増やすことで、作業効率を向上させることができる。また、圃場Fに出入口(進入口FIN、退出口FOUT)が設けられている場合は、出入口(進入口FIN、退出口FOUT)がある方を後で作業するように作業計画を立案することが好ましい。また、作業幅Wのより小さいトラクタ10が後で作業するように作業計画を立案することが好ましい。なお、後から圃場Fに入ったトラクタ10がこれより前に圃場Fに入ったトラクタ10の作業(耕耘)跡に入ってしまった場合、後から圃場Fに入ったトラクタ10には、入った部分を再度作業(耕耘)して踏み後を消すように作業させる。
【0096】
また、1つの圃場Fを分割線L3で2分割した場合、情報処理装置40は、作業計画に従って作業した結果、様々な外乱によって1つの圃場Fに2つのトラクタ10が入ることになった場合、後から入るトラクタ10を、先に入ったトラクタ10が作業を終えて圃場Fから出るまで、圃場F外などで待機させる。また、情報処理装置40は、より大型となる一方のトラクタ10の作業を優先し、一方のトラクタ10が作業している間は他方のトラクタ10を待機させる。
【0097】
図15に示すように、圃場Fの形状が矩形でない場合、情報処理装置40は、この圃場Fで最大面積となる矩形の領域(矩形部分Fc)を分割線(仮想線)L4を用いて設定し、矩形部分Fcの作業を鋭角担当の作業幅Wの小さいトラクタ10以外のトラクタ10に割り当てる。この場合、矩形部分Fc以外の部分Fdの面積が予め設定した閾値以下であれば作業効率を重視してこの部分Fdを作業しない。
【0098】
図16に示すように、作業担当のトラクタ10が作業対象圃場Fに到着したときに事前の地図情報になかった、たとえば、圃場F内に資材が置かれていたり水たまりがあったりするなどの阻害要因による作業不可部分Feがある場合、作業担当のトラクタ10はカメラ114(図4参照)の画像などを送信するして情報処理装置40などへ情報を伝達する。情報処理装置40は、受信した画像などからより小型のトラクタ10で作業した方がよいと判断した場合には、作業対象圃場Fに到着している作業担当のトラクタ10と交代するよう、作業対象圃場Fへ小型のトラクタ10を差し向ける。また、この場合、作業対象圃場Fを、作業不可部分Feを除いて分割線(仮想線)L5を用いて分割し、各部分Ff,Fgをそれぞれトラクタ10に作業させる。
【0099】
図17に示すように、トラクタ10による実際の作業で作業対象圃場Fの角部F(狭小部F)に残耕Fhが発生した場合、作業担当のトラクタ10はカメラ114の画像などを送信するして情報処理装置40などへ情報を伝達する。情報処理装置40は、残耕Fhの大きさからより小型のトラクタ10で作業した方がよいと判断した場合には、作業対象圃場Fに到着している作業担当のトラクタ10と交代するよう、作業対象圃場Fへ小型のトラクタ10を差し向ける。
【0100】
上記したように、実施形態に係る作業車両の管理システム1によれば、たとえば、圃場Fが広い場合は作業幅Wの大きいトラクタ10を割り当てるところを、このような広い圃場Fでも狭小部Fが存在する場合には狭小部Fに対応可能なように作業幅Wの小さいトラクタ10を割り当てる。このように、圃場Fに狭小部Fが存在する場合には狭小部Fに対応可能な作業幅Wのトラクタ10を割り当てて、たとえば、圃場Fにおける耕耘残し(残耕)の発生を抑制することができるなど、圃場Fの形状に適した作業計画を立案することができる。
【0101】
また、圃場Fには、狭小部Fの狭小度合いが大きいほど作業幅Wの小さいトラクタ10を割り当てるため、残耕の発生をさらに確実に抑制することができる。
【0102】
また、狭小部Fが存在する圃場Fに対しては、狭小部Fに対応可能な作業幅Wのトラクタ10だけでなく、他のトラクタ10、すなわち、作業幅Wの大きいトラクタ10でも作業を行う。このため、作業幅Wの小さいトラクタ10による作業に伴う作業効率の低下を抑制することができる。
【0103】
また、作業幅Wの小さいトラクタ10の作業対象面積S1が大き過ぎる(作業幅Wの小さいトラクタ10に対する負荷がかかり過ぎる)場合は作業効率が低下するため、同一の「圃場Fにおいて他のトラクタ10に作業を担当(分担)させることで作業効率の低下を抑制することができる。
【0104】
上述してきた実施形態により、以下の作業車両の管理システム1が実現される。
【0105】
(1)自動走行しながら圃場Fで作業を行う作業車両10と、複数の圃場Fに関するデータであり圃場Fの形状情報を含む圃場データと、複数の作業車両10に関するデータであり作業車両10の作業幅情報を含む作業車両データとを有し、圃場データおよび作業車両データに基づいて、作業対象の圃場Fに対応する作業車両10を作業対象の圃場Fへ差し向ける制御手段40とを備え、制御手段40は、圃場データから、圃場Fに狭小部Fが存在する場合には狭小部Fの狭小度合いに応じて狭小部Fのランク付けを行い、作業車両データから、作業車両10の作業幅Wに応じて作業幅Wのランク付けを行い、狭小部Fのランクおよび作業幅Wのランクを対応させて、圃場Fに作業車両10を割り当てる、作業車両の管理システム1。
【0106】
このような作業車両の管理システム1によれば、たとえば、圃場Fが広い場合は作業幅Wの大きい作業車両10を割り当てるところを、このような広い圃場Fでも狭小部Fが存在する場合には狭小部Fに対応可能なように作業幅Wの小さい作業車両10を割り当てる。このように、圃場Fに狭小部Fが存在する場合には狭小部Fに対応可能な作業幅Wの作業車両10を割り当てて、たとえば、圃場Fにおける耕耘残し(残耕)の発生を抑制することができるなど、圃場Fの形状に適した作業計画を立案することができる。
【0107】
(2)上記(1)において、狭小部Fは、圃場Fの角部Fの角度が鋭角となった部分であり、角部Fの角度が小さいほど狭小度合いが大きくなり、制御手段40は、圃場Fには、狭小部Fの狭小度合いが大きいほど作業幅Wの小さい作業車両10を割り当てる、作業車両の管理システム1。
【0108】
このような作業車両の管理システム1によれば、上記(1)の効果に加えて、圃場Fには、狭小部Fの狭小度合いが大きいほど作業幅Wの小さい作業車両10を割り当てるため、残耕の発生をさらに確実に抑制することができる。
【0109】
(3)上記(2)において、制御手段40は、狭小部Fが存在する圃場Fに対して作業幅Wの小さい作業車両10を含む複数の作業車両10を割り当てる、作業車両の管理システム1。
【0110】
このような作業車両の管理システム1によれば、上記(2)の効果に加えて、狭小部Fが存在する圃場Fに対しては、狭小部Fに対応可能な作業幅Wの作業車両10だけでなく、他の作業車両10、すなわち、作業幅Wの大きい作業車両10でも作業を行う。このため、作業幅Wの小さい作業車両10による作業に伴う作業効率の低下を抑制することができる。
【0111】
(4)上記(3)において、作業車両データは、作業車両10の馬力情報を含み、制御手段40は、作業車両データおよび圃場データから、作業対象の圃場Fに割り当てられた作業幅Wの小さい作業車両10の他の作業車両10と比較した馬力の割合と、作業対象の圃場Fの全体面積Sに占める作業幅Wの小さい作業車両10の作業対象面積S1の割合との比が所定の値以上である場合に作業対象の圃場Fを分割し、分割した圃場Fのうち狭小部Fを含まない部分を他の作業車両10に割り当てる、作業車両の管理システム1。
【0112】
このような作業車両の管理システム1によれば、上記(3)の効果に加えて、作業幅Wの小さい作業車両10の作業対象面積S1が大き過ぎる(作業幅Wの小さい作業車両10に対する負荷がかかり過ぎる)場合は作業効率が低下するため、同一の圃場Fにおいて他の作業車両10に作業を担当(分担)させることで作業効率の低下を抑制することができる。
【0113】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 作業車両の管理システム
10 作業車両(トラクタ)
40 制御手段(情報処理装置)
F 圃場
狭小部
S 全体面積
S1 作業対象面積
作業幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17